(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/36 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
E06B7/36 F
E06B7/36 H
(21)【出願番号】P 2020071009
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】高畠 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】長 正真
(72)【発明者】
【氏名】浅田 寿男
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-8649(JP,A)
【文献】特開2019-190018(JP,A)
【文献】特開2009-203663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸と指はさみ防止ストッパーと回転制限機構とを備え、指はさみ防止ストッパーは、回転により戸の戸先より出没自在であり、戸を開けたときに戸の戸先より突出するものであり、回転制限機構は、戸と指はさみ防止ストッパーとをつなぐ連結板と、連結板を指はさみ防止ストッパーと戸にそれぞれ取り付ける軸と、戸側の軸を案内する長い案内溝と短い案内溝とを有し、戸を通常の速度で閉めたときは戸側の軸が長い案内溝に進入することで指はさみ防止ストッパーが回転して戸内に没入し、戸を通常の速度より勢いよく閉めたときには戸側の軸が短い案内溝に進入することで指はさみ防止ストッパーの回転を制限して突出した状態に維持することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸を閉鎖する際の指はさみを防止できる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室への出入口に用いられる建具として、片引き戸が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。引戸においては、戸を閉じる際の指はさみを防止するために、引戸が閉じ切る手前で引戸を停止させるストッパーを設けることがあるが、引戸を閉鎖する際にその都度ストッパーの解除操作を行うことが煩わしく感じられる場合があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】三協立山株式会社 三協アルミ社発行のカタログ「出入口 総合カタログ」(カタログNo.STJ1441A KY.18.04-200)、2018年4月、p.150-153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、必要なときだけストッパーを働かせて指はさみを防止できる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、戸と指はさみ防止ストッパーと回転制限機構とを備え、指はさみ防止ストッパーは、回転により戸の戸先より出没自在であり、戸を開けたときに戸の戸先より突出するものであり、回転制限機構は、戸と指はさみ防止ストッパーとをつなぐ連結板と、連結板を指はさみ防止ストッパーと戸にそれぞれ取り付ける軸と、戸側の軸を案内する長い案内溝と短い案内溝とを有し、戸を通常の速度で閉めたときは戸側の軸が長い案内溝に進入することで指はさみ防止ストッパーが回転して戸内に没入し、戸を通常の速度より勢いよく閉めたときには戸側の軸が短い案内溝に進入することで指はさみ防止ストッパーの回転を制限して突出した状態に維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による建具は、戸と指はさみ防止ストッパーと回転制限機構とを備え、指はさみ防止ストッパーは、回転により戸の戸先より出没自在であり、戸を開けたときに戸の戸先より突出するものであり、回転制限機構は、戸と指はさみ防止ストッパーとをつなぐ連結板と、連結板を指はさみ防止ストッパーと戸にそれぞれ取り付ける軸と、戸側の軸を案内する長い案内溝と短い案内溝とを有し、戸を通常の速度で閉めたときは戸側の軸が長い案内溝に進入することで指はさみ防止ストッパーが回転して戸内に没入するため、特別な操作を行うことなく戸を閉め切ることができ、戸を通常の速度より勢いよく閉めたときには戸側の軸が短い案内溝に進入することで指はさみ防止ストッパーの回転を制限して突出した状態に維持するので、指はさみを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図6に示す建具の指はさみ防止装置の周辺を拡大して示す正面図であって、戸を開けたときの状態を示す。
【
図2】同建具の指はさみ防止装置の周辺を拡大して示す正面図であって、ストッパーが働いたときの状態を示す。
【
図3】同建具の指はさみ防止装置の周辺を拡大して示す正面図であって、戸を閉め切ったときの状態を示す。
【
図4】同建具の戸先側を拡大して示す横断面図であって、ストッパーが働いたときの状態を示す。
【
図5】同建具の戸先側を拡大して示す横断面図であって、戸を閉め切ったときの状態を示す。
【
図6】本発明の建具の一実施形態を示す脱衣室側から見た正面図である。
【
図7】戸を通常の速度で閉めたときの指はさみ防止装置の動きを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~7は、本発明の建具の第一実施形態を示している。本建具は、浴室への出入口に設置される浴室戸に適用したものであって、
図6に示すように、枠8と、上下枠9,10に沿って摺動する一枚の戸1とを備える片引き戸となっている。
枠8は、上枠9と下枠10と左右の縦枠11,11とを枠組みして構成され、浴室と脱衣室との間の開口部に取付けられる。枠8の脱衣室側から見て略左半分の開口部には固定パネル12が取付けられており、枠8の脱衣室側から見て略右半分の開口部を戸1で開閉するようになっている。
戸1は、上框13と下框14と戸先框15と戸尻框16とを框組みし、その枠内にパネル17を嵌め込んで構成してある。戸先框15には、上下方向の中間部に戸1を開閉操作するための引手18が取付けてある。また、戸先框15の引手18よりも高い位置には、戸1を閉鎖する際の指はさみを防止するための指はさみ防止装置19を設けてある。
【0009】
指はさみ防止装置19は、
図1~5に示すように、戸先框15に戸先側から埋め込んで取付けたケース20と、ケース20に軸支され起倒により戸1の戸先より出没する指はさみ防止ストッパー2と、戸1を閉める際の戸1の速度に応じて指はさみ防止ストッパー2の動きを制御する回転制限機構3とを有している。
ケース20は、金属の板で戸先側が開口した箱型に形成され、
図1に示すように、下部に指はさみ防止ストッパー2の回転軸となる軸21が固定して設けてある。ケース20の上部には、
図3に示すように、指はさみ防止ストッパー2が回転してケース20に収納されたときに指はさみ防止ストッパー2と当接し、指はさみ防止ストッパー2が戸尻側に倒れるのを規制するストッパー22が設けてある。
指はさみ防止ストッパー2は、硬質樹脂で略長方形の板状に形成され、軸21を支点に起倒自在にケース20に取付けてある。指はさみ防止ストッパー2の先端部の下面側のコーナー部23は、円弧状に面取りしてある。
【0010】
回転制限機構3は、
図1に示すように、戸1と指はさみ防止ストッパー2とをつなぐ連結板4と、連結板4を指はさみ防止ストッパー2と戸1にそれぞれ取り付ける軸5a,5bと、戸1側の軸5bを案内する長い案内溝6及び短い案内溝7と、戸1を開けた状態のときに戸1側の軸5bが係止する戸開時係止溝28と、戸開時係止溝28から長い案内溝6に接続する接続溝30を有している。
長い案内溝6と短い案内溝7と戸開時係止溝28と接続溝30は、ケース20の見付壁24に設けてあり、連結板4は指はさみ防止ストッパー2の回転軸(軸21)よりも上方で、ケース20と指はさみ防止ストッパー2をつないでいる。
短い案内溝7は、戸開時係止溝28の戸先側溝壁28aと連続するように戸先側から戸尻側に向かって斜め上向きに直線的に設けてある。接続溝30は、戸開時係止溝28と短い案内溝7の中間位置から戸開時係止溝28の戸尻側溝壁28bと連続し戸尻側に水平にのびる水平部30aと、水平部30aと連続する円弧部30bを有している。長い案内溝6は、接続溝30の円弧部30bと連続して戸尻側に傾斜して斜め上向きに、短い案内溝7よりも長く設けてある。
戸1を開けた状態では、
図1に示すように、戸1側の軸5bは戸開時係止溝28に係止しており、指はさみ防止ストッパー2は、連結板4でケース20と連結されることで水平よりやや上向きに傾いた状態に維持されている。
【0011】
戸先側の縦枠11の内周側面には、指はさみ防止装置19と対向する位置に受け部品25が取付けてある。受け部品25は、戸1を閉めたときに指はさみ防止ストッパー2の先端部の円弧状のコーナー部23が当接する上向きの傾斜面26を有している。
【0012】
図7は、戸1を通常の速度で閉めたとき、すなわち、引手18を持った状態で普通に戸1を閉めたときで、指はさみのおそれがないときの指はさみ防止装置19の動きを示している。
戸1を通常の速度で閉めると、
図7(a)に示すように、指はさみ防止ストッパー2先端部のコーナー部23が受け部品25の傾斜面26に当たって上向きに押されることで、指はさみ防止ストッパー2が上向きに回転する。
指はさみ防止ストッパー2の回転に伴い、連結板4の戸1側の軸5bが連結板4により戸尻側に押されることで、
図7(b)に示すように、連結板4の戸1側の軸5bが戸開時係止溝28の戸尻側溝壁28bに沿って接続溝30の水平部30aに進入する。
その後、
図7(c)に示すように、指はさみ防止ストッパー2がさらに回転するにつれて連結板4の戸1側の軸5bが接続溝30の円弧部30bから長い案内溝6へと進入することで、指はさみ防止ストッパー2が回転してケース20内に収納されるので、戸1を閉め切ることができる。その後、戸1を開けると指はさみ防止ストッパー2は自重で倒れ、
図1の状態に戻る。
【0013】
このように本建具は、戸1を通常の速度で閉めたときは、連結板4の戸1側の軸5bが長い案内溝6に進入することで指はさみ防止ストッパー2の回転を許容するので、戸1が閉まるにつれて指はさみ防止ストッパー2が自然に回転してケース20に収納され、ストッパーを解除する特別な操作が不要なので、使い勝手が良い。
【0014】
一方、戸1を通常の速度より勢いよく閉めたとき、例えば、何らかの原因で引手18が戸先側に強く押され、その反動で戸1が勢いよく閉まったような場合には、
図2に示すように、指はさみ防止ストッパー2の先端部が縦枠11の受け部品25に衝突するのに伴い、連結板4の戸1側の軸5bが戸開時係止溝28の戸先側溝壁28aに沿って瞬間的に上方に移動して短い案内溝7に進入することで(図中の矢印27参照)、指はさみ防止ストッパー2の回転が制限されて突出した状態に維持され、指はさみ防止ストッパー2により縦枠11と戸1との間に間隔29が形成されるので、指はさみが防がれる。
【0015】
このように本建具は、戸1を通常の速度で閉めたときには、指はさみ防止ストッパー2が自動的に回転してケース20内に収納されるので、特別な操作を行うことなく戸1を閉め切ることができ、戸1を通常の速度より勢いよく閉めたときには、指はさみ防止ストッパー2の回転が制限されて指はさみを防止することができ、使い勝手の良さと安全性を両立できる。
【0016】
以上に述べたように本建具は、戸1と指はさみ防止ストッパー2と回転制限機構3とを備え、指はさみ防止ストッパー2は、回転により戸1の戸先より出没自在であり、戸1を開けたときに戸1の戸先より突出するものであり、回転制限機構3は、戸1と指はさみ防止ストッパー2とをつなぐ連結板4と、連結板4を指はさみ防止ストッパー2と戸1にそれぞれ取り付ける軸5a,5bと、戸1側の軸5bを案内する長い案内溝6と短い案内溝7とを有し、戸1を通常の速度で閉めたときは戸1側の軸5bが長い案内溝6に進入することで指はさみ防止ストッパー2が回転して戸1内に没入するため、特別な操作を行うことなく戸1を閉め切ることができ、戸1を通常の速度より勢いよく閉めたときには戸1側の軸5bが短い案内溝7に進入することで指はさみ防止ストッパー2の回転を制限して突出した状態に維持するので、指はさみを防止することができる。
また本建具は、戸1に取付けたケース20を有し、ケース20に指はさみ防止ストッパー2が突没自在に軸支してあり、戸1側の軸5bは連結板4とケース20との間に設けてあり、ケース20の見付壁24に長い案内溝6と短い案内溝7とが設けてあるので、指挟み防止ストッパー2をケース20ごと戸1に取付ければよく、指挟み防止ストッパー2を戸1に容易に取付けできる。また、既存の戸1に後から指はさみ防止ストッパー2を取付けるのも容易である。
本建具は、ストッパーを解除するための操作部が不要であり、戸1の見付面に指はさみ防止装置19の部品が露出しないので、意匠性も良い。
【0017】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。指挟み防止ストッパーや連結板の形状や材質、長い案内溝と短い案内溝の形状等は、適宜変更することができる。戸の構造は問わない。指挟み防止ストッパーは、実施形態のように自重で倒れるものの他、バネの付勢力で倒れるものであってもよい。本発明は、浴室戸に限らず、引戸を備えるあらゆる建具に適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 戸
2 指はさみ防止ストッパー
3 回転制限機構
4 連結板
5a,5b 軸
6 長い案内溝
7 短い案内溝