(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ニアアイディスプレイ用の細分された光学的な開口部を備えたプロジェクター構造及び対応する光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240110BHJP
G02B 27/18 20060101ALI20240110BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/18 A
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2019549383
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 IB2019053972
(87)【国際公開番号】W WO2019220330
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-03-22
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518010049
【氏名又は名称】ルムス エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Pinchas Sapir Street, 7403631 Ness Ziona, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンフェルト,ツィオン
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-521099(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146172(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0235472(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0043334(US,A1)
【文献】特表2015-523586(JP,A)
【文献】特開2006-350138(JP,A)
【文献】特表2004-527801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02,27/18
G02B 5/00,5/04
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測者に対し投影画像を表示するための光学系であって、
(a)導光光学素子であって、2つの主要な平行面を有し、カップリングイン領域から照明の少なくとも一部が観測者の目に向かってカップルアウトされるカップリングアウト領域にまで前記主要な平行面での内部反射によって無限遠にコリメートされた投影画像に対応する照明をガイドするために構成された、導光光学素子、及び
(b)前記導光光学素子のカップリングイン領域に関連したプロジェクター構造であって、前記プロジェクター構造は複数の隣接した光学的配置を含み、各光学的配置は
(i)前記照明のサブセットを投影するために配置されるコリメーティング光学素子と、
(ii)画像の一部に対応する部分画像を生成する空間光モジュレータ構成要素をさらに含み、
前記隣接した光学的配置は、前記カップリングアウト領域へ前記投影画像の全体を提供するように共に働き、前記複数の隣接した光学的配置の前記空間光モジュレータ構成要素は共有される空間光モジュレータ装置の対応する領域によって提供される、プロジェクター構造と、
を含む、光学系。
【請求項2】
前記複数の光学的配置の各々の前記コリメーティング光学素子は、少なくとも第1のレンズ及び少なくとも第2のレンズを含み、及び、前記複数の光学的配置ための前記第1のレンズは第1のレンズアレイに一体化して形成され、並びに前記複数の光学的配置ための前記第2のレンズは第2のレンズアレイに一体化して形成される、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記プロジェクター構造は、複数の不透明なバッフルが形成されたバッフル構造をさらに含み、前記バッフル構造は前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの間にはさまれており、それによって前記複数の光学的配置の前記コリメーティング光学素子間のクロストークを減少させる、請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記複数の光学的配置は、前記光学的配置のすべてが平行な光軸と並べられるように、ビーム偏向光学素子を含む、請求項1から3のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項5】
前記ビーム偏向光学素子は、複数のビーム偏向プリズムを含む、請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記複数の光学的配置のすべての前記コリメーティング光学素子は同一である、請求項1から5のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項7】
前記複数の光学的配置の各々は、少なくとも2のF値を有する、請求項1から6のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項8】
前記複数の光学的配置の各々は、少なくとも4のF値を有する、請求項1から7のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項9】
前記光学系は、目が目の可動域を規定する位置の範囲から前記導光光学素子を見るように、観測者の目と離間関係に光学系を支持するように構成されたヘッド・マウント型の支持構造物に組み入れられ、前記カップリングアウト領域は前記目の可動域中のすべての位置で観測者の目に視野を送るように構成され、及び、前記光学的配置の隣接したものは視野の、重複するが異なった部分を投影する、請求項1から8のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項10】
前記照明の前記サブセットは、前記カップリングイン領域のサブ領域から投影された前記画像の全体に相当する、請求項1に記載の光学系。
【請求項11】
前記光学的配置の少なくとも1つための前記照明の前記サブセットは、前記画像の一部のみに相当する、請求項1に記載の光学系。
【請求項12】
前記カップリングアウト領域は、主要な平行面へ斜角で配備された複数の部分反射表面を含む、請求項1から11のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項13】
前記カップリングアウト領域は、前記主要な平行面のうちの1つに関連した少なくとも1つの回折性の光学素子を含む、請求項1から12のいずれか1つに記載の光学系。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明はバーチャルリアリティ及び拡張現実用ディスプレイに関し、並びに、特に、それは導光光学素子中へ画像を投影するためのすべての光学的な開口部が、多くの分離した、より小さな開口部へと細分されるようなディスプレイのためのプロジェクター構造に関する。
【0002】
多くのバーチャルリアリティ及び拡張現実用ディスプレイは、その中で内部反射によって画像を伝播する2つの主要な平行な平面の表面を備えた導光光学素子(LOE)を用いる。コリメートされた画像に対応する照明は、カップリングイン領域(coupling-in region)で、典型的には片側で、LOEの中へ取り入れられ、LOEからビュアーの目に向かってカップルアウトされる(coupled out )カップリングアウト領域 (coupling-out region)に達するまで、内部反射によりLOE内に伝播する。照明から目に向かってカップルアウトすることは、(特許文献1)米国特許第特許第6,829,095、(特許文献2)7,021,777、(特許文献3)7,457,040及び(特許文献4)7,576,916等に記載されるような傾斜して角を成した部分的に反射する内側表面のひと組の使用による場合、あるいは1つ以上の回折性の光学素子の使用による場合があり、また先行技術によって公知である。
【0003】
LOEは1次元における内部反射によって照明をガイドするが、LOEの平面に対して平行な次元はガイドされない。その結果、ビュアーへ所望の視野の全幅を提供するために、カップリングイン領域の中へ画像照明を取り入れる画像プロジェクターの平面内次元は、比較的大きくなければならない。これはプロジェクター光学の低いf値を結果としてもたらし、頻繁にf<1であり、及び光学部品の光学的デザイン及び質において対応する厳密な要件が課される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、バーチャルリアリティ及び拡張現実用ヘッドアップ・ディスプレイためのプロジェクター構造及び対応する光学系を提供し、特にニアアイディスプレイで役立ち、画像投影システムの光学的な開口部はいくつかの区域へと分割され(細分され)、各々はそれ自身の画像生成及び/または照明サブシステムを備える。
【0005】
本発明の特定の実施形態に従って、これは、光学エンジンのすべての形状因子を減少させる場合があり、及び/または光学性能を増加させる場合があり、一方で比較的少数の光学部品(レンズ)を維持する。
【0006】
本発明の教示に従って、観測者に対し投影画像を表示するための光学系が提供され、光学系は次を含む:(a)2つの主要な平行面を有し、カップリングイン領域から照明の少なくとも一部が観測者の目に向かってカップルアウトされるカップリングアウト領域にまで主要な平行面での内部反射によって無限遠にコリメートされた投影画像に対応する照明をガイドするために構成された、導光光学素子;及び(b)導光光学素子のカップリングイン領域に関連したプロジェクター構造であって、該プロジェクター構造は複数の隣接した光学的配置を含み、各光学的配置は照明のサブセットを投影するために配置されるコリメーティング光学素子を含み、隣接した光学的配置は、カップリングアウト領域へ投影画像の全体を提供するように共に働く。
【0007】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、光学的配置の各々は、画像の一部に対応する部分画像を生成する空間光モジュレータ構成要素をさらに含む。
【0008】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、複数の隣接した光学的配置の空間光モジュレータ構成要素は共有される空間光モジュレータ装置の対応する領域によって提供される。
【0009】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、複数の光学的配置の各々のコリメーティング光学素子は、少なくとも第1のレンズ及び少なくとも第2のレンズを含み、及び、複数の光学的配置ための第1のレンズは第1のレンズアレイに一体化して形成され、並びに複数の光学的配置ための第2のレンズは第2のレンズアレイに一体化して形成される。
【0010】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、プロジェクター構造は、複数の不透明な導風板が形成されたバッフル構造をさらに含み、バッフル構造は第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとの間にはさまれており、それによって複数の光学的配置のコリメーティング光学素子間のクロストークを減少させる。
【0011】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、複数の光学的配置は、光学的配置のすべてが平行な光軸と並べられるように、ビーム偏向光学素子を含む。
【0012】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、ビーム偏向光学素子は、プリズムを偏向させる複数のビームを含む。
【0013】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、複数の光学的配置のすべてのコリメーティング光学素子は同一である。
【0014】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、複数の光学的配置の各々は少なくとも2のf値及び好ましくは少なくとも4である。
【0015】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、光学系は、目が目の可動域(eye-motion box)を規定する位置の範囲から導光光学素子を見るように、観測者の目と離間関係に光学系を支持するように構成されたヘッド・マウント型の支持構造物に組み入れられ、カップリングアウト領域は目の可動域中のすべての位置で観測者の目に視野を送るように構成され、及び、光学的配置の隣接したものは視野の、重複するが異なった部分を投影する。
【0016】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、照明のサブセットは、カップリングイン領域のサブ領域から投影された画像の全体に相当する。
【0017】
本発明の実施形態の代替的な特徴に従って、光学的配置の少なくとも1つための照明のサブセットは、画像のほんの一部に相当する。
【0018】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、カップリングアウト領域は、主要な平行面へ斜角で配備された複数の部分反射表面を含む。
【0019】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、カップリングアウト領域は、主要な平行面のうちの1つに関連した少なくとも1つの回折性の光学素子を含む。
【0020】
本発明の実施形態の教示に従って、次も提供される:ユーザーの目に導光光学素子を介して、長さL及び幅Wの有効開口部からの画像に対応する照明を送るためのプロジェクター構造、該プロジェクター構造は、少なくとも3つの隣接した光学的配置を含み。各光学的配置は次を含む:(a)画像の少なくとも一部に対応する出力画像を生成する空間光モジュレータ構成要素;及び(b)ユーザーの目へ導光光学素子を介してコリメートされた画像として出力画像を投影するために配置されたコリメーティング光学素子であって、コリメーティング光学素子は出口開口部を有し、光学的配置の出口開口部は、有効開口部の長さLを測るため、かつ導光光学素子へ観測者に対し画像の表示するために要求される照明の全体を送達するように、共に働く。
【0021】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、光学的配置の少なくとも1つにおける出力画像は、表示される画像のほんの一部に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、ほんの一例ではあるが添付図面の参照と共に本明細書に記載される。
【
図1A】観測者の目に向かって導光光学素子(LOE)から投影された視野(FOV)の概略平面図である;
【
図1B】
図1Aに類似した概略平面図であり、目の可動域(EMB)の全体に渡る視野を提供するための、LOEの作用面積からの配光を例示する;
【
図2A】EMBに総FOVを提供するための、LOEのカップリングイン領域の必要とされる長さ寸法を例示するLOEの概略正面図である;
【
図2B】
図2Aに類似し、本発明の態様に従ってサブ開口部の中へのカップリングイン領域の細分を概略的に例示する;
【
図3】
図2Bに類似し、所与のサブ開口部からの光が目の可動域に達することができる角度の範囲を例示する;
【
図4A】それぞれ、上下及び側面に入射されたLOE構造の視野画像画角の機能として、サブ開口部の推奨された数の例を例示するグラフである;
【
図4B】それぞれ、上下及び側面に入射されたLOE構造の視野画像画角の機能として、サブ開口部の推奨された数の例を例示するグラフである;
【
図5】本発明の特定の実施のために、分割開口部のサイズを選ぶことに対する矛盾する考察を例示するグラフである;
【
図6A】本発明の特定の実施で使用するための適切なレンズ構造の概略側面図である;
【
図6B】LOEに関連した、
図6Aのレンズ構造の複数を用いるディスプレイシステムの概略正面図である;
【
図7】
図6Bのディスプレイシステムの構成要素の概略等角図であり、便利に組立てるためのレンズアレイとして実施される;
【
図8A】
図6Cに類似するディスプレイシステムの異なる実施であり、光学的配置のサイズを減少させるビーム折り重なり反射鏡の使用を例示する;
【
図8B】光学的な開口部が二次元において細分される
図6Cに類似するディスプレイシステムのさらに異なる実施である;
【
図9】各サブ開口部が投影画像の総FOVで提供される本発明を実施するための光学的アーキテクチャの略図である;
【
図10A】LOEの概略正面図であり、2つの異なるサブ開口部の主光線の配向を例示し、各開口部はEMB内に属する画像の一部分だけを投影する;
【
図10B】各サブ開口部に関連する光学的配置はそのサブ開口部において主光線に一直線に並んだ部分画像を投影する本発明を実施するための光学的構成の略図である;
【
図11A】類似する
図10A及び10Bに類似する図であり、それぞれ、各サブ開口部の主光線を転送するための光学素子偏向ビームの使用を例示する;
【
図11B】類似する
図10A及び10Bに類似する図であり、それぞれ、各サブ開口部の主光線を転送するための光学素子偏向ビームの使用を例示する;
【
図12】
図11Bに類似する図であり、補償画像出力を提供するための空間光モジュレータの周囲領域の使用を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、バーチャルリアリティ及び拡張現実用ヘッドアップ・ディスプレイためのプロジェクター構造及び対応する光学系を提供し、ニアアイディスプレイに特に役立ち、画像投影システムの光学的な開口部はいくつかの区域へと分割され(細分され)、各々はそれ自身の画像生成及び/または照明サブシステムを備える。
【0024】
本発明に係るプロジェクター並びに光学系の原理及び操作は、図面及び添付の記載を参照することでよく理解され得る。
【0025】
前置きとして、
図1A、1B及び2Aを参照すると、導光光学素子(LOE)(10)を基にしたディスプレイは、視点の許容域に相当する「目の可動域」(EMB)(12)の全体に渡って、ビュアーの目に対し最右端の光線(18R)から最左端の光線(18L)までの総視野を提供するように設計される。
図1Aは、中立点において目に提供される視野を例示し、一方で
図1Bは、全体のEMB(12)に対し全ての画像の部分を提供するために、LOE(LOE (10)の「作用面積」(14))の平面において必要とされるディスプレイの次元を示す。従来の手法は、LOEディスプレイ領域のすべての部分から投影される画像の全ての光線角度を典型的には提供するが、ディスプレイ領域の周辺のマージンからの画像(光線(20))の多くが、事実上EMB(12)の外部に属し、したがって、実際、必要とされないことを留意する。
【0026】
LOEのカップリングイン開口部で必要とされる開口部の寸法は、カップリングアウト構造を介してEMBから導波管入口開口部までの正反対方向における光線のトレースによって導き出すことができる。入口開口部に向かって拡大する、目の可動域からの最も極端な角度の光線のトレースは、
図2Aにおいて示される。結果として生じる必要とされる開口部寸法はEMBサイズ、視野、目から入り口までの開口部距離、及び屈折率に左右される。
【0027】
この幾可学的形状の結果は、LOEの平面において系統が大きな効果的な光学的な開口部(16)を有しているということである。これは、コンパクトなプロジェクター構造を実施するために短い焦点距離を使用する希望と共に、低いf値を結果としてもたらし、より高いf値の系統と比較して画質において結果として生じる、希望の光学的要件及び短縮がある。
【0028】
この問題を検討するために、本発明は、プロジェクター、光学系及び画像を投影する方法を提供し、それを介して画像がLOEへとカップルインされる(coupled-in)光学的な開口部(16)は、A1-A5として本明細書に示された分離した開口部の複数へと細分され、各々は視野に相当する部分を投影する独立した投影構造を有する。これは、
図2Bにおいて概略的に例示される。
【0029】
したがって一般条項において光学系に関して、光学系は、2つの主要な平行面を有しており、カップリングイン領域(有効開口部(16))から少なくとも照明の一部が観測者の目に向かってカップルアウトされるカップリングアウト領域(作用面積(14))まで主要な平行面での内部反射によって無限遠にコリメートした投影映像に相当する照明をガイドするために構成された導光光学素子(LOE)(10)を含み、目の可動域(EMB)(12)に位置される。プロジェクター構造は、導光光学素子のカップリングイン領域に関連する。プロジェクター構造は複数の隣接した光学的配置あるいは「サブシステム」を含み、各々は、すべての有効開口部(16)から必要とされる照明のサブセットを投影するために配備されたそれ自身のコリメーティング光学素子を有する。隣接した光学的配置は、カップリングアウト領域へ投影画像の全体を提供するように共に働く。
【0030】
基礎的な実施において、各光学的サブシステムは、各サブ開口部からの総FOVを投影可能である。しかしながら、
図1Bに関連して上に指摘されるように、側面の区域からの照明の多くがEMBの外部に属するので、これは無駄である。より好ましくは、導波管入口開口部をいくつかのより小さな区域に分割すると、視野はさらに異なる区域に渡って細分され、それによって、各区域はEMBを照らすのに適切な視野の部分のみを投影する。
【0031】
各光学的な開口部のための視野の決定は、示されるような任意に選ばれた開口部(A2)のために、
図3に例示される。具体的には、
図2Bに概して類似し、類似して分類されるLOE(10)の正面図が示される。開口部(A2)からの光がEMB(12)に達するかもしれない角度の範囲は、開口部(A2)の左側から作用面積(14)の右末端までの、EMBに達するかもしれない視野の最も遠い左側部分に相当する光線(22L)、及び開口部(A2)の右側から作用面積(14)の左の末端までの、開口部(A2)からEMBに達するかもしれない視野の最も遠い右側部分に相当する光線(22R)、をトレースすることによって見ることができる。角度の適合範囲は更に、画像の視野(FOV)によって当然制限され、光線(18R)から光線(18L’)までの角度を測定する。視野の左側の場合には、ライン(22L)はFOVの外に存在し、したがって、FOV(18’L)の左縁までのすべての光線は開口(A2)から表示される必要がある。視野の右側における、EMBに達することができる光線の幾何学的な制限を画定するライン(22R)は、FOVの一部を除外し、その結果、(22R)からの内側への角度を有するピクセルのみ表示される必要があり、及び(22R)と(18R’)との間の視野の剰余は不必要である。コリメーティング光学素子のパフォーマンスを最適化するために、そのプロジェクターのために投影される視野の中間に相当する調整された主光線(CR)に従ったプロジェクター構造を画定することは望ましく、これは各プロジェクターによって異なる。
【0032】
全体の有効開口部(16)を測定するために従来のプロジェクターを用いる同等なディスプレイシステムと比較して、本発明が多くの利点をもたらすことは直ちに明白である。具体的には、より小さな寸法の複数の区域へ開口部を細分することによって、光学的配置のf値は、カップリングイン領域の長さLに相当する、開口部のd合計(dtotal)(が全ての有効開口部の最大の寸法であるところの(開口部のd合計/d領域(dzone))の要素によって高められ、及び、d領域は分離した光学的配置出口開口部の最大の寸法である。個々の光学的配置のf値は好ましくは少なくとも2であり、及びより好ましくは少なくとも4であり、特定の特に好ましい実施では少なくとも5のf値を有する。これは、典型的には1未満の及び大抵1/2近くのf値がある従来のLOEベースディスプレイのためのプロジェクターと比較する。f値でのこの上昇は、光学的配置の特性についての要件の相当する緩和にもたらし、比較的単純で低コストの光学部品を使用して、高画像品質投影を促進する。
【0033】
図4A及び4Bのグラフは、様々な角度のサイズ(8x10mmのEMBで)での16/9比FoVの場合に、どの細分(あるいは「分割」あるいは「区域」)の数が最適であると考えられるか概算を示す。これらの値は単に実例となる提案であり及び好結果は、より多いあるいは少ない細分を使用して、達成される場合もある。ニアアイディスプレイ用などの小さな次元を用いる系統を設計する場合、
図5で示されたように、向上したf値の点から開口部を細分し、かつ球面収差を減少させるという利点は、スポットサイズへの回折制限に影響に対して比較検討する必要がある。開口部サイズの許容可能な及び/または最適な範囲は、これらの考察を基に当業者によって容易に選択される可能性がある。
【0034】
等しい区域でプロジェクター開口部を区域に細分する必要がないことが留意されるべきである。例えば、FOVの小部分及び少数の画像強度は周辺開口部で1つの単位面積当たり必要とされることを考慮すると、それはすべての開口部の周囲に向かうより大きい開口部を用いることが好まれる場合がある。一方、特定の特に好ましい実施は、光学的サブシステムのすべてのために同一の開口部及び同一の光学的配置を用い、それによって、構造の単純化を達成する。
【0035】
開口部の分割は、マイクロ・ディスプレイから出てLOE入口(カップリングイン)開口部の中へ入る光ビームをコリメートする責任を負うコリメーティング光学素子モジュールために、異なる光学的構成の範囲を使用して実施可能である。米国特許第特許第8,643,948号に例えば記載されていた偏光ビームスプリッター・コリメーティング光学素子構成に加えて、細分された開口部手法の高まったf値及び減少した光学的要件は、屈折レンズを基にしたコンパクトな構成の実施を促す。屈折レンズの使用は、導波管入口開口部上あるいは直後に開口部の直後にレンズが位置されることを可能にし、それによって、導光路入口から反射する光学のPBSベース設計におけるコリメーティング光学素子までの距離を超えて起こる視野のより一層の拡張を回避する。開口部に対するレンズの接近は、サイズが相当する決められた区域の光学的な開口部にほぼ等しいレンズの使用を可能にし、反射する光学的な実施よりもより一層コンパクトな設計を結果としてもたらす。
【0036】
全体の開口部の細分に起因するより厳密でない光学性能の要件、及び、各光学的配置において結果として生ずる比較的高いf値は、高画質出力を維持ながら、比較的単純なコリメーティング光学素子の使用を可能にする。例えば、本発明の特定の実施は、例えばPetzvalレンズなどの、2つのダブレットとして配置された4つの光学素子を含む各光学的配置のためにコリメーティング光学素子を用いる。そのような構造の一例は、第1のダブレット(24)及び第2のダブレット(26)と共に、単一の光学的配置として
図6Aに示され、該第2のダブレッはト空間光モジュレータ構成要素(28)に一直線に並ぶ。
図6B及び6Cは、本実施例における
図6Aのような、LOE(10)のカップリングイン有効開口部を測定する7つの光学的配置のアレイを含む完全な光学系をともに概略的に例示する。各サブ開口は、好ましくは長方形であり、そうすることで並置されたサブ開口は実質上連続的な有効開口部を形成する。カップリングインは、LOEへ画像照明を取り入れるために正確に傾けられたカップリングイン表面を提示するカップリングプリズム(30)の使用によって、この非限定的な例において本明細書で達成される。
【0037】
ある特に好ましい実施によれば、並置されたレンズあるいはレンズ組立体(24)は、機構の組立て目的のために、1つの要素としての機能する第1のレンズアレイへ統合される。同様に、並置されたレンズあるいはレンズ組立体(26)は、機構組立て目的のために、1つの要素としての機能する第2のレンズアレイへ統合される。レンズアレイは、モールド成形によって有効的に生産されてもよく、構造に、特に低コスト及び組み立ての容易さを与える。各レンズアレイが相当するレンズ組立体の複レンズを提供する場合には、構成要素レンズは、ダブレットアレイを形成するように続いて組み立てられる2つの分離したアレイとして成型される場合がある。代替的に、2つの構成要素のモールド成形は複レンズアレイを直接生産するために使用されてもよく、レンズ製品の技術において既知の技術を使用する。好ましくは、複数の不透明なバッフル(32)で形成されたバッフル構造は、第1のレンズアレイ(24)と第2のレンズアレイ(26)との間に置かれ、それによって複数の光学的配置のコリメーティング光学素子間のクロストークを減少させるようにする。バッフル構造は、レンズアレイ間の必要とされる間隔を画定し、かつ維持するためのスペーサーとして役立つ場合もある。
【0038】
前述の屈折レンズ構造は単なる1つの非限定的な例であり、及び本発明は他のレンズタイプ及び実施の広範囲で遂行することができ、グラスまたはプラスチックから形成された球状か、非球面か、自由形式屈折レンズ、回折レンズ、フレネルレンズ、反射レンズ及び上記のもののあらゆる組み合わせを含むがこれに限定されないことが理解されるだろう。
【0039】
さらなる好ましい機能に従って、これは上記のレンズアレイ構造の一部として、あるいは分離した光学的配置と共に遂行されてもよく、複数の隣接した光学的配置の空間光モジュレータ構成要素は共有される空間光モジュレータ装置の対応する領域によって提供される。場合によっては、空間光モジュレータ構成要素の全体のアレイはアレイの長さに延びる1つの細長い空間光モジュレータによって提供されてもよい。OLED表示装置要素、バックライトLCDパネル、マイクロLEDディスプレイあるいはデジタルライトプロセシング(DLP)チップなどの、光を放射する空間光モジュレータの場合には、ディスプレイ面は、最小重量及びバルクのための光学的配置に直接一直線に並ぶことができる。LCOSチップなどの反射する空間光モジュレータを使用することが所望される場合、技術において公知のように、モジュレータ表面に対する照明の送達を可能にするために、ビーム分割キューブブロックはコリメーティング光学素子とモジュレータとの間に典型的には置かれる。
【0040】
図7は、本発明に従って、光学系を形成するためにバッフル構造(図示せず)及びLOE(図示せず)を伴った組立ての準備ができている第1のレンズアレイ(24)、第2のレンズアレイ(26)、及び細長い空間光モジュレータ(28)の構成要素モジュールを概略的に表わす。
【0041】
図8Aに目を向けると、1つ以上の反射鏡(34)が、第1及び第2のレンズアレイ(24)、(26)間の光学通路を折りたたむために提供される場合の
図6Cの構造の異なる実施が示され、それによって、示されるような、更にコンパクトな実施を促す。本明細書で例示された例において、1対の反射鏡(34)は90度を経て経路を2回折りたたみ、光学部品及び空間光モジュレータが共通の平面、例えばカップリングインプリズム(30)の延長で据え付けられることを可能にする。
【0042】
図8Bに目を向けると、開口部(16)の細分は、LOEの主要な表面の平面に対して平行である長さ寸法Lでのみ、これまで例示されたが、特定の場合において、垂直の方向においてカップリングイン開口部(16)を細分することはさらに効果的である場合があり、
図8Bにおいて例示された2つの区域A1及びA2に相当する。この場合は、開口部にわたる各細分のFOV及び主光線は、典型的に同一であり、その次元で全体のFOVに相当する。
【0043】
ここで、
図9-12に目を向けると、多くの選択肢は、開口部区域の各々からの光学的配置の各々によって投影されるFOV、及び投影装置の幾可学的形状に関して説明される。
図9は、光学的配置の各々がFOVの全体を投影する場合を概略的に例示する。(この図面及び次の図面の各々において、2つのサンプル開口部区域のための光学性能を示す単に選択された光線は、提示を簡潔にするために示される。)この場合は、光学的配置のすべてはそれらの平行な光軸と共に配備され、及び、各ディスプレイは、表示される完全な画像に対する該当画像を生成する。この選択は、その構造の簡潔さ及び整列の容易さのために、広い範囲の状況で好まれてもよい。しかしながら、
図1Bに関連して上に説明されるように、投影される照明の多くがEMBの方へ向けられず、したがって無駄になるので、電力的に非能率的である。さらに、それは、比較的広い角度のFOVを扱うことために各コリメーティング光学素子を必要とする。
【0044】
図10A及び10Bは
図3に関連して上に記載された分析を基にした代替手法を例示し、それに従うと各光学的配置が、表示される全体の画像の一部に相当する部分画像のみ投影し、ピクセルはEMBの中のいくつかの位置で、相当する開口部から見ることができる。これはエネルギー消費を減少させて、光学的配置の少なくともいくつかによって投影されるFOVを減少させる。光学的配置のパフォーマンスの最適化をするために、各光学的配置は好ましくは整列され、それによって、その構造によって投影される視野の中心に相当する新しい主光線CRが、コリメーティング光学素子の光学軸の上にあるようにする。これは
図10Bおいて概略的に例示されるような構造結果としてもたらし、各光学的配置は異なる角度で配向される。この構造には光学的配置からの改善されたエネルギー効率及び減少させられたFOV要件の
図9に渡って前述の長所がある一方、異なるプロジェクター・サブシステムの平行でない配備は、場合によっては、設計の複雑さ及び技術的な困難を結果として生じ得る。
【0045】
図11A及び11Bは、
図10A及び10Bのデバイスに概念的に類似する修飾されたデバイスを概略的に例示するが、全ての光学的配置が平行な光軸と共に配置されるように、各サブプロジェクターのための照明経路を偏向させるために配備された、それぞれのビーム偏向光学素子(36)の追加によって修飾された。本明細書で例示された特に好ましい実施において、ビーム偏向光学素子は、複数のビーム偏向くさび形プリズム(36)であり、くさび角を有する各々は開口部の対応する主要なビームの傾きを補正するように選ばれる。随意に、偏向プリズムは、色分散用補正するために、2つのプリズムのダブレットとして実施されてもよい。代替的に、分散は、補償オフセットによって色分解を置き換えることにより投影映像のデジタル補正を介して扱うことができる。本発明のこの態様を実施するために、他のタイプのビーム偏向光学素子も使用される場合があることが留意されるべきであり、次のものを含むが、これらに限定されない:フィルム及び回折性の光学素子を回転させる方向。光学的配置のうちの1つがLOEの対称の光学軸の上に存在する場合(典型的に奇数の開口部がある場合)、中央の光学的配置は典型的にはビーム偏向光学素子を必要としない。
【0046】
本発明の上記実施の全体にわたって、暗線及び他の縁に関連するひずみを回避するあるいは最小化するように、隣接した部分的な開口部を画定する隣接したレンズ間の接合での間隙あるいは掩蔽を最小化するためにケアが取られるべきである。高屈折率材料の使用あるいはフレネルレンズの使用などの様々な設計選択は、外部表面の比較的平らか、または大きな半径湾曲での実施を許可し、開口間のシームまでの光学性能を広げることを促進し、いかなる「黒線」効果も最小限にする。
【0047】
一定の状況において、特にビーム偏向光学素子(36)が使用され、尚且つ光学的配置の出口開口部(24)がビーム偏向光学素子からやや後ろにセットされる場合、シームに隣接している一定のビーム方向は、隣接した光学的配置のコリメーティング光学素子(24)を入れるために、1つの光学的配置のビームデフレクター(36)によって十分にそらされる場合がある。(ここで、記述の他の場所において、あたかもEMBでの生じ且つプロジェクターの中へ伝播するかのように、光学的性質が系統を介して逆方向においてビームをトレースすることによって分析される。)そのようなそれたビームは、バッフルなどの使用によって除去される場合があるが、それは結果としてディスプレイのそれらの部位の中で黒線がまだ生じる。この影響は、
図12に概略的に例示される。
【0048】
この問題を扱うために、空間光モジュレータ(28)の平面に到着する隣接したビーム偏向光学素子からのそれた射線の位置は、その光学的配置のための投影画像の視野の外に存在することが留意される。その結果、本発明のさらなる態様に従って、サブプロジェクターの主要な部分画像を投影するために使用される領域(28)の外側の空間光モジュレータ素子の辺縁部(28A)を、主要な部分画像から外れた画像の一部を生成するために作動し、これは隣接したビーム偏向光学素子の辺縁部を通り抜ける光線経路に正確な画像情報を供給する。コリメーティング光学素子の直接のFOVの外側である、画像のこの一片は、ディスプレイの両側上で生成される場合がある。
【0049】
本発明の様々な実施形態は広範囲のコンテキスト及び用途で実施される場合がある。実施の1つの特に好ましいが制限しないセットに従って、光学系は、眼鏡フレーム構成あるいはヘルメットバイザー等のヘッド・マウント型の支持構造へ組み入れられ、これは観測者の目に対して一定間隔で配置された関係で光学系を支持し、そうすることで目が、目の可動域を画定する位置の範囲内の位置から誘導光光学素子を見る。幾つかの場合において、2つのそのような系統はビュアーの両方の目に画像を与えるように提供される。カップリングアウト領域は目可動域内のすべての位置で観測者の目に視野を送るように構成される。複数の光学的配置が、この総視野を与えるように共に働き、各々が、
図9それぞれのように総FOVを投影するか、あるいは
図10A-11Bそれぞれのように視野の、重複するが異なった部分と共に部分画像を投影する。
【0050】
本発明はすべてのディスプレイ装置に適用可能であり、プロジェクターは、無限に典型的に無限遠にコリメートされる画像に対応する照明を、長さL及び幅Wの有効開口部から誘導光光学素子を介してユーザーの目まで送り、プロジェクターは少なくとも3つの隣接した光学的配置を有し、各光学的配置は少なくとも画像の一部に対応する投影画像を生成する空間光モジュレータ要素を含み、及び、コリメーティング光学素子は、誘導光光学素子を介して、コリメートされた画像としてユーザーの目へと投影画像を投影するために配備される。光学的配置のすべての出射開口部は、有効開口部の長さLを測り、かつ観測者へ画像を表示するために要求される照明の全体を導光光学素子中へと送るように同時に働く。
【0051】
本発明の実施形態は、特にLOEのカップリングイン領域等の非対称の開口部で広範囲の用途に適用可能であり、及び、すべてのタイプのLOE技術は、主な平行面に対して斜角で配備された複数の部分反射面を備えたカップリングアウト領域を含むLOE、及び、ビュアーの目の方へ画像照明を連結するために配備された、少なくとも1つの回折性の光学素子を備えたカップリングアウト領域を含むLOE、を含むがこれらに限定されない。
【0052】
すべて技術において公知であるように、本発明の光学的装置を用いるディスプレイ装置は、ディスプレイ装置を作動する少なくとも1つのプロセッサあるいは処理回路などの付加的な電子部品を含むことが理解される。異なる空間光モジュレータ、あるいは一つの空間光モジュレータの異なる領域が類似する画像を生成するために並行で動かされる場合、あるいは各々が対応するコリメーティング光学素子と一直線に並ぶ、異なる部分画像を生成するために動かされる場合、必要なドライバ回路類である、専用ハードウェア、ASIC、適切なソフトウェアの管理下で作動する汎用プロセッサ、あるいはあらゆるハードウェア/ソフトウェア/ファームウェアの組み合わせとして実施されるどうか、当業者によって容易に理解される。電源、通信サブシステム、照明サブシステム、入力装置などの他のハードウェア構成部品が、ニアアイディスプレイに典型的に追加され、先行技術の当業者にとって明らかなように、全てはデバイス設計に従い並びに適用が意図される。
【0053】
上の記載は、単に例として役立つように意図され、多くの他の実施形態は、添付された請求項に規定されるような本発明の範囲内で可能であることが理解されるだろう。