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特許7416428立体規則性環拡大メタセシス重合のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】立体規則性環拡大メタセシス重合のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 11/00 20060101AFI20240110BHJP
   C08G 61/04 20060101ALI20240110BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20240110BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C07F11/00 B CSP
C08G61/04
B01J23/44 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020529605
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018063368
(87)【国際公開番号】W WO2019108969
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】62/593,580
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507371168
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイジュ、アダム、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジャカール、ヴィニート、ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ムハンマド、タリク
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/049270(WO,A1)
【文献】特表2017-524756(JP,A)
【文献】国際公開第2013/085707(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/169014(WO,A1)
【文献】特表2017-530706(JP,A)
【文献】特表2016-500715(JP,A)
【文献】特表2008-524143(JP,A)
【文献】Journal of Organometallic Chemistry,2011年,696(25),4079-4089,doi:10.1016/j.jorganchem.2011.06.006
【文献】J. AM. CHEM. SOC. ,2008年,130(4),1116-1117,doi:10.1021/ja074901k
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08G
B01J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
【化1】

表される構造を有する、化合物。
【請求項2】
請求項に記載の化合物を製造する方法であって、次式で表される構造を有する錯体を提供することと、
【化2】

(式中、L の各存在が、ホスフィン、アミン、もしくは1~4個のヘテロ原子を含有する5員もしくは6員の単環式基から選択されるか、または両方のLが共に二座配位子を含む)
次式で表される構造を有する末端アルキンと反応させることと、を含み
【化3】

れにより、請求項に記載の化合物を得る、方法。
【請求項3】
前記錯体が、次式によって表される構造を有する、請求項に記載の方法。
【化4】
【請求項4】
環拡大メタセシス重合のための方法であって、
請求項に記載の化合物を提供することと、
シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、およびノルボルネンから選択される1つ以上の環状アルケンと反応させることと、を含む、方法。
【請求項5】
飽和立体規則性環状ポリマーを提供するために水素化ステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記飽和立体規則性環状ポリマーが、以下の構造:
【化5】

(式中、nは、正の整数である)を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
nが、1~20,000の範囲である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
nが、100~15,000の範囲である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
nが、1000~10,000の範囲である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究または開発支援に関する声明
本発明は、全米科学財団の助成によるCHE1565654の下で米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月1日に出願の米国仮特許出願第62/593,580号および2018年9月17日に出願の米国仮特許出願第62/732,369号の35U.S.C.§119に基づく利益を主張し、その全体の開示は、本明細書に参考として組み込まれる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の目的に従って、本明細書で具体化され、広く記載されるように、本開示は、一態様では、メタロシクロプロペン化合物、その製造方法、環拡大メタセシス重合のための方法、および環拡大メタセシス重合のための方法によって調製されるポリマーに関する。
【0004】
次式で表される構造を有するメタロシクロプロペン錯体が開示される。
【0005】
【化1】
【0006】
(式中、Rの各存在は、HおよびC1~C6アルキルから独立して選択されるか、または2つの隣接するRが結合して、5~8員環式基を形成し、Rは、Ar、C1~C22アルキル、ハロ、C1~C22ハロアルキル、水素、アミノ、アルコキシ、エーテル、および(R-Si-から選択され、Rの各存在は、C1~C22アルキル、Ar、-O-(C1-C22アルキル)、-O-Ar、-N-(C1~C22アルキル)、または-N-Arから独立して選択され、Arは、アリールまたはヘテロアリール基であり、Lは、存在しないか、またはホスフィン、アミン、および1~4個のヘテロ原子を含有する5員または6員の単環式基から選択されるが、Rがフェニルまたは(CH-Si-ではないことを条件とする。)
【0007】
また、開示されたメタロシクロプロペン錯体を調製するための方法が開示され、次式で表される構造を有する錯体を提供することと、
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Rの各存在は、HおよびC1~C6アルキルから独立して選択されるか、または2つの隣接するRが結合して、5~8員環式基を形成する。)次式で表される構造を有する末端アルキンと反応させることと、を含み、
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、Rは、Ar、C1~C22アルキル、ハロ、C1~C22ハロアルキル、水素、アミノ、アルコキシ、エーテル、および(R-Si-から選択され、Rの各存在は、C1~C22アルキルおよびArから独立して選択され、Arは、アリールまたはヘテロアリール基であり、Lの各存在は、存在しないか、またはホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット、ホスホナート、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、イミン、および1~4個のヘテロ原子を含有する5員または6員の単環式基から独立して選択されるが、Rがフェニルまたは(CH-Si-ではないことを条件とする。)それにより、開示されたメタロシクロプロペン錯体が得られる。
【0012】
環拡大メタセシス重合のための方法も開示され、開示されたメタロシクロプロペン錯体を提供することと、開示されたメタロシクロプロペン錯体を1つ以上の環状アルケンと反応させることと、を含む。
【0013】
開示されたメタロシクロプロペン錯体を使用して調製された環状オレフィンから誘導される、立体規則性環状ポリマーも開示される。いくつかの実施形態では、立体規則性環状ポリマーは、立体規則性飽和環状ポリマーである。
【0014】
本開示の他のシステム、方法、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明を検討すると、当業者には明らかであるかまたは明らかになるであろう。このようなすべての追加のシステム、方法、特徴、および利点は、この説明に含まれ、本開示の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。さらに、記載された実施形態のすべての任意選択的な好ましい特徴および修正は、本明細書で教示される開示のすべての態様で使用可能である。さらに、従属請求項の個々の特徴、ならびに説明された実施形態のすべての任意選択的な好ましい特徴および修正は、互いに組み合わせることができ、交換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してよりよく理解することができる。図面の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれている。さらに、図面において、同様の参照番号は、いくつかの図を通して対応する部分を指定する。
【0016】
図1】C中のメタロシクロプロペン1のH NMRスペクトルを示す。
図2】C中のメタロシクロプロペン1のプロトンデカップリングした13C NMRスペクトルを示す。
図3】KBrディスク上のメタロシクロプロペン1のIRスペクトルを示す。
図4】25℃でトルエン-d中のメタロシクロプロペン2のH NMRスペクトルを示す。
図5】25℃でのトルエン-d中のメタロシクロプロペン2のプロトンデカップリングした13C NMRスペクトルを示す。
図6】C中のメタロシクロプロペン3のH NMRスペクトルを示す。
図7】室温でC中、ノルボルネンを含むメタロシクロプロペン3のH NMRスペクトルを示す。
図8】C中、50℃で4時間、ノルボルネンを含むメタロシクロプロペン3のH NMRスペクトルを5分間隔で示す。
図9】C中、50℃で6時間後のノルボルネンを含むメタロシクロプロペン3のH NMRスペクトルを示す。
図10】C中、50℃で8時間後のノルボルネンを含むメタロシクロプロペン2のH NMRスペクトルを示す。
図11】C中、50℃で8時間後のノルボルネンを含むメタロシクロプロペン1のH NMRスペクトルを示す。
図12】CDCl中のメタロシクロプロペンにより作製されたポリノルボルネンのH NMRスペクトルを示す。
図13】CDCl中のメタロシクロプロペンにより作製されたポリノルボルネンの13C NMRスペクトルを示す。
図14】明確にするために水素原子を省略したメタロシクロプロペン1の分子構造を示す。
図15】明確にするために水素原子を省略したメタロシクロプロペン2の分子構造を示す。
図16A】環状ポリノルボルネン(左の曲線)および線状ポリノルボルネン(右の曲線)の正規化DRI対保持時間のプロットを示す。
図16B】環状ポリノルボルネン(下)および線状ポリノルボルネン(上)のlog([η])対log(モル質量)のプロットを示す。
図16C】環状ポリノルボルネン(上)および線状ポリノルボルネン(下)のlog(モル質量)対溶出量のプロットを示す。
図16D】環状ポリノルボルネン(上)および線状ポリノルボルネン(下)の平均二乗半径<Rg>対モル質量のプロットを示す。
【0017】
本発明の追加の利点は、一部は以下の説明に示され、一部はその説明から明らかであるか、または本発明の実施によって知ることができる。本開示の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘された要素および組み合わせによって実現し、達成されるであろう。上記の概要および下記の詳細な説明はどちらも、例示的および説明的に過ぎず、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書の開示は、すべてではないがいくつかの可能な実施形態が示されている添付図面を参照して、以下でより完全に説明されるであろう。実際、開示は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。同じ番号は、全体を通して同じ要素を指す。
【0019】
本明細書に開示される多くの修正および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示される教示の利点を有する、開示される組成物および方法が関係する当業者に思い浮かぶであろう。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が用いられているが、これらは一般的で説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0020】
また、本明細書で使用される専門用語は、特定の態様形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」の態様を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、開示された組成物および方法が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲では、本明細書で定義されるいくつかの用語が参照されるであろう。
【0021】
本開示を読んだ当業者には明らかなように、本明細書で説明および図示した個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴から、容易に分離または組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。列挙されたあらゆる方法は、列挙されたイベントの順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実行できる。
【0022】
定義
本明細書で使用されるとき、「アルキル」という用語は、1~30個の炭素原子、例えば1~20個の炭素原子、または1~10個の炭素原子を含有する直鎖状および分枝状の飽和炭化水素基を指す。Cnという用語は、アルキル基が「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、C4アルキルは、4個の炭素原子を有するアルキル基を指す。C1~7アルキルとは、全範囲(すなわち、1~7個の炭素原子)、ならびにすべてのサブグループ(例えば、1~6、2~7、1~5、3~6、1、2、3、4、5、6、および7個の炭素原子)を包含する炭素原子数を有するアルキル基を指す。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル(2-メチルプロピル)、t-ブチル(1,1-ジメチルエチル)、3,3-ジメチルペンチル、および2-エチルヘキシルが挙げられる。別途指示されない限り、アルキル基は、非置換アルキル基または置換アルキル基であり得る。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」という用語は、3~8個の炭素原子(例えば、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子)を含有する脂肪族環式炭化水素基を指す。Cnという用語は、シクロアルキル基が「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、C5シクロアルキルとは、環内に5個の炭素原子を有するシクロアルキル基を指す。C5~8シクロアルキルとは、全範囲(すなわち、5~8個の炭素原子)、ならびにすべてのサブグループ(例えば、5~6、6~8、7~8、5~7、5、6、7、および8個の炭素原子)を包含する炭素原子数を有するシクロアルキル基を指す。シクロアルキル基の非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。特に明記しない限り、シクロアルキル基は、非置換シクロアルキル基または置換シクロアルキル基であることができる。本明細書に記載のシクロアルキル基は、単離され得るか、または別のシクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、および/またはヘテロアリール基に縮合し得る。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、環が酸素、窒素、または硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含有することを除いて、シクロアルキルと同様に定義される。特に、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、合計3~8個の原子を含有する環を指し、そのうちの1、2、3または3個の原子は、酸素、窒素、および硫黄からなる群から独立して選択されるヘテロ原子であり、環の残りの原子は炭素原子である。ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例には、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロフラン、モルホリンなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、例えば、1~3つの基、独立して選択されたアルキル、アルキレン、OH、C(O)NH、NH、オキソ(=O)、アリール、ハロアルキル、ハロ、およびOHで任意選択的に置換された飽和または部分不飽和の環系であることができる。ヘテロシクロアルキル基は、任意選択的に、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキレン-アリール、およびアルキレン-ヘテロアリールでさらにN-置換することができる。本明細書に記載のヘテロシクロアルキル基は、単離されるか、または別のヘテロシクロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、および/もしくはヘテロアリール基に縮合され得る。ヘテロシクロアルキル基が、別のヘテロシクロアルキル基と縮合している場合、ヘテロシクロアルキル基の各々は、合計3~8個の環原子および1~3個のヘテロ原子を含有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヘテロシクロアルキル基は、1つの酸素環原子(例えば、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロピラニル)を含む。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「アリール」という用語は、単環式または多環式(例えば、融合二環式および融合三環式)炭素環式芳香族環系を指す。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フェナントレニル、ビフェニレニル、インダニル、インデニル、アントラセニル、およびフルオレニルが挙げられるが、それらに限定されない。特に明記しない限り、アリール基は、非置換アリール基または置換アリール基であることができる。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロアリール」という用語は、合計5~12個の環原子(例えば、合計5~6個の環原子を有する単環式芳香環)を有し、芳香環中の窒素、酸素、および硫黄原子から選択される1~3個のヘテロ原子を含有する環式芳香環を指す。特に指示がない限り、ヘテロアリール基は、非置換、または例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF、NO、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、COH、COアルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される1つ以上、特に、1~4つの置換基で置換され得る。場合によっては、ヘテロアリール基は、アルキル基およびアルコキシ基のうちの1つ以上で置換されている。ヘテロアリール基は、単離(例、ピリジル)または別のヘテロアリール基(例、プリニル)、シクロアルキル基(例、テトラヒドロキノリニル)、ヘテロシクロアルキル基(例、ジヒドロナフチリジニル)、および/もしくはアリール基(例、ベンゾチアゾリルおよびキノリル)と融合され得る。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フリル、ピリジル、ピロリル、オキサゾリル、キノリル、チオフェニル、イソキノリル、インドリル、トリアジニル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基が別のヘテロアリール基と融合している場合、各環は、その芳香環に合計5または6個の環原子と1~3個のヘテロ原子とを含有することができる。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「環式基」という用語は、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基を包含する。環式基は、単環式または多環式であり得る。環式基は、合計の環原子を指す5~12個の「員」を有し得る。例えば、5員環式基は、環内に5個の原子を有する環式基を指す。5~8員の環式基とは、全範囲(すなわち、5~8個の原子)ならびに全サブグループ(例えば、5~6、6~8、7~8、5~7、5、6、7、または8個の原子)を包含するいくつかの環原子を有する環式基を指す。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、「-OH」基を指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、「-O-アルキル」基を指す。本明細書で使用されるとき、「アリールオキシ」または「アリールオキシル」という用語は、「-O-アリール」基を指す。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードとして定義される。「ハロアルキル」という用語は、少なくとも1つのハロゲンで置換されているアルキル基を指す。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「カルボキシ」または「カルボキシル」という用語は、「-COOH」基を指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「アミノ」という用語は、任意の水素を、アルキル、シクロアルキル、またはアリール基で置き換えることができる-NHまたは-NH-基を指す。本明細書で使用されるとき、「アミド」という用語は、カルボニル部分で置換されているアミノ基を指す(例えば、-NRC(=O)O-または-OC(=O)-NR-)、式中、Rは、窒素上の置換基(例えば、アルキルまたはH)である。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「エステル」という用語は、-RC(=O)OR-基を指し、1つのRは、炭素上の置換基(例えば、アルキルまたはアリール)であり、1つのRは、酸素上の置換基である。本明細書で使用されるとき、「エーテル」という用語は、-ROR-基を指し、両方のRは、酸素上の置換基(例えば、アルキルまたはアリール)である。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「置換」という用語は、化学官能基を修飾するために使用されるとき、官能基上の少なくとも1つの水素ラジカルを置換基で置き換えることを指す。置換基としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、ヘテロシクロアルキル、エーテル、ポリエーテル、チオエーテル、ポリチオエーテル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシル、オキシ、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、エステル、チオエステル、カルボキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アミド、アセトアミド、およびハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)を挙げることができるが、それらに限定されない。化学官能基が複数の置換基を含むとき、その置換基は、同じ炭素原子または2つ以上の異なる炭素原子に結合することができる。
【0035】
次式で表される構造を有するメタロシクロプロペン錯体が開示される。
【0036】
【化4】
【0037】
一般に、Rの各存在は、独立してHであるか、またはメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、もしくはより大きなアルキル基、例えばC5~C20アルキルなどのアルキル基で置換され得る。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6アルキルから選択することができる。いくつかの実施形態では、2つの隣接するRが結合して、5~8員環式基、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘキサトリエン(ベンゼン)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、およびシクロオクタテトラエン(アンヌレン)を形成することができる。2つの隣接するRが結合して5~8員の環式基を形成する実施形態では、環式基の原子の1個以上、例えば、1~4個または1~3個の原子は、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり得る。
【0038】
実施形態では、Rは、H、C1~C20アルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、チオール、エポキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシから個別に選択することができるか、または2つの隣接するRが結合されて、5~8員の環式基を形成することができる。実施形態では、Rは、カルボン酸、カルボン酸エステル、チオール、エポキシ、またはヒドロキシを含まない。理論に束縛されることを意図するものではないが、配位子の炭素6、4’、6’、6’’大きなR基は、配位子の芳香環をかなりの程度、強制的に面外にして、それにより、配位子-金属錯体の形成を阻害する。いくつかの実施形態では、各Rは、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、各Rは、H、i-ブチル、n-ブチル、s-ブチル、およびt-ブチルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、配位子の炭素6および6’’R基は、各々t-ブチルであり、残留するRは各々Hである。
【0039】
は一般に、Ar、C1~C22アルキル、ハロ、C1~C22ハロアルキル、水素、アミノ、C1~C22アルコキシ、C1~C22エーテル、および(R-Si-から選択されるが、Rがフェニルまたは(CH-Si-ではないことを条件とする。一般に、Arには、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、またはトリアジニルが挙げられるが、これらに限定されない、アリールまたはヘテロアリール基である。Arはまた、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾチオフェニル、ベンスイミダゾリル(bensimidazolyl)、プリニル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、マフタレニル(maphthalenyl)、アントラセニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、アクリジニル、キナゾリニル、シンノリニル、およびフタラジニルが挙げられるが、これらに限定されない、縮合アリールまたはヘテロアリール基であり得る。
【0040】
がC1~C22アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、またはエーテルである場合、アルキル鎖は、直線状または分枝状であり得る。アルキル鎖は、例えば、Ar、ハロ、アミノ、アルコキシ、エーテル、および(R-Si-によって任意選択的にさらに置換され得る。実施形態では、Rはtert-ブチルである。
【0041】
に好適なアミノ基には、二水素アミノおよびC1~C4ジアルキルアミノが挙げられるが、これらに限定されず、各アルキル基は、同じ(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ)または異なる(例えば、メチルエチルアミノ、メチルプロピルアミノ、メチルブチルアミノ、エチルプロピルアミノ、エチルブチルアミノ、およびプロピルブチルアミノ)ことがあり得る。
【0042】
は、一般に、電子吸引置換基または電子供与置換基であり得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、Rの電子吸引能力または供与能力は、例えば、他の点では同一の反応条件下で、重合の開始および生長の速度に影響を与える可能性があり、R2の電子供与能力が増加するにつれて、速度は一般に増加し、一方、R2の電子供与能力が減少(および電子吸引能力が上昇)すると、速度は一般的に減少すると考えられている。同様に、理論に束縛されることを意図するものではないが、開始の速度は、メタロシクロプロペン錯体を調製するために使用される、アルキンの炭素-炭素三重結合に隣接するヘテロ原子の存在もしくは不在によって影響されると考えられている。さらに依然として、理論に束縛されることを意図するものではないが、重合の開始および生長の速度は、Rの立体的特性によって影響され、例えば、Rがますます立体的にかさ高くなるほど、Rは、金属中心への環状モノマーの接近を妨げると考えられている。
【0043】
いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ナフチル、およびC7~C22アリールから選択される。いくつかの実施形態では、Rは、i-ブチル、n-ブチル、s-ブチル、およびt-ブチルから選択される。いくつかの実施形態では、Rは、Arであり、Arは、ナフチルおよびC7~C22アリールから選択される。
【0044】
本明細書で定義されているとおり、Rの各存在は、C1~C22アルキル、Ar、-O-(C1~C22アルキル)、-O-Ar、-N-(C1~C22アルキル)、または-N-Arから独立して選択されるが、Rが、フェニルまたは(CH-Si-ではないことを条件とする。
【0045】
は、存在しないか、またはホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット、ホスホナート、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、イミン、および1~4個のヘテロ原子を含有する5員または6員の単環式基が挙げられるが、これらに限定されない、弱配位性電子供与体配位子であり得る。5員または6員の単環式基には、1~4個のヘテロ原子、1~3個のヘテロ原子、または1~2個のヘテロ原子、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾールトリアゾール、ピラン、ピロン、ダイオキシン、およびフランが挙げられ得る。5員または6員の単環式基は、ハロ、C1~C20アルキル、置換C1~C20アルキル、C1~C20ヘテロアルキル、置換C1~C20ヘテロアルキル、C5~C24アリール、置換C2~C24アリール、C5~C24ヘテロアリール、置換C5~C24ヘテロアリール、C6~C24アルカリル、置換C6~C24アルカリル、C6~C24ヘテロアルカリル、置換C6~C24ヘテロアルカリル、C6~C24アラルキル、置換C6~C24アラルキル、C6~C24ヘテロアラルキル、置換C6~C24ヘテロアラルキル、ならびにC1~C20アルコキシ、C5~C24アリールオキシ、C2~C20アルキルカルボニル、C6~C24アリールカルボニル、カルボキシ、カルボキシラート、カルバモイル、カルバミド、ホルミル、チオホルミル、アミノ、ニトロ、およびニトロソが挙げられるが、これらに限定されない官能基で置換され得る。ホスフィンおよびアミン配位子には、第一級、第二級、および第三級のホスフィンおよびアミンを挙げることができる。ホスフィンおよびアミン配位子には、0~3つのアルキル基、1~3つのアルキル基、またはC1~C20アルキルから選択される1~2つのアルキル基を挙げることができる。ホスフィンおよびアミン配位子は、0~3つのアリールもしくはヘテロアリール基、1~3つのアリールもしくはヘテロアリール基、または5員および6員のアリールもしくはヘテロアリール環から選択される1~2つのアリールもしくはヘテロアリール基も挙げることができる。
【0046】
実施形態では、Lは、アミン、ホスフィン、またはピリジンを含む。実施形態では、Lは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、またはジプロピルアミンを含む。いくつかの実施形態では、Lは、存在しない。Lが存在しない実施形態では、メタロシクロプロペン錯体は、配位的に不飽和である。いくつかの実施形態では、Rがtert-ブチルである場合、Lは、存在しない。
【0047】
理論に束縛されることを意図するものではないが、メタロシクロプロペン錯体中のLの存在もしくは不在は、LおよびRの同一性に基づく立体効果と電子効果との組み合わせに依存すると考えられている。さらに、理論に束縛されることを意図するものではないが、電子効果は、メタロシクロプロペン錯体中のLの存在もしくは不在に対して、立体効果よりも強い影響を与えると考えられている。例えば、理論に束縛されることを意図するものではないが、Rがアルキルの場合、=C-R基は、二重結合への配位子トランスに強いトランス効果を及ぼし、その結果、L-Mo結合が長くなるか存在しないと考えられる。したがって、出発金属錯体のLが、弱く配位する配位子、例えばNRであり、=C-Rが強いトランス効果を及ぼす場合、Lはメタロシクロプロペン錯体に存在せず、配位的に不飽和のメタロシクロプロペン錯体を提供すると考えられる。別の例として、理論に束縛されることを意図するものではないが、Rがかさ高い芳香族基を含む場合、かさ高い芳香族基は、一方または両方のLが金属中心から解離するように、出発金属錯体上に提供される、一方または両方の弱配位性配位子、Lの込み合いを増加させることができ、配位的に不飽和のメタロシクロプロペン錯体を証明すると考えられている。
【0048】
いくつかの実施形態では、メタロシクロプロペン錯体は、次式で表される構造を有する。
【0049】
【化5】
【0050】
いくつかの実施形態では、メタロシクロプロペン錯体は、次式で表される構造を有する。
【0051】
【化6】
【0052】
いくつかの実施形態では、メタロシクロプロペン錯体は、次式で表される構造を有する。
【0053】
【化7】
【0054】
また、開示されたメタロシクロプロペン錯体を調製するための方法が開示され、次式で表される構造を有する錯体を提供することと、
【0055】
【化8】
【0056】
(式中、Rの各存在、およびLが、本明細書で既に開示されたように選択されるか、または両方のLが共に二座配位子を含む。)次式で表される構造を有する末端アルキンと反応させることと、を含み、
【0057】
【化9】
【0058】
(式中、Rは、本明細書で既に開示されたように選択される。)それにより、開示されたメタロシクロプロペン錯体を得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、Rの各存在が、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、Rが、H、i-ブチル、n-ブチル、s-ブチル、およびt-ブチルから独立して選択される。
【0060】
両方のLが共に二座配位子を含む実施形態では、二座配位子には、ビピリジン、エチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、アセチルアセトナート、オキサラート、およびフェナントロリンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0061】
いくつかの実施形態では、Rが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ナフチル、およびC7~C22アリールから選択される。いくつかの実施形態では、Rが、i-ブチル、n-ブチル、s-ブチル、およびt-ブチルから選択される。いくつかの実施形態では、Rが、Arであり、Arは、ナフチルおよびC7~C22アリールから選択される。
【0062】
いくつかの実施形態では、Rの各存在が、H an dC1~C6アルキルから独立して選択され、Lの各存在が、ホスフィン、アミン、もしくは1~4個のヘテロ原子を含有する5員もしくは6員の単環式基から選択されるか、または両方のLが、共に二座配位子を含み、RがAr、C1~C22アルキル、および(R -Si-から選択され、Rの各存在が、C1~C22アルキルまたはArから独立して選択され、Arは、アリールまたはヘテロアリールであるが、Rがフェニルまたは(CH-Si-ではないことを条件とする。
【0063】
いくつかの実施形態では、本方法は、次式で表される構造を有する錯体を提供することと、
【0064】
【化10】
【0065】
(式中、Rの各存在が、本明細書で既に開示されたように選択される。)次式で表される構造を有する末端アルキンと反応させることと、を含み、
【0066】
【化11】
【0067】
(式中、Rは、本明細書で既に開示されたように選択される。)それにより、開示されたメタロシクロプロペン錯体を得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法が、次式で表される構造を有する錯体を提供することと、
【0069】
【化12】
【0070】
次式で表される構造を有する末端アルキンと反応させることと、を含み、
【0071】
【化13】
【0072】
(式中、Rが、本明細書で既に開示されたように選択される。)それにより、開示されたメタロシクロプロペン錯体を得る。
【0073】
環拡大メタセシス重合によって環状ポリマーを調製する方法も開示され、本開示のメタロシクロプロペン錯体を提供することと、メタロシクロプロペン錯体を1つ以上の環状アルケンと反応させることと、を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、メタロシクロプロペン錯体は、構造
【化14】
【0075】
を有する。
【0076】
環状ポリマーは、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、およびシクロオクテンならびにこれらの置換変形物など、これらに限定されない単環式アルケン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、無水ノルボルネン、無水ノルボルネンのエステル、無水ノルボルネンのイミド、オキサノルボルネン、無水オキサノルボルネン、無水オキサノルボルネンのエステル、無水オキサノルボルネンのイミド、および上記の置換変形物など、これらに限定されないビシクロアルケンなどを含むがこれらに限定されない、多種多様なシクロアルケンモノマーから調製することができる。イミドは、置換または非置換であり得る、アルキルまたはアリールアミンからのイミドであり得る。置換基は、C1~C10アルキル、アリール、アルコキシ、カルボン酸エステル、カルボン酸アミドであり得、アミドは、任意選択的にアルキルまたはアリールで1回または2回置換される。2つ以上のモノマーのコポリマーである環状ポリマーを調製することができる。実施形態では、環状アルケンは、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、無水ノルボルネン、無水ノルボルネンのエステル、無水ノルボルネンのイミド、オキサノルボルネン、無水オキサノルボルネン、無水オキサノルボルネンのエステル、無水オキサノルボルネンのイミド、および上記の置換変形物のうちの1つ以上を含むことができる。実施形態では、環状アルケンは、置換環状アルケンを含むことができ、置換は、カルボキシル、カルボニル、アルコール、またはチオールではない。実施形態では、環状アルケンは、置換環状アルケンを含むことができ、置換は、アルキル基またはアリール基を含む。実施形態では、環状ポリマーは、ホモポリマーを含む。実施形態では、環状ポリマーは、2つ以上の環状アルケンモノマーのコポリマーを含む。
【0077】
環状ポリマーの分子量は小さく、3~10の繰り返し単位のオリゴマーに相当するか、または分子量は、数万から数十万もしく数百万までの任意のサイズ、例えば、約200Da~約5,000,000Da、約500Da~約4,000,000Da、約1,000Da~約3,000,000Da、約5,000Da~約2,000,000Da、もしくは約10,000~約1,000,000Daの範囲の分子量であり得る。環状ポリ(シクロアルケン)は、環状ポリ(シクロアルケン)ポリマーの二重結合の還元が起こると、環状ポリ(シクロアルカン)を調製または変換して使用することができる。環状ポリ(シクロアルケン)は、環状ポリ(シクロアルケン)のアルケン基で付加反応、例えば、ハロゲン、アルコール、アミン、またはその他の任意のオレフィン付加反応の付加により、置換環状ポリ(シクロアルカン)に変換することができる。
【0078】
重合は、バルクまたは溶液中で、約30℃~約100℃以上の範囲、例えば、約35℃~約85℃または約40℃~約60℃の範囲の温度で、メタロシクロプロペン錯体をシクロアルカンモノマーと組み合わせることにより開始される。反応の進行は、標準的な技術、例えば、核磁気共鳴分光法によって監視することができる。
【0079】
重合反応に使用することができる溶媒の例には、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、脂肪族炭化水素、アルコール、水、またはこれらの混合物などの、重合条件下で不活性な有機溶媒、プロトン性溶媒、または水性溶媒が挙げられる。好適なハロゲン化炭化水素溶媒には、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
重合は、ドライボックス内で不活性雰囲気下で実行することができる。重合時間は、特定のモノマー、メタロシクロプロペン錯体、および環状ポリマー生成物の所望の分子量に応じて異なる。唯一のモノマーとしてノルボルネンを使用する代表的な重合反応を、反応スキーム2.1および2.2に図示する。図示されるように、金属錯体上の成長している大員環へのモノマーの連続的な添加/挿入によって重合が進行し、中間体の大環状錯体が分子内連鎖移動を経て、環状オレフィン系ポリマーを得る。重合は、ポリマーを沈殿させるのに有効な溶媒を添加することにより、いつでも停止することができる。
【0081】
次に、沈殿したポリマーを、濾過または他の従来の手段により単離することができる。高度な立体規則性を有するポリマーを調製することができる。本プロセスは、90%超、92%超、95%超、98%超、または99%超の立体規則性を有する環状ポリノルボルネンの調製を可能にした。
【0082】
ポリマー合成および回収に続いて、提供されるオレフィンポリマーは、従来の手段を使用して、例えば、標準的なH/Pd/C手順を介して、またはトシル-ヒドラジン分解を介して、水素化され得る。一般に、どちらの手順でも、Hおよび13C NMR分光法で測定され得るように、水素化された99%以上のポリマー主鎖のオレフィン官能基を有する飽和ポリマーになる。有利には、ポリマーの立体規則性が、水素化の間維持され、立体規則性飽和環状ポリマーを提供する。
【0083】
立体規則性飽和環状ポリマーは、以下の構造を有することができる。
【0084】
【化15】
【0085】
(式中、nは正の整数である。)実施形態では、nは、1~20,000、例えば、1~19,000、1~18,000、1~17,000、1~16,000、1~15,000、1~14,000、1~13,000、1~12,000、1~11,000、1~10,000、1~8000、1~6000、1~5000、1~4000、1~2000、1~1000、1~900、1~800、1~700、1~600、1~500、1~400、1~300、1~200、1~250、1~100、1~50、50~20,000、50~15,000、50~10,000、100~20,000、100~15,000、100~10,000、500~20,000、500~15,000、500~10,000、1000~20,000、1000~15,000、または1000~10,000の範囲であり得る。
【0086】
本明細書で言及されるすべての刊行物は、刊行物が引用されることに関連する方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で考察される出版物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する権利を与えられないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、本明細書で提供される発行日は実際の発行日と異なる場合があり、独自の確認が必要になる場合がある。
【0087】
様々な実施形態を説明する前に、以下の定義が提供されており、特に指示がない限り使用されるべきである。
【実施例
【0088】
本開示の態様を説明したが、一般に、以下の実施例は、本開示のいくつかの追加の態様を説明する。本開示の態様は、以下の実施例ならびに対応する文章および図に関連して説明されるが、本開示の態様をこの説明に限定する意図はない。逆に、その意図は、本開示の精神および範囲内に含まれるすべての代替物、修正物、および同等物を網羅することである。
【0089】
合成スキームの紹介。トリアニオン性ピンサー型アミド-アミン錯体Aの合成は、既に報告されている(Jan,M.T.,et al.,J.Organomet.Chem.2011 696:4079-4089)。錯体Aを1当量の末端アルキンR-C≡C-H(例えば、R=Ph、MeSi、およびBu)で処理すると、本明細書の以下に示す構造を有し、以下に示す反応スキーム1に従って調製された、対応するメタロシクロプロペン1、2、および3の形成をもたらす。メタロシクロプロペンまたはメタロシクロプロピリデンは、Rが電子吸引置換基(R=Ph)であろうと電子供与置換基(R=SiMe3またはBu)であろうと形成する。テザーされたアルキリデンが、環拡大メタセシス重合に利用できること(Nadif,S.S.,et al.,J.Am.Chem.Soc.2016,138,6408-6411;Gonsales,S.A.,et al,J.Am.Chem.Soc.2016,138,4996-4999)が報告されている(REMP、スキーム2)。錯体3などの開示された化合物を、以下に示される反応スキーム2.1および2.2に従って、ノルボルネンを用いた重合活性について試験した。データは、ポリマーが高度にシス濃縮されて>99%であり、非常に規則正しいことを指し示す。
【0090】
一般的な考慮事項。特に明記しない限り、すべての操作は、標準のシュレンクまたはグローブボックス技術を使用して、不活性雰囲気下で行った。ガラス器具を使用前にオーブンで乾燥した。ペンタン、トルエン、ジエチルエーテル(EtO)、テトラヒドロフラン(THF)、および1,2-ジメトキシエタン(DME)を、Glass Contours乾燥カラムを使用して乾燥した。ベンゼン-d6(Cambridge Isotopes)をナトリウム-ベンゾフェノンケチルまたは水素化カルシウム(CaH)上で乾燥し、蒸留または真空移動して、3Åまたは4Åのモレキュラーシーブ上に保存した。錯体[tBuOCO]Mo(NMe)(NHMe(2)と[tBuOCO]H(1)を、公開された文献の手順に従って調製した(構造については以下を参照すること。Jan,M.T.,et al.,J.Organomet.Chem.2011 696:4079-4089にて手順を公開)。部分的に臭素化したポリ(NBE)を既知の手順に従って合成した。すべてのアルキンを中性アルミナ、無水硫酸マグネシウム充填カラムを通過させることによって精製し、使用前に凍結-ポンプ-解凍を3回繰り返して脱気した。NMRスペクトルを、Varian Mercury Broad Band 300MHz、Varian Mercury 300MHz、またはVarian Inova 500MHz分光計で取得した。化学シフトをδ(ppm)で報告する。Hおよび13C{H}NMRスペクトルの場合、溶媒共鳴を内部参照として参照した。19Fおよび31P{H}NMRスペクトルを、それぞれフルオロベンゼンおよび85%HPOに対して外部参照した。元素分析を、Complete Analysis Laboratory Inc.(Parsippany, New Jersey)で実施した。FT-IRスペクトルを、KBrソルトプレートを使用してThermoscientific器で記録した。化学シフトの割り当ては、主にH-13C gHMBCおよびgHSQCスペクトルで観察されたクロスピークに基づく。特に明記しない限り、スペクトルを25℃で記録した。サイズ排除クロマトグラフィーは、THFで35℃、流速1.0mL/分で行った(Agilentアイソクラティックポンプ、デガッサー、およびオートサンプラー、カラム:3つのPLgel 5μm MIXED-D混床カラム、分子量範囲200~400,000g/mol)。検出は、658nmで作動するWyatt Optilab rEX屈折率検出器、656nmで作動するWyatt miniDAWN Treos光散乱検出器、およびWyatt ViscoStar-II粘度計で構成した。絶対分子量および分子量分布は、Wyatt ASTRAソフトウェアを使用して計算した。
【0091】
メタロシクロプロペンの一般的な合成(1、2および3)。以下の方法を、1、2および3の合成に使用し、1の合成の詳細を、代表例として提示する。1、2、3の構造は次のとおりである。
【0092】
【化16】

次の反応スキームによる。
【0093】
【化17】
【0094】
ガラスバイアルに、[tBuOCO]Mo(NMe)(NHMe(200mg、0.332mmol)および2mLのベンゼンを充填した。23℃で[tBuOCO]Mo(NMe)(NHMeの撹拌溶液にPhC≡CH(36.5μL、0.332mmol)を添加し、混合物を23℃で3時間撹拌した。セライト(登録商標)の薄層を通して濾過することにより不溶性物質を除去し、濾液を真空中で蒸発させて、ペンタン(3×1mL)で粉砕した固体を取得した。ペンタン中で錯体を再溶解し、ろ過して、残留するあらゆる不溶性物質を除去し、続いて溶媒を除去すると、分析的に純粋な赤みがかったオレンジ1(180mg、82%)が得られる。X線回折の影響を受けやすい1の結晶を、-35℃でEtO溶媒中の1の濃縮溶液から成長させた。
【0095】
図1および図2に示す、1の特性データ:赤オレンジ色の固体、収率82%。H NMR(300MHz、C6D6)、δ(ppm):7.68(d、J=7.0Hz、1H、Ar-H)、7.45(d、J=7.0、2H、Ar-H)、7.21(d、J=8.3Hz、2H、Ar-H)、6.86-7.10(m、7H、Ar-H)、6.72(t、J=7.3、1H、Ar-H)、6.40(m、1H、Ar-H)、4.82(s、1H、Mo-CH)、3.65(s、3H、N-CH)、3.58(s、3H、N-CH)、1.73(s、6H、NH-CH3)、1.60(s、9H、-C(CH3)3)、1.40(s、9H、-C(CH)。13C{H}NMR(75.36Hz、C)、δ(ppm):252.0(s、Mo=C)、174.6、163、159.3、146.2、144.8、139.2、138.9、134.3、133.2、132.7、132.0、130.9、129.6、129.1、128.2、127.9、127.8、127.5、127.3、126.6、124.2、119.1、118.5、73.1(s、Mo-CH、64.2(s、N-CH)、50.8(s、N-CH3)、43.7(s、NH-CH)、35.8(s、-C(CH)、31.2(s、-C(CH)。C3846MoN:C、69.28;H、7.04;N、4.25について計算した分析。実測値:C、69.19;H、6.98;N、4.07。図3は、KBRディスク上の1のIRスペクトルを示す。
【0096】
1のX線実験データは、APEX II面検出器およびMOKα放射線(λ=0.71073A)を利用してグラファイトモノクロメーターを備えたBruker DUOシステム上にて100Kで収集した。セルパラメータを最大9999個の反射を使用して精密化した。データの半球は、ωスキャン法(フレーム幅0.5°)を使用して収集した。積分による吸収補正を、測定指標した結晶面に基づいて適用した。構造をSHELXTL6のDirect Methodsによって解き、完全行列最小二乗法を使用して精密化した。非H原子を異方的に処理し、これに対して、水素原子はアイデア位置(idea positions)で計算し、それらのそれぞれの炭素原子騎乗していた。N2およびC27上のプロトンは、差フーリエマップから取得され、自由に精密化した。I>2σ(I)の5703個の反射を使用して、精密化の最終サイクルで合計406のパラメーターを精密化し、それぞれ、2.86%のRおよび7.19%のwRを得た。精密化はFを使用して行った。明確にするために水素原子を省略した分子構造1を図14に示す。
【0097】
図4および図5に示す、2の特性データ;赤オレンジ色の固体、収率86%。H NMR(500MHz、トルエン-d8)、δ(ppm):7.57(d、J=7.5Hz、1H、Ar-H)、7.34(d、J=7.5Hz、1H、Ar-H)、7.29(t、J=7.6、2H、Ar-H)、6.94(t、J=7.6Hz、2H、Ar-H)、6.88(d、J=7.5、1H、Ar-H)、6.74(t、J=7.6Hz、1H、Ar-H)、5.01(s、1H、Mo-CH)、3.58(s、3H、N-CH)、3.51(s、3H、N-CH)、1.46(s、9H、-C(CH)、1.33(s、9H、-C(CH)、0.15(s、9H、-Si(CH)。13C{H}NMR(125.70Hz、トルエン-d)、δ(ppm):281.1(s、Mo=C)、176.0、143.8、138.8、134.4、133.1、129.8、127.4、127.9、126.0、124.1、119.6、118.9(アリール)、85.1(s、Mo-CH)、58.6(s、N-CH3)、53.6(s、NH-CH)、42.1(s、N-CH)、35.4(s、-C(CH)、30.3(s、-C(CH)、30.1(s、-C(CH)、0.3(s、-Si(CH)。C3550MoNSi:C、64.20;H、7.70;N、4.28。実測値:C、63.97;H、7.59;N、4.17。
【0098】
2のX線実験データは、MoKα放射線(0.71073A)およびAPEXII CCD面検出器を使用してBruker SMART回折計にて100Kで収集した。Rawデータフレームは、プログラムSAINTによって読み取り、3Dプロファイリングアルゴリズムを使用して統合した。得られたデータは、hkl反射およびその強度、ならびに推定標準偏差を生成するために削減した。データはLorentzで補正し、分裂効果および数値吸収補正を指標付けして測定した面に基づいて適用した。構造は、完全行列最小二乗精密化を使用して、SHELXTL^.1で解き、精密化した。非H原子を異方性熱パラメーターで精密化し、すべてのH原子を理想的な位置で計算し、それらの親原子に騎乗して精密化した。C23上のアミノプロトンH2およびプロトンH23は、差フーリエマップから取得し、自由に精密化した。精密化の最終サイクルでは、8641個の反射(そのうち4432個をI>2σ(I)で観察する)を使用して、438個のパラメーターを精密化し、得られたR、wRおよびSは、それぞれ5.97%、8.93%、および0.882だった。精密化は、F値ではなくF値を使用して、wR関数を最小化することによって実行した。Rを従来のR値への参照を提供するために計算するが、その関数は最小化されない。明確にするために水素原子を省略した分子構造2を図15に示す。
【0099】
ガラスバイアルに[BuOCO]Mo(NMe)(NHMe(456mg、0.758mmol)および2mLのトルエンを充填し、-35℃に冷却した。溶液に、3,3-ジメチル-1-ブチン(93.3μL、0.758mmol)をマイクロピペットを介して添加し、混合物を周囲温度で3時間撹拌した。反応混合物をCelite(登録商標)の薄層を通して濾過し、濾液を真空で蒸発させて、ペンタン(3×1mL)で粉砕した固体を取得した。粉砕後、生成物をペンタンに溶解し、濾過して、残留するあらゆる不溶性物質を除去した。濾液を真空中で蒸発させて、分析的に純粋な赤みがかったオレンジ色の固体3(326mg、72%)を得た。
【0100】
図6に示す、3の特性データ;赤オレンジ色の固体、収率72%。H NMR(500MHzで、C、25℃)δ(ppm):7.62(D、J=7.5Hz、1H、Ar-H)、7.39(D、J=7.3Hz、1H、Ar-H)、7.34(d、J=8.0Hz、1H、Ar-H)、7.29(d、J=7.7Hz、1H、Ar-H14)、7.13(d、J=7.9Hz、1H、Ar-H16)、7.02(m、1H、Ar-H)、7.01(m、1H、Ar-H)、6.99(d、J=6.3Hz、1H、Ar-H10)、6.77(t、J=7.6Hz、1H、Ar-H15)、4.55(s、1H、Mo-CH(H27))、3.58(s、3H、N-CH(H33))、3.32(s、3H、N-CH(H34))、1.47(s、9H、配位子C(CH(H24-26))、1.36(s、9H、配位子C(CH(H20-22))、0.83(s、9H、(H30-32))。H-13C gHSQCおよびgHMBC実験によって決定された13C:(C):δ281.3(S、Mo=C(C28))、174.5(s、C18)、155.5(s、C)、144.7(s、C11)、144.6(s、C)、138.3(s、C)、134.7(s、C17)、134.0(s、C13)、133.1(s、C10)、131.7(s、C)、129.7(s、C)、128.3(s、C)、128.2(s、C14)、126.5(s、C)、125.7x(s、C)、125.7x(s、C12)、124.2(s、C16)、119.5(s、C)、118.5(s、C15)、70.9(s、C27)、56.7(s、C33)、45.5(s、C29)、38.2(s、C34)、35.1(s、C23)、35.0(s、C19)、30.1(s、C30-32)、29.8(s、C24-26)、29.6(s、C20-22)。化学シフトは、次の構造の番号付けに従って割り当てられ、
【0101】
【化18】
【0102】
H-13C gHSQC、H-13C gHMBC、およびNOESY NMRスペクトルを使用して確認する。
【0103】
3(ベンゼン-d)のH NMRスペクトルは、C対称構造と一致する共鳴を呈する。1:1の比率でピンサー型Buプロトンに起因する2つの一重項は、1.47ppmおよび1.36ppmで共鳴する。アミドメチルプロトンは、3.58ppmおよび3.32ppmで2つの一重項として共鳴し、さらに錯体のC対称性を指し示す。C27に結合したメタロシクロプロペンプロトンは、4.55ppmで共鳴する。13C{H}NMRスペクトルでは、アルキリデン炭素(Mo=C)は、281.3ppmで低磁場に現れ、メタロシクロプロペンのC28に起因する。Mo=Cの低磁場シフトは、同様のMo=C共鳴が281.1ppmで観察される、-SiMeに類似した、より高い電子供与性の-CMe置換基の結果であると推定される。メタロシクロプロペンのC27には、70.9ppmの低磁場共鳴が観察される。速度論的実験により、メタロシクロプロペンの反転の速度は、25℃で4.7s-1であることが明らかになった。既に報告されたモリブデン=メタロシクロプロペン錯体とは対照的に、[BuOCO]Mo(NMe)(NHMeを末端アルキンH-C≡C-R(R:H、Ph、-SiMe)で処理すると、ジメチルアミド基および2個の炭素原子、OCO配位子のアリールオキシド、ならびにジメチルアミン基によって配位された、モリブデンイオンが形成され、R=Buの場合、ジメチルアミンの損失という予期しない結果が発生した。H NMRスペクトルにおけるアミンメチル共鳴の欠如ならびに3200~3400cm-1のIRスペクトル領域におけるN-H伸縮のおよび欠如は、ジメチルアミンの排除を支持する。Bu基の立体的なかさ高さは、Mo配位中心からジメチルアミンの排除を引き起こすと推定される。基質結合が速度を決定することができるので、配位部位を開くことは触媒作用において有利であり得る。
【0104】
触媒(3)によるノルボルネンの重合:ノルボルネンによる重合活性は、以下に示す反応スキーム2.1および2.2に従った。要約すると、ベンゼン0.4ml中のノルボルネン(1当量)を充填した20mlのガラスバイアルに3(1当量)を添加した。反応混合物をJ-Young NMRチューブに取り、50℃で6時間加熱した。この期間の後、反応混合物を撹拌中のメタノールに滴加した。反応量は下記表1の通りである。
【0105】
【表1】
【0106】
ポリノルボルネンが析出し、それを濾過により単離し、真空下で一晩乾燥させる。主にシス生成物を微量のトランス生成物で取得する。H NMRスペクトルの割り当ては、文献報告と一致した。
【0107】
【化19】
【0108】
【化20】
【0109】
中の3とノルボルネンとの反応をH NMRで監視した。図7は、C中、室温でのノルボルネンを含む3のH NMRスペクトルを示す。図7は、経時的なノルボルネンの消費およびポリノルボルネンの成長を示す(例えば、約5.9ppmおよび約2.75ppmでピークの消失、ならびに約5.4ppmおよび約2.9ppmでピークの成長により)。図8は、C中、50℃で4時間、ノルボルネンを含む3のH NMRスペクトルを5分間隔で示す。図8は、経時的なノルボルネンの消費およびポリノルボルネンの成長を示す(例えば、約5.9ppmおよび約2.75ppmでピークの消失、ならびに約5.4ppmおよび約2.9ppmでピークの成長により)。図9は、C中で6時間後のノルボルネンを含む3のH NMRスペクトルを示す。図9は、ノルボルネンのほぼ完全な消費(約5.9および約2.75で最小ピーク)、ならびにポリノルボルネンの成長(約5.4ppmおよび2.9ppmで大きなピーク)を示す。
【0110】
図10は、C中、50℃で8時間後のノルボルネンを含むメタロシクロプロペン2のH NMRスペクトルを示す。図11は、C中、50℃で8時間後のノルボルネンを含むメタロシクロプロペン1のH NMRスペクトルを示す。図12は、CDCl中のメタロシクロプロペン3によって作製されたポリノルボルネンのH NMRスペクトルを示す。図13は、CDCl中のメタロシクロプロペン3によって作製されたポリノルボルネンの13C NMRスペクトルを示す。
【0111】
触媒(3)によるノルボルネンの重合:窒素を充填したグローブボックス内で、ノルボルネン(51mg、5.42x10-4mol、50当量)を5.6mLのトルエンに溶解した。別のバイアルで、触媒3の原液を調製し(1mg/mL)、最初のバイアルに一回で添加して、重合を開始した。混合物を60℃で24時間加熱した後、混合物を撹拌中のメタノールに滴加した。混合物を30分間撹拌した。ポリノルボルネンが白色固体と析出し、それを濾過により単離して、真空下で一晩乾燥させた。(46.8mg、92%).Hおよび13C NMRスペクトルの割り当ては、文献報告と一致した。
【0112】
【表2】
【0113】
得られたポリノルボルネンを、標準のH/Pd/C手順を介して水素化して、以下の反応スキーム3に示すように、立体規則性飽和環状ポリマーを提供することができる。
【0114】
【化21】
【0115】
環状トポロジーの証拠は、Mwの関数としての線状ポリノルボルネンと環状ポリノルボルネンとの固有粘度[η]の比較から得られる。それらのより小さい流体力学的半径のために、環状ポリマーは、同様の分子量の線状ポリマーよりも低い固有粘度を有する。[η]が固有粘度であり、Mが粘度平均モル質量である、Mark-Houwink-Sakurada(MHS)プロット(log[η]対logMは、線状ポリマーと比較して環状ポリマーのより低い固有粘度を確認する。触媒3によって生成されたポリマーは、より低い固有粘度を有し(図16B)、これは、循環トポロジーの特徴の1つである。さらに、環状ポリマーは、それらの同等の線形類似体よりも流体力学的半径が小さい(図16D)。従って、環状ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)中に所与の絶対分子量に対してより短い溶出時間を有する(図16A)。log(モル質量)対溶出体積(図16C)のプロット差は、線状ポリマー対環状ポリマーと一致する。
【0116】
本開示の上記の実施形態は、本開示の原理を明確に理解するために述べられた実装の可能な例にすぎないことを強調しておくべきである。本開示の趣旨および原理から実質的に逸脱することなく、上記の実施形態に対して多くの変更および修正を行うことができる。そのようなすべての修正および変更は、本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D