(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】表皮基材、発泡表皮基材、発泡表皮材、表皮基材の製造方法、発泡表皮基材の製造方法、発泡表皮材の製造方法、加飾成形体、および、加飾成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20240110BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2019192729
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】510127882
【氏名又は名称】株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】鷹羽 祐貴
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-021230(JP,A)
【文献】特開平08-244060(JP,A)
【文献】特開昭54-159461(JP,A)
【文献】特開昭53-112970(JP,A)
【文献】特開2018-012279(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143373(WO,A1)
【文献】特開平04-238959(JP,A)
【文献】特開昭52-063262(JP,A)
【文献】特開昭57-080053(JP,A)
【文献】特開昭57-080033(JP,A)
【文献】特開2011-000810(JP,A)
【文献】特開2011-079269(JP,A)
【文献】特開2020-138402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体と、
前記樹脂成形体に積層した、粘着剤を含む粘着層と、前記粘着層に積層した発泡剤を含むゲル状の樹脂層の発泡体である発泡樹脂層と、を備える発泡表皮
材と、を備え、
前記樹脂成形体の少なくとも一部が
3次元表面被覆成形により前記発泡表皮材
で加飾されている、自動車の内装部材。
【請求項2】
前記発泡樹脂層の厚さが、50μm~4000μmである、請求項1に記載の自動車の内装部材。
【請求項3】
前記発泡樹脂層の表面に凹凸状の意匠部を有する、請求項1または2に記載の自動車の内装部材。
【請求項4】
前記発泡樹脂層に積層した印刷層をさらに備える、請求項1または2に記載の自動車の内装部材。
【請求項5】
前記印刷層の表面に凹凸状の意匠部を有する、請求項4に記載の自動車の内装部材。
【請求項6】
前記粘着層の厚さが、5μm~300μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の自動車の内装部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の自動車の内装部材を製造する方法であって、
樹脂成形体に対して、請求項1~6のいずれか1項に記載の前記発泡表皮材を3次元表面被覆成形により貼り合わせて自動車の内装部材を得る、自動車の内装部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮基材、発泡表皮基材、発泡表皮材、表皮基材の製造方法、発泡表皮基材の製造方法、発泡表皮材の製造方法、加飾成形体、および、加飾成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の自動運転技術の進歩には著しいものがあり、近い将来、完全な自動走行が可能となることが期待されている。自動車が自動走行するようになれば、ハンドル、ギア、アクセル、ブレーキ、スピードメータ、フロント部分やサイド部分の収納等の形状やレイアウトが大幅に変更されることや、これらが無くなることが予想される。そうであれば、自動車創成期から続く、運転席、助手席、後部座席等およびその周辺の車内インテリアのあり方は一変することになる。車は移動手段としての価値よりも、運転席、助手席、後部座席等の居住性や空間の快適さが重視され、家のリビングルームが車内にそのまま移動したような車内空間が求められるようになると思われる。
【0003】
車の内装部材は、ダッシュボード、センターコンソール、インナードアパネル、ドアトリム、シフトパネル、ボディサイドトリム、デッキサイドトリム、フロントピラー、センターピラー、リアクォーターピラー等、多岐にわたる。内装部材のほとんどが樹脂の射出成形によって成形され、成形後に塗装等によって加飾が施されている。最近では、加飾シートを射出成形金型内にインサートする方法(シートインサート射出成形)による加飾も増えてきており、自動車メーカーは個人の趣味嗜好に応じて色柄の異なる加飾バリエーションを提供している。
【0004】
例えば、特許文献1には、予め樹脂成形されたインサート原料を射出金型のキャビティ内の所定位置にセットしたのち、熱可塑性樹脂を含む射出原料をキャビティ内に射出充填して、自動車用内装材を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加飾バリエーションの種類は限られており、多様な個人の趣味嗜好に合致した製品を提供するには至っていない。その理由として、例えば、塗装により加飾する場合、所定形状の射出成形品を一定ロット製造した後、塗装ブースにおいて塗装するため、カラーバリエーションをそろえて小口のカラーの選択には対応できるものの、形状や意匠性を小口に選択できるような、小ロットの加飾成形体を生産することが困難である。また、シートインサート射出成形により加飾する場合は、加飾シートを金型内にインサートする前に、予備賦形、トリミングの工程が必要となるため、工程が煩雑になるという難点があり、やはり小ロットの加飾成形体を生産することが困難であった。すなわち、塗装により加飾する場合、シートインサート射出成形により加飾する場合のいずれの場合もデザインの自由度が低く、壁紙では実現されている多様な柄(木目調、織物調、塗壁調、石目調、プリント柄等)と凹凸のある質感、風合いを再現できず、次世代に求められるリビングルームのような車内空間を演出することは困難であった。
【0007】
従って、本発明は、上記のような問題点に着目し、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる、表皮基材、発泡表皮基材、発泡表皮材、表皮基材の製造方法、発泡表皮基材の製造方法、発泡表皮材の製造方法、加飾成形体、および、加飾成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表皮基材は、離型シートと、前記離型シートに積層した、発泡剤を含むゲル状の樹脂層と、を備える。
【0009】
また、本発明の表皮基材は、前記樹脂層の厚さが、10μm~200μmであってもよい。
【0010】
本発明の発泡表皮基材は、本発明の表皮基材の離型シートと、前記離型シートの上に積層した本発明の表皮基材の樹脂層の発泡体である発泡樹脂層と、を備える。
【0011】
また、本発明の発泡表皮基材は、前記発泡樹脂層の厚さが、50μm~4000μmであってもよい。
【0012】
また、本発明の発泡表皮基材は、前記発泡樹脂層の表面に凹凸状の意匠部を有していてもよい。
【0013】
また、本発明の発泡表皮基材は、前記発泡樹脂層に積層した印刷層をさらに備えていてもよい。
【0014】
また、本発明の発泡表皮基材は、前記印刷層の表面に凹凸状の意匠部を有してしてもよい。
【0015】
また、本発明の発泡表皮基材は、前記離型シートが、ポリエチレンテレフタレートを含むシートに、シリコーン膜が積層したものであり、前記シリコーン膜に前記発泡樹脂層が積層していてもよい。
【0016】
本発明の発泡表皮材は、粘着剤を含む粘着層と、前記粘着層に積層した本発明の発泡表皮基材の発泡樹脂層と、備える。
【0017】
また、本発明の発泡表皮材は、前記粘着層の厚さが、5μm~300μmであってもよい。
【0018】
本発明の表皮基材の製造方法は、本発明の表皮基材を製造する方法であって、離型シートに積層した、発泡剤を含む樹脂ペーストをゲル化して、前記離型シートにゲル状の樹脂層が積層した表皮基材を得る、樹脂層形成工程を備える。
【0019】
本発明の発泡表皮基材の製造方法は、本発明の発泡表皮基材を製造する方法であって、本発明の表皮基材の製造方法により表皮基材を得る表皮基材製造工程と、樹脂層に含まれる発泡剤を発泡させて発泡樹脂層として、離型シートに前記発泡樹脂層が積層した発泡表皮基材を得る、発泡工程と、を備える。
【0020】
また、本発明の発泡表皮基材の製造方法は、前記発泡工程の前に、前記樹脂層に印刷層を積層する印刷工程をさらに備えていてもよい。
【0021】
また、本発明の発泡表皮基材の製造方法は、前記発泡工程後に、前記発泡樹脂層または前記印刷層の表面に凹凸状の意匠部を形成する意匠部形成工程をさらに備えていてもよい。
【0022】
また、本発明の発泡表皮材の製造方法は、本発明の発泡表皮材を製造する方法であって、本発明の発泡表皮基材の製造方法により発泡表皮基材を得る発泡表皮基材製造工程と、前記発泡表皮基材の前記離型シートを剥離して、剥離した面に粘着剤を含む粘着層を形成して、前記粘着層に前記発泡樹脂層が積層した発泡表皮材を得る、粘着層形成工程と、を備える。
【0023】
本発明の加飾成形体は、樹脂成形体と、前記樹脂成形体に積層した本発明の発泡表皮材と、を備え、前記樹脂成形体の少なくとも一部が前記発泡表皮材により覆われている。
【0024】
また、本発明の加飾成形体の製造方法は、本発明の加飾成形体を製造する方法であって、樹脂成形体に対して、本発明の発泡表皮材を3次元表面被覆成形により貼り合わせて加飾成形体を得るものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表皮基材は、これを用いて発泡表皮材を得ることにより、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる。すなわち、統一して使用可能な中間材料として表皮基材を大量にストックしておき、これを用いて、例えば印刷の柄や凹凸形状のバリエーション等の所望の意匠性についての小口の注文に応じて、表皮基材に印刷やその他の加工を施して発泡表皮基材、発泡表皮材を製造することにより、様々な意匠性を有する発泡表皮材やこの発泡表皮材を用いた加飾成形体の小ロットの生産に対応することができる。
【0026】
また、本発明の発泡表皮基材は、これを用いて発泡表皮材を得ることにより、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる。
【0027】
本発明の発泡表皮材は、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる。
【0028】
本発明の表皮基材の製造方法は、この方法により製造された表皮基材を用いて発泡表皮材を得ることにより、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる発泡表皮材を製造することができる。
【0029】
本発明の発泡表皮基材の製造方法は、この方法により製造された発泡表皮基材を用いて発泡表皮材を得ることにより、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる発泡表皮材を製造することができる。
【0030】
本発明の発泡表皮材の製造方法は、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる発泡表皮材を製造することができる。
【0031】
本発明の加飾成形体は、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる。
【0032】
本発明の加飾成形体の製造方法は、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる加飾成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる発泡表皮材の製造方法において、各工程を模式的に説明する断面図である。
【
図2】本発明の発泡表皮基材の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の発泡表皮基材の他の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の発泡表皮基材のさらに他の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態にかかる加飾成形体の製造方法において、各工程を模式的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[表皮基材、発泡表皮基材、発泡表皮材]
本発明の一実施形態にかかる表皮基材、発泡表皮基材、発泡表皮材について、
図1を参照して説明する。本実施形態の表皮基材100は、例えば、本実施形態の発泡表皮基材200を製造する用途に用いることができ、本実施形態の発泡表皮基材200は、例えば、本実施形態の発泡表皮材300を製造する用途に用いることができる。また、本実施形態の発泡表皮材300は、例えば、樹脂で所定の形状に射出成形等された樹脂成形体500を3次元表面被覆成形(以後、「TOM成形」と記載することがある。)により発泡表皮材300で加飾して、加飾成形体700を得る用途に用いることができる。
【0035】
(表皮基材)
本実施形態の表皮基材100(
図1(B))は、離型シート110と、離型シート110に積層した、発泡剤121を含むゲル状の樹脂層120と、を備える。
【0036】
離型シート110は、表皮基材100の基材層であり、例えば、紙製のシートやポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂を含むシートに、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の離型剤を含む膜が積層したものを用いることができる。本実施形態の離型シート110は、ポリエチレンテレフタレートを含むシート111に、シリコーン樹脂を含むシリコーン膜112が積層したものである。また、本実施形態の表皮基材100において、離型剤を含む層(シリコーン膜112)に樹脂層120が積層している。
【0037】
樹脂層120は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂を用いることができ、1種類の樹脂を用いてもよいし、複数の樹脂を混合して用いてもよい。また、合成樹脂の平均重合度は、例えばPVCの場合600~2000程度とすることができる。また、樹脂層120に含まれる発泡剤121(
図1(B))としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)を用いることができる。樹脂層120における発泡剤121の含有量、樹脂層120の厚さは後述する発泡表皮基材200の発泡樹脂層210の厚さ等に併せて設定することができ、例えば、樹脂層120の厚さは10μm~200μmとすることができる。
【0038】
また、必要に応じて、樹脂層120は添加剤を含んでもよい。添加剤としては、既知のものを用いることができ、例えば、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、アビピン酸ジオクチル(DOA)等の可塑剤、樹脂の酸化を抑制して劣化を防止するバリウム-亜鉛系(Ba-Zn系)、錫系(Sn系)、カルシウム-亜鉛系(Ca-Zn系)等の安定剤、安定助剤、Sb2O3等の難燃剤、意匠性を付与する顔料、充填剤としてのCaCO3等を用いることができる。
【0039】
(発泡表皮基材)
本実施形態の発泡表皮基材200(
図1(C))は、前述した表皮基材100の離型シート110と、離型シート110に積層した樹脂層120の発泡体である発泡樹脂層210と、を備える。また、本実施形態の離型シート110において、離型剤を含む層(シリコーン膜112)に発泡樹脂層210が積層していることで、発泡樹脂層210を離型シート110から剥離しやすくすることができる。
【0040】
発泡樹脂層210は、表皮基材100の樹脂層120の発泡体であり、厚さは50μm~4000μmとすることができる。
【0041】
また、発泡表皮基材は、
図2に示すように、発泡樹脂層に積層した印刷層を備えていてもよい。印刷層とは、例えば、木目調、織物調、石目調、塗壁調、花柄、幾何学模様やその他の模様、イラスト等の柄を発泡表皮材の表面に付加するものである。
図2の発泡表皮基材200Aは、離型シート110と、離型シート110に積層した発泡樹脂層210と、発泡樹脂層210に積層した印刷層220と、を備える。印刷層220は、例えば、無機系顔料、有機系顔料等の顔料を用いて形成することができる。また、印刷層220の厚さは特に限定されないが、1μm~20μm程度とすることができる。発泡表皮基材200Aが印刷層220を備えることにより、発泡表皮基材200Aに意匠性を付与することができる。また、発泡表皮基材200Aを用いて製造した発泡表皮材、加飾成形体に意匠性を付与することができる。なお、印刷層は発泡表皮基材に付与する意匠性に併せて設けることができ、発泡表皮基材の全体に設けてもよいし、発泡表皮基材の一部のみに設けてもよい。
【0042】
また、発泡表皮基材は、
図3に示すように、発泡樹脂層の表面に凹凸状の意匠部を有していてもよい。
図3の発泡表皮基材200Bは、離型シート110と、離型シート110に積層した発泡樹脂層210と、発泡樹脂層210の表面に形成された凹凸状の意匠部230を備える。発泡表皮基材200Bが意匠部230を備えることにより、凹凸により生じる陰影によって立体感が生まれ、発泡表皮基材200Bに意匠性を付与することができる。
図3に示すように、発泡表皮材200Bは、発泡樹脂層210の表面にエンボスロールを押し付けて表面を凹状に加工(エンボス加工)されることにより、意匠部230が形成されている。また、発泡表皮基材200Bを用いて製造した発泡表皮材、加飾成形体に意匠性を付与することができる。意匠部の形状は特に限定されず、所望の風合を再現する形状や、
図3のように角ばった断面視矩形状、丸みのある断面視円弧状、テーパ状の断面視くさび状など、発泡表皮基材に付与する意匠性に併せて変更することができる。また、意匠部は、発泡表皮基材の全体に設けてもよいし、発泡表皮基材の一部に設けてもよい。また、発泡表皮基材200Bの各層の積層方向における、意匠部230の寸法は、発泡表皮基材に付与する意匠性に応じて種々変更することができる。
【0043】
なお、本発明の発泡表皮基材に、印刷層や意匠部を設ける場合、
図4の発泡表皮基材200Cのように印刷層と意匠部の両方を設けてもよいし、上記の発泡表皮基材200A、200Bのようにどちらか一方を設けてもよい。
図4の発泡表皮基材200Cに示すように、発泡表皮基材に印刷層220と意匠部230の両方を設ける場合、意匠部230は印刷層220の表面に設けられる。印刷層と意匠部の両方を設けることにより、木目調、織物調、石目調、塗壁調等の風合いをさらに高度に再現することができる。また、発泡表皮基材200Cのように印刷層220と意匠部230の両方を備える場合、印刷層220の配置とは無関係に意匠部230を設けることができる。すなわち、印刷層220がある箇所に意匠部230が設けられていてもよいし、印刷層220が無い箇所に意匠部230が設けられていてもよく、印刷層220と意匠部230のそれぞれの意匠性に応じて発泡表樹脂層に配置することができる。
【0044】
(発泡表皮材)
本実施形態の発泡表皮材300(
図1(E))は、粘着剤を含む粘着層310と、粘着層310に積層した、前述した発泡表皮基材200の発泡樹脂層210と、発泡樹脂層210とは反対側において粘着層310に積層した、離型シート320と、を備える。粘着層310の厚さは、例えば5μm~300μmとすることができ、発泡表皮材300の厚さは、例えば、65μm~4300μm程度とすることができる。また、粘着層310に用いる粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤を用いることができる。また、離型シート320は粘着層310から剥離することができればよく、離型シート320の材質等は特に限定されないが、離型シート320としては例えば離型剤を塗布した離型PETシートを用いることができる。
【0045】
本実施形態の表皮基材100、発泡表皮基材200は、これらを用いて発泡表皮材300を得ることにより、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる。
【0046】
また、本実施形態の発泡表皮材300は、小ロットの加飾成形体を生産することができ、かつ、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる。
【0047】
[表皮基材、発泡表皮基材、および、発泡表皮材の製造方法]
次に、本発明の一実施形態にかかる表皮基材、発泡表皮基材、および、発泡表皮材の製造方法について説明する。なお、以下の表皮基材、発泡表皮基材、および、発泡表皮材の製造方法は、連続して行ってもよいし、個別に行ってもよい。
【0048】
本実施形態の表皮基材の製造方法は、前述した実施形態の表皮基材100を製造する方法であって、樹脂ペーストゾル配合工程と、離型シート110に発泡剤を含む樹脂ペーストゾルを積層するペーストゾルコーティング工程と、積層したペーストゾルをゲル化して、離型シート110にゲル状の樹脂層120が積層した表皮基材100を得る樹脂層形成工程を備える。
【0049】
本実施形態の発泡表皮基材の製造方法は、前述した実施形態に記載の発泡表皮基材200を製造する方法であって、前述した表皮基材の製造方法により表皮基材100を得る表皮基材製造工程と、樹脂層120に含まれる発泡剤121を発泡させて発泡樹脂層210として、離型シート110に発泡樹脂層210が積層した発泡表皮基材200を得る、発泡工程と、を備える。
【0050】
本実施形態の発泡表皮材の製造方法は、前述した実施形態の発泡表皮材300を製造する方法であって、前述した発泡表皮基材の製造方法により発泡表皮基材200を得る発泡表皮基材製造工程と、発泡表皮基材200の離型シート110を剥離して、剥離した面に粘着剤を含む粘着層310を形成して、粘着層310に発泡樹脂層210が積層した発泡表皮材300を得る、粘着層形成工程と、を備える。
【0051】
以下に、樹脂ペーストゾル配合工程、ペーストゾルコーティング工程、樹脂層形成工程、発泡工程、粘着層形成工程の順に
図1を参照して説明する。
【0052】
樹脂ペーストゾル配合工程は、樹脂層120の材料を混合して樹脂ペーストを得るものである。樹脂層120の材料は、前述した表皮基材100に説明したように、例えば、ペースト状の合成樹脂と、可塑剤と、安定剤と、発泡剤と、希釈剤とすることができる。
【0053】
具体的には、例えば、以下の材料をミキサー(例えば、KM型、関西機械工業株式会社製)、リボンブレンダー(例えば、株式会社西村機械製作所製)、ディゾルバー(例えば、株式会社井上製作所製)等を用いて混合して、樹脂ペーストゾルを得ることができる。なお、下記配合におけるPhr(Per Hundred Resin)は、樹脂100部あたりの質量部を示す。
合成樹脂 ポリ塩化ビニルペーストレジン(平均重合度800) 100Phr
可塑剤 DINP 35Phr
安定剤 Ba-Zn系安定剤 3Phr
発泡剤 ADCA 3Phr
希釈剤 ミネラルスピリッツ 3Phr
【0054】
ペーストゾルコーティング工程は、樹脂ペーストゾル配合工程により得られた発泡剤を含む樹脂ペーストゾルを、フィルムアプリケーター(例えば、4面式フィルムアプリケーター、オールグッド株式会社製)、コンマコーター(登録商標)(例えば、株式会社ヒラノテクシード製)を用いて離型シート110(
図1(A))にコーティングする工程である。これにより、離型シート110と樹脂ペーストゾルの積層体が得られる。樹脂ペーストゾルの厚さは、例えば、100μmとすることができる。
【0055】
樹脂層形成工程は、ペーストゾルコーティング工程により得られた離型シート110と樹脂ペーストゾルの積層体の樹脂ペーストゾルをゲル化する工程である。ゲル化は、所定温度で加熱することにより行うことができ、加熱条件は樹脂ペーストゾルの材料の配合により適宜設定することができる。上記に示した配合の樹脂ペーストゾルを100μmコーティングした場合においては、例えば、145℃、60秒間加熱することで、樹脂ペーストゾルをゲル化することができる。以上の工程により、表皮基材100(
図1(B))が得られる。
【0056】
発泡工程は、樹脂層120に含まれる発泡剤121を発泡させて、樹脂層120を発泡樹脂層210として、離型シート110に発泡樹脂層210が積層した発泡表皮基材200を得る工程である。発泡工程は、前述した表皮基材の製造方法により得られた表皮基材100を所定温度、所定時間で加熱して行う。加熱条件は、樹脂層120の組成により適宜設定することができる。これにより、発泡剤121が分解してガス化することで、ゲル化した樹脂層120内に気泡が形成することより樹脂層120が発泡樹脂層210となる。前述した表皮基材100においては、例えば、145℃、60秒間加熱することでゲル化した樹脂層120を発泡させることができる。以上の工程により、発泡表皮基材200(
図1(C))が得られる。
【0057】
なお、本実施形態の発泡表皮基材の製造方法において、発泡工程の前に、樹脂層に印刷層を積層する印刷工程をさらに備えていてもよい。印刷工程は、前述した実施形態の発泡表皮基材200Aの印刷層220を形成する工程である。印刷工程においては、発泡工程の前に、表皮基材100の樹脂層120にグラビア印刷等により所望の意匠を印刷して、乾燥機等により十分に乾燥することにより印刷層220を形成することができる。発泡表皮基材の製造方法が印刷工程を備えることにより、印刷層を形成して、発泡表皮基材に意匠性を付与することができる。
【0058】
また、本実施形態の発泡表皮基材の製造方法において、発泡工程後に、発泡樹脂層210または印刷層220の表面に凹凸状の意匠部230を形成する意匠部形成工程をさらに備えていてもよい。意匠部形成工程は、例えば、発泡工程の後に、発泡表皮基材200、200Aの表面、すなわち、発泡樹脂層210または印刷層220の表面にエンボスロールを押し付けて表面を凹状にエンボス加工を施すことより行うことができる。具体的には、発泡工程後に、ヒーター等により発泡表皮基材200、200Aを加熱して、付与したい意匠に対応した凹凸形状を有する、例えばロール状の型を発泡表皮基材200、200Aに押圧し、発泡表皮基材200、200Aを冷却することにより行うことができる。発泡表皮基材の製造方法が意匠部形成工程を備えることにより、意匠部を形成して、発泡表皮基材に意匠性を付与することができる(
図3、
図4)。
【0059】
粘着層形成工程は、発泡表皮基材200の離型シート110を剥離して、剥離した面に粘着剤を含む粘着層310を形成して、粘着層310に発泡樹脂層210が積層した発泡表皮材300を得る工程である。発泡表皮基材200の離型シート110を剥離して発泡樹脂層のみ(
図1(D))とした後に、発泡樹脂層210の離型シートが積層していた側の面に粘着層付きの離型シート(例えば、G25、日栄化工製)を積層する。以上の工程により、発泡表皮材300(
図1(E))が得られる。
【0060】
本実施形態の表皮基材、発泡表皮基材の製造方法は、この方法により製造された表皮基材100、発泡表皮基材200を用いて発泡表皮材300を得ることにより小ロットの加飾成形体700を生産することができ、かつ、樹脂成形体500を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる発泡表皮材300を製造することができる。
【0061】
本実施形態の発泡表皮材300の製造方法は、小ロットの加飾成形体700を生産することができる。すなわち、例えば、表皮基材100(
図1(B))を統一して使用可能な中間材料として製造して表皮基材100を大量にストックしておき、これを用いて、印刷の柄や凹凸形状のバリエーション等の所望の意匠性についての小口の注文に応じて、印刷工程や意匠部形成工程を適宜行って発泡表皮基材200(
図1(C))、200A(
図2)、200B(
図3)、200C(
図4)を製造することにより、様々な意匠性を有する発泡表皮材の小ロットの生産に対応することができる。また、製造された発泡表皮材を用いて、樹脂成形体を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる。
【0062】
[加飾成形体、加飾成形体の製造方法]
次に、本発明の一実施形態にかかる加飾成形体、および、加飾成形体の製造方法について説明する。本実施形態の加飾成形体は、例えば、自動車の内装部材に適用することができる。
【0063】
本実施形態の加飾成形体700は、
図5(C)に示すように、樹脂成形体500と、樹脂成形体に積層した前述した実施形態の発泡表皮材300の離型シート320を剥離した発泡表皮材400と、を備え、樹脂成形体500の少なくとも一部が発泡表皮材400により覆われている。発泡表皮材400は樹脂成形体500の表面における加飾が必要な部分のみ(例えば、使用者が視認する表側の面)を覆っていればよく、樹脂成形体500の表面全体を覆っていなくてもよい。
【0064】
また、本実施形態の加飾成形体の製造方法は、上記の加飾成形体700を製造する方法であり、樹脂成形体500に対して、前述した実施形態の発泡表皮材300の離型シート320を剥離した発泡表皮材400を3次元表面被覆成形(TOM成形)により貼り合わせて加飾成形体700を得るものである。具体的には、
図5(A)に示すように、前述した実施形態の発泡表皮材300の離型シート320を剥離した発泡表皮材400と、樹脂成形体500を3次元表面被覆成形機(例えば、NGF成形機、布施真空株式会社製)に供する。3次元表面被覆成形機のチャンバーボックスの上部に発泡表皮材400、下部の載置台に樹脂成形体500を供して、チャンバーボックス内を真空状態とし、発泡表皮材400を加熱して軟化する。このとき、発泡表皮材400の粘着層側が樹脂成形体500と相対するように、発泡表皮材400と樹脂成形体500を設置する。樹脂成形体500を載置した載置台を上昇させて発泡表皮材400に押し付けて、発泡表皮材400を樹脂成形体500に貼り付ける。発泡表皮材400を貼り付けるときに、チャンバーボックス内が真空状態となっていることにより、複雑な形状の樹脂成形体500の表面形状に沿って、発泡表皮材400を貼り付けることができる。最後にチャンバーボックス内を大気圧に戻して、発泡表皮材400を貼り付けた樹脂成形体500との積層体600(
図5(B))を取り出す。なお、積層体600を取り出した後に、必要に応じて、さらに、
図5(B)の線Bに示すように、発泡表皮材400の余分な部分を切り取る、切取工程を行ってもよい。以上により、加飾成形体700(
図5(C))が得られる。
【0065】
従来、自動車の内装部材等の加飾は、塗装により行われてきた。塗装による加飾は、カラーバリエーションには対応できるものの、表面に凹凸のある質感、風合いを形成することができなかった。また、シートインサート射出成形により加飾する方法では、金型内に加飾シートをセットしたうえで部材の射出成形を行うため、加飾シートの表面に凹凸のある質感、風合いを形成していても、射出成形後までその意匠性を保持することが困難であった。そこで、本実施形態の加飾成形体700の製造方法であれば、発泡表皮材300とあらかじめ成形された樹脂成形体500を用いて3次元表面被覆成形を行うことから、発泡表皮材300の表面の意匠性を保持したまま成形することができ、所望の通りの意匠性を樹脂成形体500に付与することができる。
【0066】
また、従来、例えば、家のリビングルーム等の居住空間の壁面は壁紙を用いた装飾が行われる。壁紙は居住空間の壁面等の平面の加飾には好適に用いることができるものの、例えば、自動車の内装部材等の複雑な形状を有する部材の表面を加飾する用途に用いることは難しい。よって、自動車の運転席、助手席、後部座席等およびその周辺の車内空間を家の居住空間のように装飾する場合、従来の住宅等の居住空間用の壁紙を適用することは困難である。一方、前述した実施形態の加飾成形体700の製造方法であれば、真空状態にして発泡表皮材300を貼り付ける3次元表面被覆成形を行うことから、複雑な形状の樹脂成形体500にも所望の風合いの意匠性を付与することができる。
【0067】
また、様々な意匠性を有する発泡表皮材300を小ロットで製造して、この発泡表皮材300を用いることで、個人の様々な好みに対応した意匠性を有する加飾成形体700を小ロットで製造することができる。
【0068】
以上のことから、本実施形態の加飾成形体、加飾成形体の製造方法であれば、小ロットの加飾成形体700を生産することができ、かつ、樹脂成形体500を加飾して自由度の高いデザインを実現することができる。
【0069】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
100 表皮基材
110 離型シート
111 ポリエチレンテレフタレートを含むシート
112 シリコーン膜
120 樹脂層
200、200A、200B、200C 発泡表皮基材
210 発泡樹脂層
220 印刷層
230 意匠部
300、400 発泡表皮材
310 粘着層
320 離型シート
500 樹脂成形体
700 加飾成形体