(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作付スケジュール算出装置、作付スケジュール算出プログラム、及び、作付スケジュール算出方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240110BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240110BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240110BHJP
G06Q 10/0631 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 603
G06Q10/04
G06Q10/0631
(21)【出願番号】P 2019114295
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-06-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年農林水産省「戦略的プロジェクト研究推進事業 AIを活用した食品における効率的な生産流通に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北 栄輔
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2015/173875(JP,A1)
【文献】再公表特許第2017/164097(JP,A1)
【文献】特開2018-205850(JP,A)
【文献】特開2017-169511(JP,A)
【文献】特開2013-051887(JP,A)
【文献】特開2018-173917(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108346069(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物についての少なくとも1つの作付日、及び、前記作付日に作付けされる前記作物の量である作付量を算出する作付スケジュール算出装置であって、
n日分(nは1以上の予め定められた整数)の前記作付日の各々を示す変数をx
i(iは1以上n以下の整数)、x
iにおける前記作付量を示す変数をw
i、前記作物を収穫する日である収穫日を示す変数をy、前記作物の需要量の変動要因を示す変数をu、前記作物の生育環境を示す変数をz、予め定められた閾値をH0とし、
yの値として、m日分(mは1以上の整数)のそれぞれの前記収穫日を示すy
j(jは1以上m以下の整数)を取得すると共に、u及びzの値を取得する取得部と、
式(1)に基づきx
i及びw
iを算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、前記取得部により取得されたu及びzの値が設定されていると共に、yの値としてy
1~y
mがそれぞれ設定されたm個の式(1)を求め、これらの式(1)を連立不等式として解くことで、x
i及びw
iを算出する
作付スケジュール算出装置。
【数1】
なお、g(y
j、u)は、y
j、uを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、uの値が示す変動要因に応じた予測値であって、収穫日y
jに収穫された前記作物の需要量の予測値を示し、f(x
i、y
j、z)は、x
i、y
j、zを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、zの値が示す生育環境に応じた予測値であって、作付日x
iにおける前記作物の単位作付量の前記作付から得られる、y
jにおける収穫量の予測値を示す、x
iを変数とする関数である。
【請求項2】
作物についての少なくとも1つの作付日、及び、前記作付日に作付けされる前記作物の量である作付量を算出する作付スケジュール算出装置であって、
n日分(nは1以上の予め定められた整数)の前記作付日の各々を示す変数をx
i(iは1以上n以下の整数)、x
iにおける前記作付量を示す変数をw
i、前記作物を収穫する日である収穫日を示す変数をy、前記作物の需要量の変動要因を示す変数をu、前記作物の生育環境を示す変数をz、予め定められた閾値をH0とし、
前記収穫日とは、連続的なm日分(mは1以上の整数)の収穫期間であり、前記収穫期間の初日を示す値をy
s、最終日を示す値をy
eとし、
y
s及びy
eを取得することで、yの値としての前記収穫期間を取得すると共に、u及びzの値を取得する取得部と、
式(2)に基づきx
i及びw
iを算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、iが1~nであるn通りの各場合について、式(2)を充足するx
i、w
iを算出する
作付スケジュール算出装置。
【数2】
なお、式(2)におけるHは、以下の式(3)により算出される。
【数3】
式(3)におけるu及びzには、前記取得部により取得された値が設定される。また、hは1以上の整数である。
なお、g(y、u)は、y、uを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、uの値が示す変動要因に応じた予測値であって、収穫日yに収穫された前記作物の需要量の予測値を示す、yを変数とする関数であり、f(x
i、y、z)は、x
i、y、zを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、zの値が示す生育環境に応じた予測値であって、作付日x
iにおける前記作物の単位作付量の前記作付から得られる、yにおける収穫量の予測値を示す、y及びx
iを変数とする関数である。
【請求項3】
作物についての少なくとも1つの作付日、及び、前記作付日に作付けされる前記作物の量である作付量を算出する作付スケジュール算出方法であって、
コンピュータが、
n日分(nは1以上の予め定められた整数)の前記作付日の各々を示す変数をx
i(iは1以上n以下の整数)、x
iにおける前記作付量を示す変数をw
i、前記作物を収穫する日である収穫日を示す変数をy、前記作物の需要量の変動要因を示す変数をu、前記作物の生育環境を示す変数をz、予め定められた閾値をH0とし、
yの値として、m日分(mは1以上の整数)のそれぞれの前記収穫日を示すy
j(jは1以上m以下の整数)を取得すると共に、u及びzの値を取得し、
式(4)に基づきx
i及びw
iを算出し、
前記算出では、取得した取得されたu及びzの値が設定されていると共に、yの値としてy
1~y
mがそれぞれ設定されたm個の式(4)を求め、これらの式(4)を連立不等式として解くことで、x
i及びw
iを算出する
作付スケジュール算出方法。
【数4】
なお、g(y
j、u)は、y
j、uを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、uの値が示す変動要因に応じた予測値であって、収穫日y
jに収穫された前記作物の需要量の予測値を示し、f(x
i、y
j、z)は、x
i、y
j、zを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、zの値が示す生育環境に応じた予測値であって、作付日x
iにおける前記作物の単位作付量の前記作付から得られる、y
jにおける収穫量の予測値を示す、x
iを変数とする関数である。
【請求項4】
作物についての少なくとも1つの作付日、及び、前記作付日に作付けされる前記作物の量である作付量を算出する作付スケジュール算出方法であって、
コンピュータが、
n日分(nは1以上の予め定められた整数)の前記作付日の各々を示す変数をx
i(iは1以上n以下の整数)、x
iにおける前記作付量を示す変数をw
i、前記作物を収穫する日である収穫日を示す変数をy、前記作物の需要量の変動要因を示す変数をu、前記作物の生育環境を示す変数をz、予め定められた閾値をH0とし、
前記収穫日とは、連続的なm日分(mは1以上の整数)の収穫期間であり、前記収穫期間の初日を示す値をy
s、最終日を示す値をy
eとし、
y
s及びy
eを取得することで、yの値としての前記収穫期間を取得すると共に、u及びzの値を取得し、
式(5)に基づきx
i及びw
iを算出し、
前記算出では、iが1~nであるn通りの各場合について、式(5)を充足するx
i、w
iを算出する
作付スケジュール算出方法。
【数5】
なお、式(5)におけるHは、以下の式(6)により算出される。
【数6】
式(6)におけるu及びzには、取得した値が設定される。また、hは1以上の整数である。
なお、g(y、u)は、y、uを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、uの値が示す変動要因に応じた予測値であって、収穫日yに収穫された前記作物の需要量の予測値を示す、yを変数とする関数であり、f(x
i、y、z)は、x
i、y、zを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、zの値が示す生育環境に応じた予測値であって、作付日x
iにおける前記作物の単位作付量の前記作付から得られる、yにおける収穫量の予測値を示す、y及びx
iを変数とする関数である。
【請求項5】
作物についての少なくとも1つの作付日、及び、前記作付日に作付けされる前記作物の量である作付量を算出する作付スケジュール算出プログラムであって、
n日分(nは1以上の予め定められた整数)の前記作付日の各々を示す変数をx
i(iは1以上n以下の整数)、x
iにおける前記作付量を示す変数をw
i、前記作物を収穫する日である収穫日を示す変数をy、前記作物の需要量の変動要因を示す変数をu、前記作物の生育環境を示す変数をz、予め定められた閾値をH0とし、
yの値として、m日分(mは1以上の整数)のそれぞれの前記収穫日を示すy
j(jは1以上m以下の整数)を取得すると共に、u及びzの値を取得する取得部と、
式(7)に基づきx
i及びw
iを算出する算出部として、
コンピュータを動作させ、
前記算出部は、前記取得部により取得されたu及びzの値が設定されていると共に、yの値としてy
1~y
mがそれぞれ設定されたm個の式(7)を求め、これらの式(7)を連立不等式として解くことで、x
i及びw
iを算出する
作付スケジュール算出プログラム。
【数7】
なお、g(y
j、u)は、y
j、uを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、uの値が示す変動要因に応じた予測値であって、収穫日y
jに収穫された前記作物の需要量の予測値を示し、f(x
i、y
j、z)は、x
i、y
j、zを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、zの値が示す生育環境に応じた予測値であって、作付日x
iにおける前記作物の単位作付量の前記作付から得られる、y
jにおける収穫量の予測値を示す、x
iを変数とする関数である。
【請求項6】
作物についての少なくとも1つの作付日、及び、前記作付日に作付けされる前記作物の量である作付量を算出する作付スケジュール算出プログラムであって、
n日分(nは1以上の予め定められた整数)の前記作付日の各々を示す変数をx
i(iは1以上n以下の整数)、x
iにおける前記作付量を示す変数をw
i、前記作物を収穫する日である収穫日を示す変数をy、前記作物の需要量の変動要因を示す変数をu、前記作物の生育環境を示す変数をz、予め定められた閾値をH0とし、
前記収穫日とは、連続的なm日分(mは1以上の整数)の収穫期間であり、前記収穫期間の初日を示す値をy
s、最終日を示す値をy
eとし、
y
s及びy
eを取得することで、yの値としての前記収穫期間を取得すると共に、u及びzの値を取得する取得部と、
式(8)に基づきx
i及びw
iを算出する算出部として、
コンピュータを動作させ、
前記算出部は、iが1~nであるn通りの各場合について、式(8)を充足するx
i、w
iを算出する
作付スケジュール算出プログラム。
【数8】
なお、式(8)におけるHは、以下の式(9)により算出される。
【数9】
式(9)におけるu及びzには、前記取得部により取得された値が設定される。また、hは1以上の整数である。
なお、g(y、u)は、y、uを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、uの値が示す変動要因に応じた予測値であって、収穫日yに収穫された前記作物の需要量の予測値を示す、yを変数とする関数であり、f(x
i、y、z)は、x
i、y、zを説明変数とする予め設定された数理モデルであり、zの値が示す生育環境に応じた予測値であって、作付日x
iにおける前記作物の単位作付量の前記作付から得られる、yにおける収穫量の予測値を示す、y及びx
iを変数とする関数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作物の作付スケジュールを算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
統計的手法や機械学習等を用いて、作物の収穫状況を予測する技術が知られている。特許文献1に開示されている技術では、気象情報を利用した機械学習により稲の出穂日を予測する。そして、出穂日に基づき定められた日における気象情報を利用した機械学習により、稲の収穫量が予測される。また、該気象情報を利用した重回帰分析により、稲の品質が予測される。該技術によれば、稲等の作物の収穫状況を精度良く予測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作物の需要量と収穫量とがマッチしない場合が想定される。このような場合には、作物が供給過剰となり、作物の破棄や価格の下落や招いたり、反対に、作物の供給不足に陥ったりする恐れがある。
【0005】
本開示の一側面は、作物の需要量と収穫量との調和を取るのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る作付スケジュール算出装置は、作物についての少なくとも1つの作付日、及び、作付日に作付けされる作物の量である作付量を算出する。ここで、n日分(nは1以上の予め定められた整数)の作付日の各々を示す変数をxi(iは1以上n以下の整数)、xiにおける作付量を示す変数をwi、作物を収穫する日である収穫日を示す変数をy、作物の需要量の変動要因を示す変数をu、作物の生育環境を示す変数をz、予め定められた閾値をH0とする。作付スケジュール算出装置は、取得部と算出部とを備える。取得部は、y、u、及びzの値を取得する。また、算出部は、y、u、及びzが取得部により取得された値である場合の式(1)を充足するxi及びwiを算出する。
【0007】
【数1】
なお、g(y、u)は、y、uを説明変数とする数理モデルを表す関数であり、収穫日yに収穫された作物の需要量の予測値を算出する。また、f(x
i、y、z)は、x
i、y、zを説明変数とする数理モデルを表す関数であり、作物の単位作付量の作付から得られる、yにおける収穫量の予測値を算出する。
【0008】
上記構成によれば、式(1)におけるxi、wiの解は、作物の需要量と収穫量との差分がH0以下となる作付日及び作付量に相当する。このため、xi、wiの解に基づき少なくとも1つの作付日及び作付量を決定することで、作物の収穫量を需要量に近づけることができる。したがって、作物の需要量と収穫量との調和を取ることができる。
【0009】
また、m日分(mは1以上の整数)のそれぞれの収穫日を示す値をyj(jは1以上m以下の整数)としても良い。また、取得部は、m個のyj(換言すれば、y1~ym)をyの値として取得しても良い。また、算出部は、取得部により取得されたu及びzの値が設定されていると共に、yの値としてy1~ymがそれぞれ設定されたm個の式(2)を充足するxi及びwiを算出することで、式(1)を充足するxi及びwiを算出しても良い。
【0010】
【数2】
つまり、式(2)は、式(1)におけるyの値に、離散的な1又は複数の収穫日であるy
jを設定することで得られ、式(2)におけるx
i、w
iの解は、離散的な1又は複数の収穫日において式(1)を充足する作付日及び作付量となる。このため、x
i、w
iの解に基づき少なくとも1つの作付日及び作付量を決定することで、離散的な1又は複数の収穫日の各々において、作物の収穫量を需要量に近づけることができる。したがって、作物の需要量と収穫量との調和を取ることができる。
【0011】
また、上記構成によれば、特定の日における作物の収穫量を需要量に近づけることができるため、年における特定の日や時期に急激に需要が変動する作物の需要量と収穫量との調和を取る上で好適である。
【0012】
また、収穫日とは、連続的なm日分(mは1以上の整数)の収穫期間であり、収穫期間の初日をys、最終日をyeとしても良い。また、取得部は、ys及びyeを取得することで、yの値としての収穫期間を取得しても良い。また、算出部は、iが1~nであるn通りの場合について、式(3)を充足するxi、wiを算出することで、式(1)を充足するxi及びwiを算出しても良い。
【0013】
【数3】
なお、式(3)におけるHは、以下の式(4)により算出されても良い。
【0014】
【数4】
式(4)におけるu及びzには、取得部により取得された値が設定されても良い。また、hは1以上の整数であっても良い。
【0015】
つまり、式(4)は、式(1)の左辺のh乗を、連続的な収穫日であるysからyeまでの収穫期間にわたって積分するものである。Hを最小化するxi、wiを算出することで、該収穫期間において平均的に式(1)を充足するxi、wiを算出できる。このため、上記構成では、iが1~nである各場合について式(3)を解くことで、Hを最小化するxi、wiを算出する。
【0016】
したがって、式(3)から得られたxi、wiの解に基づき少なくとも1つの作付日及び作付量を決定することで、収穫期間において、平均的な作物の収穫量を平均的な作物の需要量に近づけることができる。このため、作物の需要量と収穫量との調和を取ることができる。
【0017】
また、上記構成によれば、収穫期間において平均的に作物の収穫量を需要量に近づけることができる。このため、大手スーパー等といった大規模な販売店で販売される作物のように、需要量の変動が比較的小さい作物の需要量と収穫量との調和を取る上で好適である。
【0018】
なお、本開示の一側面は、上記作付スケジュール算出装置により実現される機能をコンピュータにより実現する作付スケジュール算出プログラムであっても良い。また、本開示の一側面は、上記作付スケジュール算出装置により実現される作付スケジュール算出方法であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】作付スケジュール算出装置のブロック図である。
【
図2】作物の収穫量を示す数理モデルの一例を示すグラフである。
【
図3】作物の需要量を示す数理モデルの一例を示すグラフである。
【
図4】解法1により行われる作付スケジュール算出処理1のフローチャートである。
【
図5】解法2により行われる作付スケジュール算出処理1のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0021】
[1.全体の構成]
図1に示す作付スケジュール算出装置10は、特定の作物の供給量と需要量とを調和させるべく、該作物の作付スケジュールを算出する。なお、作付スケジュールとは、作物についての少なくとも1つの作付日、及び、作付日に作付される作物の量である作付量を少なくとも意味する。
【0022】
作物とは、例えば、穀物や野菜や果物であっても良いし、鑑賞用の草花等であっても良い。また、作付とは、例えば、作物の定植や播種を意味する。換言すれば、作付とは、農地や植物工場等において作物の栽培を開始することを意味する。また、作物の栽培とは、例えば、路地栽培や、施設園芸や、植物工場での栽培等、様々な態様が想定される。また、作物の栽培は、1か所で行われても良いし、複数の箇所で行われても良い。
【0023】
図1に示す作付スケジュール算出装置10は、一例としてPCにより構成されており、記憶部11と、制御部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15とを有する。
記憶部11は、フラッシュメモリやHDD等の書き換え可能な不揮発性の記憶装置を有する。記憶部11は、非遷移的実体的記録媒体に相当する。記憶部11には、作付スケジュール算出装置10にインストールされたアプリケーションである作付スケジュール算出プログラムが記憶されている。
【0024】
制御部12は、CPUと、ROM、RAM、及びフラッシュメモリ等の半導体メモリとを有する周知のコンピュータを備える。CPUは、半導体メモリに記憶されたプログラムに従い動作する。
【0025】
通信部13は、インターネット等のネットワークにアクセスするための部位である。作付スケジュール算出装置10では、通信部13によりネットワークを介して情報の送受信が行われる。
【0026】
表示部14は、液晶ディスプレイ等を有し、制御部12からの指示に応じて画像を表示する。
操作部15は、キーボード及びマウス等を有し、各種操作を受け付ける。
【0027】
作付スケジュール算出装置10では、記憶部11に記憶されている作付スケジュール算出プログラムが制御部12のRAMにロードされる。そして、制御部12のCPUが作付スケジュール算出プログラムに従って動作することで、作付スケジュール算出装置10としての機能が実現される。
【0028】
[2.数理モデルについて]
作付スケジュール算出装置10は、作物の収穫量の予測値を算出する数理モデル(以後、収穫量モデル)と、作物の需要量の予測値を算出する数理モデル(以後、需要量モデル)とを利用して、作付スケジュールを算出する。以後、作付日を示す変数をx、作物を収穫する日である収穫日を示す変数をyとする。
【0029】
図2は、作付日xに作付けされた作物の、日毎の収穫量を予測する収穫量モデルの一例を示している。収穫量モデルの縦軸は収穫量qを示し、横軸は収穫日yを示す。収穫量モデルは、以下の式(5)の関数により示される。
【0030】
【数5】
収穫量モデルは、例えば機械学習や時系列分析や回帰分析等といった統計的手法を用いて、複数年にわたる作物の生育環境及び収穫量等の変化を示すデータを解析することで得られた数理モデルである。収穫量モデルは、所定の作付日xにおける単位作付量の作物の作付けにより得られる、収穫日yにおける収穫量を予測する。式(5)の収穫量モデルは、x及びyと、作物の生育環境を示すzとを説明変数としている。つまり、収穫量モデルは、作物の生育環境を考慮して収穫量を予測する。
【0031】
なお、zが示す生育環境とは、例えば、作物の栽培期間(換言すれば、作付日から収穫日までの期間)における気象情報(例えば、温度、湿度、日射量等)や、作物に与えられた水や二酸化炭素の量や、施肥や追肥の状況等であっても良い。また、生育環境とは、例えば、作物を栽培する土壌や、作付の方法等を示しても良い。また、zは、栽培期間における各日における生育環境を示しても良いし、栽培期間における複数の日を跨いだ期間における生育環境を示しても良い。また、式(5)は、作物の生育環境を示す複数の説明変数zを用いて、収穫量qを予測するものであっても良い。
【0032】
一方、
図3は、収穫日yに収穫された作物の需要量を予測する需要量モデルの一例を示している。需要量モデルの縦軸は需要量rを示し、横軸は収穫日yを示す。なお、作物の収穫日と、該作物を流通させる日(以後、流通日)とが同じである場合と異なる場合とが想定される。作物の収穫日と流通日とが同じである場合には、需要量モデルは、日毎の作物の需要量を予測するものであっても良い。一方、作物の収穫日と流通日とが異なる場合には、需要量モデルは、収穫日yに収穫された作物の流通日の需要量を、収穫日yに収穫された作物の需要量として予測するものであっても良い。
【0033】
需要量モデルは、以下の式(6)の関数により示される。
【0034】
【数6】
需要量モデルは、例えば機械学習や時系列分析や回帰分析等といった統計的手法を用いて、複数年にわたる作物の需要量及び需要量の変動要因等の変化を示すデータを解析することで得られた数理モデルである。需要量モデルは、収穫日yと、需要量の変動要因を示すuとを説明変数としている。
【0035】
なお、uが示す変動要因は、例えば、作物の需要量を予測する年の気候や、作物が消費される地域等を示しても良い。また、式(6)は、需要量の変動要因を示す複数の説明変数uを用いて、需要量rを予測するものであっても良い。
【0036】
[3.作付スケジュールの算出方法]
作付スケジュール算出装置10は、式(5)、(6)に基づき、収穫量qと需要量rとの差分がより小さくなるxi及びwiの値を算出することで、作付スケジュールを算出する。ここで、xi(iは1以上n以下の整数)とは、n日分(nは1以上の予め定められた整数)の作付日の各々を示す変数である。なお、nは2以上の整数であっても良い。また、wiは、xiにおける作付量を示す変数である。
【0037】
作付スケジュール算出装置10は、y、u、及びzの値を取得し、y、u、及びzが取得した値である場合の式(7)を充足するxi、wiを算出することで、作付スケジュールを算出する。
【0038】
【数7】
なお、H0は、予め定められた閾値である。H0は、一例として0であっても良い。すなわち、y、u、及びzが上記値である場合の式(8)によりx
i、w
iを算出することで、作付スケジュールが算出されても良い。
【0039】
【数8】
式(7)又は式(8)によりx
i、w
iを算出する方法として、後述する解法1と解法2とが考えられる。作付スケジュール算出装置10は、解法1及び解放2の双方又は一方により、作付スケジュールを算出する。なお、作付スケジュール算出装置10は、解法1及び解法2以外の方法で式(7)又は式(8)に基づきx
i、w
iを算出することで、作付スケジュールを算出しても良い。
【0040】
[4.解法1について]
解法1では、yの値として、離散的なm日分(mは1以上の予め定められた整数)の収穫日の日付yj(jは1以上m以下の整数)が用いられる。なお、mは2以上の整数であっても良い。以下では、解法1より作付スケジュールを算出する作付スケジュール算出処理1について、
図4のフローチャートを用いて説明する。本処理は、作付スケジュール算出装置10の制御部12が、作付スケジュール算出プログラムに従い動作することで実行される。また、作付スケジュール算出処理1により、解法1を用いた作付スケジュール算出方法が実現される。
【0041】
S100では、制御部12は、yの値として、m日分の離散的な収穫日の日付であるy1~ymを取得すると共に、u及びzの値を取得する。具体的には、例えば、制御部12は、操作部15を介してユーザから入力を受け付けることで、y、u、及びzの値を取得しても良い。また、例えば、制御部12は、通信部13を介して外部のサーバやPC等からy、u、及びzの値を取得しても良い。また、例えば、制御部12は、記憶部11から予め記憶されていたy、u、及びzの値を読み出すことで、これらの値を取得しても良い。この場合、記憶部11に記憶されていたy、u、及びzの値とは、例えば、通信部13を介して外部のサーバやPC等から提供されたものであっても良いし、操作部15を介してユーザから入力されたものであっても良い。
【0042】
続くS105では、制御部12は、u及びzの値とy1~ymとがそれぞれ設定されたm個の式(9)を連立不等式として解くか、又は、これらの値がそれぞれ設定されたm個の式(10)を連立方程式として解くことで、xi及びwiを算出する。これにより、式(7)又は式(8)を充足するxi及びwiが算出される。
【0043】
【0044】
【数10】
続くS110では、制御部12は、S105にて算出されたx
i及びw
iに基づき、作付スケジュールを決定する。具体的には、算出されたx
1~x
nの値を作付日としても良いし、w
1~w
nの値を各作付日における作付量としても良い。また、収穫量に余裕を持たせるため、w
iの値に所定値を加えた値を作付量としても良い。
【0045】
[5.解法2について]
解法2では、yの値として、連続的なm日分(mは1以上の予め定められた整数)の期間(以後、収穫期間)が用いられる。以後、収穫期間の初日の日付をy
sとし、最終日の日付をy
eとする。なお、mは2以上の整数であっても良い。以下では、解法2より作付スケジュールを算出する作付スケジュール算出処理2について、
図5のフローチャートを用いて説明する。本処理は、作付スケジュール算出装置10の制御部12が、作付スケジュール算出プログラムに従い動作することで実行される。また、作付スケジュール算出処理2により、解法2を用いた作付スケジュール算出方法が実現される。
【0046】
S200では、制御部12は、ys及びyeを取得することで、yの値として、ysからyeに至るまでの収穫期間を取得すると共に、u及びzの値を取得する。なお、制御部12は、S100と同様にしてこれらの値を取得する。
【0047】
続くS205では、制御部12は、iが1~nであるn通りの場合について、式(11)を充足するxi、wiを算出する。これにより、式(7)又は式(8)を充足するxi及びwiが算出される。
【0048】
【数11】
なお、式(11)におけるHは、以下の式(12)により算出される。
【0049】
【数12】
また、hは一例として2である。しかし、hは、1又は3以上の整数であっても良い。
【0050】
解法2では、ysからyeにわたる収穫期間において、式(7)又は式(8)を平均的に充足するxi、wiを算出する。このため、式(6)と式(5)との差分のh乗を、ysからyeの期間にわたって積分する式(12)を定義する。そして、Hを最小化するxi、wiを算出することで、式(7)又は式(8)を充足するxi、wiを算出する。すなわち、iが1~nである各場合について、Hをxiで偏微分して得られた偏導関数が0となるxiの値、及び、Hをwiで偏微分して得られた偏導関数が0となるwiの値を算出することで、xi、wiを算出する。
【0051】
続くS210では、制御部12は、S110と同様にして、S205にて算出されたxi及びwiに基づき、作付スケジュールを決定する。
[5.効果]
(1)上記実施形態によれば、式(7)又は(8)におけるxi、wiの解は、作物の需要量と収穫量との差分がH0以下となる作付日及び作付量に相当する。このため、xi、wiの解に基づき少なくとも1つの作付日及び作付量を決定することで、作物の収穫量を需要量に近づけることができる。したがって、作物の需要量と収穫量との調和を取ることができる。
【0052】
(2)また、解法1に関して、式(9)又は(10)におけるxi、wiの解は、離散的な少なくとも1つの収穫日において式(7)又は(8)を充足する作付日及び作付量となる。このため、xi、wiの解に基づき少なくとも1つの作付日及び作付量を決定することで、離散的な少なくとも1つの収穫日の各々において、作物の収穫量を需要量に近づけることができる。したがって、作物の需要量と収穫量との調和を取ることができる。
【0053】
また、解法1によれば、特定の日における作物の収穫量を需要量に近づけることができるため、年における特定の日や時期に急激に需要が変動する作物の需要量と収穫量との調和を取る上で好適である。
【0054】
(3)また、解法2に関して、式(12)は、式(7)又は(8)の左辺のh乗を、連続的な収穫日であるysからyeまでの収穫期間にわたって積分するものである。Hを最小化するxi、wiを算出することで、収穫期間において平均的に式(7)又は(8)を充足するxi、wiを算出できる。このため、解法2では、iが1~nである各場合について式(11)を解くことで、Hを最小化するxi、wiを算出する。
【0055】
したがって、式(11)から得られたxi、wiの解に基づき少なくとも1つの作付日及び作付量を決定することで、収穫期間において、平均的な作物の収穫量を平均的な作物の需要量に近づけることができる。このため、作物の需要量と収穫量との調和を取ることができる。
【0056】
また、解法2によれば、収穫期間において平均的に作物の収穫量を需要量に近づけることができる。このため、大手スーパー等といった大規模な販売店で販売される作物のように、需要量の変動が比較的小さい作物の需要量と収穫量との調和を取る上で好適である。
【0057】
[4.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0058】
(1)作付スケジュール算出装置10は、PCではなく、作付スケジュールを算出するための専用の電子装置として構成されていても良い。また、作付スケジュール算出装置10としての機能をコンピュータにより実現するのではなく、該機能の全部又は一部を、論理回路等(換言すれば、ハードウェア)により実現してもよい。また、作付スケジュール算出装置10は、複数台のPCとして構成されていても良い。
【0059】
(2)また、作付スケジュール算出装置10により実現される機能が、クラウド上で提供されても良い。すなわち、作付スケジュール算出装置10は、1又は複数のサーバとして構成されていても良い。また、作付スケジュール算出装置10は、インターネット等のネットワークを介して取得した端末からの指示に応じて、y、u、及びzの値を取得し、上記実施形態と同様にして作付スケジュールを算出しても良い。そして、作付スケジュール算出装置10は、算出した作付スケジュールを端末に提供しても良い。
【0060】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0061】
[特許請求の範囲との対応]
作付スケジュール算出処理1及び2におけるS100、S200が、取得部の一例に相当し、S105、S205が、算出部の一例に相当する。
【符号の説明】
【0062】
10…作付スケジュール算出装置、11…記憶部、12…制御部、13…通信部、14…表示部、15…操作部。