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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】タンク
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/22 20060101AFI20240110BHJP
   B65D 88/06 20060101ALI20240110BHJP
   B65D 90/02 20190101ALI20240110BHJP
   E04H 7/06 20060101ALI20240110BHJP
   E04H 7/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B65D90/22 A
B65D88/06 Z
B65D90/02 L
E04H7/06 301Z
E04H7/18 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020060355
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021155115
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000147729
【氏名又は名称】株式会社石井鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】591121111
【氏名又は名称】株式会社安部日鋼工業
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰之
(72)【発明者】
【氏名】湯山 芳夫
(72)【発明者】
【氏名】堅田 茂昌
(72)【発明者】
【氏名】田山 昇
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05201435(US,A)
【文献】特開昭63-135696(JP,A)
【文献】特開平08-120969(JP,A)
【文献】特開2012-092895(JP,A)
【文献】特開平09-041400(JP,A)
【文献】特開2003-185099(JP,A)
【文献】特開昭56-032277(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0037268(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/22
B65D 88/06
B65D 90/02
E04H 7/06
E04H 7/18
B65D 88/76
F17C 3/00
F23J 13/02
E03F 5/16
E02D 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵液に直接に接する鋼製の内槽と、通気可能な隙間をおいて該内槽の外側に設けたコンクリート製の側壁と、前記内槽と前記側壁を支持するコンクリート製の底版と、前記内槽の底板外周縁部に設けられ、かつ前記内槽と側壁との間の前記隙間の下部に開口部を有している排水溝と、前記底版内部を貫通し、かつ前記排水溝と通気可能に配置されている還流管又は貫通孔と、該還流管又は貫通孔に連通し、かつ前記側壁外側に突出して設ける気液分離槽と、該気液分離槽の上部に連通して設ける除湿送風装置と、前記隙間の上部と前記除湿送風装置とを接続する送気管とを具備し、前記隙間の気体を前記気液分離槽と除湿送風装置とを通って循環させるタンク。
【請求項2】
前記気液分離槽は、前記コンクリート製の側壁及び底版と連続するコンクリート製の躯体からなり、分離した液体を外部に排出する排液管と、前記分離した液体への前記貯蔵液の混入の有無を検知する検知器とを備える請求項1記載のタンク。
【請求項3】
前記気液分離槽は、前記排液管を介して油水分離装置に接続しており、該油水分離装置は、前記気液分離槽から排出される排液中に含まれる油と水とを分離するものである、請求項2に記載のタンク。
【請求項4】
前記除湿送風装置と前記油水分離装置と前記検知器の各装置が防爆ケーシングで覆われている請求項3に記載のタンク。
【請求項5】
前記排水溝は、前記側壁内周下部にあって、前記底板外周縁部に沿って円環状に形成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のタンク。
【請求項6】
前記側壁は、該側壁内周下部に前記底板外周縁部に沿って円環状に前記排水溝が形成されるように、内周側の下部の隅角部を一部切り欠いた前記底版上の側壁下部ユニットと、該側壁下部ユニット上の側壁上部ユニットとからなるプレキャストコンクリート構造とする、請求項1ないし5のいずれかに記載のタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料油などを貯蔵するコンクリート壁を備えたタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼製の内槽と、該内槽を囲繞するコンクリート製側壁と、内槽と側壁を支持するコンクリート製底版とで構成されるタンクにおいては、コンクリート製側壁と内槽側板との隙間やコンクリート底版と内槽底板との隙間に水や高湿度の空気が滞留した場合、鋼製の内槽の側板外面や底板裏面が腐食する原因となる。
【0003】
すなわち、底版の上に内槽を設置した後に、コンクリート製側壁を構築するタンクにおいては、打設したコンクリート側壁と内槽の側板との隙間やコンクリート製底版と内槽底板との隙間に、打設したコンクリートの水分や建設時の雨水が残留することがある。しかし、それらの水を完全に排除することは難しい。そのため、隙間に残留した水が直接に内槽の外面を濡らしたり、残留した水分で高湿度になった隙間の空気が接する内槽の外面で結露が繰り返されたりすることにより、鋼製の内槽外面が腐食するという問題があった。
【0004】
特許文献1の「二重殻タンクの製造方法及び二重殻タンク」の開示がある。内槽への試験用液体の貯留開始以降の期間で、内槽と外槽との隙間に予め存在する空気よりも乾燥した乾燥空気を供給する工程と、乾燥空気が供給された隙間にブランケットを設置する工程とを有する二重殻タンクの製造方法及び二重殻タンクが開示されている。
【0005】
特許文献2には「鋼製煙突」の開示がある。外面に保温材を巻装し内面が煙道を構成する内筒の内側に隙間を設けて内板を張設し、内筒の下方に、隙間に乾燥空気を流入させる配管および送風機を配置する鋼製煙突が開示されている。
【0006】
特許文献3には「液体移送装置」の開示がある。タンクに気液分離器を接続し、タンク内に気液混合状態の液体を圧縮空気で移送する際に、気液分離器で気体と液体に分離する液体移送装置が開示されている。
【0007】
特許文献4には「石油地下タンク」の開示がある。プレストレストコンクリート製の外槽と貯油用の内槽との間の空隙に溜まった液を排出し、排出する液を油と水に分離する油水分離手段を備えた石油地下タンクが開示されている。
【0008】
特許文献5には「油水分離装置」の開示がある。油タンクを囲繞する防油堤に排水装置と油水分離装置を設け、油水分離装置で油水を識別して、自動的に水のみを排水する油水分離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-92895号公報
【文献】特開平9-250733号公報
【文献】実開平1-77924号公報
【文献】特開昭56-32277号公報
【文献】実開昭60-71306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
鋼製の内槽と、該内槽を囲繞するコンクリート製側壁と、内槽と側壁を支持するコンクリート製底版とで構成されるタンクにおいて、内槽の設置時や側壁の構築時に、コンクリート製底版と内槽の底板との隙間や側壁と内槽側板との隙間には、雨水が浸入するだけでなく、打設したコンクリートの水分も残留することがあるが、タンク底部への排水管の設置だけでは、完全に排水することは難しい。また、タンクの供用時には残留水分により隙間の空気の湿気が保持されるため、内槽の外面で結露現象が繰り返される恐れがあり、鋼製の内槽の腐食防止の観点から問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、貯蔵液に直接に接する鋼製の内槽と、通気可能な隙間をおいて該内槽の外側に設けたコンクリート製の側壁と、前記内槽と前記側壁を支持するコンクリート製の底版と、前記内槽の底板外周縁部に設けられ、かつ前記内槽と側壁との間の前記隙間の下部に開口部を有している排水溝と、前記底版内部を貫通し、かつ前記排水溝と通気可能に配置されている還流管又は貫通孔と、該還流管又は貫通孔に連通し、かつ前記側壁外側に突出して設ける気液分離槽と、該気液分離槽の上部に連通して設ける除湿送風装置と、前記隙間の上部と前記除湿送風装置とを接続する送気管とを具備し、前記隙間の気体を前記気液分離槽と除湿送風装置とを通って循環させるタンクを提供する。
【0012】
また、本発明において、前記気液分離槽は、前記コンクリート製の側壁及び底版と連続するコンクリート製の躯体からなり、分離した液体を外部に排出する排液管と、前記分離した液体への前記貯蔵液の混入の有無を検知する検知器とを備えることができる。
【0013】
さらに、前記気液分離槽は、前記排液管を介して油水分離装置に接続しており、該油水分離装置は、前記気液分離槽から排出される排液中に含まれる油と水とを分離するものでありうる。
【0014】
前記除湿送風装置と前記油水分離装置と前記検知器の各装置が防爆ケーシングで覆うことができる。
【0015】
前記排水溝は、前記側壁内周下部にあって、前記底板外周縁部に沿って円環状に形成されることができる。
【0016】
前記側壁は、該側壁内周下部に前記底板外周縁部に沿って円環状に前記排水溝が形成されるように、内周側の下部の隅角部を一部切り欠いた前記底版上の側壁下部ユニットと、該側壁下部ユニット上の側壁上部ユニットとからなるプレキャストコンクリート構造とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタンクは、コンクリート製の側壁と鋼製の側板の隙間に循環させる気体と、隙間から排出される雨水等の液体とを分離し、除湿送風装置内に前記液体が吸引されることを防止するとともに、鋼製の内槽の腐食等による貯蔵液の漏洩の有無を検知して安全に供用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る地上式二重殻平底円筒形タンク1の第1態様の側面図と断面図である。
図2】本発明に係る地上式二重殻平底円筒形タンク1の第2態様の側面図と断面図である。
図3図1のA部の拡大図で、側壁3外側に気液分離槽16を設置する事例を示す説明図である。
図4図2のB部の拡大図で、気液分離槽16と油水分離装置13を接続する事例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る地上式二重殻平底円筒形タンク(以下、「タンク」と称する)の実施形態例について図1から図4を参照しながら説明する。なお、本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の構成要素の省略または付加、構成要素の形状等の実施形態の変更を加えることが出来るのはもちろんである。また、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略した。
【0020】
図1図2は、本発明の2つ実施形態に係るタンク1の第1、第2態様の側面図と断面図で、24は地盤、3は側壁、4は内槽、25は貯蔵液を示す。このタンク1は、鋼製の内槽4と該内槽4を囲繞して配設されるコンクリート製の側壁3とを備えた構造を有する。タンク1の貯蔵液25は、燃料油等である。
内槽4は、地盤24上に打設したコンクリート製の底版2上に設置され、底板5と、底板5上に立設した筒体状の側板6からなる構造であり、内槽4の上部には、固定屋根26が設置されている。
側壁3は、コンクリート製の底版2上に構築した内槽4を囲繞するコンクリート製の円筒状の構造体である。
内槽4の側板6外面と側壁3内面との間の隙間を、該隙間上端部の開口部をシール部材29で閉塞した空間とするとともに、側板6の上部外側面から突出しコンクリート製側壁3上部を覆う鍔状の雨水浸入防止用の覆い部9を備え、雨水が隙間に浸入しない構造となっている。
【0021】
本実施態様においては、鋼製の内槽4の構築に続いて、コンクリート製の側壁3を構築する。側壁3を構築する際に内槽と側壁との隙間に浸入して滞留した雨水を除去すると共に、隙間の湿度を低く維持するために、隙間に乾燥空気等の気体を送り込んで循環させることにより鋼製の内槽の防食を図る。
以下、隙間に循環させる気体として乾燥空気Dを使用する事例について説明する。図面において、乾燥空気Dの流れを矢印で示す。なお気体は、乾燥空気に限らず、除湿効果を有する種々の気体を使用することが可能である。
【0022】
本実施態様においては、タンク1は、貯蔵液25に直接に接する鋼製の内槽4と、該内槽4の外側に設けたコンクリート製の側壁3と、コンクリート製の底版2とを備える。内槽4の側板6と側壁3との間に隙間を設ける。隙間は、隙間上端部の開口部を閉塞した空間とする。
気液分離槽16は、側壁3及び底版2の外側に連続的に突出して設けるコンクリート製の躯体からなり、該気液分離槽16内部の上部空間に除湿送風装置12を収納する。除湿送風装置12及び気液分離槽16と、内槽4と側壁3との隙間は、隙間の気体を循環可能に接続した管路等で接続されている。管路は、除湿送風装置12の送気口11から側壁3外を立ち上がり、側壁3上部で側壁3を貫通して隙間上部に達する送気管10と、隙間下部で排水溝23を介して底版2を貫通し、気液分離槽16に達する還流管14とで構成される。なお、還流管14を設置せず、コンクリート製の躯体に孔を形成した貫通孔37とすることも可能である。
排水溝23は、底板5外周縁部の側壁3下部に設け、内槽4と側壁3との隙間下部に開口部20を有している。
すなわち、本実施態様のタンク1は、内槽4と側壁3との隙間の気体を、側壁3外側の突出部に設けた気液分離槽16及び除湿送風装置12とそれらに接続する管路や排水溝23を通って循環させる構造とする。
【0023】
除湿送風装置12等は、外部電源(図示しない)により、基本的に連続的に運転するものであるが、間歇運転も可能である。外部電源にソーラーパネル(太陽電池)を使用したり、夜間は停止し昼間だけ運転する間歇運転とする等の様々な運用が可能である。
【0024】
還流管14は、底版2の上面に設けた溝(図示しない)に嵌め込んで敷設しても良い。
【0025】
送気管10より隙間に送り込まれた乾燥空気Dは、隙間で吸湿した空気を押し出すと同時に、建設時の浸入水や内槽4表面に発生した結露から湿気を吸収し、吸湿空気となって還流管14から気液分離槽16に排出される。隙間に溜まっている建設時の浸入水や結露水、場合によっては内槽4の腐食によって漏洩した貯蔵液25が吸湿空気と共に気液分離槽16に排出され、気液分離槽16において吸湿空気と貯蔵液25が混合した水とに分離される。
気液分離槽16で分離された吸湿空気のみが、除湿送風装置12の吸込口8から除湿送風装置12内に吸い込まれて除湿された後、乾燥空気として除湿送風装置12の送気口11から送気管10を介して再び隙間に送り込まれ循環する。
【0026】
なお、除湿送風装置12において吸湿空気から分離されて発生したドレン水は、気液分離槽16で回収する。
【0027】
気液分離槽16は、分離した液体F、すなわち水または貯蔵液25が混合した水を外部に排出する排液管19を備える。また、分離した液体Fに貯蔵液25が含まれる場合に備え、貯蔵液25混入の有無を検知する検知器21を備える。
【0028】
検知器21は、内槽4の貯蔵液25である燃料油O等を検知することが可能である。内槽4の側板6や底板5に腐食やその他の損傷による貫通孔や亀裂が生じた場合には、気液分離槽16中の水に漏洩した貯蔵液25が混入することから、検知器21を備えることにより、タンク1外の遠隔から内槽4の損傷を知ることが可能であるだけでなく、環境に有害な貯蔵液25がタンク1外に漏出することを防ぐことが可能である。
【0029】
検知器21は、油分検知部21aと油分検知信号を送風制御器36に送信する送信制御部21bとから構成される。送風制御器36は、送信制御部21bからの油分検知信号に基づいて除湿送風装置12をON/OFF制御することを可能にする。それと共に、タンク1の制御室28に油分検知信号を送信し、排水中への油分混入を遠隔から監視することを可能にする。例えば、検知器21が燃料油O等の貯蔵液25を検知した場合に、制御室28の管理者に表示やブザー等の音声によって通報する。
【0030】
すなわち検知器21を気液分離槽16内に設置することにより、内槽4の損傷等の早い段階で、タンク1の運用を停止し、貯蔵液25を移送するなどの対策が可能であり、更にはタンク1内の点検や補修にも早期に対応可能となる。
【0031】
排液管19に開閉弁22を接続する。開閉弁22は緊急遮断弁とし、地震や津波による振動や衝撃を受けた場合等に自動的に閉止する機構を有し、排液管19を介して隙間内への津波の浸入を防止する。
【0032】
図1は、送気管10が側壁3上部を貫通する構造の事例であり、図2は送気管10を側壁3上面に敷設する構造の事例である。なお、送気管10は、タンク容量の大きさに応じて単数又は複数設けることとし、複数設ける場合には、タンクの外周長を等分割した位置に設けることができる。
【0033】
図2のように、側壁3上部の覆い部9とコーキング部を貫通するように送気管10を配設する構造とすることも可能である。
【0034】
図1図2は、送られた乾燥空気Dが隙間の上部から下部へと流れるタンク1の事例を示している。
図1の除湿送風装置12から送風された乾燥空気Dが循環する流れについて説明する。除湿送風装置12から送風された乾燥空気Dは送気管10を経て、側壁3上部から隙間上部に送り込まれ、隙間下部に向かって送気される。乾燥空気Dは、隙間を流れる過程で湿った空気Mとなり、単数又は複数配置した還流管14又は貫通孔37から気液分離槽12に排気される。
【0035】
還流管14又は貫通孔37は、隙間の最下部及び底板5外周縁部の排水溝23と通気可能に配置し、空気を通すだけでなく、隙間内の残留雨水や結露水を排水する排水管を兼ねており、タンク1外周部に向けて排液されるように、底版2の外方側に向けて低くなるように勾配を設ける。還流管14又は貫通孔37は、さらに内槽4の腐食損傷等による貯蔵液25の漏洩を検知するための漏洩検知管としての機能も有している。
【0036】
湿った空気Mは、還流管14又は貫通孔37から隙間内の残留雨水や結露水、或いは漏洩した貯蔵液25等とともに排気され、気液分離槽16で湿った空気Mと液体Fに分離される。湿った空気Mは、除湿送風装置12の吸込口8から除湿送風装置12内に吸い込まれて除湿された後、乾燥空気Dとなり、吐出口11から送気管10を経て、再び側壁3と側板6との隙間に送気される。また、分離された液体Fは、気液分離槽16に接続された排液管19からタンク1外に設けた油水分離装置13に排液され、水Wと油Oに分離される。
【0037】
還流管14又は貫通孔37を通気用としてだけでなく排水管及び漏洩検知管として兼用することにより、排水管、漏洩検知管を別途設ける場合と比べて、施工費やメンテナンスの費用を削減することができる。また、隙間の上部から下部に乾燥空気Dを流すことにより、タンク施工時にコンクリート側壁3と内槽4の隙間に浸入した雨水や、タンク供用時に鋼製の内槽4の外面で生じた結露水を効率的に排出することができる。
【0038】
タンク1は、側板6外面と側壁3内面との間の隙間に通気性の緩衝材層(図示しない)を設ける構造としても良い。緩衝材層は、内槽4の側板6外周面と側壁3内周面に当接して介装する。緩衝材層は、難燃性を有し、連続気泡タイプ等の通気性素材で形成する。例えば、合成繊維不識布、難燃ウレタン、難燃ゴム等の材料で形成することができる。緩衝材層の厚さは数ミリから数10ミリ程度である。
【0039】
本実施態様によれば、タンク1は、側壁3の側面の上端部が内槽4の側板6の上端部より低い高さに位置している。緩衝材層を設ける場合、緩衝材層は、側板6外面と側壁3内面との隙間内に必要な高さ分設けることとする。
【0040】
図2の側壁3は、底版2上に載置される側壁下部ユニット3aと、その上の側壁上部ユニット3b、3c、3dとで形成したプレキャストコンクリート構造である。
【0041】
図3は、図1のA部の拡大図で、側壁3外側に気液分離槽16を設置する事例を示す説明図である。還流管14は、底版2外周縁部から内槽4の中心方向に向けて複数配置され、各々の還流管14の開口部15が隙間の下部及び底板5外周縁部の排水溝23と通気可能に接続されている。なお、還流管14は鋼管等ではなく、コンクリート側壁3に開口した貫通孔37として形成することも可能である。
以下、側壁3の下部を貫通して還流管14を設ける事例について説明する。
【0042】
送気管10の開口部11から供給された乾燥空気Dは、側壁3と側板6の隙間を上部から下部に向かって流れ、側板6表面側の湿気、水分を乾燥空気Dで除去し、側板6の腐食を防止することが可能である。また、還流管14の開口部15を底板5の外周縁部よりも下方に位置した排水溝23底部近傍に設けることにより、隙間の上部から下部に向かって乾燥空気Dを送風し、雨水と共に排出する際に、排水効果を向上することができる。さらに、底板5の外周縁部に設ける排水溝23近傍に開口部15を設けることにより、排水効率が更に向上する。
【0043】
図3のように、側壁3の内周下部に空間を有するようにスペーサ17を底板5外周縁部の底版2上に載置してコンクリートを打設することにより、側壁3内周下部に底板5外周縁部に沿って円環状に排水溝23を形成する。スペーサ17は、側壁3内周下部の全周に設けるか、或いは所定の間隔毎に設けることとする。
【0044】
排水溝23の上部側面には、隙間下部と通気可能に開口部20が設けてあり、排水溝23の下部に還流管14が接続している。隙間を流れて戻ってきた吸湿空気Mは、排水溝23の開口部20から還流管14へと流れ、気液分離槽16に排出される。
【0045】
図4は、図2のB部の拡大図で、気液分離槽16に排液管19を介して油水分離装置13を接続する事例である。油水分離装置13は、気液分離槽16から排出される排液Fを水Wと漏洩した貯蔵液25に分離する。油水分離装置13は、水Wを排水する排水管31と燃料油O等を排出する排油管32とを有する。なお、気液分離槽16及び油水分離装置13は、別体ではなく、気液分離と油水分離機能を一体化した装置を使用しても良い。
【0046】
プレキャスト側壁3の下部ユニット3aの内周側の下部の隅角部を一部切り欠いて成形し、底板5外周縁部に沿って排水溝23の片側側部及び上部を形成する構造とする。
【0047】
除湿送風装置12、気液分離槽16或いは油水分離装置13は、タンク規模や送風量に応じて、単数又は複数設ける。
【0048】
なお、隙間の上部に直接に連通した送気管10の開口部を斜め下方向に向けて乾燥空気Dを噴出し、乾燥空気Dが隙間の上部から下部へと旋回するように流すことも可能である。
【0049】
前記の構造を採用することにより、乾燥空気Dは、側板6の外周に沿って旋回し、側板6の外周面に万遍なく供給できる。
【0050】
除湿送風装置12、気液分離槽16、油水分離装置13の各装置は、防爆ケーシング(図示しない)で覆う構造とする。
【0051】
上記の本発明の各実施態様のタンク1は、下記の効果を少なくとも1以上有している。
側壁3と側板6との隙間に乾燥空気D等の除湿効果を有する気体を流通させ、側板6の腐食を防止することができる。
気体を循環させることにより、気体を循環させずに排気する場合と比較して、送風時に必要なエネルギー等を節約することができる。
還流管14又は貫通孔37は、空気を循環させる管路と排水管及び漏洩検知管の3つの機能を兼ねており、施工費やメンテナンス費用を削減することができる。
内槽4からの貯蔵液25の漏洩をタンク1外から監視でき、内槽4の腐食や損傷の早期発見に繋げることができる。
タンク施工時や供用時に隙間下部及び底板5下部に溜まった雨水や結露水等を乾燥空気D等の気体と共に排液し、効率的かつ安全に処理することができる。
気液分離槽16を設けることにより、気体のみが除湿送風装置12に送られるため、排液を吸引して除湿送風装置12が故障することがない。
気液分離槽16に油水分離装置13を接続することにより、排出される液体Fから燃料油O等の貯蔵液25を分離し、環境の汚染を防止し、安全に処理することが可能となる。
気液分離槽16に検知器21を設置し、検知データに基づいて、除湿送風装置12をON/OFF制御することにより、除湿送風装置12を自動で停止する等の処置を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 タンク
2 底版
3 側壁
4 内槽
5 底板
6 側板
7 トップアングル
8 吸込口
9 覆い部
10 送気管
11 送気口
12 除湿送風装置
13 油水分離装置
14 還流管
15 開口部
16 気液分離槽
17 スペーサ
18 サポート
19 排液管
20 開口部
21 検知器
21a 油分検知部
21b 送信制御部
22 開閉弁
23 排水溝
24 地盤
25 貯蔵液
26 固定屋根
27 吐出口
28 制御室
29 シール部材
29a 貫通部
30 レベルスイッチ
31 排水管
32 排油管
33 開閉弁
34 開閉弁
35 開口部
36 送風制御器
37 貫通孔
D 乾燥空気
M 湿った空気
F 液体
W 水
O (燃料)油
図1
図2
図3
図4