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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】多軸アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H02K7/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020112622
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011464
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000229645
【氏名又は名称】日本パルスモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】井上 光司
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-107353(JP,A)
【文献】特開2010-107352(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193719(WO,A1)
【文献】特開2014-029333(JP,A)
【文献】特表2014-508034(JP,A)
【文献】特表2019-523122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転モータによる駆動部と該駆動部により直動する被駆動軸とを有する少なくとも4個の直動機構を平面視で一列状に配置したものを少なくとも1組有する直動機構ユニットを備えた多軸アクチュエータであって、
前記直動機構ユニットは、前記駆動部の高さ以上の間隔を持つように組み合わされた少なくとも2段構成の上側設置板と下側設置板とを含む駆動部固定部材を備え、
隣り合う前記駆動部を、交互に、前記上側設置板と前記下側設置板に設置したことを特徴とする多軸アクチュエータ。
【請求項2】
隣り合う前記駆動部を、前記上側設置板と前記下側設置板の、前記隣り合う駆動部の設置領域に平面視で重なり部分ができるように設置したことを特徴とする請求項1に記載の多軸アクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動部固定部材は前記上側設置板と前記下側設置板とをそれらの一端側で連結した断面コ字形状を有し、前記上側設置板及び下側設置板はそれぞれ、前記被駆動軸を通すための第1の貫通穴を有し、
前記下側設置板の下面側には、少なくとも4個の前記第1の貫通穴から延びる前記被駆動軸の直動をガイドする第1のガイド機構を構成するためのプレートが垂設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多軸アクチュエータ。
【請求項4】
前記被駆動軸は、前記回転モータに組み合わされたリードスクリュと、前記リードスクリュの下端側に連結されて下方に延びる延長軸とを含み、
前記第1のガイド機構は、前記プレートの一方の主面に、前記少なくとも4個の前記第1の貫通穴に対応して互いに平行に並んで上下方向に延びるように設けられた少なくとも4個の第1のリニアレールと、前記延長軸に取り付けられて前記第1のリニアレールに沿ってスライド可能に構成された少なくとも4個の第1のリニアガイドとを含むことを特徴とする請求項3に記載の多軸アクチュエータ。
【請求項5】
前記直動機構ユニットは、少なくとも4個の前記駆動部を、交互に、前記上側設置板と前記下側設置板に、平面視で一定ピッチPにて一列状に配置したものを2組、互いに平行になるように配列して成り、
一組目の少なくとも4個の前記駆動部の配列と、二組目の少なくとも4個の前記駆動部の配列が所定ピッチP/2だけずれるように配置されていることにより、前記一組目の少なくとも4個の前記駆動部と前記二組目の少なくとも4個の前記駆動部とが平面視で千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の多軸アクチュエータ。
【請求項6】
前記駆動部固定部材の前記上側設置板と前記下側設置板はそれぞれ、前記プレートを間にして前記一方の面側に前記一組目の少なくとも4個の前記駆動部の設置領域を有すると共に、前記プレートの前記一方の面とは反対の面側に前記二組目の少なくとも4個の前記駆動部の設置領域を有し、
前記プレートの前記反対の面側には、前記二組目の少なくとも4個の前記駆動部から第2の貫通穴を通して下方に延びる被駆動軸の直動をガイドする第2のガイド機構が構成され、
前記第2のガイド機構は、前記プレートの前記反対の面側に、少なくとも4個の前記第2の貫通穴に対応して互いに平行に並んで上下方向に延びるように設けられた少なくとも4個の第2のリニアレールと、前記被駆動軸の延長軸に取り付けられて前記第2のリニアレールに沿ってスライド可能に構成された少なくとも4個の第2のリニアガイドとを含むことを特徴とする請求項5に記載の多軸アクチュエータ。
【請求項7】
前記延長軸は前記プレートの下端部よりも下方に延びる長さを有して、その下部には前記プレートの前記下端部の下側に入り込む略L形の連結部を有し、
前記一組目の少なくとも4個の連結部と前記二組目の少なくとも4個の連結部は交互に前記プレートの前記下端部の下側に入り込み、
前記連結部の前記プレートの下端部に対応する箇所には挿通孔を有すると共に、該挿通孔から下方に延びるように分注ヘッド用のノズルが装着され、
前記プレートにおける前記挿通孔と対応する箇所には上下方向に連通する連通穴を有し、
前記連結部に前記挿通孔から上方に延びるように装着した前記分注ヘッド用のパイプを、前記連通穴と前記下側設置板に形成した穴を通して前記上側設置板と前記下側設置板の間の空間まで導出するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の多軸アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転を直線運動に変換する直動機構を複数個備えた多軸アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品のハンドリング装置や少量液体の吸引、吐出を行う分注装置等にリニアシャフトモータが適用されている。ハンドリング装置や分注装置等のいずれにおいても、通常は、リニアシャフトモータの可動部であるシャフトを第1シャフトとし、この第1シャフトに、その中心軸方向と平行に中空状の第2シャフトを第1シャフトと一体に上下移動するように組み合わせてリニアモータアクチュエータとして提供されている。そして、第2シャフトの中空空間がエアによるハンドリングや液体の吸引、吐出に利用できるように構成されている。
【0003】
例えば、ハンドリング装置の場合、第2シャフトの先端に真空吸着器のような治具を装着し、第1シャフトの上下移動に同期して電子部品のハンドリングを行うように構成されている(特許文献1)。一方、分注装置の場合、第2シャフトの先端にノズル及びチップを装着して分注ヘッドを構成し、第1シャフトの上下移動に同期してノズル(チップ)の内部圧力を適宜増減させることにより、液体の吸引、吐出を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-090492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上記のような第1シャフトと第2シャフトの組み合わせによるリニアモータアクチュエータを複数組、一列に並べて配置構成し、一括して同じ作業動作を行わせることで作業効率を向上させるようにした、多軸型のリニアモータアクチュエータと呼ばれるものが提供されている。多軸型のリニアモータアクチュエータは、例えば、個別に製造された上記のような分注装置を複数組、一列に並べて配置構成し、医薬品、化粧品、バイオなどの分野で分注作業を行うための多軸分注装置として適用することが行われている。多軸分注装置によれば、複数組の分注装置に対して一括して同じ作業動作を行わせるので、人の手作業による分注作業に比べて大幅な省力化と、分注ミスの防止に有効である。
【0006】
しかしながら、リニアシャフトモータを用いた多軸アクチュエータは、汎用の回転モータを用いた多軸アクチュエータに比べて高価であるという問題点がある。
【0007】
一方、回転モータを用いて多軸アクチュエータを構成しようとする場合、軸数の増加に伴って、回転モータによる駆動部の数も増加するので、駆動部の設置スペースが大きくなってしまうという問題点がある。
【0008】
上記のような問題点に鑑みて、本発明は、多軸アクチュエータを安価にて提供しようとするものである。
【0009】
本発明はまた、回転モータによる駆動部を用いても設置スペースの削減に有効な多軸アクチュエータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1の態様)
回転モータによる駆動部と該駆動部により直動する被駆動軸とを有する少なくとも4個の直動機構を平面視で一列状に配置したものを少なくとも1組有する直動機構ユニットを備えた多軸アクチュエータであって、
前記直動機構ユニットは、前記駆動部の高さ以上の間隔を持つように組み合わされた少なくとも2段構成の上側設置板と下側設置板とを含む駆動部固定部材を備え、
隣り合う前記駆動部を、交互に、前記上側設置板と前記下側設置板に設置したことを特徴とする多軸アクチュエータ。
【0011】
(第2の態様)
隣り合う前記駆動部を、前記上側設置板と前記下側設置板の、前記隣り合う駆動部の設置領域に平面視で重なり部分ができるように設置したことを特徴とする上記第1の態様に記載の多軸アクチュエータ。
【0012】
(第3の態様)
前記駆動部固定部材は前記上側設置板と前記下側設置板とをそれらの一端側で連結した断面コ字形状を有し、前記上側設置板及び下側設置板はそれぞれ、前記被駆動軸を通すための第1の貫通穴を有し、
前記下側設置板の下面側には、少なくとも4個の前記第1の貫通穴から延びる前記被駆動軸の直動をガイドする第1のガイド機構を構成するためのプレートが垂設されていることを特徴とする上記第1又は第2の態様に記載の多軸アクチュエータ。
【0013】
(第4の態様)
前記被駆動軸は、前記回転モータに組み合わされたリードスクリュと、前記リードスクリュの下端側に連結されて下方に延びる延長軸とを含み、
前記第1のガイド機構は、前記プレートの一方の主面に、前記少なくとも4個の前記第1の貫通穴に対応して互いに平行に並んで上下方向に延びるように設けられた少なくとも4個の第1のリニアレールと、前記延長軸に取り付けられて前記第1のリニアレールに沿ってスライド可能に構成された少なくとも4個の第1のリニアガイドとを含むことを特徴とする上記第3の態様に記載の多軸アクチュエータ。
【0014】
(第5の態様)
前記直動機構ユニットは、少なくとも4個の前記駆動部を、交互に、前記上側設置板と前記下側設置板に、平面視で一定ピッチPにて一列状に配置したものを2組、互いに平行になるように配列して成り、
一組目の少なくとも4個の前記駆動部の配列と、二組目の少なくとも4個の前記駆動部の配列が所定ピッチP/2だけずれるように配置されていることにより、前記一組目の少なくとも4個の前記駆動部と前記二組目の少なくとも4個の前記駆動部とが平面視で千鳥状に配置されていることを特徴とする上記第3の態様に記載の多軸アクチュエータ。
【0015】
(第6の態様)
前記駆動部固定部材の前記上側設置板と前記下側設置板はそれぞれ、前記プレートを間にして前記一方の面側に前記一組目の少なくとも4個の前記駆動部の設置領域を有すると共に、前記プレートの前記一方の面とは反対の面側に前記二組目の少なくとも4個の前記駆動部の設置領域を有し、
前記プレートの前記反対の面側には、前記二組目の少なくとも4個の前記駆動部から第2の貫通穴を通して下方に延びる被駆動軸の直動をガイドする第2のガイド機構が構成され、
前記第2のガイド機構は、前記プレートの前記反対の面側に、少なくとも4個の前記第2の貫通穴に対応して互いに平行に並んで上下方向に延びるように設けられた少なくとも4個の第2のリニアレールと、前記被駆動軸の延長軸に取り付けられて前記第2のリニアレールに沿ってスライド可能に構成された少なくとも4個の第2のリニアガイドとを含むことを特徴とする上記第5の態様に記載の多軸アクチュエータ。
【0016】
(第7の態様)
前記延長軸は前記プレートの下端部よりも下方に延びる長さを有して、その下部には前記プレートの前記下端部の下側に入り込む略L形の連結部を有し、
前記一組目の少なくとも4個の連結部と前記二組目の少なくとも4個の連結部は交互に前記プレートの前記下端部の下側に入り込み、
前記連結部の前記プレートの下端部に対応する箇所には挿通孔を有すると共に、該挿通孔から下方に延びるように分注ヘッド用のノズルが装着され、
前記プレートにおける前記挿通孔と対応する箇所には上下方向に連通する連通穴を有し、
前記連結部に前記挿通孔から上方に延びるように装着した前記分注ヘッド用のパイプを、前記連通穴と前記下側設置板に形成した穴を通して前記上側設置板と前記下側設置板の間の空間まで導出するようにしたことを特徴とする上記第6の態様に記載の多軸アクチュエータ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リニアシャフトモータに代えて安価な汎用の回転モータを使用することにより、多軸アクチュエータを安価にて提供することができる。
【0018】
本発明によればまた、軸数が増加しても回転モータによる駆動部の設置スペースの削減に有効な多軸アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る8軸分注装置の斜視図である。
図2図1に示された8軸分注装置の正面図である。
図3図1に示された8軸分注装置の側面図である。
図4図1に示された8軸分注装置の背面図である。
図5図1に示された8軸分注装置の上面図である。
図6図1に示された8軸分注装置の下面図である。
図7図2のA-A線による横断面図である。
図8図1に示された8軸分注装置から、2軸分の直動機構の被駆動軸と分注ヘッド及びこれらの連結部を分離した状態を示す斜視図である。
図9図3の側面図における1つの直動機構と分注ヘッド及びこれを収容しているプレートの内部構造を示す一部断面側面図である。
図10図1に示された8軸分注装置から、1軸分の直動機構における被駆動軸と分注ヘッド及びこれらの連結部を含む可動部と、ガイド機構の組合せを抽出して示した側面図である。
図11図9に示されたステッピングモータの内部構造を、リードシャフトと共に拡大して示した断面図である。
図12】直動機構の位置制御系の概略構成を示すブロック図である。
図13】本発明に係る8軸分注装置の最小単位である4軸分注装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
はじめに、図1図12を参照して、本発明に係る多軸アクチュエータの好ましい実施形態として、8軸分注装置について説明する。
【0021】
これまでの多軸型の分注装置は、例えば臨床検査装置として、96(8サンプル×12列)検体用のマイクロプレートと組み合わされる場合、8組の分注装置が一列に並ぶように組み立てられて8軸同時制御型、すなわち多軸同時制御型の分注装置として構成されている。そして、8軸の分注装置を一括して搬送機構により液体(例えば試薬)の吸引場所と吐出場所(すなわちマイクロプレート)との間を往復移動させるように構成されている。
【0022】
このような同時制御型の分注装置に加えて、各軸を個別に制御することのできる独立制御型の分注装置の要求が高まってきている。
【0023】
そこで、以下では、安価で、設置スペースの削減にも有効であるのみならず、同時制御と独立制御の両方の機能を持つ8軸分注装置を、多軸アクチュエータの実施形態として説明する。なお、同時制御は、独立制御可能な各軸に一括して同じ制御動作を実行させることで実現可能であるので、独立制御型の分注装置は同時制御と独立制御の両方の機能を有していると言える。
【0024】
図1は、本発明が適用された8軸分注装置の斜視図であり、図2図3図4はそれぞれ、図1に示された8軸分注装置の正面図、側面図、背面図である。図5図6はそれぞれ、図1に示された8軸分注装置の上面図、下面図である。図7図2のA-A線による横断面図であり、図8は、図1に示された8軸分注装置から、2軸分の直動機構の被駆動軸と分注ヘッド及びこれらの連結部を分離した状態を示す斜視図である。また、図9は、図3の側面図における1軸分の直動機構と分注ヘッド及び分注ヘッドの一部を収容しているプレートの内部構造を示した一部断面側面図である。更に、図10は、図1に示された8軸分注装置から、1軸分の直動機構における被駆動軸と分注ヘッド及びこれらの連結部を含む可動部と、ガイド機構の組合せを抽出して示した側面図である。
【0025】
図1において、本実施形態に係る8軸分注装置は、回転モータによる駆動部10と該駆動部10により直動する被駆動軸20とを有する4個の直動機構30を平面視で一列に配置した最小単位の直動機構ユニット(以下、最小直動機構ユニットと呼ぶことがある)を、2組互いに平行に並ぶように配置した直動機構ユニット100を有する。直動機構ユニット100は、駆動部10の高さ以上の間隔を持つように形成された2段棚構成の上側設置板41と下側設置板42とを含む駆動部固定部材40を備える。駆動部固定部材40の材料は金属製が望ましいが、これに限定されない。
【0026】
1組の最小直動機構ユニットについて言えば、隣り合う駆動部10を、交互に、上側設置板41と下側設置板42に設置して構成される。特に、本実施形態では、隣り合う駆動部10を、上側設置板41と下側設置板42の、隣り合う駆動部10の設置領域に平面視で重なり合う部分ができるように設置している。このようにする理由は、4個の駆動部10の平面視での設置スペースをできるだけ小さくするためであるが、隣り合う駆動部10の設置領域が平面視で隣接していれば良く、重なり合う部分は無くても良い。
【0027】
駆動部固定部材40は、上側設置板41と下側設置板42とをそれらの一端側で連結板43により連結した断面コ字形状を有する。ここでは、連結板43は下側設置板42と一体に形成されているが、上側設置板41と一体に形成されても良いし、上側設置板41及び下側設置板42と別体であっても良い。図1図5において、穴40aは、ネジ等を上側設置板41から連結板43に向けてねじ込んで連結するための穴である。
【0028】
上側設置板41及び下側設置板42にはそれぞれ、各駆動部10の中心に対応する箇所に貫通穴(第1の貫通穴)41a,42a(図9)か形成されて、対応する駆動部10の被駆動軸20を通すようにされている。
【0029】
本実施形態に係る8軸分注装置では、図3図5に示すように、上述した最小直動機構ユニットが2組、互いに平行に並ぶように駆動部固定部材40に配置されている。以下では、説明の便宜上、図3の右側の最小直動機構ユニットを一組目と呼び、図3の左側の最小直動機構ユニットを二組目と呼ぶこととする。これら2組の最小直動機構ユニットは、4個の直動機構の配置関係を除いてほぼ同じ構成を持つので、以下では、一組目の最小直動機構ユニットについて説明することとする。
【0030】
図3図9に示すように、駆動部固定部材40における下側設置板42の下面側であって、一組目の最小直動機構ユニットと二組目の最小直動機構ユニットの間に対応する領域には、下方向に延びるプレート50が垂設されている。
【0031】
図10をも参照して、前述したように、分注装置の可動部は、被駆動軸20と、被駆動軸20と平行に延びる分注ヘッド60を含む。被駆動軸20は、外周に雄ネジを形成したリードスクリュ21と、リードスクリュ21の下端部側に連結されてリードスクリュ21の軸方向に延びる延長軸22を有する。被駆動軸20はまた、延長軸22の下端部において延長軸22と分注ヘッド60を連結している略L形の連結部23を有する。延長軸22と連結部23は一体であることが望ましいが、別体でもよく、金属製、樹脂製のいずれでもよい。
【0032】
詳しくは後述するが、リードスクリュ21は、駆動部10を構成している回転モータにより軸方向に上下動する。
【0033】
分注ヘッド60は、ノズル61と、ノズル61の下端部に着脱自在に装着されるチップ62と、ノズル61の上端部に上方に延びるように連結されたパイプ63からなる。分注ヘッド60は、通常、ステンレス等の金属材料で作られるが、これに限定されない。
【0034】
図9を参照して、下側設置板42に配置された、一組目の最小直動機構ユニットにおける1つの直動機構30について詳しく説明する。駆動部10から貫通穴42aを通して下方に延びる被駆動軸20は、プレート50の2つの主面の一方(以下、第1の主面と呼ぶことがある)に沿ってプレート50の下端部よりもやや下側まで延び、連結部23がプレート50の下端の下側に入り込んでいる。連結部23は挿通孔23aを有し、この挿通孔23aには挿通孔23aから下方に延びるように筒状のコネクタ24が固着されている。コネクタ24の上側にはここから上方に延びるようにパイプ63の下端側が挿入されてネジ25で固定されている。パイプ63を上方に導出するために、プレート50において挿通孔23aに対応する箇所には下端から上端に至る連通穴50a(図7図9)が形成され、下側設置板42において連通穴50aに対応する箇所には穴42bが形成されている。連結部23に固着されたパイプ63は連通穴50a及び穴42bを通して下側設置板42と上側設置板41の間の空間まで導出されている。パイプ63の上端部には、チップ62を通して、例えばエアによる液体の吸引、吐出を行うための可撓性のチューブ(図示省略)が接続される。
【0035】
一方、連結部23の下面から下方に突出しているコネクタ24には、ノズル61が装着されている。ノズル61は、コネクタ24に固着されても良いが、コネクタ24の外周に雄ネジを、ノズル61の内周に雌ネジをそれぞれ形成して着脱自在にされても良い。
【0036】
以上のような構造により、駆動部10の回転モータによって被駆動軸20が上下動(直動)すると、連結部23及びこれに連結された分注ヘッド60も一体に上下動する。すなわち、リードスクリュ21と延長軸22及び連結部23からなる被駆動軸20と、ノズル61とチップ62及びパイプ63からなる分注ヘッド60は可動部として作用する。
【0037】
以上のような構造は、下側設置板42に設置されるか、あるいは上側設置板41に設置されるかの別を除き、一組目の最小直動機構ユニットにおける残りの直動機構30においてもほぼ同等である。つまり、下側設置板42に設置された直動機構(以下、下側直動機構と呼ぶことがある)30は、駆動部10から下側に延びる被駆動軸20が下側設置板42の貫通穴42aを通して下方に延び、駆動部10から上側に延びる被駆動軸20(リードスクリュ21)は上側設置板41の貫通穴41aを通して上方に延びる。一方、上側設置板43に設置された直動機構(以下、上側直動機構と呼ぶことがある)30は、駆動部10から下方に延びる被駆動軸20が貫通穴41a及び42aを通して下方に延びる。そして、動作オフ時の下側直動機構30の2つの連結部23の高さ位置と、上側直動機構30の2つの連結部23の高さ位置を揃えるために、上側直動機構30の延長軸22の長さを下側直動機構30の延長軸22の長さよりも上側設置板41と下側設置板42の間隔分だけ大きくしている。
【0038】
以上の構造は、二組目の最小直動機構ユニットにおける4個の直動機構30においても同様である。但し、図5図6に示すように、一組目と二組目の最小直動機構ユニットのそれぞれにおいて隣り合う直動機構30の平面視でのピッチをPとした時、一組目の最小直動機構ユニットにおける4個の直動機構30の平面視の配列と、二組目の最小直動機構ユニットにおける4個の直動機構30の平面視の配列が、P/2ピッチだけずれるように配置している。これによって、一組目の4個の直動機構30(駆動部10)と二組目の4個の直動機構30(駆動部10)とが平面視で千鳥状に配置されるようにしている。そして、図7に示すように、一組目の最小直動機構ユニットにおける4個の直動機構30で駆動される4個の分注ヘッド60と、二組目の最小直動機構ユニットにおける4個の直動機構30で駆動される4個の分注ヘッド60が、交互に所定の間隔(P/2ピッチ)をおいて一列に並ぶようにしている。なお、ピッチP/2は好ましい例であり、Pより小さい値であれば良い。
【0039】
次に、一組目の最小直動機構ユニットにおける4個の直動機構30から下側設置板42の貫通穴42aを通して下方に延びる被駆動軸20(特に延長軸22)の上下動をガイドするガイド機構(第1のガイド機構)について説明する。
【0040】
図7図9図10をも参照して、一組目の最小直動機構ユニットにおける第1のガイド機構について説明する。
【0041】
図7において、プレート50における図中上側の主面、すなわち第1の主面には、一組目の最小直動機構ユニットにおける4個の直動機構30の延長軸22に沿うように4個のリニアレール(第1のリニアレール)51が設けられている。リニアレール51は、プレート50に第1の主面とは反対側の主面(以下、第2の主面と呼ぶことがある)から上下方向に間隔をおいて形成されたネジ挿通用の複数の通孔52a(図9)を通してリニアレール51にネジ52をねじ込むことでプレート50の第1の主面に固定されている。一方、被駆動軸20の延長軸22の上部寄り、具体的には、延長軸22が上下動してもリニアレール51と対向する箇所に、リニアレール51に沿ってスライド可能にリニアガイド(第1のリニアガイド)24をネジ26により固着している。リニアガイド24は、リニアレール51と共に第1のガイド機構を構成する。リニアレールとリニアガイドによるガイド機構の詳細な構成、動作については良く知られているので、詳しい説明は省略する。
【0042】
以上のようなガイド機構の構造は、二組目の最小直動機構ユニットにおける4個の直動機構30においても同様である。但し、上述した一組目と二組目の最小直動機構ユニットにおける直動機構30の配列ピッチと同様、一組目の最小直動機構ユニットにおける4個のリニアレール51の配列(図7中、上側)と、二組目の最小直動機構ユニットにおける4個のリニアレール(第2のリニアレール)51の配列(図7中、下側)が、P/2ピッチだけずれるような配置となっている。
【0043】
次に、図9図11をも参照して、直動機構30における駆動部10の構成、作用について説明する。
【0044】
本実施形態における直動機構30は、回転モータによる駆動部10と回転モータの回転を直動に変換するリードスクリュ21を含む。本実施形態では、回転モータとして2相ハイブリッド型ステッピングモータを採用している。
【0045】
図11に示すように、本実施形態に採用される2相ハイブリッド型のステッピングモータ70は、ロータ部が送りネジ方式となっている点を除き、ステータ部の構成は一般的なハイブリッド型ステッピングモータの構成と同じである。
【0046】
すなわち、ステータ部は、電磁鋼鈑の積層による円筒状のステータ71と、ステータ71に隣接して巻回、配置されたコイル72とを含む。一方、ロータ部は、中空になっており、ステータ71の内周側に微小ギャップをおいて回転可能に配置された中空のロータ73と、ロータ73の内周側に固定された円筒状のリードナット74とを含む。リードナット74は、ステッピングモータ70本体の一端側から他端側の外側まで延出され、その内径側には雌ネジが形成されている。リードナット74はまた、ステッピングモータ70の両端部に近い内側で、それぞれボールベアリング75により支承されている。リードナット74の雌ネジにはステッピングモータ70本体よりも十分に長いリードスクリュ21の雄ネジが螺合していることにより、ロータ部の回転によってリードスクリュ21が直動動作する。
【0047】
また、リードナット74の一端部がステッピングモータ70本体の他端側の外側まで延出され、この延出部にはエンコーダ80用の円盤81がリードナット74と一体に回転するように取り付けられている。エンコーダ80は、光学式のインクリメンタル方式を採用しており、上記円盤81と、ステッピングモータ70本体の他端側の外側に、円盤81と対向するように固定配置された基板82とを含む。本実施形態におけるエンコーダ80は反射式であり、良く知られているように、円盤81の基板82と対向する面には複数の格子状の反射部が設けられている。一方、基板82の円盤81と対向する面には、発光部と受光部が設けられ、発光部から発せられた光が円盤81の反射部で反射して受光部に入射する。受光部に入射した反射光は電気信号に変換されて出力される。また、エンコーダ80は、受光部に入射した反射光信号から位相が90度ずれた連続した2つの電圧信号(矩形波によるデジタル信号)を出力するように構成されている。この2つの電圧信号を基に算出されたリードナット74の回転変位量、回転速度および回転方向はリードスクリュ21、すなわち可動部の直線変位量(位置)、直動速度および直動方向に換算することができるため、分注ヘッド60の位置制御や異常検知に利用される。一例を挙げると、リードナット74の1回転につき、リードスクリュ21が1mm直動する。この種のエンコーダは周知であるので、詳しい説明は省略する。
【0048】
上記のように構成されたエンコーダ80は、ステッピングモータ70本体の他端側に取り付けられたエンコーダケース83でカバーされている。
【0049】
なお、リードシャフト21の下端部には、これよりも細径の軸体21-1が設けられ、軸体21-1にはこれを直径方向に貫く通孔21aが形成されている。後述するように、この通孔21aは、リードシャフト21と延長軸22とを連結するためのピンを通す孔である。
【0050】
また、図9に示すように、駆動部10の上部にはエンコーダ80及びステッピングモータ70と外部との電気系統の接続を行うためのコネクタ11が設けられている。本実施形態では、図1に示すように、駆動部10毎にコネクタ11の接続方向の向きを変えることで接続が容易になるようにしている。
【0051】
ところで、一般的な送りネジ方式は、モータ+カップリング+雄ネジと、その雄ネジと螺合する雌ネジという構成を持つが、それと比べると、本実施形態における送りねじ方式のステッピングモータは、カップリングを持たないので、その分、安価で省スペースな直動機構となっている。
【0052】
次に、図9を参照して、一組目の最小直動機構ユニットの組み立て工程について簡単に説明する。ただし、以下の組み立て工程は一例にすぎず、本発明が以下の組み立て工程により何らかの制約を受けるものではない。
【0053】
駆動部固定部材40の上側設置板41を取り外した状態で、下側設置板42に、被駆動軸20におけるリードシャフト21のみを持つ下側直動機構30の駆動部10を設置する。駆動部10の設置に際しては、リードシャフト21の下部側が貫通穴42aから突出するようにする。
【0054】
延長軸22の上端部には、リードシャフト21の下端部に設けられた軸体21-1を受け入れるための縦穴と、この縦穴に受け入れた軸体21-1の通孔21aにピン27を差し込むための横穴22aが形成されている。このような連結構造により、貫通穴42から突出したリードシャフト21が延長軸22に連結される。
【0055】
なお、上記の連結に際しては、あらかじめ該当する下側直動機構30の延長軸22に対応する第1のリニアレール51に第1のリニアガイド24が装着されている。上記の連結に際してはまた、連結部23の下側にノズル61とチップ62が装着されている一方、連結部23の上側には分注ヘッド60のパイプ63が装着され、このパイプ63がプレート50の連通穴50aに挿通された状態で行われる。ノズル61は、取り外し可能な構造であれば、上記の連結後に連結部23に装着されても良い。
【0056】
上記の連結が終了したら、第1のリニアガイド24を延長軸22に対してネジ26でネジ止め可能な位置に位置決めし、第1のリニアガイド24を延長軸22に固定する。
【0057】
上側直動機構30の駆動部10については、駆動部10を、上側設置板41の貫通穴41aからリードシャフト21の下部側が突出するように上側設置板41に設置し、上側設置板41と下側設置板42の間の空間を利用して、上述と同様の方法により、上側直動機構30のリードシャフト21と延長軸22の連結作業を行う。第1のリニアレール51と第1のリニアガイド24及び分注ヘッド60側の扱いについては、上記と同様である。
【0058】
一組目の最小直動機構ユニットの組み立て終了後、又は一組目の最小直動機構ユニットの組み立てと並行して、同様の方法によって、二組目の最小直動機構ユニットの組み立てが行われる。
【0059】
図12は、ステッピングモータ70を個別に制御する制御系のブロック図である。図12において、本制御系は、エンコーダ80の出力信号(位置検出信号)と上位装置95により予め設定されたパラメータや駆動シーケンス等に基づきステッピングモータ70を制御することにより、分注ヘッド60の上下方向の位置制御を個別に実行するモータ制御装置92を有する。モータ制御装置92は、その内部に上位装置95により予め設定されたパラメータや駆動シーケンス等に基づいて位置制御用の信号を生成するコントロール回路と、生成された信号に基づきステッピングモータ70を駆動するモータドライバ回路とを含む。
【0060】
以下に、制御動作をステップ別に説明する。
【0061】
1.エンコーダ80は、ステッピングモータ70の回転位置を検出し、矩形波によるデジタル信号として出力する。このデジタル信号は、ステッピングモータ70の回転方向に対し電気角で90度位相のずれた連続した2つの矩形波信号(A相信号とB相信号)である。回転方向は、A相信号とB相信号で先に変化した相を見極めて判断する。
【0062】
2.エンコーダ80から出力された2つのデジタル信号はモータ制御装置92に入力される。
【0063】
3.モータ制御装置92は、A相信号とB相信号の変化で回転方向を判断する。モータ制御装置92はまた、上位装置95からの予め設定されたパラメータや駆動シーケンス等に基づいて分注ヘッド60の上下方向の移動量と移動速度に換算した動作指令をステッピングモータ70に出力する。モータ制御装置92は更に、エンコーダ80からの2つのデジタル信号により、分注ヘッド60の現在位置を検出した値と上位装置95により設定された駆動シーケンス等に基づく指定位置とを比較し、その偏差を補正する指令をステッピングモータ70に出力する。
【0064】
他には、モータ制御装置92にエンコーダ80からの2つのデジタル信号に対する異常判定機能を付与することで、モータ制御装置92からの指令に反する挙動をステッピングモータ70が示すと、モータ制御装置92はそれを検知して今まで実行していた制御を停止させたり、異常を取り除いて制御を再開させたりすることができる。以上のような制御形態は、良く知られているので、詳しい説明は省略する。
【0065】
更に、各被駆動軸20(リードスクリュ21)上端の駆動上限位置にフォトセンサを設置し、被駆動軸20の上端がフォトセンサの光路を遮断すると、フォトセンサから光路遮断信号がモータ制御装置92に出力されるようにしても良い。この場合、光路遮断信号は分注ヘッド60の位置決め制御の基準点決め、いわゆる原点位置決めに利用することができる。また、各被駆動軸20(リードスクリュ21)の上限のリミットセンサとしても利用することができる。この種の制御形態も、良く知られているので、詳しい説明は省略する。
【0066】
以上のような制御系は、8軸の軸毎に個別に備えられ、独立制御を実行する場合には、上位装置95から各制御系のモータ制御装置92に制御系毎に異なる指令信号が与えられて分注装置毎に異なる分注動作が実行される。一方、同時制御を実行する場合には、上位装置95から各制御系のモータ制御装置92に同じ指令信号が与えられてすべての分注装置が同じ分注動作を実行する。
【0067】
図13を参照して、本発明における分注装置の最小単位である最小直動機構ユニットの実施形態として、4軸分注装置について説明する。
【0068】
この4軸分注装置は、図1で説明した8軸分注装置における左側、すなわち二組目の最小直動機構ユニットと同じと考えて良い。それ故、図13において図1と同じ構成要素には同じ参照番号を付し、説明は簡単に行う。
【0069】
図13において、本実施形態に係る4軸分注装置は、回転モータによる駆動部10と該駆動部10により直動する被駆動軸20とを有する4個の直動機構30を平面視で一列状に配置した直動機構ユニット200を有する。直動機構ユニット200は、駆動部10の高さ以上の間隔を持つように形成された2段棚構成の上側設置板41と下側設置板42とを含む駆動部固定部材40を備える。
【0070】
この4軸分注装置においても、隣り合う駆動部10を、交互に、上側設置板41と下側設置板42に設置している。そして、本実施形態においても、隣り合う駆動部10を、上側設置板41と下側設置板42の、隣り合う駆動部10の設置領域に平面視で重なり合う部分ができるように設置している。これにより、前述したように、4個の駆動部10の平面視での設置スペースをできるだけ小さくしている。
【0071】
駆動部固定部材40は、上側設置板41と下側設置板42とをそれらの一端側で連結板43により連結した断面コ字形状を有する。ここでも、連結板43は下側設置板42と一体に形成されている。上側設置板41及び下側設置板42にはそれぞれ、図9で説明した通り、各駆動部10の中心に対応する箇所に貫通穴(第1の貫通穴)41a,42aか形成されて、対応する駆動部10の被駆動軸20を通すようにされている。
【0072】
直動機構30を構成している駆動部10の内部構造や、被駆動軸20の構成、すなわち延長軸22と連結部23及び分注ヘッド60の構成は、前述した8軸分注装置におけるものとまったく同じであるので、説明は省略する。
【0073】
[実施形態の効果]
(1)上記の8軸分注装置について言えば、8軸という多軸であっても、隣り合う駆動部10の平面視でのピッチ(間隔)Pをできるだけ小さくして8軸分注装置を構成することができる。これは、軸数が増加しても複数の駆動部の設置スペースの削減に有効である点に加えて、以下のような観点において有効である。
【0074】
多軸型の分注装置に対しては、分注ヘッド間のピッチ(間隔)を小さくすることが要求される。これは、分注ヘッド間のピッチを小さくすることで多軸型の分注装置全体をコンパクト化して移動可能範囲を増やすことができるからである。しかしながら、これまでの複数の分注ヘッドの一列配置による多軸型の分注装置の場合、分注ヘッド間のピッチを小さくするためには駆動部の直径を小さくしなければならず、そのためには、回転モータを小さくしなければならない。これは、各軸の推力(駆動トルク)が小さくなることを意味する。しかるに、分注ヘッドの上下動には、所定の推力が要求される。これは、例えば図10を参照して、ノズル61の先端に取り付けられるチップ62の取外しを、液体の吸引、吐出場所とは別の場所において、チップ62とノズル61との間のくびれ部分をジグ(図示省略)で挟んだ状態にして分注ヘッド60を上動させることにより、自動化することが行われているからである。言い換えれば、分注ヘッドの上下動の推力が小さくなると、チップ62の自動取外しが困難になる。
【0075】
上記のような事情に対し、本実施形態に係る8軸分注装置によれば、分注ヘッド間のピッチを小さくしたうえで、駆動部10(特にステッピングモータ70)の直径を小さくせずに、分注ヘッドの上下動に際して所定の推力(駆動トルク)を得ることができるので、上記のような問題を生じることがない。
【0076】
(2)また、駆動部として汎用の安価なステッピングモータを用いているので、8軸分注装置を安価にて提供できる。
【0077】
以上、本発明を8軸分注装置に適用した場合の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に制限されるものでないことは言うまでもない。すなわち、本発明は、4軸以上の多軸分注装置であれば独立制御型、同時制御型のいずれにも適用可能であり、更には、分注装置に限らず、多軸型のアクチュエータ全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
10:駆動部、20:被駆動軸、21:リードスクリュ、22:延長軸、23:連結部、24:リニアガイド、30:直動機構、40:駆動部固定部材、41:上側設置板、42:下側設置板、50:プレート、51:リニアレール、60:分注ヘッド、61:ノズル、62:チップ、70:ステッピングモータ、71:ステータ、72:コイル、73:ロータ、74:リードナット、80:エンコーダ、81:円盤、82:基板、100:直動機構ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13