(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スイッチング結合剤、その製造方法、及びそれを用いた薬学組成物、検査キット及び抗原と抗体との分析方法
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20240110BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240110BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240110BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240110BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240110BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240110BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240110BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240110BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240110BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240110BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C07K7/08
G01N33/531 Z ZNA
A61P35/00
A61P31/00
A61P5/14
A61P7/06
A61P37/08
A61P15/00
A61P19/06
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
(21)【出願番号】P 2022535164
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 KR2020017497
(87)【国際公開番号】W WO2021118156
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0162707
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0073508
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0138705
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519122725
【氏名又は名称】オプトレーン テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OPTOLANE Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シン,スン‐シク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ド・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ソン‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,キョン‐ハク
(72)【発明者】
【氏名】ピョン,ジェ‐チョル
【審査官】飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61P 39/00-39/44
G01N 33/48-33/98
A61P 35/00
A61P 31/00
A61P 5/14
A61P 7/06
A61P 37/08
A61P 15/00
A61P 19/06
A61K 47/68
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/PDB/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体のフレームワーク領域(FR)の少なくとも一部に可逆的に結合し、
前記抗体と特異的に反応するターゲット抗原が、前記抗体に結合する場合、前記フレームワーク領域から分離される、
スイッチング結合剤であって、
配列番号1:S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-E、
配列番号2:V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-K、
配列番号3:T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-K、
配列番号4:V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-Kのアミノ酸配列のうち何れか1つを含む、スイッチング結合剤。
【請求項2】
抗体の抗原結合部位を構成する重鎖のフレームワーク領域から選択されたアミノ酸配列を含み、
前記アミノ酸配列は、前記重鎖と共に前記抗原結合部位を構成する軽鎖のフレームワーク領域に可逆的に結合する第1抗体結合部を含む、
スイッチング結合剤であって、
配列番号1:S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-E、
配列番号2:V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-K、
配列番号3:T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-K、
配列番号4:V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-Kのアミノ酸配列のうち何れか1つを含む、スイッチング結合剤。
【請求項3】
抗体の抗原結合部位を構成する軽鎖のフレームワーク領域から選択されたアミノ酸配列を含み、
前記アミノ酸配列は、前記軽鎖と共に前記抗原結合部位を構成する重鎖のフレームワーク領域に可逆的に結合する第2抗体結合部を含む、
スイッチング結合剤であって、
配列番号1:S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-E、
配列番号2:V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-K、
配列番号3:T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-K、
配列番号4:V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-Kのアミノ酸配列のうち何れか1つを含む、スイッチング結合剤。
【請求項4】
前記第1抗体結合部は、-Y-、-I-、-W-及び-Q-のうち少なくとも何れか1つ以上のアミノ酸残基を含む、請求項2に記載のスイッチング結合剤。
【請求項5】
前記第2抗体結合部は、-Y-、-Q-、-P-、-L-及び-F-のうち少なくとも何れか1つ以上のアミノ酸残基を含む、請求項3に記載のスイッチング結合剤。
【請求項6】
抗体のフレームワーク領域(FR)のうち少なくとも一部に可逆的に特異的結合する第1抗体結合部または第2抗体結合部と、
前記抗体と特異的に反応するターゲット抗原が、前記抗体に結合する場合、前記抗体結合部を前記フレームワーク領域から分離されるように、前記第1抗体結合部または前記第2抗体結合部の前記フレームワーク領域に対する結合力を調節する結合力調節部と、を含む、
スイッチング結合剤であって、
配列番号1:S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-E、
配列番号2:V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-K、
配列番号3:T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-K、
配列番号4:V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-Kのアミノ酸配列のうち何れか1つを含む、スイッチング結合剤。
【請求項7】
前記結合力調節部は、-S-Y-W-I-H-W-V-K-、-R-P-G-Q-G-L-E-、-I-G-E-、-V-Y-、-C-A-R-E-P-T-G-T-G-、-Y-F-D-V-、-G-K-、-T-Y-L-E-W-Y-、-K-P-G-Q-S-、-K-、L-I-Y-K-、-C-F-Q-G-S-H-V-P-及び-T-K-のアミノ酸配列のうち1つ以上を含む、請求項
6に記載のスイッチング結合剤。
【請求項8】
前記第1抗体結合部または前記第2抗体結合部と前記結合力調節部とを単位構造体として含んで、前記抗体結合部と前記結合力調節部とが交互に連続して結合された、請求項
6に記載のスイッチング結合剤。
【請求項9】
請求項2または3に記載のスイッチング結合剤を含む、疾病スクリーニング、診断、予防または治療統合のための薬学組成物。
【請求項10】
請求項2または3に記載のスイッチング結合剤を含み、
前記スイッチング結合剤は、自然的または人為的な標識物質で標識され、
前記スイッチング結合剤が、フレームワーク領域に結合及び分離される量を測定して、抗体に対する抗原の結合力を測定する、検査キット。
【請求項11】
前記結合力は、抗体の抗原結合係数(Kd)の算出を通じて測定され、前記抗原結合係数(K
d)は、0.7×10
-6~3.4×10
-6Mの範囲である、請求項
10に記載の検査キット。
【請求項12】
前記検査キットは、前記抗体が固定されていない溶液内で前記抗体が抗原と結合する時の抗原結合係数(K
d)を測定する、請求項
10に記載の検査キット。
【請求項13】
請求項2または3に記載のスイッチング結合剤を含み、
前記スイッチング結合剤は、自然的または人為的な標識物質で標識され、
前記スイッチング結合剤が、フレームワーク領域に結合及び分離される量を測定して抗体及びターゲット抗原を識別または定量する、検査キット。
【請求項14】
前記検査キットは、免疫分析用キットであって、
前記免疫分析用キットは、ルミネックス分析、タンパク質マイクロアレイ分析、エライザ分析、免疫-PCR分析、キャプチャー-ELISA分析、ELISPOT分析、放射免疫分析(RIA)、ラテラルフロー免疫分析(LFIA)、フロースルー免疫分析(FTIA)、タンパク質マイクロ流体免疫分析、タンパク質キャピラリー電気泳動分析(CE)、電気化学バイオセンサー、放射性免疫沈降分析、免疫沈降分析、免疫組織化学染色分析、オクタロニー免疫拡散分析、阻害または競合分析、サンドイッチ分析、フローサイトメトリー分析、免疫電気泳動分析、組織免疫染色分析、補体結合分析、FACS分析、タンパク質チップ分析、免疫蛍光染色分析及び免疫親和性精製分析のキットである、請求項
13に記載の検査キット。
【請求項15】
抗体の抗原結合部位を構成するフレームワーク領域からスイッチング結合剤のアミノ酸配列を選択する工程と、
ターゲット抗原と特異的に結合する抗体に前記スイッチング結合剤を提供して、前記抗体のフレームワーク領域(FR)の少なくとも一部に可逆的に結合させる前処理工程と、
前記前処理工程の結果物内に前記ターゲット抗原を含むか否かの判断が必要な被分析物を提供する工程と、
前記フレームワーク領域に結合された残量のスイッチング結合剤または前記フレームワーク領域から分離されたスイッチング結合剤のうち少なくとも何れか1つを定量して、前記被分析物内に前記ターゲット抗原を識別または定量分析する分析工程と、を含
み、
前記スイッチング結合剤が、
配列番号1:S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-E、
配列番号2:V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-K、
配列番号3:T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-K、
配列番号4:V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-Kのアミノ酸配列のうち何れか1つを含む、スイッチング結合剤を利用した分析方法。
【請求項16】
前記前処理工程は、
前記抗体に前記スイッチング結合剤を提供して、前記抗体と前記スイッチング結合剤の第1結合体及び前記抗体と結合されていないスイッチング結合剤とを含む混合溶液を得る工程と、
前記混合溶液から前記抗体と前記結合されていないスイッチング結合剤とを除去する工程と、を含む、請求項
15に記載のスイッチング結合剤を利用した分析方法。
【請求項17】
前記スイッチング結合剤は、自然的または人為的な標識物質で標識され、
前記分析工程で、前記ターゲット抗原の分析は、標識反応を測定してなされる、請求項
15に記載のスイッチング結合剤を利用した分析方法。
【請求項18】
前記分析工程は、
前記抗体から分離されたスイッチング結合剤と前記抗体と前記ターゲット抗原の第2結合体とを分離する工程と、
前記分離されたスイッチング結合剤を識別または定量する工程と、をさらに含む、請求項
15に記載のスイッチング結合剤を利用した分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノアッセイ(immunoassay)技術に係り、より詳細には、スイッチング結合剤、その製造方法、及びそれを用いた薬学組成物、検査キット及び抗原と抗体との分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ技術分野において、多様な免疫診断検査または環境モニタリングのようなバイオ検査のために、イムノアッセイ(または、免疫検定法と称する)が使われている。前記イムノアッセイは、抗原-抗体反応が有する高度の特異性を用いて抗原または抗体の検出または定量方法であって、抗原や抗体のうち何れか一方または両方をさまざまな方法で標識した後、試料と反応させた後、試料に抗体または抗原があれば、抗原-抗体反応物が生じるので、標識した生成物を測定することにより、抗体または抗原を、定性的または定量的に測定することが可能であり、他の分析方法に比べて高い感度を有するという利点がある。
【0003】
前記イムノアッセイは、癌マーカー、感染性疾患、甲状腺機能、貧血、アレルギー、妊娠、薬物濫用または痛風の診断のような多様な診断に用いられる。前記イムノアッセイを多種の抗原の診断または分析に利用するためには、抗原のそれぞれに対して特異的な反応性を有する抗体を準備しなければならない。しかし、このような方法は、最近、急速に多様化されている現代化された疾病または多数の突然変異種を有するウイルスの感知に限界点がある。特に、前記ウイルスの場合、前記ウイルスと特異的結合性を有する抗体を確保することが不可能な場合も多数ある。
【0004】
また、前記抗原-抗体反応を用いる場合、前記抗体を標識物質と結合させる追加的な工程が要求される。前記標識物質と前記抗体との結合性が落ちる場合、イムノアッセイ分析の精度または信頼度が低下する。前述したように、従来のイムノアッセイには、多様な抗体ごとに結合することができる多種の標識物質をそれぞれ開発しなければならないという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、多種の疾病または該疾病の原因となる抗原を検出することができて、抗体の種類に制限されず、適用可能性が向上したスイッチング結合剤を提供するところにある。
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した利点を有するスイッチング結合剤を製造する方法を提供するところにある。
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した利点を有するスイッチング結合剤を用いて、分析の信頼度及び精度が向上した検査キットを提供することだけではなく、抗体に対する抗原の結合力を測定することができる検査キットを提供するところにある。
【0008】
本発明が解決しようとするさらに他の技術的課題は、前述した利点を有し、分析の信頼度及び精度が向上し、分析のための処理工程が簡素化されて迅速性及び使用容易性が向上した分析方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明の一実施例によるスイッチング結合剤は、抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)の少なくとも一部に可逆的に結合し、前記抗体と特異的に反応するターゲット抗原が、前記抗体に結合する場合、前記フレームワーク領域から分離される。他の実施例において、前記スイッチング結合剤は、前記抗体の3次元構造によって、前記フレームワーク領域に結合されうる。さらに他の実施例において、スイッチング結合剤は、少なくとも1つ以上の前記フレームワーク領域に結合可能な部分と少なくとも1つ以上の相補性決定領域(complementarity determining regions;CDR)に結合可能な部分とを含みうる。
【0010】
一実施例において、抗体の抗原結合部位を構成する重鎖のフレームワーク領域から選択されたアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、前記重鎖と共に前記抗原結合部位を構成する軽鎖のフレームワーク領域に可逆的に結合する第1抗体結合部を含みうる。他の実施例において、スイッチング結合剤は、抗体の抗原結合部位を構成する軽鎖のフレームワーク領域から選択されたアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、前記軽鎖と共に前記抗原結合部位を構成する重鎖のフレームワーク領域に可逆的に結合する第2抗体結合部を含みうる。さらに他の実施例において、前記スイッチング結合剤のアミノ酸配列は、重鎖または前記軽鎖のフレームワーク領域に隣接した相補性決定領域にも可逆的に結合することができる。
【0011】
一実施例において、前記スイッチング結合剤は、ペプチド、タンパク質、アプタマー、ナノボディ(nanobody)、ファージディスプレイ(phage display)、酵母ディスプレイ(yeast display)、及び抗体で構成された群から選択されうる。他の実施例において、前記スイッチング結合剤のアミノ酸の一部が、無機物で置換される。
【0012】
一実施例において、前記第1抗体結合部は、-Y-、-I-、-W-及び-Q-のうち少なくとも何れか1つ以上のアミノ酸残基を含みうる。他の実施例において、前記第2抗体結合部は、-Y-、-Q-、-P-、-L-及び-F-のうち少なくとも何れか1つ以上のアミノ酸残基を含みうる。さらに他の実施例において、前記スイッチング結合剤は、配列番号1:S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-E、配列番号2:V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-K、配列番号3:T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-K、配列番号4:V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-Kのアミノ酸配列のうち何れか1つを含みうる。
【0013】
一実施例において、前記第1抗体結合部は、前記軽鎖のフレームワーク領域と静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用及びこれらの組み合わせのうち少なくとも1つ以上によって結合するアミノ酸残基を含みうる。他の実施例において、前記第2抗体結合部は、前記重鎖のフレームワーク領域と静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用及びこれらの組み合わせのうち少なくとも1つ以上によって結合するアミノ酸残基を含みうる。
【0014】
一実施例において、前記スイッチング結合剤は、前記第1抗体結合部のアミノ酸変調によって抗体結合部位の結合力の調節が可能である。さらに他の実施例において、前記スイッチング結合剤は、前記第2抗体結合部のアミノ酸変調によって抗体結合部位の結合力の調節が可能である。さらに他の実施例において、前記スイッチング結合剤は、前記水素結合によって、前記スイッチング結合剤と前記フレームワーク領域との間に側鎖(side chain)の官能基結合またはペプチド結合の極性部位と結合が行われる。
【0015】
一実施例において、前記スイッチング結合剤は、前記スイッチング結合剤が、前記抗体の前記抗原結合部位に結合された場合、前記抗体と特異的に反応するターゲット抗原が、前記抗体に結合することにより、前記スイッチング結合剤は、前記抗体から分離される。他の実施例において、前記スイッチング結合剤の前記抗体結合部は、前記重鎖または前記軽鎖の前記抗原結合部位に4~8Åの範囲内に結合されうる。
【0016】
一実施例において、前記スイッチング結合剤は、自然的または人為的な標識物質で標識される。一実施例において、前記スイッチング結合剤は、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化された非ヒト抗体またはこれらの組み合わせと結合し、前記スイッチング結合剤が、前記抗体に結合された状態で前記抗体と前記ターゲット抗原との結合が可能である。
【0017】
一実施例において、前記スイッチング結合剤は、抗体のフレームワーク領域(FR)のうち少なくとも一部が、前記フレームワーク領域に可逆的に特異的結合する第1抗体結合部または第2抗体結合部;及び前記抗体と特異的に反応するターゲット抗原が、前記抗体に結合する場合、前記抗体結合部を前記フレームワーク領域から分離されるように、前記第1抗体結合部または前記第2抗体結合部の前記フレームワーク領域に対する結合力を調節する結合力調節部;を含みうる。他の実施例において、結合力調節部は、前記スイッチング結合剤内で前記第1抗体結合部または第2抗体結合部の位置または前記スイッチング結合剤の立体的形状を変調して、前記抗体に対する前記抗体結合部の結合力を調節することができる。
【0018】
一実施例において、前記結合力調節部は、-S-Y-W-I-H-W-V-K-、-R-P-G-Q-G-L-E-、-I-G-E-、-V-Y-、-C-A-R-E-P-T-G-T-G-、-Y-F-D-V-、-G-K-、-T-Y-L-E-W-Y-、-K-P-G-Q-S-、-K-、L-I-Y-K-、-C-F-Q-G-S-H-V-P-及び-T-K-のアミノ酸配列のうち1つ以上を含みうる。他の実施例において、前記第1抗体結合部または前記第2抗体結合部と前記結合力調節部とを単位構造体として含んで、前記抗体結合部と前記結合力調節部とが交互に連続して結合されうる。
【0019】
前記の課題を解決するための本発明の他の実施例による疾病スクリーニング、診断、予防または治療統合のための薬学組成物は、前記スイッチング結合剤を含みうる。一実施例において、前記薬学組成物において、前記スイッチング結合剤は、ペプチド、タンパク質、アプタマー、ナノボディ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、及び抗体で構成された群から選択されうる。他の実施例において、前記薬学組成物において、前記スイッチング結合剤は、配列番号1:S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-E、配列番号2:V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-K、配列番号3:T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-K、配列番号4:V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-Kのアミノ酸配列のうち何れか1つを含みうる。
【0020】
前記の課題を解決するための本発明のさらに他の実施例による検査キットは、前記スイッチング結合剤を含み、前記スイッチング結合剤は、自然的または人為的な標識物質で標識され、前記スイッチング結合剤が、フレームワーク領域に結合及び分離される量を測定して、抗体に対する抗原の結合力を測定することができる。一実施例において、前記スイッチング結合剤は、ペプチド、タンパク質、アプタマー、ナノボディ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、及び抗体で構成された群から選択されうる。他の実施例において、前記結合力は、抗体の抗原結合係数(Kd)の算出を通じて測定される。さらに他の実施例において、前記抗原結合係数(Kd)は、0.7×10-6~3.4×10-6Mの範囲を含みうる。
【0021】
一実施例において、前記検査キットは、前記スイッチング結合剤を含み、前記スイッチング結合剤は、自然的または人為的な標識物質で標識され、前記スイッチング結合剤が、フレームワーク領域に結合及び分離される量を測定抗体及びターゲット抗原を識別または定量することができる。他の実施例において、前記検査キットは、免疫分析用(immunoassay)キットであって、前記免疫分析用キットは、ルミネックス分析、タンパク質マイクロアレイ分析、エライザ(ELISA)分析、免疫-PCR分析(immuno-PCR)、キャプチャー-ELISA分析、ELISPOT分析、放射免疫分析(RIA)、ラテラルフロー免疫分析(lateral flow immunoassay;LFIA)、フロースルー免疫分析(flow-through immunoassay;FTIA)、タンパク質マイクロ流体(microfluidic)免疫分析、タンパク質キャピラリー電気泳動分析(capillary electrophoresis;CE)、電気化学バイオセンサー、放射性免疫沈降分析、免疫沈降分析、免疫組織化学染色分析、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散分析、阻害または競合分析、サンドイッチ分析、フローサイトメトリー(flow cytometry)、免疫電気泳動分析、組織免疫染色分析、補体結合分析(complement fixation assay)、FACS分析、タンパク質チップ分析、免疫蛍光染色分析及び免疫親和性精製分析のキットである。一実施例において、前記検査キットは、前記抗体が固定されていない溶液内で前記抗体が抗原と結合する時の抗原結合係数(Kd)を測定することができる。
【0022】
前記の課題を解決するための本発明のさらに他の実施例による前記スイッチング結合剤を利用した分析方法は、抗体の抗原結合部位を構成するフレームワーク領域からスイッチング結合剤のアミノ酸配列を選択する工程;ターゲット抗原と特異的に結合する抗体に前記スイッチング結合剤を提供して、前記抗体のフレームワーク領域(FR)の少なくとも一部に可逆的に結合させる前処理工程;前記前処理工程の結果物内に前記ターゲット抗原を含むか否かの判断が必要な被分析物を提供する工程;及び前記フレームワーク領域に結合された残量のスイッチング結合剤または前記フレームワーク領域から分離されたスイッチング結合剤のうち少なくとも何れか1つを定量して、前記被分析物内に前記ターゲット抗原を識別または定量分析する分析工程;を含みうる。他の実施例において、前記スイッチング結合剤は、ペプチド、タンパク質、アプタマー、ナノボディ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、及び抗体で構成された群から選択されうる。さらに他の実施例において、前記抗体は、基板、ビーズ(bead)、繊維、高分子構造体またはこれらの組み合わせである支持体に固定される。さらに他の実施例において、前記抗体は、固定されず、溶液に溶解された状態である。
【0023】
一実施例において、前記前処理工程は、前記抗体に前記スイッチング結合剤を提供して、前記抗体と前記スイッチング結合剤の第1結合体及び前記抗体と結合されていないスイッチング結合剤とを含む混合溶液を得る工程;及び前記混合溶液から前記抗体と前記結合されていないスイッチング結合剤とを除去する工程;を含みうる。一実施例において、前記スイッチング結合剤は、自然的または人為的な標識物質で標識され、前記分析工程で、前記ターゲット抗原の分析は、前記標識反応を測定してなされうる。前記分析工程は、前記抗体から分離されたスイッチング結合剤と前記抗体と前記ターゲット抗原の第2結合体とを分離する工程;及び前記分離されたスイッチング結合剤を識別または定量する工程;をさらに含みうる。
【0024】
前記の課題を解決するための本発明のさらに他の実施例による前記スイッチング結合剤の製造方法は、前記抗体の重鎖及び軽鎖の前記フレームワーク領域が互いに自己結合するアミノ酸配列を確認する工程;前記アミノ酸配列の疎水性指数を得る工程;及び前記疎水性指数を比較して、前記重鎖及び前記軽鎖の抗原結合部位を構成するフレームワーク領域のアミノ酸配列間の同じ性質を有する部分の前記アミノ酸配列を含むスイッチング結合剤を選択する工程;を含みうる。一実施例において、前記アミノ酸配列は、前記フレームワーク領域に隣接した相補性決定領域を含みうる。一実施例において、前記スイッチング結合剤は、ペプチド、アプタマー、タンパク質、ナノボディ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、及び抗体で構成された群から選択されうる。他の実施例において、前記アミノ酸配列は、静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用及びこれらの組み合わせのうち少なくとも1つ以上によって結合することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施例によるスイッチング結合剤は、抗体の抗原結合部位、特に、抗体ごとに同一または非常に類似したアミノ酸配列を有したフレームワーク領域から選択されて、多種の抗体に結合が可能であり、抗体の種類に関係なく抗体と前記抗体に結合する抗原の識別またはこれらの定量のための分析に用いられ、前記選択されたアミノ酸配列の変調を通じて抗体に結合する結合力を調節できるという利点がある。多種の抗体に結合が可能であって、抗体の種類に関係なく抗体と前記抗体に結合する抗原の識別またはこれらの定量のための分析に用いられ、抗体に対する結合力を調節できるという利点がある。
【0026】
本発明の他の実施例によるスイッチング結合剤の製造方法は、抗体の抗原結合部位、特に、フレームワーク領域から抽出されることを特徴として、多様な抗体に結合することができるスイッチング結合剤を製造できるという利点がある。
【0027】
本発明のさらに他の実施例によるウイルスまたは疾病スクリーニング、診断、予防または治療統合のための薬学組成物は、前述した利点を有するスイッチング結合剤を用いて、多様なウイルスを含む抗原に対する診断、予防または治療のための薬剤を開発できるという利点がある。
【0028】
本発明のさらに他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した検査キットは、前述した利点を有するスイッチング結合剤を用いて、抗原と抗体との識別及び定量だけではなく、抗原の抗体に対する結合力を測定できるという利点がある。
【0029】
本発明のさらに他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法は、前述した利点を有するスイッチング結合剤を用いて、抗体または抗原のような分析対象物を洗浄するか、試薬処理を追加する工程を省略して、抗原の結合の有無及び結合量を迅速に分析可能であり、使用容易性が向上したイムノアッセイが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】本発明の一実施例によるフレームワーク領域から抽出されたスイッチング結合剤とフレームワーク領域との結合に関する図面である。
【
図1B】本発明の一実施例によるスイッチング結合剤の構成を示す図面である。
【
図2】本発明の他の実施例によるフレームワーク領域に対するスイッチング結合剤の結合を示す図面である。
【
図3】本発明の一実施例によるスイッチング結合剤を示す図面である。
【
図4A】本発明の一実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法のフローチャートである。
【
図4B】本発明の他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法のフローチャートである。
【
図4C】本発明のさらに他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法のフローチャートである。
【
図5A】配列番号2のスイッチング結合剤と配列番号3のスイッチング結合剤との間の結合を示す図面である。
【
図5B】配列番号2のスイッチング結合剤と配列番号3のスイッチング結合剤との間の結合を示す図面である。
【
図5C】配列番号2のスイッチング結合剤と配列番号3のスイッチング結合剤との間の相互作用を部位別に表示したグラフである。
【
図5D】配列番号2のスイッチング結合剤と配列番号3のスイッチング結合剤と間の疎水性指数を示す図面である。
【
図5E】配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間のFRET分析グラフである。
【
図6A】配列番号1のスイッチング結合剤と配列番号4のスイッチング結合剤との間の結合を示す図面である。
【
図6B】配列番号1のスイッチング結合剤と配列番号4のスイッチング結合剤との間の結合を示す図面である。
【
図6C】配列番号1のスイッチング結合剤と配列番号4のスイッチング結合剤との間の相互作用を部位別に表示したグラフである。
【
図6D】配列番号1のスイッチング結合剤と配列番号4のスイッチング結合剤との間の疎水性指数を示す図面である。
【
図6E】配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間のFRET分析結果を示すグラフである。
【
図7A】スイッチング結合剤別の抗体-結合力の測定結果を示す図面である。
【
図7B】抗体に結合するスイッチング結合剤別の結合力に対するSPR分析結果を示す図面である。
【
図7C】抗体に結合するペプチドの抗体Fab部位結合に対する結果を示す図面である。
【
図7D】抗体に結合するペプチドの抗体Fab部位結合に対する結果を示す図面である。
【
図8A】本発明の一実施例によるスイッチング結合剤の分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図8B】本発明の一実施例によるスイッチング結合剤の分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図8C】本発明の一実施例によるスイッチング結合剤の分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図8D】本発明の一実施例によるスイッチング結合剤の分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図9A】本発明の他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図9B】本発明の他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図10A】本発明のさらに他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図10B】本発明のさらに他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図10C】本発明のさらに他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法による分析結果を示すグラフである。
【
図10D】本発明のさらに他の実施例によるスイッチング結合剤を利用した分析方法による分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して、本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。
【0032】
本発明の実施例は、当業者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものであり、下記の実施例は、さまざまな他の形態に変形され、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。むしろ、これらの実施例は、本開示を、さらに充実かつ完全にし、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0033】
図面で同じ符号は、同じ要素を称する。また、本明細書で使われたように、用語「及び/または」は、当該列挙された項目のうち何れか1つ及び1つ以上のあらゆる組み合わせを含む。
【0034】
本明細書で使われた用語は、実施例を説明するために使われ、本発明の範囲を制限するためのものではない。また、本明細書で単数で記載されているとしても、文脈上、多数を明らかに指摘するものではなければ、複数の形態を含みうる。また、本明細書で使われる「含む。(comprise)」及び/または「含む(comprising)」という用語は、言及した形状、数字、工程、動作、部材、要素及び/またはこれらのグループの存在を特定するものであり、他の形状、数字、動作、部材、要素及び/またはグループの存在または付加を排除するものではない。
【0035】
本明細書において、基板または他の層「上に(on)」形成された層に対する言及は、前記基板または他の層の真上に形成された層を称するか、前記基板または他の層上に形成された中間層または中間層上に形成された層を称してもよい。また、当該技術分野で熟練した者において、他の形状に「隣接して(adjacent)」配された構造または形状は、前記隣接した形状に重なるか、下部に配される部分を有してもよい。
【0036】
本明細書において、「下に(below)」、「上に(above)」、「上部の(upper)」、「下部の(lower)」、「水平の(horizontal)」または「垂直の(vertical)」のような相対的用語は、図面上に示したように、一構成部材、層または領域が他の構成部材、層または領域と有する関係を記述するために使われる。これらの用語は、図面に表示された方向だけではなく、素子の他の方向も包括するものであることを理解しなければならない。
【0037】
以下、本発明の実施例は、本発明の理想的な実施例(及び中間構造)を概略的に図示する断面図を参照して説明される。これらの図面において、例えば、部材の大きさと形状は、説明の便宜と明確性とのために誇張され、実際具現時に、示された形状の変形が予想される。したがって、本発明の実施例は、本明細書に示された領域の特定形状に制限されたと解析されてはならない。また、図面の部材の参照符号は、図面の全体にわたって同じ部材を称する。
【0038】
本明細書で使われる用語「ペプチド」は、アミノ酸重合体鎖であり、第1アミノ酸のアミノ基と前記第1アミノ酸に隣接した第2アミノ酸のカルボキシ基とが水分子を失いながら縮合して重合されるアミドである。本明細書に説明されるあらゆるペプチド配列は、慣例によって左にN末端の端と右にC末端の端とを有する順序で記載される。また、本発明において、「ペプチド」という用語は、天然または合成タンパク質、タンパク質断片、タンパク質配列のペプチド類似体を称する。前記類似体は、適切な空間的配向において、これに相応する基本的アミノ酸またはペプチドが示すサイズ、電荷または疎水性などの類似した物理的特性を示す物質として定義される。例えば、ペプチド類似体は、1つまたはそれ以上のアミノ酸の間に存在するアミド結合が炭素-炭素結合または当業者に公知の他の結合で置換された化合物である。また、本発明において、用語「ペプチド(peptide)」は、「タンパク質(protein)」及び「ポリペプチド(polypeptide)」という用語と互換的に使われ、これは、複数個のアミノ酸がペプチド結合によって連結された化合物であって、アミノ酸残基の個数が10個以上50個以下である分子構造体を称する。
【0039】
本明細書で使われる用語「アミノ酸」は、広義的概念として自然的に発生するアミノ酸とその残基だけではなく、化学的に変形されたアミノ酸、すなわち、アミノ酸模倣体及び類似物を含み、本発明において、前記模倣体及び類似物は、機能的等価物を含みうる。
【0040】
本明細書で使われる用語「アプタマー(aptamer)」は、それ自体で安定した3次元構造を有し、特定物質に高親和性及び特異性で結合することができるDNA核酸分子を意味する。前記アプタマーは、当該技術分野によく知られた方法で製造可能であり、前記方法は、必要に応じて適切に変形されうる。
【0041】
本明細書で使われる用語「抗原-抗体反応」は、免疫応答過程で白血球のB細胞から生成された抗体と抗原との間の特定の化学相互作用である。多種の抗体と抗原との間で、それぞれの抗体は、特定の抗原のみに結合することができる。前記結合の特異性は、それぞれの前記抗体の特定の化学的構造のためである。前記抗原は、静電相互作用、水素結合、バンデルワールズ結合、そして、疎水性相互作用のような弱い非共有結合を通じて抗体と結合する。
【0042】
本明細書で使われる用語「抗体」は、2本の重鎖と2本の軽鎖とで構成された基本的な4-ポリペプチド鎖で構成されたものを称し、前記鎖は、互いにジスルフィド結合によって安定化され、抗原に特異的に結合する能力を有した糖タンパク質であって、抗原結合部分を含む任意の分子構造体を含む。
【0043】
前記抗体は、血清の基本構成要素であり、前記抗体、免疫グロブリン分子またはその断片の集合体であり、抗体または免疫グロブリンの単一分子である。前記抗体分子は、抗原または前記抗原のエピトープのような特異的な抗原決定基に結合されるか、前記抗原決定基と反応することにより、抗原に抗体が結合すれば、その抗体をNK(natural killer)細胞が認識して除去する抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(antibody-dependent cellular cytotoxicity;ADCC)のような免疫学的エフェクターメカニズムを誘導することができる。前記抗体は、単一特異的(monospecific)であり、前記抗体の組成物は、同じ抗体で構成されてモノクローナルであり、同じ抗原の他のエピトープまたは他の抗原のエピトープと反応する他種の抗体を含んだポリクローナルである。各抗体は、前記抗体の対応する抗原に対する特異的な結合を可能にする独特な構造を有しうる。
【0044】
前記抗体は、抗体、抗体誘導体またはその断片が含まれ、抗体に関する詳細な説明は、本発明の抗体選別方法にも適用される。抗体は、前記断片のうち、ポリペプチドのような抗体の等価物または抗体ホモログは、Fc領域、免疫グロブリン結合ドメイン、結合ドメインを模倣するペプチド、Fc領域に相同性である領域または少なくともその一部を含む。また、抗体は、他のポリペプチドに融合された免疫グロブリン結合ドメインを含むキメラ分子またはその等価物を含みうる。具体的に、前記抗体は、完全な(intact)免疫グロブリン分子であり、Fab、Fab´、F(ab´)2、Fc、VHH、Fv、N-グリカン構造及びパラトープのような前記抗体の構成部分及び前記構成部分のうち少なくとも一部を含みうる。
【0045】
前記抗原結合断片(fragment antibody binding;Fab)は、抗原結合部位を含む抗体の抗原結合断片であり、軽鎖の可変領域(VL)及び不変領域(CL)を含む軽鎖断片、及び重鎖の可変領域(VH)及び第1不変領域(CH1)を含む抗体断片を意味する。
【0046】
前記フラグメント結晶化可能領域(fragment crystallizable region;Fc領域)は、抗原と結合しないが、結晶を形成する部分に該当し、一般的に、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチド配列を含む二量体複合体を言う。Fc領域は、天然または変異Rc配列を含みうる。免疫グロブリンの重鎖でFc配列の境界が複数個であるが、IgG重鎖Fc配列は、通常の位置Cys226のアミノ酸残基または位置Pro230付近からFcのカルボキシル末端に伸びると定義される。免疫グロブリンのFc配列は、一般的に重鎖の2個の定常領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意でCH4ドメインを含む。例えば、天然抗体で、Fcドメインは、IgG、IgA及びIgDアイソタイプ(isotype)で抗体の2個の重鎖のCH2及びCH3から由来した2個の同じタンパク質断片からなり、IgM及びIgE Fcドメインは、それぞれのポリペプチド鎖で3個の重鎖定常ドメインであるCH2ないしCH4を含有する。Fc領域は、タンパク質を集めておけば、結晶を形成することができるが、これは、たとえIgG抗体の抗原特異性が異なるとしても、前記Fc領域を構成するタンパク質のアミノ酸配列が互いに同じであるというものであって、抗原との結合には関与しないというものである。また、前記Fc領域は、一定の数のアミノ酸残基を1つの区分にして-S-S-ループによって高次構造を形成し、各区分は、ペプチド結合で連結されている。
【0047】
前記Fv(fragment variable)は、抗原と直接結合する抗体の可変部位であって、重鎖可変部位(heavy chain variable domain;VH)と軽鎖可変部位(light chain variable domain;LH)とで構成されている。
【0048】
前記VHHは、軽鎖のない単一ドメイン分子であって、ナノボディとも呼ばれる単一可変ドメイン(single variable domain)であって、天然発生単一ドメイン分子は、ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びグアナコのようなラクダ類とサメから由来または収得され、抗体分子を組み替えて確保することができる。
【0049】
前記抗体において、前記重鎖または軽鎖は、それぞれ可変領域(variable region)及び定常領域(constant region)を含みうる。前記可変領域は、抗原に対する特異性を有しており、抗体ごとに互いに異なる。前記可変領域は、超可変領域(hypervariable region;HVR)、すなわち、相補性決定領域(CDRs)及び前記相補性決定領域を支持するフレームワーク領域(FR)を含みうる。前記相補性決定領域(CDR)は、抗体ごとに異なるアミノ酸配列を有して、それぞれの抗原と特異的に結合することができる。
【0050】
前記フレームワーク領域(FR)は、超可変領域残基以外の定常ドメイン残基を称する。定常ドメインの前記フレームワーク領域(FR)は、一般的に4個のFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4からなるものであって、可変領域に存在する前記CDR以外の領域に、3個のCDRを連結する踏み台の役割を行って、前記CDRの構造的安定性に寄与する。また、フレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列は、抗体の種類、すなわち、抗体の発現種が変わっても、相補性決定領域(CDR)に比べて変化が少ない特徴がある。したがって、前記CDR及び前記FR配列は、一般的に重鎖の可変領域(VH)または軽鎖の可変領域(VL)で下記の順序で表われる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。前記重鎖及び軽鎖の可変領域の2個が合わせられて抗原結合部位(antigen binding site)を形成するものである。
【0051】
前記定常領域は、抗体ごとに実質的に同一である。前記定常領域は、一般的にタンパク質に選択的に結合して生物学的活性を調節する小分子であるエフェクター(effector)細胞のような免疫系の多様な細胞及び典型的な補体システムの構成要素を含む宿主組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介することができる。以下、本発明の多様な実施例について詳しく説明する。
【0052】
図1Aは、本発明の一実施例によるスイッチング結合剤100が抗体10のフレームワーク領域(FR、FR´)に結合されたものを図示する。
【0053】
図1Aを参照すれば、スイッチング結合剤100は、抗体10の抗原結合部位15を構成する軽鎖(V
L)のフレームワーク領域(FR´)に可逆的に結合する第1スイッチング結合剤(HA、HB)または重鎖(V
H)のフレームワーク領域(FR)に可逆的に結合する第2スイッチング結合剤(LA、LB)を含む。
【0054】
第1スイッチング結合剤(HA、HB)は、抗体10の抗原結合部位15を構成する重鎖(VH)のフレームワーク領域(FR)から選択されたアミノ酸配列を含みうる。同様に、第2スイッチング結合剤(LA、LB)は、抗体10の抗原結合部位15を構成する軽鎖(VL)のフレームワーク領域(FR´)から選択されたアミノ酸配列を含みうる。
【0055】
他の実施例において、スイッチング結合剤100は、フレームワーク領域(FR、FR´)とフレームワーク領域(FR、FR´)に隣接した相補性決定領域(CDR、CDR´)とを含むアミノ酸配列から選択されたアミノ酸を含みうる。例えば、
図1Aに示されたように、第1スイッチング結合剤(HA、HB)のアミノ酸配列は、重鎖(V
H)の相補性決定領域(CDR)のうち、CDR1領域(CDR1)とフレームワーク領域(FR)とのうち、FR2領域(FR2)の配列の一部または全部を含むアミノ酸配列(以下、HAR部位(HAR)と称する)または重鎖(V
H)のCDR3領域(CDR3)とFR3領域(FR3)との一部または全部を含むアミノ酸配列(以下、HBR部位(HBR)と称する)から選択されうる。
【0056】
同様に、第2スイッチング結合剤(LA、LB)のアミノ酸配列は、軽鎖(VL)の互いに隣接したフレームワーク領域(FR´)のうち、FR2´領域(FR2´)の一部または全部と、これに隣接した相補性決定領域(CDR´)とのうち、CDR1´領域(CDR1´)の一部または全部を含むアミノ酸配列(以下、LAR部位(LAR)と称する)または軽鎖(VL)の互いに隣接したフレームワーク領域(FR´)のうち、FR3´領域(FR3´)の一部または全部と、これに隣接した相補性決定領域(CDR´)とのうち、CDR3´領域(CDR3´)の一部または全部を含むアミノ酸配列(以下、LBR部位(LBR)と称する)から選択されうる。
【0057】
抗体10のHAR部位(HAR)とLBR部位(LBR)及びHBR部位(HBR)とLAR部位(LAR)は、互いに相互自己結合または形状学的交差結合が可能であるために、抗原結合部位15に3次元らせん構造を有し得る。また、前記部位(HAR、LAR、HBR、LBR)は、フレームワーク領域(FR、FR´)を必須構成で有するために、前述した相互結合特性を通じて抗体10の構造を支持する。本発明の実施例によるスイッチングペプチド100は、抗体10の前記部位が有するアミノ酸配列を含むために、抗体10の抗原結合部位に自己結合または交差結合が可能である。
【0058】
本発明のスイッチング結合剤100は、
図1Aに示されたHAR部位(HAR)、HBR部位(HBR)、LAR部位(LAR)またはLBR部位(LBR)から選択されるものに限定されるものではない。これは、フレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列から多様に選択されうる。例えば、FR3領域(FR3)またはFR3´領域(FR3´)でスイッチング結合剤100のアミノ酸配列が選択され、FR領域(FR)を連結して使用した配列も使われる。一実施例において、FR領域(FR、FR´)のうち少なくとも何れか1つを必ず含む部位であって、FR1領域(FR1)、FR1領域(FR1)とCDR1領域(CDR1)、FR2領域(FR2)、FR1領域(FR1)ないしFR2領域(FR2)またはFR2領域(FR2)ないしFR3領域(FR3)のような重鎖(V
H)の領域またはFR1´領域(FR1´)、FR1´領域(FR1´)とCDR1´領域(CDR1´)、FR2´領域(FR2´)、FR1´領域(FR1´)ないしFR2´領域(FR2´)またはFR2´領域(FR2´)ないしFR3´領域(FR3´)のような軽鎖(V
L)の領域から選択されたアミノ酸配列の場合も含まれうるということは明らかである。このように、スイッチング結合剤100は、相補性決定領域(CDR、CDR´)に比べて、多様な抗体にも拘らず、同一または非常に類似した配列を有する特徴があるフレームワーク領域(FR、FR´)のアミノ酸配列を必須構成で含んで設計されるために、抗体または抗原の種類に関係なく抗体の抗原結合部位に結合が可能となる。これに係わる多様な実施例は、
図2で詳しく説明する。
【0059】
第1スイッチング結合剤(HA、HB)は、前述した抗体10の構造的相互結合特性によって、軽鎖(VL)のフレームワーク領域(FR´)のうち少なくとも何れか1つに可逆的に結合することができる。例えば、第1スイッチング結合剤(HA)は、LBR部位(LBR)と、第1スイッチング結合剤(HB)は、LAR部位(LAR)と相互結合することができる。同様に、第2スイッチング結合剤(LA、LB)は、重鎖(VH)のフレームワーク領域(FR)のうち少なくとも何れか1つに可逆的に結合することができる。例えば、第2スイッチング結合剤(LA)は、HAR部位(HAR)と、第2スイッチング結合剤(LB)は、HBR部位(HBR)と相互結合することができる。これは、スイッチング結合剤100が抗体10の抗原結合部位15を構成するフレームワーク領域(FR、FR´)に結合して、抗体10の抗原結合部位15の構造を支持する。
【0060】
一実施例において、第1スイッチング結合剤(HA、HB)は、第1抗体結合部(
図5BのAB1及び
図6BのAB1´)を含みうる。前記第1抗体結合部(AB1、AB1´)によって、第1スイッチング結合剤(HA、HB)は、抗体10の軽鎖(V
L)のフレームワーク領域(FR´)と主要に結合することができる。一実施例において、第1抗体結合部(AB1、AB1´)は、-Y-、-I-、-W-及び-Q-のうち少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を含みうる。第1抗体結合部(AB1、AB1´)は、抗体10の重鎖(V
H)から選択されたアミノ酸配列のうち、抗体10の軽鎖(V
L)と特異的に結合するアミノ酸残基を含みうる。
【0061】
一実施例において、第1抗体結合部(AB1、AB1´)を含む配列として、望ましくは、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列を有しうる。前記アミノ酸配列のうち、下線を引いたアミノ酸残基は、第1抗体結合部(AB1、AB1´)である。アミノ酸配列のNターミナルからCターミナル方向のアミノ酸配列は、次の通りである。
【0062】
配列番号1(以下、H1と称する):S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-E
配列番号2(以下、H2と称する):V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-K
【0063】
配列番号1(H1)の場合、アミノ酸配列のうち、9番目のアミノ酸残基であるQと17番目のアミノ酸残基であるWは、第1抗体結合部(AB1´)である。配列番号2(H2)の場合、アミノ酸配列のうち、3番目のアミノ酸残基であるY、13番目のアミノ酸残基であるIと18番目のアミノ酸残基であるWは、第1抗体結合部(AB1)である。これについての詳細な説明は、
図5Aないし
図6Eで詳しく説明する。
【0064】
前述した配列番号1及び配列番号2は、非制限的な例示であり、本発明の実施例は、相互結合することができる重鎖(VH)のフレームワーク領域(FR)から選択されたアミノ酸配列を含む如何なる物質でもある。
【0065】
一実施例において、第2スイッチング結合剤(LA、LB)は、第2抗体結合部(
図5BのAB2及び6bのAB2´)を含みうる。第2抗体結合部(AB2)は、第2スイッチング結合剤(LA、LB)を抗体10の重鎖(V
H)のフレームワーク領域(FR)に結合させる。一実施例において、第2抗体結合部(AB2、AB2´)は、-Y-、-Q-、-P-、-L-及び-F-のうち少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を含みうる。第2抗体結合部(AB2、AB2´)は、抗体10の軽鎖(V
L)から選択されたアミノ酸配列のうち、抗体10の重鎖(V
H)と特異的に相互結合することができるアミノ酸残基を含みうる。
【0066】
一実施例において、第2抗体結合部(AB2、AB2´)を含むアミノ酸配列として、望ましくは、スイッチング結合剤100は、配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列のうち1つを含みうる。前記アミノ酸配列のうち、下線を引いたアミノ酸残基は、第2抗体結合部(AB2、AB2´)である。アミノ酸配列のNターミナルからCターミナル方向のアミノ酸配列は、次の通りである。
【0067】
配列番号3(以下、L1と称する):T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-K
配列番号4(以下、L2と称する):V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-K
【0068】
配列番号3の場合、アミノ酸配列のうち、6番目のアミノ酸残基であるY、8番目のアミノ酸配列であるQ、14番目のアミノ酸残基であるPと16番目のアミノ酸残基であるLは、第2抗体結合部(AB2)である。配列番号4の場合、アミノ酸配列のうち、3番目のアミノ酸残基であるY、12番目のアミノ酸残基であるFは、第2抗体結合部(AB2´)である。
【0069】
これは、非制限的なものであって、互いに自己結合することができる軽鎖(VL)のフレームワーク領域(FR)を含む抗原結合部位15から選択されたアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を何れも含みうる。
【0070】
一実施例において、前記第1抗体結合部(AB1、AB1´)または第2抗体結合部(AB2、AB2´)は、前記重鎖(V
H)または軽鎖(V
L)のフレームワーク領域(FR、FR´)と静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用及びこれらの組み合わせのうち少なくとも1つ以上によって結合することができる。例えば、スイッチング結合剤100を構成する第1抗体結合部(AB1、AB1´)及び第2抗体結合部(AB2、AB2´)は、フレームワーク領域(FR、FR´)と側鎖の官能基またはペプチド結合の極性部位と水素結合によって相互結合することができる。但し、前記第1抗体結合部(AB1、AB1´)及び第2抗体結合部(AB2、AB2´)は、前記側鎖による官能基とペプチド結合の極性部位を通じた相互結合に限定されるものではなく、極性だけではなく、無極性結合の場合のように、スイッチング結合剤100と抗体10のフレームワーク領域(FR、FR´)と結合することができる多様な結合例示も含みうる。他の実施例において、スイッチング結合剤100は、結合力調節が可能に設計され、これについての詳細な説明は、
図1Bで後述する。
【0071】
一実施例において、抗体10のフレームワーク領域(FR、FR´)に可逆的に結合されたスイッチング結合剤100は、抗体10と特異的に反応するターゲット抗原(
図4Aの20)が抗体10に結合される場合、フレームワーク領域(FR、FR´)から分離される。ターゲット抗原20が抗体10と結合されれば、ターゲット抗原20またはスイッチング結合剤100と結合されていない状態の抗体10の濃度が減少することができ、前記濃度の減少によって抗体10とスイッチング結合剤100との結合反応の平衡を保持するために、スイッチング結合剤100が結合された抗体10の濃度も減少する。他の実施例において、スイッチング結合剤100がフレームワーク領域(FR、FR´)に結合された抗体10がターゲット抗原20と結合される場合、ターゲット抗原20の立体障害(steric hindrance)効果によってスイッチング結合剤100がフレームワーク領域(FR、FR´)から離れ落ちる。これは、非制限的な例示であって、抗体10にターゲット抗原20が結合する場合、多様な要因によってスイッチング結合剤100とフレームワーク領域(FR、FR´)との結合が弱化するか、破壊され、前述した例示は、本発明を限定するものではない。
【0072】
一実施例において、スイッチング結合剤100は、ターゲット抗原20が抗体10に結合する過程に影響を及ぼさない。例えば、スイッチング結合剤100は、抗体のフレームワーク領域(FR、FR´)の一領域のアミノ酸配列を含んでフレームワーク領域(FR、FR´)の一部またはそれを含む隣接領域(HAR、HBR)と結合されており、ターゲット抗原20は、抗体10の相補性決定領域(CDR、CDR´)を認識して抗体10と結合するので、ターゲット抗原20は、スイッチング結合剤100が結合された抗体10に結合されうる。以後、ターゲット抗原20と抗体10との結合は、ターゲット抗原20に立体障害効果を発生させることにより、結合されていたスイッチング結合剤100の分離を起こして、ターゲット抗原20の検出または分析を可能にする。
【0073】
一般的に、抗原-抗体反応は、非特異的反応が多くて制御が難しく、洗浄工程または追加的な試薬処理を必要とする。本発明のスイッチング結合剤100は、抗体10に対する結合と分離との特異的動作を行うスイッチング特性を有するが、前記洗浄工程の段階を省略しながらも、迅速かつ正確に一段階(one-step)で抗原の定量及び分析を可能にするという利点がある。
【0074】
図1Bは、本発明の一実施例によるスイッチング結合剤100の基本構成を示す図面である。
【0075】
図1Bを参照すれば、スイッチング結合剤100は、結合力調節が可能である。例えば、抗体結合部(AB)のアミノ酸変調によってスイッチング結合剤100の結合力調節が可能である。具体的に、相互結合を行うスイッチング結合剤100と抗原結合部位15を構成するフレームワーク領域(FR、FR´)とのアミノ酸配列上の立体構造を考慮して選別することができ、前記選別されたアミノ酸配列の変調によってスイッチング結合剤100とフレームワーク領域(FR、FR´)との間の抗体結合部位15の結合力調節が可能である。これを通じて、多様な種の抗体10に結合することができるスイッチング結合剤100を提供することができる。
【0076】
スイッチング結合剤100は、抗体結合部(AB、
図1Bにおいて、第1抗体結合部(AB1、AB1´)または第2抗体結合部(AB2、AB2´)を称する)と抗体結合部(AB)に結合された結合力調節部(bonding strength regulating portion、BR)とを基本単位構成として含みうる。
図1Bには、抗体結合部(AB)と結合力調節部(BR)とが互いに連結された「抗体結合部(AB)-結合力調節部(BR)」を基本構成の単一体として例示しているが、これは、例示的なものであって、例えば、-抗体結合部(AB)-結合力調節部(BR)-抗体結合部(AB)-、-抗体結合部(AB)-結合力調節部(BR)-抗体結合部(AB)-結合力調節部(BR)-のように、抗体結合部(AB)-結合力調節部(BR)を単位構造体として含んで抗体結合部(AB)と結合力調節部(BR)-とが連続して結合されて拡張された重合体鎖を具現することができる。
【0077】
抗体結合部(AB)は、互いに異なる多様な種の抗体を認識して結合することができるスイッチング結合剤100のアミノ酸配列を含みうる。抗体結合部(AB)は、多種の抗体で同一または類似したアミノ酸配列を有する抗体の重鎖または軽鎖の抗原結合部位内に含まれる可変領域のフレームワーク領域(FR、FR´)の少なくとも一部に特異的に、または選択的に結合してから再び分離可能な、すなわち、可逆的に結合することができる。このような特性は、例えば、後述するスイッチング結合剤100の構造的特性によって起こりうるが、これに限定されるものではなく、スイッチング結合剤100の全体または一部が抗体のフレームワーク領域の少なくとも一部に可逆的に結合する場合を含むものである。このような、抗体結合部101は、抗体のフレームワーク領域(FR)に結合されるために、多様な抗体に適用可能であるという利点がある。
【0078】
また、スイッチング結合剤100は、抗体が抗原と選択的な結合を起こすidiotope、すなわち、相補性決定領域(CDR)部位ではないこれらの相補性決定領域(CDR)部位の間に存在するフレームワーク領域(FR)部位に選択的な結合を行うために、特定抗原との結合を妨害するのに使われる抗イディオタイプ(anti-idiotype)抗体とは異なって、抗原結合特異性に関係なく多様な抗体、特に、IgG抗体に結合される特性を有する。
【0079】
結合力調節部(BR)は、スイッチング結合剤100と抗体10との結合力が強いほど抗体に対する抗原の結合を妨害することができるために、免疫分析のための抗原-抗体間の結合係数に影響を及ぼさないように、スイッチング結合剤100と抗体との間の結合力を調節する。一実施例において、結合力調節部(BR)は、適用される種の抗体によって互いに区別されるアミノ酸の配列を有しうる。結合力調節部(BR)のアミノ酸配列の相異性によって抗体ごとに結合されるスイッチング結合剤100の結合力が調節される。それにより、抗原-抗体反応で抗体の種類によって、前記抗体に結合するスイッチング結合剤100の結合力が変わりうる。結合力調節部(BR)によってスイッチング結合剤100の抗体結合部(AB)と前記抗体との間の結合力を調節することができるために、抗体10の多種に対応して特定条件で抗体結合部(AB)が抗体10のフレームワーク領域(FR)から容易に分離されて、スイッチング結合剤100が抗体10から分離されるように設計される。例えば、抗体結合部(AB)が抗体10のフレームワーク領域(FR)に結合されている時、ターゲット抗原が抗体の抗原結合部位を認識して特異的に結合する時、抗体10のフレームワーク領域(FR)から抗体結合部(AB)が容易に分離されて、前記ターゲット抗原を抗体に容易に結合させる。それにより、抗体結合部(AB)-結合力調節部(BR)の単位構造を有する本発明の実施例によるスイッチング結合剤100は、抗体-抗原反応で、抗体に対する結合と分離という特異的動作を行うスイッチング特性を有する。
【0080】
前述したように、本発明のスイッチング結合剤100は、所定抗体10に結合されていながらターゲット抗原20が抗体に結合されれば、抗体10から分離され、該分離されたスイッチング結合剤を検出することにより、抗原20の特定と定量を可能にする。前記抗原20の特定と定量は、公知の方法が用いられる。すなわち、前記スイッチング結合剤100は、抗体10の抗原結合部位に結合しなければならず、抗原が抗体に結合時のみに分離される。本発明の実施例によるスイッチング結合剤100の抗体結合部(AB)が広い範囲の多様な抗体に対して多少非特異的に結合されるが、結合力調節部(BR)によって、抗体10にターゲット抗原20が結合される時、スイッチング結合剤100全体を抗体10から容易に分離させることにより、スイッチング結合剤100が、前記ターゲット抗原20に対する特異的反応、すなわち、抗体10からの分離反応を行うことができ、分離されたスイッチング結合剤を用いて、前記抗原が適正及び/または定量される。また、特定抗原との結合を妨害するのに使われる抗イディオタイプ抗体とは異なって、抗原結合特異性に関係なく非制限的抗体に結合する特性を有しうる。さらに、スイッチング結合剤100のこのような特性を用いて、診断製剤だけではなく、治療製剤及びバイオセンサーへの応用が導出される。前述したように、スイッチング結合剤100と抗体10との結合は、特定抗原の抗体10に対する結合に影響を及ぼさないように、抗体10に対するスイッチング結合剤100の結合力は、抗体10と特定抗原との間の結合力よりもさらに小さいように設計される。しかし、本発明が、これに限定されたものではなく、他の実施例において、抗体10に対するスイッチング結合剤100の結合力は、抗体10とターゲット抗原20との結合力よりもさらに大きな結合力を抗原と抗体10との間の結合反応を調節することができる。これは、診断分野で抗原と抗体との間の反応強度調節が必要な場合、応用される。抗体結合部(AB)は、変調による結合力調節が可能な部位であって、これについての具体的であり、詳細な説明は、
図5Aないし
図6Eで後述する。
【0081】
また、結合力調節部(BR)は、特定抗体ではない多様な抗体に結合及び分離されて、変異ウイルスのような未知の抗原の抗体に対する結合時にも、スイッチング結合剤100の結合力が調節されて、抗体10からスイッチング結合剤100の分離が容易になるので、後述する抗体の識別と定量の迅速性と正確性とが向上する。本発明の実施例は、スイッチング結合剤100の結合及び分離のスイッチング動作を用いて、非特異的反応が多くて、洗浄工程が必要であり、制御が難しい従来の抗原-抗体反応で、前記洗浄工程の段階を省略しながらも、迅速かつ正確に一段階で抗原の定量及び分析を可能にするという利点がある。
【0082】
一実施例において、抗体結合部(AB)は、
図1Aにおいて、第1抗体結合部(AB1、AB1´)と第2抗体結合部(AB2、AB2´)とに対して前述したところを参照することができ、他の実施例において、結合力調節部(BR)は、アミノ酸配列-S-Y-W-I-H-W-V-K-、-R-P-G-Q-G-L-E-、-I-G-E-、-V-Y-、-C-A-R-E-P-T-G-T-G-、-Y-F-D-V-、-G-K-、-T-Y-L-E-W-Y-、-K-P-G-Q-S-、-K-、L-I-Y-K-、-C-F-Q-G-S-H-V-P-及び-T-K-のようにアミノ酸残基または配列(以下、結合力調節部アミノ酸配列)うち1つ以上を含み、これに制限されるものではない。スイッチング結合剤100は、前述したように、抗体結合部(AB)と結合力調節部(BR)とを1つ以上の単位構造体として含んで抗体結合部(AB)と結合力調節部(BR)とが連続して結合されて拡張された配列の結合によって表現される。したがって、結合力調節部(BR)は、スイッチング結合剤100内で抗体結合部(AB)の位置を変調して抗体10に対する抗体結合部(AB)の結合力を調節することができる。一実施例において、スイッチング結合剤100は、抗体結合部(AB)アミノ酸配列のうち何れか1つから選択された抗体結合部(AB)と結合力調節部(BR)アミノ酸配列のうち何れか1つから選択された結合力調節部102とが少なくとも1回以上交互に反復されるアミノ酸配列を含みうる。例えば、-T-Y-L-E-W-Q-K-W-、-V-Y-Y-、-V-Y-Y-G-K-、-K-P-G-Q-S-I-、-G-K-W-K-L-、-Y-F-D-V-W-G-K-、-F-C-F-Q-G-S-H-V-P-Q-、-R-P-G-Q-G-L-E-F-V-Y-、-S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-T-K-F-、W-I-G-E-Y-V-Y-Q-Y-F-D-V-P-のように物理的及び化学的に可能な如何なる配列でもあり、前記抗体結合部アミノ酸配列と前記結合力調節アミノ酸配列とが少なくとも1回以上交互に反復されるものを含み、これに限定されるものではない。他の実施例において、スイッチング結合剤100うち、抗体結合部(AB)と結合力調節部(BR)とを1つの単位構造体として含んで連続して結合及び拡張されたアミノ酸残基の数は、結合する抗体のフレームワーク領域(
図2に図示、FR)のアミノ酸残基の数を比較して、同じか、または多く、これに限定されるものではないので、少ない場合を含むこともある。例えば、前記延びたアミノ酸配列の数は、6~30個であり、これに限定されるものではない。
【0083】
図2は、本発明の他の実施例によるフレームワーク領域(FR)及びフレームワーク領域(FR)に隣接した相補性決定領域(CDR)に対するスイッチング結合剤100の結合を示す図面である。
【0084】
図2を参照すれば、一実施例によれば、スイッチング結合剤100a、100bは、フレームワーク領域(FR)のうち、FR1領域(FR1)の全部または一部、フレームワーク領域(FR)のうち、FR2領域(FR2)の全部または一部、フレームワーク領域(FR)のうち、FR3領域(FR3)の全部または一部、またはフレームワーク領域(FR)のうち、FR4領域(FR4)の全部または一部の組み合わせに結合されうる。例えば、スイッチング結合剤100aは、フレームワーク領域(FR)のうち、FR1領域(FR1)に結合され、スイッチング結合剤100bは、FR2領域(FR2)に結合されうる。スイッチング結合剤100がフレームワーク領域の一部に結合される場合には、フレームワーク領域の30~70%程度にわたってフレームワーク領域に結合されうる。但し、
図2に示されたスイッチング結合剤100a、100bは、フレームワーク領域(FR)のうち、FR1領域(FR1)、フレームワーク領域(FR)のうち、FR2領域(FR2)のみに結合されているが、これは、非制限的なものであって、フレームワーク領域のうち、FR3領域(FR3)またはフレームワーク領域のうち、FR4領域(FR4)にも結合可能であり、前述したように、フレームワーク領域(FR)のうち、FR1領域(FR1)ないしフレームワーク領域(FR)のうち、FR2領域(FR2)またはフレームワーク領域(FR)のうち、FR2領域(FR2)ないしフレームワーク領域(FR)のうち、FR4領域(FR4)のようなフレームワーク領域(FR)を連結して使用した配列にも結合することができる。
【0085】
一実施例によれば、スイッチング結合剤100cは、少なくとも1つ以上のフレームワーク領域(FR)及び少なくとも1つ以上の相補性決定領域(CDR)に同時に結合することができる。例えば、スイッチング結合剤100cの全体アミノ酸配列のうち、一部は、フレームワーク領域(FR)に結合され、他の一部は、相補性決定領域(CDR)に結合されうる。他の実施例において、相補性決定領域(CDR)は、スイッチング結合剤100cが結合されるフレームワーク領域(FR)から延びる領域である。例えば、スイッチング結合剤100cのアミノ酸配列のうち、一部が、FR2領域(FR2)と結合される場合、他の部分は、相補性決定領域(CDR)のうち、CDR1領域(CDR1)または相補性決定領域(CDR)のうち、CDR2領域(CDR2)と接触されて結合されうる。但し、これは、非制限的なものであって、フレームワーク領域(FR)の間に位置する相補性決定領域(CDR)にも同様に結合されうる。例えば、フレームワーク領域(FR)のうち、FR3領域(FR3)とフレームワーク領域(FR)とのうち、FR4領域(FR4)の間の相補性決定領域(CDR)のうち、CDR4領域(CDR4)にスイッチング結合剤100が連続して結合されうる。
【0086】
図2を参照して、重鎖(V
H)に結合するスイッチング結合剤に関して開示されているが、本発明の実施例によるスイッチング結合剤は、軽鎖(V
L)のフレームワーク領域(FR´)に対しても同様に結合されうる。
【0087】
一実施例において、抗体10は、アイソタイプ、hollotypeまたはidotype抗体を含み、特定されない限り、あらゆる抗体を含みうる。特に、抗体10がアイソタイプ抗体である場合、抗体10は、IgG、IgA、IgM、IgDまたはIgEのような抗体を含みうる。他の実施例によれば、抗体10は、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化された非ヒト抗体またはこれらの組み合わせである。スイッチング結合剤100は、前述したように、抗体の3次元構造を成すために、相互結合を起こす抗原結合部位15を構成するフレームワーク領域(FR、FR´)部位及びフレームワーク領域(FR、FR´)に隣接した相補性決定領域(CDR、CDR´)から選択されたアミノ酸配列を有するものであって、フレームワーク領域(FR、FR´)のアミノ酸配列は、抗体10の種類が変わっても、相補性決定領域(CDR、CDR´)に比べて変化が少なくて同様に保持される。したがって、抗体10の供給源動物、例えば、マウス(mouse)、ウサギ(rabbit)、ヤギ(goat)またはヒト(human)に対して同一または非常に類似したアミノ酸配列を有して、多様な抗体10に非特異的な結合ができる。これにより、多様な抗体に適用することができて、可用範囲が拡張されたスイッチング結合剤100が提供されうる。
【0088】
一実施例において、スイッチング結合剤100は、ペプチド、タンパク質、アプタマー、ナノボディ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイまたはさらに他の抗体である。
【0089】
前記ペプチドは、化学的合成、アミノ酸前駆体を使用した固相技術及び自動化されたペプチド合成基による合成または組換え手段によって生産される。前述したペプチド合成方法は、非制限的な例示であり、公知の多種のペプチド合成方法が適用可能である。
【0090】
前記タンパク質は、アミノ酸がペプチド結合を行って生じた複数個のアミノ酸からなる高分子化合物である。一実施例において、前記タンパク質は、自動化有機合成方法を用いて合成され、巨大分子伝達ドメインをコードする核酸配列が核酸発現ベクター内にクローニングされるように遺伝的に操作された組換えタンパク質を発現させることができる。
【0091】
前記アプタマーは、非制限的な例であって、標的分子の結合を利用した試験管内の選択法によって得られる。標的分子、特に、重鎖(VH)または軽鎖(VL)のフレームワーク領域(FR、RR´)に特異的に結合するアプタマーの選別は、有機分子、ヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、細胞表面上のマーカー分子、イオン、金属、塩、多糖類が各リガンドに特異的に結合することができるアプタマーを分離することによって達せられる。また、アプタマーの選別は、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)方法で生体内または試験管内の選択技術を用いることもできる。
【0092】
ナノボディは、単一ドメイン抗体であって、抗体単一断片で構成された単量体可変抗体ドメインであり、抗体と同様に特定抗原に選択的に結合することができる。ナノボディは、重鎖抗体、軽鎖が自然的にない抗体、従来の4鎖抗体から由来した単一ドメイン抗体、操作された抗体及び抗体から由来したもの以外の単一ドメインスキャフォールドを含みうる。
【0093】
また、ファージディスプレイは、ペプチドや抗体のようなタンパク質の一部または全体タンパク質をバクテリオファージの表面に提示するものである。前記ファージディスプレイを通じてタンパク質-タンパク質相互作用の究明のために広く使われており、それ以外にも、治療、診断または実験用として重要な特定抗体の探索に有用である。また、酵母ディスプレイは、抗体を分離し、工学的に作るために、酵母細胞壁に統合された組換えタンパク質の発現を使用するタンパク質工学的技法である。
【0094】
スイッチング結合剤100としての抗体は、ヒト抗体、非ヒト抗体またはヒト化された非ヒト抗体である。前記ヒト抗体は、ヒトによって生産された抗体に対応し/対応するか、本願で開示されたようなヒト抗体を製造するための任意の技術を用いて製造されたアミノ酸配列を保有する抗体である。前記ヒト抗体は、ファージディスプレイ、ヒトハイブリドーマ(human hybridoma)技法によって形成されうる。前記非ヒト抗体は、多様な種の供給源、例えば、げっ歯類、ウサギ、牛、羊、豚、犬のようなヒトを除いた哺乳動物や鳥類から獲得された抗体である。前記ヒト化された非ヒト抗体は、非ヒト免疫グロブリンから由来した最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施例において、前記ヒト化された非ヒト抗体は、ヒト配列の代わりに、非ヒト抗体から選択された配列も含有することができる。他の実施例において、前記ヒト化抗体は、保存的アミノ酸の置換、すなわち、抗体結合及び/または生物学的活性が大きく変わらない同種または他の種から由来した非天然残基を含みうる。これらの変形は、抗体性能、例えば、結合親和度を追加精錬するために製造可能である。前述したスイッチング結合剤100の例示は、非制限的な例であって、抗体の重鎖または軽鎖と可逆的に結合することができる前述したアミノ酸配列を含む多様な例示を含みうる。
【0095】
一実施例によれば、スイッチング結合剤100で、前記アミノ酸配列のうち、一部が無機物に置き換えられる物質であっても、抗体10の重鎖または軽鎖のフレームワーク領域(FR、FR´)を含む抗原結合部位15に結合することができ、スイッチング結合剤100は、当該物質を含みうる。前記無機物は、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、石灰石(CaCO3)、ドロマイト(CaMg(CO3)2)、滑石(Mg3Si4O10(OH)2)、酸化銀(Ag2O)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化コバルト(CoO2)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)からなるグループのうち1つ以上からなりうる。
【0096】
図3は、本発明の一実施例によるスイッチング結合剤100を図示する。
【0097】
図3を参照すれば、一実施例において、スイッチング結合剤100は、化学的、電気的、磁気的または光学的標識反応を示す標識物質200で標識される。標識物質200の標識で抗原-抗体反応において、スイッチング結合剤100が抗体10に結合及び分離することにより、示される標識量によって抗体及び抗原を識別及び定量することができ、後述する抗体に対する抗原の結合力を測定できるという利点がある。
【0098】
前記化学的標識反応の場合、オリゴヒスチジン配列-タグ、染料などによる化学的タギング(tagging)を含みうる。前記電気的標識反応の場合、発現基質の酸化-還元反応によって発生した電子の電流信号反応を含みうる。前記磁気的標識反応の場合、放射能標識された特異的結合構成員、具体的に、抗体分子にキレート化グループを通じた多数の常磁性イオンが負荷される。キレート化グループでEDTA、フォフィリン、ポリアミンクラウンエーテル及びポリオキシムが含まれ、常磁性イオンの例としてガドリニウム、鉄、マンガン、レニウム、ユウロピウム、ランタン、ホルミウム及びエルビウムを含みうる。前記常磁性イオンが負荷されて、放射能標識された特異的結合構成員、特に、抗体及び抗体の断片を通じて抗体の識別及び位置確認が可能である。前記光学的標識反応の場合、発光、発色、蛍光、濁度、磁気力または電気抵抗反応を含みうる。
【0099】
一実施例において、標識物質200は、スイッチング結合剤100の少なくとも何れか一部に結合されうる。標識物質200は、発色物質、発光物質、蛍光物質、磁性物質、金属物質、有機合成物質またはこれらの組み合わせである。前記発色物質に対する一実施例として、標識物質200は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horseradish peroxidase;HRP)であり、基質は、過酸化水素のような過酸化物及び/または3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(Tetramethylbenzidine;TMB)である。または、標識物質200は、アルカリホスファターゼ(Alkaline phosphatase;AP)であり、前記基質は、ブロモクロロインドルイルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、ナフトール-ASB1-ホスフェート(naphthol-AS-B1-phosphate)及びECF(enhanced chemifluorescence)のような物質が用いられ、これは、前記標識物質200が前記基質を分解して光学反応、化学反応または電気反応を示す酵素の役割ができるものである。前記蛍光物質に対する一実施例として、Applied Biosystems社のHEXTM、TAMRA、lumiprobe社のCy5またはスルホローダミン101酸クロリド(スルホローダミン101酸クロリド;Texas Red)であり、望ましくは、FAM蛍光またはTAMRA蛍光である。前記金属物質に対する一実施例として、酸化-還元反応を経験することができる任意の配位された金属原子、例えば、鉄、コバルト、ルテニウム、亜鉛、銅、リチウムまたは銀のような物質を含み、一部の特定例として、フェロセン、亜鉛テトラベンゾポルフィリン、コバルトフタロシアニン、トリス-(2,2’-ビピリミジン)ルテニウム、4-フェロセニルベンジルアルコール、5-(4-ヒドロキシメチルフェニル)-10,15,20-トリメシチルポルフィリナト亜鉛(∥)及び酸化-還元-活性カリックスアレーンからなる群から選択されうる。前記有機合成物質に対する一実施例として、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)、ローダミン(rhodamine)、フィコエリスリン(phycoerythrin)、フィコシアニン(phycocyanin)、アロフィコシアニン(allophycocyanin)またはフルオレスカミン(fluorecamine)を含みうる。これは、非制限的な例示であり、スイッチング結合剤100を標識するための多種の公知技術が参照される。
【0100】
図1Aないし
図3を再び参照すれば、一実施例において、スイッチング結合剤100の製造方法であって、抗原結合部位15でアミノ酸配列を確認する工程、前記アミノ酸配列の疎水性指数を得る工程、前記疎水性指数を比較して、スイッチング結合剤100を抽出する工程を含みうる。前記スイッチング結合剤100に関する説明は、矛盾しない範囲内で前述して説明したものと同様である。
【0101】
前記アミノ酸配列を確認する工程は、抗体10の重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域を含む抗原結合部位15で、抗原結合部位15相互間の自己結合する特徴を有するアミノ酸配列を確認することができる。相補性決定領域(CDR、CDR´)と比較して、フレームワーク領域(FR、FR´)は、多種の抗体間に同一または非常に類似したアミノ酸配列を有し、多様な抗体に適用可能である利点があって、フレームワーク領域(FR、FR´)から選択されるアミノ酸配列を確認するものである。
【0102】
前記アミノ酸配列の疎水性指数を得る工程は、抗体に対するアミノ酸配列部位別の疎水性指数が得られる。前記疎水性指数で負の値と正の値とに区分することができ、正の値は、親水性性質を、負の値は、疎水性性質を有する部分であることを確認することができる。これについての詳細な説明は、
図5Cと
図5D及び
図6Cと
図6Dとで後述する。
【0103】
前記疎水性指数を比較して、抗原結合部位15を構成する前記重鎖(VH)及び軽鎖(VL)のフレームワーク領域(FR、FR´)のアミノ酸配列間の同じ性質を有する部分の前記アミノ酸配列を含むスイッチング結合剤100を抽出する工程を含みうる。一実施例において、親水性性質を示す配列間または疎水性性質を示す配列間の相互結合することができる。これを通じて、親水性性質を有して、相互結合が可能な部分または疎水性性質を有して、相互結合が可能な部分のアミノ酸配列をスイッチング結合剤100のアミノ酸配列の全部または一部として選択することができる。具体的に、前記スイッチング結合剤100を選択する工程は、前記アミノ酸配列の情報を通じて、重鎖(VH)または軽鎖(VL)のフレームワーク領域(FR、FR´)に相互結合特性を有するアミノ酸配列を抽出するものである。抗体10のフレームワーク領域(FR、FR´)を含む抗原結合部位15相互間結合する特性を通じて、スイッチング結合剤100がフレームワーク領域(FR、FR´)に結合して、フレームワーク領域(FR、FR´)間の相互作用するものと同様の効果が得られる利点を有するためである。スイッチング結合剤100に関する詳細な説明は、前述した通りである。
【0104】
他の実施例において、疾病スクリーニング、診断、予防、治療用または診断と治療統合のための薬学組成物であって、スイッチング結合剤100を含みうる。スイッチング結合剤100が多様な抗体10のフレームワーク領域に特異的に結合及び分離される特性を通じて、多様なウイルスに対する診断、予防または治療を可能にするという利点を有する。前記薬学組成物は、投与時に経口及び非経口のさまざまな剤型で投与される。製剤化する場合、通常の充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して製造可能である。
【0105】
経口投与のための固型製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固型製剤は、1つ以上の化合物に少なくとも賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調剤される。また、単純な賦形剤の以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使われる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使われる単純希釈剤である水、流動パラフィンの以外に、さまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれうる。スイッチング結合剤100についての説明は、前述した内容を参考にすることができる。
【0106】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤が含まれうる。前記非水性溶剤、前記懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使われる。
【0107】
図4Aは、本発明の一実施例によるスイッチング結合剤100を利用した分析方法のフローチャートであり、
図4Bは、本発明の他の実施例によるスイッチング結合剤100を利用した分析方法のフローチャートであり、
図4Cは、本発明のさらに他の実施例によるスイッチング結合剤100を利用した分析方法のフローチャートである。
【0108】
図4Aを参照すれば、本発明の一実施例による分析方法は、フレームワーク領域(FR、FR´)からアミノ酸配列を選択する工程(図示せず)を含みうる。抗体の重鎖(V
H)及び軽鎖(V
L)が隣接するように位置して相互自己結合するフレームワーク領域(FR、FR´)からスイッチング結合剤100のアミノ酸配列を選択することができる。前記アミノ酸配列を選択する工程に対しては、抗体10の抗原結合部位15を構成するフレームワーク領域(FR、FR´)から選択されうるものに対して、
図1Aないし
図2の開示事項及び後述する実施例を参照することができる。したがって、抗体10の抗原結合部位15のうち、抗体10ごとに同一または非常に類似したフレームワーク領域(FR)を含むアミノ酸配列を抽出して、多様な抗体10に適用できるという利点がある。
【0109】
一実施例において、抗体10は、支持体30に固定されて準備しうる。支持体30は、基板、ビーズ、繊維または高分子構造体である。支持体30として使われる基質は、バイオチップまたはバイオセンサーに使われるものであれば、限定されるものではない。望ましくは、別途の処理を行って表面が改質または改質されていない金、セラミック、ガラス、高分子、シリコン、変形されたシリコン、繊維及び金属である。具体的に、前記高分子は、テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリカーボネート(polycarbonate)またはポリプロピレン(polypropylene)であり、前記繊維は、ニトロセルロース(nitrocellulose)、再生セルロース(regenerated cellulose)、ナイロン(nylon)膜(membrane)であり、前記基板上に処理して表面を改質させることができる物質は、高分子、プラスチック、樹脂、炭水化物、シリカ、シリカ誘導物質、炭素、金属無機ガラス及び膜のような物質である。支持体30は、前記支持体30の役割だけではなく、固定された抗体と試料との反応のための場所を提供する。前記支持体の規格及びその上に抗体が固定される位置、サイズ及び形状は、分析の目的、点滴機器(spottingMachine)、分注機器(dispensing machine)及びスキャナーなどの分析機器によって変化される。
【0110】
図4Aは、抗体10が固体支持体30を用いて基板上に固定されたものを図示しているが、これに制限されず、抗体10は、ビーズに固定されて溶液内に配されるか(
図4B参照)、抗体10は、固定されず、溶液内に混合状態で提供されることもある(
図4C参照)。すなわち、免疫吸着(immunosorbent)タイプのイムノアッセイとホモジニアス(homogeneous)タイプのイムノアッセイとに適用が可能である。
【0111】
一実施例において、前処理工程(ステップS100)で抗体10に結合されたスイッチング結合剤110を定量することができる。例えば、抗体10は、基板に固定されており、スイッチング結合剤100は、スイッチング結合剤100に標識物質200が結合されて標識反応を示し、前記基板の下面でスイッチング結合剤100の前記標識反応の強度を測定することができる。本発明の実施例によれば、抗体10にターゲット抗原20が結合される前、前記抗体10に結合されたスイッチング結合剤110を定量して、抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の量を初期値として用いて、精度の高いターゲット抗原20の識別または定量が可能であるという利点がある。スイッチング結合剤100、標識物質200及び標識反応に関する詳細な説明は、前述した開示事項を参照することができる。また、本明細書において、スイッチング結合剤100の「量」は、スイッチング結合剤100の「濃度」と相互互換されて使われ、スイッチング結合剤100の量が「多い」または「少ない」という記載は、スイッチング結合剤100の濃度が「高い」または「低い」と理解される。
【0112】
以後、抗体10に被分析物を提供する工程を含みうる。具体的に、抗体10にターゲット抗原20を結合させて、該結合されたスイッチング結合剤110をフレームワーク領域(FR、FR´)から分離させる抗原処理工程(ステップS200)が行われる。前記被分析物内には、ターゲット抗原20が含まれるか、含まれないこともあり、前記被分析物内に前記ターゲット抗原20が含まれて抗体10にターゲット抗原20が提供される場合、前記ターゲット抗原20の前記抗体10との特異的反応性によって、前記抗体10と結合されたスイッチング結合剤110とのうち少なくとも何れか一部は、前記フレームワーク領域(FR、FR´)から分離されて、前記抗体10が含まれた溶液上に遊離される。これは、ターゲット抗原20の濃度が高いほど、抗体10に結合されたスイッチング結合剤110のうち、抗体10から分離されるスイッチング結合剤100の比率が増加する。
【0113】
以後、抗原処理工程以後に、フレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120、またはフレームワーク領域(FR、FR´)から分離されたスイッチング結合剤130のうち少なくとも何れか1つを定量してターゲット抗原20を分析する分析工程(ステップS300)が行われる。本発明の実施例によれば、抗体10に被分析物を提供した後、洗浄工程を行わず、被分析物内のターゲット抗原20をスイッチング結合剤100、120、130を通じて分析することができて、迅速な分析が可能であり、洗浄のための付加的な装備が要求されず、追加的に抗体自体を標識させる工程を含んでおらず、一段階の簡素化が可能であり、少量を使用するとしても、スイッチング結合剤100に標識される物質で抗原の結合による抗原-抗体反応を確認することができて、小型化が可能なので、使用容易性が向上した一段階でのイムノアッセイを提供することができる。
【0114】
一実施例において、フレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120を定量することができる。この場合、前処理工程(ステップS100)の抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の量よりも分析工程で測定されたフレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120の量が減少した場合、前記被分析物内にターゲット抗原20が含まれているか否かに関する情報を獲得することができる。これは、ターゲット抗原20が抗体10に結合される場合のみに、前記スイッチング結合剤110が分離されるためである。
【0115】
また、前処理工程(ステップS100)の抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の量に対する分析工程で測定されたフレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120の量の差が大きいほどターゲット抗原20の量が多いという情報または濃度が高いという情報を獲得することができる。これにより、本発明は、被分析物に含まれたターゲット抗原20の量または濃度まで識別または定量することができる(以下、第1分析と称する)。
【0116】
他の実施例において、フレームワーク領域(FR、FR´)から分離されたスイッチング結合剤130を定量することができる。この場合、フレームワーク領域(FR、FR´)から分離されたスイッチング結合剤130の量が臨界値以上である場合、前記被分析物にターゲット抗原20が含まれたものである(以下、第2分析と称する)。
【0117】
さらに他の実施例において、フレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120及びフレームワーク領域(FR、FR´)から分離されたスイッチング結合剤130を何れも定量することができる。定量された結果分析(第1分析、第2分析)に関する詳細な説明は、前述した開示事項が参照される。これにより、前処理工程(ステップS100)で測定された抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の量と分析工程(ステップS300)でフレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120の量との差値(第1分析)及びフレームワーク(FR、FR´)から分離されたスイッチング結合剤130の量の差値(第2分析)を用いてターゲット抗原20の定量のために、2種の分析方法が活用されうる。前記第1分析及び第2分析を通じてターゲット抗原20の定量分析の精度及び信頼度が向上した一段階でのイムノアッセイを提供することができる。前記定量は、残量のスイッチング結合剤120及び/または分離されたスイッチング結合剤130に結合された標識物質200の前述した標識反応を測定して判断することができ、例えば、前記標識反応の蛍光の量は、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer;FRET)方法を用いて測定することができる。これを通じて、スイッチング結合剤100は、互いに異なる濃度の抗原20結合時に、抗体10から抗原20の濃度に定量的な関係によって遊離されて、被分析物、例えば、抗原20の定量が可能な一段階でのイムノアッセイの具現が可能である。
図4Aで開示された分析方法に対する分析結果は、
図8Aないし
図8Dで詳しく説明する。
【0118】
図4Bを参照すれば、一実施例による分析方法は、フレームワーク領域(FR、FR´)からアミノ酸配列を選択する工程(図示せず)を含みうる。前記アミノ酸を選択する工程に関する説明は、
図1Aないし
図2と後述する実施例とで詳しく説明する。
【0119】
一実施例において、前処理工程(ステップS100´)で抗体10ビーズに固定される。前記ビーズは、非制限的な例示であって、ガラス(glass)ビーズ、マグネチックビーズまたは高分子ビーズである。本発明の実施例によれば、抗体10を固定するための支持体30として基板ではない溶液内に配されるか、分散されるビーズを使用することにより、前記ビーズに抗体10を均一に固定しやすく、後に、抗原処理工程(ステップS200´)で抗体10とターゲット抗原20とが混合されて抗体10とターゲット抗原20との結合度が上昇するという利点がある。また、前記ビーズは、基板のような固定された支持体とは異なって、溶液上に分散または配されて、ターゲット抗原20の分析のための溶液上の工程が可能であるという利点があって、抗体10を固定させる工程が省略され、ターゲット抗原20と抗体10とが高い確率で結合して分析の精度が向上するという利点がある。
【0120】
以後、
図4Aで説明したものと同様に、被分析物を提供する工程、具体的に、抗原処理工程(ステップS200´)で、溶液内に存在する抗体10に被分析物であるターゲット抗原20を結合させて、スイッチング結合剤100をフレームワーク領域(FR、FR´)から分離させる工程が行われる。フレームワーク領域(FR、FR´)からスイッチング結合剤100が分離されるものの詳細な説明は、前述した記載を参照することができる。
【0121】
以後、分析工程(ステップS300´)で、抗原処理工程以後に、フレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120とフレームワーク領域(FR、FR´)から分離されたスイッチング結合剤130とを分離することができる。例えば、ビーズ、ビーズに固定された抗体10及び抗体10のフレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120のスイッチング結合剤とフレームワーク領域(FR、FR´)から分離されたスイッチング結合剤130とを分離することができる。前記スイッチング結合剤の密度は、分離されたスイッチング結合剤130の密度よりも大きい。この際、前記スイッチング結合剤の密度は、分離されたスイッチング結合剤130の密度よりも大きいという点を用いて、前記スイッチング結合剤を分離することができる。このために、遠心分離機を用いるか、前記スイッチング結合剤を沈殿させることができる。
図4Bの分析方法に対する分析結果は、
図9A及び
図9Bで詳しく説明する。
【0122】
図4Cを参照すれば、一実施例による分析方法は、フレームワーク領域(FR、FR´)からアミノ酸配列を選択する工程(図示せず)を含みうる。前記アミノ酸を選択する工程に関する説明は、
図1Aないし
図2で詳しく説明した事項を参照することができる。
【0123】
前処理工程(ステップS100´´)は、抗体10にスイッチング結合剤100を提供して、抗体10とスイッチング結合剤100の第1結合体(b1)及び抗体10と結合されていないスイッチング結合剤100とを含む混合溶液を得る工程(ステップS110)及び前記混合溶液から抗体10と結合されていないスイッチング結合剤100を除去する工程(ステップS120)を含みうる。例えば、前記混合溶液を脱塩カラム(desalting column)に通過させて、前記脱塩カラムを先に通過する結合されていないスイッチング結合剤を除去し、前記脱塩カラムを後で通過する第1結合体(b1)のみを獲得することができる。前述した方法は、例示的なものであって、前記第1結合体とスイッチング結合剤100とを分離するための多様な公知技術が参照される。
【0124】
以後、被分析物を提供する工程であって、抗原処理工程(ステップS200´´)は、抗体10にターゲット抗原20を結合させて第1結合体(b1)をフレームワーク領域(FR、FR´)から分離させる工程が行われる。前記ターゲット抗原20が、前記抗体10に提供される場合、ターゲット抗原20の抗体10との特異的反応性によって、第1結合体(b1)で前記抗体10に結合された前記スイッチング結合剤100がフレームワーク領域(FR、FR´)で分離されて溶液上に遊離される。
【0125】
以後、分析工程(ステップS300´´)は、抗体10から分離されたスイッチング結合剤130とターゲット抗原20が結合された抗体10の第2結合体(b2)とを分離する工程(S310)及び分離されたスイッチング結合剤130を定量する工程(ステップS320)をさらに含みうる。第2結合体(b2)と分離されたスイッチング結合剤130は、例示的に、プロテイン-Aカラム40を用いて分離される。以後、分離されたスイッチング結合剤130のみを選択的に獲得して標識反応を通じて定量することができる。この際、ターゲット抗原20の濃度が高くなるにつれて、第2結合体(b2)と分離されたスイッチング結合剤130の量が増加して溶液の蛍光量が増加する。
【0126】
一実施例において、分析工程(ステップS300´´)は、ターゲット抗原20の濃度の増加による分離されたスイッチング結合剤130の量を通じて抗体及び抗原を識別することができる検査キットが提供されうる。一実施例によれば、スイッチング結合剤100を利用した前記検査キットは、免疫分析(immunoassay)方式によって行われる。例えば、前記検査キットは、ルミネックス分析、タンパク質マイクロアレイ分析、エライザ分析、キャプチャー-ELISA分析、ELISPOT分析、放射免疫分析(RIA)、ラテラルフロー免疫分析(LFIA)、フロースルー免疫分析(FTIA)、タンパク質マイクロ流体免疫分析、タンパク質キャピラリー電気泳動分析(CE)、免疫-PCR(immuno-PCR)分析、電気化学バイオセンサー、放射性免疫沈降分析、免疫沈降分析、免疫組織化学染色分析、オクタロニー免疫拡散分析、阻害または競合分析、サンドイッチ分析、フローサイトメトリー分析、免疫電気泳動分析、組織免疫染色分析、補体結合分析、FACS分析、タンパク質チップ分析、免疫蛍光染色分析及び免疫親和性精製分析方式によって応用されても良い。前述した分析方式は、例示的であり、これに限定されるものではない。前記免疫分析用キットに関して商用化された分析方法に関する説明が適用可能である。他の実施例において、前記検査キットは、自然的または人為的な標識物質200が標識されたスイッチング結合剤100を含みうる。前記標識物質200に関する説明は、
図3を参照することができる。
【0127】
一実施例において、分析工程(ステップS300´´)は、ターゲット抗原20の濃度の増加による分離されたスイッチング結合剤130の量を測定して、抗体10に対するターゲット抗原20の結合力を測定することができる検査キットを提供することができる。前記結合力の測定のために、抗体10の抗原結合係数(Kd)を測定することができる。前記抗原結合係数(Kd)は、抗原と抗体との結合相互作用の強度を示す平衡解離定数である。前記抗原結合係数(Kd)が大きいほどターゲット抗原20と抗体10との結合親和度が高く、抗原の濃度が高くなるにつれて、分離されたスイッチング結合剤130が蛍光標識反応して溶液の蛍光量が増加し、これによる濃度別の測定を通じて計算することができる。これにより、抗原-抗体間の結合によって遊離されるスイッチング結合剤100の量を通じて抗原-抗体間の結合係数と通常の方法で測定した結合係数間の差で結合の強度が分かる。
【0128】
一実施例において、前記検査キットは、抗体10が固定されていない溶液内で抗原20の抗体10に対する結合力を測定することができる検査キットを提供することができる。本発明の実施例によれば、固体支持体30に抗体10を固定させず、溶液内に含まれた抗体10がターゲット抗原20を結合する時の抗原結合係数(Kd)を測定する方法を用いるものであって、抗体10を固定させる工程が省略されて、測定の信頼度及び精度が向上するという利点がある。したがって、抗体のフレームワーク領域(FR、FR´)に可逆的に結合するスイッチング結合剤100を使用して溶液内で抗体が抗原との結合強度である抗原結合係数(Kd)を測定する分析方法を通じて、一段階でのイムノアッセイが可能な検査キットの開発も可能である。
【0129】
他の実施例において、前記検査キットは、自然的または人為的な標識物質200が標識されたスイッチング結合剤100を含みうる。スイッチング結合剤100と標識物質200とに関する説明は、
図1Aないし
図3を参照することができる。
図4Cの分析方法による分析結果は、
図10Aないし
図10Dで詳しく説明する。
【0130】
図5Aは、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間の結合を図示し、
図5Bは、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)とのアミノ酸配列間の特異的結合を図示し、
図5Cは、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間の相互作用を部位別に表示したグラフであり、
図5Dは、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間の疎水性指数を図示する図面であり、
図5Eは、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間のFRET分析グラフである。
【0131】
図5Aを参照すれば、一実施例において、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間に立体構造を成し、相互結合している。すなわち、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)は、一直線に相互作用していない。したがって、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)の下端と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)の上端及び配列番号2のスイッチング結合剤(H2)の上端と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)の下端とが相互作用している。他の実施例において、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間の隣接部位の結合は、4~8Å程度、望ましくは、3~6Å程度の短い距離で作用することができる。スイッチング結合剤(H2、L1)の間の結合距離を通じて、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)または配列番号3のスイッチング結合剤(L1)と自己結合して相互作用するフレームワーク領域(FR)も同様に、構造的特性上、隣接部位の結合は、4~8Å程度、望ましくは、3~6Å程度の短い距離で作用することができる。
【0132】
図5Bを参照すれば、一実施例において、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)とのアミノ酸配列の一部が水素結合を起こしうる。具体的に、
図5Bに示されたように、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)は、V-Y-Y-C-A-R-E-P-T-G-T-G-I-Y-F-D-V-W-G-Kの配列を含み、配列番号3のスイッチング結合剤(L1)は、T-Y-L-E-W-Y-P-Q-K-P-G-Q-S-P-K-L-L-I-Y-Kの配列を含みうる。
【0133】
一実施例において、前記アミノ酸配列で、主要に結合する第1抗体結合部(AB1)または第2抗体結合部(AB2)を含みうる。例えば、第1抗体結合部(AB1)として、配列番号2のペプチド配列(H2)のアミノ酸配列のうち、3番目のアミノ酸配列であるYと18番目のアミノ酸配列Wは、アミノ酸の側鎖の官能基を通じて相互作用を起こし、13番目のアミノ酸配列Iは、ペプチド結合の極性部位と相互作用を起こしうる。
【0134】
他の実施例において、軽鎖から抽出されたアミノ酸配列は、前記軽鎖と共に前記抗原結合部位を構成する重鎖(V
H)のフレームワーク領域に結合する第2抗体結合部(AB2)を含みうる。例えば、第2抗体結合部(AB2)として、配列番号3のスイッチング結合剤配列(L1)のアミノ酸配列のうち、6番目のアミノ酸配列Yと8番目のアミノ酸配列Qとの側鎖の官能基を通じて相互作用を起こし、14番目のアミノ酸配列Pと16番目のアミノ酸Lは、ペプチド結合の極性部位と相互作用を起こす。したがって、図面に示されたように、赤色で下線が表示されたアミノ酸は、側鎖の官能基を通じた相互作用を起こし、青色で表示されたアミノ酸は、ペプチド結合の極性部位と相互作用を起こしうる。但し、これは、非制限的なものであって、
図1Aで前述したように、相互交差して結合する抗体の抗原結合部位の構造的特性だけではなく、極性または非極性結合のような多様な結合によって相互結合するアミノ酸配列で抽出された場合を何れも含みうる。
【0135】
図5C及び
図5Dを参照すれば、一実施例において、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間の第1抗体結合部(AB1)及び第2抗体結合部(AB2)は、アミノ酸の側鎖による疎水性指数(hydrophobiciy)を有しうる。
図5Cにおいて、疎水性指数が陽性である部分の場合、タンパク質の内側に位置し、疎水性が陰性である場合、水溶性なので、タンパク質の外部に位置しうる。また、疎水性部分は、疎水性部分と親水性部分は親水性部分と相互作用を起こしうる。配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との上端は、親水性であり、下端は、疎水性である。
【0136】
これにより、親水性部分と疎水性部分は、性質が同じ側で相互作用を起こし、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)の下端及び配列番号3のスイッチング結合剤(L1)の上端と配列番号2のスイッチング結合剤(H2)の上端及び配列番号3のスイッチング結合剤(L1)の下端とが立体構造上、相互作用することができる。したがって、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)は、配列番号3のスイッチング結合剤(L1)と同じアミノ酸配列を含む軽鎖(VL)のLAR部位(LAR)と相互作用することができ、配列番号3のスイッチング結合剤(L1)は、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と同じアミノ酸配列を含む重鎖(VH)のHAR部位(HAR)と相互作用することができる。立体構造を通じて観察された配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間の4個の水素結合位置のアミノ酸を立体構造を考慮して、前記位置のアミノ酸を変調するならば、抗体結合部位15の結合力を調節できるという利点がある。
【0137】
図5Eを参照すれば、一実施例において、抗体結合スイッチング結合剤100間の相互結合を示すFRET実験結果を提供する。これは、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)と配列番号3のスイッチング結合剤(L1)との間の相互結合を示す。これにより、配列番号2のスイッチング結合剤(H1)は、軽鎖(V
L)のLAR部位(LAR)と自己結合して相互作用することができ、配列番号3のスイッチング結合剤(L1)は、重鎖(V
H)のHAR部位(HAR)と自己結合して相互作用できるということを確認することができる。これを通じて、重鎖(V
H)から抽出されたアミノ酸配列を有するスイッチング結合剤100は、軽鎖(V
L)のフレームワーク領域(FR)を含む抗原結合部位15と相互結合することができ、軽鎖(V
L)から抽出されたアミノ酸配列を有するスイッチング結合剤100は、重鎖(V
H)のフレームワーク領域(FR)を含む抗原結合部位15と相互結合できるという点を確認することができる。このような相互結合特性を通じて、スイッチング結合剤100がフレームワーク領域(FR、FR´)を含む抗原結合部位15に結合して、フレームワーク領域(FR、FR´)間の相互作用するものと同様の効果が得られるためである。
【0138】
図6Aは、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間の結合を図示し、
図6Bは、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)とのアミノ酸配列と配列内で特異的結合を図示し、
図6Cは、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間の相互作用を部位別に表示したグラフであり、
図6Dは、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間の疎水性指数を図示し、
図6Eは、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間のFRET分析結果を示すグラフである。
【0139】
図6Aを参照すれば、一実施例において、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間に立体構造を成し、相互作用している。すなわち、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)は、一直線に相互作用していない。したがって、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)の下端と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)の上端及び配列番号1のスイッチング結合剤(H1)の上端と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)の下端とが相互作用している。他の実施例において、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間の隣接部位の結合は、4~8Å程度、望ましくは、3~6Å程度の短い距離で作用することができる。スイッチング結合剤(H1、L2)の間の結合距離を通じて、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)または配列番号4のスイッチング結合剤(L2)と自己結合して相互作用するフレームワーク領域(FR、FR´)も同様に、構造的特性上、隣接部位の結合は、4~8Å程度、望ましくは、3~6Å程度の短い距離で作用することができる。
【0140】
図6Bを参照すれば、一実施例において、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)とのアミノ酸配列の一部が水素結合を起こしうる。具体的に、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)は、S-Y-W-I-H-W-V-K-Q-R-P-G-Q-G-L-E-W-I-G-Eの配列を含み、配列番号4のスイッチング結合剤(L2)は、V-Y-Y-C-F-Q-G-S-H-V-P-F-T-Kの配列を含みうる。
【0141】
一実施例において、
図5Bと同様に、前記アミノ酸配列で、主要に結合する第1抗体結合部(AB1´)または第2抗体結合部(AB2´)を含みうる。例えば、前記第1抗体結合部(AB1´)として、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)のアミノ酸配列のうち、9番目のアミノ酸配列であるQは、アミノ酸の側鎖の官能基を通じて相互作用を起こし、17番目のアミノ酸配列であるWは、ペプチド結合の極性部位と相互作用を起こす。他の実施例において、第2抗体結合部(AB2´)を含みうる。例えば、前記第2抗体結合部(AB2´)として、配列番号4のスイッチング結合剤(L2)のアミノ酸配列のうち、3番目のアミノ酸配列Yの側鎖の官能基を通じて相互作用を起こし、12番目のアミノ酸配列Fは、ペプチド結合の極性部位と相互作用を起こす。したがって、図面に示されたように、赤色で下線が表示されたアミノ酸は、側鎖の官能基を通じた相互作用を起こし、青色で表示されたアミノ酸は、ペプチド結合の極性部位と相互作用を起こしうる。
【0142】
図6C及び
図6Dを参照すれば、一実施例において、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間のアミノ酸の側鎖による疎水性指数を有しうる。
図6Cにおいて、疎水性指数が陽性である部分の場合、タンパク質の内側に位置し、疎水性が陰性である場合、水溶性なので、タンパク質の外部に位置しうる。また、疎水性部分は、疎水性部分と親水性部分は親水性部分と相互作用を起こしうる。配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との上端は、親水性であり、下端は、疎水性である。
【0143】
これにより、親水性部分と疎水性部分は、性質が同じ側で相互作用を起こし、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)の下端及び配列番号4のスイッチング結合剤(L2)の上端と配列番号1のスイッチング結合剤(H1)の上端及び配列番号4のスイッチング結合剤(L2)の下端とが立体構造上、相互作用することができる。したがって、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)は、軽鎖(VL)のLBR部位(LBR)と相互作用することができ、配列番号4のスイッチング結合剤(L2)は、重鎖(VH)のHBR部位(HBR)と相互作用することができる。立体構造を通じて観察された配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(L2)との間の2個の水素結合位置のアミノ酸を立体構造を考慮して、前記第1抗体結合部(AB1´)または第2抗体結合部(AB2´)のアミノ酸残基を変調するならば、抗体結合部位の結合力を調節できるという利点がある。但し、これは、本発明を限定するものではなく、重鎖(VH)と軽鎖(VL)とが水素結合し、相互作用する部位から抽出されたアミノ酸配列を有するスイッチング結合剤100と前記重鎖(VH)または軽鎖(VL)のフレームワーク領域(FR)を含む抗原結合部位15との間の結合であれば、何れも含みうる。
【0144】
図6Eを参照すれば、一実施例において、抗体結合スイッチング結合剤間の相互結合を示すFRET実験結果を提供する。これは、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)と配列番号4のスイッチング結合剤(H2)との間の相互結合を示す。これを通じて、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)は、軽鎖(V
L)のLBR部位(LBR)と相互結合することができ、配列番号4のスイッチング結合剤(L2)は、重鎖(V
H)のHBR部位(HBR)と相互結合できるということを確認することができる。このような特性を通じて、スイッチング結合剤100がフレームワーク領域(FR)に結合して、フレームワーク領域(FR)間の相互作用するものと同様の効果が得られるためである。
【0145】
図7Aは、スイッチング結合剤100別の抗体-結合力の測定結果を図示し、
図7Bは、濃度による抗体結合スイッチング結合剤100の結合力に対するSPR分析結果を図示し、
図7Cは、抗体に結合するスイッチング結合剤100の抗体10Fab部位結合に対する結果を図示し、
図7Dは、抗体10に結合するスイッチング結合剤100の抗体10Fab部位結合に対する他の抗原及びタンパク質との比較分析グラフを示す。
【0146】
図7Aを参照すれば、スイッチング結合剤100の濃度による配列番号1のスイッチング結合剤(H1)の蛍光量を示すグラフ(A1)、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)の蛍光量を示すグラフ(A2)、配列番号3のスイッチング結合剤(L1)の蛍光量を示すグラフ(A3)及び配列番号4のスイッチング結合剤(L2)の蛍光量を示すグラフ(A4)を図示している。
【0147】
一実施例において、本発明のスイッチング結合剤100は、濃度が高くなるほど、蛍光量の強度が強まる傾向を確認することができる。これを通じて、本発明のスイッチング結合剤100が抗体10と結合して、該結合されたスイッチング結合剤100の定量に使われる。他の実施例において、スイッチング結合剤100の濃度別の蛍光量の測定を通じて抗原結合係数(Kd)を測定することができる。それぞれの配列番号1ないし配列番号4スイッチング結合剤100の抗原結合係数は、Kd(H1)=1.42x10-6M、Kd(H2)=1.94×10-5M、Kd(L1)=6.62×10-6M及びKd(L2)=6.68×10-6Mで計算された。
【0148】
これを通じて、各スイッチング結合剤別、ターゲット抗原20の抗体10に対する相対的結合力を算出して定量するという利点がある。前記蛍光分析の具体的な実験方法は、実施例3で後述する。但し、
図7Aで図示している前記抗原結合係数(K
d)は、支持体30によって固定された抗体10に対する値を示すものであるが、これに限定せず、溶液内で抗体10がターゲット抗原20を結合する時の抗原結合係数(K
d)を測定することも可能であり、これは、
図10Aないし
図10Dで詳しく説明する。
【0149】
図7Bを参照すれば、一実施例において、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR)分析結果を確認することができる。表面プラズモン共鳴(SPR)は、金のような金属薄膜表面に物質が結合した時、金属表面の屈折率が変わる現象として光を照射した時、反射する光のうち、SPR現象が起こる共鳴角を照射すれば、金属表面に結合された物質の濃度を測定することができる技術であって、濃度別のスイッチング結合剤100、本実験例では、結合剤のうち、ペプチドを処理したSPR信号結果値を図示する。
【0150】
具体的に、SPR信号結果値を確認するために、抗体10の固定に先立って、金表面をメルカプトウンデカン酸(mercaptoundecanoic acid:MUA)を1mMでオーバーナイトで処理し、表面改質し、カルボジイミド/N-ヒドロキシスクシンイミド(Carbodiimide/N-Hydroxysuccinimide)(EDC/NHS、0.4M/0.1M)を1:1の比率で混ぜて10分処理して官能基を活性化した。抗体固定は、抗HRP抗体を抗体濃度50μg/mLで1.5時間を処理して準備した。以後、エタノールアミン(ethanolamine)濃度1Mで10分ブロッキングした後に使用した。スイッチング結合剤100何れも、10及び20μMの2種の濃度でそれぞれ使用して30分インキュベーションして処理し、SPR信号の測定は、1% Tween-20洗浄液を1分間流した後、溶液が止まった状態で3分間SPR信号を測定するルーチンを3回繰り返して平均値で信号を算定することができる。
【0151】
但し、前記実施例は、本発明の実施例を限定するものではなく、スイッチング結合剤100の結合力を測定することができる方法を何れも含みうる。グラフで配列番号1のペプチドのSPR信号(H1)、配列番号2のペプチドのSPR信号(H2)、配列番号3のペプチドのSPR信号(L1)及び配列番号4のペプチドのSPR信号(L2)に対して、低濃度である10μMを左側にグラフ(B1)で、高濃度である20μMを右側にグラフ(B2)で図示している。左側にグラフ(B1)で示された低濃度である10μMでのペプチド処理結果、SPR信号は、配列番号1のペプチド(H1)=34.4±3.3(9.6%)RU、配列番号2のペプチド(H2)=51.5±5.6(10.9%)RU、配列番号3のペプチド(L1)=25.3±3.2(12.5%)RU及び配列番号4のペプチド(L2)=124.6±16.9(13.6%)RUで計算された。
【0152】
右側にグラフ(B2)で示された高濃度である20μMでのペプチド処理結果、SPR信号は、配列番号1のペプチド(H1)=121.4±3.7(3.1%)RU、配列番号2のペプチド(H2)=192.0±1.8(0.9%)RU、配列番号3のペプチド(L1)=40.4±3.2(7.9%)RU及び配列番号4のペプチド(L2)=418.2±26.5(6.4%)RUの分析結果を確認することができる。これを通じて、抗体の抗原結合部位のアミノ酸配列を分析して合成した配列番号1ないし配列番号4のペプチドが抗体に結合することが分かり、そのうち、相対的に配列番号4のペプチドが最も多く結合するという点が分かる。
【0153】
図7C及び
図7Dを参照すれば、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)の蛍光量を示すグラフ(C1、D1)、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)の蛍光量を示すグラフ(C2、D2)、配列番号3のスイッチング結合剤(L1)の蛍光量を示すグラフ(C3、D3)及び配列番号4のスイッチング結合剤(L2)の蛍光量を示すグラフ(C4、D4)を図示している。一実施例において、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100は、抗体10の断片のうち、抗原結合部位15を含むFab部位のみに結合することが分かる。
【0154】
図7Cを再び参照すれば、一実施例において、スイッチング結合剤100は、抗体10の抗原結合部位15に結合することができる。具体的に、固体支持体30に固定された抗体10に蛍光が標識されたスイッチング結合剤100を結合させた。抗体固定は、抗HRP抗体10を抗体濃度10μg/mLで2時間処理して準備し、BSA濃度8mg/mLで1時間ブロッキングした後に使用した。配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100は、スイッチング結合剤100濃度10μMで1時間インキュベーション処理し、抗体10のFab部位とFc領域との分解のために、パパイン(papain)を濃度250μg/mLとして37℃で2時間処理した後、溶液での蛍光量の変化を測定し、固体支持体30に残った蛍光量を区別して測定した。
【0155】
一実施例において、底面での蛍光量(A)と溶液での蛍光量(B)とを確認することができ、抗体10のFab部位とFc部位とを分解するタンパク質分解酵素であるパパインで処理後、スイッチング結合剤100に蛍光測定した結果、蛍光量は、パパインが処理された場合、Fc部位が固定された底面での蛍光量(A)よりも分解されて溶液内に遊離されたFab部位での蛍光量(B)がさらに高い点を確認することができる。すなわち、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100に対して抗体分解酵素であるパパイン処理前の場合、蛍光が抗体が固定された固体支持体30のみで大きく観察されるものと比較して、パパイン処理後の場合、抗体10が固定された固体支持体で蛍光が大きく減少し、溶液で大きく観察された。これを通じて、パパインで分解されて溶液に分布するFab領域に配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100が結合されるものであり、固体支持体30で固定されているFc領域では結合しないことが分かる。
【0156】
図7Dを再び参照すれば、一実施例において、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100は、抗体10のみに選択的に結合することができる。具体的に、固体支持体30に抗体10及びタンパク質の固定のために、ヒトIgG、ウサギIgG、ヤギIgG及びマウスIgGを抗体濃度100μg/mLでオーバーナイトで処理して準備し、固定タンパク質は、HBsAg、CRP、プロテインAをそれぞれ濃度100μg/mLでオーバーナイトで処理して準備した。以後、BSA濃度10mg/mLで1時間ブロッキングした後に使用した。配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100は、20μMの濃度をそれぞれ使用して1時間インキュベーションして処理した。
【0157】
図7Dを参照すれば、蛍光が標識された配列番号1ないし配列番号4のペプチドは、抗原であるHBsAg及びCRPとタンパク質であるプロテインAに比べて抗体であるヒトIgG、ウサギIgG、ヤギIgG及びマウスIgGに高い蛍光量を示すことを確認した。これは、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100が抗体10に選択的に結合するという点を確認することができる。
【0158】
図8Aないし
図8Dは、本発明の一実施例のうち、
図4Aの分析方法によるターゲット抗原20の分析結果を示すグラフであって、
図8Aは、抗体10は抗HRP抗体10であり、ターゲット抗原20はHPRである時、
図8Bは、抗体10は抗hCG抗体10であり、ターゲット抗原20はhCGである時、
図8Cは、抗体10は抗CRP抗体10であり、ターゲット抗原20はCRPである時、
図8Dは、抗体10は抗HBsAg抗体10であり、ターゲット抗原20はHBsAgである時、分析結果を示すグラフである。
【0159】
図8Aと関連して、抗HRP抗体を固体支持体に濃度1μg/mLでオーバーナイトで処理して固定し、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100をそれぞれ10μMの濃度(100μl/ウェル(well))で2時間処理した。この際、底面の蛍光を測定した後、ウサギのIgG抗体に対する分析物で抗原HRPを濃度10μg/mLで1時間処理した。
図8Bと関連して、抗hCG抗体を固定支持体に濃度1μg/mLでオーバーナイトで処理して固定し、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100をそれぞれ20μMの濃度(100μl/ウェル)で2時間処理した。この際、底面の蛍光を測定した後、マウスIgG抗体に対する分析物で抗原hCGを濃度100μg/mLで2時間処理した。
【0160】
図8Cと関連して、抗CRP抗体を固体支持体に濃度1μg/mLでオーバーナイトで処理して固定し、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100をそれぞれ20μMの濃度(100μl/ウェル)で2時間処理した。この際、底面の蛍光を測定した後(A)、ウサギのIgG抗体に対する分析物で抗原HRPを濃度10μg/mLで1時間処理した。
図8Dと関連して、抗HBsAg抗体を固体支持体に濃度1μg/mLでオーバーナイトで処理して固定し、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤100をそれぞれ20μMの濃度(100μl/ウェル)で2時間処理した。この際、底面の蛍光を測定した後(A)、ヤギのIgG抗体に対する分析物で抗原HBsAgを濃度10μg/mLで1時間処理した。
【0161】
図8Aないし
図8Dを参照すれば、スイッチング結合剤100は、配列番号1ないし配列番号4のスイッチング結合剤であって、特に、結合剤100のうち、ペプチドを用いて実験した。
図8Aないし
図8Dにおいて、グラフAは、前処理工程(ステップS100)で抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の測定値、グラフBは、分析工程(ステップS300)でフレームワーク領域(FR)に結合された残量のスイッチング結合剤120の測定値、グラフCは、フレームワーク領域(FR)から分離されたスイッチング結合剤130の測定値であり、例示的に、スイッチング結合剤100に結合された標識物質200が示す標識反応の強度を測定して定量した。前記標識反応は、蛍光反応である。前述した物質は、非制限的な例示であり、本発明を限定するものではない。
【0162】
図8Aないし
図8Dを参照すれば、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)、配列番号3のスイッチング結合剤(L1)及び配列番号4のスイッチング結合剤(L2)で何れも抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の量(A)よりもフレームワーク領域(FR)に結合された残量のスイッチング結合剤120の量(B)が減少したことが分かる。また、フレームワーク領域(FR)から分離されたスイッチング結合剤130の量(C)が測定されることが分かる。この結果、抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の量(A)に対するフレームワーク領域(FR)に結合された残量のスイッチング結合剤120の量(B)の減少量がフレームワーク領域(FR)から分離されたスイッチング結合剤130の量(C)よりも大きいことが分かる。
【0163】
これは、抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の量(A)は、支持体30の面上で観察された蛍光の強度であるが、フレームワーク領域(FR)から分離されたスイッチング結合剤130の量(C)は、溶液上で観察された蛍光の強度であるためである。これにより、ターゲット抗原20が抗体10に結合される場合、抗体10に結合されたスイッチング結合剤110は、フレームワーク領域(FR)から分離されて溶液上で遊離されることが分かり、本発明の実施例によって、前述したように、前処理工程(ステップS100)で測定された抗体10に結合されたスイッチング結合剤110の量と分析工程(ステップS300)でフレームワーク領域(FR)に結合された残量のスイッチング結合剤120の量との差値によるターゲット抗原20の定量が可能である。同時に、フレームワーク(FR)から分離されたスイッチング結合剤130の量を利用したターゲット抗原20の定量が可能であって、ターゲット抗原20の分析を2トラック(2 track)で行うことができて、分析の迅速度、精度及び信頼度を向上させるという利点がある。
また、定量分析のための測定間の再現性を算出するために、配列番号3の結合剤(L1)を用いて、HBsAg濃度3.4μg/mLで8回繰り返し実験した後、HBsAgの濃度が0であるbaselineでの値でノーマライズした。この際、当該濃度での測定値は、3.1±9.3%(n=8)で算出された。前記結果は、分析物である抗原20HBsAgが含まれた試料をヤギIgG抗体に処理して洗浄なしに一段階でのイムノアッセイによる分析物の測定が高い再現性を示すという点を示す。
【0164】
図9A及び
図9Bは、
図4Bの分析方法によるターゲット抗原20の分析結果を示す分析グラフである。
【0165】
図9A及び
図9Bを参照すれば、一実施例において、
図9Aは,配列番号1のスイッチング結合剤(H1)、
図9Bは,配列番号3のスイッチング結合剤(L1)を利用したビーズ基盤の抗体結合ワンステップイムノアッセイの結果を示す。
【0166】
一実施例において、前処理工程(ステップS100´)で抗インフルエンザB抗体10をビーズに固定させ、抗原処理サブ工程(ステップS200´)で被分析物は、10ng/mlの濃度のCRPを含むか、10ng/mlの濃度のインフルエンザBを含みうる。左側グラフ(A)は、互いに異なるターゲット抗原200、すなわち、CRP、インフルエンザBを含む被分析物のフレームワーク領域(FR、FR´)から分離されたスイッチング結合剤130を定量したグラフであり、右側グラフ(B)は、フレームワーク領域(FR、FR´)に結合された残量のスイッチング結合剤120を定量したグラフである。前述した物質は、非制限的な例示であって、本発明を制限するものではない。
【0167】
一実施例において、被分析物がインフルエンザBを含む場合に比べて、被分析物がCRPを含む場合、分離されたスイッチング結合剤130の量が小さく、残量のスイッチング結合剤120の量が多いことが分かる。これは、被分析物がインフルエンザBである場合、前記インフルエンザBが抗インフルエンザB抗体10と反応してスイッチング結合剤100が抗体10のフレームワーク領域(FR、FR´)から解離されるためである。一方、被分析物がCRPを含む場合には、前記CRPが抗インフルエンザBと特異的に結合せず、スイッチング結合剤100がフレームワーク領域(FR、FR´)から解離されない。
【0168】
一実施例において、被分析物内のターゲット抗原20の濃度が高いほど分離されたスイッチング結合剤130の量が多い。また、被分析物内のターゲット抗原20の濃度が高いほど残量のスイッチング結合剤120の量は少ない。
図9A及び
図9Bを参照すれば、被分析物が同様にターゲット抗原20でインフルエンザBを含む場合に、前記インフルエンザBの濃度が高いほど分離されたスイッチング結合剤130の量が多いことが見られる。例えば、前記被分析物に含まれた前記インフルエンザBの濃度が100ng/mlである場合に、濃度が10ng/mlである場合に比べて、分離されたスイッチング結合剤130の量が多い。これは、ターゲット抗原20の濃度が高いほど多量のターゲット抗原20が抗体10と特異的に反応して、さらに多量のスイッチング結合剤100がフレームワーク領域(FR、FR´)から解離されるためである。
【0169】
本発明の実施例によれば、分離されたスイッチング結合剤130の量及び/または残量のスイッチング結合剤120の量を測定することにより、被分析物内に含まれたターゲット抗原20を識別するだけではなく、定量または濃度の測定まで可能な分析方法が提供されうる。これを通じて、
図9Aで配列番号1のスイッチング結合剤(H1)を利用したビーズ基盤のワンステップイムノアッセイが可能であるという点と、
図9Bで配列番号3のスイッチング結合剤(L1)を利用したビーズ基盤のワンステップイムノアッセイが可能であるという点に対して確認することができて、固体支持体だけではなく、ビーズを用いて定量的なイムノアッセイが可能である。但し、これは、非制限的なものであって、配列番号1及び配列番号3のアミノ酸配列に限定されるものではない。
【0170】
図10Aないし
図10Dは、本発明の一実施例のうち、
図4Cの分析方法によるターゲット抗原20の分析結果を示す分析グラフである。
【0171】
図10Aないし
図10Dを参照すれば、スイッチング結合剤100は、配列番号1ないし配列番号4のアミノ酸配列を有するスイッチング結合剤を利用したものであって、
図10Aは、配列番号3のスイッチング結合剤(L1)、
図10Bは、配列番号4のスイッチング結合剤(L2)、
図10Cは、配列番号1のスイッチング結合剤(H1)、及び
図10Dは、配列番号2のスイッチング結合剤(H2)を利用した溶液内の抗体の抗原結合係数を測定した結果を示す。一実施例において、ターゲット抗原20は、HRPであり、抗体10は、抗HRP抗体10である。前述した物質は、例示的なものであって、本発明を限定するものではない。
【0172】
一実施例において、被分析物内のターゲット抗原20の濃度を増加させながら分離されたスイッチング結合剤130の量を測定し、分離されたスイッチング結合剤130の量を用いて抗体10の抗原結合係数(K
d)を計算した。前記抗原結合係数(K
d)は、ターゲット抗原20であるHRPの量が増加するほど溶液の蛍光量が増加した。一実施例において、前記スイッチング結合剤100の前記抗原結合係数(K
d)は、1.2~2.9x10
-6Mである。望ましくは、
図10Aに示された配列番号3のスイッチング結合剤(L1)、
図10Bに示された配列番号4のスイッチング結合剤(L2)、及び
図10Dに示された配列番号2のスイッチング結合剤(H2)の抗原結合係数(K
d)は、それぞれ8.9×10
-7M、1.2×10
-6M及び2.9×10
-6Mの値を有しうる。これを通じて、固体支持体に抗体10を結合した後、抗原結合係数(K
d)を測定する
図4Aの方法とは異なって、本発明で提供するキットが溶液内で抗体が抗原を結合する時の抗原結合係数(K
d)を測定する方法を提供して、抗体の抗原結合部位に可逆的に結合するスイッチング結合剤100を用いて溶液内の抗体の抗原結合係数(K
d)を測定することができる。
【0173】
前述した本発明が、前述した実施例及び添付図面に限定されず、本発明の技術的思想を外れない範囲内にさまざまな置き換え、変形及び変更が可能であるということは、当業者にとって明白である。
【配列表】