特許 7416424 回転プランジャー式内燃機関完全可変バルブ機構

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-01-09

(45)【発行日】2024-01-17

(54)【発明の名称】回転プランジャー式内燃機関完全可変バルブ機構

(51)【国際特許分類】

   F01L 9/10 20210101AFI20240110BHJP

   F02M 55/02 20060101ALI20240110BHJP

【ＦＩ】

F01L9/10

F02M55/02 360Z

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2020191803

(22)【出願日】2020-11-18

(65)【公開番号】P2021105394

(43)【公開日】2021-07-26

【審査請求日】2020-11-18

【審判番号】

【審判請求日】2022-10-12

(31)【優先権主張番号】201911366458.8

(32)【優先日】2019-12-26

(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN

(73)【特許権者】

【識別番号】520409578

【氏名又は名称】哈爾濱工程大学

(74)【代理人】

【識別番号】100130111

【弁理士】

【氏名又は名称】新保 斉

(72)【発明者】

【氏名】国 傑

(72)【発明者】

【氏名】趙 壮

(72)【発明者】

【氏名】張 文平

(72)【発明者】

【氏名】張 新玉

【合議体】

【審判長】山本 信平

【審判官】河端 賢

【審判官】吉村 俊厚

(56)【参考文献】

【文献】特表２００５－５１５３４２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１０－１７４８９９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特表２０１６－５３４２８２（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２００４／００８３９９５（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

F01L 1/34- 1/356

F01L 9/00- 9/04

F01L 13/00-13/08

F02D 13/00-28/00

F02M 39/00-71/04

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

回転プランジャー式内燃機関完全可変バルブ機構であって、それは、可変バルブ機構アクチュエータ、燃料タンク、高圧燃料レールを含み、高圧燃料レールの入口は燃料タンクに接続され、高圧燃料レールの出口は、オイルインレットパイプを介して可変バルブ機構アクチュエータのオイルインレットパイプの高圧ジョイントに接続され、可変バルブ機構アクチュエータのオイルリターンパイプ高圧ジョイントは、オイルリターンパイプを介して燃料タンクに接続され、オイルインレットパイプに第一タイミング駆動ソレノイドバルブが設置され、オイルリターンパイプに第二タイミング駆動ソレノイドバルブが設置され、第一タイミング駆動ソレノイドバルブと第二タイミング駆動ソレノイドバルブの両方がＥＣＵに接続され、
前記可変バルブ機構アクチュエータには、油圧シリンダー、プランジャーロッド、ラック、および調整プランジャーロッドが含まれ、シリンダー内にプランジャーロッドキャビティと調整プランジャーロッドキャビティが設置され、プランジャーロッドキャビティ内にプランジャーロッドが取り付けられ、調整プランジャーロッドキャビティに調整プランジャーロッドが取り付けられ、プランジャーロッドは、プランジャーヘッドを含み、調整プランジャーロッドの下の調整プランジャーロッドキャビティは、プランジャーヘッドの下のプランジャーロッドキャビティと連通し、調整プランジャーロッドキャビティの上端に位置調整可能な第一調整パイププラグが取り付けられ、第一調整パイププラグと調整プランジャーロッドとの間に調整スプリングが取り付けられ、プランジャーロッドの下端に歯車が設置され、ラックはプランジャーロッドの歯車とかみ合っており、よってプランジャーロッドを駆動して回転させ、
プランジャーロッドの上面は傾斜面で、リフトを調整する必要がある場合、ラックがプランジャーロッドを駆動して回転させ、オイル戻り穴と接触するプランジャーロッドの長さを変化させ、高圧油源に接続されたタイミング駆動ソレノイドバルブが閉じられ、低圧油源に接続されたタイミング駆動ソレノイドバルブが開かれて、プランジャーロッドが上向きに動くと、オイルリターンパイプ高圧ジョイントを介して油圧シリンダーから低圧オイルを排出し、プランジャーロッドの上面がオイルリターンパイプ高圧ジョイントの油圧シリンダーへの開口部よりも上方に至ると、油圧シリンダーから低圧油源への接続が遮断されるために、作動油の一部が流出できずクッションとして機能する油圧不感帯を形成することにより、エアバルブの着座速度および衝撃力を低下させることができる
ことを特徴とする回転プランジャー式内燃機関完全可変バルブ機構。

【請求項2】

高圧燃料レールに圧力センサーが設置され、圧力センサーがＥＣＵに接続され、高圧燃料レールのオーバーフローポートは、オーバーフローパイプを介して燃料タンクに接続され、オーバーフローポートに高圧リリーフバルブが設置され、燃料タンクと高圧燃料レールの入口との間にフィルター、高圧燃料噴射ポンプ、アキュムレータが設置されている
請求項１に記載の回転プランジャー式内燃機関完全可変バルブ機構。

【請求項3】

プランジャーロッドキャビティの上端に位置調整可能な第二調整パイププラグが取り付けられている
請求項１または２に記載の回転プランジャー式内燃機関完全可変バルブ機構。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、バルブ機構、具体的には内燃機関のバルブ機構に関する。

【背景技術】

【0002】

地球環境問題や国際エネルギー危機はますます深刻化しており、人間社会の持続可能な発展を深刻に脅かし、世界中の各国政府は、エンジン燃料経済性の改善と有害排出物の削減のための関連技術に徐々に注意を向け始め、ますます厳しくなる排出規制を制定している。エンジンの吸気および排気性能の長所と短所は、エンジンの出力、経済性、排出量に重要な影響を及ぼす。異なるエンジン回転速度の作業条件では、最適なバルブパラメータへの要件も変化する。しかしながら、従来のエンジンバルブ駆動機構は、機械式カムを使用して吸気バルブと排気バルブを制御し、カムプロファイルは固定されて不変であるため、エンジン運転中にバルブリフト、バルブタイミング等のバルブパラメータを柔軟に調整することはできず、一般的に、エンジンの性能は、特定の作業条件下でのみ最適化できる。１９８０年代には、改良されたカム駆動機構に基づくエンジン可変バルブ機構に関する多くの特許と技術が現れ、技術の大部分は成熟し、且つ已に自動車エンジンに搭載され、生産に入れたが、上記はすべて、カムプロファイルまたはカムの位相角の変更を使用して可変バルブを実現し、特定の複数の作業条件下でのみエンジン性能を最適化でき、すべての作業条件下でエンジンの最適な動作を保証するためのリアルタイムのフルレンジ可変制御を実現することはできない。

【0003】

上記のカム可変技術によって引き起こされるボトルネックを打破するために、研究者はカムレス駆動バルブ機構を設計し、これは、カムとそのフォロワーの代わりに電磁、電気油圧、電気、またはその他の方法を使用してバルブを駆動するものである。カムレス可変バルブ機構はカムプロファイルによる制限がなく、このタイプのシステムには電子制御ユニットが装備されているため、エンジンの作業条件に応じて、センサーからのフィードバック信号を処理し、対応する制御信号を送信して、バルブパラメータを柔軟かつ独立して制御することができ、よってエンジンはさまざまな作業条件下でも、最低の有害物質の排出、低い燃料消費率、最適な出力で稼働することとなる。このタイプのバルブ駆動機構は、エンジン構造を簡素化し、処理コストとエンジン重量を削減する。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

本発明は、比較的広い回転速度範囲で出力と経済性との間の矛盾を解決することができる回転プランジャー式内燃機関完全可変バルブ機構を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0005】

本発明の目的は以下のように実現される。
本発明の回転プランジャー式内燃機関完全可変バルブ機構であって、それは、可変バルブ機構アクチュエータ、燃料タンク、高圧燃料レールを含み、高圧燃料レールの入口は燃料タンクに接続され、高圧燃料レールの出口は、オイルインレットパイプを介して可変バルブ機構アクチュエータのオイルインレットパイプの高圧ジョイントに接続され、可変バルブ機構アクチュエータのオイルリターンパイプ高圧ジョイントは、オイルリターンパイプを介して燃料タンクに接続され、オイルインレットパイプにオイル入口タイミング駆動ソレノイドバルブが設置され、オイルリターンパイプにオイルリターンポートタイミング駆動ソレノイドバルブが設置され、オイル入口タイミング駆動ソレノイドバルブとオイルリターンポートタイミング駆動ソレノイドバルブの両方がＥＣＵに接続され、
前記可変バルブ機構アクチュエータには、油圧シリンダー、プランジャーロッド、ラック、および調整プランジャーロッドが含まれ、油圧シリンダーにプランジャーロッドキャビティと調整プランジャーロッドキャビティが設置され、プランジャーロッドキャビティにプランジャーロッドが取り付けられ、調整プランジャーロッドキャビティに調整プランジャーロッドが取り付けられ、プランジャーロッドは、プランジャーヘッドを含み、調整プランジャーロッドの下の調整プランジャーロッドキャビティは、プランジャーヘッドの下のプランジャーロッドキャビティと連通し、調整プランジャーロッドキャビティの上端に位置調整可能な第一調整パイププラグが取り付けられ、第一調整パイププラグと調整プランジャーロッドとの間に調整スプリングが取り付けられ、プランジャーロッドの下端に歯車が設置され、ラックはプランジャーロッドの歯車とかみ合っており、よってプランジャーロッドを駆動して回転させることを特徴とする。

【0006】

本発明はさらに、
１、高圧燃料レールに圧力センサーが設置され、圧力センサーがＥＣＵに接続され、高圧燃料レールのオーバーフローポートは、オーバーフローパイプを介して燃料タンクに接続され、オーバーフローポートに高圧リリーフバルブが設置され、燃料タンクと高圧燃料レールの入口との間にフィルター、高圧燃料噴射ポンプ、アキュムレータが設置されている。
２、プランジャーロッドキャビティの上端に位置調整可能な第二調整パイププラグが取り付けられていることを含むことができる。

【発明の効果】

【0007】

本発明の利点は、本発明は、プランジャーロッドを回転させることによりプランジャーロッドとオイル戻り穴との間の接触長さを制御し、この方法を使用してリフトを柔軟に制御し、エンジンバルブパラメータに対して柔軟かつ完全に可変の調整を行うことができ、同時に、着座時に油圧不感帯が生成され、バルブ着座速度が遅く、他の可変バルブ装置と比較して、バルブ着座の衝撃が大幅に低減され、着座の衝撃によるエンジンの振動とノイズが低減される。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】本発明の構造模式図

【図2】本発明の可変バルブ機構アクチュエータの構造模式図

【発明を実施するための形態】

【0009】

本発明は、添付の図面を参照して、以下でより詳細に説明される。
図１－２を参照すると、本発明は、燃料タンク１、フィルター２、高圧燃料噴射ポンプ３、アキュムレータ４、高圧燃料レール５、圧力センサー６、高圧リリーフバルブ７、電子制御ユニット８、および回転速度センサー９、タイミング駆動ソレノイドバルブ１０と１１、オイルリターンパイプ高圧ジョイント１２、オイルインレットパイプ高圧ジョイント１３、油圧シリンダー１４、プランジャーロッド１５、取り付けシート１６、バルブリターンスプリング１７、バルブ１８を含む。図２において、可変バルブ機構アクチュエータは、取り付けシート１６、固定ボルト１９、Ｏシールリング２０、油圧シリンダー１４、オイルリターンパイプ高圧ジョイント１２、オイルインレットパイプ高圧ジョイント１３、プランジャーロッド１５、第二調整パイププラグ２１、第一調整パイププラグ２２、調整スプリング２３、調整プランジャーロッド２４、パイププラグ２５、ラック２６を含む。

【0010】

図１では、装置が作動していないとき、プランジャーロッド１５はバルブリターンスプリング１７の作用下で最上端にあり、このとき、タイミング駆動ソレノイドバルブ１０および１１は動作せず、電子制御ユニット８がパルス信号を送信するのを待っていて、このとき、プランジャーロッドキャビティ内では低圧オイルである。システムが始動すると、モーターが高圧燃料噴射ポンプ３を駆動して、燃料タンク１から作動油を吸い出し、中央のフィルター２は、オイル回路に入る作動油の清浄度を確保するためにその中の不純物をろ過し、アキュムレータ４は油圧回路圧力の安定性を確保し、変動を低減する。その後、高圧作動油が圧力センサー６と高圧リリーフバルブ７を搭載した高圧オイルレール５に流れ込み、圧力センサー６は、圧力信号を電子制御ユニット８にリアルタイムで送信し、油圧が高すぎるとリリーフバルブ７が開き、余分な作動油を燃料タンク１に送り返す。電子制御ユニット８は、２つのタイミング駆動ソレノイドバルブ１０および１１の開閉を制御し、ソレノイドバルブ１０および１１が開かれると、高圧油が油圧シリンダー１４に入り、キャビティ内の圧力を増加させ、プランジャーロッド１５に作用する作動油の力がバルブリターンスプリング１７の力よりも大きい場合、プランジャーロッド１５を押し下げてバルブ１８を開く。バルブリターンが必要な場合は、高圧油源に接続されたタイミング駆動ソレノイドバルブ１１が閉じられ、低圧油源に接続されたタイミング駆動ソレノイドバルブ１０が開かれ、バルブリターンスプリング１７の作用により、バルブ１８が上に移動し、プランジャーロッド１５を上に押し上げ、油圧シリンダーから低圧オイルを排出し、プランジャーロッド１５とバルブ１８が初期位置に戻り、一つのサイクルが完了する。このプロセスにおいて、電子制御ユニット８は、クランクシャフト端部からの回転速度信号を受信し、異なる回転速度に応じて異なるタイミングソレノイドバルブ開閉シーケンスにマッチし、可変バルブ機構タイミングを実現する。

【0011】

可変バルブ機構の動作原理に従って、可変バルブ機構アクチュエータの構造図を図２に示すように設計する。主な構造は油圧シリンダー１４であり、高圧および低圧作動油の往復流を介してプランジャーロッド１５を押して移動し、従来のカムエジェクター構造を代替する目的を達成する。単純な油圧シリンダーと比較して、このアクチュエータには、図の４つの部品２２、２３、２４、および２５で構成されるもう１つの油圧バッファー部品がある。プランジャーロッド１５が下向きに動くと、スプリングは連続的に圧縮され、圧縮力は増加し続け、プランジャーロッド１５の下向きの動き速度は減速し続け、プランジャーロッドの下の油圧油は絞り出されて、右側のパイプラインに移動する。ただし、プランジャーロッドの上には不感帯があり、作動油の一部がどうしても流出できず、クッションとして機能する。プランジャーロッドが作動油の不感帯に移動すると、プランジャーロッド１５がオイルクッションを緩衝材として機能し、エアバルブの着座速度および衝撃力を大幅に低下させることができる。同時に、ラックを調整してプランジャーロッドを回転させる構造も追加され、リフトを調整する必要がある場合、ラック２６がプランジャーロッド１５を駆動して回転させ、オイル戻り穴と接触するプランジャーロッド１５の長さを変化させ、なぜなら、吸気バルブの開放プロセスの長さは、オイル戻り穴と接触するプランジャーロッドの長さによって決定されるからである。接触しているプランジャーロッドの長さが長いほど、プランジャーロッドのストロークが長くなり、バルブのリフトが大きくなり、センサーが受信する速度信号を使用して、さまざまなリフトにマッチして、リフトの瞬時調整を実現する。

【0012】

アクチュエータでは、ラック２６がプランジャーロッドを駆動して回転させ、プランジャーロッドとオイル戻り穴との接触長さは、プランジャーロッドを回転させることにより制御され、接触長さが異なると、プランジャーロッドの運動長さも異なり、接触長さが長いほど、プランジャーロッド運動距離が長くなり、この方法でリフトを制御する。

【0013】

油圧シリンダー２４、第一調整パイププラグ２２、調整スプリング２３、調整プランジャーロッド２４、およびパイププラグ２５からなる構造は、エアバルブが着座したときに油圧不感帯を形成し、エアバルブの着座速度は比較的遅く、他の可変バルブ装置と比較して、バルブ着座の衝撃が大幅に低減され、着座の衝撃によるエンジンの振動とノイズが低減される。

【0014】

本発明の作業工程は、下記である。アクチュエータは、オイルパイプを介してタイミング駆動ソレノイドバルブに接続され、システムが始動すると、モーターは高圧燃料噴射ポンプを駆動し、オイル入口に接続されているタイミング駆動ソレノイドバルブが開くと、高圧オイルは油圧シリンダーに入り、キャビティ内の圧力を上げ、プランジャーロッドに作用する作動油の力がバルブリターンスプリングの力よりも大きい場合、プランジャーロッドを押し下げてバルブを開く。バルブリターンが必要な場合は、オイル入口に接続されているタイミングソレノイドバルブが閉じ、オイルリターンポートに接続されているタイミングソレノイドバルブが開き、バルブリターンスプリングの作用により、バルブが上に移動し、プランジャーロッドを上に押し上げ、油圧シリンダーから低圧オイルを排出し、プランジャーロッドとバルブが初期位置に戻り、一つのサイクルが完了する。リフトを調整する必要がある場合、ラックはプランジャーロッドを回転させ、オイル戻り穴と接触するプランジャーロッドの長さを変更し、つまり、吸気バルブの開放プロセスの長さは、オイル戻り穴と接触するプランジャーロッドの長さによって決定される。接触しているプランジャーロッドの長さが長いほど、プランジャーロッドのストロークが長くなり、バルブのリフトも大きくなる。プランジャーロッド上面は傾斜面で、プランジャーロッドには油漏れ防止用のシールリングが付いている。

【図1】

【図2】