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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20240110BHJP
【FI】
H01S5/022
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020563110
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049361
(87)【国際公開番号】W WO2020137682
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018243706
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】宮田 充宜
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211078(JP,A)
【文献】特開2011-238857(JP,A)
【文献】特開2009-260095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁を有する筐体と、
前記筐体の前記側壁を貫通し、前記側壁から前記筐体の外方に突出する突出部を有するフィードスルーと、
前記筐体に搭載された部品と電気的に接続され、前記フィードスルーの前記突出部に設けられた接続端子と、
前記筐体の前記側壁の外壁に設けられ、前記筐体の温度を検知する第1温度検知部と、
一端が前記接続端子に接続され、前記一端から離間した箇所が前記第1温度検知部に接続されたフレキシブル基板と、を具備し、
前記第1温度検知部は、前記外壁と前記フレキシブル基板の間に設けられた光半導体装置。
【請求項2】
前記第1温度検知部は、放熱樹脂を介して外壁に接着されている請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記第1温度検知部の厚さと前記突出部の突出量は等しい、請求項1または2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記筐体の内部に収納される波長可変レーザ素子、および前記可変レーザ素子の温度を検知する第2温度検知部をさらに備え、
前記接続端子は、前記波長可変レーザ素子および前記第2温度検知部と前記フレキシブル基板上の第1配線を介して、前記波長可変レーザ素子へ電気信号を入力している、請求項1から3のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記フレキシブル基板上に設けられ、前記第1温度検知部の電極に接続するパッドを同じ面に有する第2配線は、前記第1配線が設けられている面とは異なる面に設けられている、請求項4に記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光半導体装置に関するものである。本出願は2018年12月26日出願の日本出願第2018-243706号に基づく優先権を主張し、前記に本出願に記載されたすべての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
筐体の内部に半導体レーザ素子などを収納し、筐体に電気信号の入力および出力のための端子を設けた光半導体装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。外部機器との接続にはフレキシブル基板を用いることがある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-244545号公報
【文献】特開2007-123741号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る光半導体装置は、側壁を有する筐体と、前記筐体の前記側壁を貫通し、前記側壁から前記筐体の外方に突出する突出部を有するフィードスルーと、前記筐体に搭載された部品と電気的に接続され、前記フィードスルーの前記突出部に設けられた接続端子と、前記筐体の前記側壁の外壁に設けられ、前記筐体の温度を検知する第1温度検知部と、一端が前記接続端子に接続され、前記一端から離間した箇所が前記第1温度検知部に接続されたフレキシブル基板と、を具備し、前記第1温度検知部は、前記外壁と前記フレキシブル基板の間に設けられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A図1Aは実施例1に係る光半導体装置を例示する平面図である。
図1B図1Bは光半導体装置を例示する断面図である。
図2図2は光半導体装置の正面図である。
図3A図3Aはフレキシブル基板を例示する正面図である。
図3B図3Bはフレキシブル基板を例示する正面図である。
図4A図4Aはフレキシブル基板をリードピンに接続した状態を示す正面図である。
図4B図4Bはフレキシブル基板をリードピンに接続した状態を示す正面図である。
図5図5は波長可変レーザ素子を例示する断面図である。
図6A図6Aは実施例2に係る光半導体装置を例示する断面図である。
図6B図6Bは光半導体装置の正面図である。
図7A図7Aはフレキシブル基板をリードピンに接続した状態を示す正面図である。
図7B図7Bはフレキシブル基板をリードピンに接続した状態を示す正面図である。
図8図8はフレキシブル基板をリードピンに接続した状態を示す正面図である。
【本開示が解決しようとする課題】
【0006】
半導体レーザ素子への電気信号の入力、温度の検知、温度制御など、筐体の内部と外部とでやり取りする情報が増加している。情報に対して端子の数が不足し、例えば筐体の温度を検知するために筐体の内部にサーミスタを設けた構成において、該サーミスタと接続する端子が確保できない場合、筐体の温度の検知などが困難になる。このため情報の増加に対応して端子も増やせばよいが、装置の小型化のためには端子の増設は困難である。そこで、端子数の増加を抑制し、かつ温度の検知が可能な光半導体装置を提供することを目的とする。
【本開示の効果】
【0007】
本開示によれば、端子数の増加を抑制し、かつ温度の検知が可能である。
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の一形態は、(1)側壁を有する筐体と、前記筐体の前記側壁を貫通し、前記側壁から前記筐体の外方に突出する突出部を有するフィードスルーと、前記筐体に搭載された部品と電気的に接続され、前記フィードスルーの前記突出部に設けられた接続端子と、前記筐体の前記側壁の外壁に設けられ、前記筐体の温度を検知する第1温度検知部と、一端が前記接続端子に接続され、前記一端から離間した箇所が前記第1温度検知部に接続されたフレキシブル基板と、を具備し、前記第1温度検知部は、前記外壁と前記フレキシブル基板の間に設けられた光半導体装置である。第1温度検知部は外部接続端子に接続されないため、外部接続端子の数の増加を抑制することができる。また第1温度検知部を筐体の外壁に設けることで温度の検知が可能である。
(2)前記第1温度検知部は、放熱樹脂を介して外壁に接着されてもよい。これにより、第1温度検知部を用いて温度を正確に検知することができる。
(3)前記第1温度検知部の厚さと前記突出部の突出量は等しくてもよい。突出部の周囲の空間にサーミスタを配置することで、空間を効果的に活用し、光半導体装置を小型化することができる。
(4)前記筐体の内部に収納される波長可変レーザ素子、および前記可変レーザ素子の温度を検知する第2温度検知部をさらに備え、前記接続端子は、前記波長可変レーザ素子および前記第2温度検知部と前記フレキシブル基板上の第1配線を介して、前記波長可変レーザ素子へ電気信号を入力してもよい。温度調整素子により筐体内部の温度を調整することができ、かつ接続端子の数の増加を抑制することができる。
(5)前記フレシキブル基板上に設けられ、前記第1温度検知部の電極に接続するパッドを同じ面に有する第2配線は、前記第1配線が設けられている面とは異なる面に設けられてもよい。フレキシブル基板と接続端子および第1温度検知部との接続が可能である。
【0009】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例1】
【0010】
図1(a)は実施例1に係る光半導体装置100を例示する平面図であり、図1(b)は光半導体装置100を例示する断面図である。図1(a)の一点鎖線は波長可変レーザ素子30の出射光の経路を示す。図1(a)においてはサーミスタ40およびフレキシブル基板70は省略している。図1(a)および図1(b)は模式図であり、図中の配線パターン、リードピン24の数は増減してもよい。
【0011】
図1(a)および図1(b)に示すように、光半導体装置100は筐体10、フィードスルー20、波長可変レーザ素子30、サーミスタ40(第1温度検知部)、サーミスタ41(第2温度検知部)、およびフレキシブル基板70を有するTOSA(Transmitter Optical SubAssembly)である。筐体10は、縦が13mm、横が7mm、高さが4mmの直方体のケースである。筐体10の側壁は、例えば鉄・ニッケル・コバルトの合金で形成され、筐体10の底板は例えば、銅・タングステンの合金で形成されている。筐体10の側壁のうち1つには窓18が設けられ、窓18にはレンズが取り付けられている。窓18から外部に光を出射する。筐体10の側壁の別の1つには、電気信号の入力および出力を行うためのフィードスルー20、およびサーミスタ40が設けられている。
【0012】
フィードスルー20は例えば酸化アルミニウム(Al)などのセラミックで形成され、筐体10の内部から外部にわたって設けられている。サーミスタ40は、接着剤などにより、筐体10の外壁10aであってフィードスルー20の下側に取り付けられている。なお、接着剤は、例えば熱伝導性の高い樹脂系の放熱接着剤(例えばエポキシ系樹脂またはシリコーン系樹脂の接着剤)を用いる。この放熱接着剤の熱伝導率は例えば、10W/m・Kである。これにより、筐体10の温度を正確に検知することができる。フィードスルー20とサーミスタ40それぞれの表面は同一平面に位置する。
【0013】
筐体10の内部には温度調整素子12、キャリア14、チップキャリア16、波長可変レーザ素子30、レンズ32、ビームスプリッタ34および36、受光素子37および38が収納され、これらは気密封止される。
【0014】
温度調整素子12はペルチェ素子を含み、TEC(Thermoelectric cooler)として機能する。キャリア14およびチップキャリアは例えばAlなどのセラミックで形成されている。温度調整素子12の上にキャリア14が搭載されている。キャリア14の上にチップキャリア16、レンズ32、ビームスプリッタ34および36、受光素子37および38、エタロン39が搭載されている。チップキャリア16の上に波長可変レーザ素子30が搭載されている。
【0015】
波長可変レーザ素子30は後述するように半導体光素子であり、光を出射する。ビームスプリッタ34および36はそれぞれ、入力された光を2つに分岐する。受光素子37および38は例えばフォトダイオードなどであり、光を受光することで電流を出力する。
【0016】
図1(a)に示すように、キャリア14の上面には例えば2つの配線パターン15が設けられている。チップキャリア16の上面には複数の配線パターン17が設けられている。温度調整素子12の上面には例えば2つの電極13が設けられている。
【0017】
フィードスルー20は例えば酸化アルミニウムを含むセラミックからなり、筐体10の外部に突出する突出部20aが設けられている。フィードスルー20の表面であって筐体10内には複数の配線パターン22が設けられている。フィードスルー20の筐体10の外側に位置する部分にある突出部20aには、筐体10の外側に突出する複数のリードピン24が設けられている。リードピン24と配線パターン22とは筐体10内部の配線により電気的に接続されている。複数のリードピン24は、波長可変レーザ素子30に接続されるもの、温度調整素子12に接続されるもの、受光素子37および38に接続されるものを含む。
【0018】
キャリア14の2つの配線パターン15のうち一方は受光素子37と電気的に接続され、かつボンディングワイヤ25によりフィードスルー20の配線パターン22の1つに接続されている。2つの配線パターン15のうち他方は受光素子38と電気的に接続され、かつボンディングワイヤ25により配線パターン22の別の1つに接続されている。
【0019】
波長可変レーザ素子30はボンディングワイヤ26によりチップキャリア16の配線パターン17に電気的に接続されている。配線パターン17はボンディングワイヤ25を介して配線パターン22にも接続されている。温度調整素子12の電極13はボンディングワイヤ25を介してフィードスルー20の配線パターン22に電気的に接続されている。前述のように配線パターン22はリードピン24と電気的に接続されている。
【0020】
図1(b)に示すように、フレキシブル基板70を筐体10の外壁10aに対向させ、リードピン24およびサーミスタ40に接続する。光半導体装置100はフレキシブル基板70を通じて、制御装置など外部の機器と電気的に接続される。フレキシブル基板70は絶縁体などで形成された、折り曲げ可能なプリント基板である。フレキシブル基板70の面70aが光半導体装置100と対向し、面70aとは反対側に面70bが位置する。
【0021】
なお、サーミスタ40は、フレキシブル基板70と筐体10の外壁10aの間に設けられている。サーミスタ40の厚さは、フレキシブル基板70と筐体10の外壁10aの距離と同じであり、フィードスルー20の突出部20aの突出量とサーミスタ40の厚さと同じである。突出部20a下の空間にサーミスタ40を配置することで、空間を効果的に活用し、光半導体装置100を小型化することができる。突出部20aの突出量およびサーミスタ40の厚さは、例えば、0.5mmである。突出部20aの突出量とサーミスタ40の厚さの公差を考えると、サーミスタ40の厚さをフィードスルー20の突出部20aの突出量より小さくし、サーミスタ40と筐体10の外壁10aとの間に空隙が発生した際には、サーミスタ40と筐体10の外壁10aとの間に放熱性のスペーサを介在し、放熱性の接着剤を用いることで、サーミスタ40と筐体10の外壁10aは熱的に接続することができる。なお、放熱性のスペーサとして厚さの異なるスペーサを準備することで、公差による放熱の影響を抑制することができる。
【0022】
図2は光半導体装置100の正面図であり、フィードスルー20およびサーミスタ40付近を拡大している。図2に示すように、サーミスタ40は表面に例えば2つの電極42を有する。サーミスタ40の縦の長さが0.8mm、横の長さ1.6mmであり、電極42の縦と横の長さはそれぞれ0.6mmである。リードピン24と電極42とは、光半導体装置100の外壁10a側に位置する。
【0023】
図3(a)および図3(b)はフレキシブル基板70を例示する正面図であり、図3(a)は面70aを図示し、図3(b)は面70bを図示する。図3(a)に示すように、面70aには2つのパッド74および2つの配線76(第2配線)が設けられている。2つのパッド74のそれぞれに配線76が接続され、配線76はフレキシブル基板70とともに延伸する。図3(b)に示すように、面70bには複数の配線78(第1配線)が設けられている。面70aから面70bにかけてフレキシブル基板70を貫通する複数のビア72が設けられ、ビア72から配線78が延伸する。配線76および78は不図示の外部機器に接続される。
【0024】
図4(a)および図4(b)はフレキシブル基板70をリードピン24に接続した状態を示す正面図であり、図4(a)は面70a側を図示し、図4(b)は面70b側を図示する。
【0025】
図4(a)に示すように、リードピン24がフレキシブル基板70のビア72に挿入され、ビア72を介して図4(b)の配線78と電気的に接続される。サーミスタ40の電極42のそれぞれは半田によりパッド74と接続される。
【0026】
図5は波長可変レーザ素子30を例示する断面図である。図5に示すように、波長可変レーザ素子30はTDA-DFB(Tunable Distributed Amplified-DFB)領域Aと、CSG-DBR(Chirped Sampled Grating Distributed Bragg Reflector)領域Bと、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)領域Cとを備える。フロント側からリア側にかけて、SOA領域C、TDA-DFB領域A、CSG-DBR領域Bが順に配置されている。
【0027】
TDA-DFB領域Aは、基板50上に、下クラッド層51、活性層52、および上クラッド層54が積層された構造を有する。上クラッド層54上には、コンタクト層55および電極56が積層された領域と、絶縁膜57上にヒータ58aが積層された領域とが、それぞれ複数設けられている。
【0028】
CSG-DBR領域Bは、基板50上に、下クラッド層51、光導波層53、上クラッド層54、絶縁膜57、および複数のヒータ58bが積層された構造を有する。各ヒータ58bには、電源電極59およびグランド電極60が設けられている。SOA領域Cは、基板50上に、下クラッド層51、光増幅層64、上クラッド層54、コンタクト層65、および電極66が積層された構造を有する。
【0029】
TDA-DFB領域A、CSG-DBR領域BおよびSOA領域Cにおいて、基板50、下クラッド層51、および上クラッド層54は、一体的に形成されている。活性層52、光導波層53、および光増幅層64は、同一面上に形成されている。TDA-DFB領域AとCSG-DBR領域Bとの境界は、活性層52と光導波層53との境界と対応している。
【0030】
SOA領域C側における基板50、下クラッド層51、光導波層53および上クラッド層54の端面には、端面膜62が形成されている。本実施例では、端面膜62は無反射(AR:Anti Reflection)膜である。端面膜62は、波長可変レーザ素子30のフロント側端面として機能する。CSG-DBR領域B側における基板50、下クラッド層51、光導波層53、および上クラッド層54の端面には、端面膜63が形成されている。本実施例では、端面膜63はAR膜である。端面膜63は、波長可変レーザ素子30のリア側端面として機能する。
【0031】
基板50は、例えば、n型InPからなる結晶基板である。下クラッド層51はn型、上クラッド層54はp型であり、それぞれ例えばInPによって構成される。下クラッド層51および上クラッド層54は、活性層52、光導波層53、および光増幅層64を上下で光閉込めしている。
【0032】
回折格子(コルゲーション)67は、TDA-DFB領域AおよびCSG-DBR領域Bの下クラッド層51に所定の間隔を空けて複数箇所に形成されている。それにより、TDA-DFB領域AおよびCSG-DBR領域Bにサンプルドグレーティングが形成される。回折格子67は、下クラッド層51とは異なる屈折率の材料で構成されている。下クラッド層51がInPの場合、回折格子の材料として、例えばGa0.22In0.78As0.470.53を用いることができる。
【0033】
活性層52は、利得を有する半導体により構成されている。活性層52は、例えば量子井戸構造を有しており、例えばGa0.32In0.68As0.920.08(厚さ5nm)からなる井戸層と、Ga0.22In0.78As0.470.53(厚さ10nm)からなる障壁層が交互に積層された構造を有する。光導波層53は、例えばバルク半導体層で構成することができ、例えばGa0.22In0.78As0.470.53によって構成することができる。本実施例においては、光導波層53は、活性層52よりも大きいエネルギギャップを有する。
【0034】
光増幅層64は、電極66からの電流注入によって利得が与えられ、それによって光増幅をなす領域である。光増幅層64は、例えば量子井戸構造で構成することができ、例えばGa0.35In0.65As0.990.01(厚さ5nm)の井戸層とGa0.15In0.85As0.320.68(厚さ10nm)の障壁層が交互に積層された構造とすることができる。また、他の構造として、例えばGa0.44In0.56As0.950.05からなるバルク半導体を採用することもできる。なお、光増幅層64と活性層52とを同じ材料で構成することもできる。
【0035】
コンタクト層55および65は、例えばp型Ga0.47In0.53As結晶によって構成することができる。絶縁膜57は、窒化シリコン膜(SiN)または酸化シリコン膜(SiO)からなる保護膜である。ヒータ58aおよび58bは、チタンタングステン(TiW)で構成された薄膜抵抗体である。端面膜62および63は、1.0%以下の反射率を有するAR膜であり、実質的にその端面が無反射となる特性を有する。AR膜は、例えばMgFおよびTiONからなる誘電体膜で構成することができる。
【0036】
電極56および66、電源電極59およびグランド電極60は、金(Au)等の導電性材料からなる。基板50の下部には、裏面電極61が形成されている。裏面電極61は、TDA-DFB領域A、CSG-DBR領域BおよびSOA領域Cにまたがって形成されている。
【0037】
電極56および66、ヒータ58aおよび58bはそれぞれ図1(a)に示すボンディングワイヤ26によりチップキャリア16の配線パターン17に電気的に接続されている。
【0038】
図1(b)、図4(a)および図4(b)に示すように、リードピン24をフレキシブル基板70に接続することで、フレキシブル基板70を介して電気信号の入力および出力が可能である。フレキシブル基板70の配線78、リードピン24、配線パターン22および17、ボンディングワイヤ25および26を通じて、波長可変レーザ素子30の電極56および66、ヒータ58aおよび58bに電力を供給する。これにより波長可変レーザ素子30が駆動し、レーザ光を出射する。
【0039】
図1(a)に一点鎖線で示すように、出射された光はレンズ32を通過し、ビームスプリッタ34で分岐する。分岐した光の一方は窓18から外側に出力される。分岐した光の他方はビームスプリッタ36で分岐し、分岐後の光が受光素子37および38に入力する。
【0040】
受光素子37および38はエタロン39を通過後の光を受光することで電流を出力し、配線パターン15、ボンディングワイヤ25、配線パターン22、およびリードピン24を通じて、受光素子37および38が出力する電流を検出する。電流に基づいて波長可変レーザ素子30の波長制御が可能である。
【0041】
フレキシブル基板70の配線78、リードピン24、配線パターン22および電極13を通じて、温度調整素子12に電力を供給することで、波長可変レーザ素子30の温度を調整し、波長制御を行う。
【0042】
筐体10の温度の検知はサーミスタ40により行う。サーミスタ40は筐体10の表面の温度を検知し、温度に応じた電流を出力する。電極42、パッド74および配線76を通じてサーミスタ40の出力する電流を検知することで、筐体10の表面の温度を検知することができる。
【0043】
実施例1によれば、筐体10の外壁10aにサーミスタ40が設けられ、フレキシブル基板70と電気的に接続される。これにより外部機器による筐体10の温度の検知および波長可変レーザ素子30の温度制御などが可能である。サーミスタ40とフレキシブル基板70との接続は図4(a)に示すように電極42とパッド74とを用いて行い、リードピン24は用いない。すなわちリードピン24はサーミスタ40に接続されるものを含まないため、リードピン24の数の増加を抑制することができる。
【0044】
後述のように、温度調整素子12、受光素子37および38などは筐体10の外に設けることが困難である。一方、サーミスタ40を筐体10の外に設けても、筐体10の温度の検知が可能である。すなわち、サーミスタ40が検知する外壁10aの温度を検知することで筐体10の温度検知ができる。これにより温度の検知とリードピン24の数の増加の抑制が可能である。
【0045】
フィードスルー20は、筐体10の1つの外壁10aから筐体10の外側に突出し、リードピン24はフィードスルー20の表面であって筐体10の外側に設けられている。サーミスタ40は、筐体10の外側に設ければよく、筐体10の外壁10a以外の壁面に設けてもよい。しかし、フレキシブル基板70を長く引き回すことで構成が複雑になる。したがってサーミスタ40は、フィードスルー20と同様に外壁10aに設けることが好ましい。フレキシブル基板70を外壁10aと対向させることで、フレキシブル基板70と、リードピン24およびサーミスタ40とを電気的に接続することができる。このため構成が簡単になる。
【0046】
フレキシブル基板70の面70aにパッド74および配線76が設けられている。面70aを外壁10aに対向させてフレキシブル基板70をリードピン24に接続することで、サーミスタ40の電極42とパッド74および配線76とが接続される。また、面70bの配線78は、ビア72を介してリードピン24に接続される。これによりフレキシブル基板70による光半導体装置100と外部機器との電気的な接続が可能である。
【0047】
図5に示すように、波長可変レーザ素子30は、電極56および66、ヒータ58aおよび58bを有する。複数のリードピン24はこれらと接続されるものを含むため、リードピン24の数が多くなる。しかしリードピン24が増えすぎると、光半導体装置100の小型化が困難となる。実施例1によれば、サーミスタ40を筐体10の外に設けるため、リードピン24はサーミスタ40に接続しない。したがってリードピン24の本数の増加を抑制することができ、光半導体装置100の小型化が可能となる。なお、波長可変レーザ素子30は利得領域としてTDA-DFB領域A以外にSG-DFB領域などを有してもよいし、反射領域としてCSG-DBR領域B以外にSG-DBR領域などを有してもよい。
【0048】
温度調整素子12を筐体10の外に設けると波長可変レーザ素子30の温度制御が困難となるため、温度調整素子12は筐体10内に搭載することが好ましい。この場合、リードピン24の一部は温度調整素子12の電極13と接続される。実施例1によれば、温度調整素子12を筐体10内に収納し、かつサーミスタ40を筐体10の外に設ける。このため、温度調整素子12による温度制御が可能であり、かつリードピン24の本数の増加が抑制される。
【0049】
受光素子37および38は光を受光して電流を出力し、この電流に基づき波長可変レーザ素子30の波長制御を行う。したがって、受光素子37および38は波長可変レーザ素子30などとともに筐体10内に収納することが好ましい。この場合、リードピン24の一部は温度調整素子12の電極13と接続される。実施例1によれば、受光素子37および38を筐体10内に収納し、かつサーミスタ40を筐体10の外に設ける。このため、受光素子37および38を用いた波長制御が可能であり、かつリードピン24の本数の増加が抑制される。
【実施例2】
【0050】
実施例2におけるリードピン24の配置は実施例1とは異なる。図6(a)は実施例2に係る光半導体装置200を例示する断面図である。図6(b)は光半導体装置200の正面図であり、フィードスルー20およびサーミスタ40付近を拡大している。図6(a)および図6(b)に示すように、フィードスルー20の筐体10の外の部分には段差が設けられ、それぞれの段に複数のリードピン24が設けられている。
【0051】
図7(a)および図7(b)はフレキシブル基板70をリードピン24に接続した状態を示す正面図であり、図7(a)は面70a側を図示し、図7(b)は面70b側を図示する。図7(a)および図7(b)に示すように、リードピン24に対応して二列のビア72が設けられている。図7(a)に示すように、サーミスタ40はビア72の下側に位置し、電極42とパッド74とが接続される。図7(b)に示すように面70bには各ビア72に接続された配線78が設けられている。他の構成は実施例1と同じである。
【0052】
実施例2によれば、実施例1と同様に、リードピン24はサーミスタ40に接続されるものを含まないため、リードピン24の数の増加を抑制することができる。また、サーミスタ40により温度の検知が可能である。
【実施例3】
【0053】
図8はフレキシブル基板70をリードピン24に接続した状態を示す正面図であり、面70a側を図示している。図8に示すように、面70aに配線76および78が設けられている。配線78は折り曲げられ、サーミスタ40に重ならない。このため配線78とパッド74および配線78との接続が抑制される。フレキシブル基板70の面70aを筐体10に対向させることで、サーミスタ40の電極42とパッド74とが接続され、リードピン24と配線78とが接続される。他の構成は実施例1または2と同じである。
【0054】
実施例3によれば、実施例1と同様に、リードピン24はサーミスタ40に接続されるものを含まないため、リードピン24の数の増加を抑制することができる。また、サーミスタ40により温度の検知が可能である。
【0055】
実施例1~3のように、リードピン24の配置に応じてビア72の配置を定め、さらに配線76および78のレイアウトも調整する。これによりフレキシブル基板70を介した光半導体装置の制御が可能である。外部接続端子としてはリードピン以外のものでもよい。温度検知部としてはサーミスタ40以外のセンサを用いてもよい。
【0056】
以上、本開示の実施例について詳述したが、本開示は係る特定の実施例に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 筐体
10a 外壁
12 温度調整素子
13、42、56、66 電極
14 キャリア
15、17、22 配線パターン
16 チップキャリア
18 窓
20 フィードスルー
20a 突出部
24 リードピン
25、26 ボンディングワイヤ
30 波長可変レーザ素子
32 レンズ
34、36 ビームスプリッタ
37、38 受光素子
39 エタロン
40、41 サーミスタ
50 基板
51 下クラッド層
52 活性層
53 光導波層
54 上クラッド層
55 コンタクト層
57 絶縁膜
58a、58b ヒータ
59 電源電極
60 グランド電極
61 裏面電極
62、63 端面膜
64 光増幅層
67 回折格子
70 フレキシブル基板
70a、70b 面
72 ビア
74 パッド
76、78 配線
100、200 光半導体装置
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8