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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ハイドロチャック
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/30 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B23B31/30 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021546151
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2019036987
(87)【国際公開番号】W WO2021053810
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000205834
【氏名又は名称】BIG DAISHOWA株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518042372
【氏名又は名称】大昭和精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】土居 正幸
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01649956(EP,A1)
【文献】特開2010-155319(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0333787(US,A1)
【文献】特表平05-500030(JP,A)
【文献】特表平08-510174(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109822457(CN,A)
【文献】特開2002-292538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/30
B23B 29/00
B23B 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端側に設けられ、先端側に被把持体を把持する円筒形状のチャック部を有するシャンク部と、
長手方向の他端側に設けられ、前記シャンク部に連続して配置される操作部と、を備え、
前記シャンク部は、工作機械に設けられる取付け台に挿入された状態で固定可能であり、
前記操作部は、前記シャンク部が前記取付け台に挿入された状態で、前記取付け台を挟んで前記チャック部とは反対側の位置、且つ、加工対象のワークとは対向しない位置に設けられ、
前記被把持体は、前記チャック部の側から前記操作部の側に向けて挿入可能に構成され、
前記チャック部は、前記被把持体を把持するスリーブと、前記スリーブの外周側に形成され、流体が充填された流体圧室と、を有し、該流体圧室内の前記流体の圧力が上昇することで前記スリーブが縮径されて前記被把持体が把持されるよう構成され、
前記操作部は、前記流体圧室に連通する連通路と、前記連通路に配置されて前記流体圧室内の前記流体の圧力を調整する加圧ピストンと、クーラントの供給源に接続可能なクーラント孔と、前記クーラント孔に連続し、前記クーラントを前記スリーブの内周側に供給するクーラント流路と、を有し、
前記連通路のうち、前記加圧ピストンが収容されて前記加圧ピストンの作動方向に沿う第1連通路は、前記チャック部の軸芯に直交する方向を基準にして前記シャンク部とは反対の側に向けて傾斜して設けられることで、当該ハイドロチャックを前記取付け台に隣接して複数取付ける際に、当該ハイドロチャックにおいて前記加圧ピストンの操作を行う治具が隣接する他のハイドロチャックに備えられた前記操作部に接触しないように構成され、
前記クーラント孔の開口および前記加圧ピストンが装着されたねじ孔の開口は、前記チャック部の軸芯方向視で、前記操作部において隣接して同じ側に配置され、且つ、前記シャンク部が前記取付け台に挿入された状態で、同じ方向から操作可能に構成されているハイドロチャック。
【請求項2】
長手方向の一端側に設けられ、先端側に被把持体を把持する円筒形状のチャック部を有するシャンク部と、
長手方向の他端側に設けられ、前記シャンク部に連続して配置される操作部と、を備え、
前記シャンク部は、工作機械に設けられる取付け台に挿入された状態で固定可能であり、
前記操作部は、前記シャンク部が前記取付け台に挿入された状態で、前記取付け台を挟んで前記チャック部とは反対側の位置、且つ、加工対象のワークとは対向しない位置に設けられ、
前記被把持体は、前記チャック部の側から前記操作部の側に向けて挿入可能に構成され、
前記チャック部は、前記被把持体を把持するスリーブと、前記スリーブの外周側に形成され、流体が充填された流体圧室と、を有し、該流体圧室内の前記流体の圧力が上昇することで前記スリーブが縮径されて前記被把持体が把持されるよう構成され、
前記操作部は、前記流体圧室に連通する連通路と、前記連通路に配置されて前記流体圧室内の前記流体の圧力を調整する加圧ピストンと、前記シャンク部よりも径外方向に突出した部分と、を有するハイドロチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ピストンにより加圧された流体が流体圧室に供給されることで流体圧室の内周側に配置されるスリーブを縮径させるハイドロチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チャックとして、油圧等を用いて切削工具等の被把持体を把持するハイドロチャックが用いられている(例えば特許文献1)。ハイドロチャックでは、流体圧室など必要な機構の設置領域が小さく、把持機構全体のサイズがコンパクトになる。
【0003】
ハイドロチャックは、例えばスイス型自動旋盤に用いられることがある。スイス型自動旋盤は、細長いバー材を連続加工する場合等に適した工作機械である。特許文献2には、スイス型自動旋盤等の工作機械の取付け台(刃物台)に取付け可能なハイドロチャックが開示されている。特許文献2に開示されたハイドロチャックは、切削工具を把持するチャック部の外周側に加圧ピストンが収容された操作部が設けられており、加圧ピストンの位置を変更することでチャック部に設けられた流体圧室の流体の圧力が調整される。スイス型自動旋盤においては、取付け台(刃物台)に複数のハイドロチャックが取付けられて、夫々のハイドロチャックに異なる切削工具が把持されている。スイス型自動旋盤は、取付け台に配置された複数の切削工具を用いてバー材等のワークを連続加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-29106号公報
【文献】欧州特許出願公開第1792679号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のスイス型自動旋盤では、高性能化に伴い搭載される切削工具の数は増加する傾向にあり、取付け台には複数の切削工具が接近した状態で配置されている。ここで、特許文献2に開示されるハイドロチャックでは、切削工具を把持するチャック部の外周側にチャック取付け穴より外径を大きくして加圧ピストンが収容された操作部が配置されている。そのため、ハイドロチャックは、取付け台に対して加工対象のワーク側から取付けられることになり、チャック部に把持された切削工具を取り外して交換する場合、近接する他の切削工具やチャック部に留意しつつ操作部の加圧ピストンを操作する必要がある。また、取付け台と加工対象のワークとの間のスペースが小さい場合には、安全性を重視して取付け台からハイドロチャック自体を取り外して切削工具を交換することがあり、ハイドロチャックの操作性が低くなる傾向にあった。
【0006】
そもそも、切削工具を把持した状態のハイドロチャックを加工物の側から取付け台に挿入するには、少なくとも切削工具のハイドロチャックからの突出し長さとハイドロチャックの全長との合計以上のスペースが必要となる。このため、ハイドロチャックには、所定長さ以上の突出し長さを有する切削工具を取付けることができない。また、ハイドロチャックにおいて操作部の外径が近接する他の切削工具やチャック部等に干渉するほど大きい場合には、ハイドロチャックは取付け台に取付けることができない。
【0007】
上記実情に鑑み、工作機械の取付け台に固定された状態において被把持体の着脱操作を安全に、簡易に行うことができるハイドロチャックが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るハイドロチャックの特徴構成は、長手方向の一端側に設けられ、先端側に被把持体を把持する円筒形状のチャック部を有するシャンク部と、長手方向の他端側に設けられ、前記シャンク部に連続して配置される操作部と、を備え、前記シャンク部は、工作機械に設けられる取付け台に挿入された状態で固定可能であり、前記チャック部は、前記被把持体を把持するスリーブと、前記スリーブの外周側に形成され、流体が充填された流体圧室と、を有し、該流体圧室内の前記流体の圧力が上昇することで前記スリーブが縮径されて前記被把持体が把持されるよう構成され、前記操作部は、前記流体圧室に連通する連通路と、前記連通路に配置されて流体圧室内の前記流体の圧力を調整する加圧ピストンと、を有する点にある。
【0009】
本構成によれば、ハイドロチャックは、工作機械の取付け台に固定された場合に、操作部が工作機械の取付け台を挟んでチャック部とは反対の側に位置する。取付け台を挟んでチャック部と反対の側は、加工対象のワークとは対向していないし、チャック部及び切削工具等の被把持体が存在しない。このため、本構成に係るハイドロチャックは、操作部の周囲に流体圧室内の流体の圧力を調整する加圧ピストンの操作スペースを確保し易い。したがって、ハイドロチャックにおいて、被把持体を着脱する際の加圧ピストンの操作性を安全に、容易に向上させることができる。また、取付け台に複数のハイドロチャックが固定される場合には、取付け台を挟んでチャック部とは反対の側には、複数の操作部が互いに近接することがある。しかしながら、操作部は加工対象のワークとは対向しないため、操作部は隣接する他の操作部を避けるだけで加圧ピストンの操作スペースを確保することができる。したがって、ハイドロチャックは、工作機械の取付け台に複数が固定された状態であっても、被把持体の着脱操作を容易に行うことができる。
【0010】
他の特徴構成は、前記操作部は、前記シャンク部よりも径外方向に突出した部分を有する点にある。
【0011】
本構成によれば、工作機械の取付け台にシャンク部の外径と同径のチャック取付け孔(貫通孔)を形成することで、ハイドロチャックをシャンク部の側から取付け台の当該チャック取付け孔に挿入して固定した場合、操作部を取付け台の外方に配置することができる。これにより、操作部においてシャンク部よりも径外方向に突出した部分を取付け台の外面に当接可能な形状にすることで、シャンク部をチャック取付け孔に挿入してハイドロチャックを取付け台に取付ける際に、突出した当該部分をストッパとして用いることができる。
【0012】
他の特徴構成は、前記操作部は、クーラントの供給源に接続可能なクーラント孔と、前記クーラント孔に連続し、前記クーラントを前記スリーブの内周側に供給するクーラント流路と、を有する点にある。
【0013】
本構成によれば、ハイドロチャックは、工作機械の取付け台に取付けられた状態において、当該取付け台を基準としてチャック部の側とは反対側の操作部からクーラントを被把持体に供給することができる。このように、ハイドロチャックにおいて、クーラントを供給するための機構と操作部が同じ側に存在し、容易に操作ができる。
【0014】
他の特徴構成は、前記連通路のうち、前記加圧ピストンが収容されて前記加圧ピストンの作動方向に沿う第1連通路は、前記チャック部の軸芯に直交する方向を基準にして前記シャンク部とは反対の側に向けて傾斜して設けられている点にある。
【0015】
加圧ピストンが収容された第1連通路は、チャック部の軸芯に直交する方向に配置すると、操作部においてチャック部の軸芯に沿う方向である長手方向の長さを最も短くすることができる。しかし、工作機械の取付け台において複数のハイドロチャックが互いに近接する場合には、第1連通路をチャック部の軸芯に直交する方向に配置すると、操作部の外部から治具を用いて加圧ピストンを操作する際に、隣接するハイドロチャックの操作部が治具の操作の邪魔になることがある。そこで、本構成では、第1連通路は、チャック部の軸芯に直交する方向を基準にしてシャンク部とは反対の側に向けて傾斜して設けられている。これにより、操作部の外部から治具によって加圧ピストンを操作する際に、当該治具は隣接するハイドロチャックの操作部との接触を避けつつ操作することができる。その結果、ハイドロチャックは、操作部において加圧ピストンの操作性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】は、スイス型自動旋盤の取付け台に取付けられた状態のハイドロチャックを示す概略図である。
図2】は、取付け台に固定された状態のハイドロチャックの断面図である。
図3】は、ハイドロチャックの内部構造を示す斜視透視図である。
図4】は、ハイドロチャックの斜視図である。
図5】は、ハイドロチャックの正面図である。
図6】は、ハイドロチャックの背面図である。
図7】は、ハイドロチャックの右側面図である。
図8】は、ハイドロチャックの左側面図である。
図9】は、ハイドロチャックの平面図である。
図10】は、ハイドロチャックの底面図である。
図11】は、取付け台に固定された状態の第2実施形態のハイドロチャックの断面図である。
図12】は、第2実施形態のハイドロチャックの斜視図である。
図13】は、第2実施形態のハイドロチャックの正面図である。
図14】は、第2実施形態のハイドロチャックの背面図である。
図15】は、第2実施形態のハイドロチャックの右側面図である。
図16】は、第2実施形態のハイドロチャックの左側面図である。
図17】は、第2実施形態のハイドロチャックの平面図である。
図18】は、第2実施形態のハイドロチャックの底面図である。
図19】は、別実施形態のハイドロチャックの斜視図である。
図20】は、図19のXX-XX矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るハイドロチャックの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1には、切削工具Cの取付け台Bを有するスイス型自動旋盤Aの一例が示されている。ハイドロチャック1は取付け台Bに複数配置され、夫々のハイドロチャック1にはワークWに対して切削等を行う各種の切削工具C(被把持体の一例、以下、工具Cと略称する)が把持されている。このように、ハイドロチャック1は、シャンク部2がスイス型自動旋盤Aの取付け台Bに挿入された状態で固定可能に構成されている。スイス型自動旋盤Aでは、旋盤のチャックによってワークWを挟持した状態で、ワークWを回転させるともに、複数の工具Cを有する取付け台BをワークWに向けて移動させる。これにより、複数の工具CによるワークWの連続加工が可能になる。
【0019】
図2図10に示すように、ハイドロチャック1は、長手方向の一端側に設けられたシャンク部2と、長手方向の他端側に設けられた操作部3と、を備える。操作部3はシャンク部2よりも径外方向に突出した部分3aを有する。図1及び図2に示すように、取付け台Bには、ハイドロチャック1を挿入するための貫通孔であるチャック取付け孔34と、側面からチャック取付け孔34まで貫通する複数のねじ孔35とが形成され、各々のねじ孔35に締付けねじ36が装着される。ハイドロチャック1には、シャンク部2の外周面の一部に平面部2aが形成され(図4参照)、平面部2aはシャンク部2の軸芯Xに沿って設けられている。取付け台Bにハイドロチャック1を固定するには、チャック取付け孔34に対して取付け台BのワークWに対向する側とは反対側からシャンク部2を挿入し、ねじ孔35から締付けねじ36をねじ込んで平面部2aに当接させる。
【0020】
図2図4に示すように、ハイドロチャック1のシャンク部2は、先端側に工具Cを把持する円筒形状のチャック部4を有する。チャック部4は、筒状部11と筒状部11の内周側に配置されるスリーブ12とによって構成されている。筒状部11には、内周側にチャック部4の軸芯Xの方向に沿って設けられる円筒状空間のスリーブ受け部13が形成されている。スリーブ12は、工具Cが挿入される挿入孔12aを軸芯Xと同軸芯に備える。スリーブ12は、筒状部11の先端側からスリーブ受け部13に嵌入される。スリーブ受け部13に嵌入されたスリーブ12は、スリーブ受け部13との間に水や油等の流体が充填される流体圧室14を形成する。こうして、チャック部4は、スリーブ12と流体圧室14とを有して構成される。
【0021】
図2に示すように、スリーブ12は、スリーブ本体15と、筒状部11の先端側に当接するフランジ16と、を有する。筒状部11に形成されたスリーブ受け部13は、フランジ収容部13aとスリーブ収容部13bとを有する。フランジ収容部13aは、筒状部11の先端側に設けられ、スリーブ12のフランジ16を収容する。スリーブ収容部13bは、フランジ収容部13aからシャンク部2の基部に向けて設けられ、スリーブ12のスリーブ本体15を収容する。スリーブ12は、例えばフランジ16とフランジ収容部13aとの間がろう付けされて筒状部11に接合される。スリーブ12と筒状部11とは他の接着剤を用いて接合してもよい。
【0022】
図2に示すように、スリーブ12は、スリーブ本体15の外周面に2つの環状溝17,18がチャック部4の軸芯Xに沿う方向に間隔を空けて形成されており、両環状溝17,18によってスリーブ本体15に薄肉部分15a,15bが形成される。両環状溝17,18とスリーブ収容部13bとにより、流体圧室14が形成されている。流体圧室14内の流体の圧力が高まると、薄肉部分15a,15bが軸芯Xに向けて膨出してスリーブ12が内周側に縮径する。
【0023】
尚、スリーブ12は、図2に示す形態に限定されるものではなく、例えば外周面に単一の環状溝を形成して薄肉部が軸芯Xに沿う方向に連続する形状であっても良い。
【0024】
図2図4に示すように、ハイドロチャック1の操作部3は、外面に、第1ねじ孔20と、エア抜き孔としての第2ねじ孔40と、クーラント孔50とを有する。操作部3は、流体圧室14に連通する連通路21を備えており、第1ねじ孔20と第2ねじ孔40とはそれぞれ連通路21に連通する。操作部3は、チャック部4の軸芯X方向の端面が、軸芯X方向に垂直な第1面部6と、第1面部6に対してチャック部4の側に傾斜する第2面部7とを有している。第1ねじ孔20は第2面部7に対して垂直方向に形成され、第2ねじ孔40及びクーラント孔50が第1面部6に形成されている。
【0025】
連通路21は、第1連通路31と、第2連通路32と、第3連通路33とを有する。第1連通路31は、第1ねじ孔20に連通して設けられ、後述のねじ部材22を収容してチャック部4の軸芯Xに交差する方向に配置されている。第1連通路31と第1ねじ孔20とは、同一軸芯上に形成されている。第2連通路32は、第1連通路31の端部と連通し、チャック部4の軸芯Xに沿う方向に配置されて流体圧室14に連通している。すなわち、第2連通路32は操作部3からシャンク部2に亘って設けられている。第3連通路33は、第2ねじ孔40に連通して設けられ、後述のねじ部材42を収容してチャック部4の軸芯Xに沿う方向に配置されている。第3連通路33と第2ねじ孔40とは、同一軸芯上に形成されている。第3連通路33の端部は第2連通路32と連通している。第1連通路31の内径は、第1ねじ孔20の内径よりも小さく設定されており、第3連通路33の内径は、第2ねじ孔40の内径よりも小さく設定されている。本実施形態において、第3連通路33は、第2連通路32と同一軸芯上に形成されている。
【0026】
第1ねじ孔20には、頭部22aと頭部22aよりも小径の先端部22bとを有するねじ部材22(加圧ピストンの一例)が装着されている。ねじ部材22の頭部22aにはねじ部が形成されている。ねじ部材22の先端部22bの外周面には、Oリングなどのシール部材23が設けられている。
【0027】
操作部3において、開閉可能な流体注入孔として第1ねじ孔20と第2ねじ孔40の2つのねじ孔が設けられている。これにより、ハイドロチャック1は、流体圧室14の内部に空気を滞留させることなく流体圧室14に流体を確実に充填することができる。
【0028】
ねじ部材22(加圧ピストン)は、第1ねじ孔20に先端部22bから挿入され、頭部22aのねじ部を第1ねじ孔20に螺入しながら先端部22bを第1連通路31に押し込まれる。これにより、ねじ部材22は、先端部22bのシール部材23が第1連通路31の内周面の全周にわたって密着する。その結果、流体圧室14から連通路21にわたって水や油等の流体が封入される。
【0029】
図1及び図2に示すように、第1連通路31に収容されたねじ部材22は、レンチT(回転操作具の一例)を用いてねじ部材22の軸芯周りに回転操作することによって、第1ねじ孔20及び連通路21に対するねじ込み量を調節することができる。
【0030】
ねじ部材22のねじ込み量を増加させて連通路21の容積を減少させると、連通路21と流体圧室14とにわたって封入される流体の圧力が上昇する。これにより、ハイドロチャック1は、スリーブ本体15の薄肉部分15a,15bが内周側に膨出してスリーブ12が縮径するので、チャック部4において工具Cを強力に把持することができる。
【0031】
一方、ねじ部材22のねじ込み量を減少させて連通路21の容積を増加させると、連通路21と流体圧室14とにわたって封入される流体の圧力が低下する。これにより、ハイドロチャック1は、スリーブ12が流体圧室14の側に拡径復帰してチャック部4の把持力が低下するので、チャック部4から工具Cを取り外すことができる。
【0032】
このように、スイス型自動旋盤Aにおいて、ハイドロチャック1は、シャンク部2が取付け台Bのチャック取付け孔34に挿入された状態で固定されることで、操作部3が取付け台Bを挟んでチャック部4とは反対の側の位置になる。操作部3が位置する、取付け台Bを挟んでチャック部4の側とは反対の側は、ワークWに対向しておらず、工具Cも存在しない。このため、ハイドロチャック1は、操作部3の周囲に流体圧室14内の流体の圧力を調整するねじ部材22の操作スペースを確保し易い。また、ねじ部材22は第2面部7に対して垂直方向に取り付けられている。したがって、ハイドロチャック1において、工具Cを着脱する際のねじ部材22の操作性を安全に、容易に向上させることができる。また、図1に示されるように、取付け台Bに複数のハイドロチャック1が固定された場合には、操作部3は隣接する他の操作部3を避けるだけでねじ部材22の操作スペースを確保することができる。したがって、ハイドロチャック1は、取付け台Bに複数のハイドロチャック1が固定された状態であっても、工具Cの着脱操作を容易に行うことができる。
【0033】
本実施形態では、ハイドロチャック1において、操作部3はシャンク部2よりも径外方向に突出した部分3aを有する。本構成によれば、取付け台Bにシャンク部2の外径と同径のチャック取付け孔34を形成することで、ハイドロチャック1を、シャンク部2側から取付け台Bのチャック取付け孔34に挿入して固定しつつ、操作部3を取付け台Bの外方に配置することができる。操作部3においてシャンク部2よりも径外方向に突出した部分3aは、取付け台Bの外面に当接可能な形状であるので、シャンク部2をチャック取付け孔34に挿入してハイドロチャック1を取付け台Bに取付ける際に、突出した当該部分3aをストッパとして用いることができる。
【0034】
図3に示すように、流体の連通路21のうち、操作部3において、ねじ部材22が収容されてねじ部材22の作動方向に沿う第1連通路31は、チャック部4の軸芯Xを横切るように設けられている。加えて、第1連通路31は、チャック部4の軸芯Xに直交する方向を基準にしてシャンク部2とは反対の側に向けて傾斜して設けられている。
【0035】
ハイドロチャック1の操作部3において、ねじ部材22が収容される第1連通路31が存在する領域の周囲は、当該第1連通路31が存在しない領域に比べて必然的に強度は低くなる。したがって、第1連通路31が操作部3の外周側に近い領域のみに存在した場合には、操作部3の強度が低下することになる。一方、本形態では、ハイドロチャック1の操作部3において、ねじ部材22が収容される第1連通路31がチャック部4の軸芯Xを横切るように設けられているので、第1連通路31が操作部3の中心寄りに位置する。これにより、操作部3は、外周近くにおける第1連通路31の占有領域を小さくできるので、操作部3の強度低下を抑制することができる。その結果、ハイドロチャック1の耐久性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、第1連通路31及びこれと同一軸芯上に形成された第1ねじ孔20は、チャック部4の軸芯Xに直交する方向を基準にしてシャンク部2とは反対の側に向けて傾斜し、かつ、第2面部7に垂直になるように設けられ、第1ねじ孔20にはねじ部材22が螺合されている。これにより、操作部3の外部からレンチTによってねじ部材22を操作する際に、当該レンチTは隣接するハイドロチャック1の操作部3との接触を避けつつ操作することができる。その結果、ハイドロチャック1は、操作部3においてねじ部材22の操作性を向上させることができる。また、第1ねじ孔20の傾斜する角度は、ねじ部材22の操作性が向上するように任意に角度を決めることができる。
【0037】
操作部3において、第1面部6に形成されたクーラント孔50は、クーラントの供給源に接続可能に設けられている。操作部3は、クーラント孔50に連続し、クーラントをスリーブ12の内周側に供給するクーラント流路51を有する。クーラント流路51は操作部3とシャンク部2とに亘って設けられている。
【0038】
本構成によれば、ハイドロチャック1において、取付け台Bのうちチャック部4の側とは反対側に配置される操作部3からクーラントを工具Cに供給することができる。例えば工具Cにチャック部4の軸芯Xに沿う貫通孔を形成することで、工具CからワークWに向けてクーラントを吐出することができる。ハイドロチャック1において、操作部3とクーラント孔50は、取付け台Bを挟んでチャック部4から隔離して同じ側に配置することができるため、操作性を高めることができる。また、ハイドロチャック1における、工具Cの着脱や工具Cの突出し長さの調整をハイドロチャック1とクーラント供給源との接続を解除することなく容易に行うこともできる。
【0039】
ハイドロチャック1において、操作部3には、ねじ部材22(加圧ピストン)が収容すされる第1連通路31が設けられている。操作部3では、自身の強度保持のために第1連通路31が軸芯Xに近い位置に配置されることがある。この場合には、操作部3に形成されるクーラント孔50を軸芯Xに近い位置に配置することができず、配置位置が制限される。そこで、本実施形態では、ハイドロチャック1の操作部3において、クーラント孔50は、軸芯Xから外れた位置に設けられている。これにより、クーラント孔50は、第1連通路31や第2ねじ孔40(エア抜き孔)との干渉を回避することができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
図11図18に示すように、ハイドロチャック1は、操作部3がシャンク部2とほぼ同径であって全体が直筒状に構成されてもよい。図11図18のハイドロチャック1は、図2に示されるハイドロチャック1(第1実施形態)のシャンク部2の外径を操作部3の外径と同じサイズまで大きくすることで、操作部3とシャンク部2とがほぼ同径になる。したがって、図11に示される取付け台Bのチャック取付け孔34は、図2に示される取付け台Bのチャック取付け孔34よりも大径になる。また、図示しないが、本実施形態のハイドロチャック1は、図2に示されるハイドロチャック1の操作部3の外径をシャンク部2の外径と同じサイズまで小さくすることで、操作部3とシャンク部2とがほぼ同径になるようにしてもよい。この場合、ハイドロチャック1の操作部3の外径を小さくすることに伴い、第1実施形態と比較して、操作部3に設けられる第1連通路31を短くしたり、第1連通路31を軸芯Xに対してより緩やかに傾斜させたりすることができる。他の構成については第1実施形態と同じある。
【0041】
本実施形態では、操作部3がシャンク部2とほぼ同径で構成されているので、シャンク部2の外径に相当するチャック取付け孔34に対し、シャンク部2のみならず操作部3を挿入させることもできる。これにより、ハイドロチャック1は、取付け台Bに取付ける際に、操作部3に阻害されることなく、両側から挿入することができ、軸芯Xに沿う方向における位置調整が可能になる。その結果、ハイドロチャック1において取付け台Bへの操作性が向上し、チャック部4の位置調整の自由度を高めることができる。
【0042】
〔他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、シャンク部2の外周面に1つの平面部2aを形成する例を示したが、平面部2aは複数形成してもよい。図19及び図20には、シャンク部2の外周面において周方向に離間した3つの平面部2aを形成した例を示す。シャンク部2の外周面において平面部2aに対して軸芯Xを挟んで対向する部分には、締付けねじ36からの入力を伝達できるようにシャンク部2の外周面の一部を残すように形成する。シャンク部2の外周面には、平面部2aを2つまたは4つ以上形成してもよい。
【0043】
(2)図1に示されるスイス型自動旋盤Aでは、取付け台Bの前面側(ワークWが配置された側)のみならず、取付け台Bの背面側(図1においてワークWが配置された側とは反対の側)に別のワーク(不図示)を配置して当該ワークを加工することがある。その場合には、例えば、チャック部の外周側に操作部を有する従来タイプのハイドロチャック(不図示)が、取付け台Bの背面側にチャック部が位置するように取付け台Bに取付けられる。そうなると、取付け台Bは、背面側において、ハイドロチャック1の操作部3と、従来タイプのハイドロチャックのチャック部及び操作部とが隣接して配置される。このため、ハイドロチャック1の操作部3は、隣接する従来タイプのチャック部及び操作部によって操作スペースが制限され安全上の要求が高くなる。しかし、取付け台Bの背面側からレンチTによって全てのハイドロチャックの操作部の操作が可能になるため、操作部3の操作性は低下しない。
【0044】
上述のように、ハイドロチャック1において、チャック部4に複数の平面部2aが設けられることで、締付けねじ36に押圧される平面部2aを適宜変更することができ、ハイドロチャック1は操作部3におけるねじ部材22の方向を変更することができる。これにより、複数の操作部3のそれぞれのねじ部材22の方向をレンチTの操作に適した角度に調整することができる。
【0045】
(3)上記の実施形態では、シャンク部2の外周面に平面部2aを形成する例を示したが、ハイドロチャック1はシャンク部2の外周面に平面部2aを形成せずに構成してもよい。
【0046】
(4)第1実施形態のハイドロチャック1では、操作部3がシャンク部2よりも径外方向に突出した部分3aを有し、当該部分3aが操作部3の全周に亘って設けられる例を示した。これに代えて、ハイドロチャック1は、操作部3においてシャンク部2よりも径外方向に突出した部分3aが操作部3の全周の一部に設けられる構成でもよい。
【0047】
(5)上記の実施形態では、チャック部4が有するスリーブ12がシャンク部2とは別部材で構成される例を示したが、スリーブ12はシャンク部2の一部分として一体的に形成してもよい。
【0048】
(6)上記の実施形態では、ハイドロチャック1において、操作部3は、クーラント孔50と、クーラント孔50に連続してスリーブ12の内周側に連通するクーラント流路51と、を有する例を示した。上記形態に代えて、ハイドロチャック1において、チャック部4の筒状部11に先端から軸芯Xに沿う吐出孔を形成し、クーラント流路51が当該吐出孔に連通する構成であってもよい。この場合には、クーラント孔50を介してクーラント供給源からクーラント流路51に供給されるクーラントは、筒状部11に形成された吐出孔から工具Cの外面又はワークWに向けて吐出される。クーラント流路51及び上記吐出孔は、軸芯Xを基準として任意の傾きを有して構成してもよい。この場合には、ワークWの加工条件に合わせてより適切な位置にクーラントを吐出することができる。クーラント流路51及び上記吐出孔に代えてスリーブ12の内周面にスリットを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、工作機械の取付け台に装着可能なハイドロチャックに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 :ハイドロチャック
2 :シャンク部
2a :平面部
3 :操作部
4 :チャック部
6 :第1面部
7 :第2面部
11 :筒状部
12 :スリーブ
13 :スリーブ受け部
14 :流体圧室
20 :第1ねじ孔
21 :連通路
22 :ねじ部材(加圧ピストン)
31 :第1連通路
32 :第2連通路
33 :第3連通路
34 :チャック取付け孔
35 :ねじ孔
36 :締付けねじ
40 :第2ねじ孔(エア抜き孔)
41 :ボール部材
42 :ねじ部材
50 :クーラント孔
51 :クーラント流路
A :スイス型自動旋盤
B :取付け台
C :切削工具(被把持体)
T :レンチ
W :ワーク
X :軸芯
図1
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