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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】飲料容器の飲み口部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/06 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B65D47/06 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020005115
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021113057
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000112233
【氏名又は名称】ピーコック魔法瓶工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】芝 健太郎
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-058949(JP,A)
【文献】中国実用新案第206079980(CN,U)
【文献】特開2002-321760(JP,A)
【文献】実開平05-095374(JP,U)
【文献】特開2001-046210(JP,A)
【文献】特開2009-132433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器の栓体に取り付けられる取付け部と、前記取付け部から立設された飲み口と、前記取付け部より下方に設けられて内部ストローが着脱可能に接続されるストロー接続部を備えた飲料容器の飲み口部材であって、
前記取付け部と前記ストロー接続部の間に、可撓性を有し流路を内部に備える屈曲部が形成され、
前記屈曲部が、前記ストロー接続部を一の傾斜方向に傾ける一定の傾斜角度を有する形状に形成されるとともに、
前記屈曲部の前記傾斜方向の側面、又は前記傾斜方向と反対方向の側面のうち少なくともいずれか一方の剛性が、前記傾斜方向に直交する方向の側面の剛性よりも低く設定されて、前記屈曲部が前記一定の傾斜角度である初期位置であるとき、また前記屈曲部が前記初期位置から前記傾斜方向と反対方向に変位したときには前記初期位置に戻す付勢力を蓄積して、前記内部ストローの先端を容器本体の内底部の隅に位置させる
飲料容器の飲み口部材。
【請求項2】
前記屈曲部の横断面形状における前記傾斜方向の直径が、前記傾斜方向に直交する方向の直径よりも短い
請求項1に記載の飲料容器の飲み口部材。
【請求項3】
前記屈曲部の前記流路を形成する周壁のうち前記傾斜方向に対応する部位、又は前記傾斜方向と反対方向に対応する部位のうち少なくともいずれか一方の肉厚が、前記傾斜方向に直交する方向に対応する部位の肉厚よりも薄く形成された
請求項1または請求項2に記載の飲料容器の飲み口部材。
【請求項4】
前記屈曲部の前記流路を形成する周壁のうち前記傾斜方向に直交する方向に対応する部位に、肉厚を厚くする厚肉部が形成された
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の飲料容器の飲み口部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の飲料容器の飲み口部材を備えた
飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ストローを備えた飲料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ストロー付きの飲料容器として、下記特許文献1に開示のものがある。この飲料容器は、次のような飲み口部材を備えている。つまり、飲用時に口にくわえられる短尺ストローと、短尺ストローの一端部に形成されて鍔部とフランジ部からなりストローアダプターに固定される取付け部を有し、鍔部には、短尺ストローの軸線に対して傾斜したストロー差込口が設けられている。このストロー差込口に長尺ストローが接続される。
【0003】
このような飲み口部材を備えた飲料容器では、ストロー差込口が短尺ストローに対して所定角度傾斜しているので、長尺ストローの先端を容器本体の隅角部に位置させることができる。このため、飲料を完全に飲み干すことができる、というものである。
【0004】
しかし、ストロー差込口は所定角度傾斜している構成であって、角度は不変である。またその角度は、長尺ストローの先端を容器本体の隅角部に位置させるための特定の角度である。
【0005】
つまり、容器本体の高さや径が異なれば、ストロー差込口の傾斜角度も変わるので、容器本体の大きさに合わせて傾斜角度の異なる飲み口部材を形成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4990444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、容器本体の大きさに関わりなくストローの先端を容器本体内の底部の隅に位置させることできるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、飲料容器の栓体に取り付けられる取付け部と、前記取付け部から立設された飲み口と、前記取付け部より下方に設けられて内部ストローが着脱可能に接続されるストロー接続部を備えた飲料容器の飲み口部材であって、前記取付け部と前記ストロー接続部の間に、可撓性を有し流路を内部に備える屈曲部が形成され、前記屈曲部が、前記ストロー接続部を一の傾斜方向に傾ける一定の傾斜角度を有する形状に形成されるとともに、前記屈曲部の前記傾斜方向の側面、又は前記傾斜方向と反対方向の側面のうち少なくともいずれか一方の剛性が、前記傾斜方向に直交する方向の側面の剛性よりも低く設定されて、前記屈曲部が前記一定の傾斜角度である初期位置であるとき、また前記屈曲部が前記初期位置から前記傾斜方向と反対方向に変位したときには前記初期位置に戻す付勢力を蓄積して、前記内部ストローの先端を容器本体の内底部の隅に位置させる、飲料容器の飲み口部材である。
【0009】
この構成では、一方向に傾斜し可撓性を有する屈曲部は、飲料容器に装着されるときに接続された内部ストローの先端を飲料容器の内底部の隅に向ける。そして屈曲部の屈曲変形は、側面の剛性の相違により、傾斜方向とこれと反対方向への揺動変位が、傾斜方向に直交する方向の変位よりも優先してなされる。飲料容器の大きさに応じて長さの異なる内部ストローを接続すれば、屈曲部は自ずと一方向に屈曲変形し、内部ストローの先端を内底部の隅に位置させる適切な傾斜角度になる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、屈曲部の変位方向が規制されており一方向に優先して屈曲するので、容器本体の大きさに対応して自動的に内部ストローの先端を容器本体内の底部の隅に位置させることできる。このため、一種類の飲み口部材を大きさの異なる複数種類の飲料容器に使用しても、飲料の飲み切りを可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】飲料容器の縦断面図。
図2】ストローを備えた栓体の斜視図。
図3】飲み口部材の正面図と右側面図。
図4図3(a)のA-A断面図と、図3(b)のB-B切断部端面図。
図5】使用態様の斜視図。
図6】他の例に係るストローの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0013】
図1に、携帯用の飲料容器11の断面図を示す。この図に示すように飲料容器11は、飲料を吸引するためのストロー12が備えられたものであり、飲料を最後まで飲めるように構成されている。
【0014】
概略構成を説明すると、飲料容器11は、飲料が貯留される容器本体13と、容器本体13の上部の外周に固定される肩部材14と、肩部材14に着脱可能に固定されて容器本体13の上端開口を塞ぐ栓体15と、栓体15に枢着された蓋部材16を有している。これらのうちの栓体15に、飲料を吸引するためのストロー12の一部を構成する飲み口部材17が固定される。
【0015】
飲み口部材17は、栓体15に取り付けられる取付け部21と、取付け部21から立設された飲み口22と、取付け部21より下方に設けられて内部ストロー18が着脱可能に接続されるストロー接続部23と、取付け部21とストロー接続部23の間の屈曲部24を備えている。内部ストロー18は、断面円形の硬質の管体からなり、容器本体13の内底部に向けて斜めに延びて、その先端18aが内底部の隅に位置するものである。
【0016】
具体的には、飲み口部材17は全体が柔軟性を有する樹脂やゴムからなり、好ましくはシリコーンゴムの成形品で構成されている。飲み口部材17の取付け部21は、栓体15の上端に位置する上端板部15aの開口筒部15bに固定される。取付け部21は、開口筒部15bに収まるくびれ部21aと、くびれ部21aの下に位置して上端板部15aの下面に当接する鍔部21bを有している。また取付け部21の中心には鉛直方向に延びて飲料が通る流路12aが形成されている。
【0017】
取付け部21の上の飲み口22は、上方斜め前方に向けて傾斜して立設されている。ここで「前方」とは、図2にも示したように、開操作ボタン19が設けられる蓋部材16の開放端側、つまり枢着部15cの反対側である。この開放端側は飲料を飲むときに人体に向く側である。このため飲み口22は飲料を飲む者にとっては手前側に向けて斜めに延びることになる。飲み口22は全体が管状であり、内部に流路12aを有している。
【0018】
取付け部21より下のストロー接続部23は、下端が開口した円筒形である。ストロー接続部23の内径は流路12aよりも大きく設定されており、内部ストロー18が内嵌合される。ストロー接続部23の長さは、内部ストロー18をしっかりと接続できるように設定される。
【0019】
このストロー接続部23を取付け部21に接続する屈曲部24は、可撓性を有し内部に流路12aを備える筒状であり、ストロー接続部23を一の傾斜方向に傾ける形状である。一の傾斜方向とは、飲料を飲む者にとっての手前側であり、前述した飲み口22が傾斜する方向と同じ前方である。ただし、屈曲部24の傾斜方向は飲み口22の傾斜方向と異なる場合もあり得る。
【0020】
この屈曲部24は、周方向において側面剛性に差異が設けられている。つまり、屈曲部24の傾斜方向、つまり前方の側面、又は傾斜方向と反対方向、つまり後方の側面のうち少なくともいずれか一方の剛性が、傾斜方向(前方)に直交する方向の側面の剛性よりも低い。
【0021】
このためには、具体的には次の三例のように構成するとよい。
【0022】
その一つは、屈曲部24の横断面形状における傾斜方向の直径を、傾斜方向に直交する方向の直径よりも短く設定する構成である。
【0023】
二つ目は、屈曲部24の流路12aを形成する周壁のうち傾斜方向に対応する部位、又は傾斜方向と反対方向に対応する部位のうち少なくともいずれか一方の肉厚を、傾斜方向に直交する方向に対応する部位の肉厚よりも薄く形成する構成である。
【0024】
三つ目は、屈曲部24の流路12aを形成する周壁のうち傾斜方向に直交する方向に対応する部位に、肉厚を厚くする厚肉部25を形成する構成である。
【0025】
屈曲部24の具体的構成を図3図4に示す。図3の(a)は飲み口部材17の正面図(前方から見た状態)、図3の(b)は右側面図である。図4の(a)は図3(a)のA-A断面図、図4の(b)は図3(b)のB-B切断部拡大端面図である。図4(b)は、図面左側が前方、図面右側が後方、図面上側と下側が傾斜方向に直交する方向である。
【0026】
これらの図に示すように、飲み口22の先端から屈曲部24にかけて形成されている流路12aは横断面形状が円形である。飲み口22では外周面も横断面形状が円形であるのに対して、屈曲部24では、外周面の横断面形状が、傾斜方向に直交する方向を長軸とする楕円形である。つまり、屈曲部24の横断面形状における傾斜方向の直径aは、傾斜方向に直交する方向の直径bよりも短い。
【0027】
また、屈曲部24の流路12aを形成する周壁のうち傾斜方向に対応する部位の肉厚t1と傾斜方向と反対方向に対応する部位の肉厚t2は、傾斜方向に直交する方向に対応する部位の肉厚t3よりも薄い。そのうえ、円形をなす流路12aの横断面の中心と、楕円形をなす外周面の横断面の中心は共通している。このため、屈曲部24の流路12aを形成する周壁のうち傾斜方向に対応する部位の肉厚t1と傾斜方向と反対方向に対応する部位の肉厚t2は同一である。
【0028】
さらに、換言すれば、屈曲部24の流路12aを形成する周壁のうち傾斜方向に直交する方向に対応する部位に、肉厚を厚くする厚肉部25が形成されている。厚肉部25は、図4(b)に仮想線で示した位置よりも外周側の部分である。厚肉部25は、例えばリブや凸条のように局所的に厚肉に形成することもできるが、前述したように屈曲部24の外周面の横断面形状は楕円形であるので、外周面の横断面形状は、周方向に凹みのない連続した曲線からなる形状である。
【0029】
屈曲部24の傾斜は、図1に示したように栓体15を容器本体13に装着したときに内部ストロー18の先端18aを容器本体13の内底部の手前側の隅に位置させるためのものである。この角度は、容器本体13の高さと内部の直径によって異なる。このため、成形される屈曲部24の角度は、使用が想定される容器本体13のうち、高さの低いもの、また内径の大きいものを基準に設定される。つまり、図3(b)に示したように、屈曲部24の傾斜角度は、容器本体13の鉛直方向Vからの傾斜角度αが、想定範囲内で最も大きいのもとするのが好ましい。
【0030】
このような構成の屈曲部24は、図3(b)に示したように、主に矢印で示した前後方向に屈曲可能であり、ストロー接続部23を実線で示した初期位置から前後方向に変位可能とするとともに、初期位置へ戻す付勢をする。また、傾斜方向に直交する方向への変位は、側面剛性の違いによって抑制する。
【0031】
このため、例えば内部ストロー18を介して屈曲部24に、傾斜方向に直交する方向、つまり左右方向へ曲がる負荷がかかっても、屈曲部24はその負荷に対抗してその方向への曲がりを抑制する。
【0032】
以上のような構成の飲み口部材17を備えた飲料容器11では、図5に示したように、接続する内部ストロー18の長さを容器本体13の大きさに合わせて適宜設定して、同一種類の飲み口部材17を大きさの異なる複数種類の容器本体13に適用させる。
【0033】
つまり、図1に実線で示したように高さが低い容器本体13に使用する飲み口部材17であっても、内部ストロー18の長さを容器本体13の高さに合わせて長いものに付け替えると、仮想線で示したように内部ストロー18の先端18aを内底部の隅に位置させることができる。
【0034】
具体的には、図2に示したように内部ストロー18を飲み口22と同じ前方に傾斜した状態に保持した栓体15を容器本体13に対して降下して、内部ストロー18を容器本体13内に入れると、内部ストロー18の先端18aは容器本体13の内周面に当たる。屈曲部24は前後方向に弾性変位して内部ストロー18の円滑な降下を可能にする。
【0035】
栓体15は容器本体13に固定するときに肩部材14に対して螺合するが、栓体15を回転しても屈曲部24は前後方向に優先して変位し、屈曲部24の傾斜方向に直交する左右方向への屈曲は抑制される。このため、内部ストロー18が左右方向傾いたり捻じれたりするようなことなく、旋回されながらでも内底部に降下する。そして螺合による固定が完了するときには、内部ストロー18の先端18aは容器本体13の内底部の隅に位置する。
【0036】
前述したように、成形される屈曲部24の傾斜角度は想定範囲内で最も大きいのもとするのが好ましいが、そうではなくても、屈曲部24が前後方向に屈曲するので、丸みを帯びた底面に接した内部ストロー18の先端18aが反力によって屈曲部24を適切な屈曲状態に変形し得る。
【0037】
以上のように、容器本体13の大きさに対応して自動的に内部ストロー18の先端18aを容器本体13内の底部の手前側の隅に位置させることできる。この結果、飲料の飲み切りを可能にできる。しかも、一種類の飲み口部材17を大きさの異なる複数種類の飲料容器11に使用することもできる。
【0038】
また、屈曲部24の構成は簡素であり製造が容易である上に、屈曲部24の外周面は周方向に凹みがない形状であるので、汚れも付きにくい。
前述の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成に限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
たとえば、ストロー12(内部ストロー18)の先端18aに傾斜面を形成するとよい。これは、最後まで飲めるようにするという前述の効果の実効性を高めるためである。
すなわち、内部ストロー18の先端18aが容器本体13の内底部の隅に接しすぎて、吸引を阻害することがないようにする。このためには、内部ストロー18の先端18aに、長手方向に直角ではない傾斜面を形成するとよい。
傾斜面は、周方向の全体を斜めに切り落とすように形成してもよいが、例えば図6に示した内部ストロー18のように、周方向の全体ではなく半分に傾斜面18bを形成するのが好ましい。傾斜面18bの角度は例えば長手方向に対して45度程度にするとよい。図6中、仮想線13aは容器本体13の内底部の内面である。
このような傾斜面18bは内部ストロー18の両端に形成される。
傾斜面18bを両端に有するので、内部ストロー18の飲み口部材17に対する接続向きに関わらず所期の目的を達成できる。また、傾斜面18bは周方向の一部に形成され、傾斜面以外の部分は長手方向に直角の面であるので、傾斜面18bを有する端部を飲み口部材17のストロー接続部23に接続しても吸引に支障をきたさない接続状態を得られる。
【符号の説明】
【0039】
11…飲料容器
12…ストロー
12a…流路
15…栓体
17…飲み口部材
18…内部ストロー
21…取付け部
22…飲み口
23…ストロー接続部
24…屈曲部
25…厚肉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6