(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の抗病原活性
(51)【国際特許分類】
A61K 38/47 20060101AFI20240110BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20240110BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240110BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240110BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240110BHJP
A01N 63/50 20200101ALI20240110BHJP
A01N 63/20 20200101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K38/47 ZNA
A61P31/10
A61K31/19
A61K35/74 F
A61K35/747
A01P3/00
A01N63/50 100
A01N63/20
(21)【出願番号】P 2021521270
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019078581
(87)【国際公開番号】W WO2020079278
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-05-21
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】307020198
【氏名又は名称】ユニバーシタット アントウェルペン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】アロンシウス,カミーユ
(72)【発明者】
【氏名】レベール,サラ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-507070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0076402(US,A1)
【文献】国際公開第2010/083504(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/129347(WO,A1)
【文献】Aleksandrzak-Piekarczyk, T., et al, '2-hydroxy-6-oxo-6-phenylhexa-2,4-dienoate hydrolase [Lacticaseibacillus rhamnosus LOCK900]' DATABASE NCBI Protein [online] accession No.AGP70157, 30-JAN-2014, [retrieved on 2022.06.16], retrieved from the internet: <URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/521374605>,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/521374605
【文献】Scientific Reports, 2019.02, Vol.9, Article No.2900,https://doi.org/10.1038/s41598-019-39625-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 35/00-35/768
A01N 63/00-63/60
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス菌株から得られた二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素を含んでなる、
菌糸形成病原体における
非医療的菌糸形成
低減及び/又は予防
剤であって、前記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、主要分泌タンパク質(Msp1)又はp75であり、前記ラクトバチルス菌株が、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ファーメンタムを含む群から選択される、
非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤。
【請求項2】
前記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が組成物中に存在する、請求項1に記載の
非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤。
【請求項3】
前記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1又は2に記載の
非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤。
【請求項4】
前記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の
非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤。
【請求項5】
前記
菌糸形成病原体が酵母又は細菌から選択され、特に前記
菌糸形成病原体が酵母であり、より詳しくは該
菌糸形成病原体がカンジダ、アスペルギルス又はフザリウムから選択され、更により詳しくは前記
菌糸形成病原体がカンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス又はカンジダ・デュブリニエンシスから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の
非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤。
【請求項6】
前記組成物が乳酸を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の
非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤。
【請求項7】
前記組成物がラクトバチルス菌株、特にラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ又はラクトバチルス・ファーメンタムを含む群から選択されるラクトバチルス菌株を更に含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の
非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤。
【請求項8】
前記非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤が、抗真菌剤
である、請求項1~7のいずれか一項に記載の
非医療的菌糸形成低減及び/又は予防剤。
【請求項9】
ラクトバチルス菌株から得られた二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素を含んでなる、
菌糸形成病原体感染症治療及び/又は予防剤であって、前記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、主要分泌タンパク質(Msp1)又はp75であり、前記ラクトバチルス菌株が、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ファーメンタムを含む群から選択される、
菌糸形成病原体感染症治療及び/又は予防剤。
【請求項10】
前記
二機能性ペプチドグリカン
/キチン加水分解酵素が組成物中に存在する、請求項9
に記載の
菌糸形成病原体感染症治療及び/又は予防剤。
【請求項11】
前記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項9
又は10に記載の
菌糸形成病原体感染症治療及び/又は予防剤。
【請求項12】
前記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、配列番号3に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項9~1
1のいずれか一項に記載の
菌糸形成病原体感染症治療及び/又は予防剤。
【請求項13】
前記
菌糸形成病原
体感染症が酵母感染症及び細菌感染症から選択され、特に前記
菌糸形成病原
体感染症が酵母感染症であり、より詳しくは前記
菌糸形成病原
体感染症が、カンジダ感染症、アスペルギルス感染症又はフザリウム感染症から選択され、更により詳しくは前記
菌糸形成病原
体感染症が、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス又はカンジダ・デュブリニエンシスによって引き起こされる感染症から選択される、請求項
9~12のいずれか一項に記載の
菌糸形成病原体感染症治療及び/又は予防剤。
【請求項14】
前記組成物が乳酸を含む、請求項1
0~1
3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項15】
前記組成物がラクトバチルス菌株、特にラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ又はラクトバチルス・ファーメンタムを含む群から選択されるラクトバチルス菌株を更に含む、請求項1
0~1
4のいずれか一項に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母又は細菌等の病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するための二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用に関する。
【0002】
本発明は更に、ヒト医学及び獣医学で使用される、特に病原性感染症、特に酵母又は細菌の感染症の治療及び/又は予防に使用される二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素に関する。
【背景技術】
【0003】
真菌及び細菌の病原体は、通常、一般的に理解されているよりも罹患率及び死亡率に関連している。ヒトにおいて最も一般的な真菌病原体の1つは、カンジダ・アルビカンス(Candidaalbicans(C.アルビカンス(C. albicans))であり、表在性粘膜カンジダ症と生命を脅かす侵襲性感染症の両方を引き起こす。通常の状況下では、C.アルビカンスはヒトの粘膜表面で共生生物として生活しているが、真菌の接着及び異常増殖に続く組織浸潤及び粘膜感染の後、病原性の生活様式に移行する場合がある。同様に、ボトリチス(Botrytis)、スクレロチニア(Sclerotinia)、及びフザリウム(Fusarium)等の植物及び作物の真菌感染症は、農業に壊滅的な影響を与える可能性がある。
【0004】
真菌の病態形成のプロセスにおける重要な要因は、宿主細胞の接着及び侵入に寄与する糸状菌糸の形成である。この菌糸の形態形成のプロセスは、単細胞酵母細胞と糸状菌糸成長型との間の可逆的移行を意味する。菌糸形成していない(unhyphenised)酵母細胞の細胞壁と比較して、菌糸の細胞壁はキチンのレベルがより高く、また他の(糖)タンパク質で修飾されているため、より硬い。菌糸型の病原体は、組織表面に浸透し、内在化後に宿主細胞から逃れるために重要となり得る。菌糸は、宿主表皮の浸透を助ける機械的力を生み出すことが示唆された。機械的な力が宿主細胞組織表面に及ぼされるためには、おそらく宿主組織へのしっかりとした固定が前提条件である。
【0005】
さらに、菌糸形成は、真菌病原体によるバイオフィルム形成の最初のステップである。バイオフィルムの形成には、浮遊性細胞の接着(接着段階)、細胞の成長及び凝集(初期コロニー形成段階)、細胞外物質の産生、並びに最終的な成熟バイオフィルムマトリックスの発達(成熟段階)が含まれる。バイオフィルム細胞は、それらの浮遊性の又は懸濁された対応物と比較して、抗真菌剤及び宿主防御に対してより大きな耐性を示すため、バイオフィルム形成は、カンジダ属種等の真菌病原体の重要な病原性属性である。これは、休眠細胞(persistors cells/persitercells)の形成の増加と共に、バイオフィルムを介した抗真菌薬の浸透を制限するエキソポリマーマトリックスの産生によって部分的に引き起こされる(非特許文献1)。
【0006】
例えばカンジダ感染症等の真菌感染症は、伝統的にアゾール等の抗真菌化合物で治療されるが、アゾールに対する耐性が高まっており、厄介である。近年、病原体の生存能力ではなく病原性因子を標的とするという概念がますます一般的になっている。C.アルビカンスの菌糸成長への移行は、標的とするかかる病原性プロセスの代表的な例である。加えて、この移行は、ヒト微生物叢における妨害、及びカンジダ感染症を制御する共生微生物叢の能力の低下に関連している。共生微生物叢のこの重要な役割のため、微生物叢を再構築する乳酸桿菌等のプロバイオティクスの可能性は、膣管、高齢者の口腔、並びに早産児及び小児の胃腸管における適用のためにますます探求されている。幾つかの臨床試験では、ラクトバチルス属菌群のメンバーの有望な保護効果が示されているが、その他の臨床研究の結果は決定的ではなかった。臨床研究間の違いの解釈は、乳酸桿菌のC.アルビカンスに対する阻害効果の根底にある作用の分子メカニズムに関する知識の欠如によって妨げられている。
【0007】
本発明において、驚くべきことに、例えばラクトバチルス・カゼイ群の菌株によって産生される二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、C.アルビカンス等の病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防することができ、それによって抗病原性物質として使用することができることがわかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
本発明は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防する能力を有する二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の同定に基づいている。したがって、第1の実施の形態では、本発明は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するための二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。別の実施の形態では、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が組成物中に存在する、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するための上記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用が開示される。
【0010】
更なる実施の形態では、本発明の全ての種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用は、7未満のpHを有する環境において提供される。別の実施の形態では、上記使用は、pHが7未満の微小環境で提供される。更なる実施の形態では、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用が組成物において提供される場合、上記組成物は、7未満のpHを有する。別の実施の形態では、上記組成物は酸、特に乳酸を更に含む。
【0011】
更なる態様では、本開示は、非医療用途における抗病原性物質として、特に非医療用途の抗真菌剤として菌糸形成を低減及び/又は予防するための二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素、又は該加水分解酵素を含む組成物の使用を提供する。例えば、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用は、パーソナル衛生産業、食品産業、清掃産業、製薬産業、植物保護又は生物防除産業において抗病原性物質として提供される。更なる実施の形態では、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用は、パーソナル衛生産業、食品産業、清掃産業、製薬産業、又は生物防除産業において抗真菌剤として提供される。更なる実施の形態では、本発明は、生物防除剤としての、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。
【0012】
上記の全ての実施の形態では、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、組成物中にも存在し得る。更なる実施の形態では、上記組成物は、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素と、ラクトバチルス(Lactobacillus)菌株、特にラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacilluscasei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む群から選択されるラクトバチルス菌株とを含む。
【0013】
別の実施の形態では、本開示は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防し、それにより、酵母等の病原体によるバイオフィルムの形成を低減及び/又は予防するための、本発明の全ての種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。そのため、更なる実施の形態では、本開示は、酵母等の病原体によるバイオフィルムの形成を低減及び/又は予防するための、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素、又は該ペプチドグリカン加水分解酵素を含む組成物の使用を提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、ヒト医学及び獣医学で使用される、特に病原性感染症の治療及び/又は予防に使用される二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素に関する。さらに、上記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素はまた、組成物中に存在することができ、この組成物中の二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、ヒト医学及び獣医学で使用される、特に病原性感染症の治療及び/又は予防に使用されるものであり、このような二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が開示される。
【0015】
別の実施の形態では、上記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素、又は該二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、病原性感染症の治療及び/又は予防に使用するために存在する組成物は、7未満のpHを有する。
【0016】
更に別の実施の形態では、病原性感染症の治療及び/又は予防に使用するために上記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が存在する上記組成物は、酸、特に乳酸を更に含む。
【0017】
本発明に典型的な、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、キチナーゼ活性を有することを特徴とする。言い換えれば、本発明の全ての種々の実施の形態において二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素はまた、キチナーゼ活性を有するペプチドグリカン加水分解酵素として説明することができる。上記の文脈において、キチナーゼ活性は、キチン加水分解酵素活性と同様である。
【0018】
更に別の実施の形態では、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、主要分泌タンパク質1(Msp1)である。更なる実施の形態では、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、Msp1であり、キチナーゼ(又はキチン加水分解酵素)活性を有する。
【0019】
更なる態様では、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、配列番号1(WP_005687638.1)に対して少なくとも70%、特に少なくとも85%、より詳しくは少なくとも90%、95%又は99%の配列相同性を有する。別の実施の形態では、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、配列番号2(8422039)に対して少なくとも70%、特に少なくとも85%、より詳しくは少なくとも90%、95%又は99%の相同性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。
【0020】
別の態様では、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、配列番号3に対して少なくとも70%、特に少なくとも85%、より詳しくは少なくとも90%、95%又は99%の配列相同性を有する。別の実施の形態では、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、配列番号4に対して少なくとも70%、特に少なくとも85%、より詳しくは少なくとも90%、95%又は99%の相同性を有するヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。
【0021】
更に別の態様では、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、ラクトバチルス菌株から得られる。更なる態様では、本発明の種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、又はラクトバチルス・ファーメンタムを含む群から選択されるラクトバチルス菌株から得られる。
【0022】
既に上で述べたように、本発明は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するための二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。更なる実施の形態では、上記病原体は、酵母又は細菌から、好ましくは酵母から選択される。更により好ましい実施の形態では、病原体は、カンジダ(Candida)、アスペルギルス(Aspergillus)、又はフザリウム(Fusarium)から選択される。更により好ましい実施の形態では、病原体は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス(Candidatropicalis)、又はカンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)から選択される。
【0023】
また上記のように、本発明の一態様は、ヒト医学及び獣医学で使用される、特に病原性感染症の治療及び/又は予防に使用される、本明細書に開示される全ての種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素に関する。更なる実施の形態では、上記病原性感染症は、酵母感染症又は細菌感染症から、好ましくは酵母感染症から選択される。更なる実施の形態では、病原性感染症は、カンジダ感染症、アスペルギルス感染症、又はフザリウム感染症から選択される。より詳しくは、病原性感染症は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、又はカンジダ・デュブリニエンシスによって引き起こされる感染症から選択される。別の態様では、病原性感染症は、膣感染症、泌尿生殖器感染症、口腔感染症、胃腸感染症、上気道感染症、肺感染症、及び皮膚感染症から選択される。更なる実施の形態では、本発明は、病原体によって引き起こされる、特に酵母又は細菌によって引き起こされる、より詳しくはカンジダ、アスペルギルス又はフザリウムによって引き起こされる、更により詳しくはカンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、又はカンジダ・デュブリニエンシスによって引き起こされる、膣感染症、泌尿生殖器感染症、口腔感染症、胃腸感染症、上気道感染症、肺感染症、又は皮膚感染症の治療及び/又は予防に使用される、本明細書に開示される全ての種々の実施の形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素に関する。
【0024】
これより図面を具体的に参照するが、示される項目は例示であり、本発明の種々の実施形態の説明的な論考のみを目的とすることが強調される。これらの図面は、本発明の原理及び概念的態様の最も有用かつ簡単な説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点で、本発明の基礎的理解に必要とされるよりも詳細な本発明の構造細部を示そうとはしていない。この説明は、図面と共に本発明の幾つかの形態を実際に具体化し得る方法を当業者に明らかとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】特定のラクトバチルス菌株の抗菌糸活性及び乳酸産生を示す図である。(A)生きたラクトバチルス細胞(10
8 CFU/ml)との同時インキュベーション中のC.アルビカンス(10
6細胞/ml)の菌糸誘導及び(B)静止期へと増殖した後の調査したラクトバチルス菌株のD-乳酸及びL-乳酸の産生。(C又はD)には、生きたL.ラムノサスGGとL.ラムノサスGR-1との同時インキュベーション中のC.トロピカリス及びC.デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)の菌糸誘導が示されている。
【
図2】L.ラムノサスGG及びその成分によるC.アルビカンス、C.トロピカリス及びC.デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)の菌糸の阻害を示す図である。(A)生きたL.ラムノサスGG細胞、無細胞上清(CFS)、UV不活化細胞及び加熱殺菌細胞(10
8細胞/ml)との同時インキュベーション中のC.アルビカンス(10
6 細胞/ml)の菌糸誘導。(B)L.ラムノサスGGから単離されたレクチン様タンパク質Llp1及びLlp2(50 μg/mL)及び精製されたEPS(200μg/mL)。(C)野生型細胞から単離されたL.ラムノサスGGからの種々の濃度の天然Msp1。(D)種々の濃度のMSP1との同時インキュベーション中のC.トロピカリス(10
6細胞/ml)の菌糸誘導。(E)種々の濃度のMSP1との同時インキュベーション中のC.デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)(10
6 細胞/ml)の菌糸誘導。
【
図3】酸の存在下でのL.ラムノサスGG及びその成分によるC.アルビカンス菌糸形成の阻害を示す図である。(A)異なる濃度の乳酸(50%L-乳酸及び50%D-乳酸)、及び(B)乳酸とMsp1との組み合わせとの同時インキュベーション中のC.アルビカンス(10
6 細胞/ml)の菌糸誘導。(C)菌糸形成に対する乳酸及び酪酸の効果。(D)L.ラムノサスGG無細胞上清(CFS)(20%)、乳酸(0.4%)及びMsp1(10μg/mL)との共培養中のバイオフィルム形成(MRSブロス及び水をそれぞれの対照とした)。1つのアスタリスク及び二重アスタリスクは、C.albicans単独と比較して、それぞれ0.1及び0.01未満のp値を示す。
【
図4】変異体分析は、抗菌糸活性におけるMsp1の重要な役割を確認する。(A)表面に、長いガラクトースに富むEPS、SpaCBA線毛、リポテイコ酸(LTA)のD-アラニル化、LlP1及びLlp2を欠くL.ラムノサスGG変異株との同時インキュベーション中のC.アルビカンス(10
6 細胞/ml)の菌糸誘導。三重アスタリスクは、L.ラムノサスGG野生型と比較して0.001未満のp値を示す。(B)光学顕微鏡検査を用いた間接免疫蛍光法による野生型(上のパネル)及びdltD変異体細胞(下のパネル)の表面上のMsp1の可視化。(C)ELISAを使用したL.ラムノサスGGWT及びdltD変異体の培養上清中のタンパク質の定量。(D)表面に、長いガラクトースに富むEPS、SpaCBA線毛、リポテイコ酸(LTA)のD-アラニル化、Llp1及びLlp2を欠くL.ラムノサスGG変異株との、又はペプチドグリカン加水分解酵素ドメインを欠く挿入型Msp1変異体(10
8細胞/ml)との同時インキュベーション中のC.アルビカンス(10
6 細胞/ml)の菌糸誘導。アスタリスクは、L.ラムノサスGG野生型と比較した0.001未満のp値を示す。
【
図5】Msp1の酵素活性を示す図である。(A)C.アルビカンス菌糸とのインキュベーション後のL.ラムノサスGG(左)及びL.プランタルムWCFS1(右)の顕微鏡画像。矢印は、乳酸桿菌の極が菌糸と相互作用しているように見える部位を示している。代表的な画像を示す。(B)Msp1の化学的脱グリコシル化は、その抗菌糸活性に影響を与えない。(C)Msp1は、キチン誘導体であるキチン-アズールを分解することができる。対照として、酢酸ナトリウムバッファーを使用した。(D)キチナーゼ阻害剤であるビスジオニンC(BisdionineC)は、菌糸の阻害を部分的に予防することができる。C.アルビカンス単独と比較して、アスタリスクは0.05未満のp値を示し、二重アスタリスクは0.01未満のp値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願は、例えば、ラクトバチルス・カゼイ群又はL.ファーメンタム群のラクトバチルス菌株によって産生される二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、酵母又は細菌等の病原体において菌糸形成を低減及び/又は予防する能力を有するという知見に基づいている。
【0027】
病原体における菌糸形成は、単細胞性の細胞と糸状菌糸成長型との間の可逆的な移行として定義される。菌糸形成していない細胞の細胞壁と比較して、菌糸の細胞壁はキチンのレベルが高く、また他の(糖)タンパク質で修飾されているため、より硬い。
【0028】
本出願の発明者らは、今般、特定の二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が菌糸の形態形成を阻害又は低減することができることを見出した。したがって、本明細書で上に詳述するように、本発明は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するためのかかる二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。更なる実施形態では、上記二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、組成物中に存在することができる。更に別の更なる実施形態では、上記組成物は、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素と、ラクトバチルス菌株、特に、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、又はラクトバチルス・ファーメンタムを含む群から選択されるラクトバチルス菌株とを含む。
【0029】
本発明の更なる実施形態では、病原体において菌糸形成を低減及び/又は予防する二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、ラクトバチルス菌株から得られる。ペプチドグリカン加水分解酵素活性を有するラクトバチルス菌株は、例えば、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイの群に由来する。
【0030】
真菌の細胞壁は、キチン(アセチルグルコサミンポリマー)、グルカン、多糖及びムコ多糖、ワックス、並びに色素で構成されている。キチンは、原形質膜に最も近い位置にある真菌の細胞壁の構造的に重要な成分であり、菌糸の形成を含む細胞壁の機械的強度に寄与する。キチン合成がないと、成長している菌糸は溶解しやすい。
【0031】
ペプチドグリカン加水分解酵素は、ペプチドグリカン鎖中の結合及び側鎖分岐の切断を担う酵素であり、したがって、細胞壁全体のペプチドグリカン代謝回転を担う。細菌のペプチドグリカン加水分解酵素の3つの主要なクラスは、グリカンの骨格を切断するグリコシダーゼ、側鎖ペプチドを切断するアミダーゼ、及びペプチド側鎖内で切断するペプチダーゼであり、これらは切断部位に基づいて更に分類される。
【0032】
本明細書で、本発明者らは、ペプチドグリカン加水分解酵素、特にペプチドグリカン加水分解酵素の主要分泌タンパク質1(Msp1)が、真菌等の病原体の菌糸細胞壁に対して更なる予想外の加水分解活性を示すことを見出した。特に、上記ペプチドグリカン加水分解酵素(例えば、Msp1)は、二機能性ペプチドグリカン加水分解酵素として作用し、それにより、ペプチドグリカンに対する以前に公開されているエンドペプチダーゼ活性(Claeset al., 2012)に加えて、酵母の細胞壁のキチンにおけるアセチルグルコサミン結合を切断する。結果として、ペプチドグリカン加水分解酵素は、酵母等の病原体における菌糸の形成を低減及び/又は予防することができる。したがって、本出願では、上記ペプチドグリカン加水分解酵素を、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素、又はキチナーゼ活性を有するペプチドグリカン加水分解酵素と称する。
【0033】
本発明者らは更に、本発明の二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素がこのようにキチナーゼ活性を示すことを特定した。したがって、本発明の更なる態様では、本発明の種々の実施形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、キチナーゼ活性を有する。このキチナーゼ活性は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するペプチドグリカン加水分解酵素の能力に寄与する。別の実施形態では、本発明の種々の実施形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、グルコサミダーゼ活性を示す。
【0034】
キチナーゼ(EC 3.2.1.14)は、サイズが20 kDA~約90kDAの範囲のグリコシル加水分解酵素である。キチナーゼは、細菌、真菌、酵母、植物、放線菌、節足動物、及びヒト等の幅広い生物に存在する。キチナーゼは、キチンを低分子量キトオリゴマーに直接分解する能力を持っており、エリシター作用及び抗腫瘍活性等、産業、農業、及び医療の幅広い機能を果たす。
【0035】
キチナーゼは、より具体的には、エンドキチナーゼ(EC3.2.1.202)とエキソキチナーゼ(EC 3.2.1.200及びEC 3.2.1.201)の2つの主な群に分けられる。エンドキチナーゼは内部部位でキチンをランダムに分割し、それによって二量体のジアセチルキトビオース(dicetylchitobiose/diacetylchitobiose)と、キトトリオース及びキトテトラオース等のN-アセチルグルコサミンの可溶性低分子量多量体とを形成する。エキソキチナーゼは、キチンミクロフィブリルの非還元末端から始まるジアセチルキトビオースの進行性放出の触媒作用に関与するキトビオシダーゼ(EC3.2.1.29)と、エンドキチナーゼ及びキトビオシダーゼのオリゴマー生成物を切断することでN-アセチルグルコサミンのモノマーを生成する1-4-βグルコサミニダーゼ(EC3.2.1.30)の更に2つのサブカテゴリーに分けられる。
【0036】
キチンは、セルロースに次いで自然界で2番目に豊富な多糖であり、例えば、幾つかの真菌の細胞壁に存在する。キチンは、2-アセトアミド-2-デオキシ-D-グルコースであるベータ-1,4-N-アセチルグルコサミンの線形の安定したポリマーである。
【0037】
本発明では、本発明者らは、真菌等の病原体における菌糸形成に対するペプチドグリカン加水分解酵素の効果が、その加水分解酵素活性とそのキチナーゼ活性との組み合わせによって説明できることを見出した。
【0038】
本発明の種々の実施形態で使用される二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、ラクトバチルス菌株から得ることができる。ラクトバチルス菌株は、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ファーメンタムを含む群から選択することができる。好ましい実施形態では、本発明の種々の実施形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、ラクトバチルス・ラムノサスGGによって産生される。
【0039】
既に上で述べたように、菌糸の形成は、酵母又は細菌を含む或る特定の病原体に典型的である(Koenoenenand Wade, 2015)。したがって、本発明は、特に病原体が酵母又は細菌、好ましくは酵母である場合に、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するための二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素、又は該ペプチドグリカン加水分解酵素を含む組成物の使用を提供する。上記酵母は、カンジダ、アスペルギルス又はフザリウムから選択することができる。更なる実施形態では、上記酵母は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、又はカンジダ・デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)から選択される。
【0040】
本発明の更なる態様では、本発明者らは、菌糸の形成に対する二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の効果が酸性環境において増加することを見出した。この酸性環境は、病原体、例えばラクトバチルス菌株による乳酸の産生によって作り出すことができ、又は乳酸若しくはL-乳酸等の酸の添加によって酸性環境を作り出すことによっても可能である。ペプチドグリカン加水分解酵素も産生するラクトバチルス菌株によって産生される乳酸、又は追加で添加される乳酸のいずれかの存在は、病原体における菌糸形成の低減及び/又は予防に対する二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の相乗効果をもたらす。
【0041】
さらに、本出願は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するための二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素を含む組成物の使用に関する。更なる実施形態では、上記組成物は、7未満のpHを有する。更に別の実施形態では、上記組成物は酸、好ましくはL-乳酸等の乳酸を更に含む。
【0042】
本出願はまた、組成物中に存在する、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するための二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用に関する。更なる態様では、上記組成物は7未満のpHを有する。更に別の態様では、上記組成物は酸、好ましくはL-乳酸等の乳酸を更に含む。
【0043】
別の実施形態では、本発明による組成物は、他のプロバイオティクス剤も含み得る。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防し、それにより病原体によるバイオフィルムの形成を低減及び/又は予防するための、開示される全ての実施形態における二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。そのため、更なる実施形態では、本発明は、病原体によるバイオフィルムの形成を低減及び/又は予防するための二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。上記の全ての実施形態では、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、ラクトバチルス菌株から、特に、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、又はラクトバチルス・ファーメンタムを含む群から選択されるラクトバチルス菌株から得られる。
【0045】
別の態様では、本発明は、病原体によるバイオフィルム形成を予防及び/又は阻害するための、その全ての実施形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。
【0046】
バイオフィルムは微生物の保護されたニッチ(niche)であり、バイオフィルムの中で微生物は抗生物質又は抗真菌剤による治療から免れ、持続的な感染源を作り出す可能性がある。バイオフィルムは、自然界で最も一般的な細菌及び真菌の増殖様式であり、臨床感染症でも重要である。本発明では、本発明者らは、二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素が、バイオフィルム形成、特にカンジダ・アルビカンスのバイオフィルム形成を阻害することができることを示す。
【0047】
本発明の別の態様では、その全ての可能な実施形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用が、非医療用途における抗病原性物質として提供される。更なる態様では、上記非医療用途は、パーソナル衛生産業、食品産業、生物防除産業、作物保護、清掃産業、製薬産業から選択される。
【0048】
そのため、一実施形態では、パーソナル衛生産業において、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するための、その全ての実施形態における二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用が開示される。パーソナル衛生産業は、ティッシュ、保護マスク、又はスプレーの製造を含む。より詳しくは、上記ティッシュ、保護マスク又はスプレーは、病原性感染症の治療及び/又は予防に向けられたものである。例えば、本発明の二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素を、パーソナル衛生産業の全ての用途におけるそれらの製造プロセス中に、上記ティッシュ、保護マスク又はスプレーに組み込むことができる。
【0049】
本発明の別の実施形態では、その全ての可能な実施形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用は、食品産業において、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するために提供される。上記食品産業は、発酵食品製品(乳製品、麦汁、大豆、野菜)又は食品産業で使用されるバイオリアクター及び加工環境を包含し得る。例えば、本発明の二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素を、上記発酵食品製品、又は食品産業で使用されるバイオリアクター及び加工環境に組み込むことができる。また、清掃産業又は製薬産業での使用についても記載する。本明細書では、本発明の二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、病原体における菌糸形成を低減及び/又は予防するために使用することができ、それにより、清潔で無菌の環境を確保する。例えば、本発明の二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素を清掃製品に添加することができる。
【0050】
別の実施形態では、本発明の二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、生物防除産業で使用するために提供される。特に、生物防除産業は、作物保護のための生物防除剤の生産及び/又は適用と定義される。したがって、更なる実施形態では、本発明は、生物防除剤としての、本発明の種々の実施形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用を提供する。別の実施形態では、作物保護剤としての、本発明の種々の実施形態による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素の使用が提供される。
【0051】
本発明の最後の態様では、その全ての種々の実施形態における二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素は、病原性感染症、特に酵母又は細菌によって引き起こされる感染症の治療及び/又は予防において使用するために提供される。
【0052】
更に別の実施形態では、病原性感染症は、カンジダ感染症、アスペルギルス感染症、又はフザリウム感染症から選択される。より詳しくは、病原性感染症は、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、又はカンジダ・デュブリニエンシスによって引き起こされる感染症から選択される。別の態様では、病原性感染症は、膣感染症、泌尿生殖器感染症、口腔感染症、胃腸感染症、上気道感染症、肺感染症、及び皮膚感染症から選択される。
【0053】
泌尿生殖器感染症としては膀胱感染症を挙げることができる。口腔感染症及び上気道感染症としては、口腔鼻咽頭腔(oronasopharyngealcavity)の感染症、中耳炎、咽頭炎、慢性副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、鼻炎、粘膜炎、齲蝕、歯肉炎、又は口臭等を挙げることができる。胃腸感染症としては、大腸炎、胃感染症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群等を挙げることができる。肺感染症としては、気管支炎及び肺炎を挙げることができる。皮膚感染症としては、尋常性座瘡、乾癬、火傷、蜂巣炎、膿痂疹、水虫(足白癬)、真菌性爪感染症、又は疣贅等が挙げられる。
【0054】
更に別の実施形態では、本発明は、病原体によって引き起こされる、特に酵母又は細菌によって引き起こされる、より詳しくはカンジダ、アスペルギルス又はフザリウムよって引き起こされる、より詳しくはカンジダ・アルビカンス、カンジダ・トロピカリス、又はカンジダ・デュブリニエンシスによって引き起こされる、膣感染症、泌尿生殖器感染症、口腔感染症、胃腸感染症、上気道感染症、肺感染症、又は皮膚感染症の治療及び/又は予防に使用される、本発明による二機能性ペプチドグリカン/キチン加水分解酵素に関する。
【実施例】
【0055】
材料及び方法
微生物菌株及び培養条件
ラクトバチルス菌株(表1)を、de Man、Rogosa、及びSharpeによる(MRS)ブロス(ベルギー国エーレムボーデゲムのDifco)で撹拌せずに37℃で増殖させた。C.アルビカンスSC5314、C.トロピカリスDSM4238及びC.デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)DSM13268を37℃で酵母エキスペプトンデキストロース(YPD)ブロス(ドイツ国カールスルーエのCarlRoth)中で増殖させ、絶えず振盪した。
【0056】
表1.この研究で使用した細菌株
【表1-1】
【表1-2】
表訳
菌株
L.ラムノサスGGATCC53103
L.ラムノサスCMPG5351
L.ラムノサスCMPG5540
L.ラムノサスCMPG5357
L.ラムノサスCMPG10701
L.ラムノサスCMPG10706
L.ラムノサスCMPG10200
L.ラムノサスGR-1ATCC5582
L.カゼイAMBR2
L.カゼイATCC393
L.パラカゼイATCC334
L.ペントサスKCA1
L.ペントサスATCC8041
L.プランタルムWCFS1
L.プランタルムCMPG5300
L.ロイテリRC-14 ATCC55845
L.ロイテリAMBV38
L.ファーメンタムAMBV1
L.ガセリAMBV2
L.ガセリAMBV10
L.ガセリAMBV28
L.ガセリAMBV47
L.ジェンセニイAMBV103
L.クリスパタスLMG12004
L.クリスパタスAMBV6
L.クリスパタスAMBV104
説明
野生型
L.ラムノサスGGのwelE変異株
L.ラムノサスGGのdltD変異株
L.ラムノサスGGのspaCBA変異株
L.ラムノサスGGのllp1変異株
L.ラムノサスGGのllp2変異株
msp1変異体
特徴
腸分離株
長く、ガラクトースに富むエキソポリサッカライドを欠き、SpaCBA線毛の曝露の増加を示す
リポテイコ酸のD-アラニル化の欠如及び或る特定の表面タンパク質の曝露の増加
spaCBA線毛の発現の欠如
Llp1レクチンの発現の欠如
Llp2レクチンの発現の欠如
Msp1のペプチドグリカンエンドペプチダーゼドメイン(正:domain)の発現の欠如(Claes et al., 2012)
膣分離株
【0057】
本出願で収集されたラクトバチルス菌株を、37℃で24時間インキュベーションした後、MRS寒天プレート上で分離した。分離株を、16SリボソームRNA遺伝子を配列決定することにより、種レベルで分類学的に特性評価した。簡単に説明すると、完全な16SrRNA遺伝子(1.5 kb)をユニバーサル27Fプライマー及び1492Rプライマーで増幅し、配列を決定した。得られた配列を、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイト(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)でのBLAST解析によって参照16SrRNA遺伝子配列と比較した。
【0058】
この研究は、ティーネン(ベルギー国)の地域病院の倫理委員会によって審査及び承認され、サンプリングの前に全ての患者の明示的な同意を得た。
【0059】
C.アルビカンスにおける菌糸形成の阻害
カンジダ(アルビカンス、デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)、及びトロピカリス)菌糸を、24ウェルプレートのウェル内で37℃にて3時間、106CFU/ml細胞を10%FCSと共に、1回の反復あたり500 μlの総量でインキュベートし、1つの条件あたり4回の生物学的反復を行って誘導した。乳酸桿菌の効果を調べるため、108CFU/mlのL.ラムノサス菌株をウェルに加え、同時インキュベーションを行った。Msp1の効果を調べるため、L.ラムノサスGG又はL.ラムノサスGR-1から精製した5μg/ml又は10 μg/mlのMsp1をウェルに加え、同時インキュベーションを行った。酸の効果を調べるため、100 μlの1%乳酸又は1%酪酸をウェルに加えて同時インキュベーションを行った。3時間の(同時)インキュベーション後、少なくとも100個の酵母細胞及び/又は菌糸を各ウェルで数え(条件ごとに4回)、酵母細胞に対する菌糸の比を計算した。
【0060】
C.アルビカンスのバイオフィルム発生の阻害
C.アルビカンスのバイオフィルムに対する阻害効果を評価した。簡単に説明すると、C.アルビカンスをYPD培地で一晩増殖させ、懸濁して106CFU/mlにし、試料(上清、乳酸、Msp1)又は対照(MRS又はH2O)と共に96ウェルプレート(80 μl/ウェル)のウェルに加えた。37℃で24時間のインキュベーション後、バイオフィルムを2回洗浄し、次いで2,3-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキサニリド(90μl、1 mg/ml)(Sigma Aldrich)及びフェナジンメトサルフェート(10 μl、0.2 mg/ml)(Sigma Aldrich)をウェルに加えた。2回目のインキュベーション(37℃、30分、暗所)後、SynergyHTXマルチモードリーダー(ベルギー国ドロゲンボスのBiotek)を使用して492 nmでの吸光度を測定した。
【0061】
乳酸桿菌のUV不活化及び加熱殺菌
2回の洗浄工程の後、乳酸桿菌を15分間のUV照射を3回繰り返すことでUVにより不活化し、また80℃で20分間インキュベートすることで加熱殺菌した。不活化を、MRS寒天培地にプレーティングすることによって確認した。
【0062】
無細胞上清の調製
乳酸桿菌の一晩培養物を、37℃のMRS培地で撹拌せずに増殖させた。培養物を2000×gで4℃にて10分間遠心分離した後、0.2μmフィルター(ベルギー国ハースローデのVWR)を通して濾過することにより、無細胞上清を調製した。生の画分を、スピンフィルター(100 kDa超、10 kDa超、1kDa超)によるその後のサイズ分離、及びPBSでの追加の洗浄によって得た。
【0063】
D-乳酸及びL-乳酸の生産
一晩のインキュベーション後、遠心分離(10分、2000×g、4℃)及び0.2μmフィルターを通すフィルター滅菌により無細胞上清を得た。D-乳酸及びL-乳酸の濃度を、R-Biopharm(ドイツ国ダルムシュタット)から市販されているキットを使用して測定した。
【0064】
L.ラムノサスGGからのLlp1及びLlp2の分離
L.ラムノサスGGからLlp1及びLlp2のタンパク質を、以前に記載されているように単離した(Petrovaet al., 2016)。簡単に説明すると、組み換えタンパク質の産生を、レクチンを発現する組み換えE.coli BL21細胞(CMPG10708及びCMPG10709)において、1 mMイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導した。インキュベーション(25℃、振盪)後、ペレットを非変性溶解バッファー(50 mM NaH2PO4、300mM NaCl及び20 mMイミダゾール)に懸濁し、超音波処理して細胞から可溶性の組み換えレクチンを放出させた。その後、レクチンを、HisTrap(商標)HPカラム(GEHealthcare)によるアフィニティークロマトグラフィー、及びSuperdex(商標)プレップグレード(GE Healthcare)のマトリックスを充填したHighload(商標)16/60カラムによるサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した。
【0065】
L.ラムノサスGGからのMsp1の分離
Msp1を、以前に記載されているとおりに陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した(Lebeeret al., 2012)。簡単に説明すると、L.ラムノサスGGのCFSからMsp1を精製するために、培養物を2000×gで4℃にて10分間遠心分離した後、0.2μmフィルターによる濾過を行った。生の画分を、スピンフィルター(100 kDa超及び10 kDa超)によるその後のサイズ分離、及びPBSによる追加の洗浄によって得た。Msp1を、以前に記載されているとおりに(Lebeeret al., 2012)陽イオン交換クロマトグラフィーによってCFS(10 kDa~100 kDaの画分)から更に精製した。簡単に説明すると、培養上清をSPSepharose High Performance(GE Healthcare)にロードし、60 mM乳酸バッファー(pH4.0)で平衡化した。結合したタンパク質を溶出するために、濃度を漸増させたNaCl(100mM~1000 mM)を含む乳酸バッファーを使用した。Msp1を含む画分をSDS-PAGEを使用して同定し、Vivaspinフィルター(MWカットオフ10000)(ドイツ国ゲッティンゲン37070のSartoriusStedim biotech GmbH)を使用して濃縮した。
【0066】
Msp1の脱グリコシル化
Msp1を、トリフルオロメタンスルホン酸(TFMS)法(-20℃、30分間)によって化学的に脱グリコシル化した(Lebeeret al., 2012)。処理後、タンパク質を広範囲に透析し、SDS-PAGEで分析した。
【0067】
Msp1のキチナーゼ活性
最初に、Msp1のキチナーゼ活性を、先に記載されるようにキチン-アズール(Sigma)の分解に基づいて調査した。更なる確認は、先に記載されるように2.5mMビスジオニンC(Sigma)によるキチナーゼ活性の阻害に基づいていた。
【0068】
光学顕微鏡検査を用いた間接免疫蛍光法
抗Msp1ウサギ抗血清を野生型及びdltD変異型の細胞に使用した。AlexaFluor 488と複合化された抗ウサギIgG抗体を使用して、細胞上のMsp1の局在を可視化した。試料を、AxioCam MRm Rev.3モノクロデジタルカメラを搭載したZeissAxio Imager Z1で可視化した。試料を、「Plan-Neofluar」100×/1.3オイルPh3対物レンズで撮像した。付属のAxioVisionRel.4.6ソフトウェアを用いて画像を分析し、位相差画像と蛍光画像のオーバーレイを作成した。
【0069】
ELISA
L.ラムノサスGG及びCMPG5540の無細胞上清中のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイを使用して決定した。凍結乾燥して37℃でPBS又はMsp1(種々の濃度、標準曲線)に分解した(resolving/dissolving)後の上清(0.5μg/mL)で、96ウェルELISAプレート(Greiner, Bio-one)のウェルを一晩コーティングした。その後、ウェルをPBS/T(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄し、25%スキムミルク溶液を含む250 μLのPBS/Tをプレートに加え、37℃で1時間インキュベートして非特異的(aspecific)結合をブロックした。次に、ウェルをPBS/Tで3回洗浄した後、各ウェルにPBS/Tで1:2000に希釈した100μLのMsp1抗血清を満たし、インキュベートした(37℃、90分)。アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンG(IgG、Sigma)をPBS/Tで1:3000に希釈し、インキュベーション(37℃、1時間)前に各ウェル(100μL)に加えた。結合した抗体を1ウェルあたり150 μLのp-ニトロフェニルホスフェート(1 M Tris-HCl中1 mg/mL、pH9.8)(Sigma)とインキュベート(30分、37℃)した後、SynergyMXマイクロタイタープレートリーダー(Biotek Instruments)で各ウェルの吸光度(405 nm)を読み取った。
【0070】
統計
シャピロ-ウィルク正規性検定(GraphPad Prism7.02、米国カリフォルニア州)を使用して、データが正規分布しているかどうかを判断した。条件間の統計的有意性を、一元配置分散分析及びテューキーの多重比較検定によって推定した。
【0071】
結果
選択されたラクトバチルス菌株は強力な菌糸阻害活性を示す
本発明者らは、まず、異なるラクトバチルス分類群間の抗カンジダ活性を比較することを目的とした。菌糸の形態形成は、C.アルビカンス、C.トロピカリス、及びC.デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)の最も重要な病原性因子であるため、本発明者らは、上記カンジダにおける血清誘発性の菌糸の形態形成に対する乳酸菌の効果に焦点を当てた。本発明者らは、社内又はベルギー微生物保存機関(BelgianCo-ordinated Collections of Micro-organisms)で入手可能な、主にノーマディック(nomadic)であるか、又は脊椎動物に適応していると最近説明された様々な分類群/系統発生群を代表する菌株を選択した。したがって、菌株を、L.カゼイ群、L.プランタルム群、L.ロイテリ、L.ファーメンタム、L.ガセリ、L.ジェンセニイ及びL.クリスパタスから選択した。C.アルビカンスにおける菌糸形成の阻害率は、91%(L.カゼイAMBR2)~14%(L.プランタルムWCFS1)の範囲で、試験菌株間で大きな変動を示した(
図1A)。
【0072】
乳酸は、ラクトバチルスの重要な生物活性代謝物として説明されており、C.アルビカンスにも影響を与えることが報告されているため、本発明者らは、次に、静止期に増殖した後、これらの菌株の上清中のD-乳酸及びL-乳酸の濃度を測定した。D-乳酸とL-乳酸との比率は異なるが、全ての菌株がグルコースから乳酸を生成することができた(
図1B)。しかしながら、乳酸の総量も、いずれの異性体の量も、試験された乳酸桿菌の菌糸阻害活性のレベルとの関係を示さなかった。
【0073】
本発明者らの試験で最も成績が良かった5つの菌株はいずれも、L.カゼイ群(L.ラムノサス、L.カゼイ、及びL.パラカゼイ)に属していた。
【0074】
最後に、本発明者らはまた、ここで、菌糸の形態形成がカンジダ・トロピカリスとカンジダ・デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)でも阻害されることも示す。特に、L.ラムノサスGGとL.ラムノサスGR-1の両方が、C.トロピカリス及びC.デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)におけるFCS誘発菌糸形成を阻害する(
図1C及び
図1D)。
【0075】
L.ラムノサスGGの主なペプチドグリカン加水分解酵素及び乳酸は、C.アルビカンス菌糸阻害を共同で媒介する
ラクトバチルスが菌糸の形態形成にどのように影響し得るかを更に解明するため、本発明者らは、最初に、寄与しているL.(パラ)カゼイ/ラムノサス因子が表面に結合しているか、分泌されているか、又はその両方であるかを調べた。L.ラムノサスGGは、この菌株が遺伝子及び分子のレベルで十分に特徴付けられているため、モデルとして選択された。本発明者らは、最初に、分泌分子のみを含む無細胞培養上清、並びにUV不活化及び加熱殺菌したL.ラムノサスGG細胞に対して、血清誘導性菌糸形成に対する生きたL.ラムノサスGG細胞の効果を比較した。両方の方法で処理された細胞はもはや分子を分泌しないはずであるが、加熱殺菌された細胞とは対照的に、UV不活化細胞の表面タンパク質は変性されないはずである。この比較は、L.ラムノサスGGからの上清が菌糸形成をほぼ完全に阻害した(-97%)のに対し、UV活性化L.ラムノサスGG細胞は生きた細胞と同程度にC.アルビカンスの菌糸形成を阻害した(それぞれ、-57%及び-51%)ことを示した(
図2A)。一方、加熱殺菌された細胞は、もはやC.アルビカンスの菌糸形成を阻害することができなかった。そのため、これらの結果は、メインコアのL.ラムノサス特異的エフェクター分子が熱感受性であって、分泌されるが、表面結合され得るか、又は細胞結合エフェクターによって補足されることもあることを示した。
【0076】
次に、本発明者らは、レクチン様タンパク質1(Llp1)及び2(Llp2)、ガラクトースに富むエキソポリサッカライド(EPS)、並びにマンノシル化されたその主要分泌タンパク質1(Msp1)を含む、レクチン-糖相互作用により推定菌糸結合特性を有すると合理的に説明される、記載されている主なL.ラムノサスGG表面分子の活性を調べた。
【0077】
Llp1及びLlp2は、セファロース結合及びグリカンアレイスクリーニングによってD-マンノース(Petrovaet al., 2016)及び複合糖マンナンに結合することが示されており、これらはいずれもC.アルビカンスの細胞壁の外層に存在する。したがって、本発明者らは、この糖結合能力が更に菌糸の形態形成を妨げる可能性があるかどうかを調査することを目的とした。しかしながら、Llp1及びLlp2による処理では、以前に記録された50μg/mlの活性濃度でカンジダ菌糸形成の減少は示されなかった(
図2B)。逆に、レクチン様の特性を持つタンパク質は菌糸の表面にも見ることができ、乳酸桿菌の表面の潜在的な相互作用パートナーにも複合多糖を与える。以前の結果と一致して、L.ラムノサスGGから単離されたEPSは菌糸の形態形成を阻害することができたが、ただし200μg/mLのかなり高い濃度でのみ可能であった(
図2B)。対照的に、偶然見出され、ここで試験されたL.ラムノサスGGのペプチドグリカン加水分解酵素Msp1は、非常に強力な阻害活性を示し(
図2C)、5μg/mLという低い濃度で菌糸の形態形成を50%超減少させた。さらに、Msp1は、C.トロピカリス及びC.デュブリエンシス(dubliensis/dubliniensis)のFCS誘発性菌糸形成に濃度依存的な影響を及ぼす(
図2D及び
図2E)。
【0078】
乳酸桿菌による乳酸の産生は、異なる乳酸桿菌株の菌株間で観察された抗菌糸活性の全ての変動を説明することはできなかったが(
図1)、本発明者らはまた、L.ラムノサスGGの抗菌糸活性への寄与を定量するために、このスクリーニングにおいて乳酸自体を外から添加した。乳酸自体(0.5%~2%、1:1の比率のD-乳酸とL-乳酸との組み合わせ)も菌糸の形態形成を減少させ、上清(1%乳酸)に匹敵する濃度ではおよそ50%であった(
図3A)。本発明者らは、次に、Msp1が乳酸と相乗的に作用するかどうかを調べた。上清に存在するよりも更に低い濃度の乳酸(0.5%)とMsp1(2μg/ml)との組み合わせは、菌糸形成を94%超減少させることが示され、これは、無細胞上清に匹敵する阻害レベルであり、この組み合わせには、L.ラムノサスGGに抗菌糸活性を与える主要なエフェクターが含まれていることを示している(
図3B)。酪酸は、C.アルビカンスにおける菌糸形成に同等の影響を及ぼした。同様に、塩酸(hydrochloric acid/butyric acid)も菌糸形成を有意に阻害し、乳酸との差は有意ではなかった(
図3C)。
【0079】
C.アルビカンスのバイオフィルム調節
菌糸の形態形成は、C.アルビカンスのバイオフィルム調節と密接に関連しているため、本発明者らは、次に、L.ラムノサスGGがC.アルビカンスのバイオフィルム形成も阻害することができるかどうかを調べた。この実験の設定は、L.ラムノサスGGの上清がC.アルビカンスのバイオフィルム形成を減少させることができることを明らかにした。上清の2つの主成分である乳酸及びMsp1も、別々に抗バイオフィルム活性を示した(
図3D)。
【0080】
L.ラムノサスGGの変異体分析によりMsp1の重要な役割が確認された
乳酸桿菌の表面上の個々の分子間の相互作用は、個々の精製された分子の抗菌糸活性を強化又は減弱する可能性があるため、本発明者らは、以前の研究から利用可能な特定のL.ラムノサスGG同質遺伝子変異体を用いて追加の実験を行った。また、この補完的なアプローチにより、本発明者らは、十分なレベルまで精製することができなかった分子を研究することもできた。
【0081】
変異体分析により、
図4Aに示すように、EPS層及びレクチンの有無はL.ラムノサスGG細胞の抗菌糸活性に重要な役割を果たしていないことが確認された。本発明者らはまた、L.ラムノサスGGのspaCBA変異体も含めた。複雑なヘテロポリマーSpaCBA線毛自体を精製することは困難であるが、この同質遺伝子変異体を用いた以前の研究では、L.ラムノサスGGの宿主細胞及び腸粘液等の複合糖(その構造類縁体が菌糸の表面に存在する可能性がある)との相互作用における、線毛と、それらのフコース及びマンノース残基の重要性が示された。変異体分析は、これらのSpaCBA線毛の有無が、L.ラムノサスGGの抗菌糸活性に有意な役割を果たしていないように見えることを示した(
図4A)。
【0082】
残念ながら、細菌の増殖及び細胞分離におけるMsp1の中心的な役割のため、二重相同組み換えによるノックアウト変異体はL.ラムノサスGGでは利用不可能である。
【0083】
しかしながら、dltD変異体は、リポテイコ酸がD-アラニル化されなくなったため、表面電荷が劇的に変化して、表面タンパク質及び他の分子と会合することから、L.ラムノサスGGの興味深い一般的な表面変異体である。注目すべきことに、C.アルビカンスの菌糸の形態形成は、L.ラムノサスGGdltD変異体細胞によってほぼ完全に消滅された。これがMsp1の活性によっても説明することができるかどうかを調べるため、本発明者らは、この高活性dltD変異体の上清中と表面上との両方にMsp1が存在することを確認した。蛍光標識された抗Msp1抗体を使用すると、Msp1は野生型表面よりもdltD変異体細胞の表面とより会合しており(
図4B)、その結果、上清への分泌が少ないことが示された(
図4C)。
【0084】
最後に、本発明者らは、CMPG10200という名前の挿入型msp1変異体(本明細書ではmsp1変異体と呼ぶ)の活性も試験し、これは、Msp1タンパク質の後半/C末端ペプチドグリカンNLPc/p60ドメインを発現せず、したがってエンドペプチダーゼペプチドグリカン加水分解酵素ドメインを欠いている(Claeset al., 2012)。L.ラムノサスGGの抗菌糸活性は、完全なmsp1遺伝子を持つ野生型と比較して、msp1遺伝子の変異誘発による影響をほとんど受けなかったが、L.ラムノサスGGdltD変異体細胞は、C.アルビカンス菌糸をほぼ完全に排除することができた(
図4D)。さらに、まだMsp2を発現しているmsp1変異体CMPG10200で活性が増加しないという事実は、L.ラムノサスGGの他のペプチドグリカン加水分解酵素が活性ペプチドグリカン加水分解酵素ではないことを示している。
【0085】
さらに、表面に、長いガラクトースに富むEPS、Llp1、Llp2、SpaCBA線毛、又はリポテイコ酸(LTA)のD-アラニル化を欠くL.ラムノサスGG変異株との同時インキュベーション中のC.アルビカンスの菌糸誘導を評価した(
図4D)。
【0086】
したがって、変異体又は単離された分子のいずれかを使用するアプローチの組み合わせは、L.ラムノサスGGの抗菌糸活性におけるMsp1の二機能性活性の重要な役割を更に実証した。この知見は、Msp1が少なくとも一部のL.カゼイ群間で保存されていることが示されているため、L.カゼイ群に由来する他の試験された菌株が強い活性を示すという事実と一致し(
図1A)、一方、研究された他の分子は、L.ラムノサスGG菌株にかなり特異的である。
【0087】
Msp1は、そのグリコシル化状態とは無関係にキチナーゼ活性を示す
その後、本発明者らは、Msp1加水分解酵素とカンジダ細胞との間のこの相互作用をより詳細に調べることを目的とした。まず、本発明者らは、強力な抗菌糸株としてL.ラムノサスGGと、以前に試験された最も効果の低い株の1つであるL.プランタルムWCFS1との間で、菌糸細胞への結合を比較した(
図1A)。これらの菌株は、主要なペプチドグリカン加水分解酵素が完全に特性評価されている限られた数のラクトバチルス菌株に属している。それらの主要なペプチドグリカン加水分解酵素は両方とも、ラクトバチルス細胞の極に局在することが示されているが、それらは加水分解活性及びグリコシル化状態が異なるっており、Msp1はγ-D-グルタミル-L-リシル-エンドペプチダーゼ活性を記録しており、マンノース残基でグリコシル化されているようであるが、L.プランタルムWCFS1由来のAcm2はエンド-β-アセチルグルコサミニダーゼとして同定され、N-アセチルグルコサミン残基でグリコシル化されているようである。本発明者らは、最初に、これらの非類似性がラクトバチルス菌株と菌糸との異なる相互作用に反映されているかどうかを調べた。L.ラムノサスGGの存在下で誘導した後のC.アルビカンス菌糸の顕微鏡検査は、これらの乳酸桿菌がそれらの極部位で菌糸細胞と主に接触しているように見えることを明らかにした(
図5A)。L.ラムノサスGGとは対照的に、L.プランタルムWCFS1細胞は菌糸と密接に相互作用するようには見えず(
図5A)、菌糸へのL.ラムノサスGGの特異的結合がその抗菌糸活性にとって重要であることを示している。
【0088】
上に示唆されるように、Msp1とC.アルビカンス菌糸との間の結合が実際にそれらの糖-レクチン相互作用によるものであり得るかどうかを調べるため、本発明者らは、次に、グリコシル化されていないMsp1の活性を調査した。化学的脱グリコシル化後、菌糸阻害のレベルはネイティブ(グリコシル化)Msp1と同様であることが示され(
図5B)、別の予期しないメカニズムがおそらくMsp1の抗菌糸活性の根底にあることを示している。
【0089】
それらの異なる起源にもかかわらず、C.アルビカンスからのキチン及びL.ラムノサスGGからのペプチドグリカンは、それらの両方の骨格にN-アセチル-グルコサミン残基が存在するため、幾つかの構造的類似性を示す。このため、また乳酸桿菌の極と菌糸とが密接に接触しているため、本発明者らは、Msp1は菌糸細胞壁の主要なポリマーであるキチンを基質として使用することができる可能性があると仮定した。キチン-アズールを用いたアッセイに基づいて、本発明者らは、Msp1が実際に市販されているストレプトマイセス・グリセウス(Streptomycesgriseus)に由来するキチナーゼと同程度にキチンを分解することができることを見出した(
図5C)。次に、本発明者らは、キチナーゼ阻害剤がC.アルビカンス菌糸の形態形成をレスキューすることができるかどうかを判断した。既知のキチナーゼ阻害剤であるビスジオニンCは、菌糸の形態形成に対するMsp1の阻害効果を部分的に逆転させ(
図5D)、Msp1のキチナーゼ活性が実際にその抗菌糸能力の根底にあることを更に確認した。
【0090】
バイオインフォマティクス分析はL.カゼイ群のMsp1の保存された性質を示す
Blast解析をヌクレオチドレベルとタンパク質レベルの両方で実施した。ヌクレオチドレベルでは、L.ラムノサス、L.パラカゼイ、L.カゼイの3つの種で十分な相同性を持つタンパク質が見つかった。L.ラムノサス分類群の菌株のみが遺伝子全体(100%クエリカバー)を有することを示したのに対し、L.パラカゼイ及びL.カゼイは41%~44%のクエリカバレッジ及び最小で77%~80%のパーセント同一性を示した。タンパク質レベルでは、blastPはほとんどの相同タンパク質がラクトバチルス属菌群に由来することを明らかにした。
【0091】
L.ラムノサスは、93%~100%の範囲のパーセント同一性でタンパク質全体を含んでいた。L.パラカゼイ及びL.カゼイの幾つかの菌株にもタンパク質全体が含まれていたが、パーセント同一性又はクエリカバーのいずれかが低かった。C末端ドメインはエンドペプチダーゼを指すNlpC/P60ファミリーに属し、研究された全ての乳酸桿菌でほとんど保存されている。このドメインを欠くmsp1変異体はまだ菌糸を部分的に阻害することができたため、このドメインは完全なキチナーゼ活性には不十分であることが上で示された。したがって、N末端ドメインはまた、ラクトバチルス・ラムノサスGGのMsp1と最小で74.65パーセントの同一性で存在するはずである。
【0092】
変異体情報及びTFMS分析に加えて、バイオインフォマティクス分析は潜在的なキチナーゼドメインを示す
Msp1の生化学的特性はキチナーゼ活性を示したため、本発明者らは、msp1遺伝子(LGG_00031)によってコードされるタンパク質のキチナーゼ様ドメインを検出することができるかどうかを調査した。残念ながら、既知のキチナーゼ様ドメインは、BLAST解析では同定することができなかった。しかしながら、本発明者らがMsp1タンパク質の第1のドメイン(178アミノ酸残基)に対するBLASTp検索からラクトバチルス配列を除外すると、ヒットの1つはルミノコッカス(Ruminococcus)属種に由来する1型ドッケリン(dockerin)であった(同一性スコア34%)。1型ドッケリンドメインはエンドグルカナーゼに見られ、キチンはグルコース誘導体のポリマーであるため、キチナーゼとの類似性を示す可能性がある。
【0093】
次に、本発明者らは、Msp1と他のキチナーゼとの間の他の潜在的な構造上の類似点を調べた。本発明者らは、(酸性)哺乳動物キチナーゼの活性部位にある6つの高度に保存されたアミノ酸残基がMsp1配列の最初の部分にも存在することを見出した(Olland et al.,2009)。より具体的には、8つの保存された残基のうち6つが、L.ラムノサスGG由来のMsp1で互いに類似するか(Asp-136、Arg-145)又は等しい(Glu-140、Asp-213、His-269、Trp-360)距離で見つかった。
【0094】
セラチア・マルセッセンス(Serratiamarcescens)由来のキチナーゼの結晶構造の解明は、その触媒ドメインがα/βバレルドメインであることを示した(Perrakis et al., 1994)。これらのバレル構造は、相互接続された鎖及びループで構成されている(Tianand Bernstein, 2010)。オンラインツールのPredictProtein 2013(Yachdav et al., 2014)により、この部分がほぼ完全に鎖及びループで存在しているように見えることがわかったので、Msp1の最初の部分でも同様の構造が予測された。
【0095】
これにより、Msp1タンパク質は、キチナーゼ活性を担う、まだ説明されていない別の酵素ドメインをコードしていると考えられた。別のドメインの存在とそれに伴う活性に関する本発明者らの仮説は、多くの観察によって裏付けられている。まず、NlpC/p60ドメインは、498アミノ酸カウントタンパク質(aminoacid counting protein)(配列番号3)のC末端113アミノ酸のみを包含し、この遺伝子の最初の部分を追加のドメインで利用可能なまま残している。この最初の部分では、本発明者らは、既知のキチナーゼに対する幾らかの構造的類似性を見出した。考慮すべきもう1つの類似点は、Msp1がAktシグナル伝達を刺激することができることであり(Yanand Polk, 2002)、これは他のキチン結合タンパク質、例えばキチナーゼ-3様1タンパク質(Chitinase-3-like-1 protein/chitinase-3-like protein 1)についても説明されている(Chenet al., 2011)。これは、Msp1が二機能性酵素であることも意味し得る
【0096】
本発明で見つかったこれらの観察結果は、他の幾つか研究にも幾つかの更なる光を当てる。Ettinger及び同僚の研究では、L.ラムノサスGR-1(L.ラムノサスGGと同じMsp1/p75タンパク質を発現する)が心筋細胞の肥大の誘導を減弱する可能性があることを見出した。Ettingerらは、既知の抗アポトーシス特性に基づいて、これはMsp1の分泌によるものであると仮定したが(Ettingeret al., 2017)、これを確認することはできなかった。しかしながら、彼らはL.ラムノサスGR-1の挿入型変異体(既知の酵素エンドペプチダーゼドメインも欠いている)のみを使用し、精製されたMsp1は使用しなかったため、Msp1は依然として観察された活性の重要なエフェクターであると見なすことができる。マウス大腸炎モデルにおけるL.ラムノサスGG及びそのLTA変異体に関する本発明者らの以前の研究(Claeset al., 2011)では、Msp1及びMsp2は、抗炎症性のためにL.ラムノサスGGの抗大腸炎分子として提唱された。より最近では、ヒトキチナーゼ-3様1タンパク質がアポトーシス前タンパク質S100A8及びS100A9をダウンレギュレートすることができることが示されている(Lowet al., 2015)。これらのタンパク質は通常、大腸炎の間にアップレギュレートされ、疾患の発症に重要である。おそらく、Msp1のキチナーゼドメインもヒトキチナーゼ-3様1タンパク質と同じ部位を認識し、アポトーシス前タンパク質S100A89の発現に対して同じ活性を発揮する可能性がある。
参考文献
ChenC.C. et al. Carbohydrate-binding motif in chitinase 3-like 1 (CHI3L1/YKL-40)specifically activates Akt signaling pathway in colonic epithelial cells. Clin.Immunol.; 140(3): 268-75 (2011).
Claes,I.J. et al. Lessons from probiotic-host interaction studies in murine models ofexperimental colits. Mol. Nutr. Food Res., 55(10): 1441-53 (2011).
Claes,I.J. et al. Genetic and biochemical characterization of the cell wall hydrolaseactivity of major secreted protein of Lactobacillus rhamnosus GG; Plos One 7(2):e31588 (2012).
EttingerG., et al. Lactobacillus rhamnosus GR-1 attenuates induction of hypertrophy incardiomyocytes but not through secreted protein Msp-1 (p75). Plos one; 12(1):e0168622 (2017).
Koenoenen, E. and Wade, W.G., Actinomyces and relatedorganisms in human infections; Clin. Microbiol. Rev.; 28(2); 419-42 (2015).
Lebeer,S. et al. The major secreted protein Msp1/p75 is O-glycosylated in Lactibacillusrhamnosus GG. Microb. Cell Fact. 11, 15 (2012).
Lewis,K. Multidrug tolerance of biofilms and persister cells; Curr. Top. Microbiol.Immunol., 322: 107-311 (2008).
Low, D.et al. Chitinase 3-like 1 induces survival and proliferation of intestinal epithelialcells during chronic inflammation and colitis-associated cancer by regulating S100A9.Oncotarget, 6(34): 36535-50 (2015).
Olland,A.M. et al. Triad of polar residues implicated in pH specificity of acidicmammalian chitinase. Protein Sci., 18(3): 569-78 (2009).
Perrakis,A., et al. Crystal structure of a bacterial chitinase at 2.3 A resolution.Structure; 2(12): 1169-80 (1994).
Petrova,M.I. et al. Lectin-like molecules of Lactobacillus rhamnosus GG inhibitpathogenic Escherichia coli and Salmonella biofilm formation; Plos One 11, e0161337(2016).
Tian,P. and Bernstein, H.D. Moleculra baisis for the structural stability of anenclosed beta-barrel loop. J. Mol. Biol; 402(2): 475-89 (2010).
Yachdav,G. et al. PredictProtein - an open resource for online prediction of proteinstructural and functional features. Nucleic Acids Res.; 42: W337-43 (2014).
Yan, F.and Polk, D.B. Probiotic bacterium prevents cytokine-induced apoptosis inintestinal epithelial cells. J. Biol. Chem., 277(52): 50959-65 (2002).
【符号の説明】
【0097】
図面訳
図1A
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
L. rhamnosus L.ラムノサス
L. casei L.カゼイ
L. paracasei L.パラカゼイ
L. plantarum L.プランタルム
L. pentosus L.ペントサス
L. reuteri L.ロイテリ
L. fermentum L.ファーメンタム
L. gasseri L.ガセリ
L. jensenii L.ジェンセニイ
L. crispatus L.クリスパタス
図1B
Lactic acid (g/L) 乳酸(g/L)
D-lactic D-乳酸
L-lactic L-乳酸
図1C
Ratio hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
(normalised) (正規化)
C. tropicalis C.トロピカリス
図1D
Ratio hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
(normalised) (正規化)
C. dubliensis C.デュビリエンシス
図2A
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
+live L. rhamnosus GG +生きたL.ラムノサスGG
+L. rhamnosus GG CFS +L.ラムノサスGG CFS
+UV-inactivated L. rhamnosus GG +UV不活化L.ラムノサスGG
+heat-killed L. rhamnosus GG +加熱殺菌L.ラムノサスGG
図2B
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
図2C
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
図2D
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
(normalised) (正規化)
C. tropicalis C.トロピカリス
図2E
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
(normalised) (正規化)
C. dubliensis C.デュビリエンシス
図3A
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
lactic acid 乳酸
図3B
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
lactic acid 乳酸
D-lactic acid D-乳酸
L-lactic acid L-乳酸
図3C
C. albicans C.アルビカンス
lactic acid 乳酸
butyric acid 酪酸
図3D
Biofilm formation C. albicans (%) バイオフィルム形成C.アルビカンス(%)
C. albicans C.アルビカンス
lactic acid 乳酸
図4A
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
LGG pili MT LGG線毛MT
図4C
Proteins in culture supernatant 培養上清中のタンパク質
(% of total protein concentration) (総タンパク質濃度の%)
Wild type 野生型
dltD mutant dltD変異体
図4D
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
wild-type 野生型
mutant 変異体
図5B
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
図5C
negative control 陰性対照
chitinase (1 μg/mL) キチナーゼ(1 μg/mL)
図5D
Ratio of hyphae to yeast cells 酵母細胞に対する菌糸の比
C. albicans C.アルビカンス
Bisdionine C ビスジオニンC
【配列表】