(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アルツハイマー病モデル非ヒト動物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 67/027 20240101AFI20240110BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2019185245
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-06-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519149076
【氏名又は名称】アルメッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】白尾 智明
(72)【発明者】
【氏名】関野 祐子
(72)【発明者】
【氏名】花村 健次
(72)【発明者】
【氏名】山崎 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小金澤 紀子
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】LIU, Y. et al.,Down-Regulated Drebrin Aggravates Cognitive Impairments in a Mouse Model of Alzheimer's Disease,International Journal of Molecular Sciences,2017年,Vol.18, No.4,pp.1-17
【文献】LEE, J. E. et al.,An Update of Animal Models of Alzheimer Disease with a Reevaluation of Plaque Depositions,Experimental Neurobiology,2013年,Vol.22, No.2,pp.84-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/00-67/04
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
5xFADマウスにおけるドレブリン遺伝子がヘテロノックアウトされたことを特徴とする、遺伝子組換えマウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレブリン発現量を半減させることにより、従来のアルツハイマー病モデル非ヒト動物と比較してアルツハイマー病の病態をより正確に反映した遺伝子組換え非ヒト動物や、該遺伝子組換え非ヒト動物の製造方法や、該遺伝子組換え非ヒト動物を用いたアルツハイマー病の治療用及び/又は予防用薬剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症の主な原因とされているアルツハイマー病患者の増加は、近年、大きな社会的関心事となっており、その治療薬や治療方法の早期の確立が望まれている。特定の疾患の治療薬や治療方法の検討には、その疾患のモデル動物を用いて解析が行われるのが一般的である。
【0003】
アルツハイマー病患者の死後脳では老人斑が観察され、これは「アミロイドβ蛋白質」の凝集体(アミロイド斑)であることが知られている。アミロイドβ蛋白質の沈着が、病理学的に確認できる最も初期の病変であり、アミロイドβ蛋白質が凝集し、そして直接、神経細胞毒性を示すことが報告されている。そして、家族性アルツハイマー病患者の遺伝子解析から、アミロイドβ蛋白質の産生および蓄積の異常がアルツハイマー病の発症に広く関連しているということが現在広く受け入れられている。これは、アミロイドカスケード仮説と呼ばれている。このように、アミロイドβ蛋白質がアルツハイマー病の主原因であることは、数多くの研究により広く受け入れられている(非特許文献1)。
【0004】
アルツハイマー病は、老化が最大のリスクファクターであると考えられている(非特許文献2)。しかしながら、その主原因は上述のとおりアミロイドβ蛋白質であるため、従来、そのモデルマウスはアミロイド斑の沈着促進などの病気に特異的な顕著な病態に直接関連する遺伝子の発現を操作することによって開発されてきた(非特許文献1)。しかしながら、アミロイド斑の沈着が促進しても、臨床症状である痴呆やアルツハイマー病後期の病理像である神経源線維変化を起こしにくかったり、逆に非常に激しい病理変化を起こしてしまうので、現状のアルツハイマー病モデルマウスは未病状態のモデル、あるいはヒトアルツハイマー病とは本質的に異なる病態のモデルマウスであると考えられる。
【0005】
本発明者らは、発生過程の神経細胞に多量発現するアクチン結合タンパクドレブリン(Drebrin)を世界に先駆けて発見し(例えば、非特許文献3及び4参照)、このドレブリンがアクチンファイバーの性状を変えることにより神経細胞の形態形成、特に突起形成に関わっていること(例えば、非特許文献5~7参照)や、発生中で移動している神経細胞では、細胞体と突起全体に存在するが、成熟した神経細胞では棘構造中に特異的に存在すること(例えば、非特許文献8~10参照)を既に証明している。ドレブリンには、胚性型(embryonic type)のドレブリンEと成体型(adult type)のドレブリンAという2つのアイソフォームが存在しており(例えば、非特許文献4参照)、成熟した神経細胞のスパインに特異的に見られるドレブリンAは、神経細胞にしか発現しないという特徴を有している(例えば、非特許文献9及び10参照)。
【0006】
本発明者らは、さらに、アルツハイマー病などの痴呆性疾患では樹状突起スパインのドレブリンが広範囲に消失していることを報告している(非特許文献11)。近年、本発明者らは、ドレブリンの完全ノックアウトマウス(DXKO)およびアイソフォーム変換機構欠損マウスA(DAKO)を作成し、ドレブリンのシナプス可塑性における役割解明を行った。学習行動、シナプス可塑性への影響を調べたところ、DAKOマウスでは目立った脳の形態異常はなかったが、恐怖条件づけ記憶の障害と海馬シナプス可塑性の障害がみられた(非特許文献12)。さらに、DXKOホモマウスでは神経細胞移動と嗅覚に異常が起きていることが示唆されている(非特許文献13)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】斉藤 貴志,西道 隆臣「アルツハイマー病のモデルマウス」日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)144, 250-252, 2014
【文献】Aging Cell. 17, e12802, 2018
【文献】J. Neurochem. 44, 1210-1216, 1985
【文献】J. Biochem. 117, 231-236, 1995
【文献】J. Neurosci. Res. 38, 149-159, 1994
【文献】Exp. Cell Res. 215, 145-153, 1994
【文献】J. Biol. Chem. 269, 29928-29933, 1994
【文献】J. Neurosci. 15, 7161-7170, 1996
【文献】Dev. Brain Res. 29, 233-244, 1986
【文献】Brain Res. 413, 374-378, 1987
【文献】J Neurosci. Res. 43(1), 87-92, 1996
【文献】Neuroscience. 165(1), 138-50, 2010
【文献】Eur. J. Neuroscience, 46, 2214-2228, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおり、現状の、アミロイド斑の沈着促進などの病気に特異的な顕著な病態に直接関連する遺伝子の発現を操作することによって開発されたアルツハイマー病モデルマウスは、未病状態のモデル、あるいはヒトアルツハイマー病とは本質的に異なる病態のモデルマウスであると考えられる。本発明は、以上の事情に鑑みなされたものであり、アルツハイマー病の病態をより正確に反映した遺伝子組換え非ヒト動物を開発することにより、疾患メカニズムの解明や創薬研究に資することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、これまでのドレブリンノックアウトマウス(DXKO)についての検討により、ドレブリンを完全ノックアウトすると、記憶や学習に関係するシナプス可塑性に異常が起こることを見いだしたが、ドレブリン以外の各種のシナプス機能タンパクの発現量には著変はなく(非特許文献13)、行動異常も嗅覚関連行動以外は有意な変化は検出されていない。本発明者らは、ヒトでは20歳頃から徐々に脳内のドレブリンが減少し、60歳ではほぼ半減することに着目し(J Neuropathol ExpNeurol. 1999 Jun;58(6):637-43参照)、鋭意検討を重ねた結果、60歳以上の高齢者に見られるようにドレブリンが半減したときに、ドレブリンの完全ノックアウトとは異なる、老化を反映した表現型を示す可能性があることに着想するに至った。そこで、ドレブリン遺伝子をヘテロノックアウトした動物を作成し、解析を行ったところ、予想に反してドレブリン遺伝子を完全にノックアウトしたDXKOマウスでは見られなかったシナプスの異常や、行動異常が見られた。そこで、本発明者らは、現在使用されているアルツハイマー病モデルマウスのドレブリンの量を半減させることにより、老化というアルツハイマー病の最大のリスクファクターを有するモデル動物を作ることができるのではないかと考え、5xFADマウス(家族性アルツハイマー病の遺伝子を5個持つマウス)とドレブリンノックアウトマウス(ホモ)を掛け合わせることにより5xFAD遺伝子とドレブリン遺伝子(+/-)をヘテロに持つマウス(5xFAD/DXKO+/-)を作製した。得られたマウスにおけるアミロイドβの量やPSD-95タンパクの量を比較したところ、かけ合わせたマウスは5xFADマウスよりもアミロイドβの蓄積が促進し、逆にPSD-95が有意に減少していることを見いだした。本発明は、これらの知見により完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
〔1〕アルツハイマー病モデル非ヒト動物におけるドレブリン遺伝子がヘテロノックアウトされたことを特徴とする遺伝子組換え非ヒト動物。
〔2〕ドレブリン遺伝子が、ドレブリンA遺伝子及びドレブリンE遺伝子であることを特徴とする上記〔1〕に記載の遺伝子組換え非ヒト動物。
〔3〕アルツハイマー病モデル非ヒト動物が、脳におけるアミロイドβの蓄積を伴うアルツハイマー病モデル非ヒト動物であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の遺伝子組換え非ヒト動物。
〔4〕アルツハイマー病モデル非ヒト動物が、アルツハイマー病モデルマウスであることを特徴とする上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の遺伝子組換え非ヒト動物。
〔5〕アルツハイマー病モデルマウスが、5xFADマウスであることを特徴とする上記〔4〕に記載の遺伝子組換え非ヒト動物。
〔6〕アルツハイマー病モデル非ヒト動物と、ドレブリン遺伝子のノックアウト非ヒト動物とを交配させることを特徴とする、アルツハイマー病を発症する遺伝子組換え非ヒト動物を作製する方法。
〔7〕以下のステップ(a)及び(b)を備えたこと特徴とするアルツハイマー病の治療用及び/又は予防用薬剤のスクリーニング方法。
(a)上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の遺伝子組換え非ヒト動物へ被検物質を投与するステップ;
(b)アルツハイマー病に対する治療及び/又は予防効果を評価するステップ;
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マウス等の短命のモデル動物では達成が困難なシナプスの老化による脆弱性を、ドレブリンを半減することにより、容易に達成できるようにするものであり、老化を必要とする病気のモデルマウスを従来のモデルマウスとドレブリンノックアウトマウスを掛け合わせて、ドレブリンヘテロノックアウトマウスとすることにより、老化リスクを有した病気のモデルマウスを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)実施例1の、ドレブリンノックアウト(DXKO)マウスの作成方法の概略を示す図である。(B)実施例1の、DXKOホモマウス及びDXKOヘテロマウスの選別のためにジェノタイピングを行った結果を示す図である。
【
図2】実施例2の、野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(DXKO
+/-)、DXKOホモマウス(DXKO
-/-)のドレブリン発現量を、ウェスタンブロッティングにより解析した結果を示す図である。
【
図3】実施例3の、野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(Het)、DXKOホモマウス(KO)の、生存神経細胞数、樹状突起長、ドレブリンの集積像数(総ドレブリンクラスター数、ドレブリンクラスター密度)を測定した結果を示す図である。
【
図4】実施例4の、野生型及びDXKOヘテロマウス(ヘテロ型)のNMDA受容体活性を解析した結果を示す図である。
【
図5】実施例6の、野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(Het)、DXKOホモマウス(KO)のローターロッドテストを行った結果を示す図である。
【
図6】(A)実施例7で用いたY字型迷路。(B)実施例7の、野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(ヘテロ型)、DXKOホモマウス(ホモ型)の行動変化を解析した結果を示す図である。自発運動の低下は探索行動の低下により、空間作業記憶の低下は交替反応の低下により評価した。
【
図7】実施例9の、5xFAD/DXKO
+/-マウスと5xFADのマウスの、脳へのアミロイドβ蓄積をウェスタンブロッティングにより比較した結果を示す図である。
【
図8】実施例9の、5xFAD/DXKO
+/-マウスと5xFADのマウスの、脳でのPSD95発現をウェスタンブロッティングにより比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、アルツハイマー病モデル非ヒト動物におけるドレブリン遺伝子がヘテロノックアウトされたことを特徴とする遺伝子組換え非ヒト動物(以下、「本発明の遺伝子組換え非ヒト動物」という)に関する。ここで、ドレブリンとは、2つの主要なアイソフォーム(胎児型アイソフォームであるドレブリンEと成体型アイソフォームであるドレブリンA)を有し、これら2つのアイソフォームは単一のドレブリン遺伝子からの選択的スプライシングによって生じるアクチン結合タンパク質である。ドレブリンEとドレブリンAとの相違点は、Ins2配列(46アミノ酸残基)の有無であり、ドレブリンAにおいては、Ins2配列が分子に挿入されている。
【0014】
本明細書において、「アルツハイマー病モデル非ヒト動物におけるドレブリン遺伝子がヘテロノックアウトされた」とは、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物において、相同染色体上のドレブリン遺伝子の一方がノックアウトされたことを意味する。その結果、本発明の遺伝子組換え非ヒト動物は、ドレブリンの発現が完全には失われていないが、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物よりも低下している。本発明の遺伝子組換え非ヒト動物は、好ましくは、ドレブリンA及びドレブリンEの両方がヘテロノックアウトされたものであり、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物と比較して脳におけるアミロイドβの蓄積が亢進される等、アルツハイマー病の病態をより正確に反映し得るものである。本発明の遺伝子組換え非ヒト動物が、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物と比較してアルツハイマー病の病態をより正確に反映する理由は明らかではないが、ドレブリンの量を半減させることにより、老化というアルツハイマー病の最大のリスクファクターを有させることができるからであると考えられる。したがって、本発明の遺伝子組換え非ヒト動物は、ドレブリンの発現量がベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物より低下したものであればよく、ヘテロノックアウトに代えて、又はヘテロノックアウトとともに、遺伝子ノックダウン等の公知の遺伝子発現量の調整方法を用いてドレブリンの発現量を低下させてもよい。
【0015】
本発明において、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物としては、アミロイドβの前駆体タンパク質(amyloid precursor protein:APP)を過剰発現させたモデル非ヒト動物や、APP遺伝子にアルツハイマー病の家族性変異を導入したモデル非ヒト動物等の、アミロイドβの蓄積を伴うアルツハイマー病モデル非ヒト動物を挙げることができる。ここで、非ヒト動物としては、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター等を挙げることができ、中でもマウス等の齧歯類動物が好ましい。アルツハイマー病モデル非ヒト動物としては、例えばALZFORUMウェブサイトのデータベース(https://www.alzforum.org/databases)に記載のアルツハイマー病モデル非ヒト動物を使用することができ、具体的には、Tg2576、APP23、PDAPP、J20、APPPS1、APP/PS1ΔE9、TgCRND8、3xTg、5xFAD、APP/PS1-dKI、AppNL-F-KI、AppNL-G-F-KI等のモデルマウスを例示することができるが、該データベースに記載のアルツハイマー病モデル非ヒト動物に限定されない。
【0016】
本発明の遺伝子組換え非ヒト動物において、ドレブリンA及び/又はドレブリンE、好ましくはドレブリンA及びドレブリンEの両方の発現量は、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、又は55%以下であって、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は45%以上であることを意味する。具体的には、ドレブリンの発現量は、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物の10%~90%、20%~80%、30%~70%、40%~60%、又は45%~55%であることが好ましい。好ましい態様において、本発明の遺伝子組換えモデル非ヒト動物において、ドレブリン遺伝子は完全ノックアウトされていない。また、上記ドレブリンの発現量の低下は、好ましくは脳での発現量の低下であり、脳ホモジェネートをアクリルアミドゲルで電気泳動しPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜に転写後、ドレブリン抗体で染色し、バンドの濃さを比較する方法により判定することができる。
【0017】
ドレブリン遺伝子をヘテロノックアウトする方法としては、例えば、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物と、ドレブリン遺伝子のノックアウト非ヒト動物とを交配させる方法を挙げることができる。ここで、ドレブリン遺伝子のノックアウト非ヒト動物としては、ヘテロ接合体、ホモ接合体のどちらを使用してもよいが、ホモ接合体を用いる方が、交配により生まれた非ヒト動物から、ヘテロノックアウト体を選抜するステップが必要ないため好ましい。また、本発明において、ドレブリン遺伝子のノックアウト非ヒト動物を、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物と1回交配させることで、アルツハイマー病遺伝子変異をヘテロで有する遺伝子組換えモデル非ヒト動物を作製してもよく、ドレブリン遺伝子のノックアウト非ヒト動物を、ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物と2回交配させることで、アルツハイマー病遺伝子変異をホモで有する遺伝子組換えモデル非ヒト動物を作製してもよい。ベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物と、ドレブリン遺伝子のノックアウト非ヒト動物とを交配させて得られた仔の遺伝子型は、公知のジェノタイピング方法を用いて決定することができ、例えばDNAシークエンシング、SSCP(Single Strand Conformation Polymorphism、一本鎖高次構造多型)法、RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism、制限酵素断片長多型)法、PCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)法、AFLP(AmplifiedFragment Length Polymorphism)法、ASO(Allele SpecificOligonucleotide)プローブ法、DNAマイクロアレイやDNAビーズに対する結合を検出する方法等を用いることができる。かかる方法で得られた本発明の遺伝子組換えモデル非ヒト動物は、例えば、さらにベースとして用いるアルツハイマー病モデル非ヒト動物と交配させ、所望の遺伝子型を有する仔を上記ジェノタイピング方法により選抜することによって継代することができる。
【0018】
上記ドレブリン遺伝子のノックアウト非ヒト動物は、例えばドレブリン遺伝子のエクソン3を含む領域を欠失させることにより作製することができる。ドレブリン遺伝子の一部を欠失させるための方法としては、公知のいかなる方法を用いることができるが、中でもバクテリオファージP1由来のCre-loxPシステムは、脳内部特異的に変異を持ち込むことが可能となり、シナプスの成熟障害(シナプスの脆弱性)を惹起させうることから本発明の遺伝子組換え非ヒト動物の作製に好適に使用することができる。上記Cre-loxPシステムに代えて、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のFLP-FRTシステム、醤油酵母(Zygosaccharomyces rouxii)由来のR-RSシステム、バクテリオファージMu由来のGin-gixシステムも使用することができる。
【0019】
本発明の遺伝子組換え非ヒト動物は、アルツハイマー病の発症メカニズムの解析に有用である。さらに、本発明の遺伝子組換え非ヒト動物は、アルツハイマー病の治療用及び/又は予防用薬剤のスクリーニングに用いることができる。上記スクリーニングを行う方法としては、本発明の遺伝子組換え非ヒト動物へ被検物質を投与するステップ(a)と、アルツハイマー病に対する治療及び/又は予防効果を評価するステップ(b)とを備えた方法を挙げることができる。上記ステップ(b)のアルツハイマー病の治療効果を評価するステップとしては、アルツハイマー病の症状を呈した本発明の遺伝子組換え非ヒト動物に対して被検物質を投与し、脳へのアミロイドβの蓄積、PSD-95タンパクの量、シナプスの形態や機能、空間記憶や空間作業記憶能力、協調運動や運動学習を指標としてアルツハイマー病の治療効果を判定する方法を例示することができる。また、上記ステップ(b)のアルツハイマー病の予防効果を評価するステップとしては、アルツハイマー病の症状を呈する前の本発明の遺伝子組換え非ヒト動物に対して被検物質を投与し、脳へのアミロイドβの蓄積、PSD-95タンパクの量、シナプスの形態や機能、空間記憶や空間作業記憶能力、協調運動や運動学習を指標としてアルツハイマー病の発症予防効果を判定する方法を例示することができる。
【0020】
以下、実施例により本発明のノックアウトマウスの作製方法をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
1.ドレブリンノックアウト(DXKO)マウスの作製
Dbn1遺伝子のエクソン3(GGCTCTGTACACATACGAGGATGGCTCAGATGACCTCAAGCTTGCAGCGTCAGGAG;配列番号1)が欠失したDXKOマウスは、ドレブリンフロックスマウスと、TLCN-Creマウス(Fuse et al., Biochem BiophysRes Commun. 2004 Jun 4;318(3):665-72)との交配によって作製した。作製方法の概略を
図1Aに示す。以下、作製方法を具体的に述べる。
【0022】
C57BL/6Jマウスのドレブリン遺伝子をPCRによりクローニングし、エクソン3の168塩基上流にloxPを、318塩基下流にfrt配列で挟んだネオマイシン(neo)耐性遺伝子(pKG-neo)、さらにこれより24塩基下流にもう一つのloxPを挿入し、且つ5’端にネガティブ選別のためのジフテリア毒素A遺伝子(DT)を挿入したターゲティングベクターを作製した。ターゲティングベクターをC57BL/6Nマウスで樹立したES細胞(RENKA)にエレクトロポレーション(電気穿孔法)により導入し、G418存在下で生存、増殖するESクローンを単離した。単離したESクローンのうちターゲティングベクターが正しく相同組み換えされたものをサザンブロットで選別した。得られた組換えES細胞からneo耐性遺伝子を除去し、そのES細胞を、ICR系マウス由来の桑実胚へマイクロインジェクションし、これを偽妊娠の仮親子宮内に移植しキメラマウスを得た。得られたキメラマウスのうち、ES細胞由来の体細胞を高割合で有するキメラ個体と野生型のC57BL/6Nマウスを親として、組換え遺伝子を有するドレブリンフロックスマウスを得た。ドレブリンフロックスマウスは、2019年9月27日付で、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソース研究センター 実験動物開発室(日本国 茨城県つくば市高野台3-1-1)に寄託した(受託番号RBRC10925;C57BL/6N-Dbn1<tm2.1Shira>,DXKO-Flox)。
【0023】
得られたドレブリンフロックスマウスと、TLCN-Creマウスとを親とし、これらを掛け合わせることで、2つのloxPで挟まれた領域を欠失したマウスのヘテロ個体(DXKOヘテロマウス)を得た。得られたDXKOヘテロマウス同士を掛け合わせ、DXKOのホモ個体(DXKOホモマウス)を得た。DXKOホモマウス及びDXKOヘテロマウスの選別は、PCRによるジェノタイピングにより行った(
図1B)。
図1Bに示すように、エクソン3を挟む領域(
図1Aの矢印で挟まれた領域)をPCRで増幅し、電気泳動に供したところ、DXKOホモマウスではエクソン3が欠失した500bpの断片のみが増幅され、DXKOヘテロマウスではエクソン3が欠失した500bpの断片と、エクソン3を含む880bpの断片が増幅された。
【実施例2】
【0024】
2.DXKOマウスのドレブリン発現量の解析
野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(DXKO+/-)、DXKOホモマウス(DXKO-/-)それぞれの大脳皮質をSDS-サンプルバッファーでホモジェナイズして熱処理後、湿重量100μgおよび50μg分のホモジェネートをアクリルアミドゲルで電気泳動しPVDF膜に転写後、ドレブリン抗体(M2F6ハイブリドーマ上清(Shirao and Obata,1986;非特許文献9)、RRID: AB_2532045)を用いて検出を行った。また、ローディング・コントロールとしてはβ-アクチンを用い、抗アクチン抗体(Sigma-Aldrich A5441、シグマアルドリッチ社製)で検出を行った。
【0025】
結果を
図2に示す。DXKOホモマウスではドレブリン発現が見られなかったのに対し、DXKOヘテロマウスでは、野生型の半分程度のドレブリン発現が検出された。
【実施例3】
【0026】
3.DXKOマウスの神経細胞観察
野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(Het)、DXKOホモマウス(KO)の海馬神経細胞を96ウェルプレート上で培養し、培養21日目に固定、ドレブリン抗体(M2F6ハイブリドーマ上清(Shirao and Obata,1986;非特許文献9)、RRID: AB_2532045)、抗MAP2抗体(Sigma-Aldrich M4403、シグマアルドリッチ社製)を用いた免疫細胞染色、並びにDAPIを用いて核染色を行った後、IN Cell Analyzer 2200(GE Healthcare社製)を用いて撮像した。生存神経細胞数、樹状突起長、ドレブリンの集積像数(総ドレブリンクラスター数、ドレブリンクラスター密度)を、IN Cell Developer Toolbox v1.9(GE Healthcare社製)を用い、Hanamuraらの方法(Hanamura et al., J Pharmacol Toxicol Methods. 2019Jul 2:106607. doi: 10.1016/j.vascn.2019.106607)により自動解析した。
【0027】
結果を
図3に示す。野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(Het)、DXKOホモマウス(KO)の神経細胞は、生存率、突起の成長速度は変化しないが、ドレブリンの集積像数はDXKOヘテロマウスで約半分、ドレブリンを完全ノックアウトしたDXKOホモマウスではゼロになっていた。
【実施例4】
【0028】
4.NMDA受容体活性の解析
96ウェルプレートを用いて、野生型及びDXKOヘテロマウス(ヘテロ型)の凍結マウス海馬神経細胞を3週間培養後、50μMグルタミン酸で10分間処理してから固定した。ドレブリン抗体(M2F6ハイブリドーマ上清(Shirao and Obata,1986;非特許文献9)、RRID: AB_2532045)でドレブリンクラスター数を検出した。写真撮影および解析はHanamuraら(Hanamura et al., J Pharmacol Toxicol Methods. 2019Jul 2:106607. doi: 10.1016/j.vascn.2019.106607)及びMitsuokaら(J PharmacolToxicol Methods. 2019 May 10:106583. doi: 10.1016/j.vascn.2019.106583)の方法に従い、IN Cell Analyzer 2200(GE Healthcare社製)を用いて行った。
【0029】
結果を
図4に示す。野生型もヘテロ型もNMDA受容体活性は維持されていたが、ヘテロ型では野生型と比較して活性の減弱がみられた。
【実施例5】
【0030】
5.スパイン安定性の解析
5-1 野生型とDXKOホモマウスの比較
野生型(WT)とDXKOホモマウス(Homo)のマウスのスパイン安定性を比較するために、Thy-1プロモーターの下流でYFPを発現するトランスジェニックマウスと交配して作製したマウス(35~57週齢)に対して、三種混合麻酔薬による深麻酔下で頭蓋骨を薄く削ることで観察窓とするThin skull法を適用し、多光子励起レーザー走査型顕微鏡(FVMPE-RS,Olympus社製)を用いて、大脳新皮質体性感覚野の主に5層の錐体神経細胞から伸びた尖端樹状突起のうち1層の樹状突起スパインを観察した。これらは基本的にはTakatsuruらの方法(BrainRes. 2009 Oct 19;1294:45-51)に基づいて行った。最初に観察した後、6時間後に再び観察し、6時間の間で起こるスパインの新生、消失を調べたところ、スパインの安定性に差はないことが示唆された(表1)。
【0031】
【0032】
5-2 野生型とDXKOヘテロマウスの比較
野生型(WT)とDXKOヘテロマウス(Hetero)のマウスのスパイン安定性を比較するために、Thy-1プロモーターの下流でGFPを発現するトランスジェニックマウスと交配し、ケタミン・キシラジン混液による深麻酔下でThin skull法を適用し、多光子励起レーザー走査型顕微鏡を用いて、大脳新皮質体性感覚野の主に5層の錐体神経細胞から伸びた尖端樹状突起のうち1層の樹状突起スパインを観察した。これらについても上述のTakatsuruらの方法に基づいて行った。これらのマウス(9~17週齢)について、1週間で起こるスパインの新生、消失を調べたところ、DXKOヘテロマウスでは高い割合で起こることが判り、DXKOヘテロマウスでは野生型マウスよりもスパインが不安定になっていることが示唆された。
【0033】
【実施例6】
【0034】
6.ローターロッドテスト
野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(Het)、DXKOホモマウス(KO)(8カ月齢)を、4rpm(0秒)から始まり40rpm(300秒)まで回転速度を徐々に加速しながら回転する直径32mmのホイール上に乗せて、落下するまでの時間を測定した。5回トレーニング行ったのち、6回目で落ちるまでの時間を測定結果とした。1日3回の試行を2日間続けて行い、平均値を算出した。
【0035】
結果を
図5に示す。野生型、DXKOホモマウスと比較して、DXKOヘテロマウスは早く落ちることから、野生型やホモ型では協調運動・運動学習に異常はないが、DXKOヘテロマウスだけ異常を示すことが示唆された。
【実施例7】
【0036】
7.行動変化解析
図6Aに示すY字型迷路を用い、野生型(WT)、DXKOヘテロマウス(ヘテロ型)、DXKOホモマウス(ホモ型)(8カ月齢)の行動変化を解析した。Y字型迷路は、灰色のプラスチックの中央プラットフォームと3本のアームからなり、各アームは幅3cm(底部)・12cm(上部)×高さ13cm×長さ40cmとした。かかるY字型迷路の中央プラットフォームにマウスを置き、5分間自由に探索させた。アームへの侵入回数を自発運動の指標とし、以下の式(1)で計算される自発的交替行動率を空間作業記憶の指標とした。
自発的交替行動率(%)=[(自発的交替行動)/(総侵入回数-2)]×100
・・・(1)
※自発的交替行動:3回連続して異なるアームへ進入した回数
【0037】
結果を
図6Bに示す。ホモ型では、野生型と比較して自発運動、空間作業記憶の低下は見られなかったが、ヘテロ型では、自発運動、空間作業記憶ともに低下がみられた。
【0038】
実施例3~7の結果より、DXKOヘテロマウスでは、神経細胞の生存率、突起の成長速度には異常が認められないが(実施例3)、NMDA受容体機能が減弱し(実施例4)、スパインの安定性が低くなっており(新しくできたり消失したりする割合が高い)(実施例5)、協調運動・運動学習に異常が出現し(実施例6)、空間記憶や空間作業記憶が低下していた(実施例7)。このような異常がヘテロマウスにおいてのみ認められるのは、ドレブリンが生まれながらにして全くないDXKOホモマウスでは、何らかの代償機能が働き、ヘテロマウスで見られたような異常は認められないためではないかと推測される。
【0039】
ドレブリンは、加齢とともに減少することが知られている。したがって、DXKOヘテロマウスでの上記異常は、DXKOヘテロマウスにおけるドレブリン発現量が、60歳以上の高齢者に見られるように半減したことにより、老化を反映した表現型を示した可能性がある。そこで、従来のアルツハイマー病モデルマウスにおいて、ドレブリン遺伝子のヘテロノックアウトにより発現量を半減させることで、老化というアルツハイマー病の最大のリスクファクターを有するモデル動物を作ることができるのではないかと考え、以下の実験を行った。
【実施例8】
【0040】
8.ドレブリン遺伝子がヘテロノックアウトされたアルツハイマー病モデルマウス(5xFAD/DXKO+/-)の作製
アルツハイマー病モデルマウスとして、5xFADマウス(MMRRC034848、ジャクソンラボラトリー)を用い、DXKOホモマウスと掛け合わせることにより5xFAD遺伝子とドレブリン遺伝子(+/-)をヘテロに持つマウス(5xFAD/DXKO+/-)を作製した。ここで、5xFADマウスとは、ニューロン特異的マウスThy-1プロモーターの転写制御下、スウェーデン(Swedish)(K670NとM671L)、フロリダ(Florida)(I716V)及びロンドン(London)(V717I)に変異を持つヒトAPP695cDNA、及びヒトPS1cDNA(M146LとL286Vの変異)を過剰発現し、脳へのアミロイドβ蛋白質の蓄積が促進しているマウスである(Oakley,H. et al.,J Neurosci, 26, 10129-10140, 2006)。
【実施例9】
【0041】
9.5xFAD/DXKO+/-マウスの脳へのアミロイドβ蓄積
実施例8で作製した5xFAD/DXKO+/-マウスと5xFADのマウスの、脳へのアミロイドβ蓄積を比較した。5xFAD/DXKO+/-マウスと5xFADのマウス(15週齢)から抽出した湿重量500μgの大脳皮質(Cx)及び海馬(Hipp)のホモジェネートを電気泳動し、抗アミロイドβ抗体(バイオレジェンド社製)でウェスタンブロットを行った。
【0042】
結果を
図7に示す。アミロイドβモノマーのバンドを比較したところ、大脳皮質、海馬のいずれにおいても、5xFAD/DXKO
+/-マウスの方が5xFADのマウスよりアミロイドβモノマーのバンドが濃く、アミロイドβが蓄積していることが示された。
【実施例10】
【0043】
10.5xFAD/DXKO+/-マウスのPSD95発現量比較
PSD95(postsynaptic density protein 95)は、シナプス後部の主要な足場タンパク質であり、シナプス後肥厚部(postsynaptic density;PSD)において最も豊富に存在しているタンパク質の一つである。NR2A-D、GluR6、ニューロリギン、nNOSなど様々な分子と相互作用し、シナプス機能の維持や可塑性などに寄与すると考えられている。
【0044】
そこで、実施例8で作製した5xFAD/DXKO+/-マウスと5xFADのマウスの、PSD95発現量を比較した。5xFAD/DXKO+/-マウスと5xFADのマウス(15週齢)から抽出した湿重量300μgの大脳皮質(Cx)及び海馬(Hipp)のホモジェネートを電気泳動し、抗PSD95抗体(サーモサイエンティフィック社製)でウェスタンブロットを行った。
【0045】
結果を
図8に示す。海馬では、5xFAD/DXKO
+/-
マウスと5xFADマウスのPSD95のバンドの濃さに差は見られなかったが、大脳皮質では、5xFAD/DX K O
+/-マウスの方が5xFADのマウスより
PSD95のバンドが薄く、 5xFAD/DXKO
+/-
マウスでPSD95の発現が低下していることが示された。
【0046】
実施例9、10の結果より、5xFAD/DXKO+/-マウスでは、5xFADマウスと比較してアミロイドβの蓄積が促進しており、且つ正常なシナプス機能の維持や可塑性などに寄与すると考えられるPSD95の発現が低下していた。したがって、ドレブリン遺伝子をヘテロノックアウトすることによりドレブリン発現を半減させたアルツハイマー病モデルマウスは、アルツハイマー病の病態をより正確に反映することが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、マウス等の短命のモデル動物では達成が困難なシナプスの老化による脆弱性を、ドレブリンを半減することにより、容易に達成できるようにするものであり、老化を必要とする従来のアルツハイマー病モデル非ヒト動物をドレブリンノックアウト非ヒト動物と掛け合わせて、ドレブリンヘテロノックアウト非ヒト動物とすることにより、老化リスクを有したアルツハイマー病モデル非ヒト動物を作成することができる。
本発明により作製されるモデル動物(AD動物)はアミロイド斑の沈着促進などというアルツハイマー病の病理所見に加えて、老化というアルツハイマー病の最大のリスクファクターを有するため、ヒトのアルツハイマー病の今までにない良いモデル動物となり、アルツハイマー病などの認知症の創薬に用いることができる。
本発明で作製するモデル動物から調整した培養神経細胞はシナプスにおけるドレブリンの集積が高齢者のヒトと同様に50%程度まで減少しているので、高齢者に発症するアルツハイマー病の患者神経細胞のモデル細胞として使うことができ、アルツハイマー病などの認知症の創薬に用いることができる。
したがって、本発明の、医療・製薬分野における産業上の利用可能性は極めて高い。
【配列表】