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特許7416433標的指向性親和性ドメインに基づく膜タンパク質を含む細胞外小胞
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】標的指向性親和性ドメインに基づく膜タンパク質を含む細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240110BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 9/00 20060101ALN20240110BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20240110BHJP
   A61K 38/00 20060101ALN20240110BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/88 Z
A61K9/00
A61K31/7088
A61K38/00
A61K48/00
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020555922
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019026751
(87)【国際公開番号】W WO2019199941
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】62/655,521
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】レナード、ジョシュア、エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ストランフォード、デヴィン、エム
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-508691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087087(US,A1)
【文献】国際公開第2015/002956(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0057191(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093433(US,A1)
【文献】国際公開第2017/134100(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的指向性タンパク質を含む細胞外小胞であって、前記標的指向性タンパク質が、
(i)折り畳まれたタンパク質ドメインを含む親和性物質であって、前記親和性物質が前記細胞外小胞の表面で発現され、細胞外小胞の標的細胞への結合を促進する親和性物質と、
(ii)血小板由来増殖因子受容体の膜貫通ドメイン(TMD)であって、前記膜貫通ドメインは、融合タンパク質を細胞外小胞の膜に指向させ、前記親和性物質およびTMDが、直接連結されるか、またはリンカーを介して間接的に連結される、膜貫通ドメイン(TMD)と、を含む融合タンパク質である、細胞外小胞。
【請求項2】
血小板由来増殖因子受容体のTMDが、配列番号40のアミノ酸配列、または配列番号40と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する変異体を含む、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項3】
細胞外小胞がエキソソームまたは微小胞である、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項4】
前記細胞外小胞が、リソソームから形成されるか、原形質膜からの出芽によって形成されるか、または他の細胞膜出芽プロセスによって形成される、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項5】
親和性物質が、抗体の一本鎖可変断片(scFv)、ラクダのナノボディ、フィブロネクチンドメイン由来モノボディ、またはDARPinからなる群から選択される、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項6】
前記融合タンパク質が、構造Nter-V-L-V-L-TMD-CterまたはNter-V-L-V-L-TMD-Cterを有し、NterがN末端であり、Vが抗体の可変軽鎖断片であり、Lがグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される10~50個のアミノ酸の第1のリンカーであり、Vが抗体の可変重鎖断片であり、Lが10~50個のアミノ酸の第2のリンカーであり、TMDが血小板由来増殖因子受容体のTMDであり、CterがC末端である、請求項5に記載の細胞外小胞。
【請求項7】
前記10~50個のアミノ酸の第2のリンカーが、グリシン、セリン、およびトレオニンまたは配列番号41~46から選択される配列から選択される、請求項6に記載の細胞外小胞。
【請求項8】
N末端タンパク質タグ、C末端タンパク質タグ、またはN末端タンパク質タグおよびC末端タンパク質タグの両方をさらに含む、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項9】
前記融合タンパク質が、(iii)操作されたグリコシル化部位をさらに含む、請求項5に記載の細胞外小胞。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、
ter-V-L-V-L-EGS-TMD-(任意選択のRBD)-Cter
ter-V-L-V-EGS-L-TMD-(任意選択のRBD)-Cter
ter-V-L-V-L-EGS-TMD-(任意選択のRBD)-Cter、および
ter-V-L-V-EGS-L-TMD-(任意選択のRBD)-Cter
から選択される構造を有し、NterがN末端であり、Vが抗体の可変軽鎖断片であり、Lがグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される10~50個のアミノ酸の第1のリンカーであり、Vが抗体の可変重鎖断片であり、Lが10~50個のアミノ酸の第2のリンカーであり、EGSが操作されたグリコシル化部位であり、TMDが血小板由来増殖因子受容体のTMDであり、RBDはRNA結合ドメインであり、CterがC末端である、請求項に記載の細胞外小胞。
【請求項11】
前記10~50個のアミノ酸の第2のリンカーが、グリシン、セリン、およびトレオニンまたは配列番号41~46から選択される配列から選択される、請求項10に記載の細胞外小胞。
【請求項12】
前記グリコシル化部位が、配列番号37および配列番号38から選択される配列を含む、請求項に記載の細胞外小胞。
【請求項13】
前記融合タンパク質が、(iv)エキソソーム標的指向性ドメインをさらに含む、請求項5に記載の細胞外小胞。
【請求項14】
前記融合タンパク質が、構造
ter-V-L-V-L-ETD-TMD-(任意選択のRBD)-Cter
ter-V-L-V-L-TMD-ETD-(任意選択のRBD)-Cter
ter-V-L-V-L-ETD-TMD-(任意選択のRBD)-Cter、および
ter-V-L-V-L-TMD-ETD-(任意選択のRBD)-Cter
を有し、NterがN末端であり、Vが抗体の可変軽鎖断片であり、Lがグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される10~50個のアミノ酸の第1のリンカーであり、Vが抗体の可変重鎖断片であり、Lが10~50個のアミノ酸の第2のリンカーであり、TMDが血小板由来増殖因子受容体のTMDであり、ETDがエキソソーム標的指向性ドメインであり、RBDがRNA結合ドメインであり、terがC末端である、請求項13に記載の細胞外小胞。
【請求項15】
前記10~50個のアミノ酸の第2のリンカーが、グリシン、セリン、およびトレオニンまたは配列番号41~46から選択される配列から選択される、請求項14に記載の細胞外小胞。
【請求項16】
前記エキソソーム標的指向性ドメインが、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、および配列番号34、配列番号35、および配列番号36からなる群から選択される配列、または配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、および配列番号34、配列番号35、および配列番号36に対してそれぞれ少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するそれらの変異型を含む、請求項13に記載の細胞外小胞。
【請求項17】
前記細胞外小胞が、小分子の治療薬、治療用RNA、および治療用タンパク質または組み合わせからなる群から選択される治療薬をさらに含む、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項18】
前記細胞外小胞が、カーゴRNAとして治療用RNAをさらに含み、前記融合タンパク質が、前記カーゴRNAのためのRNA結合ドメインをさらに含み、かつ/または前記細胞外小胞が、カーゴタンパク質として治療用タンパク質をさらに含み、前記融合タンパク質が、前記治療用タンパク質上の同族ドメインに結合するドメインをさらに含む、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項19】
前記融合タンパク質が、構造:Nter-V-L-V-TMD-RBD-CterまたはNter-V-L-V-TMD-RBD-Cterを有し、NterがN末端であり、Vが抗体の可変軽鎖断片であり、Lがグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される10~60個のアミノ酸のリンカーであり、Vが抗体の可変重鎖断片であり、TMDが血小板由来増殖因子受容体のTMDであり、RBDが前記カーゴRNAのための前記RNA結合ドメインであり、CterがC末端である、請求項18に記載の細胞外小胞。
【請求項20】
前記カーゴRNAが、融合タンパク質のRNA結合ドメインに結合するRNAモチーフを含み、かつ、miRNA、shRNA、mRNA、ncRNA、sgRNA、またはこれらのRNAのいずれかの組み合わせをさらに含む、ハイブリッドRNAである、請求項18に記載の細胞外小胞。
【請求項21】
前記融合タンパク質をコードするmRNAを真核細胞内で発現させることを含む、請求項1に記載の細胞外小胞の調製方法。
【請求項22】
(a)前記融合タンパク質をコードするmRNAを真核細胞内で発現させることと、(b)前記カーゴRNAを真核細胞内で発現させるか、もしくは前記カーゴRNAで前記真核細胞を形質導入するか、または前記カーゴタンパク質を発現させるか、またはその両方と、を含む、請求項18に記載の細胞外小胞の調製方法。
【請求項23】
(a)前記融合タンパク質を発現させるためのベクターと、(b)前記カーゴRNAまたは前記カーゴタンパク質を発現させるためのベクターと、を含む、請求項18に記載の細胞外小胞を調製するためのキット。
【請求項24】
前記ベクターが別々のベクターである、請求項23に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の支援による研究開発に関する声明
本発明は、政府の支援を受け、National Institutes of Healthによる助成P30AI117943のもと実施された。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月10日に出願された米国仮特許出願第62/655,521号に対する米国特許第119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明の分野は、薬剤を標的細胞に送達するための脂質粒子の使用に関する。特に、本発明の分野は、一本鎖抗体ドメインなどの標的指向性親和性ドメインに基づく膜タンパク質を含有する、分泌細胞外小胞(EV)に関する。分泌細胞外小胞は、治療薬などの薬剤を標的細胞に送達するために利用され得る。
【0004】
分泌細胞外小胞、例えば、エキソソームおよび微小胞は、多くの細胞型によって産生され、ヒト体内の細胞間ならびに他の動物の細胞間でタンパク質、核酸、および他の分子を移動させるナノメートルスケールの脂質小胞である。特に標的化エキソソームには、多種多様な潜在的治療用途があり、既に、神経細胞および腫瘍細胞へのRNA送達に有効であることがマウスにおいて示されている。
【0005】
ここでは、標的指向性親和性ドメインに基づく膜タンパク質を、エキソソームおよび微小胞の表面にそれぞれ、エキソソームおよびミクロソームの形成を介して提示させる方法を記載する。本開示の技術は、抗体または抗体の抗原結合ドメインなどの親和性物質を利用して、標的指向性膜タンパク質のための親和性ドメインを提供する。特に、記載の技術により、EVに局在して外部の親和性ドメインを示す操作されたタンパク質の発現を介した、EV表面での標的指向性タンパク質提示のための堅牢な方法が提供される。開示される標的指向性システムは、インビボでの標的遺伝子療法または標的薬物送達ビヒクルに使用するためのEVを操作するために使用することができる。したがって、開示される技術は、多種多様な細胞型および疾患に適用され得る標的化EVを操作するために使用され得る。
【発明の概要】
【0006】
細胞外小胞を標的細胞、組織、または経路に指向させる操作された標的指向性タンパク質を含む細胞外小胞を開示する。操作された標的指向性タンパク質は、特定の経路を介して標的細胞の表面タンパク質のエンドサイトーシスに指向させることによって、標的細胞に細胞外小胞を指向させ得る。標的指向性タンパク質は融合タンパク質であり、ドメインとして、(i)抗体の一本鎖可変断片(scFv)などの親和性物質であって、scFvが細胞外小胞の表面で発現される親和性物質と、(ii)融合タンパク質を細胞外小胞の膜へと配向する膜貫通ドメインと、が最小限に含まれる。例示的な細胞外小胞には、エキソソームおよび微小胞が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0007】
細胞外小胞の操作された標的指向性タンパク質または「融合タンパク質」には、追加のドメインがさらに含まれ得る。追加のドメインには、例えば、融合タンパク質が細胞内でグリコシル化されることを可能にする操作されたグリコシル化部位が含まれ得る。好ましくは、操作されたグリコシル化部位がグリコシル化される場合、融合タンパク質および/または融合タンパク質の構成要素ドメインが、融合タンパク質の切断および/またはリソソームでの分解から保護される。例えば、操作されたグリコシル化部位がグリコシル化される場合、好ましくは、scFvは、融合タンパク質の残部から切断されることから保護される。
【0008】
融合タンパク質の追加のドメインには、エキソソーム標的指向性ドメインが含まれ得る。好ましくは、エキソソーム標的指向性ドメインは、融合タンパク質をリソソームなどの細胞内小胞に指向させ、そこで、融合タンパク質がリソソームの膜内に組み込まれ、エキソソームなどの細胞外小胞に入って分泌され得る。
【0009】
融合タンパク質の追加のドメインには、微小胞標的指向性ドメインが含まれ得る。好ましくは、微小胞標的指向性ドメインは、融合タンパク質を細胞表面に指向させ、そこで、融合タンパク質が細胞膜内に組み込まれ、微小胞などの細胞外小胞に入って分泌され得る。
【0010】
細胞外小胞は、治療薬などの薬剤をさらに含み得、細胞外小胞は、含まれた薬剤を標的細胞に送達するために利用され得る。細胞外小胞により含まれる薬剤には、カーゴRNAなどの生体分子、および他の小分子の治療用の分子またはタンパク質が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、融合タンパク質は、細胞外小胞が細胞から分泌される前に、融合タンパク質がパッケージングタンパク質として機能してカーゴRNAを細胞外小胞内にパッケージングするよう、カーゴRNA上に存在する1つ以上のRNAモチーフに結合するRNA結合ドメインをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、パッケージングタンパク質は、細胞外小胞搭載タンパク質または「EV搭載タンパク質」と呼ばれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】HIV感染を治癒させるための組み合わせによるsgRNA療法の概要。
図2】組み合わせsgRNAを受けるCas9発現SupT1細胞におけるウイルス複製の抑制。(Wang et al.”A Combinatorial CRISPR-Cas9 Attack on HIV-1 DNA Extinguishes All Infectious Provirus in Infected T Cell Cultures,Cell Reports,Volume 17,Issue 11,p2819-2826,December 13,2016を参照のこと。なお、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
図3】EV産生およびEV媒介性生体分子送達の概要。(Stranford and Leonard,”Delivery of Biomolecules via Extracellular Vesicles:A Budding Therapeutic Strategy,Advances in Genetics,98:155-175,September 11,2017を参照のこと。なお、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。産生:エキソソームは、エンドソーム膜の陥入により形成されて多胞体(MVB)を形成し、MVBと原形質膜との逆融合によりエキソソームが細胞から放出される。微小胞は、原形質膜から直接出芽することによって形成される。どちらの種類の小胞にも、産生細胞由来のRNAおよびタンパク質が組み込まれるが、エキソソームでは、エンドソーム膜タンパク質が豊富になっている。取り込み:EVは、レシピエント細胞による様々なエンドサイトーシス経路によって、または細胞表面での直接融合によって取り込まれ得る。カーゴ送達:レシピエント細胞の細胞質中へのEVカーゴの放出には、エンドソーム区画または原形質膜のいずれかにおけるEVと細胞膜との間の融合を必要とする。融合ができない場合、エンドソーム-リソソーム経路を介してEVおよびそれらのカーゴの分解が生じる。
図4】EVに媒介されるCas9および組み合わせsgRNAのT細胞への送達ならびにCas9に媒介される潜伏感染T細胞でのHIVプロウイルスの切断についての概略図。
図5】潜伏感染T細胞などのCD2担持細胞にEVを指向させる抗CD2 scFvを提示するEVの概略図。
図6】EVを、CD46担持細胞およびシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)担持細胞(SLAM担持)に指向させる、麻疹ウイルス糖タンパク質変異型のHおよびFを提示するEVの概略図。
図7】EVを、活性化T細胞などのリンパ球機能関連抗原1(LFA-1)担持細胞に指向させる細胞間接着分子1(ICAM-1)を提示するEVの概略図。
図8】EVにCas9およびsgRNAを搭載する方法。
図9】抗CD2 scFvのEVへの局在化(N末端検出)。PDGFR膜貫通ドメインに融合させたFLAGタグ付きCD2 scFv、またはEV提示対照としての、PDGFR膜貫通ドメインに融合させたFLAGタグのいずれかをコードする構成体をHEK293FT細胞にトランスフェクトした。細胞溶解物(2μg)またはEV(レーンあたり8.9×10)を搭載し、構成体を抗FLAG抗体によって検出した(FLAGタグは、すべての提示構成体のN末端に位置する)。レーン9およびレーン10の陽性シグナルは、微小胞およびエキソソームの両方についてタンパク質のN末端(EV表面上のscFvドメインが含まれている)が検出されることを示す。
図10】抗CD2 scFvのEVへの局在化(C末端検出)。PDGFR膜貫通ドメインに融合させたFLAGタグ付きCD2 scFv、またはEV提示対照としての、PDGFR膜貫通ドメインに融合させたFLAGタグのいずれかをコードする構成体をHEK293FT細胞にトランスフェクトした。細胞溶解物(2μg)またはEV(レーンあたり8.9×10)を搭載し、構成体を抗HA抗体(C末端に位置するHAタグ)によって検出した。レーン9およびレーン10の陽性シグナルは、微小胞およびエキソソームの両方についてタンパク質のC末端(細胞内HAタグが含まれている)が検出されることを示す。
図11】Cas9搭載EVおよびsgRNA搭載EV、ならびにレシピエントT細胞への機能的送達の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下および本出願を通じて記載される、いくつかの定義を使用して本明細書に記載される。
【0013】
他に指定されるか、または文脈によって指示されない限り、用語「a」、「an」、および「the」は、「1つ以上」を意味する。例えば、「融合タンパク質」、「RNA」、および「ループ」はそれぞれ、「1つ以上の融合タンパク質」、「1つ以上のRNA」、および「1つ以上のループ」を意味すると解釈されるべきである。「操作されたグリコシル化部位」は、「1つ以上の操作されたグリコシル化部位」を意味すると解釈されるべきである。
【0014】
本明細書で使用する場合、「約」、「およそ」、「実質的に」、および「顕著に」は、当業者によって理解され、それらが使用される文脈によってある程度異なる。これらの用語が使用される文脈を考慮して、それらの用語の使用で当業者に明らかではないものがある場合、「約」および「およそ」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%以下を意味し、「実質的に」および「顕著に」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%超を意味する。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「含む(include)」および「含む(including)」は、用語「含む(comprise)」および「含む(comprising)」と同じ意味を有し、これにおいて、これらの後者の用語は、これらの移行用語に続く記述の要素のみに特許請求の範囲を限定しない「オープン」な移行用語である。「からなる」という用語は、「含む(comprising)」という用語に包含されるが、この移行用語に続く記述の要素のみに特許請求の範囲を限定する「クローズド」な移行用語として解釈されるべきである。用語「から本質的になる」は、「含む(comprising)」という用語に包含されるが、この移行用語に続く追加要素を許可する「部分的クローズド」な移行用語として解釈されるべきであるが、ただし、それらの追加要素が特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない場合に限る。
【0016】
細胞外小胞を標的細胞に指向させる標的指向性タンパク質を含む細胞外小胞を開示する。例示的な細胞外小胞にはエキソソームが含まれ得るが、これに限定されない。しかしながら、「細胞外小胞」という用語は、リソソームから形成される分泌小胞または原形質膜からの出芽によってもしくは細胞膜の他の出芽プロセスによって分泌される小胞などの、細胞により分泌される全てのナノメートルスケールの脂質小胞が含まれると解釈されるべきである。
【0017】
開示の細胞外小胞は、「標的指向性タンパク質」を含む。標的タンパク質は、「融合タンパク質」として記載される場合があり、「標的指向性タンパク質」および「融合タンパク質」という用語は、文脈に応じて本明細書において互換的に使用され得る。融合タンパク質には、典型的には、(i)細胞外小胞の表面に発現され、好ましくは細胞外小胞を標的細胞に指向させる、抗体(scFv)の一本鎖可変断片などの親和性物質と、(ii)融合タンパク質を細胞外小胞の膜へと好ましく配向する膜貫通ドメインと、が含まれる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は管腔または細胞外のN末端と細胞質C末端とを有する。
【0018】
「親和性物質」とは、EVが標的細胞と特異的に結合することを促進する部分が含まれることを意味する。好ましい部分は、タンパク質ドメイン(好ましくは折り畳まれたタンパク質ドメイン)であり、折り畳まれていないペプチドではない。親和性物質の実例には、scFv、ラクダのナノボディ、フィブロネクチンドメイン由来モノボディ、およびDARPinsが含まれる(ただし、これらに限定されない)(Koide A,Koide S,2007、Nanobodies:antibody mimics based on the scaffold of the fibronectin type III domain,Methods Mol Biol 352:95-109、Nanobodies:Natural Single-Domain Antibodies,Annual Review of Biochemistry,Vol 82:775-797,2013、Designed Ankyrin Repeat Proteins(DARPins):Binding Proteins for Research,Diagnostic,and Therapy,Ann Rev of Pharm Tox,Vol 55:489-511,2015を参照のこと)。
【0019】
開示の細胞外小胞の融合タンパク質には、典型的には、scFvなどの一本鎖抗体が含まれる。一本鎖抗体は、重鎖可変ドメイン断片と軽鎖可変ドメイン断片(Fv領域)とをアミノ酸リンカーを介して連結し、単一のポリペプチド鎖をもたらすことによって形成され得る。かかる一本鎖Fvまたは「scFv」は、2つの可変ドメインポリペプチド(VおよびV)をコードするDNAの間に、ペプチドリンカーをコードするDNAを融合させることによって調製されている。V断片のカルボキシ末端は、V断片のアミノ末端にリンカーを介してインフレームで融合され得、逆もまた同様であり、V断片のカルボキシ末端は、V断片のアミノ末端にリンカーを介してインフレームで融合され得る。得られたポリペプチドは、2つの可変ドメイン間の可動性リンカーの長さに応じて、自己の折り畳みに戻って抗原結合モノマーを形成することができ、また多量体(例えば、二量体、三量体、または四量体)を形成することもできる(Kortt et al.,1997,Prot.Eng.10:423、Kortt et al.,2001,Biomol.Eng.18:95-108)。リンカーは、通常、10~50個のアミノ酸長であり、可動性のためにグリシンが、また溶解性のためにセリンもしくはトレオニンが豊富であり、VのN末端とVのC末端とを接続するか、またはその逆が可能である。VドメインとVドメインとの間のリンカーは、グリシンおよびセリン(および/またはトレオニン)が豊富であり得るため、VドメインとVドメインとの間のリンカーは、「GS」リンカーと呼ばれる場合がある。好適なGSリンカーには、GLGSGSGGSS(配列番号41)またはGSGSGSGGSS(配列番号42)のような10個のアミノ酸を有するGSリンカー、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)のような15個のアミノ酸を有するGSリンカー、およびSGGGSGGGSGGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGGSGGGSGGG(配列番号44)のような40個のアミノ酸を有するGSリンカーが含まれ得るが、これらに限定されない。VドメインとVドメインとの間のリンカーは、本明細書ではLリンカーと呼ばれる場合があり、これは、以下に考察されるLリンカーとは区別される。
【0020】
異なるVおよびVを組み合わせて連結することによって、ダイアボディ、トリボディ、およびテトラボディなど、異なるエピトープに結合する多量体scFvを形成することができる。(Kriangkum et al.,2001,Biomol.Eng.18:31-40)。一本鎖抗体の産生のために開発された技法には、米国特許第4,946,778号、Bird,1988,Science 242:423、Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879、Ward et al.,1989,Nature 334:544,de Graaf et al.,2002,Methods Mol.Biol.178:379-87に記載されているものが含まれ、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。多量体scFvは、単一特異性(すなわち、単一のエピトープに特異的)または多重特異性(すなわち、2つ以上のエピトープに特異的を有する)であり得る。
【0021】
融合タンパク質の親和性物質、例えば、scFvは、典型的には、標的細胞の表面に存在するエピトープに結合する。融合タンパク質のscFvは、典型的には、融合タンパク質の管腔末端に存在し、任意選択で、融合タンパク質のN末端であり得る。例えば、融合タンパク質は、以下の構造:Nter-シグナルペプチド-scFV-膜貫通ドメイン-Cterを含み得る。
【0022】
開示の細胞外小胞の融合タンパク質には、典型的には、膜貫通ドメインが含まれる。膜貫通ドメインは当該技術分野で既知である。膜貫通ドメイン(TMD)は、主に非極性アミノ酸残基からなっており、二重層を1回(単回通過)または数回通過し得る。TMDは通常、αヘリックスからなる。ペプチド結合は極性であり、カルボニルの酸素原子とアミドの窒素原子との間に形成される、水和され得る内部水素結合を含むことができる。水が本質的に除外される脂質二重層内部では、ペプチドは、それらの内部水素結合を最大化するために、通常、αヘリックス構造を採る。18~21個のアミノ酸残基であるヘリックスの長さは、通常、脂質二層の通常の幅にまたがるのに十分である。細胞質外N末端と細胞質C末端で配向されるTMDはI型TMDとして分類され、細胞質外C末端と細胞質N末端で配向されるTMDはII型TMDとして分類される。開示のe細胞質外のいくつかの実施形態では、それらはI型として分類され、または細胞質の場合はII型として分類される。いくつかの実施形態では、開示の細胞外小胞の融合タンパク質は、18~21個のアミノ酸を含む、1回通過のI型膜貫通ドメインであり、アミノ酸の少なくとも約90%は非極性である。開示の融合タンパク質に好適なTMDには、細胞受容体の膜貫通ドメイン、例えば、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)などが含まれ得、その配列を配列番号40として提供する。TMDは、親和性物質(ascFvなど)に直接連結され得るか、またはTMDは、本明細書においてLと呼ばれるリンカーを介して連結され得る。(すなわち、融合タンパク質が、VとVとの間のリンカー(L)、およびVとTMDとの間のリンカー(L)を含む場合)。Lに好適な連結配列には、グリシン、セリン(および/もしくはトレオニン)から選択される約10~50個のアミノ酸を含むアミノ酸配列(例えば、いわゆるGSリンカー)、または免疫グロブリン中に存在するヘリカルリンカーおよびヒンジリンカーなどの他の連結配列が含まれ得る。好適なGSリンカーには、GLGSGSGGSS(配列番号41)またはGSGSGSGGSS(配列番号42)のような10個のアミノ酸を有するGSリンカー、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)のような15個のアミノ酸を有するGSリンカー、およびSGGGSGGGSGGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGGSGGGSGGG(配列番号44)のような40個のアミノ酸を有するGSリンカーが含まれ得るが、これらに限定されない。好適なヘリカルリンカーには、DQSNSEEAKKEEAKKEEAKKSNS(配列番号45)が含まれ得るが、これに限定されない。好適なヒンジリンカーには、アミノ酸配列ESKYGPPAPPAP(配列番号46)を有するIgG4のヒンジリンカーが含まれ得る。他の好適なリンカーは、制限部位に由来する隣接配列、例えば、ヘリカルリンカー:TGDQSNSEEAKKEEAKKEEAKKSNSID(配列番号47)、IgG4ヒンジリンカー:TGESKYGPPAPPAPID(配列番号48)、40GSリンカー:TGSGGGSGGGSGGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGGSGGGSGGGID(配列番号49)、10GSリンカー:TGGLGSGSGGSSIDまたはTGGSGSGSGGSSID(配列番号50および51)、15GSリンカー:TGGGGGSGGGGSGGGGSID(配列番号52)を有し得る。
【0023】
開示の細胞外小胞の融合タンパク質には、任意選択で、融合タンパク質を検出または単離するために利用することができる操作されたタグが含まれ得る。例えば、融合タンパク質には、そのN末端、C末端、またはその両方において、FLAGエピトープ(配列番号39)などの人工エピトープが含まれ得る。他の好適な操作されたタグには、4~10個のヒスチジン残基を含むヒスチジンタグ、または9個のアミノ酸を含むヘマグルチニン(HA)タグが含まれ得る。
【0024】
開示の細胞外小胞の融合タンパク質には、任意選択で、操作されたグリコシル化部位(EGS)(例えば、融合タンパク質のドメインのアミノ酸配列のいずれでも天然には生じない異種グリコシル化部位)が含まれ得る。融合タンパク質の操作されたグリコシル化部位は、融合タンパク質が細胞内で発現される際に、酵素的N-連結型グリコシル化の標的であるアミノ酸の配列として定義され得る。操作されたグリコシル化部位は、融合タンパク質のscFvに隣接して存在し得る(例えば、Nter-シグナルペプチド-scFv-操作されたグリコシル化部位(EGS)-TMD-Cter)。好ましくは、操作されたグリコシル化部位がグリコシル化される場合、融合タンパク質または融合タンパク質の構成要素ドメインは、融合タンパク質からの切断および/またはリソソームでの分解から保護される。(Hung et al.、およびSchulzを参照のこと)。例えば、融合タンパク質には、融合タンパク質および/もしくは融合タンパク質の構成要素ドメインがタンパク質分解により融合タンパク質から切断されること、または細胞内タンパク質分解などで分解されることから保護もしくは阻害するために、グリコシル化モチーフが含まれ得、かつ/あるいはグリコシル化モチーフが含まれるよう操作され得る。(Kundra et al.を参照のこと)。好適なグリコシル化モチーフには、NX(S/T)コンセンサスシークオン、特にNSTシークオン(配列番号37)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質には、GNSTMシークオン(配列番号38)が含まれ得る。NST配列は、既知のN-結合連結型グリコシル化シークオンであり、シークオンに隣接するアミノ酸Gおよびアミノ酸Mは、哺乳類におけるグリコシル化頻度を増加させ得る。(Bano-Polo et al.を参照のこと)。グリコシル化部位は、典型的には「操作されている」とは、グリコシル化部位が、典型的には、融合タンパク質または融合タンパク質のいずれの構成タンパク質にも天然では存在せず、むしろ、融合タンパク質に、例えば、組換え操作によって導入されることを意味する。
【0025】
開示の細胞外小胞の融合タンパク質には、任意選択で、エキソソーム標的指向性ドメイン(ETD)が含まれ得る。融合タンパク質のエキソソーム標的指向性ドメインには、エキソソーム関連タンパク質および/またはリソソーム関連タンパク質のドメインが含まれ得るが、これらに限定されない。エキソソームタンパク質、RNA、および脂質のデータベースは、ExoCartaによりそのウェブサイトで提供されている。(2011年10月11日にオンラインで公開され、その内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Mathivanan et al.,Nucl.Acids Res.2012,Vol.40,Database issue D1241-1244も参照のこと)。好適なエキソソーム関連タンパク質は、エキソソーム小胞に富むタンパク質または(EEP)としても記載され得る記載されている。(Hung and Leonard,”A platform for actively loading cargo RNA to elucidate limiting steps in EV-mediated delivery,”J.Extracellular Vesicles,2016,5:31027(2016年5月13日発刊)を参照のこと。なお、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、リソソーム関連タンパク質の好適なドメインには、管腔N末端および細胞質C末端を有するリソソーム膜タンパク質由来のドメインが含まれ得るが、異なる配向を有する膜タンパク質も好適であり得る(例えば、管腔C末端および細胞質N末端を有する膜タンパク質)。
【0026】
開示の細胞外小胞の融合タンパク質には、任意選択で、微小胞標的指向性ドメインが含まれ得る。微小胞標的指向性ドメインは、融合タンパク質を細胞表面に指向させ得、そこで、融合タンパク質は細胞膜に組み込まれ、微小胞などの細胞外小胞として分泌され得る。微小胞標的指向性ドメインには、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)が含まれるGタンパク質共役受容体(GCR)のような細胞表面受容体のドメインが含まれる細胞表面タンパク質のドメインが含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で企図される「微小胞標的指向性ドメイン」は、「細胞表面標的指向性ドメイン」である。細胞表面標的指向性ドメインは当該技術分野で既知である。
【0027】
本明細書に開示の融合タンパク質のいくつかの実施形態では、融合タンパク質にはエキソソーム標的指向性ドメインが含まれ、エキソソーム標的指向性ドメインはLAMPのエキソソーム標的指向性ドメインである。好適なLAMPには、LAMP-1およびLAMP-2、ならびにそれらのアイソフォームが含まれ得るが、これらに限定されない。(Fukuda et al.,”Cloning of cDNAs Encoding Human Lysosomal Membrane Glycoproteins,h-lamp-1 and h-lamp-2,”J.Biol.Chem.,Vol.263,No.35 December 1988,pp.18920-18928、およびFukuda,”Lysosomal Membrane Glycoproteins,”J.Biol.Chem.,Vol.266,No.32,November 1991,pp.21327,21330を参照のこと)。LAMPは、管腔(すなわち、細胞質外)N末端および細胞質C末端を有するリソソーム膜タンパク質である。(同文献を参照のこと)。LAMPを発現させるためのmRNAは、アイソフォームを与えるために様々に処理され得る。例えば、LAMP-2a、LAMP-2b、およびLAMP-2cと表わされるLAMP-2には3つのアイソフォームがある。(UniProt Database,entry number P13473-LAMP2_HUMANを参照のこと。なお、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。LAMP-1は単一のアイソフォームを有する。(UniProt Database,entry number P11279-LAMP1_HUMANを参照のこと。なお、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。LAMP-2a、LAMP-2b、およびLAMP-2cの完全長アミノ酸配列はそれぞれ、本明細書では配列番号20、21、および22として提供される。LAMP-1の完全長アミノ酸配列は、本明細書では配列番号26として提供される。本明細書に開示の融合タンパク質には、LAMPの完全長アミノ酸配列、もしくはその変異型であって、野生型LAMPのアミノ酸配列と比較して、あるパーセンテージの配列同一性を有することが本明細書で企図されるような変異型、またはそれらの断片であって、野生型LAMPの一部を含む断片(例えば、LAMP-2a、LAMP-2b、LAMP-2c、およびLAMP-1のC末端の一部を含む、それぞれ、配列番号23、24、25、および27)が含まれ得る。
【0028】
LAMPでは、C末端(例えば、10~11個のC末端アミノ酸を含む)は、LAMPをリソソームに指向させるために重要であることが示されている。(同文献およびFukuda 1991を参照のこと)。開示の細胞外小胞のいくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号23、24、25、および27のうちの1つのC末端に融合されたRNA結合ドメインを含み、それぞれLAMP-2a、LAMP-2b、LAMP-2c、およびLAMP-1のC末端の一部を含む)。融合タンパク質には、LAMPの細胞質ドメインが含まれ得、任意選択で、追加のアミノ酸配列(例えば、膜貫通ドメインの少なくとも一部および/または管腔ドメインの少なくとも一部)が含まれ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、エキソソーム標的指向性ドメインは、LIMPのエキソソーム標的指向性ドメインである。好適なLIMPには、LIMP-1(CD63)およびLAMP-2、ならびにそれらのアイソフォームが含まれ得るが、これらに限定されない。LIMPは、1つ以上の管腔ドメイン、複数の膜貫通ドメイン、および細胞質C末端を有するリソソーム膜タンパク質である。(Ogata et al.,”Lysosomal Targeting of Limp II Membrane Glycoprotein Requires a Novel Leu-Ile Motif at a Particular Position in Its Cytoplasmic Tail,”J.Biol.Chem.,Vol.269,No.7,February 1994,pp.5210-5217を参照のこと)。LIMPを発現させるためのmRNAは、アイソフォームを与えるために様々に処理され得る。例えば、LIMP-1a、LIMP-1b、およびLIMP-1cとして表わされるLIMP-1には3つのアイソフォームがあり、LIMP-2aおよびLIMP-2bとして表わされるLIMP-2には2つのアイソフォームがある。(UniProtデータベース、エントリ番号Q10148-SCRB2_HUMAN、およびUniProtデータベース、エントリ番号P08962-CD63_HUMANを参照のこと。なお、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。LIMP-1a、LIMP-1b、およびLIMP-1cの完全長アミノ酸配列はそれぞれ、本明細書では配列番号28、29、および30として提供される。LIMP-2AおよびLIMP-2bの完全長アミノ酸配列はそれぞれ、本明細書では配列番号32および33として提供される。本明細書に開示の融合タンパク質には、LIMPの完全長アミノ酸配列、もしくはその変異型であって、野生型LIMPのアミノ酸配列と比較して、あるパーセンテージの配列同一性を有することが本明細書で企図されるような変異型、またはそれらの断片であって、野生型LIMPの一部を含む断片(例えば、LIMP-1a、LIMP-1b、LIMP-1C、ならびにLIMP-2aおよびLIMP-2bのC末端の一部を含む配列番号34のC末端の一部を含む配列番号31)が含まれ得る。
【0030】
LIMPでは、C末端(例えば、14~19個のC末端アミノ酸を含む)は、LAMPをリソソームに指向させるために重要であることが示されている。(Ogata et al.を参照のこと)。開示の細胞外小胞のいくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号31および34のいずれか1つのC末端に融合されたRNA結合ドメインを含み、LIMP-1a、LIMP-1b、LIMP-1c、ならびにLIMP-2aおよびLIMP-2bのC末端の一部を含む)。融合タンパク質には、LIMPの細胞質ドメインが含まれ得、任意選択で、追加のアミノ酸配列(例えば、膜貫通ドメインの少なくとも一部および/または管腔ドメインの少なくとも一部)が含まれ得る。
【0031】
本明細書に開示の融合タンパク質のいくつかの実施形態では、エキソソーム標的指向性ドメインは、CD63のエキソソーム標的指向性ドメインまたはそのアイソフォームである。別の方法では、CD63タンパク質は、リソソーム組み込み膜タンパク質1(LIMP-1)、MLA1、リソソーム関連膜タンパク質3、眼黒色腫関連抗原、黒色腫1抗原、黒色腫関連抗原ME491、テトラスパニン-30、グラニュロフィジン(Granulophysin)、およびTspan-30などの別名で言及され得る。CD63のアイソフォームには、CD63アイソフォームA(すなわち、LIMP-1a(配列番号28))、CD63アイソフォームC(すなわち、LIMP-1b(配列番号29))、およびCD63アイソフォームD前駆体(本明細書では配列番号35として提供)が含まれ得る。
【0032】
本明細書に開示の融合タンパク質のいくつかの実施形態では、エキソソーム標的指向性ドメインは、ウイルス膜貫通タンパク質のエキソソーム標的指向性ドメインである。ウイルス膜貫通タンパク質は当該技術分野で既知である。(例えば、Fields Virology,Sixth Edition,2013を参照のこと。また、White et al.,Crit.Rev.Biochem.Mol.Biol.2008;43(3):189-219も参照のこと)。具体的には、エキソソーム標的指向性ドメインは、水疱性口内炎ウイルスのG糖タンパク質(VSV G-タンパク質)のエキソソーム標的指向性ドメインであり得る。VSV G-タンパク質のアミノ酸配列は、本明細書では配列番号36として提供される。
【0033】
開示の細胞外小胞は、治療薬などの薬剤をさらに含み得、細胞外小胞が薬剤を標的細胞に送達する。細胞外小胞により含まれる薬剤には、治療薬物(例えば、小分子薬物)、治療用タンパク質、および治療用核酸(例えば、治療用RNA)が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、開示の細胞外小胞は、治療用RNAを、いわゆる「カーゴRNA」として含む。例えば、いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、細胞外小胞が細胞から分泌される前に、カーゴRNA内に存在する1つ以上のRNAモチーフに結合して、カーゴRNAを細胞外小胞にパッケージングするRNA-ドメイン(例えば、融合タンパク質の細胞質C末端)をさらに含み得る。したがって、融合タンパク質は、「標的指向性タンパク質」としても、また「パッケージングタンパク質」としても機能し得る。いくつかの実施形態では、パッケージングタンパク質は、細胞外小胞搭載タンパク質または「EV搭載タンパク質」とも呼ばれ得る。(Hung and Leonard,”A platform for actively loading cargo RNA to elucidate limiting steps in EV-mediated delivery,”J.Extracellular Vesicles,2016,5:31027(2016年5月13日発刊)を参照のこと。なお、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0034】
要約すると、いくつかの実施形態では、開示の細胞外小胞の融合タンパク質は、Nter-シグナルペプチド-(任意選択のタグ)-V-L-V-(任意選択の1つ以上のEGSおよび/または任意の1つ以上のリンカーLを任意の順序で)-TMD-(任意選択のETD)-(任意選択のRBD)-(任意選択のタグ)-Cter、またはNter-シグナルペプチド-(任意選択のタグ)-V-L-V(任意選択の1つ以上のEGSおよび/または1つ以上のリンカーLを任意の順序で)-TMD-(任意選択のETD)-(任意選択のRBD)-(任意選択のタグ)-Cterとして特徴付けられる構造を有し得、その場合、NterがN末端であり、Vが抗体の可変軽鎖断片であり、Lがグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される約10~50個のアミノ酸のリンカー(例えば配列番号41、42、43、または44)であり、Vが抗体の可変重鎖断片であり、EGSが任意選択で操作されたグリコシル化部位であり、Lが約10~50個のアミノ酸のリンカー(例えば配列番号41、42、43、44、45、または46)であり、TMDが膜貫通ドメインであり、ETDが任意選択のエキソソーム標的指向性ドメインであり、RBDが任意選択のRNA結合ドメインであり、かつ、CterがC末端である。
【0035】
開示の細胞外小胞には、カーゴRNAなどのカーゴ核酸が含まれ得る。細胞外小胞がカーゴRNAを含む実施形態では、融合RNAとして記載され得るカーゴRNAは、(1)融合タンパク質のRNA結合ドメインと結合するRNAモチーフ、および、さらに(2)治療目的に利用される追加の機能性RNA配列(例えば、miRNA、shRNA、mRNA、ncRNA、sgRNA、またはこれらのRNAのいずれかの組み合わせ)を含む。RNAはまた受動的に搭載もされ得る。
【0036】
開示の細胞外小胞のカーゴRNAは、任意の好適な長さのものであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、カーゴRNAは、少なくとも約10nt,20nt,30nt,40nt,50nt,100nt,200nt,500nt,1000nt,2000nt,5000nt、またはそれ以上の長さのヌクレオチド長を有し得る。他の実施形態では、カーゴRNAは、約5000nt,2000nt,1000nt,500nt,200nt,100nt,50nt,40nt,30nt,20nt、または10nt以下のヌクレオチド長を有し得る。よりさらなる実施形態では、カーゴRNAは、これらの企図されるヌクレオチド長のいずれかによって画される範囲内のヌクレオチド長、例えば、約10nt~5000ntの範囲、または他の範囲のヌクレオチド長を有し得る。開示の細胞外小胞のカーゴRNAは、例えば、カーゴRNAがmRNAまたは別の比較的長いRNAを含む、比較的長いものであり得る。
【0037】
本明細書に開示の細胞外小胞の構成要素に好適なRNA結合ドメインおよびRNAモチーフには、バクテリオファージのRNA結合ドメインおよびRNAモチーフが含まれ得るが、これらに限定されない。(例えば、Keryer-Bibens et al.,”Tethering of proteins to RNAs by bacteriophage proteins,”Biol.Cell(2008)100,125-138を参照のこと。なお、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0038】
開示の細胞外小胞のいくつかの実施形態では、融合タンパク質のRNA結合ドメインは、交換可能であると考えられ得るMS2バクテリオファージまたはR17バクテリオファージのコートタンパク質のRNA結合ドメインである。(例えば、Keryer-Bibens et al.、およびStockley et al.,”Probing sequence-specific RNA recognition by the bacteriophage MS2 coat protein,”Nucl.Acids.Res.,1995,Vol.23,No.13,pages 2512-2518を参照のこと。なお、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。MS2バクテリオファージのコートタンパク質の完全長アミノ酸配列は、本明細書では配列番号1として提供される。本明細書に開示の融合タンパク質には、MS2バクテリオファージのコートタンパク質の完全長アミノ酸配列、もしくはその変異型であって、MS2バクテリオファージのコートタンパク質のアミノ酸配列と比較して、あるパーセンテージの配列同一性を有することが本明細書で企図されるような変異型、またはそれらの断片であって、MS2バクテリオファージのコートタンパク質の一部を含む断片(例えば、MS2のRNA結合ドメインまたは配列番号2であって、MS2バクテリオファージのコートタンパク質のアミノ酸配列(2~22個)を含む)が含まれ得る。
【0039】
融合タンパク質がMS2バクテリオファージのコートタンパク質のRNA結合ドメインを含む実施形態では、カーゴRNAは、典型的には、融合タンパク質のRNA結合ドメインに結合する高親和性結合ループを形成し得る、MS2バクテリオファージRNAのRNAモチーフを含む。(Peabody et al.,”The RNA binding site of bacteriophage MS2 coat protein,”The EMBO J.,vol.12,no.2,pp.595-600,1993、Keryer-Bibens et al.、およびStockley et al.を参照のこと。なお、それらの内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。MS2バクテリオファージおよびR17バクテリオファージのRNAモチーフは特徴付けられている。(同文献を参照のこと)。RNAモチーフは、ステムを形成するヌクレオチドの同一性はRNAモチーフに対するコートタンパク質の親和性に影響を及ぼさないように思われるが、ループの配列が4ntの配列(AUUA(配列番号3))を含有し、これがRNAモチーフに対するコートタンパク質の親和性に影響を及ぼす、21ntのステムループ構造を最小限含むことが決定されている。また、ループの上流の対になっていないアデノシンの2個のヌクレオチドも重要である。開示の細胞外小胞のいくつかの実施形態では、RNAモチーフは、
(配列表1)

からなる群から選択される配列および構造を含む1つ以上の野生型および/または高親和性結合ループを含み、
N-Nは、塩基対を形成している任意の2つのRNAヌクレオチドである(例えば、N-Nの各出現は、独立して、A-U、C-G、G-C、G-U、U-A、またはU-Gのいずれかから選択され、N-Nの各出現は、同じであっても異なっていてもよい)。具体的には、高親和性結合ループは、配列番号7(5’-ACAUGAGGAUUACCCAUGU-3’)、配列番号8(5’-ACAUGAGGACUACCCAUGU-3’)、および配列番号9(5’-ACAUGAGGAUCACCCAUGU-3’)からなる群から選択される配列、またはあるパーセンテージの配列同一性を有するその変異型を含み得る。
【0040】
好ましくは、融合タンパク質のRNA結合ドメインは、少なくとも約1×10-8Mの親和性でRNAモチーフに結合する。より好ましくは、融合タンパク質のRNA結合ドメインは、少なくとも約1×10-9Mの親和性で、さらにより好ましくは、少なくとも約1×10-10Mの親和性でRNAモチーフに結合する。
【0041】
融合タンパク質のRNA結合ドメインに結合するためのRNAモチーフに加えて、カーゴRNAには、治療目的に利用される追加の機能性RNA配列(例えば、miRNA、shRNA、mRNA、ncRNA、sgRNA、またはこれらのRNAのいずれかの組み合わせ)が含まれ得る。(Marcus et al.,”FedExosomes:Engineering Therapeutic Biological Nanoparticles that Truly Deliver,”Pharmaceuticals 2013,6,659-680、Gyorgy et al.,Therapeutic application of extracellular vesicles: clinical promise and open questions,”Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.2015;55:439-64,Epub 2014 Oct 3を参照のこと。なお、それらの内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。したがって、カーゴRNAは、融合タンパク質のRNA結合ドメインに結合するためのRNAモチーフが含まれ、かつ、追加のRNA(例えば、5’末端もしくは3’末端、またはRNA内部の内部部分にて融合された、miRNA、shRNA、mRNA、ncRNA、sgRNA、あるいはこれらのRNAのいずれかの組み合わせで)が含まれるハイブリッドRNAとして特徴付けられ得、これは、治療用RNAであり得る。
【0042】
開示の細胞外小胞の他の実施形態では、融合タンパク質のRNA結合ドメインは、ラムダバクテリオファージ、P22バクテリオファージ、およびphi21バクテリオファージが含まれ得るがこれらに限定されないラムダ状バクテリオファージのN-タンパク質のRNA結合ドメインである。(例えば、Keryer-Bibens et al.、Bahadur et al.,”Binding of the Bacteriophage P22 N-peptide to the boxB RNA-motif Studied by Molecule Dynamics Simulations,”Biophysical J.,Vol.,97,December 2009,3139-3149、Cilley et al.,”Structural mimicry in the phage phi21 N peptide-boxB RNA complex,”RNA(2003),9:663-376を参照のこと。なお、それらの内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。ラムダバクテリオファージ、P22バクテリオファージ、およびphi21バクテリオファージのNタンパク質の完全長アミノ酸配列はそれぞれ、本明細書では配列番号10、11、および12として提供される。本明細書に開示の融合タンパク質には、ラムダ状バクテリオファージのNタンパク質の完全長アミノ酸配列、もしくはその変異型であって、ラムダ状バクテリオファージのNタンパク質のアミノ酸配列と比較して、あるパーセンテージの配列同一性を有することが本明細書で企図されるような変異型、またはそれらの断片であって、ラムダ状バクテリオファージのNタンパク質の一部を含む断片(例えば、ラムダバクテリオファージ、P22バクテリオファージ、およびphi21バクテリオファージのいずれかのNタンパク質のRNA結合ドメイン、またはラムダバクテリオファージ、P22バクテリオファージ、およびphi21バクテリオファージのNタンパク質の一部を含む、それぞれ、配列番号13、14、および15)が含まれ得る。
【0043】
融合タンパク質がラムダ状バクテリオファージのコートタンパク質のRNA結合ドメインを含む実施形態では、カーゴRNAは、典型的には、融合タンパク質のRNA結合ドメインに結合する「boxB」と呼ばれる高親和性結合ループを形成し得るラムダバクテリオファージRNAのRNAモチーフを含む。(Keryer-Bibens et al.を参照のこと)。ラムダ状バクテリオファージのBoxBは特徴付けられている。(同文献、Bahadur,et al.、およびCilley et al.を参照のこと)。ラムダバクテリオファージでは、boxBは、ステムおよびループを形成するヌクレオチドの同一性が、RNAモチーフに対するコートタンパク質の親和性に影響を与える、15ntのステムループ構造を最小限含むことが決定されている。(Keryer-Bibens et al.を参照のこと)。開示の細胞外小胞のいくつかの実施形態では、RNAモチーフは、
(配列表2)

からなる群から選択される配列および構造、またはあるパーセンテージの配列同一性を有するその変異型であって、融合タンパク質のRNA結合ドメインに結合する変異型を含む、1つ以上の高親和性結合ループを含む。好ましくは、RNAモチーフは、少なくとも約1×10-8Mの親和性、より好ましくは、少なくとも約1×10-9Mの親和性、さらにより好ましくは、少なくとも約1×10-10Mの親和性で融合タンパク質のRNA結合ドメインに結合する。
【0044】
P22バクテリオファージでは、boxBは、ステムおよびループを形成するヌクレオチドの同一性が、RNAモチーフに対するコートタンパク質の親和性に影響を与える、15ntのステムループ構造を最小限含むことが決定されている。(Bahadur et al.を参照のこと)。開示の細胞外小胞のいくつかの実施形態では、RNAモチーフは、
(配列表3)

の配列および構造を含む1つ以上の高親和性結合ループを含む。
【0045】
Phi21バクテリオファージでは、boxBは、ステムおよびループを形成するヌクレオチドの同一性が、RNAモチーフに対するコートタンパク質の親和性に影響を与える、20ntのステムループ構造を最小限含むことが決定されている。(Cilley et al.を参照のこと)。開示の細胞外小胞のいくつかの実施形態では、RNAモチーフは、
(配列表4)

の配列および構造を含む1つ以上の高親和性結合ループを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、開示の細胞外小胞の融合タンパク質は、Cas9タンパク質のRNA結合ドメインを含む。そのような実施形態では、開示の細胞外小胞は、RNA結合ドメインによって認識、結合され、かつ、細胞外小胞に能動的にパッケージングされる配列を含む、カーゴRNAを含み得る。
【0047】
開示の細胞外小胞は、当該技術分野で既知の方法によって調製され得る。例えば、開示の細胞外小胞は、真核細胞内で(a)パッケージング/融合タンパク質をコードするmRNAを発現させること、および(b)真核細胞内でカーゴRNAもしくはカーゴタンパク質を発現させること(またはインシリコで調製済みのカーゴRNAを用いて真核細胞を形質導入すること)によって調製され得る。パッケージング/融合タンパク質およびカーゴRNAのためのmRNAは、開示の細胞外小胞の産生するための好適な産生細胞にトランスフェクトされるベクターから発現され得る。ベクターはまた、安定してトランスフェクトされ得ることに留意されたい。パッケージング/融合タンパク質およびカーゴRNAのためのmRNAは、同一のベクターから発現され得る(例えば、ベクターが別々のプロモーターからのパッケージング/融合タンパク質およびカーゴRNAのためのmRNAを発現する場合)か、またはパッケージング/融合タンパク質およびカーゴRNAのためのmRNAが別々のベクターから発現され得る。パッケージング/融合タンパク質およびカーゴRNAのためのmRNAを発現させるためのベクター(複数可)は、開示の細胞外小胞を調製するために設計されたキットにパッケージングされ得る。
【0048】
本明細書ではまた、開示の細胞外小胞を使用するための方法も企図される。例えば、開示の細胞外小胞は、カーゴRNAまたはカーゴタンパク質またはカーゴRNA-タンパク質複合体などの治療薬を標的細胞に送達するために使用され得、かかる方法には、標的細胞を開示の細胞外小胞と接触させることが含まれる。開示の細胞外小胞は、疾患または障害を治療するための医薬組成物の一部として製剤化され得、医薬組成物は、疾患または障害を治療するためにカーゴ分子を標的細胞に送達するために、それを必要とする患者に投与され得る。
【0049】
開示の細胞外小胞には、カーゴタンパク質(例えば、治療用タンパク質またはタンパク質/RNAコンプレ)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、(例えば、治療用タンパク質と融合タンパク質との間の相互作用を介して)細胞外小胞に能動的にパッケージングされる。
【0050】
開示の細胞外小胞は、新規のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを含み得る。本明細書で使用する場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用され得る。典型的には、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、長さが、典型的には、50個、60個、70個、80個、90個、または100個のアミノ酸を超える、より長いアミノ酸のポリマーとして定義される。「ペプチド」は、長さが、典型的には、50個、40個、30個、20個以下のアミノ酸の、アミノ酸の短いポリマーとして定義される。
【0051】
本明細書で企図される「タンパク質」は、典型的には、天然または非天然に生じるアミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)のポリマーを含む。本明細書で企図されるタンパク質は、非アミノ酸部分が含まれるようインビトロまたはインビボでさらに修飾され得る。これらの修飾には、アシル化(例えば、O-アシル化(エステル)、N-アシル化(アミド)、S-アシル化(チオエステル))、アセチル化(例えば、タンパク質のN末端またはリジン残基のいずれかにおけるアセチル基の付加)、ホルミル化リポイル化(例えば、リポ酸塩、C8官能基の結合)、ミリストイル化(例えば、ミリスチン酸塩、C14飽和酸の結合)、パルミトイル化(例えば、パルミチン酸塩、C16飽和酸の結合)、アルキル化(例えば、リジン残基またはアルギニン残基におけるメチルなど、アルキル基の付加)、イソプレニル化もしくはプレニル化(例えば、ファルネゾールまたはゲラニノールなど、イソプレノイド基の付加)、C末端でのアミド化、グリコシル化(例えば、アスパラギン、ヒドロキシリジン、セリン、またはトレオニンのいずれかへのグリコシル基の付加で、糖タンパク質を生じさせるもの)が含まれ得るが、これらに限定されない。ポリシアリル化(例えば、ポリシアル酸の付加)、グリピエーション(例えば、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化(例えば、甲状腺ホルモンの)、およびリン酸化(例えば、通常はセリン、チロシン、トレオニン、またはヒスチジンに対する、リン酸基の付加)は、非酵素的な糖の結合と見なされる糖化とは区別される。
【0052】
用語「アミノ酸残基」にはまた、ホモシステイン、2-アミノアジピン酸、N-エチラスパラギン、3-アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、β-アラニン、β-アミノプロピオン酸、アロ-ヒドロキシリジン酸、2-アミノブチル酸、3-ヒドロキシプロリン、4-アミノブチル酸、4-ヒドロキシプロリン、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、イソデスモシン、2-アミノヘプタン酸、アロ-イソロイシン、2-アミノイソブチル酸、N-メチルグリシン、サルコシン、3-アミノイソブチル酸、N-メチルイソロイシン、2-アミノピメリン酸、6-N-メチルリジン、2,4-ジアミノブチル酸、N-メチルバリン、デスモシン、ノルバリン、2,2’-ジアミノピメリン酸、ノルロイシン、2,3-ジアミノプロピオン酸、オルニチン、およびN-エチルグリシンからなる群に含まれるアミノ酸残基が含まれ得る。
【0053】
本明細書に開示のタンパク質には、「野生型」タンパク質ならびにその変異型、変異体、および誘導体が含まれ得る。本明細書で使用する場合、「野生型」という用語は、当業者によって理解される当技術分野の用語であり、変異体または変異型と区別される、それが天然に生じる場合の生物、株、遺伝子、もしくは特徴の典型的な形態を意味する。本明細書で使用する場合、「変異型」、「変異体」、または「誘導体」は、参照のタンパク質またはポリペプチドの分子と異なるアミノ酸配列を有するタンパク質分子を指す。変異型または変異体は、参照分子に対し、アミノ酸残基の1つ以上の挿入、欠失、または置換を有し得る。変異型または変異体には、参照分子の断片が含まれ得る。例えば、変異体または変異型の分子は、参照ポリペプチド(例えば、配列番号1~40のいずれか)に対して少なくとも1つのアミノ酸残基の1つ以上の挿入、欠失、または置換の場合。MS2バクテリオファージの完全長コートタンパク質の配列、ラムダバクテリオファージの完全長Nタンパク質の配列、P22バクテリオファージの完全長Nタンパク質の配列、phi21バクテリオファージの完全長Nタンパク質の配列、完全長LAMP-2aの配列、完全長LAMP-2bの配列、および完全長LAMP-2cの配列はそれぞれ、配列番号1、10、11、12、20、21、および22として提示されており、この点に関して参照として使用され得る。
【0054】
タンパク質に関して、「欠失」は、1つ以上のアミノ酸残基の非存在をもたらす、アミノ酸配列における変化を指す。欠失では、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、10個、20個、50個、100個、もしくは200個のアミノ酸残基、またはこれらの値のいずれかによって画される、アミノ酸残基の範囲が除去される(例えば、5~10個のアミノ酸の欠失)。欠失には、内部欠失または末端欠失(例えば、参照ポリペプチドのN末端切断またはC末端切断)が含まれ得る。参照ポリペプチド配列の「変異型」、「変異体」、または「誘導体」には、参照ポリペプチド配列に対する欠失が含まれ得る。
【0055】
タンパク質に関して、「断片」は、配列が参照配列と同一であるが、長さが参照配列よりも短いアミノ酸配列の一部である。断片は、少なくとも1つのアミノ酸残基を差し引いた、参照配列の全長まで含み得る。例えば、断片は、それぞれ、参照ポリペプチドの5~1000個の連続するアミノ酸残基を含み得る。いくつかの実施形態では、断片は、参照ポリペプチドの少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、250個、もしくは500個の連続するアミノ酸残基を含み得るか、他の実施形態では、断片は、参照ポリペプチドの約5個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、250個、もしくは500個未満の連続するアミノ酸残基を含み得るか、または他の実施形態では、断片は、これらの値のうちのいずれかによって画される範囲(例えば、参照ポリペプチドの50~100個の連続するアミノ酸の範囲)内の長さを有する。断片は、分子の特定の領域から優先的に選択され得る。「少なくとも断片」という用語には、完全長ポリペプチドが包含される。例えば、タンパク質の断片は、配列番号1~40のいずれかの完全長タンパク質のアミノ酸配列の連続部分を含むか、または本質的にそれからなり得る。断片には、完全長タンパク質に対して、N末端切断、C末端切断、または両方の切断が含まれ得る。参照ポリペプチド配列の「変異型」、「変異体」、または「誘導体」には、参照ポリペプチド配列の断片が含まれ得る。
【0056】
タンパク質に関して、「挿入」および「付加」という語は、1つ以上のアミノ酸残基の付加をもたらす、アミノ酸配列の変化を指す。挿入または付加は、1個、2個、3個、4個、5個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、もしくはそれ以上のアミノ酸残基、またはこれらの値のいずれかによって画されるアミノ酸残基の範囲(例えば、5~10個のアミノ酸の挿入または付加)を指し得る。参照ポリペプチド配列の「変異型」、「変異体」、または「誘導体」には、参照ポリペプチド配列に対する挿入または付加が含まれ得る。タンパク質の変異型は、N末端挿入、C末端挿入、内部挿入、またはN末端挿入と、C末端挿入と、内部挿入との任意の組み合わせを有し得る。
【0057】
「融合ポリペプチド」とは、そのアミノ酸配列のN末端、C末端、または両端に異種アミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。参照ポリペプチド配列の「変異型」には、参照ポリペプチドを含む融合ポリペプチドが含まれ得る。
【0058】
タンパク質に関して、語句「同一性パーセント」および「同一性%」は、標準化アルゴリズムを使用して整列させた少なくとも2つのアミノ酸配列間の残基一致のパーセンテージを指す。アミノ酸配列アラインメントの方法は周知である。いくつかのアラインメント方法では、保存的アミノ酸置換が考慮される。そのような保存的置換は、以下により詳細に説明されるが、概して、置換部位において電荷および疎水性を保持し、したがって、ポリペプチドの構造(ひいては機能)を保持する。アミノ酸配列の同一性パーセントは、当該技術分野で理解されるように決定され得る。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,396,664号を参照のこと)。一般的に使用され、自由に入手可能な配列比較アルゴリズムのパッケージ(suite)は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)によって提供されており、これは、NCBI,Bethesda,Md.を含むいくつかの供給源から、そのウェブサイトで入手可能である。BLASTソフトウェアパッケージには、「blastp」を含む様々な配列分析プログラムが含まれており、これは、既知のアミノ酸配列を、様々なデータベースからの他のアミノ酸配列と整列させるために使用される。本明細書に記載されるように、変異型、変異体、または断片(例えば、タンパク質の変異型、変異体、またはその断片)は、参照分子に対して(例えば、配列番号1~40のいずれかに対して)99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、もしくは20%のアミノ酸配列同一性を有し得る。
【0059】
タンパク質に関して、同一性パーセントは、例えば、特定の配列番号によって定義されるように、定義されたポリペプチド配列全体の長さにわたって測定され得るか、またはより短い長さにわたって、例えば、より大きな定義されたポリペプチド配列から取り出された断片、例えば、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも70個、もしくは少なくとも150個の連続する残基の断片の長さにわたって測定され得る。そのような長さは例示的な長さに過ぎず、本明細書内、表、図、または配列表に示される配列によって支持されるいかなる断片長も、同一性パーセンテージが測定され得る長さを記載するために使用され得ることが理解される。
【0060】
タンパク質に関して、本明細書で企図される変異型、変異体、または誘導体のアミノ酸配列には、参照アミノ酸配列に対する保存的アミノ酸置換が含まれ得る。例えば、変異型、変異体、または誘導体タンパク質には、参照分子に対する保存的アミノ酸置換が含まれ得る。「保存的アミノ酸置換」は、置換が参照ポリペプチドの特性を少なくとも干渉すると予測される、異なるアミノ酸に対するアミノ酸の置換である。換言すれば、保存的アミノ酸置換は、参照ポリペプチドの構造および機能を実質的に保存する。以下の表に、本明細書で企図される例示的な保存的アミノ酸置換の一覧を提供する。
【表1】

保存的アミノ酸置換は、概して、(a)例えば、ベータシートもしくはアルファヘリックス立体構造としての、置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)置換部位における分子の電荷もしくは疎水性、および/または(c)側鎖のかさを維持する。
【0061】
開示のタンパク質、変異体、変異型、または本明細書に記載は、参照ポリペプチドによって示される1つ以上の機能的または生物学的活性(例えば、野生型タンパク質によって示される1つ以上の機能的または生物学的活性)を有し得る。例えば、開示のタンパク質、変異体、変異型、またはそれらの誘導体は、一本鎖RNAへの結合、二本鎖RNAへの結合、標的ポリヌクレオチド配列への結合、および小胞(例えば、リソソームまたはエキソソーム)へのタンパク質の指向が含まれる、1つ以上の生物学的活性を有し得る。
【0062】
開示のタンパク質は、実質的に単離または精製され得る。「実質的に単離または精製された」という用語は、それらの天然環境から除去され、それらが天然に会合する他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは、少なくとも75%含まない、より好ましくは、少なくとも90%含まない、さらにより好ましくは、少なくとも95%含まないタンパク質を指す。
【0063】
本明細書ではまた、ポリヌクレオチド、例えば、タンパク質(例えば、配列番号1~40のいずれかのいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは配列番号1~40のいずれかに対する配列同一性が少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるアミノ酸配列を有するポリペプチド変異型をコードするDNA、配列番号1~40のいずれかのいずれかのポリヌクレオチド配列をコードするかまたは配列番号1~40のいずれかのいずれかに対する配列同一性が少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド変異型をコードするDNA,配列番号1~40のいずれかのポリヌクレオチド配列または配列番号1~40のいずれかに対する配列同一性が少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド変異型を含むRNA)をコードするポリヌクレオチド配列を開示する。
【0064】
「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸」、および「核酸配列」という用語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド(これらの用語は互換的に使用され得る)、またはそれらの任意の断片を指す。これらの語句はまた、ゲノム起源、天然起源、または合成起源のDNAもしくはRNA(一本鎖または二本鎖であり得、センス鎖またはアンチセンス鎖を表し得る)を指す。
【0065】
ポリヌクレオチド配列に関して、「同一性パーセント」および「同一性%」という用語は、標準化アルゴリズムを使用して整列された少なくとも2つのポリヌクレオチド配列間の残基一致のパーセンテージを指す。そのようなアルゴリズムでは、2つの配列間のアラインメントを最適化するために、比較される配列中に、標準化された再現可能な方法でギャップが挿入され得るため、2つの配列のより有意義な比較が達成され得る。核酸配列についての同一性パーセントは、当該技術分野において理解されるように決定され得る。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,396,664号を参照のこと)。一般的に使用され、自由に入手可能な配列比較アルゴリズムのパッケージは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)によって提供されており、これは、NCBI,Bethesda,Md.を含むいくつかの供給源から、そのウェブサイトで入手可能である。BLASTソフトウェアパッケージには、「blastn」を含む様々な配列分析プログラムが含まれており、これは、既知のポリヌクレオチド配列を、様々なデータベースからの他のポリヌクレオチド配列と整列させるために使用される。また、2つのヌクレオチド配列の直接的な一対比較に使用される「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールも利用可能である。「BLAST 2 Sequences」は、NCBIウェブサイトでインタラクティブにアクセスし、使用することができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastnとblastpの両方に使用することができる(上述)。
【0066】
ポリヌクレオチド配列に関して、同一性パーセントは、例えば、特定の配列番号によって定義されるように、定義されたポリヌクレオチド配列全体の長さにわたって測定され得るか、またはより短い長さにわたって、例えば、より大きな定義された配列から取り出された断片、例えば、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも70個、少なくとも100個、もしくは少なくとも200個の連続するヌクレオチドの断片の長さにわたって測定され得る。そのような長さは例示的な長さに過ぎず、本明細書内、表、図、または配列表に示される配列によって支持されるいかなる断片長も、同一性パーセンテージが測定され得る長さを記載するために使用され得ることが理解される。
【0067】
ポリヌクレオチド配列に関して、「変異型」、「変異体」、または「誘導体」は、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトで入手可能な「BLAST 2配列」ツールを用いてblastnを使用して、核酸配列のうちの1つの特定の長さにわたって,特定の核酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列として定義され得る。(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden(1999),”Blast 2 sequences-a new tool for comparing protein and nucleotide sequences”,FEMS Microbiol Lett.174:247-250を参照のこと)。そのような一対の核酸は、例えば、特定の定義された長さにわたって少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%、またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0068】
それにもかかわらず、高度の同一性を示さない核酸配列も、複数のコドンが単一のアミノ酸についてコードし得る遺伝暗号の縮重により、類似のアミノ酸配列をコードし得る。核酸配列の変化は、この縮重を使用して、どれもが実質的に同一のタンパク質をコードする複数の核酸配列を産生するよう行うことができることが理解される。例えば、本明細書で企図されるポリヌクレオチド配列は、タンパク質をコードし得、また特定の宿主での発現のためにコドン最適化がされ得る。当該技術分野では、ヒト、マウス、ラット、ブタ、E.coli、植物、および他の宿主細胞を含むいくつかの宿主生物について、コドン使用頻度表が作成されている。
【0069】
「組換え核酸」は、天然には生じないか、または本来は分離されている、配列の2つ以上のセグメントの人工的な組み合わせによって作製される配列を有する配列である。この人工的な組み合わせは、多くの場合、化学合成によって、またはより一般的には、核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって、例えば、当該技術分野で既知の遺伝子操作技法によって達成される。組換えという用語には、核酸の一部の付加、置換、または欠失によってのみ改変された核酸が含まれる。しばしば、組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結された核酸配列が含まれ得る。そのような組換え核酸は、例えば、細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部であり得る。
【0070】
本明細書に開示の核酸は、「実質的に単離または精製され」得る。「実質的に単離または精製された」という用語は、その天然環境から除去され、それが天然に会合する他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは、少なくとも75%含まない、より好ましくは、少なくとも90%含まない、さらにより好ましくは、少なくとも95%含まない核酸を指す。
【0071】
「形質転換」または「トランスフェクトされた」は、外因性核酸(例えば、DNAまたはRNA)がレシピエント細胞に導入されるプロセスを表す。形質転換またはトランスフェクションは、当該技術分野で周知の様々な方法に従って、天然または人工の条件下で生じ得、原核生物または真核生物の宿主細胞への外来核酸配列の挿入のための任意の既知の方法に依存し得る。形質転換またはトランスフェクションのための方法は、形質転換される宿主細胞の種類に基づいて選択され、これには、バクテリオファージまたはウイルス感染または非ウイルス送達が含まれ得るが、これらに限定されない。核酸の非ウイルス送達方法には、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、電気穿孔、ヒートショック、粒子衝撃、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸複合体、裸のDNA、人工ビリオン、および薬剤により増強されたDNAの取り込みなどが含まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、第4,946,787号、および第4,897,355号)に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性および中性の脂質には、Felgner,WO91/17424、WO91/16024のものが含まれる。送達は、細胞(例えば、インビトロまたはエキソビボの投与)または標的組織(例えば、インビボ投与)に対してであり得る。「形質転換細胞」または「トランスフェクトされた細胞」という用語には、挿入されたDNAが自己複製プラスミドとして、もしくは宿主染色体の一部として複製することができる、安定的に形質転換またはトランスフェクトされた細胞、ならびに挿入されたDNAもしくはRNAを限られた期間発現する、一過性に形質転換またはトランスフェクトされた細胞が含まれる。別の実施形態では、かかる用語には、安定してトランスフェクトされた細胞も含まれる。
【0072】
本明細書で企図されるポリヌクレオチド配列は、発現ベクター中に存在し得る。例えば、ベクターは、(a)タンパク質のORFをコードするポリヌクレオチド、(b)RNA媒介性の、標的DNA配列の結合、ニッキング、および/または切断を誘導するRNAを発現するポリヌクレオチド、ならびに(a)および(b)の両方を含み得る。ベクターに存在するポリヌクレオチドは、原核生物または真核生物のプロモーターに機能的に連結され得る。「機能的に連結された」とは、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係に置かれる状況を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターはコード配列に機能的に連結されている。機能的に連結されたDNA配列は、近接していても隣接していてもよく、また2つのタンパク質コード領域を結合することが必要な場合は同じ読み枠内にあってもよい。本明細書で企図されるベクターは、タンパク質をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された異種プロモーター(例えば、真核生物または原核生物のプロモーター)を含み得る。「異種プロモーター」は、発現しているタンパク質またはRNAにとって天然または内因性ではないプロモーターを指す。例えば、LAMPの異種プロモーターには、真核生物のプロモーターまたはLAMPにとって天然の内因性プロモーターではない原核生物のプロモーターが含まれ得る。
【0073】
本明細書で使用する場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドがDNAテンプレートから(例えば、内へおよびmRNAまたは他のRNA転写産物)転写される過程、および/または転写されたmRNAがその後ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳される過程を指す。転写産物およびコードされたポリペプチドは、集合的に「遺伝子産物」と呼ばれ得る。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には、真核細胞におけるmRNAのスプライシングが含まれ得る。
【0074】
「ベクター」という用語は、核酸(例えば、DNA)を宿主生物または宿主組織に導入することができるいくつかの手段を指す。プラスミドベクター、バクテリオファージベクター、コスミドベクター、細菌ベクター、およびウイルスベクターが含まれる、様々な種類のベクターがある。本明細書で使用する場合、「ベクター」は、異種ポリペプチド(例えば、本明細書で開示される融合タンパク質)を発現するよう操作されている組換え核酸を指し得る。組換え核酸には、典型的には、異種ポリペプチドの発現のためのシス作用エレメントが含まれる。
【0075】
真核細胞での発現に使用される従来のベクターのいずも、対象にDNAを直接導入するために使用され得る。真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含有する発現ベクターは、真核生物の発現ベクター(例えば、SV40、CMV、またはレトロウイルスのプロモーターもしくはエンハンサーを含有するベクター)において使用され得る。例示的なベクターには、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、およびラウス肉腫ウイルスプロモーターなどのプロモーターの誘導下でタンパク質を発現するものが含まれる。本明細書で企図される発現ベクターには、異種タンパク質(例えば、本明細書に開示される融合タンパク質)の発現を調節する真核生物または原核生物の制御配列が含まれ得る。原核生物の発現制御配列には、構成的または誘導性のプロモーター(例えば、T3、T7、Lac、trp、またはphoA)、リボソーム結合部位、または転写終結因子が含まれ得る。
【0076】
本明細書で企図されるベクターは、真核細胞に導入されるベクターのコピーを増幅するために使用され得るか、または真核細胞に導入されるベクターの産生における中間ベクターとして使用され得る(例えば、ウイルスベクターパッケージングシステムの一部としてプラスミドを増幅させる)、原核生物中に導入および増殖され得る。原核生物は、宿主細胞または宿主生物に送達するための1つ以上のタンパク質の供給源を提供するように、ベクターのコピーを増幅させ、1つ以上の核酸を発現させるために使用され得る。原核生物におけるタンパク質の発現は、タンパク質、またはタンパク質もしくはその断片を含む融合タンパク質のいずれかの発現を誘導する、構成的もしくは誘導性プロモーターを含有するベクターとともにEscherichia coliを使用して行われ得る。融合ベクターにより、その中でコードされるタンパク質、例えば、組換えタンパク質のアミノ末端に、いくつかのアミノ酸が付加される。そのような融合ベクターは、以下のような1つ以上の目的のために使用され得る:(i)組換えタンパク質の発現を増加させることと、(ii)組換えタンパク質の溶解性を増大させることと、(iii)親和性精製(例えば、Hisタグ)においてリガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製を補助することと、(iv)識別用に組換えタンパク質にタグ(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)または標識された抗体によって認識され得る抗原(例えば、HA)を付けることと、(v)細胞の特定の領域への組換えタンパク質の局在化を促進する(例えば、タンパク質が(そのN末端またはC末端で)核局在化シグナル(NLS)、例えば、SV40、ヌクレオプラスミン、C-myc、hnRNP A1のM9ドメインのNLS、または合成NLSが含まれ得るNLSと融合している場合)こと。NLSにおける中性および酸性のアミノ酸の重要性が研究されている。(Makkerh et al.(1996)Curr Biol 6(8):1025-1027を参照のこと)。多くの場合、融合発現ベクターでは、融合タンパク質の精製後に、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にするために、融合部分と組換えタンパク質の接合部にタンパク質分解部位が導入される。かかる酵素、およびそれらの同族認識配列には、第Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが含まれる。
【0077】
本開示の方法には、宿主細胞に、1つ以上のポリヌクレオチド、例えば、または、本明細書に記載の1つ以上のベクター、その1つ以上の転写産物、および/または1つもしくはそこから転写されたタンパク質などを送達することが含まれ得る。そのような方法によって産生される宿主細胞、およびそのような細胞を含むかまたはそのような細胞から産生される生物(動物、植物、または真菌など)がさらに企図される。開示の細胞外小胞は、本明細書に記載のような融合タンパク質およびカーゴRNAをコードするmRNAを発現するベクターを導入することによって調製され得る。ウイルスまたは非ウイルスによる従来の遺伝子導入方法を使用して、哺乳類細胞または標的組織に核酸を導入することができる。非ウイルスベクター送達系には、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載されるベクターの転写産物)、裸の核酸、およびリポソームなどの送達ビヒクルと複合体化された核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系には、細胞への送達後にエピソームまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有するDNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれる。
【0078】
本明細書で企図される方法では、宿主細胞は、本明細書に記載の1つ以上のベクターで一過性または非一過性にトランスフェクトされ得る(すなわち、安定的に形質導入され得る)。いくつかの実施形態では、細胞は、それが対象において天然に生じるように(すなわち、インサイチュで)トランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、トランスフェクトされる細胞は、対象から採取される(すなわち、外植される)。いくつかの実施形態では、細胞は、対象から採取された細胞、例えば、細胞株に由来する。好適な細胞には、幹細胞(例えば、胚性幹細胞および多能性幹細胞)が含まれ得る。本明細書に記載される1つ以上のベクターでトランスフェクトされた細胞は、1つ以上のベクター由来配列を含む新しい細胞株を樹立するために使用され得る。本明細書で企図される方法では、細胞は、修飾を含有するが、他のいかなる外因性配列も欠く細胞を含む新しい細胞株を樹立するために、本明細書に記載のシステムの構成要素で一過性にトランスフェクトされ(例えば、一過性の、1つ以上のベクターのトランスフェクションまたはRNAによるトランスフェクションによって)、複合体の活性を通じて修飾され得る。
(発明を実施するための形態)
【0079】
以下の実施形態は例示であり、特許請求される発明の範囲を限定することを意図しない。
【0080】
実施形態1.標的指向性タンパク質を含む細胞外小胞であって、標的指向性タンパク質が、(i)抗体(scFv)の一本鎖可変断片であって、scFvが細胞外小胞の表面で発現される、一本鎖可変断片と、(ii)膜貫通ドメイン(TMD)であって、scFvおよびTMDが、リンカーを介して直接連結されるかまたは間接的に連結される、膜貫通ドメインと、を含む融合タンパク質である、細胞外小胞。
【0081】
実施形態2.細胞外小胞が、エキソソームまたは微小胞である、実施形態1に記載の細胞外小胞。
【0082】
実施形態3.融合タンパク質が、構造Nter-V-L-V-L-TMD-CterまたはNter-V-L-V-L-TMD-Cterを有し、NterがN末端であり、Vが抗体の可変軽鎖断片であり、Lがグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される約10~50個のアミノ酸の第1のリンカーであり、Vが抗体の可変重鎖断片であり、Lがグリシン、セリン、およびトレオニンまたは配列番号41~46から選択される配列から任意選択で選択される約10~50個のアミノ酸の第2のリンカーであり、TMDが膜貫通ドメインであり、CterがC末端である、実施形態1または実施形態2に記載の細胞外小胞。
【0083】
実施形態4.N末端タンパク質タグ、C末端タンパク質タグ、またはN末端タンパク質タグとC末端タンパク質タグの両方をさらに含む、実施形態1~3のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0084】
実施形態5.膜貫通が、融合タンパク質を細胞外小胞の膜に指向させる、実施形態1~4のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0085】
実施形態6.膜貫通ドメインが、細胞受容体タンパク質の膜貫通ドメインである、実施形態1~5のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0086】
実施形態7.細胞受容体タンパク質が、血小板由来増殖因子受容体である、実施形態6に記載の細胞外小胞。
【0087】
実施形態8.膜貫通ドメインが、リソソーム関連膜タンパク質の膜貫通ドメインである、実施形態1~7のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0088】
実施形態9.リソソーム膜タンパク質が、管腔N末端および細胞質C末端を含む、実施形態1~8のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0089】
実施形態10.膜貫通ドメインが、LAMP-1またはLAMP-2の膜貫通ドメインを含む、実施形態1~9のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0090】
実施形態11.融合タンパク質が、(iii)操作されたグリコシル化部位をさらに含む、実施形態1~10のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0091】
実施形態12.融合タンパク質が、(i)Nter-V-L-V-L2-EGS-TMD-(任意選択のRBD)-Cter、(ii)Nter-V-L-VHEGS-L2-TMD-(任意選択のRBD)-Cter、(iii)Nter-VHL-V-L2-EGS-TMD-(任意選択のRBD)-Cter、および(iv)Nter-VH-L-V-EGS-L2-TMD-(任意選択のRBD)-Cterから選択される構造を有し、NterがN末端であり、VLが抗体の可変軽鎖断片であり、L1がグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される約10~50アミノ酸の第1のリンカーであり、VHが抗体の可変重鎖断片であり、L2がグリシン、セリン、およびトレオニンまたは配列番号41~46から選択される配列から任意選択で選択される約10~50個のアミノ酸の第2のリンカーであり、EGSが操作されたグリコシル化部位であり、TMDが膜貫通ドメインであり、CterがC末端である、実施形態11に記載の細胞外小胞。
【0092】
実施形態13.グリコシル化部位が、配列番号37および配列番号38から選択される配列を含む、実施形態11または12に記載の細胞外小胞。
【0093】
実施形態14.融合タンパク質が、(iv)エキソソーム標的指向性ドメインをさらに含む、実施形態1~13に記載の細胞外小胞。
【0094】
実施形態15.融合タンパク質が、構造(i)Nter-V-L-VH-L2-ETD-TMD-(任意選択のRBD)-Cter、(ii)Nter-V-L-V-L2-TMD-ETD-(任意選択のRBD)-Cter、(iii)Nter-V-L-V-L2-ETD-TMD-(任意選択のRBD)-Cter、および(iv)Nter-V-L-V-L2-TMD-ETD-(任意選択のRBD)-Cterを有し、NterがN末端であり、Vが抗体の可変軽鎖断片であり、L1がグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される約10~50個のアミノ酸の第1のリンカーであり、VHが抗体の可変重鎖断片であり、L2がグリシン、セリン、およびトレオニンまたは配列番号41~46から選択される配列から任意選択で選択される約10~50個のアミノ酸の第2のリンカーであり、TMDが膜貫通ドメインであり、ETDがエキソソーム標的指向性ドメインであり、CterがC末端である,実施形態14に記載の細胞外小胞。
【0095】
実施形態16.エキソソーム標的指向性ドメインが、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、および配列番号34、配列番号35、および配列番号36からなる群から選択される配列、または配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、および配列番号34、配列番号35、および配列番号36に対してそれぞれ少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するそれらの変異型を含む、実施形態14または15に記載の細胞外小胞。
【0096】
実施形態17.細胞外小胞が、小分子の治療薬、治療用RNA、および治療用タンパク質からなる群から選択される治療薬をさらに含む、実施形態1~16のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0097】
実施形態18.細胞外小胞が、カーゴRNAとして治療用RNAをさらに含み、融合タンパク質が、カーゴRNAのためのRNA結合ドメインをさらに含み、かつ/または細胞外小胞が、カーゴタンパク質として治療用タンパク質をさらに含み、融合タンパク質が、治療用タンパク質上の同族ドメインに結合するドメインをさらに含む、実施形態1~17のいずれかに記載の細胞外小胞。
【0098】
実施形態19.融合タンパク質が、構造Nter-V-L-V-TMD-RBD-CterまたはNNter-V-L1-V-TMD-RBD-Cterを有し、NterがN末端であり、Vが抗体の可変軽鎖断片であり、Lがグリシン、セリン、およびトレオニンから選択される約10~60個のアミノ酸のリンカーであり、Vが抗体の可変重鎖断片であり、TMDが膜貫通ドメインであり、RBDが前記カーゴRNAのためのRNA結合ドメインであり、CterがC末端である、実施形態18に記載の細胞外小胞。
【0099】
実施形態20.カーゴRNAがRNAモチーフを含み、融合タンパク質のRNA結合ドメインがカーゴRNAのRNAモチーフに特異的に結合する、実施形態18に記載の細胞外小胞。
【0100】
実施形態21.RNA結合ドメインがバクテリオファージのRNA結合ドメインであり、RNAモチーフが、バクテリオファージのRNAの1つ以上の高親和性結合ループを含む、実施形態18に記載の細胞外小胞。
【0101】
実施形態22.RNA結合ドメインが、配列番号2を含むMS2バクテリオファージのRNA結合ドメインであるか、または配列番号2と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するその変異型であり、RNAモチーフが、
(配列表5)

からなる群から選択される配列および構造を含む1つ以上の高親和性結合ループを含み、
N-Nが、塩基対を形成している任意の2つのRNAヌクレオチドである、実施形態21に記載の細胞外小胞。
【0102】
実施形態23.高親和性結合ループが、配列番号7、配列番号8、および配列番号9からなる群から選択される配列、または、配列番号7、配列番号8、および配列番号9に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性をそれぞれ有するその変異型を含む、実施形態21に記載の細胞外小胞。
【0103】
実施形態24.RNA結合ドメインが、配列番号13を含むラムダバクテリオファージのNタンパク質のRNA結合ドメインであるか、または、配列番号13と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するその変異型であり、RNAモチーフが、
(配列表6)

からなる群から選択される配列および構造を含む1つ以上の高親和性結合ループを含む、実施形態23に記載の細胞外小胞。
【0104】
実施形態25.RNA結合ドメインは、配列番号14を含むP22バクテリオファージのNタンパク質のRNA結合ドメインであるか、または配列番号14と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するその変異型であり、RNAモチーフは、
(配列表7)
の配列および構造を含む1つ以上の高親和性結合ループを含む、実施形態21に記載の細胞外小胞。
【0105】
実施形態26.RNA結合ドメインが、配列番号15を含むphi22バクテリオファージのNタンパク質のRNA結合ドメインであるか、または配列番号15と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するその変異型であり、RNAモチーフが、
(配列表8)

の配列および構造を含む1つ以上の高親和性結合ループを含む、実施形態25に記載の細胞外小胞。
【0106】
実施形態27.カーゴRNAは、RNAモチーフを含み、かつ、miRNA、shRNA、mRNA、ncRNA、sgRNA、またはこれらのRNAのいずれかの組み合わせをさらに含む、ハイブリッドRNAである、実施形態18に記載の細胞外小胞。
【0107】
実施形態28.実施形態1~27のいずれかに記載の細胞外小胞を調製する方法であって、融合タンパク質をコードするmRNAを真核細胞内で発現させることを含む、方法。
【0108】
実施形態29.実施形態18に記載の細胞外小胞を調製するための方法であって、(a)融合タンパク質をコードするmRNAを真核細胞内で発現させることと、(b)カーゴRNAを真核細胞内で発現させるか、もしくはカーゴRNAで前記真核細胞を形質導入するか、またはカーゴタンパク質を発現させることと、を含む、方法。
【0109】
実施形態30.実施形態18に記載の細胞外小胞を調製するためのキットであって、(a)融合タンパク質を発現させるためのベクターと、(b)カーゴRNAまたはカーゴタンパク質またはRNA/タンパク質複合体を発現させるためのベクターと、を含む、キット。
【0110】
実施形態31.ベクターが別々のベクターである、実施形態30に記載のキット。
【実施例
【0111】
以下の実施例は例示的なものであり、特許請求される主題の範囲を限定することを意図していない。
【0112】
実施例1
Third Coast Center for AIDS Research(CFAR)Symposiumにて2017年10月2日に発表された「HIVプロウイルスDNAを不活性化するための、操作された細胞外小胞に誘導される標的化ヌクレアーゼの送達」(”Engineered extracellular vesicle-mediated delivery of targeted nucleases to inactivate HIV proviral DNA,”)と題されたポスター発表を参照されたい。なお、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0113】
HIVプロウイルスDNAを不活性化するための、操作された細胞外小胞に誘導される標的化ヌクレアーゼの送達
【0114】
緒言
HIV感染を治癒させることへ大きな障害は、細胞における潜伏ウイルスリザーバーの持続である。最近、Cas9およびコンビナトリアルガイドRNAの使用が潜伏プロウイルスを損傷し、ウイルスの脱出を防ぐことが実証されている。このパイロットプロジェクトでは、臨床的に翻訳可能な方法でT細胞にCas9療法を送達するための細胞外小胞の使用を調査する
【0115】
機会
潜伏HIVプロウイルスは、治療の中断または失敗時にウイルス量に寄与し、そのようなリザーバーを排除することは満たされていない臨床的ニーズである。有望な戦略は、HIVゲノムをT細胞に指向させてプロウイルスDNAを損傷させる、Cas9など操作されたヌクレアーゼの使用である。そのように取り組みがなされ、インビトロでのウイルス複製を損なわせるが、このアプローチを翻訳するにはいくつかの課題を克服する必要がある。
【0116】
課題
HIVは、タンパク質コード配列または非必須配列で標的にされたヌクレアーゼからすぐに脱出する。(図1を参照のこと)。しかしながら、最近の報告により、Cas9を用いて特定の対のHIV遺伝子座を同時に標的とすることが、ウイルスの複製および脱出を抑制することが実証された。(Wang et al.”A Combinatorial CRISPR-Cas9 Attack on HIV-1 DNA Extinguishes All Infectious Provirus in Infected T Cell Cultures,Cell Reports,Volume 17,Issue 11,p2819-2826,December 13,2016による図2を参照のこと。なお、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。実際には、ウイルスの除去には、新興ウイルスを抑制するために、多重かつおそらく連続的な標的化ヌクレアーゼ治療を必要とし得る。
【0117】
さらに、ヌクレアーゼをT細胞に送達するための容易に翻訳可能な戦略は特定されておらず、特に、複数の回数/種類の治療が必要なのかは特定されていない。したがって、標的化治療薬をインビボでT細胞に送達するための新たな方法が必要とされている。
【0118】
戦略
EVは、多くの種類の細胞間でRNAおよびタンパク質を移動させるナノスケール粒子である。(図3を参照のこと)。ますます、EVは、それらが、合成送達ビヒクルと比較して良好な安定性、非毒性、および送達を示すことから、実行可能な治療用送達ビヒクルであると考えられている。所望のカーゴを搭載し、特定の細胞を標的とするようにEVを操作する能力により、EVが、T細胞へのヌクレアーゼ送達のための有望なビヒクルとなる。
【0119】
目標
分泌EVに媒介される移動を利用することによって、治療用生体分子をT細胞に送達するための新規の戦略を開発することを目指す。具体的には、EV表面に様々なタンパク質を提示させることによって、EVをT細胞に指向させるための様々な方法を探索し、複数のガイドRNAと組み合わせたCas9タンパク質またはmRNAの搭載および送達を調査する。(図4を参照のこと)。
【0120】
T細胞を標的とするEVを操作する方法
EV産生細胞における目的カーゴの過剰産生は、EVにおける蓄積の増加につながる。プロデューサーHEK293FT細胞を様々なT細胞指向性構成体でトランスフェクトし、そのような構成体を提示するEVを作製する。図5は、抗CD2 scFVを提示するEVを示し、抗CD2 scFVは、HIVに潜伏感染したT細胞などのCD2担持細胞にこれらのEVを指向させる。図6は、麻疹ウイルス糖タンパク質変異型HおよびFを提示するEVを示し、これらの変異型は、CD46担持細胞およびシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)担持細胞にこれらのEVを指向させる。これらのEVを利用して、安静T細胞を形質導入することができる。図7は、細胞間接着分子1(ICAM-1)を提示するEVを示し、細胞間接着分子1は、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)担持細胞にこれらのEVを指向させる。これらのEVを利用して、樹状細胞由来のEVの取り込みを増加させることができる。
【0121】
Cas9およびsgRNAをEVに搭載する方法
産生細胞をCas9およびsgRNAでトランスフェクトし、レシピエント細胞への搭載および機能的送達を調査する。(図8を参照のこと)。Cas9タンパク質またはmRNAとEVに富むタンパク質との間の操作された相互作用は、必要に応じて搭載を増加させるよう探索される。
【0122】
EV上のscFV提示
必要性:T細胞は低エンドサイトーシス率を示すため、レシピエント細胞によるEV取り込みを増加させるための方法が必要である。現在未探索の取り組みの1つは、EVと標的細胞との間の結合を増大させるために、EVの表面にscFvを提示させることである。ここでは、T細胞に特異的に指向させるため、EVへの抗CD2 scFvの提示を調査した。(図9および図10を参照のこと)。
【0123】
抗CD2 scFvと血小板由来増殖因子受容体膜貫通ドメインとの融合により、EVの2つのサブセットである、微小胞(細胞表面から直接出芽)およびエキソソーム(エンドソーム経路を起源とする)へのscFvの局在化がもたらされる。
【0124】
細胞溶解物(2μg)またはEV(レーンあたり8.9×10)を搭載し、構成体を抗FLAG抗体によって検出した。(図9および図10を参照のこと)。完全長scFv構成体の予測:約40kDa。FLAG-GDGFR構成体(約12kDa)は、Ev提示対照としてscFv領域を欠く。ScFvは、複数のEVサブセットに提示され得ることが観察された。
【0125】
進行中の作業の一環として、EV上でscFvの提示を増加させる方法を探索中である。また、Jurkat細胞および初代T細胞へのscFv提示EVの結合および取り込みも調査中である。さらに、麻疹ウイルス糖タンパク質変異型HおよびFをEVの表面に提示させており、EV取り込みに対する影響を調査中である。最後に、Cas9およびsgRNAのEV中への搭載、ならびにレシピエント細胞への機能的送達を評価する予定である。(図11を参照のこと)。
【0126】
上記の説明において、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明に様々な置換および変更が行われ得ることは当業者に容易に明らかとなるであろう。本明細書に例示的に説明されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(複数可)、制限(複数可)の不在下で好適に実施され得る。使用された用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、示されるか記載されている特徴またはその一部のいかなる等価物をも除外する意図はないが、本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、本発明は、特定の実施形態および任意の特徴によって例示されているが、本明細書に開示される概念の変更および/または変形は、当業者によって行われてよく、そのような変更および変形は、本発明の範囲内であると見なされることを理解されるべきである。
【0127】
いくつかの特許および非特許の参考文献への引用が本明細書で行われる。引用される参照文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。引用文献における用語の定義と比較して、本明細書における用語の定義との間に矛盾がある場合、その用語は本明細書における定義に基づいて解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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