(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】換気扇用取付枠
(51)【国際特許分類】
F24F 7/013 20060101AFI20240110BHJP
E06B 1/20 20060101ALI20240110BHJP
E06B 1/12 20060101ALI20240110BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F24F7/013 101F
E06B1/20
E06B1/12 Z
F24F7/10 Z
(21)【出願番号】P 2020000735
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】509353610
【氏名又は名称】株式会社バウハウス
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】和泉 匡俊
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-280617(JP,A)
【文献】実開昭59-075633(JP,U)
【文献】特開昭60-223932(JP,A)
【文献】実開昭60-035149(JP,U)
【文献】特開2006-284113(JP,A)
【文献】特開平06-323585(JP,A)
【文献】特開2010-196941(JP,A)
【文献】特開平04-015438(JP,A)
【文献】中国実用新案第212003745(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁の換気口内に嵌め合わされる嵌合枠と、前記嵌合枠の後側の端縁に取り付けられ、換気扇を支持する支持枠とを有し、
前記嵌合枠は、天板部、底板部、左側板部および右側板部を有し、
前記左側板部及び右側板部は、前後方向に沿って複数形成されるスリット孔を有し、それぞれのスリット孔が上下方向に間隔をおいて配置されており、
前記嵌合枠は、前記左側板部および右側板部の内面に沿って前後方向に移動可能に取り付けられた左右一対のスライド板を有し、前記左右一対のスライド板のうち、左側のスライド板が前記左側板部のそれぞれのスリット孔から突出する軸部を有し、右側のスライド板が前記右側板部のそれぞれのスリット孔から突出する軸部を有している換気扇用取付枠。
【請求項2】
前記左右一対のスライド板が、前記左側板部と右側板部のそれぞれに上下方向の向きを反転して取り付け可能であり、
前記左右一対のスライド板は、前後方向一方側の端縁に形成される第一端縁部と、前後方向他方側の端縁に形成される第二端縁部とを有し、
前記軸部と前記第二端縁部との間の第二距離が、前記軸部と前記第一端縁部との間の第一距離よりも大きく、前記第二距離が、前記左側板部および右側板部のスリット孔の長さ以上であり、前記第一距離が、前記左側板部および右側板部のスリット孔の長さの半分の長さ以上である請求項1に記載の換気扇用取付枠。
【請求項3】
前記嵌合枠が前記天板部に取り付けられる上部プレートと、前記底板部に取り付けられる下部プレートとを有し、前記上部プレートが前記天板部の下方に一定間隔をおいて配置されており、前記下部プレートが前記底板部の上方に一定間隔をおいて配置されており、
前記上部プレートの左右方向両端部が前記左右一対のスライド板の上部を支持し、前記下部プレートの左右方向両端部が前記左右一対のスライド板の下部を支持している請求項1または2に記載の換気扇用取付枠。
【請求項4】
前記嵌合枠が前記天板部の後端部の内面に取り付けられる上枠と、前記底板部の後端部の内面に取り付けられる下枠とを有し、前記上部プレートと前記上枠の間および前記下部プレートと前記下枠の間
にフィルタが差し込まれる前後方向のすき間が形成されている請求項3に記載の換気扇用取付枠。
【請求項5】
前記支持枠が前記嵌合枠にヒンジを介して開閉可能に取り付けられている請求項1から4のいずれかに記載の換気扇用取付枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の外壁に設けられる換気口内に嵌合され、外壁に固定される換気扇用取付枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物において室内の換気あるいは外壁と内壁との間の換気を目的として、外壁に換気口が設けられている。その換気口には、室内の換気等を行う換気扇を取り付けるための換気扇用取付枠が嵌合され、その換気扇用取付枠が外壁に対して換気口の周縁に固定されている。
【0003】
この換気扇用取付枠としては、例えば、特許文献1に記載のように、室外側から換気口に嵌合される室外枠と、室内側から換気口に嵌合される断面矩形の嵌合枠(中枠)と、その嵌合枠の室内側端縁に固定される換気扇の支持枠(室内枠)とを有する換気扇用取付枠が知られている。
【0004】
前記室外枠は室外側の端部に室外側フランジ部を有し、室内枠は室内側の端部に室内側フランジ部を有している。室外側から換気口内に室外枠を嵌合して、室外側フランジ部を外壁の外表面に突き当て固定する。そして、外壁の厚さ寸法に応じて、室内側から室外枠の内部に嵌合枠を嵌合し、室内側から嵌合枠の内部に支持枠を嵌合して、室内側フランジ部を外壁の内表面に突き当て固定する。このようにして、特許文献1に記載の換気扇用取付枠は、その長さを外壁の厚さ寸法に応じて調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された換気扇用取付枠は、室外枠を室外側から換気口内へ嵌め合わせ、室外側フランジ部を外壁の外表面に固定する必要があった。通常、建物の換気口は外壁に対して高所に設けられていることが一般的であり、高所での室外枠の固定作業には危険が伴うものであった。さらに、既存の建物の外壁に換気扇を新設する場合、高所に設けられる換気口の位置にまで足場を組んだり、高所作業車で移動したりする必要があり、施工に手間が掛かっていた。
【0007】
そこで、この発明の課題は、外壁の厚さ寸法に対応可能であり、屋内側から施工することができる換気扇用取付枠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、この発明に係る換気扇用取付枠は、
建物の外壁の換気口内に嵌め合わされる嵌合枠と、前記嵌合枠の後側の端縁に取り付けられ、換気扇を支持する支持枠とを有し、
前記嵌合枠は、天板部、底板部、左側板部および右側板部を有し、
前記左側板部及び右側板部は、前後方向に沿って複数形成されるスリット孔を有し、それぞれのスリット孔が上下方向に間隔をおいて配置されており、
前記嵌合枠は、前記左側板部および右側板部の内面に沿って前後方向に移動可能に取り付けられた左右一対のスライド板を有し、前記左右一対のスライド板のうち、左側のスライド板が前記左側板部のそれぞれのスリット孔から突出する軸部を有し、右側のスライド板が前記右側板部のそれぞれのスリット孔から突出する軸部を有している構成を採用することができる。
【0009】
ここで、「左」および「右」とは、換気口を外壁の屋内側から見た場合での左右方向の「左」および「右」を意味する。また、特に言及する場合を除き、「厚さ方向」とは「外壁の厚さ方向」を意味する。また、「前」および「後」は、換気口を外壁の屋内側から見た場合での前後方向の「前」および「後」を意味する。
【0010】
この構成では、嵌合枠を外壁の屋内側から換気口内へ挿入し、嵌合枠の前側の端縁が外壁の屋外側表面に位置する状態とする。このとき、外壁の厚さに応じて、左側のスライド板の軸部および右側のスライド板の軸部をスリット孔に沿って移動させることができる。
【0011】
そして、右側のスライド板のそれぞれの軸部および左側のスライド板のそれぞれの軸部に固定アングルを固定する。これらの固定アングルを換気口周縁の外壁の屋内側表面に固定する。このようにして、外壁の屋内側から嵌合枠を換気口内に嵌め合わせた状態で、嵌合枠を外壁に固定することができる。
【0012】
前記左右一対のスライド板が、前記左側板部と右側板部のそれぞれに上下方向の向きを反転して取り付け可能であり、
前記左右一対のスライド板は、前後方向一方側の端縁に形成される第一端縁部と、前後方向他方側の端縁に形成される第二端縁部とを有し、
前記軸部と前記第二端縁部との間の第二距離が、前記軸部と前記第一端縁部との間の第一距離よりも大きく、前記第二距離が、前記左側板部および右側板部のスリット孔の長さ以上であり、前記第一距離が、前記左側板部および右側板部のスリット孔の長さの半分の長さ以上である構成を採用することができる。
【0013】
この構成によると、第一端縁部が前側に位置する右側のスライド板は、その軸部が右側板部のスリット孔に対して前後方向の中間位置よりも後側に位置するとき、右側板部のスリット孔を塞ぐ状態となる。第一端縁部が後側に位置する右側のスライド板は、その軸部が右側板部のスリット孔に対して前後方向の中間位置よりも前側に位置するとき、右側板部のスリット孔を塞ぐ状態となる。また、第一端縁部が前側に位置する左側のスライド板および第一端縁部が後側に位置する左側のスライド板も、右側のスライド板の場合と同様に、左側板部のスリット孔を塞ぐ状態となる。
【0014】
前記嵌合枠が前記天板部に取り付けられる上部プレートと、前記底板部に取り付けられる下部プレートとを有し、前記上部プレートが前記天板部の下方に一定間隔をおいて配置されており、前記下部プレートが前記底板部の上方に一定間隔をおいて配置されており、
前記上部プレートの左右方向両端部が前記左右一対のスライド板の上部を支持し、前記下部プレートの左右方向両端部が前記左右一対のスライド板の下部を支持している構成を採用することができる。
【0015】
この構成によると、上部プレートおよび下部プレートによって左右一対のスライド板の上部及び下部が支持されるので、左右一対のスライド板は前後方向の移動が容易になる。また、上部プレートおよび下部プレートの存在により、嵌合枠の上部および下部が平坦となって、嵌合枠内を通過する空気の流れが乱流となり難い。
【0016】
また、フィルタの着脱を容易とするために、前記嵌合枠が前記天板部の後端部の内面に取り付けられる上枠と、前記底板部の後端部の内面に取り付けられる下枠とを有し、前記上部プレートと前記上枠の間および前記下部プレートと前記下枠の間に前記フィルタが差し込まれる前後方向のすき間が形成されている構成を採用することができる。
【0017】
前記支持枠が前記嵌合枠にヒンジを介して開閉可能に取り付けられている構成を採用することができる。この構成では、換気扇を取り付けた状態で、支持枠を開くことができる。換気扇を取り付けた状態で支持枠を開くと、嵌合枠内やフィルタに付着した異物を容易に取り除くことができる。また、嵌合枠の屋外側端部にウェザーカバーを固定し、そのウェザーカバー内に設置される防火シャッターなどの機器のメンテナンスを屋内側から容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の換気扇用取付枠は、屋内から嵌合枠を換気口に嵌め込み、左右一対のスライド板のそれぞれの軸部に固定アングルを固定し、その固定アングルを外壁の屋内側表面に固定することで、換気口の屋内から施工することができる。また、左右一対のスライド板を外壁の厚さに応じて前後方向にスライドさせることにより、外壁の換気口に嵌合枠を固定することができる。さらに、換気扇を取り付けた状態で支持枠を開くことができ、支持枠を開いた状態で、嵌合枠内の異物除去などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施形態に係る換気扇用取付枠を示す斜視図
【
図5】換気扇用取付枠の支持枠を開いた状態を示す斜視図
【
図6】(a)右側のスライド板が前方へ移動した状態を示す要部拡大断面図、(b)右側のスライド板が後方へ移動した状態を示す要部拡大断面図
【
図7】
図2での右側のスライド板を上下方向に反転させた状態を示す縦断面図
【
図8】(a)
図7での右側のスライド板が後方へ移動した状態を示す要部拡大断面図、(b)
図7での右側のスライド板が前方へ移動した状態を示す要部拡大断面図
【
図9】この実施形態の換気扇用取付枠の使用状態を示す斜視図
【
図10】この実施形態の換気扇用取付枠の使用状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係る実施形態の換気扇用取付枠を図面に基づいて説明する。
図9、10に示すように、この換気扇用取付枠1は、建物の外壁Wの換気口H内に装着され、外壁W内の空気を換気する換気扇Fと、外壁Wから外部に突き出すウェザーカバーCとが取り付けられるものである。
【0021】
換気扇用取付枠1は、
図1~
図6に示すように、換気口H内に嵌合される角筒状の嵌合枠2と、嵌合枠2の後端部に取り付けられる換気扇Fを支持する矩形の支持枠3と、嵌合枠2を換気口Hの周縁の外壁Wに固定する一対の固定アングル4と、嵌合枠2の後端部寄りに取り付けられるフィルタ5とを有する。
【0022】
嵌合枠2は、矩形の鉄板から形成された天板部11、底板部12、右側板部13および左側板部14を断面矩形の角筒状に組み合わせたものである。
図2に示すように、嵌合枠2は、後端部の全周に形成された内向きの後側フランジ2aと、前端部の全周に形成された内向きの前側フランジ2bとを有する。
【0023】
図5に示すように、後側フランジ2aは、後側表面に固定される環状の補強板部6を有する。補強板部6は環状の板部材からなり、矩形の外周縁および内周縁を有する。補強板部6の内周縁は後側フランジ2aの内周縁と一致している。補強板部6の外周縁は嵌合枠2から外向きに突き出している。
【0024】
補強板部6は、後述する支持枠3のボルト3cと、前後方向の対向位置に設けられた孔部6aを有する。それぞれの孔部6aは、支持枠3が嵌合枠2に対して閉じられている状態で、支持枠3のボルト3cの頭部が入るものである。これにより、支持枠3が嵌合枠2に対して閉じているとき、支持枠3のボルト3cの頭部が補強板部6に干渉しない状態となる。このとき、支持枠3のフランジ3aが補強板部6に接触する状態となる。
【0025】
後側フランジ2aの4つの角部に補強板部6を貫通する貫通孔2cが形成されている。後側フランジ2aの前面側であって、貫通孔2cの周縁にナット(図示省略)が固定されている。前側フランジ2bの4つの角部には、前向きに突き出すボルト2dが固定されている。
【0026】
図2に示すように、天板部11は、その内側上部に配置される上部プレート15と上枠16とを有する。上部プレート15は、矩形の板状部材であり、2本のスペーサ17、17を介して、天板部11に対して上下方向に間隔をおいて配置されている。上部プレート15の前端縁は、嵌合枠2の前側フランジ2bの内周縁に位置する。
【0027】
上部プレート15の後端縁は嵌合枠2の後端部寄りに位置している。上部プレート15の後端部には、上向きのガイドフランジ15aが左右方向の全長にわたって形成されている。上部プレート15の左右方向の両端縁は、右側板部13および左側板部14に対して、左右方向にすき間をもって位置している。上部プレート15は、天板部11に対して着脱可能に取り付けられている。それぞれのスペーサ17は、上方が開放する箱型に形成され、箱型部分の左右方向両側に天板部11に対する固定片部17a、17aを有する。
【0028】
上枠16は左右方向に延びる帯状の平坦部16aと、平坦部16aの前端縁部から上向きに形成されるガイドフランジ16bとを有する。平坦部16aの上下方向の位置は、上部プレート15の上下方向の位置と一致している。ガイドフランジ16bは、上部プレート15のガイドフランジ15aと前後方向に間隔をおいて対向している。上枠16は、スペーサ18を介して、天板部11に対して上下方向に間隔をおいて配置されている。
【0029】
上部プレート15のガイドフランジ15aと上枠16のガイドフランジ16bとの間にフィルタ5の上端部が差し込まれる前後方向のすき間が形成される。スペーサ18は、上方が開口する箱型に形成され、箱型部分の左右方向両側に天板部11に対する固定片部18a、18aを有する。
【0030】
底板部12は、その内側下部に配置される下部プレート19と、下枠20とを有する。下部プレート19は、上部プレート15と同じ形状であって、上下方向の向きのみが反対向きとなる状態で嵌合枠2内に配置されている。下部プレート19は、2本のスペーサ17、17を介して、底板部12に対して上下方向に間隔をおいて配置されている。下部プレート19は底板部12に対して着脱可能に取り付けられている。
【0031】
下枠20は、上枠16と同じ形状であって、上下方向の向きのみが反対向きとなる状態で嵌合枠2内に配置されている。下枠20は、スペーサ18を介して、底板部12に対して上下方向に間隔をおいて配置されている。下枠20の平坦部20aの上下方向の位置は、下部プレート19の上下方向の位置と一致している。下部プレート19のガイドフランジ19aと下枠20のガイドフランジ20bとの間にフィルタ5の下端部が差し込まれる前後方向のすき間が形成される。
【0032】
右側板部13は、前後方向に沿って形成される複数(
図3では3つ)のスリット孔13aと、左右方向内向きに突出するフィルタ受け部13bとを有する。それぞれのスリット孔13aは、上下方向に等間隔aをおいて配置されている。それぞれのスリット孔13aのうち上下方向真ん中のスリット孔13aは、右側板部13の上下方向の中央に位置している。それぞれのスリット孔13aは、前後方向に同じ長さを有し、右側板部13に対して前後方向の中間位置に設けられている。
【0033】
フィルタ受け部13bは上下方向に沿って設けられ、前後方向に間隔をおいて配置される一対の帯状部材から形成される。一対の帯状部材の左右方向内端部は、相互に離れる方向に傾斜している。フィルタ受け部13bの前後方向の位置は、上部プレート15のガイドフランジ15aと上枠16のガイドフランジ16bとで形成されるすき間の前後方向の位置と合致する。
【0034】
右側板部13は、右側板部13の内面に対向する状態で前後方向に移動可能に取り付けられた右側のスライド板21を有する。右側のスライド板21は、矩形の鉄板から形成されている。
図6に示すように、右側のスライド板21は、前後方向一方側の端縁となる第一端縁部21aと、前後方向他方側の端縁となる第二端縁部21bとを有する。
【0035】
図3に示すように、右側のスライド板21は、左右方向外向きに突き出す複数本(
図3では3本)の軸部21cを有する。それぞれの軸部21cは、ねじ軸からなり、右側のスライド板21の上下方向に等間隔aをおいて配置されている。それぞれの軸部21cのうち、上下方向真ん中の軸部21cは、右側のスライド板21の上下方向の中央に位置している。それぞれの軸部21cは、右側のスライド板21に対して前後方向の中間位置に設けられている。なお、軸部21cは、固定アングル4が固定できれば、外周部におねじを有していない軸状部材でもよい。
【0036】
図6(a)、(b)に示すように、右側のスライド板21は、軸部21cと第一端縁部21aとの前後方向の第一距離L1が、軸部21cと第二端縁部21bとの前後方向の第二距離L2よりも小さく形成されている。第二距離L2は、スリット孔13aの前後方向の長さX以上である。第一距離L1は、スリット孔13aの前後方向の長さXの半分の長さ以上である。
【0037】
左側板部14は右側板部13と同じ構造であって、フィルタ装着孔14bをさらに有するものである。すなわち、左側板部14は、前後方向に沿って形成される3つのスリット孔14aと、後端部寄りの位置に形成されたフィルタ装着孔14bとを有する。それぞれのスリット孔14aは、上下方向に等間隔aをおいて配置されている。それぞれのスリット孔14aのうち上下方向真ん中のスリット孔14aは、左側板部14の上下方向の中央に位置している。それぞれのスリット孔14aは、前後方向に同じ長さを有し、左側板部14に対して前後方向の中間位置に設けられている。
【0038】
左側板部14は、左側板部14の内面に対向する状態で前後方向に移動可能に取り付けられた左側のスライド板21を有する。左側のスライド板21は、右側のスライド板21とで一対をなす同じ構造のものであって、左右方向の向きが反対向きに配置される。左側のスライド板21は、それぞれの軸部21cが左側板部14のそれぞれのスリット孔14aに軸方向外向きに貫通する状態となっている。
【0039】
フィルタ装着孔14bは、上下方向に沿う長孔状に形成され、フィルタ5の上下方向の幅寸法よりわずかに大きい長さ寸法と、フィルタ5の厚さよりもわずかに大きい幅寸法とを有する。フィルタ装着孔14bの上下方向両端部に、前後方向外向きおよび上下方向外向きに延びる切り欠き14cが形成されている。上下の切り欠き14cは、後述するフィルタ5のガイドフレーム5aが通過するものである。
【0040】
支持枠3は前後方向に開口する矩形の枠部材であって、前側縁部の全周に内向きのフランジ3aを有する。支持枠3の外周縁が嵌合枠2の補強板部6の外周縁と同じ大きさに形成されている。フランジ3aの4つの角部に貫通孔3bが形成されている。フランジ3aの4辺部のそれぞれには、後方に向かって延びるボルト3cが2本ずつ所定の間隔をおいて配置されている。それぞれのボルト3cは、そのねじ部がフランジ3aに対し前方から後方へ貫通する状態で取り付けられ、頭部がフランジ3aに対し前方に突き出ている。それぞれのボルト3cは、換気扇Fの固定に利用される。
【0041】
支持枠3の右側部分と嵌合枠2の右側板部13の後側端部との間に上下一対のヒンジ7が設けられている。一対のヒンジ7により、支持枠3が嵌合枠2の後端部に対して開閉する。それぞれのヒンジ7は、嵌合枠2側に筒軸部が固定され、支持枠3側にヒンジ軸が固定された抜き差しヒンジである。支持枠3は嵌合枠2に対して着脱可能となっている。
【0042】
固定アングル4は、上下方向に沿って配置される長尺のL字アングルである。固定アングル4は、右側板部13(左側板部14)に対向する第一面部4aと、外壁Wの屋内側表面に対向する第二面部4bとを有する。第一面部4aには右側のスライド板21(左側のスライド板21)の軸部21cの貫通孔4cが設けられている(
図6参照)。第二面部4bの上下方向両端部には外壁Wに対する固定孔4dが設けられている。
【0043】
図5に示すように、フィルタ5は、矩形に形成された2枚の金網と、2枚の金網を重ね合わせた状態で保持する上下一対のガイドフレーム5aと、2枚の金網の左側端縁に固定されるストッパ片5bとを有する。金網としては、例えば、エキスパンドメタルやパンチングメタルを使用することができる。上下のガイドフレーム5aは、2本のL字アングルからなり、2本のL字アングルの一方の面部が相互に前後方向に対向し、他方の面部が上下方向外向き突出する状態となっている。
【0044】
フィルタ5は、左側板部14のフィルタ装着孔14bから嵌合枠2内に挿入可能である。
図2に示すように、フィルタ5は、上部プレート15のガイドフランジ15aと上枠16のガイドフランジ16bとの間、および下部プレート19のガイドフランジ19aと下枠20のガイドフランジ20bとの間に差し込まれる。
【0045】
フィルタ5の上側のガイドフレーム5aは上部プレート15と上枠16の平坦部16aに係合する状態となっている。フィルタ5の下側のガイドフレーム5aは下部プレート19と下枠20の平担部20aに係合する状態となっている。さらに、フィルタ5の右側縁部が右側板部13に達する状態で、フィルタ5の右側縁部がフィルタ受け部13bに支持される。
【0046】
この実施形態の換気扇用取付枠1は上記のように構成される。続いて、この実施形態の
換気扇用取付枠1の建物の外壁への取り付けを説明する。
【0047】
換気扇用取付枠1を取り付ける建物の外壁Wは、
図9に示すように、例えば、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などの躯体構造の柱(図示省略)の間に上下方向に間隔をおいて複数本架け渡される軽量形鋼からなる壁胴縁41と、それぞれの壁胴縁41に対してフックボルト43により固定される複数枚のスレート板からなる外壁材42とで構築される。
【0048】
換気扇用取付枠1の取り付けに際して、建物の外壁Wでの換気扇Fの取り付け位置となる外壁材42に換気口Hを形成する。さらに、壁胴縁41の換気口Hに架かる部分を切除する。
【0049】
建物の外壁Wへの取り付け前において、換気扇用取付枠1は、換気扇FとウェザーカバーCを分離した状態で、倉庫などに保管されている。そして、現場に搬送された換気扇用取付枠1は、嵌合枠2の前側フランジ2bのボルト2dにウェザーカバーCを差し込み、ナットを締め付けてウェザーカバーCを固定する。
【0050】
その後、右側板部13から突き出すそれぞれの軸部21cを固定アングル4の第一面部4aの貫通孔4cに通し、固定アングル4を軸部21cにナットの締め付けにより固定する。同様に左側板部14の軸部21cに固定アングル4をナットで固定する。
【0051】
続いて、ウェザーカバーCおよび固定アングル4が固定された嵌合枠2を、建物の外壁Wの屋内側から換気口Hに差し込む。このとき、支持枠3および固定アングル4が外壁Wに対して後側に位置する状態となるように配置され、嵌合枠2の前端部が外壁Wの外表面の位置に合わせて配置される。また、右側および左側のスライド板21は、第一端縁部21aが後側となる状態で配置される。
【0052】
嵌合枠2を換気口Hに差し込み、固定アングル4を外壁Wへ接近させるように前方へ移動させ、左右の固定アングル4の第二面部4bを、複数本の壁胴縁41に当てる。ここで、左右の固定アングル4の第二面部4bを、換気口Hの直上の壁胴縁41、直下の壁胴縁41、および換気口Hに架かる部分を切除された壁胴縁41の換気口H側端部に、それぞれボルトにより固定する。
【0053】
換気扇Fに支持枠3のボルト3cが通る挿通孔を形成して、その挿通孔にボルト3cを通しつつ、換気扇Fを後側から支持枠3に嵌め合わせる。ボルト3cにナットを締め付けて支持枠3に換気扇Fを固定する。なお、換気扇Fは、現場に搬送されたときに、支持枠3に固定してもよい。
【0054】
換気扇Fにより嵌合枠2を通して外部から吸気する場合、フィルタ5を左側板部14のフィルタ装着孔14bから嵌合枠2内に装着することができる。一方、嵌合枠2を通して外部に排気する場合には、嵌合枠2からフィルタ5を取り外した状態とすることができる。
【0055】
なお、建物の外壁Wに形成される換気口Hの位置が床面に近い場合には、左右の固定アングル4の下端部を床面に接地させてもよい。このようにすると、重量が大きい換気扇用取付枠1を安定して支えることができる。
【0056】
以上のようにして、この実施形態の換気扇用取付枠1は、建物の外壁Wに換気口Hを形成すれば、建物の外壁Wの換気口Hに屋内側から容易に施工することができる。このため、建物の新築時のみならず、改修時においても、施工が容易となる。
【0057】
また、
図10に示すように、換気扇用取付枠1は、換気扇Fを支持枠3に固定した状態で、その支持枠3を嵌合枠2に対して開くことができる。このため、換気扇Fが固定された支持枠3を開いた状態で、嵌合枠2およびウェザーカバーCの内部の清掃、フィルタ5の清掃や交換、あるいは、ウェザーカバーCの内部に設置されている防火シャッターのメンテナンスなどを屋内側から容易に行うことができる。
【0058】
さらに、換気扇用取付枠1は、
図6(a)に示すように、右側のスライド板21の軸部21cよりも後側部分が、スリット孔13aの軸部21cよりも後側部分を塞ぎ、かつ右側のスライド板21の軸部21cよりも前側部分が、スリット孔13aの軸部21cよりも前側部分を塞ぐ状態となっている。
【0059】
すなわち、右側のスライド板21により、右側板部のスリット孔13aが塞がれている。スリット孔13aが塞がれていると、スリット孔13aを通して、嵌合枠2の内部と外部との間で空気が移動することを防止することができ、換気扇による換気効率が良好となる。
【0060】
ここで、外壁Wの厚さが、
図6(a)での外壁Wよりも大きい場合においては、軸部21cをスリット孔13aの後側へ移動させることで対応することができる。
図6(b)に示すように、軸部21cをスリット孔13aの後端部に位置させた場合、嵌合枠2の前端部と固定アングル4との前後方向の幅寸法W1が、対応可能な外壁Wの厚さの最大となる。この場合でも、右側のスライド板21の軸部21cよりも前側部分がスリット孔13aを塞ぐ状態となる。
【0061】
一方、外壁Wの厚さが、
図6(a)での外壁Wよりも小さい場合においては、
図7に示すように、第二端縁部21bが後側に位置する状態に右側のスライド板21の上下方向の向きを反転させることで対応することができる。
図8(a)に示すように、第二端縁部21bが後側に位置する状態の右側のスライド板21は、その軸部21cよりも後側部分が、スリット孔13aの軸部21cよりも後側部分を塞いでいる。右側のスライド板21の軸部21cよりも前側部分は、スリット孔13aの軸部21cよりも前側部分を塞いでいる。
【0062】
そして、
図8(b)に示すように、軸部21cをスリット孔13aの前側へ移動させ、軸部21cをスリット孔13aの前端部に位置させた場合、嵌合枠2の前端部と固定アングル4との前後方向の幅寸法W2が、対応可能な外壁Wの厚さの最小となる。この場合でも、右側のスライド板21の軸部21cよりも後側部分がスリット孔13aを塞ぐ状態となる。なお、左側板部14は、右側板部13と同じ構造であり、かつ左側のスライド板21の左側板部14に対する構成は、右側のスライド板21に対する右側板部13と同じ構成となっている。このため、左側のスライド板21の作用の説明を省略する。
【0063】
このように、換気扇用取付枠1は、取り付け可能な外壁Wの厚さ寸法として、
図6(b)に示す嵌合枠2の前端部と固定アングル4との前後方向の幅寸法W1から、
図8(b)に示す嵌合枠2の前端部と固定アングル4との前後方向の幅寸法W2までの厚さ寸法に対応することができる。
【0064】
換気扇用取付枠1は、建物の外壁Wの厚さ寸法が上記の幅寸法W1から幅寸法W2までの範囲内であれば、
図9、
図10に示す外壁材42がスレート板である外壁Wのみならず、外壁材42が様々な厚さの規格を有する石膏ボードやALCパネルからなる外壁Wにも施工可能である。
【0065】
また、
図2、
図7に示すように、換気扇用取付枠1は、上部プレート15と上枠16の平坦部16aの上下方向の位置が一致し、かつ下部プレート19と下枠20の平坦部20aの上下方向の位置が一致している。このため、換気扇Fにより換気を行う際、嵌合枠2の上面および下面が平坦面となる。その結果、嵌合枠2内を通過する空気の流れが乱流となり難く、換気効率の向上を図ることができる。
【0066】
さらに、フィルタ5は、上部プレート15のガイドフランジ15aと上枠16のガイドフランジ16bとの間と、下部プレート19のガイドフランジ19aと下枠20のガイドフランジ20bとの間に容易に着脱することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 換気扇用取付枠
2 嵌合枠
3 支持枠
4 固定アングル
5 フィルタ
5a ガイドフレーム
6 補強板部
7 ヒンジ
11 天板部
12 底板部
13 右側板部
13a スリット孔
14 左側板部
14a スリット孔
15 上部プレート
15a、19a ガイドフランジ
16 上枠
16a、20a 平坦部
16b、20b ガイドフランジ
17、18 スペーサ
19 下部プレート
20 下枠
21 スライド板
21a 第一端縁部
21b 第二端縁部
21c 軸部
C ウェザーカバー
F 換気扇
H 換気口
L1 第一距離
L2 第二距離
W 外壁