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特許7416395ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子及びその製造方法
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  • 特許-ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20240110BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240110BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240110BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20240110BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20240110BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240110BHJP
   C08B 37/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEP
A61K47/69
A61K8/73
A61K47/40
A61K9/14
A23L29/20
B82Y5/00
B82Y40/00
C08B37/16 ZNM
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019152363
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021031570
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本化学会第99春季年会2019講演予稿集にて公開 公開日 平成31年3月1日 日本化学会第99春季年会2019にて発表 公開日 平成31年3月16日 第79回分析化学討論会講演要旨集にて公開 公開日 令和1年5月4日 第79回分析化学討論会にて発表 公開日 令和1年5月18日 ウェブサイト「イノベーション・ジャパン2019~大学見本市&ビジネスマッチング~」上にて公開 公開日 令和1年7月18日 第36回シクロデキストリンシンポジウム講演要旨集にて公開 公開日 令和1年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早下 隆士
(72)【発明者】
【氏名】相馬 涼佳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 聡弥
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222809(JP,A)
【文献】特表2016-510001(JP,A)
【文献】特開2006-104423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08J 99/00
C08B 1/00-37/18
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 47/40
A61K 9/14
A23L 29/20
B82Y 5/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が10nm以下であり、且つ粒径の多分散指数(PDI)が0.75以下である、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子であって、
ポリシクロデキストリンが、エポキシ架橋を介してシクロデキストリン類の分子が結合した構造を有する、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子
【請求項2】
光路長1.0cm、波長600nmにて測定した超微細ナノゲル粒子の15mg/mL水中分散液の吸光度が、0.001Abs以下である、請求項1に記載の超微細ナノゲル粒子。
【請求項3】
平均粒径が10nm以下であり、且つ粒径の多分散指数(PDI)が0.75以下である、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子の製造方法であって、
シクロデキストリン類、架橋剤及び水を含む水層と、油層と、両親媒性化合物とを含む系を乳化させて乳化液を準備する工程、及び
乳化液の乳化状態を維持して、乳化液下でシクロデキストリン類の分子を架橋させ、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を形成する工程
を含み、
ポリシクロデキストリンが、エポキシ架橋を介してシクロデキストリン類の分子が結合した構造を有し、
架橋剤が、2価以上のエポキシ化合物である、超微細ナノゲル粒子の製造方法。
【請求項4】
水層に対する油層の体積比(油層/水層)が、1.3~2.0である、請求項に記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
【請求項5】
水層が、無機塩基をさらに含む、請求項又はに記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
【請求項6】
油層が、芳香族炭化水素系溶媒を含む、請求項の何れか1項に記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
【請求項7】
両親媒性化合物が、陽イオン性界面活性剤である、請求項の何れか1項に記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
【請求項8】
両親媒性化合物を除去してポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を取り出す工程をさらに含む、請求項の何れか1項に記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリン(CyD)は、グルコース分子がα-1,4グリコシド結合で結合して形成される環状のオリゴ糖であり、生体に対して無毒であることが知られている。シクロデキストリンは、環状構造の内部が疎水場であるため、水中で有機分子を疎水性相互作用により包接し、安定化することができることが知られている。したがって、このような性質を利用して、これまでに、食品分野、化粧品分野、医薬品分野、分析化学分野等へのシクロデキストリンの応用が進んでいる。
【0003】
例えば、シクロデキストリンの空洞に入りやすい単純な構造のクラウンエーテル型プローブ分子を設計し、水中でγ-シクロデキストリンとの分子複合体(包接錯体)とすることにより、複合体の包接構造変化に基づく新しいアルカリ金属イオンの認識法が報告されている(非特許文献1及び2)。また、ボロン酸型プローブ/β-シクロデキストリン複合体が、水中においてこれまでに報告例のない光誘起電子移動(PET)機構に基づく発蛍光型の糖認識機能を示すことが見出されている(非特許文献3)。また、ボロン酸型プローブ/γ-シクロデキストリン複合体が、水中でグルコースに選択的に応答し、シクロデキストリン空洞内でプローブ二量体を形成し、紫外・可視吸収スペクトル変化、誘起円二色性スペクトル変化、および蛍光スペクトル変化を示すことが見出されている(非特許文献4)。また、認識部位にクラウンエーテル及びジピコリルアミンを持つジトピック型アゾプローブ/γ-シクロデキストリン複合体が、アルカリ金属イオン、亜鉛(II)や銅(II)などの重金属イオン、および炭酸イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン誘導体の存在下で選択的な超分子キラリティーを示すことが報告されている(非特許文献5及び6)。これらは,水中で疎水場を形成するシクロデキストリン分子とプローブ分子の複合化によって、初めて創出される応答機能である。
【0004】
シクロデキストリンの代わりに、シクロデキストリンを重合させて得られるポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を使用することにより、これまで以上にシクロデキストリン特有の疎水場による高い包接能の効果を得ることができると考えられるが、これまでに報告されているポリシクロデキストリンのナノゲル粒子は、多分散指数(PDI)が高く、水への親和性が低いナノゲル粒子しか報告されていなかった(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of the American Chemical Society,121,2319-2320(1999)
【文献】Analytical Chemistry,72,5841-5846(2000)
【文献】Analytical Chemistry,73,1530-1536(2001)
【文献】Chemical Communications,13,1709-1710(2009)
【文献】Chemical Communications,50,10059-10061(2014)
【文献】Chemical Communications,54,12690-12693(2018)
【文献】Carbohydrate Polymers 87,2344(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、生体投与した場合であっても生体内で異物として拒絶されることのない10nm以下というサイズで、且つ多分散指数(PDI)が低く、水への親和性が高いポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らはポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子の製造方法を鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 平均粒径が10nm以下であり、且つ粒径の多分散指数(PDI)が0.75以下である、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子。
[2] 光路長1.0cm、波長600nmにて測定した超微細ナノゲル粒子の15mg/mL水中分散液の吸光度が、0.001Abs以下である、上記[1]に記載の超微細ナノゲル粒子。
[3] ポリシクロデキストリンが、ポリエーテル構造を介してシクロデキストリン類の分子が架橋した構造を有する、上記[1]又は[2]に記載の超微細ナノゲル粒子。
[4] 平均粒径が10nm以下であり、且つ粒径の多分散指数(PDI)が0.75以下である、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子の製造方法であって、シクロデキストリン類、架橋剤及び水を含む水層と、油層と、両親媒性化合物とを含む系を乳化させて乳化液を準備する工程、及び乳化液の乳化状態を維持して、乳化液下でシクロデキストリン類の分子を架橋させ、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を形成する工程を含む、超微細ナノゲル粒子の製造方法。
[5] 水層に対する油層の体積比(油層/水層)が、1.3~2.0である、上記[4]に記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
[6] 水層が、無機塩基をさらに含む、上記[4]又は[5]に記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
[7] 油層が、芳香族炭化水素系溶媒を含む、上記[4]~[6]の何れかに記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
[8] 両親媒性化合物が、陽イオン性界面活性剤である、上記[4]~[7]の何れかに記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
[9] 両親媒性化合物を除去してポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を取り出す工程をさらに含む、上記[4]~[8]の何れかに記載の超微細ナノゲル粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粒径がより小さく、多分散指数(PDI)がより低く、且つ水への親和性のより高いポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1で得られたポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの動的光散乱法により測定された個数基準の粒度分布を示す。
図2図2は、実施例2で得られたポリ-β-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの動的光散乱法により測定された個数基準の粒度分布を示す。
図3図3は、実施例3で得られたポリ-α-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの動的光散乱法により測定された個数基準の粒度分布を示す。
図4図4は、実施例4で得られたポリ-3-アミノ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの動的光散乱法により測定された個数基準の粒度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0012】
本発明は、平均粒径が10nm以下であり、且つ粒径の多分散指数(PDI)が0.75以下であるポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を提供する。
【0013】
本発明の超微細ナノゲル粒子を構成するポリシクロデキストリンは、複数のシクロデキストリンが架橋した構造を有する。
【0014】
本発明におけるポリシクロデキストリンを形成するシクロデキストリン類には、未変性のシクロデキストリン(α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等)のみならず、その立体異性体、その少なくとも一部のヒドロキシ基が誘導化された変性デキストリン等も含まれる。
【0015】
ポリシクロデキストリンを形成するシクロデキストリン類としては、式(1):
【0016】
【化1】
【0017】
[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、置換基で置換されていてもよいヒドロキシ基、又は置換基でモノ又はジ置換されていてもよいアミノ基を示し、nは6~9の整数を示す。]で表されるシクロデキストリン類が挙げられる。
【0018】
式(1)のR、R及びRにおけるヒドロキシ基及びアミノ基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C6-10アリール基、C7-15アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C2-6アルケニル-カルボニル基、C6-10アリール-カルボニル基、C7-15アラルキル-カルボニル基、C1-6アルキル-オキシ-カルボニル基、C2-6アルケニル-オキシ-カルボニル基、C6-10アリール-オキシ-カルボニル基、C7-15アラルキル-オキシ-カルボニル基等が挙げられる。
【0019】
「C1-6アルキル(基)」とは、炭素原子数1~6の直鎖、分枝鎖又は環状の1価の飽和炭化水素基をいう。「C1-6アルキル(基)」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。「C1-6アルキル(基)」は、さらにハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
【0020】
「C2-6アルケニル(基)」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数2~6の直鎖、分枝鎖又は環状の1価の脂肪族不飽和炭化水素基をいう。「C2-6アルケニル(基)」としては、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-シクロヘキセニル等が挙げられる。「C2-6アルケニル(基)」は、さらにハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
【0021】
「C6-10アリール(基)」とは、炭素原子数6~10の1価の芳香族炭化水素基をいう。「C6-10アリール(基)」としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル等が挙げられる。「C6-10アリール(基)」は、さらにハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
【0022】
「C7-15アラルキル(基)」とは、1又は2個以上のC6-10アリール基で置換されたC1-6アルキル基であって炭素原子数7~15のものをいう。「C7-15アラルキル(基)」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2-ナフチルメチル等が挙げられる。「C7-15アラルキル(基)」は、さらにハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
【0023】
「ハロゲン原子」としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0024】
ポリシクロデキストリンを形成するシクロデキストリン類としては、具体的に、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等の未変性のシクロデキストリン;3-アミノ-3-デオキシ-α-シクロデキストリン、3-アミノ-3-デオキシ-β-シクロデキストリン、3-アミノ-3-デオキシ-γ-シクロデキストリン、2-アミノ-2-デオキシ-α-シクロデキストリン、2-アミノ-2-デオキシ-β-シクロデキストリン、2-アミノ-2-デオキシ-γ-シクロデキストリン等のアミノ化シクロデキストリン等が挙げられる。ポリシクロデキストリンを形成するシクロデキストリン類は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0025】
ポリシクロデキストリンは、水溶性の観点から、親水性構造を介してシクロデキストリン類の分子が架橋した構造を有することが好ましい。親水性構造としては、例えば、ポリエーテル構造、ポリチオエーテル構造、ポリアミド構造等が挙げられるが、中でも、ポリエーテル構造が好ましい。
【0026】
ポリシクロデキストリンの架橋部位におけるポリエーテル構造は、例えば、式(2):
【0027】
【化2】
【0028】
[式中、X、Y及びZは、それぞれ独立して、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC2-6アルキレン基を示し、mは、1~10の整数を示し、*は、シクロデキストリン類の酸素原子との結合部位を示す。]で表される構造であり得る。ここにおいて、mは、1~5の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0029】
「C2-6アルキレン基」とは、炭素原子数2~6の直鎖、分枝鎖又は環状の2価の脂肪族飽和炭化水素基をいう。「C2-6アルキレン基」としては、例えば、-CH-CH-、-CH(CH)-、-CH-CH-CH-、-CH-CH(CH)-、-CH(CH)-CH-、-C(CH-、-CH-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH(CH)-、-CH-CH(CH)-CH-、-CH(CH)-CH-CH-、-CH-C(CH-、-C(CH-CH-等が挙げられる。「C2-6アルキレン基」は、炭素原子数2又は3であるC2-3アルキレン基であることが好ましい。
【0030】
本発明の超微細ナノゲル粒子は、球形であり得る。本発明の超微細ナノゲル粒子の平均粒径は、10nm以下であり、生体適合性等の観点から、好ましくは9nm以下、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは7nm以下、さらにより好ましくは6nm以下、特に好ましくは5nm以下である。本発明の超微細ナノゲル粒子の平均粒径の下限は、特に限定されないが例えば、0.5nm、1nm等とし得る。本発明の超微細ナノゲル粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定される粒度分布から算出された個数基準のモード径(最頻粒子径)であり、流体力学的径である。
【0031】
本発明の超微細ナノゲル粒子の最大粒径は、生体適合性等の観点から、好ましくは40nm以下であり、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは25nm以下、特に好ましくは20nm以下である。本発明の超微細ナノゲル粒子の最大粒径は、動的光散乱法により測定される粒度分布から算出される。本発明の超微細ナノゲル粒子の最大粒径は、動的光散乱法により測定される個数基準の粒度分布に基づく最大粒径である。
【0032】
本発明の超微細ナノゲル粒子の粒径の多分散指数(Polydispersity Index:PDI)は、0.75以下であり、均質性の観点から、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.6以下、さらにより好ましくは0.55以下、特に好ましくは0.5以下である。本発明の超微細ナノゲル粒子の粒径の多分散指数(PDI)は、動的光散乱法により測定される粒度分布から算出される。
【0033】
本発明の超微細ナノゲル粒子のゼータ電位の絶対値は、水中での分散安定性の観点から、好ましくは0.5mV以上、1.0mV以上、より好ましくは1.5mV以上、2.0mV以上、さらに好ましくは2.5mV以上、3.0mV以上、さらにより好ましくは3.5mV以上、特に好ましくは4.0mV以上であり得る。本発明の超微細ナノゲル粒子のゼータ電位は、光散乱電気泳動法で測定されるものであり、実施例で示すように、超微細ナノゲル水溶液(5mg/mL)を室温で測定した値であり得る。
【0034】
本発明の超微細ナノゲル粒子は、粒径が小さく、多分散指数(PDI)も低いため、水への親和性が高い。したがって、15mg/mLの超微細ナノゲル粒子の分散液を調製しても、分散液に濁りが生じ得ない。例えば、光路長1.0cm、波長600nmにて測定した超微細ナノゲル粒子の15mg/mL水中分散液の吸光度は、0.001Abs以下、0.0005Abs以下、0.0001Abs以下であり得、特に好ましくは、0.0000Absとなり得る。
【0035】
次に、本発明のポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子の製造方法を説明する。本発明のポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子の製造方法は、(1)シクロデキストリン類、架橋剤及び水を含む水層と、油層と、両親媒性化合物とを含む系を乳化させて乳化液を準備する工程、及び(2)乳化液の乳化状態を維持して、乳化液下でシクロデキストリン類の分子を架橋させ、ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を形成する工程を含む。
【0036】
水層に含まれる架橋剤としては、特に限定されるものではないが、2価以上のエポキシ化合物であることが好ましく、2以上のシクロデキストリン類の分子との間で親水性構造を形成し得る2価以上のエポキシ化合物であることがより好ましく、2以上のシクロデキストリン類の分子との間でポリエーテル構造を形成し得る2価以上のエポキシ化合物であることがさらに好ましい。このような架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,2-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジ-1,2-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリ-1,2-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジ-1,3-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリ-1,3-プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル等が挙げられ、中でも、エチレングリコールジグリシジルエーテルが特に好ましい。架橋剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
水層の水に対する架橋剤の使用量は、水に対する体積比(架橋剤/水)として、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、さらにより好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.7以下である。その使用量の下限は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、さらにより好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.4以上である。
【0038】
水層の水に対するシクロデキストリン類の使用量は、水の体積に対して、好ましくは1.0g/mL以下、より好ましくは0.5g/mL以下、さらに好ましくは0.3g/mL以下、さらにより好ましくは0.2g/mL以下、特に好ましくは0.1g/mL以下である。その使用量の下限は、好ましくは0.005g/mL以上、より好ましくは0.01g/mL以上、さらに好ましくは0.03g/mL以上、さらにより好ましくは0.05g/mL以上、特に好ましくは0.07g/mL以上である。
【0039】
架橋剤に対するシクロデキストリン類の使用量は、架橋剤の体積に対して、好ましくは2.0g/mL以下、より好ましくは1.0g/mL以下、さらに好ましくは0.6g/mL以下、さらにより好ましくは0.4g/mL以下、特に好ましくは0.2g/mL以下である。その使用量の下限は、好ましくは0.01g/mL以上、より好ましくは0.05g/mL以上、さらに好ましくは0.08g/mL以上、さらにより好ましくは0.1g/mL以上、特に好ましくは0.12g/mL以上である。
【0040】
水層は、シクロデキストリン類、架橋剤、水に加えて、さらに架橋反応を促進する架橋促進剤を含んでいてもよい。架橋促進剤としては、例えば、無機塩基が挙げられる。
【0041】
無機塩基としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。無機塩基は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
無機塩基を使用する場合、水層の水に対する水層における無機塩基の使用量は、水の体積に対して、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは1mol/L以下、さらにより好ましくは0.7mol/L以下、特に好ましくは0.5mol/L以下である。また、その使用量の下限は、好ましくは0.001mol/L以上、より好ましくは0.005mol/L以上、さらに好ましくは0.01mol/L以上、さらにより好ましくは0.05mol/L以上、特に好ましくは0.1mol/L以上である。
【0043】
工程(1)における水層のpHは、シクロデキストリンの2級水酸基を解離させる観点から、好ましくは12.0以上、より好ましくは12.5以上、特に好ましくは13.0以上である。工程(1)における水層のpHの上限は、例えば、14.0以下等とし得る。
【0044】
油層には、疎水性の有機溶媒が含まれ得る。疎水性の有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒等の炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。中でも、多分散指数(PDI)をより低く抑える観点から、炭化水素系溶媒が好ましく、芳香族炭化水素系溶媒がより好ましく、トルエンが特に好ましい。疎水性の有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0045】
水層に対する油層の体積比(油層/水層)は、多分散指数(PDI)をより低く抑える観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1.0以上、さらにより好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.5以上である。その体積比の上限は、多分散指数(PDI)をより低く抑える観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下、さらにより好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.9以下である。
【0046】
両親媒性化合物としては、例えば、油層/水層の乳化液を安定化させる界面活性剤であればよく、中でも、多分散指数(PDI)をより低く抑える観点から、陽イオン性界面活性剤を好適に用いることができ、とりわけ2本の長鎖アルキル基(例えばC8-22アルキル基)を有する陽イオン性界面活性剤が特に好ましい。陽イオン界面活性剤としては、例えば、アンモニウム系界面活性剤、ホスホニウム系界面活性剤、ピリジニウム系界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
アンモニウム系界面活性剤としては、例えば、式:(R11(R124-s[式中、R11は直鎖のC8-22アルキル基又は直鎖のC8-22アルケニル基を示し、R12はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、フェニル基又はベンジル基を示し、Aはアニオンを示し、sは1~3の整数を示す。]で表される4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0048】
「直鎖のC8-22アルキル(基)」とは、炭素原子数8~22の直鎖の1価の飽和炭化水素基をいう。「直鎖のC8-22アルキル(基)」としては、例えば、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、ヘプタデシル、ステアリル、イコシル等が挙げられる。
【0049】
「直鎖のC8-22アルケニル(基)」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数8~22の直鎖の1価の脂肪族不飽和炭化水素基をいう。「直鎖のC8-22アルケニル(基)」としては、例えば、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル等が挙げられる。
【0050】
「アニオン」としては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン等が挙げられる。
【0051】
アンモニウム系界面活性剤としては、具体的に、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムヨージド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムヨージド、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムヨージド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムヨージド、ドデシルエチルジメチルアンモニウムブロミド、ドデシルエチルジメチルアンモニウムクロリド、ドデシルエチルジメチルアンモニウムヨージド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムヨージド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムヨージド等の長鎖モノアルキル4級アンモニウム塩;ジステアリルジメチルアンモニウムブロミド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムヨージド、ジセチルジメチルアンモニウムブロミド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムヨージド、ジミリスチルジメチルアンモニウムブロミド、ジミリスチルジメチルアンモニウムクロリド、ジミリスチルジメチルアンモニウムヨージド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムヨージド、ジデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムヨージド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムヨージド等の長鎖ジアルキル4級アンモニウム塩;トリステアリルメチルアンモニウムブロミド、トリステアリルメチルアンモニウムクロリド、トリステアリルメチルアンモニウムヨージド、トリセチルメチルアンモニウムブロミド、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、トリセチルメチルアンモニウムヨージド、トリミリスチルメチルアンモニウムブロミド、トリミリスチルメチルアンモニウムクロリド、トリミリスチルメチルアンモニウムヨージド、トリドデシルメチルアンモニウムブロミド、トリドデシルメチルアンモニウムクロリド、トリドデシルメチルアンモニウムヨージド、トリデシルメチルアンモニウムブロミド、トリデシルメチルアンモニウムクロリド、トリデシルメチルアンモニウムヨージド、トリオクチルメチルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムヨージド等の長鎖トリアルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0052】
ホスホニウム系界面活性剤としては、例えば、式:(R11(R124-s[式中、R11は直鎖のC8-22アルキル基又は直鎖のC8-22アルケニル基を示し、R12はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、フェニル基又はベンジル基を示し、Aはアニオンを示し、sは1~3の整数を示す。]で表される4級ホスホニウム塩が挙げられる。
【0053】
ホスホニウム系界面活性剤としては、具体的に、ステアリルトリメチルホスホニウムブロミド、ステアリルトリメチルホスホニウムクロリド、ステアリルトリメチルホスホニウムヨージド、セチルトリメチルホスホニウムブロミド、セチルトリメチルホスホニウムクロリド、セチルトリメチルホスホニウムヨージド、ミリスチルトリメチルホスホニウムブロミド、ミリスチルトリメチルホスホニウムクロリド、ミリスチルトリメチルホスホニウムヨージド、ドデシルトリメチルホスホニウムブロミド、ドデシルトリメチルホスホニウムクロリド、ドデシルトリメチルホスホニウムヨージド、ドデシルエチルジメチルホスホニウムブロミド、ドデシルエチルジメチルホスホニウムクロリド、ドデシルエチルジメチルホスホニウムヨージド、デシルトリメチルホスホニウムブロミド、デシルトリメチルホスホニウムクロリド、デシルトリメチルホスホニウムヨージド、オクチルトリメチルホスホニウムブロミド、オクチルトリメチルホスホニウムクロリド、オクチルトリメチルホスホニウムヨージド等の長鎖モノアルキル4級ホスホニウム塩;ジステアリルジメチルホスホニウムブロミド、ジステアリルジメチルホスホニウムクロリド、ジステアリルジメチルホスホニウムヨージド、ジセチルジメチルホスホニウムブロミド、ジセチルジメチルホスホニウムクロリド、ジセチルジメチルホスホニウムヨージド、ジミリスチルジメチルホスホニウムブロミド、ジミリスチルジメチルホスホニウムクロリド、ジミリスチルジメチルホスホニウムヨージド、ジドデシルジメチルホスホニウムブロミド、ジドデシルジメチルホスホニウムクロリド、ジドデシルジメチルホスホニウムヨージド、ジデシルジメチルホスホニウムブロミド、ジデシルジメチルホスホニウムクロリド、ジデシルジメチルホスホニウムヨージド、ジオクチルジメチルホスホニウムブロミド、ジオクチルジメチルホスホニウムクロリド、ジオクチルジメチルホスホニウムヨージド等の長鎖ジアルキル4級ホスホニウム塩;トリステアリルメチルホスホニウムブロミド、トリステアリルメチルホスホニウムクロリド、トリステアリルメチルホスホニウムヨージド、トリセチルメチルホスホニウムブロミド、トリセチルメチルホスホニウムクロリド、トリセチルメチルホスホニウムヨージド、トリミリスチルメチルホスホニウムブロミド、トリミリスチルメチルホスホニウムクロリド、トリミリスチルメチルホスホニウムヨージド、トリドデシルメチルホスホニウムブロミド、トリドデシルメチルホスホニウムクロリド、トリドデシルメチルホスホニウムヨージド、トリデシルメチルホスホニウムブロミド、トリデシルメチルホスホニウムクロリド、トリデシルメチルホスホニウムヨージド、トリオクチルメチルホスホニウムブロミド、トリオクチルメチルホスホニウムクロリド、トリオクチルメチルホスホニウムヨージド等の長鎖トリアルキル4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0054】
ピリジニウム系界面活性剤としては、例えば、式:C13[式中、R13は直鎖のC8-22アルキル基又は直鎖のC8-22アルケニル基を示し、Aはアニオンを示す。]で表されるピリジニウム塩が挙げられる。
【0055】
ピリジニウム系界面活性剤としては、具体的に、ステアリルピリジニウムブロミド、ステアリルピリジニウムクロリド、ステアリルピリジニウムヨージド、セチルピリジニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムヨージド、ミリスチルピリジニウムブロミド、ミリスチルピリジニウムクロリド、ミリスチルピリジニウムヨージド、ドデシルピリジニウムブロミド、ドデシルピリジニウムクロリド、ドデシルピリジニウムヨージド、デシルピリジニウムブロミド、デシルピリジニウムクロリド、デシルピリジニウムヨージド、オクチルピリジニウムブロミド、オクチルピリジニウムクロリド、オクチルピリジニウムヨージド等の長鎖アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
【0056】
陽イオン性界面活性剤は、多分散指数(PDI)をより低く抑える観点から、好ましくは、アンモニウム系界面活性剤、より好ましくは、長鎖ジアルキル4級アンモニウム塩、特に好ましくは、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミドである。
【0057】
水層の水に対する両親媒性化合物の使用量は、水の体積に対して、好ましくは200mg/mL以下、より好ましくは100mg/mL以下、さらに好ましくは50mg/mL以下、さらにより好ましくは30mg/mL以下、特に好ましくは20mg/mL以下である。その使用量の下限は、多分散指数(PDI)をより低く抑える観点から、好ましくは0.1mg/mL以上、より好ましくは0.5mg/mL以上、さらに好ましくは1mg/mL以上、さらにより好ましくは3mg/mL以上、特に好ましくは5mg/mL以上である。
【0058】
油層に対する両親媒性化合物の使用量は、油層の体積に対して、好ましくは100mg/mL以下、より好ましくは50mg/mL以下、さらに好ましくは20mg/mL以下、さらにより好ましくは15mg/mL以下、特に好ましくは10mg/mL以下である。その使用量の下限は、多分散指数(PDI)をより低く抑える観点から、好ましくは0.05mg/mL以上、より好ましくは0.1mg/mL以上、さらに好ましくは0.5mg/mL以上、さらにより好ましくは1mg/mL以上、特に好ましくは2mg/mL以上である。
【0059】
工程(1)で乳化する系は、水層と、油層と、両親媒性化合物に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール等の飽和直鎖アルコール;2-エチル-1-ヘキサノール、3,7-ジメチル-1-オクタノール等の飽和分岐鎖アルコール;オレイルアルコール等の不飽和直鎖アルコール等のアルコール類が挙げられる。添加剤としてアルコール類を使用することで、乳化させた場合において乳化膜界面を安定化させることができる。
【0060】
アルコール類を使用する場合、水層の水に対するアルコール類の使用量は、水層の水に対する体積比(アルコール類/水層の水)として、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.8以下である。その下限は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.2以上である。
【0061】
工程(1)における乳化は、分散相が水相、連続相が油相である油中水滴型(W/O型)の乳化形態である。
【0062】
工程(1)における乳化方法は、例えば、水層と油層との2層に分離した系を、機械的に分散させ、乳化させる方法を用いることができる。機械的に分散させ、乳化させる方法としては、例えば、撹拌子、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー等を用いる撹拌法、振盪装置を用いる振盪法、超音波ホモジナイザーを用いる超音波法、高圧ホモジナイザーで高剪断力をかける高圧ホモジナイザー法等が挙げられる。中でも、超音波ホモジナイザーを用いる超音波法が好ましい。
【0063】
工程(1)における温度条件は、乳化方法により異なるものであって、特に限定されるものではないが、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、特に好ましくは40℃以下、下限は、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上に設定し得る。
【0064】
工程(1)における乳化時間は、乳化方法により異なるものであって、特に限定されるものではないが、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、さらに好ましくは1分間以上、特に好ましくは2分間以上に設定し得る。その乳化時間の上限は、例えば、200分間以下、100分間以下、60分間以下、30分間以下等に設定し得るが、十分に乳化される限り特に限定されない。
【0065】
工程(2)における超微細ナノゲル粒子の形成では、工程(1)で準備した乳化液の乳化状態を維持しつつ、乳化液下でシクロデキストリン類の分子を架橋させてポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を形成する。工程(2)においては、分離、沈殿、凝集等の機械的作用がなければ乳化液の乳化状態を維持できない場合、乳化状態を維持するため、乳化液を、攪拌、振盪、超音波、高圧等の乳化条件と同じ条件或いは乳化条件よりも穏和な条件に晒し続けてもよい。
【0066】
工程(2)における温度条件は、シクロデキストリン類を十分に架橋させることができる限り特に限定されるものではないが、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、特に好ましくは40℃以下であり、下限は、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上である。
【0067】
工程(2)における超微細ナノゲル粒子形成時間(乳化維持時間)は、シクロデキストリン類を十分に架橋させることができる限り特に限定されるものではないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上、特に好ましくは20時間以上に設定し得る。その超微細ナノゲル粒子形成時間(乳化維持時間)の上限は、例えば、20日間以下、10日間以下、5日間以下、3日間以下等に設定し得るが、十分に架橋反応が進行し、超微細ナノゲル粒子の形成が完結する限り特に限定されない。
【0068】
本発明のポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子の製造方法は、工程(1)及び工程(2)に加えて、さらに、(3)両親媒性化合物を除去してポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を取り出す工程を含み得る。
【0069】
工程(3)の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、(3-A)ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子表面から両親媒性化合物を取り除く工程、及び(3-B)ポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子を取り出す工程を含む方法を挙げることができる。
【0070】
工程(3-A)は、例えば、(3-A1)乳化液を静置することによってポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子が下層に沈殿する場合、その下層の沈殿層を回収する任意の工程、(3-A2)両親媒性化合物として陽イオン性界面活性剤を使用した場合、乳化液、沈殿層又は沈殿物に非プロトン性極性溶媒を加える工程、及び(3-A3)遠心分離機を用いて、乳化液、沈殿層又は沈殿物を遠心分離して、沈殿物を回収する任意の工程を含み得る。
【0071】
工程(3-A1)及び(3-A3)は、必要に応じて行う任意の工程である。工程(3-A2)及び(3-A3)の順番は特に限定されるものではなく、また、工程(3-A3)は複数回行ってもよい。
【0072】
工程(3-A2)における非プロトン性極性溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。
【0073】
工程(3-A2)における非プロトン性極性溶媒の使用量は、水層として使用した水に対する体積比(非プロトン性極性溶媒/水層の水)として、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、特に好ましくは1.5以上であり得る。
【0074】
工程(3-B)は、例えば、(3-B1)工程(3-A)で得られた乳化液、沈殿層又は沈殿物に、過剰の水を加えて分散液を得る工程、(3-B2)架橋促進剤として無機塩基を使用した場合には、酸を加えて中和する任意の工程、(3-B3)粗ろ過処理を行い、超微細ナノゲル粒子をろ液と共に回収する任意の工程、(3-B4)透析処理を行い、超微細ナノゲル粒子を透析膜チューブ内から回収する工程、(3-B5)超微細ナノゲル粒子の精密ろ過処理を行い、超微細ナノゲル粒子をろ液と共に回収する任意の工程、及び(3-B6)超微細ナノゲル粒子を凍結乾燥する任意の工程を含み得る。
【0075】
工程(3-B1)における水の使用量は、水層として使用した水に対する体積比(当該工程の水/水層の水)として、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、特に好ましくは1.5以上であり得る。
【0076】
工程(3-B2)、(3-B3)、(3-B5)、及び(3-B6)は、必要に応じて行う任意の工程であり、また、工程(3-B3)、(3-B4)、(3-B5)、及び(3-B6)はそれぞれ複数回行ってもよい。
【0077】
工程(3-B2)で使用する酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸等の無機酸類;酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、フタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸等の有機酸類が挙げられ、これらの二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0078】
工程(3-B3)の粗ろ過で使用するろ過膜の種類は特に限定されない。ここにおけるろ過膜の孔径は、好ましくは2μm以上、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり得る。粗ろ過の様式としては、例えば、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等が挙げられるが、特に限定されない。
【0079】
工程(3-B4)の透析処理で使用する透析膜の種類は特に限定されない。ここにおける透析膜は、分画分子量(MWCO)が、例えば2,000~5,000のものを好適に用いることができる。透析処理では、超微細ナノゲルを含む溶液を、透析膜チューブ内に入れ、十分な超純水内に浸すことにより精製を行う。工程(3-B4)は、複数回行うことが好ましい。工程(3-A)で取り除ききれなかった両親媒性化合物が微量に残留していた場合であっても工程(3-B4)の透析処理にて除去される。
【0080】
工程(3-B5)の精密ろ過で使用するろ過膜の種類は特に限定されない。ここにおけるろ過膜の孔径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.45μm以下であり得る。
【実施例
【0081】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0082】
(実施例1:ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径6.26nm))
遠心管中、0.2M水酸化ナトリウム水溶液5.0mLに、γ-シクロデキストリン(γ-CyD)430mg、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)3.0mLを加え、超音波で溶解させた。この溶液に、1-ヘキサノール2.5mL、及びジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)66.20mgをトルエン14.3mLに溶解させたものを順に穏やかに加えた。静置して2層に分離させた後、超音波ホモジェナイザー(duty50,output2.5,10min)を用いて乳化させ、これを27時間室温撹拌した。撹拌を止め2層に分離した液体の下層を回収し、アセトン10mL加えた後、遠心分離した。2層に分離した下層に超純水を10mL加えた後、pH試験紙が中性を示すまで塩酸を加えた。その後透析膜(MWCO=3500)を用いて3Lの超純水で5回透析処理を行った。透析後の透析膜内の溶液を吸引ろ過(孔径1μm)した後、メンブレンフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液を凍結乾燥し、ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体を得た。
【0083】
得られた超微細ナノゲルの平均粒径は6.26±0.99nm、多分散指数(PDI)は0.42±0.04、ゼータ電位は-4.59±2.17mV、濁度(吸光度600nm)は0.0000Absであった。図1に得られた超微細ナノゲルの個数基準の粒度分布を示す。
【0084】
(実施例2:ポリ-β-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径6.62nm))
遠心管中、0.2M水酸化ナトリウム水溶液5.0mLに、β-シクロデキストリン(β-CyD)376mg、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)3.0mLを加え、超音波で溶解させた。この溶液に、1-ヘキサノール2.5mL、及びジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)66.20mgをトルエン14.3mLに溶解させたものを順に穏やかに加えた。静置して2層に分離させた後、超音波ホモジェナイザー(duty50,output2.5,10min)を用いて乳化させ、これを27時間室温撹拌した。撹拌を止め2層に分離した液体の下層を回収し、アセトン10mL加えた後、遠心分離した。2層に分離した下層に超純水を10mL加えた後、pH試験紙が中性を示すまで塩酸を加えた。その後透析膜(MWCO=3500)を用いて3Lの超純水で5回透析処理を行った。透析後の透析膜内の溶液を吸引ろ過(孔径1μm)した後、メンブレンフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液を凍結乾燥し、ポリ-β-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体を得た。
【0085】
得られた超微細ナノゲルの平均粒径は6.62±0.69nm、多分散指数(PDI)は0.31±0.05、ゼータ電位は-2.04±0.36mVであった。図2に得られた超微細ナノゲルの個数基準の粒度分布を示す。
【0086】
(実施例3:ポリ-α-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径6.30nm))
遠心管中、0.2M水酸化ナトリウム水溶液5.0mLに、α-シクロデキストリン(α-CyD)322mg、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)3.0mLを加え、超音波で溶解させた。この溶液に、1-ヘキサノール2.5mL、及びジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)66.20mgをトルエン14.3mLに溶解させたものを順に穏やかに加えた。静置して2層に分離させた後、超音波ホモジェナイザー(duty50,output2.5,10min)を用いて乳化させ、これを27時間室温撹拌した。撹拌を止め2層に分離した液体の下層を回収し、アセトン10mL加えた後、遠心分離した。2層に分離した下層に超純水を10mL加えた後、pH試験紙が中性を示すまで塩酸を加えた。その後透析膜(MWCO=3500)を用いて3Lの超純水で5回透析処理を行った。透析後の透析膜内の溶液を吸引ろ過(孔径1μm)した後、メンブレンフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液を凍結乾燥し、ポリ-α-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体を得た。
【0087】
得られた超微細ナノゲルの平均粒径は6.30±0.23nm、多分散指数(PDI)は0.29±0.06、ゼータ電位は-2.98±1.35mVであった。図3に得られた超微細ナノゲルの個数基準の粒度分布を示す。
【0088】
(実施例4:ポリ-3-アミノ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径5.21nm))
遠心管中、0.2M水酸化ナトリウム水溶液5.0mLに、3-アミノ-γ-シクロデキストリン(3-NH-γ-CyD)430mg、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)3.0mLを加え、超音波で溶解させた。この溶液に、1-ヘキサノール2.5mL、及びジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)66.20mgをトルエン14.3mLに溶解させたものを順に穏やかに加えた。静置して2層に分離させた後、超音波ホモジェナイザー(duty50,output2.5,10min)を用いて乳化させ、これを27時間室温撹拌した。撹拌を止め2層に分離した液体の下層を回収し、アセトン10mL加えた後、遠心分離した。2層に分離した下層に超純水を10mL加えた後、pH試験紙が中性を示すまで塩酸を加えた。その後透析膜(MWCO=3500)を用いて3Lの超純水で5回透析処理を行った。透析後の透析膜内の溶液を吸引ろ過(孔径1μm)した後、メンブレンフィルター(孔径0.45μm)で濾過した濾液を凍結乾燥し、ポリ-3-アミノ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体を得た。
【0089】
得られた超微細ナノゲルの平均粒径は5.21±0.68nm、多分散指数(PDI)は0.56±0.01、ゼータ電位は+2.78±0.67mVであった。図4に得られた超微細ナノゲルの個数基準の粒度分布を示す。
【0090】
(比較例1:ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径5.52nm))
0.2M水酸化ナトリウム水溶液の使用量を6.99mL、γ-CyDの使用量を597mg、EGDEの使用量を4.157mL、DDABの使用量を51.58mg、トルエンの使用量を11.15mLにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体を得た。
【0091】
得られた超微細ナノゲルの平均粒径は5.52±1.30nm、多分散指数(PDI)は0.82±0.16、ゼータ電位は-4.21±0.13mVであった。
【0092】
(比較例2:ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径8.06nm))
0.2M水酸化ナトリウム水溶液の使用量を4.66mL、γ-CyDの使用量を397mg、EGDEの使用量を2.766mL、DDABの使用量を68.79mg、トルエンの使用量を14.87mLにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体を得た。
【0093】
得られた超微細ナノゲルの平均粒径は8.06±1.59nm、多分散指数(PDI)は0.76±0.14、ゼータ電位は-0.84±1.05mVであった。
【0094】
(比較例3:ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径4.53nm))
DDABの代わりにTriton X-100(ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル)を165mg、トルエンの代わりにシクロヘキサンを14.3mL使用したこと以外は、実施例1と同様に操作して、ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体を得た。
【0095】
得られたナノゲルの平均粒径は4.53±0.78nm、多分散指数(PDI)は0.97±0.04、ゼータ電位は-4.33±0.54mVであった。
【0096】
(比較例4:ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径5.34nm))
DDABを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に操作して、ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体を得た。
【0097】
得られたナノゲル5.34±2.33nm、多分散指数(PDI)は1.00、ゼータ電位は-3.96±0.36mVであった。
【0098】
(比較例5:ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径146nm))
γ-CyD2.0gに0.2M水酸化ナトリウム水溶液8.0mL加えて、水溶液を調製した。この水溶液とEGDE4.0mLを三つ口フラスコに入れ、5分間室温撹拌した後、60℃で25分間加熱還流し、遠心管に移した。そこにジクロロメタン20.0mLを界面が揺れないようにゆっくり加え、超音波ホモジェナイザー(duty50,output2.5,10mim)で乳化した。60℃で30分間加熱還流し、MilliQ水100mLを加えてからジクロロメタンを減圧留去した。これを透析膜(MWCO=3500)に入れ、イオン交換水で4回、MilliQ水で2回透析した。2日間凍結乾燥することでポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体0.344gを得た。
【0099】
得られたナノゲルの平均粒径は146±24.8nm、多分散指数(PDI)は0.49±0.01、ゼータ電位は-7.23±1.42mV、濁度(吸光度600nm)は0.0573Absであった。
【0100】
(比較例6:ポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲル(平均粒径34.0nm))
比較例5で得られたポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルを、水に分散させ、15mg/mLの白濁分散液を調製した。この分散液から13mL取り出し、吸引ろ過(孔径1μm)し、メンブレンフィルター(孔径0.45μm)に通した。その後、2日間凍結乾燥することでポリ-γ-シクロデキストリンの超微細ナノゲルの白色固体0.172gを得た。
【0101】
得られたナノゲルの平均粒径は34.0±44.4nm、多分散指数(PDI)は0.59±0.15、ゼータ電位は-5.30±0.15mV、濁度(吸光度600nm)は0.0057Absであった。
【0102】
(平均粒径及び多分散指数(PDI)の測定算出方法)
平均粒径及び多分散指数(PDI)は、各実施例及び比較例で得られた超微細ナノゲル粒子を水に分散させて15mg/mL濃度の分散液を調製し、当該分散液を用いて動的光散乱法(マルバーン社製ゼータサイザーナノZS)により積算数10回で、5回測定し、平均値を算出した。平均粒径は、個数基準の粒度分布における第1ピーク(100%)のモード径(最頻粒子径)である。なお、平均粒径及び多分散指数(PDI)の「X±Y」の表記における「Y」は5回の測定値の標準誤差を示す。
【0103】
(ゼータ電位の測定算出方法)
ゼータ電位は、各実施例及び比較例で得られた超微細ナノゲル粒子を水に分散させて15mg/mL濃度の分散液を調製し、当該分散液を用いて光散乱電気泳動法(マルバーン社製ゼータサイザーナノZS)により積算数10回で、5回測定し、平均値を算出した。なお、ゼータ電位の「X±Y」の表記における「Y」は5回の測定値の標準誤差を示す。
【0104】
(濁度(吸光度)の測定方法)
各実施例及び比較例で得られた超微細ナノゲル粒子を水に分散させて15mg/mL濃度の分散液を調製した。幅(光路長)1.0cmの石英セルを用いて波長600nmの光を当てて当該分散液の吸光度を測定した。
【0105】
各実施例及び比較例について、超微細ナノゲル粒子の製造に使用した材料及び薬品の量、及び得られた超微細ナノゲル粒子の物性の測定結果を下記表にまとめる。
【0106】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のポリシクロデキストリンの超微細ナノゲル粒子は、粒径が小さく、多分散指数(PDI)が低く、且つ水への親和性の高い。したがって、食品分野、化粧品分野、医薬品分野、分析化学分野等において有用である。
図1
図2
図3
図4