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特許7416431複数のキュービット種を有する量子ネットワークノードおよびプロトコル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】複数のキュービット種を有する量子ネットワークノードおよびプロトコル
(51)【国際特許分類】
   G02F 3/00 20060101AFI20240110BHJP
   G06N 10/00 20220101ALI20240110BHJP
   H04B 10/70 20130101ALI20240110BHJP
   B82Y 10/00 20110101ALI20240110BHJP
【FI】
G02F3/00
G06N10/00
H04B10/70
B82Y10/00
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2020544584
(86)(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 US2018059656
(87)【国際公開番号】W WO2019094490
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】62/582,529
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/694,604
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/182,219
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520159592
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド, カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】モンロー クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リヒトマン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】インレク イスマイル ヴォルカン
(72)【発明者】
【氏名】クロッカー クレイトン
(72)【発明者】
【氏名】ソスノヴァ クセニア
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-209083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0055961(US,A1)
【文献】CETINA, M.,"Hybrid Approaches to Quantum Information Using Ions, Atoms and Photons",Submitted to the Department of Physics in partial fulfillment of the requirements for the degree of Doctor of Philosophy at the MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY,MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY,2011年,pp. 1-250
【文献】DEVOE, R. G. et al.,"Experimental study of anomalous heating and trap instabilities in a microscopic 137Ba ion trap",PHYSICAL REVIEW A,2002年,Vol. 65,pp. 063407-1 - 063407-8
【文献】INLEK, I. V. et al.,"Multispecies Trapped-Ion Node for Quantum Networking",PHYSICAL REVIEW LETTERS,2017年06月23日,Vol. 118,pp.250502-1- 250502-5
【文献】BLINOV, B. B. et al.,"Sympathetic cooling of trapped Cd+ isotopes",PHYSICAL REVIEW A,2002年,Vol. 65,pp. 040304-1- 040304-4
【文献】BEGLEY, S. et al.,"Optimized Multi-Ion Cavity Coupling",PHYSICAL REVIEW LETTERS,2016年06月03日,Vol. 116,pp. 223001-1 - 223001-5
【文献】TURCHETTE, Q. A. et al.,"Heating of trapped ions from the quantum ground state",PHYSICAL REVIEW A,Vol. 61,2000年,pp. 063418-1 - 063418-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
G06N 10/00-10/40
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子コンピューティングのためのモジュラー光学アーキテクチャに使用するための量子ネットワーキングノードにおいて、
各メモリキュービットが171Yb原子イオンに基づく複数のメモリキュービットと、
各通信キュービットが138Ba原子イオンに基づく、複数の通信キュービットと、
を備え、前記複数のメモリキュービットと複数の通信キュービットは、原子イオントラップ内の格子の一部であり、前記複数の通信キュービットは、
次の3つの形態、
前記格子の一端に1つ配置される、
前記格子の他端に1つ配置される、
前記格子の両端に1つずつ配置される、
の何れか1つを少なくとも有し、
前記複数の通信キュービット間で多重化し、前記複数の通信キュービットから光子を放出して、別の量子ネットワーキングノードのそれぞれの親原子とのエンタングルメントを試行するように構成される、
量子ネットワーキングノード。
【請求項2】
前記メモリキュービットの1つの171Yb原子イオンと、前記通信キュービットの1つの138Ba原子イオンとの間のローカライズされた接続は、前記1つのメモリキュービットの171Yb原子イオン、前記1つの通信キュービットの138Ba原子イオン、またはその両方に力を適用するように構成された外部レーザフィールドを介して集団運動を少なくとも部分的に制御することにより前記1つのメモリキュービットと前記1つの通信キュービットの結合を介して行われる、請求項1に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項3】
前記原子イオントラップは、単一のレーザを受信するように構成され、前記単一レーザの第2の高調波は、前記1つの通信キュービットの138Ba原子イオンに力を印加する第1の外部レーザフィールドに対応し、前記単一レーザの第3の高調波は、前記1つのメモリキュービットの171Yb原子イオンに力を印加する第2の外部レーザフィールドに対応する、請求項2に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項4】
前記単一レーザの第2高調波は、約532ナノメートル(nm)の波長の輝線にあり、前記単一レーザの第3高調波は、約355nmの波長の輝線にある、請求項3に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項5】
前記171Yb原子イオンは第1の原子種であり、前記138Ba原子イオンは、第2の原子種であり、前記第1の原子種の原子質量と前記第2の原子種の原子質量は、実質的に、25%未満の2つの原子質量間の原子質量差分と類似する、請求項1に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項6】
前記複数の通信キュービットの任意の1つの前記138Ba原子イオンは、蛍光により光子を放出するように構成され、前記放出された光子は、138Ba原子イオンとエンタングルされる、請求項1に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項7】
前記放出された光子のスペクトルの少なくとも一部は、可視スペクトル内にある、請求項6に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項8】
前記放出された光子の輝線は、前記複数のメモリキュービットの前記171Yb原子イオンの共振から分離される、請求項6に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項9】
前記輝線は、約493nmおよび650nmの波長の放出ラインを含み、前記171Yb原子イオンの共振は、約369nmの波長である、請求項8に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項10】
前記約493nmおよび650nmの波長の前記輝線は、138Ba原子イオンの基底レベルのゼーマン量子ビット電子を励起状態に接続する可視光線に対応する、請求項9に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項11】
各メモリキュービットは、それぞれの171Yb原子イオンの1/2基底状態超微細準位にエンコードされるように構成される、請求項1に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項12】
それぞれの171Yb原子イオンの超微細コヒーレンス時間は、約1.5秒以上である、請求項11に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項13】
前記それぞれの171Yb原子イオンの超微細キュービット状態の分裂は、磁場変動の影響を受けない、請求項11に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項14】
各通信キュービットは、138Ba原子イオンの1/2基底状態電子スピンレベルを使用するように構成される、請求項1に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項15】
前記格子は線形格子である、請求項1に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項16】
モジュラー光学アーキテクチャを有する量子コンピューティングシステムにおいて、
各量子ネットワーキングノードが、
各メモリキュービットが171Yb原子イオンである複数のメモリキュービットと、
各通信キュービットが138Ba原子イオンである複数の通信キュービットを含む複数の量子ネットワーキングノードであって、前記複数のメモリキュービットと前記複数の通信キュービットは、原子イオントラップ内の格子の一部であり、前記複数の通信キュービットは、
次の3つの形態、
前記格子の一端に1つ配置される、
前記格子の他端に1つ配置される、
前記格子の両端に1つずつ配置される、
の何れか1つを少なくとも有する、
複数の量子ネットワーキングノードと、
前記複数の量子ネットワーキングノードの各々に結合されたフォトニックエンタングラーと、
を備え、
前記量子ネットワーキングノードは、前記複数の通信キュービット間で多重化し、前記複数の通信キュービットからそれぞれ光子を放出して、前記複数の量子ネットワーキングノードのうちの別の量子ネットワーキングノードのそれぞれの親原子とのエンタングルメントを試行するように構成される、
量子コンピューティングシステム。
【請求項17】
前記複数の量子ネットワーキングノードの各々の各メモリキュービットは、前記それぞれの171Yb原子イオンの前記1/2基底状態超微細レベルで符号化されるように構成される、請求項16に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項18】
前記複数の量子ネットワーキングノードの各々の各通信キュービットは、前記138Ba原子イオンの前記1/2基底状態電子スピンレベルを使用するように構成される、請求項16に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項19】
前記複数の量子ネットワーキングノードの第1の量子ネットワーキングノードの前記複数の通信キュービットの第1の通信キュービットは、前記複数の量子ネットワーキングノードの第2の量子ネットワーキングノードの前記複数の通信キュービットの1つとエンタングルされる、請求項16に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項20】
前記第1の量子ネットワーキングノードの前記複数の通信キュービットの第2の通信キュービットは、前記複数の量子ワーキングノードの第3の量子ネットワーキングノードの前記複数の通信キュービットの1つとエンタングルされる、請求項19に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項21】
前記複数の量子ネットワーキングノードの1つの前記複数の通信キュービットの任意の1つの前記138Ba原子イオンは、蛍光により光子を放出するように構成され、前記放出された光子は、前記138Ba原子イオンとエンタングルされる、請求項16に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項22】
前記放出された光子のスペクトルの少なくとも一部は、可視スペクトル内にある、請求項21に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項23】
前記フォトニックエンタングラーは、光通信スペクトルで動作するように構成された光ファイバを介して前記複数の量子ネットワーキングノードの各々に結合され、前記量子コンピューティングシステムはさらに、前記放出されたフォトンの可視スペクトルを前記光通信スペクトルに変換するための波長コンバータを備えた、請求項22に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項24】
前記光通信スペクトルは、約1300-1550nmの波長を含む、請求項23に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項25】
前記フォトニックエンタングラーは、前記光通信スペクトルと互換性のある1つまたは複数の光コンポーネントを含む、請求項23に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項26】
前記フォトニックエンタングラーは、前記複数の量子ネットワーキングノードからの任意の2つの量子ネットワーキングノード間のエンタングルメントを可能にする1つまたは複数の再構成可能な光スイッチを含む、請求項16に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項27】
前記複数の量子ネットワーキングノードの各々の前記複数の通信キュービットは、その全てが前記格子の前記一端に配置されるか、またはその全てが前記格子の前記他端に配置されるか、またはそのいくつかが前記格子の前記一端に配置され、残りが前記格子の前記他端に配置される複数の通信キュービットを含む、請求項16に記載の量子コンピューティングシステム。
【請求項28】
量子コンピューティングのためのモジュラー光学アーキテクチャに使用する量子ネットワーキングノードにおいて、
複数のメモリキュービットと、
複数の通信キュービットと、
を備え、前記複数のメモリキュービットと、前記複数の通信キュービットは、原子イオントラップ内の格子の一部であり、前記複数の通信キュービットは、
次の3つの形態、
前記格子の一端に1つ配置される、
前記格子の他端に1つ配置される、
前記格子の両端に1つずつ配置される、
の何れか1つを少なくとも有し、
前記メモリキュービットと前記通信キュービットは、異なるイオン種のペア、同種の異なるアイソトープのペア、異なるキュービット基底状態のペア、またはそれらの組み合わせから成り、
前記複数の通信キュービット間で多重化し、前記複数の通信キュービットからそれぞれ光子を放出して、前記複数の量子ネットワーキングノードのうちの別の量子ネットワーキングノードのそれぞれの親原子とのエンタングルメントを試行するように構成される、
量子ネットワーキングノード。
【請求項29】
前記異なるイオン種のペアは、Yb/Ba、Ca/Sr、またはBe/Mgの1つである、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項30】
前記異なるイオン種のペアは、Cd、Zn、Alの1つまたは複数を含む、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項31】
前記異なるイオン種のペアは、Yb/Baであり、Ybのアイソトープは、少なくとも171Yb、174Yb、176Ybおよび172Ybを含むYbの複数のアイソトープから選択され、Baのアイソトープは、少なくとも138Ba、137Ba、または133Baの複数のアイソトープから選択される、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項32】
前記異なるイオン種のペアは、Ca/Srであり、Caのアイソトープは、少なくとも40Ca、43Caを含む複数のCaのアイソトープから選択され、Srのアイソトープは、少なくとも88Sr、87Sr、および86Srを含むSrの複数のアイソトープから選択される、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項33】
前記異なるイオン種のペアは、Be/Mgであり、Beのアイソトープは9Beであり、Mgのアイソトープは、少なくとも24Mg,25Mg、26Mgの複数のアイソトープから選択される、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項34】
前記同種の異なるアイソトープのペアは、少なくとも171Yb、174Yb、176Ybおよび172Ybを含む複数のYbアイソトープから異なるYbアイソトープを有する、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項35】
前記同種の異なるアイソトープのペアは、少なくとも138Ba、137Baおよび133Baを含む複数のBaアイソトープからの異なるBaアイソトープを有する、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項36】
前記同種の異なるアイソトープのペアは、少なくとも40Caおよび43Caを含む複数のCaアイソトープからの異なるCaアイソトープを有する、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項37】
前記同種の異なるアイソトープのペアは、少なくとも88Sr、87Srおよび86Srを含む複数のSrアイソトープからの異なるSrアイソトープを有する、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項38】
前記同種の異なるアイソトープのペアは、少なくとも24Mg、25Mg、および26Mgを含む複数のMgアイソトープからの異なるMgアイソトープを有する、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項39】
前記異なるキュービット基底状態のペアは、超微細状態、ゼーマン状態、および光学状態からの2つの異なるキュービット状態を含む、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【請求項40】
前記複数のメモリキュービットの各々と、前記複数の通信キュービットの各々は、超微細状態、ゼーマン状態、または光学状態からのキュービット基底状態の選択を有する、請求項28に記載の量子ネットワーキングノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2018年11月6日に出願された、「複数のキュービット種を有する量子ネットワークノード」という発明の名称の米国非仮特許出願第16/182,210号、2017年11月7日に出願された、「複数のキュービット種を有する量子ネットワークノード」という発明の名称の米国仮特許出願第62/582,529号、および2018年7月6日に出願された、「複数のキュービット種を有する量子ネットワークノードおよびプロトコル」という発明の名称の米国仮特許出願第62/694、604号の優先権を主張し、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府のライセンス権利
この発明は、米国陸軍研究所(ARL)から授与されたW911NF1520067および空軍科学研究所(AFOSR)から授与されたFA95501610421に基づく政府の支援を受けて行われた。米国政府はこの発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
この開示の態様は一般に、量子情報処理に関し、特に、量子ネットワーキングのためのトラップイオンノードに複数の種(species)を用いるための技術に関する。トラップされた原子イオンは、汎用で完全にプログラム可能なマシンを提供する量子情報処理(QIP)アプローチの1つである。トラップされた原子イオンは、また、量子情報ネットワーク(QINs)のためのリーディングプラットフォームである。そのようなシステムまたはネットワークの全体の通信を改善することができるトラップされた原子イオンに基づいたシステムまたはネットワークが望まれている。
【発明の概要】
【0004】
以下は、そのような態様の基本的理解を提供するために1つまたは複数の態様の簡略化された概要を提示する。この要約は、考えられるすべての態様の包括的な概要ではなく、すべての態様の主要なまたは重要な要素を特定したり、一部またはすべての態様の範囲を線引きしたりすることを意図するものではない。その目的は、後に提示する、より詳細な記述への前置きとして、簡単化された形式で1つまたは複数の態様のいくつかの概念を提示することである。
【0005】
トラップされた原子イオンは、QINsの主要なプラットフォームであり、クーロン相互作用(Coulomb interaction)を介してローカルにエンタングルしたり(entangled)、フォトニックチャネルを介してリモートにエンタングルできる長寿命の同一キュービットメモリを備える。量子ネットワークの単一ノードでローカル操作とリモート操作の両方を実行するには、スペクテータキュービットメモリ(spectator qubit memory)とフォトニックインタフェースに関連付けられたキュービットを極端に分離する必要がある。この開示は、同じノード内で171Yb138Baキュービットを同時にトラップすることによってこの分離を達成する方法を記載する。この開示はさらに、混合種のキュービットのペアをそれらの集団運動を通して絡ませ、放出された可視光子で138Baキュービットを絡ませることからなる2つの異なる実験の結果に基づくスケーラブルイオントラップネットワークノードの要件を記載する。
【0006】
この開示の一態様において、各メモリキュービットが171Yb原子イオンに基づく複数のメモリキュービットと、各通信キュービット138Ba原子イオンに基づく1つまたは複数の通信キュービットを含む、量子コンピュータのためのモジュラー光学アーキテクチャに使用する量子ネットワーキングノードが記載される。複数のメモリキュービットと1つまたは複数の通信キュービットは、原子イオントラップ内の格子の一部であり得る。
【0007】
この開示の他の態様において、複数の量子ネットワーキングノードと、複数の量子ネットワーキングノードの各々に結合されたフォトニックエンタングラー(entangler)を含むモジュラー光学アーキテクチャが記載される。各量子ネットワーキングノードは、各メモリキュービットが171Yb原子に基づく複数のメモリキュービットと、各通信キュービットが138Ba原子イオンに基づく1つまたは複数の通信キュービットを含む。複数のメモリキュービットと、1つまたは複数の通信キュービットは、原子イオントラップ内の格子の一部であり得る。添付図面は、いくつかのインプリメンテーションのみを図示、それゆえ、範囲を限定するものとみなされるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この開示の態様による、複数種のイオントラップネットワークの一例を図示する図である。
図2(a)】この開示の態様による、138Baと放出された光子偏光との間の相関例を図示する図である。
図2(b)】この開示の態様による、138Baと放出された光子偏光との間の相関例を図示する図である。
図3】この開示の態様による、138Ba171Ybの両方における1/2および3/2レベルへの532および355nmパルスレーザビームの非共鳴結合の例を示す図である。
図4(a)】この開示の態様による、横方向および軸方向運動の共捕捉(co-trapped)138Ba171Yb結晶の振動スペクトルの例を示す図である。
図4(b)】この開示の態様による、横方向および軸方向運動の共捕捉(co-trapped)138Ba171Yb結晶の振動スペクトルの例を示す図である。
図5(a)】本開示の態様による、実験的ステップの例、および集団運動を直接使用して138Baの状態を171Ybにマッピングした結果を示す図である。
図5(b)】本開示の態様による、実験的ステップの例、および集団運動を直接使用して138Baの状態を171Ybにマッピングした結果を示す図である。
図6(a)】本開示の態様による、MS相互作用に続くMSゲートおよびπ/2回転のエンタングリング後の171Ybおよび138Baキュービット状態の測定確率の例を示す図である。
図6(b)】本開示の態様による、MS相互作用に続くMSゲートおよびπ/2回転のエンタングリング後の171Ybおよび138Baキュービット状態の測定確率の例を示す図である。
図7(a)】この開示による、ネットワークノード、フォトニックエンタングラー(photonic entanglers)、および波長変換器の例を図示する図である。
図7(b)】この開示による、ネットワークノード、フォトニックエンタングラー(photonic entanglers)、および波長変換器の例を図示する図である。
図7(c)】この開示による、ネットワークノード、フォトニックエンタングラー(photonic entanglers)、および波長変換器の例を図示する図である。
図8】この開示の態様による、トラップイオンベースのQIPシステムの一例を図示するブロック図である。
図9】この開示の態様による、コンピュータデバイスの一例を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付した図面に関連して以下に記載した詳細な記述は、種々の構成の記述を意図したものであり、ここに記載した概念を実施するための唯一の構成を表すことを意図したものではない。詳細な記述は、種々の概念の完全な理解を提供するための特定の詳細を含む。しかしながら、当業者には、これらの概念がこれらの特定の詳細なしに実施可能であることは明らかであろう。いくつかのインスタンスにおいて、良く知られたコンポーネントは、そのような概念が不明瞭にならないように、ブロック図の形態で示される。
【0010】
トラップされた原子イオンは、量子情報ネットワーク(QIN)の最も高度なプラットフォームの1つであり、本質的に同一であり、比類のないコヒーレンスプロパティを持つキュービットメモリをホストする。ネットワークの単一ノードは、トラップされたイオンのチェーンで実現することができ、ローカルエンタングリングゲート操作は、集団運動を通じてキュービット状態に結合する外部制御フィールドを使用する。ネットワークのエッジは、個別のノードの選択された「通信」キュービット間のフォトニックエンタングリング操作によりインプリメントすることができる。しかしながら、単一の共鳴光子でさえも量子メモリを破壊する可能性があるので、通信キュービットのフォトニックインタフェースは、観客のメモリキュービットを妨害しないかもしれない。そのような分離は、2つの異なる種の原子イオンを用いることにより最も良く達成され、図1に示すように、一方は、ローカル処理およびメモリ用であり、他方は、他ノードとの通信用である。
【0011】
図1は、138Ba通信キュービット125が光ファイバに結合された他種イオントラップネットワークを備えたダイアグラム100を示す。それらの親原子とエンタングルされたフォトンを用いて、例えば、異なるノード110a、110b、110cにおける任意の138Baキュービットペアを再構成可能なフォトニックエンタングラー120を介してエンタングルすることができる。ローカルクーロン相互作用は、このエンタングルメントをノード内の近くの171Ybメモリキュービット115と量子論理ゲートに転送する。2つの種(たとえば、171Ybメモリキュービット115と138Ba通信キュービット125)の異種または異なる電子遷移周波数は、必要な分離を提供して、138Baメモリキュービット115を138Baフォトニックインタフェースの共振プロセスから保護する。
【0012】
この開示は、潜在的な量子ネットワークで使用するための多種イオントラップノードのさまざまな成分または要件について記載する。これらの要件は、メモリと通信キュービット間のコヒーレント量子状態マッピングと、通信キュービットとエンタングルされるフォトニックキュービットの生成を含むことができる。たとえば、メモリキュービットは、171Yb原子イオンの1/2基底状態の超微細「クロック」レベルでエンコードされる。
【数1】
通信キュービットの場合、この開示では、138Ba原子イオンの1/2基底状態電子スピンレベル
【数2】
の使用を提案している。138Baシステムは、比較的長い波長の光子輝線(たとえば、493ナノメートル(nm)と650nm)を備えており、フォトニックインタフェースの技術要件を緩和し、369nmでの171Yb共振からの必要な分離を提供する。この開示は、171Ybキュービットの測定されたコヒーレンス時間(約1.5秒)が、蛍光や、ちょうど数ミクロン離れて配置された連続ドップラー冷却138Baキュービットに関連する駆動レーザ光の影響を受けないことを観察することによる、これら2種間の分離の検証について記載する。動的デカップリングパルスを適用すると、10分を超える171Yb超微細キュービットコヒーレンス時間が、近接する138Baイオンを交感神経冷却(sympathetic cooling)に使用する同様の設定で報告されている。
【0013】
171Ybキュービット状態のほぼ完全なシングルショット検出には、標準的なスピン依存蛍光コレクションを使用可能である。138Baイオンキュービットは、そのような孤立したサイクル遷移を欠いているため、138Baキュービット状態を検出するには、多くの同一のものが平均化される。138Baキュービットは171Ybメモリキュービット間のリンクとしてのみ使用されているため、この孤立したサイクル遷移の欠如は、多種ネットワークアーキテクチャでは問題にならない。138Baキュービットがクーロンベースのゲートを介して隣接する171Ybメモリにマッピングされると、量子情報処理は138Ba通信キュービットの状態検出に依存する必要がなくなる。しかしながら、状態測定技術をインプリメントすることは、138Baシステムの較正と診断に依然として有効である
【0014】
フォトニックコミュニケーションキュービットとしての使用に加えて、138Baイオンを171Ybキュービットの交感神経冷却(sympathetic cooling)に使用して、より忠実度の高い量子操作のための低運動フォノン固有状態(low motion phonon eigenstates)での占有を維持することができる。1/21/2遷移の約120MHzの青色に調整された493nmのレーザビームを使用して、電磁誘導透過(EIT)冷却技術をインプリメントすることができる。レーザビームは、青側波帯遷移とキャリア遷移が抑制される一方で、赤側波帯遷移が選択的に励起される狭い原子レーザのドレス状態共振(dressed state resonance)を導入する。この技術を用いて、138Baおよび171Ybの2イオン結晶の動きを、
【数3】
(逆位相モード)および
【数4】
(同相モード)に冷却することが可能であり得る。
【0015】
通信キュービットは、情報をメモリキュービットにすばやく転送でき、そこで保存して後で使用できるため、長いコヒーレンス時間を必要としない場合がある。ただし、磁場感度が約2.8kHz/mGと高いため、Zeeman 138Baキュービットのコヒーレンス時間が短いため、情報転送操作中にエラーが発生する可能性がある。任意波形発生器を使用して、60Hz以上の高調波に磁場を適用し、完全な位相と振幅を制御して、背景磁場を部分的にキャンセルすることが可能である。この手法により、138Baコヒーレンス時間が100マイクロ秒(μs)から約4ミリ秒(ms)に増加する可能性があり、これは、転送操作のゲート時間よりもはるかに長い時間である。
【0016】
フォトニックインタフェースは、138Baキュービットを放出された光子と後選択手順(postselection procedure)でエンタングルすることにより実証可能である。たとえば、約1μsで、キュービットを|↓〉状態に初期化して、確率Pexc≒10%2P1/2|J=1/2、m=+1/2〉レベルに弱く励起することができる。~500kHzの平均実験反復率を達成するために、50回のエンタングルメント試行の後に50μsのドップラー冷却光を当てることができる。励起後、原子はσ+偏光光子を放出する|↓〉状態、またはπ偏光光子を放出する|↑〉状態に減衰します。量子化軸に垂直な光子が収集される。 それゆえ、π光子はこの基準(|V〉)で垂直偏光として登録され、σ+光子は水平偏光(|H〉)として登録される。光子が収集されるとすれば、これは理想的には138Baキュービットと光子偏光キュービットの間のエンタングルされた状態となる|↓〉|V〉+|↑〉|H〉。
【0017】
図2(a)および2(b)は、138Baキュービットと複数の基底での放出された光子偏光との相関を示す。より具体的には、2(a)と2(b)は、複数の基底における原子と光子キュービットの状態間の相関測定を示す。これらの測定から、(事後選択した)エンタングルメントの忠実度を
【数5】
であると推測することができる。エラーは、大きな立体角(10%)、励起ステップでの多光子散乱(例:P_exc/4=2.5%)、不完全な状態の初期化または検出(例えば、1%)による偏光混合に起因する可能性がある。これらの誤差の原因は、量子化軸に沿って光子を収集し、パルスレーザーを使用して原子を高速に励起することで大幅に削減することができる。
【0018】
図2(a)を参照すると、図200は、光電子増倍管(PMT)を使用することにより、光子キュービット状態|V〉(明るい青)または|H〉(暗い赤)を検出することを条件とした|↑〉で138Baキュービットを見つける確率の測定値を示す。半波長板(HWP)はフォトニックキュービットを回転させ、データは0およびπ/4のHWP角度に対応する2つの測定値を示す。
【0019】
図2(B)を参照すると、図250は、HWPをπ/8に固定することによって回転される光子偏光を示し、|H〉→|H〉-|V〉および|V〉→|H〉+|V〉である。後続の光子検出では、原子を重ね合わせ(superposition)(|↑〉+|↓〉)|H〉+(|↑〉-|↓〉)|V〉に投影する。次に、|V〉または|H〉の光子を検出した後、原子の重ね合わせ状態(superposition states)が、π/2または3π/2の位相を有するπ/2回転により|↓〉と|↑〉にコヒーレントに回転し、キュービットと光子の間の高い相関を回復する。
【0020】
上述の態様に加えて、本開示は、量子ネットワークノードにおける2つの種の間の決定論的量子ゲートをさらに記載する。単一のレーザを使用して、両方の原子イオン(例えば、両方の種の原子イオン)でコヒーレントラマン遷移を駆動し、171Yb138Baキュービット間のコヒーレントな情報交換を行うことができる。以下でさらに説明するのは、トラップされたイオンの集団運動とキュービット間の分散型Molmer-Sorensen(MS)量子ゲートに共鳴結合することによるダイレクトCirac-Zoller(CZ)マッピングプロセスである。
【0021】
Nd:YVO4モードロックパルスレーザー(Spectra-Physics Vanguard)を使用して、異なる振動固有モードとキュービット状態の間の遷移を駆動できる非共伝搬ラマンビーム(Raman beams)(たとえば、異なる方向に伝搬するビーム)を導入できます。図3のダイアグラム300に示すように、これらのビームは励起レベルに非共鳴的に結合し、周波数が3倍の355nm出力が171Ybシステムに使用され、同じレーザからの周波数が2倍の532nm出力が138Baシステムに使用される。誘導ラマン遷移は、2つのビーム間のビートノート周波数がキュービット分割に近いときに駆動される。すべての量子化軸に垂直な直線偏光を選択できるため、各種のacスタークシフト(ac Stark shifts)の差を最小限に抑えながら、目的のラマン遷移を駆動することができる。光周波数コムの広い帯域幅は、ラマン回転の171Ybキュービット周波数12.642821GHzに簡単に及ぶ。2つのラマンビームのビートノート周波数を安定させるために、355nmのビームの1つを変調するフィードフォワード技術を使用して、レーザの繰り返し率の変化を補正する。138Baキュービット分割は数メガヘルツしかないため、このキュービットで遷移を駆動するために複数の櫛歯の分離は必要ない場合があり、したがって、532nmビームではビートノートの安定化は必要ない場合がある。
【0022】
図3を参照すると、偏光が示されている状態で、誘導ラマン遷移を駆動するために、138Baおよび171Yb+原子系の両方における1/2および3/2レベルへの532および355nmパルスレーザビームの非共鳴結合が示されている。図3に示す分割は、例示の目的で提供されており、一定の縮尺で示される必要はない。
【0023】
355nmの放射は、名目上は171Ybキュービットにのみ、532nmは138Baキュービットにのみ結合するが、他の原子系への少量のクロストーク結合がある。コムスペクトルや光の偏光に関係なく、強度が等しい場合、171Ybシステムは、532nmの放射からの有効なラビ(Rabi)周波数を、名目上の355nmの放射ラビ周波数の約2.6%であると感じるかもしれない。同様に、138Baシステムは、355nmの放射から約11%のラビ周波数を感じる可能性がある。ただし、必要なレーザ偏光と周波数コムスペクトルは2つの原子キュービット遷移で異なり、これらの態様を使用して、2つのシステム間のクロストークを1%未満に減らすことができる。キュービットラビサイクルごとの自発ラマン散乱率は、両方の原子種で10-5未満であり、単一(2-)キュービットゲートで10-5(10-4)未満の誤差になる。138Baシステムにおける532nmからのまれな自発的散乱は、138Baシステムを3/2レベルを通して、32秒の寿命を持つ準安定5/2状態に光学的にポンピングするように見える。これらのまれなポンプ現象は、たとえば、614nmで5/2から3/2への遷移を、約30ミリ秒でイオンを基底状態に戻すのに十分な強度で励起する拡散1ワットのオレンジ色の発光ダイオード(中心は617nm)でイオンを照射することで克服することができる。
【0024】
以下に詳細に記載する図4(a)のダイアグラム400に示すように、それらの類似の原子質量にもかかわらず、138Baおよび171Ybイオンの結合された対の横運動は、所与のモードについてそれらの振幅において大きな不整合を示し、イオン間のより小さい運動結合をもたらす。この理由により、以下に詳細に記載する、図4図450に示されるように、よりよく整合された軸モードが代わりに使用されてもよい。結晶鎖内のイオンの数が増えると、横モードでの運動固有ベクトルの不一致はそれほど重要ではなくなり、これらのモードを使用して、より高いモード周波数から利益を得ることができる。
【0025】
図4(a)および4(b)は、横方向(図4(a))および軸方向(図4(b))の運動方向について、共捕捉された138Ba171Yb結晶のラマン側波帯振動スペクトルを示す。キュービット状態を変化させる測定された確率は、138Baの場合は、明るい青で、171Ybの場合は、濃い紫でプロットされ、共有運動フォノン状態が保持されるキャリア遷移からの離調の関数としてプロットされる。正(負)の値のピークは、スピン反転がフォノンの加算(減算)を伴う青(赤)サイドバンド遷移に対応する。同相(IP)と逆相(OP)に対応する側波帯は、横方向(x,y)と軸方向(z)の運動方向にラベルが付けられ、理論上の固有ベクトルの振幅が右側に示される。ラベル付けされていないピークは、高次の側波帯、および1つのモードからのフォノンの減算や別のモードでのフォノンの加算など、複数のモードを含む相互作用に対応する。
【0026】
最初に、Cirac-Zoller(CZ)マッピングスキームで集団運動を直接使用することにより、138Baのキュービット状態が171Ybに転送される。以下でより詳細に説明する図5(a)のダイアグラム500に示される手順は、EIT冷却とキャリア遷移を伴う138Baスピン状態の準備から始まる。次に、138Baシステムでの赤側波帯π回転により、情報が共有フォノンモードに転送される。この情報は、171Ybシステムでさらに赤側波帯π回転で171Ybキュービットに転送される。以下に詳細に記載される図5(b)の図550に示されるように、0.75の全体的な状態伝達効率は、主に初期の運動状態の純度によって制限されていた。しかし、CZ法の主な欠点は、通信キュービットとCZマッピング操作の間の位相コヒーレンスの必要性である。通信キュービットはフォトニックチャネルを介して従前のエンタングルメントを有する可能性があるため、CZマッピング方法では、光路を光波長よりもはるかに安定させる必要がある。
【0027】
図5(a)を参照すると、ダイアグラム500は、集団運動を直接使用して138Baの状態を171Ybにマッピングするための上記の実験ステップの詳細を示す。上記のように、手順はEIT冷却(530)で始まり、その後にキュービット状態(QI)が
【数6】
に初期化される(505、535)。初期化の後、時間Tにわたる138Baキュービットの誘導ラマン回転R(T)(510)は、転送される状態を準備する。138Baキュービットの赤側波帯π回転(RSB π)(515)は、この情報を共有フォノンモードに転送し、次に、別の赤側波帯π回転(520)で171Ybキュービットに転送される。最終ステップにおいて、171Ybキュービット状態を測定することができる(525)。
【0028】
図5(b)を参照すると、ダイアグラム550は、約0.75の観察状態転送効率で、138Baキュービット回転時間Tの関数として、
【数7】
171Ybキュービットを見つける確率を表すデータを示す。
【0029】
上記の機能に加えて、上記の制限を緩和するMolmer-Sorensen(MS)転送方法がされる。MS転送スキームでは、エンタングルメントと状態転送の忠実度はラムディッケ制限(Lamb-Dicke limit)に制限するだけでよく、300μsのドップラー冷却とそれに続く500μsのEIT冷却で達成可能である。MSエンタングルゲートは、非共伝搬ラマンビームのペアを使用して対称離調(symmetric detuning)δで軸外相モード(axial out-of-phase mode)を同時に処理することにより、本明細書に記載のシステムで実現することができる。355nmと532nmのパルスペアは異なる経路をたどるので、必ずしも同時に原子に入射するわけではない。重要なことに、これらのペア間の一時的なオーバーラップは、MSの相互作用には必要ない。ラマンビームを使用したスピン依存の力は、各原子に異なる時間に適用可能である。結果は、絡み合った状態の静的な位相であり、光路長または355nmと532nmの駆動フィールドの無線周波数(RFまたはrf)ビートノート(beatnote)位相の差を調整することで制御可能である。これらのスピン依存力は、位相空間で特定の2キュービット状態の運動波パケットを変位させる。ウォルシュ変調を組み込んで、周波数とタイミングのエラーを抑制することができ、ゲート時間T=200μsで離調(detuning)がδ=10kHzになると、動きは元の状態に戻り、通常のMSゲートのように幾何学的位相を取得する。駆動場の光強度は、MS相互作用の後にπ/2の幾何学的位相となるΩ=δ/4ηのキャリアRabi周波数を取得するように調整される。ただし、ηはLamb-Dickeパラメータである。取得した幾何学的位相を監視することにより、正しい光学力の位相を見つける。ショット間の相対光学力位相を維持するために、同じ任意波形発生器を使用して、355nmおよび532nmのレーザビームの音響光学変調器を駆動することができる。図6(a)および6(b)に示されるように、この操作の忠実度は、およそ
【数8】
であり、この低い忠実度は、例えば、軸外相モードの過度の加熱
【数9】
に起因する可能性がある。
【0030】
図6(a)は、エンタングルMSゲートが初期
【数10】
状態に適用された後の171Ybおよび138Baキュービット状態の測定された確率を示す図600を示す。この相互作用は、理想的には最大に絡み合った
【数11】
状態を作成する。駆動場の光学位相は、ゲート位相φでスピンに刻印される。
【0031】
図6(b)は、MS相互作用に続く図650を示し、ここで、π/2回転が両方のキュービットに適用される。138Baπ/2パルスの位相は一定に保たれ、171Ybπ/2回転位相がスキャンされる。データは、最大パリティポイント
【数12】
で測定されたキュービット状態確率を示す。
【0032】
光学フィールドの位相がこの相互作用の後にエンタングルド状態(entangled state)に刻印されていても、相対的なπ位相差を持つ2つの連続したMSゲートを使用して、通信キュービット(たとえば、138Baキュービット)からメモリキュービット(たとえば、171Ybキュービット)に、余分な光学位相を刻印する必要なしに、コヒーレントに転送することができる。したがって、量子ネットワークにおけるリモートとローカルのエンタングルメントオペレーション間の位相コヒーレンスは、追加の単一キュービット操作または特別なビーム形状でMSゲートからの光位相依存性を直接排除する必要なしに確立することができる。
【0033】
この開示で説明される様々な技術および態様に基づいて、フォトニックベル状態分析器を使用して量子ネットワークを多くのノードに拡張し、フォトニック接続を作成することが可能である。多くの相互接続されたノードにスケーリングするために、原子光子(atom-photon)と原子原子のエンタングルメント(atom-atom entanglement)の忠実度と速度を大幅に改善することが可能である。第1に、フォトニックキュービットを偏光ではなく2つの異なる周波数にエンコードすると、リモート通信キュービットの忠実度が大幅に向上することが期待される。第2に、光学素子が組み込まれた製造されたチップトラップを使用すると、ノード間の接続速度が向上することが期待される。さらに、構造の均一性と再現性に起因するイオンの位置安定性、および手動で組み立てられたトラップに匹敵する加熱速度(heating rates)(Sandia National Laboratoriesの
【数13】
高光学的アクセス微細加工イオントラップなど)は、これらの作製されたトラップで、メモリと通信キュービット間のより高い忠実度のモーショナルゲート(motional gates)を可能にする可能性がある。
【0034】
上記の多種イオントラップネットワークに関連する追加の態様を以下に示す。例えば、量子コンピューティング用のモジュラー光学アーキテクチャで使用するための量子ネットワーキングノード(例えば、図1のノード110a、110b、および110c)は、複数のメモリキュービット(例えば、メモリキュービット115)を含むことができ、各メモリキュービットは、171Yb原子イオン、および1つ以上の通信キュービット(例えば、通信キュービット125)上で、各通信キュービットは、138Ba原子イオンに基づく。複数のメモリキュービットおよび1つまたは複数の通信キュービットは、原子イオントラップ(例えば、図8のイオントラップ870を参照)内の格子の一部であり得る。一例では、ラティスは線形ラティスであり得る。
【0035】
そのような量子ネットワーキングノードの一態様では、メモリキュービットの1つの171Yb原子イオンと通信キュービットの1つの138Ba原子イオンの間の局所的な接続は、1つのメモリキュービットの171Yb原子イオン、1つの通信キュービットの138Ba原子イオン、またはその両方に力を加えるように構成された外部レーザ場を介して、それらの集団運動を少なくとも部分的に制御することにより、1つのメモリキュービットと1つの通信キュービットを結合することによって行われる。たとえば、原子イオントラップは単一レーザを受信するように構成でき、単一レーザの第2高調波は、1つの通信キュービットの138Ba原子イオンに力を加える最初の外部レーザ場に対応し、単一レーザの第3高調波は1つのメモリキュービットの171Yb原子イオンに力を加える2番目の外部レーザ場に対応します。さらに、単一レーザの第2高調波は、約532nmの波長の輝線にあり、単一レーザの第3高調波は、約355nmの波長の輝線にある。
【0036】
このような量子ネットワークノードの別の態様では、171Yb原子イオンは、最初の原子種であり、138Ba原子イオンは、2番目の原子種であり、最初の原子種の原子質量と2番目の原子種の原子質量は実質的に 同様に、2つの原子質量の原子質量差は、25%未満である。
【0037】
そのような量子ネットワーキングノードの別の態様では、1つまたは複数の通信キュービットは、複数の通信キュービットを含み、量子ネットワーキングノードは、複数の通信キュービット間で多重化して、複数の通信キュービットからの光子放出の繰り返し試行を可能にするように構成される。さらに、1つまたは複数の通信キュービットは、格子の一端、格子の別の端、または格子の両端に配置された複数の通信キュービットを含む。例えば、図7(a)は、複数の通信キュービット125を有するノード110の例を示す図700、710、および720を示す。ダイアグラム700は、複数の通信キュービット(例えば、通信ビット125)を有するノード110を示し、少なくとも1つの通信キュービットが、格子(メモリキュービット115も含む)の各端に配置される。ダイアグラム710は、(メモリキュービット115も含む)格子の一端に複数の通信キュービット(例えば、通信キュ-ビット125)を有するノード110を示す。ダイアグラム720は、(メモリキュービット115も含む)格子の別の端部に複数の通信キュービット(例えば、通信キュービット125)を有するノード110を示す。
【0038】
そのような量子ネットワーキングノードの別の態様では、1つまたは複数の通信キュービットのいずれか1つの138Ba原子イオンは、蛍光を通して光子を放出するように構成され、放出された光子は138Ba原子イオンとエンタングルされる。一例では、放出された光子のスペクトルの少なくとも一部は、可視スペクトル内にある。放出された光子の輝線は、複数のメモリキュービットの171Yb原子イオンの共鳴から分離することができる。輝線は、約493nmおよび650nmの波長の輝線を含むことができ、171Yb原子イオンの共鳴は、約369nmの波長にある。約493nmおよび650nmの波長の輝線は、138Ba原子イオンの基底レベルの電子ゼーマン(Zeeman)キュービット状態を励起状態に接続する可視光線に対応する。
【0039】
そのような量子ネットワーキングノードの別の態様では、各メモリキュービットは、それぞれの171YB原子イオンの1/2基底状態超微細準位にエンコードされるように構成することができる。それぞれの171Yb原子イオンの超微細状態コヒーレンス時間は、約1.5秒以上である。それぞれの171Yb原子イオンの超微細キュービット状態の分割は、磁場の変動(電子磁気モーメントまたは1.4MHz/ガウスの「ボーアマグネトン(Bohr Magneton)」よりはるかに小さい)に非常に鈍感である。さらに、各メモリキュービットは、原子状態の集団を超微細レベル間で往復させる必要なく、初期化と検出のためにさらに構成することができる。
【0040】
そのような量子ネットワークノードの別の態様では、各通信キュービットは、138Ba原子イオンの1/2基底状態電子スピンレベルを使用するように構成することができる。
【0041】
上述の多種イオントラップネットワークに関連する別の例は、複数の量子ネットワークノード(例えば、図1のノード110a、110b、および110c)を含むことができるモジュラー光学アーキテクチャを有する量子コンピューティングシステムであり得、各量子ネットワークノードは、複数のメモリキュービット(たとえば、メモリキュービット115)を含み、各メモリキュービットは、171Yb原子イオンに基づいており、1つ以上の通信キュービット(たとえば、通信キュービット125)を含み、各通信キュービットは、138Ba原子イオンに基づく。複数のメモリキュービットおよび1つまたは複数の通信キュービットは、原子イオントラップ(例えば、図8のイオントラップ870を参照)の格子の一部であり得る。複数の量子ネットワーキングノードのそれぞれの1つまたは複数の通信キュービットは、格子の一端、格子の別の端、または格子の両端に配置された複数の通信キュービットを含む(例えば、図7(a)を参照)。システムはさらに、複数の量子ネットワーキングノードの各々に結合されたフォトニックエンタングラー(例えば、図1のフォトニックエンタングラー120)を含むことができる。
【0042】
そのような量子コンピューティングシステムの一態様では、複数の量子ネットワーキングノードのそれぞれの各メモリキュービットは、それぞれの171Yb原子イオンの1/2基底状態超微細レベルでエンコードされるように構成される。そのような量子コンピューティングシステムの別の態様では、複数の量子ネットワークノードのそれぞれの各通信キュービットは、138Ba原子イオンの1/2基底状態電子スピンレベルを使用するように構成される。
【0043】
そのような量子コンピューティングシステムの他の態様において、複数の量子ネットワーキングノードの第1の量子ネットワーキングノードの1つまたは複数の通信キュービットの第1の通信キュービットは、複数の量子ネットワーキングノードの第2の量子ネットワーキングノードの1つまたは複数の通信キュービットの1つとエンタングルされる。さらに、第1のキュービットネットワーキングノードの1つまたは複数の通信キュービットの第2の通信キュービットは、複数の量子ネットワーキングノードの第3の量子ネットワーキングノードの1つまたは複数の通信キュービットの1つとエンタングルされる。そのような量子コンピューティングシステムの他の態様において、複数の量子ネットワーキングノードの1つにおける1つまたは複数の通信キュービットの任意の1つの138Ba原子イオンは、蛍光によるフォトンを放出するように構成され、放出されたフォトンは、138Ba原子イオンとエンタングルされる。放出されたフォトンのスペクトルの少なくとも一部は、可視スペクトル内である。さらに、フォトニックエンタングラーは、光通信スペクトルで動作するように構成された光ファイバを介して複数の量子ネットワーキングノードの各々に結合され、量子コンピューティングシステムはさらに、放出されたフォトンの可視スペクトルを光通信スペクトルに変換する波長コンバータを備える。一例において、光通信スペクトルは、約1300-1550nmの波長を含む。フォトンエンタングラーは、光通信スペクトルと互換性のある1つまたは複数の光コンポーネントを含むことができる。例えば、フォトニックエンタングラーは、複数の量子ネットワーキングノードからの任意の2つの量子ネットワーキングノード間のエンタングルメントをイネーブルにするための1つまたは複数の再構成可能な光スイッチを含むことができる。図7(b)および7(c)はそれぞれフォトニックエンタングラーと波長コンバータの例を図示する。例えば、図7(b)のダイアグラム730は、1つまたは複数のコンポーネント735a、・・・、735nを有するフォトニックエンタングラー120を示し、これらのコンポーネントは、上述したように、再構成可能な光スイッチのような光通信スペクトルと互換性のあるコンポーネントを含むことができる。図7(c)のダイアグラム750は、ある形態の情報を運ぶ光および/または光子を可視スペクトルから光通信スペクトルに変換するように構成された波長コンバータ760を示す。
【0044】
メモリキュービット115および通信キュ-ビットの様々な例は、それぞれ171Ybメモリキュービット115および138Ba通信キュービット125に関連して上記で説明されているが、これらの例は、限定ではなく例示の目的で提供されていることを理解されたい。メモリキュービット115および通信キュービット125は、通信キュービット125がメモリキュービット115の機能に影響を与えないように、十分に異なるように選択することができる。これは、(1)異なるイオン種で作成する、(2)十分な違いがある限り、同じ種の異なる同位体で作成する、異なるキュービット基底状態(たとえば、超微細状態と他のタイプの状態)を選択する、または(4)それらの組み合わせからなるメモリキュービット115と通信キュービット125を有することにより達成することができる。
【0045】
例えば、異なるイオン種に関して、Yb/Baを上記のように使用することができるが、Ca/Sr、Be/Mg、またはこれらのいずれかの組み合わせも使用することができる。他は、Cd、Zn、Al等を含むことができる。これらの種に対して異なるアイソトープを使用することができる。例えば、Yb/Baの場合、171Yb、174Yb、176Yb、172Ybのいずれか、および138Ba、137B、133Ba等のいずれかを使用することができる。Ca/Srの場合40Ca、43Ca等のいずれか、および88Sr、87Sr、等のいずれかを使用することができる。Be/Mgの場合、9Beおよび24Mg、25Mg、26Mg等のいずれかを使用することができる。
【0046】
上記の異なるイオン種を使用する場合の各キュービットの選択は、超微細(各イオン種の奇数同位体)、ゼーマン(任意の種)、または光学キュービット(Yb、Ba、Ca、SrおよびMgの場合)であり得る。
【0047】
また、上述したように、同じ種の異なるアイソトープを、メモリキュービット115と通信キュービット125に使用することができる。たとえば、171Yb、174Yb、176Yb、または172Ybなどのうち2つをメモリおよび通信キュービットに使用でき、138ba、137Ba、133Baなどのうち2つをメモリおよび通信キュービットに使用でき、40Ca、43Caのうち2つを、メモリおよび通信キュービットに使用でき、88Sr、87Sr、86Srなどの2つは、メモリおよび通信キュービットに使用でき、または、24Mg、25Mg、26Mgなどの2つは、メモリおよび通信キュービットに使用することができる。
【0048】
さらに、メモリキュービット115と通信キュービット125の異なる組み合わせを用いて異なるノード110を作ることができる。例えば、1つのノード110は、イオン種(例えば、Yb/Ba)の1つのセットを用いて1つのノード110を作ることができ、別のノード110は、イオン種(例えば、Ca/SrまたはBe/Mg)の別のセットを用いて作ることができる。他の例において、1つのノード110は、同じ種(例えば、Ybの異なるアイソトープ)のアイソトープの1つのセっとを用いて作ることができ、他のノード110は、同じ種(例えば、Caの異なるアイソトープ)のアイソトープの他のセットを用いて作ることができる。イオン種の異なるセット、同じ種の同位体の異なるセット、および/またはキュービット基底状態の異なるキュービット選択(例:超微細)で構成されるノードの異なる組み合わせは、図1のダイアグラム100で上述したような多種イオントラップネットワークの一部として使用することができる。
【0049】
図8は、本開示の態様によるQIPシステム800の例を示すブロック図である。QIPシステム800は、量子コンピューティングシステム、量子コンピューティングネットワーク、コンピュータデバイス等と呼ぶことができる。一態様において、QIP800は、図1の他種イオントラップネットワークの一部に対応することができ、あるいは図9のコンピューティングデバイス900の量子コンピュータインプリメンテーションに対応することができる。
【0050】
QIPシステム800は、光コントローラ820によりイオン化されると原子種をトラップするイオントラップ879を有するチャンバ850に原子種を提供するソース860を含むことができる。光コントローラ820内の光源830は、原子種のイオン化、原子イオンの制御(例えば、位相制御)、光コントローラ1020内のイメージングシステム1040内で動作するアルゴリズムを画像処理することによりモニタおよびトラッキングすることができる原子イオンの蛍光に使用することができ、および/または量子ネットワーキングのためのトラップされたイオンノード内の複数の種を用いることに関連して記載したこれらを含む他の態様に使用することができる1つまたは複数のレーザソースを含むことができる。イメージングシステム840は、イオントラップ870に提供されている間(例えば、カウントするため)またはイオントラップ870に提供された後に(例えば、原子イオン状態をモニタリングするために)、原子イオンを監視するための高解像度イメージャ(例えば、CCDカメラ)を含むことができる。一態様では、イメージングシステム840は、光学コントローラ820とは別にインプリメントすることができるが、画像処理アルゴリズムを使用して原子イオンを検出、識別、および標識(label)するための蛍光の使用は、光学コントローラ820と調整する必要がある場合がある。
【0051】
QIPシステム800は、また、上述したインプリメンテーションを使用する量子アルゴリズム(例えば、QFT、量子シミュレーション)を実行するためにQIPの他の部分と動作することができるアルゴリズムコンポーネント810を含むことができる。アルゴリズムコンポーネント810は、量子回路、またはそれらと等価なもののインプリメンテーションをイネーブルにするためにQIPシステム(例えば、光コントローラ1020へ)の種々のコンポーネントへ命令を供給することができる。すなわち、アルゴリズムコンポーネント810は、例えば、イオントラップ870を使用して、異なるコンピューティングプリミティブを物理表現にマッピングすることを可能にすることができる。
【0052】
QIPシステム800は、図1のダイアグラム100の他種イオントラップネットワークに示されたコンポーネント、または構造の1つまたは複数、並びに、図7(a)、7(b)、7(c)に示すいくつかの、またはすべてのコンポーネントをインプリメントすることができる。
【0053】
図9を参照すると、この開示の態様による、例示コンピュータデバイス900が図示される。コンピュータデバイス900は、例えば、単一のコンピューティングデバイス、複数のコンピューティングデバイス、分散コンピューティングシステム、あるいはコンピューティングネットワークの少なくとも一部を表すことができる。コンピュータデバイス900は、量子コンピュータ、古典的コンピュータ、量子および古典的コンピューティング機能の組み合わせとして構成することができる。
【0054】
一例において、コンピュータデバイス900は、ここに記載した特徴の1つまたは複数と関連づけられた処理機能を実行するためのプロセッサ910を含むことができる。プロセッサ910は、プロセッサまたはマルチコアプロセッサの単一のセットまたは複数のセットを含むことができる。さらに、プロセッサ910は、統合処理システムおよび/または分散処理システムとしてインプリメントすることができる。プロセッサ910は、中央処理装置(CPU)、量子処理ユニット(QPU)、グラフィクス処理ユニット(GPU)、またはこれらのタイプのプロセッサの組み合わせを含むことができる。
【0055】
一例において、コンピュータデバイス900は、ここに記載した機能を実行するためにプロセッサにより実行可能な命令を記憶するメモリ920を含むことができる。例えば、1つのインプリメンテーションにおいて、メモリ920は、ここに記載した1つまたは複数の機能または動作を実行するためのコードまたは命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体に対応することができる。一例において、メモリ920は、1つまたは複数のメモリキュービットを含むことができる。
【0056】
さらに、コンピュータデバイス900は、ここに記載したハードウェア、ソフトウェアおよびサービスを利用した1つまたは複数のパーティとの通信の確立と維持を提供する通信コンポーネント930を含むことができる。通信コンポーネント930は、コンピュータデバイス900上のコンポーネント間、並びに、コンピュータデバイス900と、外部デバイス、例えば、通信ネットワーク上のデバイスおよび/またはコンピュータデバイス900にシリアルにまたはローカルに接続されたデバイス間で通信を実行することができる。例えば、通信コンポーネント930は、1つまたは複数のバスを含むことができ、さらに、外部デバイスとインタフェースするように動作可能な、それぞれトランスミッタとレシーバに関連づけられた送信チェーンコンポーネントと受信チェーンコンポーネントを含むことができる。通信コンポーネント930の態様を用いて図1に示す他種イオントラップネットワークをインプリメントすることができる。
【0057】
さらに、コンピュータデバイス900は、データストア940を含むことができ、データストア940がここに記載したインプリメンテーションに関連して採用された命令、データベースおよびプログラムのマスストレージを提供するハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の適切な組み合わせであり得る。例えば、データストア940は、オペレーティングシステム960(例えば、古典的OS、または量子OS)のためのデータリポジトリ(data repository)であり得る。
1つのインプリメンテーションにおいて、データストア940はメモリ920を含むことができる。
【0058】
コンピュータデバイス900は、コンピュータデバイス900のユーザから入力を受信するように動作可能であり、さらに、ユーザに提示するために出力を生成するように動作可能であり、あるいは異なるシステムに(直接または間接)提供するように動作可能なユーザインタフェースコンポーネント950を含むこともできる。ユーザインタフェースコンポーネント950は、これらに限定されないが、キーボード、テンキー、マウス、タッチセンサー式ディスプレイ、デジタイザ、ナビゲーションキー、ファンクションキー、マイク、音声認識コンポーネント、ユーザからの入力を受信することができる任意の他のメカニズム、またはそれらの組み合わせを含むことができる。さらに、ユーザインタフェースコンポーネント950は、これらに限定されないが、ディスプレイ、スピーカ、ハプティックフィードバックメカニズム、プリンタ、出力をユーザに提示することができる任意の他のメカニズム、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0059】
1つのインプリメンテーションにおいて、ユーザインタフェースコンポーネント950は、オペレーティングシステム960の動作に対応するメッセージを送信および/または受信することができる。さらに、プロセッサ910は、オペレーティングシステム960、および/またはアプリケーションまたはプログラムを実行することができ、メモリ920またはデータストア940はそれらを記憶することができる。
【0060】
コンピュータデバイス900がクラウドベースインフラストラクチャソリューションの一部としてインプリメントされると、ユーザインタフェースコンポーネント950を用いて、クラウドベースインフラストラクチャソリューションのユーザが遠隔でコンピュータデバイス900を相互作用することができる。
【0061】
コンピュータデバイス900は、図1のダイアグラム100の他種イオントラップネットワークに示されるコンポーネントまたはストラクチャの1つまたは複数をインプリメントすることができ、並びに図7(a)、7(b)、および7(c)に示されるコンポーネントのいくつかまたはすべてをインプリメントすることができる。例えば、通信コンポーネント930は、ノード110、フォトニックエンタングラー120、および/または波長コンバータ760の1つまたは複数をインプリメントすることができる。
【0062】
この開示は、図示したインプリメンテーションに従って提供されるけれども、当業者は、実施形態に対する変形を認識し、これらの変形がこの開示の範囲内であることを認識するであろう。さらに、多くの変形が添付した請求項の範囲から逸脱することなく当業者により実施することができる。


図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図8
図9