(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】センサシステム、センサ装置、及びセンシング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240110BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240110BHJP
H01M 14/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N27/416 300S
G01N27/416 341Z
G01N27/416 353Z
H02J7/00 302A
H01M14/00 Z
(21)【出願番号】P 2022542856
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2021029571
(87)【国際公開番号】W WO2022034887
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020136072
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399131116
【氏名又は名称】トライポッド・デザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 聰
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-331508(JP,A)
【文献】特開平04-113231(JP,A)
【文献】特開2006-349535(JP,A)
【文献】特開2012-255790(JP,A)
【文献】特開平11-218514(JP,A)
【文献】特開2020-046336(JP,A)
【文献】特表2016-501070(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02320219(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
H02J 7/00
H01M 14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサシステムであって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触することによって、発電するものであり、
一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センサシステム。
【請求項2】
異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサシステムであって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触することによって、発電するものであり、
一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センサシステム。
【請求項3】
複数のセンサを備えるセンサシステムであって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触することによって、発電するものであり、
一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、
一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センサシステム。
【請求項4】
複数のセンサを備えるセンサシステムであって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触することによって、発電するものであり、
一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、
一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センサシステム。
【請求項5】
機能部が、昇圧回路又は降圧回路を備える、請求項1~4のいずれかに記載のセンサシステム。
【請求項6】
機能部が、昇圧回路又は降圧回路を備え、
センサ内の所定の電圧が、昇圧回路又は降圧回路の入力電圧又は出力電圧である、請求項2又は4に記載のセンサシステム。
【請求項7】
機能部が、出力インピーダンスを変換する変換機能を有する、請求項1~6のいずれかに記載のセンサシステム。
【請求項8】
機能部が蓄電部を有し、
第一導電部及び/又は第二導電部から供給される電荷を蓄電部が蓄積し、
蓄積に要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出する機能を有する、請求項1~7のいずれかに記載のセンサシステム。
【請求項9】
機能部が出力電圧変換部を有する、請求項1~8のいずれかに記載のセンサシステム。
【請求項10】
機能部の入力インピーダンスが非線形な電流-電圧特性を有する、請求項1~9のいずれかに記載のセンサシステム。
【請求項11】
媒体が水分を含有する土を含むものである、請求項1~10のいずれかに記載のセンサシステム。
【請求項12】
異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサ装置であって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が媒体と接触することによって、発電するものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部を媒体と接触させた場合における、一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センサ装置。
【請求項13】
異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサ装置であって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が媒体と接触することによって、発電するものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部を媒体と接触させた場合における、一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センサ装置。
【請求項14】
複数のセンサを備えるセンサ装置であって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が媒体と接触することによって、発電するものであり、
一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部を媒体と接触させた場合における、一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センサ装置。
【請求項15】
複数のセンサを備えるセンサ装置であって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が媒体と接触することによって、発電するものであり、
一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部を媒体と接触させた場合における、一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センサ装置。
【請求項16】
異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触することによって、発電するものであり、
センサシステムが、
一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センシング方法。
【請求項17】
異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触することによって、発電するものであり、
センサシステムが、
一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センシング方法。
【請求項18】
複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触することによって、発電するものであり、
一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、
センサシステムが、
一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センシング方法。
【請求項19】
複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、
センサのそれぞれが、
第一導電部及び第二導電部と、
媒体と、
機能部と
を備え、
第一導電部及び機能部は接続されており、
第二導電部及び機能部は接続されており、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、
第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、
第一導電部及び第二導電部が異なる素材からなるものであり、
第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触することによって、発電するものであり、
一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、
センサシステムが、
一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立した電源で稼働するセンサを備えるセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボルタ電池やダニエル電池のように、異なる二種類の金属を電極とし、電解液に浸すことで、それぞれの電極において、酸化反応又は還元反応を生じさせ、電子の流れる経路を作り出す装置(つまり、電池)がある。
【0003】
電池の電解液として使用される液体は、化学やけどのおそれ、火災又は爆発のおそれ、あるいは有毒なガスの発生等、人体や環境に悪影響を与える可能性があり、電解液の取り扱いは非常に難しいものであった。加えて、製品化をする際において、液漏れを起こさないようにしなければならず、コストが増大するという課題があった。
【0004】
ところで、近年は、可視光、熱、電波、あるいは微生物による有機物の分解処理等の微小なエネルギーを電力に変換するエネルギーハーヴェスティング技術が注目されており、エネルギーハーヴェスティング技術を利用して、自立電源を実用化する研究がなされている。さらに、IoT分野では、センサと自立電源を組み合わせる事で、さまざまな環境において、いろいろな情報を得ることを可能とする手段として研究が進んでいる。
【0005】
センサ等に使用される自立電源型の装置としては、太陽光発電を利用することが検討されているが(例えば、特許文献1参照)、時間帯や天候の影響を受けやすく、安定した電力供給ができないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の少なくとも1つの目的は、自立した電源で稼働するセンサを備えるセンサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記目的は、[1]~[18]により解決することができる。
[1]異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサシステムであって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センサシステム;
[2]異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサシステムであって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センサシステム;
[3]複数のセンサを備えるセンサシステムであって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センサシステム;
[4]複数のセンサを備えるセンサシステムであって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センサシステム;
[5]機能部が、昇圧回路又は降圧回路を備える、前記[1]~[4]のいずれかに記載のセンサシステム;
[6]機能部が、昇圧回路又は降圧回路を備え、センサ内の所定の電圧が、昇圧回路又は降圧回路の入力電圧又は出力電圧である、前記[2]又は[4]に記載のセンサシステム;
[7]機能部が、出力インピーダンスを変換する変換機能を有する、前記[1]~[6]のいずれかに記載のセンサシステム;
[8]機能部が蓄電部を有し、第一導電部及び/又は第二導電部から供給される電荷を蓄電部が蓄積し、蓄積に要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出する機能を有する、前記[1]~[7]のいずれかに記載のセンサシステム;
[9]機能部が出力電圧変換部を有する、前記[1]~[8]のいずれかに記載のセンサシステム;
[10]機能部の入力インピーダンスが非線形な電流-電圧特性を有する、前記[1]~[9]のいずれかに記載のセンサシステム;
[11]異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサ装置であって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部を媒体と接触させた場合における、一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センサ装置;
[12]異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサ装置であって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部を媒体と接触させた場合における、一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センサ装置;
[13]複数のセンサを備えるセンサ装置であって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部を媒体と接触させた場合における、一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センサ装置;
[14]複数のセンサを備えるセンサ装置であって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部を媒体と接触させた場合における、一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センサ装置;
[15]異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、センサシステムが、一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センシング方法;
[16]異なる位置に設置された複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、センサシステムが、一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センシング方法;
[17]複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、センサシステムが、一のセンサの内部インピーダンスと他のセンサの内部インピーダンスが、所定の条件を満たすことを検知する、センシング方法;
[18]複数のセンサを備えるセンサシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、センサのそれぞれが、第一導電部及び第二導電部と、媒体と、機能部とを備え、第一導電部及び機能部は接続されており、第二導電部及び機能部は接続されており、第一導電部及び第二導電部の少なくとも一部が該媒体と接触し、第一導電部及び第二導電部は、互いに非接触であり、一のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、他のセンサの第一導電部及び第二導電部の組み合わせとが異なるものであり、センサシステムが、一のセンサ内の所定の電圧と他のセンサ内の所定の電圧が、所定の条件を満たすことを検知する、センシング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自立した電源で稼働するセンサを備えるセンサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる、センサの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかる、電力変換部の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる、センサを表す図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる、センサ内のトランジスタのON-OFFを切り替えた場合における、時間と電流Iの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。
【0012】
[センサ]
図1は、本発明の実施の形態にかかる、センサの構成を示すブロック図である。
図1(A)~(E)に図示するように、センサは、第一導電部1と、第二導電部2と、機能部3と、媒体4とから構成される。第一導電部1及び機能部3、並びに、機能部3及び第二導電部2は、それぞれ電気的に接続されている。「電気的に接続」とは、例えば、導線等により通電可能に接続されることをいう。
【0013】
第一導電部1及び第二導電部2の一部又は全部が、媒体4と接触している。第一導電部1及び第二導電部2は、互いに非接触である。「非接触」とは、例えば、第一導電部1と第二導電部2とが直接接触していない状態をいう。
【0014】
第一導電部1が媒体4に接触する位置、及び、第二導電部2が媒体4に接触する位置の距離は、1cm以上離れていることが好ましく、10cm以上離れていることがより好ましく、100cm以上離れていることがさらに好ましく、1000cm(10m)以上離れていることが特に好ましい。
【0015】
第一導電部1及び第二導電部2は、いずれも導電性を有することが好ましい。ここで、第一導電部1及び第二導電部2の素材として、例えば、金属、導電性ポリマー、カーボン等が挙げられる。第一導電部1及び第二導電部2の形状は、特に限定されない。第一導電部1及び第二導電部2の形状は、直方体状、円柱状(棒状)、角錐状、円錐状、板状又は紐状であってもよく、形状を問わない。
【0016】
第一導電部1及び第二導電部2に用いられる金属としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、白金、スズ、チタン、ステンレス、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、又は、その他上述の金属夫々の酸化物などから適宜選択して用いることができる。また、所定の金属に、所定の金属とは異なる他の金属や、他の導電性を有する材料が被膜されていてもよい。
【0017】
第一導電部1と第二導電部2の素材は、異なる種類のものを用いてもよく、同じ種類のものを用いてもよい。例えば、第一導電部1に、ステンレス製の円柱状の棒材を用い、第二導電部2に亜鉛製の円柱状の棒材を用いることができる。この場合、第一導電部1及び第二導電部2は、機能部3または昇圧回路・降圧回路と導線により接続される。
【0018】
交流インピーダンス法を用いて、第一導電部1及び第二導電部2の少なくとも一方に対して分極抵抗を測定した場合に、測定値が100Ω以上であることが好ましい。
【0019】
ここで、電流の起点となる導電部を第一導電部1として定義し、終点となる導電部を第二導電部2として定義する。いずれの導電部が第一導電部1として機能するかは、導電部の材質、又は、導電部を取り巻く環境(例えば、温度、湿度、気圧、pHなど)により決定される。第一導電部1又は第二導電部2と媒体4の界面で、化学反応が行われ、導電部に自由電子が発生する。
【0020】
例えば、第一導電部1と第二導電部2において異なる金属を用いた場合には、標準電極電位が低い金属を用いた方が第一導電部1に、標準電極電位が高い金属を用いた方が第二導電部2になる。この場合、第二導電部2から機能部3へ向かって電子が移動し、機能部3から第一導電部1へ向かって電子が移動する。すなわち、第一導電部1側から機能部3を介して第二導電部2側へ電流が生じる。例えば、第二導電部2では、導電部を構成する金属が媒体4中に陽イオンとして溶出して、自由電子が発生し、第一導電部1では、媒体4の水中の陽イオンが電子と反応し、電気的に中和される。
【0021】
標準電極電位の高低は、物質同士の標準電極電位の相対的な値(相対値)を比較して定められるものであって、標準電極電位の絶対値を用いて比較するものではない。例えば、標準電極電位が-5Vの物質Aと+2Vの物質Bとを比較した場合に、物質Aの標準電極電位は低く、物質Bの標準電極電位は高い。
【0022】
一方、導電部に同一の金属を用いた場合でも、例えば、温度、湿度、気圧、pHなど、導電部の周辺環境の条件により、いずれかの導電部が第一導電部1として、他方の導電部が第二導電部2として機能し、電流が生じる。よって、2つの導電部の周囲温度、湿度、気圧、pHなどの条件が変われば、第一導電部として機能していたものが第二導電部として機能し、第二導電部として機能していたものが第一導電部として機能することもあり得る。
【0023】
第一導電部1及び第二導電部2から生じる起電力は、0.9V以下であることが好ましく、0.35V以下であることがより好ましく、0.25V以下であることがさらに好ましい。また、第一導電部1及び第二導電部2から生じる起電力は、5mV以上であることが好ましい。
【0024】
機能部3は、例えば、通電することで所定の機能を実行するものをいう。機能部3は、電力を消費して所定の機能を発揮する電力消費部、導電部にて発生した電気を蓄電する蓄電部、昇圧回路や降圧回路のように出力する電圧を変換する出力電圧変換部等、回路を制御するマイコン等の制御部、他の装置と無線による通信が可能な通信部等を含むことができる。
【0025】
電力消費部としては、例えば、白熱電球や発光ダイオードなどの光源、熱を発する発熱体、音を発する発音体、又は、信号を発する発信体等のいずれかを採用することができる。蓄電部は、昇圧回路又は降圧回路に含まれていてもよい。マイコン等の制御部は、回路を制御して、蓄電部に蓄電した電気を所定の条件で放出させることができる。放出された電気は、電力消費部にて消費される。また、マイコン等の制御部においても、わずかではあるが電力が消費されるため、制御部を起動させるのに必要な電力を確保しつつ、蓄電した電気を放出するように制御することができる。
【0026】
機能部3は、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部、通信部及び制御部のいずれか1つを備えていればよく、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部、通信部及び制御部のいずれか2つ以上を組み合わせて構成したものを機能部3としてもよい。また、機能部3は、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部、通信部及び制御部のいずれか2つ以上を一体に構成したものであってもよく、電力消費部、蓄電部、出力電圧変換部、通信部及び制御部のいずれかを、電気的に接続しつつ、それぞれ別々に構成したものであってもよい。
【0027】
機能部3における入力インピーダンスは、1kΩ以上であることが好ましく、10kΩ以上であることがより好ましい。また、機能部3の入力インピーダンスは、非線形な電流-電圧特性(I-V特性)を有することが好ましい。非線形な電流-電圧特性とは、例えば、機能部3に電流を流した際の電圧変化において、電流値が大きくなるに従って電圧値が高くなるが、電流値が大きくなるに従って、電流値を大きくするために必要となる電圧値の上がり幅が大きくなり、電圧が電流に比例しないような場合をいう。言い換えると、機能部3に加えた電圧値が高くなるに従って電流値が大きくなるが、電圧値が高くなるに従って、電圧値を高くすることで電流値が大きくなる度合が小さくなり、電流値が電圧値に比例しないような場合をいう。機能部3における入力インピーダンスが非線形な電流-電圧特性を有することで、第一導電部1と第二導電部2との間で生じた起電力が維持しやすくなる。
【0028】
機能部3は、出力インピーダンスを変換する機能を有することが好ましい。これにより、機能部3の入力信号に与える影響を制御することができる。
【0029】
また、機能部3は、蓄電部を有し、第一導電部及び/又は第二導電部から供給される電荷を蓄積する。制御部は、電荷を蓄積するのに要した時間よりも短い時間で、蓄積した電荷を放出するように制御する。
【0030】
機能部3の動作電圧の下限値は、0.9V以下で動作することが好ましい。0.35V以下で動作することがより好ましく、20mV以下で動作することがさらに好ましい。
【0031】
媒体4は、気体、液体、及び固体のうちいずれの形態であってもよい。媒体4は、ゾル又はゲル状のものであってもよい。媒体4は、第一導電部1又は第二導電部2との界面で、化学反応を起こし得るものであれば、特に限定されない。媒体4は、電解質を含むものであることとしてもよい。媒体4としては、導電性を有しないものを用いることが好ましい。気体としては、本センサを構成する際に気体であれば特に限定されないが、例えば、酸素、二酸化炭素、窒素、水素、メタン等が挙げられる。媒体4として気体を用いる場合は、単一の種類の気体のみを用いてもよいが、これらの気体の複数種類を混合したものを用いてもよい。
【0032】
媒体4として用いられる液体も、本センサを構成する際に液体であれば特に限定されないが、例えば、水だけでなく、極性の高い有機溶剤や極性の低い有機溶剤、或いは、非極性の有機溶剤を用いることができる。また、媒体4として用いられる液体は、水と極性の高い有機溶剤との混合物や、異なる2種以上の有機溶剤の混合物や、エマルションなども用いることができる。水は純水だけでなく、電解質を含むものを用いることができる。
【0033】
水に含まれる電解質のうち、陽イオンの濃度は、1mol/L以下であってもよく、0.6mol/L以下であってもよく、0.1mol/L以下であってもよく、0.01mol/L以下であってもよく、さらには、0.001mol/L以下であってもよい。媒体4は電池で用いられる電解液でなくても、問題がない。
【0034】
極性の高い有機溶剤としては、例えば、メタノールやエタノールなどの低級アルコール、蟻酸や酢酸などの低級カルボン酸、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。また、極性の低い有機溶剤としては、ヘキサノールやオクタノールなどの高級アルコール、ヘキサン酸やオクタン酸などの高級カルボン酸などを用いることができる。非極性の有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、オクタン、ノナンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物があげられる。媒体4として液体を用いる場合は、単一の種類の液体のみを用いてもよいが、これらの液体の複数種類を混合したものを用いてもよい。
【0035】
媒体4として用いられる固体も、本センサを構成する際に固体であれば特に限定されないが、例えば、木材、プラスチック、金属、セラミックス、コンクリートなどであってもよい。なお、媒体4として用いられる固体としては、これらの他、例えば、砂や土などの粉体状又は粒状の固体を用いることができ、さらに、複数の石や岩を重ねたものを用いることもできる。砂や土、石や岩を重ねたものを媒体4として用いた場合、媒体4中に微細な空隙が発生するが、このような空隙があったとしても、媒体4が物理的に接続されていればよい。
【0036】
媒体4は、異なる組成や特性を有するものが物理的に接続して、1つの媒体4を構成することができる。例えば、第一導電部1にプラスチックが接しており、第二導電部2に木材が接しているような場合に、プラスチックと木材が接することで、プラスチックと木材が媒体4として機能する。
【0037】
媒体4の第一導電部1と第二導電部2間の抵抗値は、1kΩ以上であることが好ましく、10kΩ以上であることがより好ましい。
【0038】
媒体4は、絶縁体であってもよい。絶縁体とは、例えば、不導体をいい、電気あるいは熱を通しにくい性質をもつ物質をいう。絶縁体の電気伝導率は、10-5S/m以下であることが好ましく、10-8S/mであることがより好ましく、10-11S/mであることがさらに好ましい。
【0039】
媒体4は、水分を含むことが好ましい。砂や土などの媒体4の含水率は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、媒体4の含水率は、200質量%以下であることが好ましい。ここで、含水率とは、水分の重量を水分及び固形分の重量の和で除したものをいう。
【0040】
本発明の実施の形態にかかるセンサは、
図1(A)に示すように、第一導電部1と、第二導電部2と、機能部3と、媒体4とから構成される。媒体4は、第一導電部1と第二導電部のいずれにも接触しており、機能部3は、第一導電部1と第二導電部2と電気的に接続されている。
【0041】
本発明の実施の形態にかかるセンサは、
図1(B)に示すように、媒体4に代えて、媒体4a及び媒体4bを用いるようにしてもよい。媒体4a及び媒体4bは、互いに異なる種類の媒体であってもよいし、同じ種類の媒体であってもよい。
図1(B)では、媒体4aと媒体4bはそれぞれ異なる容器に収容されており、非接触の状態である。
【0042】
本発明の実施の形態にかかるセンサは、
図1(C)に示すように、媒体4を使用せず、第一導電部1及び第二導電部2を電気的に接続するようにしてもよい。
【0043】
本発明の実施の形態にかかるセンサは、
図1(D)に示すように、複数の第一導電部1a、1b・・・1n(nは、2以上の整数)を並列に、電気的に接続するようにしてもよい。また、複数の第二導電部2a、2b、・・・2m(mは、2以上の整数)を並列に、電気的に接続するようにしてもよい。なお、複数の第一導電部1a、1b・・・1nを直列に、電気的に接続するようにしてもよい。さらに、複数の第二導電部2a、2b、・・・2mを直列に、電気的に接続するようにしてもよい。
【0044】
本発明の実施の形態の少なくとも1つは、
図1(E)に示すように、第一導電部1の一部又は全部が絶縁部5aにより覆われ、かつ、第二導電部2の一部又は全部が絶縁部5bにより覆われていてもよい。絶縁部5a及び5bを互いに接触させることで、絶縁部5a及び5bが媒体4として機能する。ここで、絶縁部5a及び5bは、互いに異なる絶縁体により構成されていてもよいし、同一の組成又は性質を有する絶縁体により構成されていてもよい。
【0045】
図1(A)~(E)に示した構成をそれぞれ組み合わせて構成してもよい。本発明の効果を奏する態様であれば、組み合わせを限定するものではない。
【0046】
図2は、本発明の実施の形態にかかる、電力変換部の構成を示すブロック図である。
図2(A)は、本発明の実施の形態にかかる、昇圧回路の回路図である。昇圧回路又は降圧回路は、機能部3の一例であり、蓄電部を備えている。
【0047】
図示するように、インダクタL、ダイオードD、トランジスタTr、及びコンデンサCが電気的に接続されている。例えば、入力端子A1は、第一導電部1と接続され、入力端子A2は、第二導電部2と接続されている。出力端子B1及び出力端子B2は、電力消費部や制御部等と接続されている。なお、制御部は、昇圧回路と、第一導電部1及び第二導電部2との間で、昇圧回路と並列になるように接続されていてもよい。
【0048】
トランジスタTrがONである場合に、入力電圧VINが印加されると、インダクタLに電気エネルギーが蓄電される。入力電圧VINは、接続点P1と接続点P2の電位差である。トランジスタTrがOFFである場合に、入力電圧VINに由来する電気エネルギーに、インダクタLに蓄電されたエネルギーが加算され、ダイオードDを介して出力される。その結果、入力電圧VINよりも接続点P3と接続点P4の電位差である出力電圧VOUTの方が高い電圧となる。昇圧回路は、入力電圧VINが所定の電圧よりも低い電圧であることを前提にするもので、所定の電圧よりも高い電圧では昇圧制御が実行されないようなものであってもよい。昇圧回路の入力電圧VINは、5mV以上であることが好ましい。なお、トランジスタTrのON/OFFは、制御部により制御される。
【0049】
図2(B)は、本発明の実施の形態にかかる、降圧回路の回路図である。図示するように、トランジスタTr、インダクタL、ダイオードD、及びコンデンサCが電気的に接続される。例えば、入力端子A1は、第一導電部1と接続され、入力端子A2は、第二導電部2と接続されている。出力端子B1及び出力端子B2は、電力消費部や制御部等と接続されている。なお、制御部は、降圧回路と、第一導電部1及び第二導電部2との間で、降圧回路と並列になるように接続されていてもよい。
【0050】
トランジスタTrがONの場合には、インダクタLに電気エネルギーが蓄電される。入力電圧VINは、接続点P11と接続点P12の電位差であり、出力電圧VOUTは、接続点P13と接続点P14の電位差である。この場合、入力電圧VINは、出力電圧VOUTとほぼ等しくなる。トランジスタTrがOFFとなると、インダクタLの左端にある接続点P15の電位が接続点P14の電位よりも低くなるため、出力電圧VOUTの方が低い電圧となる。降圧回路は、入力電圧VINが所定の電圧よりも高い電圧であることを前提にするもので、所定の電圧よりも低い電圧では降圧制御が実行されないようなものであってもよい。なお、トランジスタTrのON/OFFは、制御部により制御される。
【0051】
次に、本発明のセンサの内部インピーダンスの測定方法について説明をする。
図3は、本発明の実施の形態にかかる、センサを表す図である。第一導電部1及び第二導電部2の電位差をV
1
INと定義し、接続点P
1と接続点P
2の電位差をV
2
INと定義することができる。接続点P
5と接続点P
6の電位差をV
1
OUTと定義し、接続点P
3と接続点P
4の電位差をV
2
OUTと定義することができる。本発明のセンサにより発電が行われると、第一導電部1と第二導電部2との間で、起電力V
1
INにより電流Iが接続点P
1と接続点P
5の方向に流れる。
【0052】
図3に図示するように、第一導電部1は接続点P
1にて、第二導電部2は接続点P
2にて昇圧回路と接続されている。昇圧回路は、インダクタL、ダイオードD、トランジスタTr、及びコンデンサCが電気的に接続されている。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態にかかる、センサ内のトランジスタのON-OFFを切り替えた場合における、時間と電流Iの関係を示す図である。ここで、V
1
OUTとV
2
INの関係は、インダクタLに流れる電流IとインダクタンスL1を用いて、式(1):V
1
OUT-V
2
IN=-L1×dI/dtで表すことができる。トランジスタTrがONの場合は、V
1
OUT=0なので、式(2):V
2
IN=L1×dI/dtを導き出すことができる。この場合、dI/dtは正の値であり、時間と共に電流Iは増加する。一方で、トランジスタTrがOFFの場合は、V
1
OUT>V
2
INとなるから、式(1):V
1
OUT-V
2
IN=-L1×dI/dtから、dI/dtは負の値となることが分かる。この場合、時間と共に電流Iは減少する。トランジスタTrのONとOFFは定期的に繰り返される。
【0054】
ここで、第一導電部1、第二導電部2及び媒体4を1種の電池として捉えると、起電力V1
INにより電流Iが流れると考えることができる。この場合に、媒体4により起因する内部インピーダンスをZと定義すると、入力電圧と内部インピーダンスとの関係は、式(3):V1
IN=Z×I+V2
INで表すことができる。
【0055】
また、トランジスタTrがOFFとなっている間(以下、TOFF期間という)、電流IによってコンデンサCに電荷Qがチャージされる。TOFF期間中に、接続点P3において上昇した電圧をΔVとし、コンデンサCのコンデンサ容量をC1とすると、式(4):Q=∫Idt=C1×ΔVが成立する。
【0056】
式(2)と式(3)から、V
1
IN=L1×dI/dt+Z×Iが導きだされる。この方程式を解くと、Aを積分定数として、式(5):I(t)=V
1
IN/Z+A×e
(-Z/L1×t)が導き出される。トランジスタTrがOFFからONに切り替わった時間をt=0とした場合、
図4から明らかなように、t=0の時、電流Iはゼロである。そこで、t=0、I=0を式(5)に代入すると、A=-V
1
IN/Zの関係が成立することが分かる。このA=-V
1
IN/Zを式(5)に代入すると、式(6):I(t)=V
1
IN/Z×(1-e
(-Z/L1×t))を導きだすことができる。トランジスタTrがONとなっている間(以下、T
on期間という)の電流Iは、式(6)より算出できる。トランジスタTrがONになっている時間を十分にとると、電流Iの最大値はV
1
IN/Zとなる。
【0057】
T
on期間が終了し、T
off期間が開始した時(つまり、トランジスタTrがOFFからONに切り替わってから時間T1が経過した時)における電流Iは、式(6)にt=T1を代入することにより算出することができる。これは、
図4からもわかるように、電流Iには、連続性があるためである。(1-e
(-Z/L1×T1))=K(定数)と置き換えると、t=T1における電流Iは、I(T1)=V
1
IN/Z×(1-e
(-Z/L1×T1))=K×V
1
IN/Zで表すことができる。なお、Kは0≦K<1の関係を満たし、Z/L1×T1の値が十分に大きくなると、Kは1に近似することができる。
【0058】
次に、式(1)と式(3)により、式(7):L1×dI/dt+Z×I=V1
IN-V1
OUTを導きだすことができる。さらに、式(4)より、V2
OUTは、∫Idt/C1+Vstartで表すことができる。ここで、Vstartは、Toff期間の開始時(t=T1)のコンデンサCの電圧であり、定数である。ダイオードDの閾値電圧をVfとすれば、式(8):V1
OUT=V2
OUT+Vf=∫Idt/C1+Vstart+Vf=∫Idt/C1+V´outを導きだすことができる。なお、ここでV´out=Vstart+Vfは定数である。
【0059】
さらに、式(7)及び式(8)から、式(9):∫Idt/C1+Z×I+L1×dI/dt=V1
IN-V´outを導きだすことができる。式(9)の微分方程式を解くことで、Toff期間の電流Iを時間t、コンデンサ容量C1、内部インピーダンスZ、インダクタンスL1、V1
IN、V´out、Kの関数で表すことができる。Toff期間の開始時間をt=0とした場合に、その時の電流Iの初期値I(0)はI(0)=K×V1
IN/Zである。Toff期間が終了した時(つまり、トランジスタTrがONからOFFに切り替わってから時間T2が経過し、電流Iがゼロとなった時)、I(T2)=0である。コンデンサ容量C1、インダクタンスL1、V´outは定数であり、I(0)、T2を測定すれば、V1
INとZの値をそれぞれ算出することができる。
【0060】
Zについては、上で述べた方法と異なり、簡易的に求めることも可能である。T
off期間中、V
1
OUTは、V
2
INに比べて10倍ほど大きい電圧であるため、dI/dtも大きな値となる。この場合、式(4)における∫Idtは、
図4において三角形Sの面積に相当する。従って、式(4)より式(9):∫Idt=K×V
1
IN/Z×T2/2=C1×ΔVが導きさせる。ここで、T
on時間を十分に長くとればK≒1と近似できるから、式(9)にK=1を代入すると、式(10):V
1
IN/Z×T2/2=C1×ΔVが導き出される。C1は定数であり、T
off期間を十分に長くとった時点(電流Iが最小値となった時点)でのΔV、T
off期間を十分に長くとった時点(電流Iが最小値となった時点)でのV
1
IN、T2(V
1
OUTがV
2
INと等しくなったときの時間)から、Zを算出することができる。なお、T
off期間を十分に長くとった時点(電流Iが消費された時点)では、V
1
IN=V
2
INであるため、V
2
INを測定することで、V
1
INを特定することができる。
【0061】
なお、内部インピーダンスZの算出は、制御部により実行される。
【0062】
[センサシステム]
本発明の実施の形態にかかるセンサシステムは、上記センサを活用したセンサシステムである。センサの第一導電部1及び第二導電部2が媒体4に接触することで、電力を得ることができ、センサの制御部により、該センサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが測定される。つまり、センサの第一導電部1及び第二導電部2が媒体4に接触すると、該センサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが測定される。
【0063】
測定される入力電圧VINは、例えば、Toff期間を十分に長くとり、電流Iがゼロになった時点での入力電圧V2
INであり、センサによって測定される出力電圧VOUTは、例えば、Toff期間を十分に長くとり、電流Iがゼロになった時点での出力電圧V2
OUTであってもよい。また、センサによって測定される入力電圧VINは、例えば、Toff期間を開始した時点での入力電圧V2
INであり、センサによって測定される出力電圧VOUTは、例えば、Toff期間を開始した時点での出力電圧V2
OUTであってもよい。Toff期間が開始した時の入力電圧V2
INは、式(3)から明らかなように、インピーダンスZに依存した値となる。逆に言えば、この入力電圧V2
INを測定することで、インピーダンスZを含めた入力電圧の変動を把握することができる。よって、Toff期間が開始した時の入力電圧V2
INは、測定データとして有効である。
【0064】
測定された、センサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTに関する情報は、センサの通信部から、他のコンピュータ装置へ送信される。
【0065】
ここで、他のコンピュータ装置は、通信部、及び制御部を有するコンピュータ装置であれば特に限定されないが、例えば、サーバ装置、他のセンサが備えるマイコン、デスクトップ型・ノート型のパーソナルコンピュータ、タブレット型端末、スマートフォン、従来型の携帯電話などが挙げられる。他のコンピュータ装置が、デスクトップ型・ノート型のパーソナルコンピュータ、タブレット型端末、スマートフォン、従来型の携帯電話など(以下、端末装置という)の場合は、本発明のセンサシステムを利用するための専用のアプリケーションがインストールされていることが好ましい。
【0066】
本発明の実施の形態にかかるセンサシステムは、上記センサを少なくとも2つ以上備えるものであり、それぞれのセンサは、上記の構成を備えるものである。
【0067】
(センサシステムの第一の実施の形態)
本発明の第一の実施の形態にかかるセンサシステムは、異なる位置に設置された、少なくとも2つ以上のセンサを備えるものである。センサの数は2つに限定されず、用途に応じて適宜設計することができる。ここで、異なる位置に設置された、とは、所定の距離を置いて設置された、ということを表す。所定の距離は、数メートルでも、数百メートルでも、数キロメートルでもよく、適宜設計可能である。
【0068】
異なる位置に設置された少なくとも2つ以上のセンサは、それぞれ、上記構成を備えるものである。そして、センサの第一導電部1及び第二導電部2が媒体4に接触すると、電力が発生し、該センサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが測定される。そして、少なくとも1のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTと、該1のセンサとは異なる他のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTとが、所定の条件を満たすかが検知される。
【0069】
各センサにおいて測定された内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTに関する情報は、該センサの通信部から、他のコンピュータ装置へ送信される。そして、他のコンピュータ装置によって、所定の条件を満たすか否かの判定が行われる。ここで、他のコンピュータ装置は、通信部、及び制御部を有するコンピュータ装置であれば特に限定されないが、例えば、サーバ装置、他のセンサが備えるマイコン、端末装置が挙げられる。他のコンピュータ装置は、専用アプリケーションがインストールされていることが好ましい。
【0070】
また、他のコンピュータ装置がサーバ装置である場合であって、サーバ装置によって少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが、所定の条件を満たすことが検知されたときには、サーバ装置の通信部から、端末装置に、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信されることとしてもよい。そして、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報は、端末装置の表示画面に表示され、あるいは、端末装置の音声出力部から音声として出力されることとしてもよい。
【0071】
また、一のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTを、他のセンサに送信し、他のセンサが備えるマイコンにて、一のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTと、他のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTとが、所定の条件を満たすか否かを判定することができる。
【0072】
例えば、センサシステムが備える少なくとも2つ以上のセンサのうちの一つをマスタセンサとし、他の全てのセンサをサブセンサとしてもよい。この場合、サブセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTに関する情報はマスタセンサに送信され、マスタセンサのマイコンによって、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが所定の条件を満たすかが検知される。また、この場合、マスタセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTに関する情報は、他のセンサに送信されず、マスタセンサの備えるマイコンによって、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが所定の条件を満たすかが検知される際に利用される。
【0073】
そして、マスタセンサのマイコンによって、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが所定の条件を満たすことが検知された場合には、マスタセンサの通信部から、サーバ装置、又は端末装置に、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信されることとしてもよい。サーバ装置に所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信された場合は、サーバ装置の通信部から、さらに、端末装置に、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信されることとしてもよい。そして、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報は、端末装置の表示画面に表示され、あるいは、端末装置の音声出力部から音声として出力されることとしてもよい。
【0074】
所定の条件を満たす、とは、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTの関係が、所定の条件を満たすことでもよい。例えば、あるセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTと、あるセンサとは異なる他のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTとの大小関係が、所定の条件を満たすことでもよい。
【0075】
あるいは、所定の条件を満たす、とは、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが、それぞれ、所定の条件を満たすことでもよい。例えば、あるセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTと、あるセンサとは異なる他のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTとが、それぞれ、所定の閾値を超える、所定の閾値以上となる、所定の閾値より小さくなる、又は、所定の閾値以下となる等の条件を満たすことでもよい。
【0076】
例えば、本発明の第一の実施の形態にかかるセンサシステムは、上記センサを、山の山頂部と該山の山麓部の地面に設置することで、該山の土砂災害の危険性を予測するために利用することができる。この場合、センサの第一導電部1及び第二導電部2の長手方向が、地面に対して垂直になるように、そして、センサの第一導電部1及び第二導電部2の少なくとも一部が、地面の土に接するように、あるいは、地中に埋まるように、センサを設置することが好ましい。
【0077】
この場合、センサが利用する媒体4は、山の地面の土と、土が含有する水となる。そして、土が含有する水の量の割合、すなわち、土の含水率によって、センサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUT(以下、センサにおける内部インピーダンスZ等、という)は変化する。センサにおける内部インピーダンスZ等と土の含水率の関係(例えば、センサにおける内部インピーダンスZが何kΩのときに、土の含水率は何質量%であるか、などの関係)は、予め測定され、サーバ装置などの、記憶部を有する他のコンピュータ装置に記憶されていることが好ましい。
【0078】
ここでは、センサによって測定された、センサにおける内部インピーダンスZ等に関する情報は、該センサの通信部から、サーバ装置へ送信されることとする。そして、サーバ装置には、センサにおける内部インピーダンスZ等と土の含水率の関係が記憶されていることとする。
【0079】
例えば、雨などにより山の地面の土の含水率が高くなると、センサにおける内部インピーダンスZ等は変化する。そして、サーバ装置によって、山の山麓部に設置したセンサにおける内部インピーダンスZ等と、該山の山頂部に設置したセンサにおける内部インピーダンスZ等が所定の条件を満たすことが検知された場合、サーバ装置の通信部から、端末装置に、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信される。
【0080】
そして、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報は、端末装置の表示画面に表示され、あるいは、端末装置の音声出力部から音声として出力される。このとき、端末装置において、山の山麓部と該山の山頂部の地面の土の含水率に関する情報も確認できることが好ましい。山の山麓部と該山の山頂部の地面の土の含水率に関する情報が確認できることで、該山の土砂災害の危険性がどの程度高くなっているのかが把握しやすくなる。
【0081】
なお、このときの所定の条件を満たした場合とは、例えば、山の山麓部に設置したセンサにおける内部インピーダンスZ等が、該山の山頂部に設置したセンサにおける内部インピーダンスZ等の2倍よりも大きくなった場合など、所定の不等式で示される条件を満たす場合が挙げられる。所定の条件を満たすことで、例えば、該山の山麓部の地面の土の含水率は、該山の山頂部の地面の土の含水率よりも高くなっており、該山の山麓部の土砂災害の危険性が高くなっていることが分かる。
【0082】
あるいは、このときの所定の条件を満たした場合とは、例えば、山の山麓部に設置したセンサにおける内部インピーダンスZ等と、該山の山頂部に設置したセンサにおける内部インピーダンスZ等のそれぞれが、平常時の各部に設置したセンサにおける内部インピーダンスZ等(平均的な雨量の一年間、あるいは特定の季節における、センサにおける内部インピーダンスZ等の平均的な値)の2倍よりも大きくなった場合などが挙げられる。所定の条件を満たすことで、例えば、該山の山麓部の地面の土の含水率、及び、該山の山頂部の地面の土の含水率は、ともに平常時よりも高くなっており、該山全体の土砂災害の危険性が高くなっていることが分かる。
【0083】
第一の実施の形態では、センサシステムにより、センサを設置した地面の土の含水率の変化を検知する構成としたが、例えば、センサを設置した地面の土の性質(pHや組成)に変化があった場合でも、センサにおける内部インピーダンスZ等をもとに、この変化を検知することが可能である。また、第一の実施の形態では、地面の土と、土が含有する水を媒体として利用することについて述べたが、本発明のセンサは、土や水とは異なるもの、例えば、木材などを媒体として利用することができる。
【0084】
(センサシステムの第二の実施の形態)
本発明の第二の実施の形態にかかるセンサシステムは、同じ位置に設置された、少なくとも2つ以上のセンサを備えるものであり、一のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、該一のセンサとは異なる他のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の組み合わせが異なるものである。ここで、同じ位置に設置された、とは、所定の距離以内に設置された、ということを表す。所定の距離は、数メートルでも、数十センチメートルでも、数センチメートルでもよく、適宜設計可能である。
【0085】
同じ位置に設置された、少なくとも2つ以上のセンサは、それぞれ、上記構成を備えている。そして、センサの第一導電部1及び第二導電部2が媒体4に接触すると、該センサによって、該センサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが測定される。
【0086】
ただし、一のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、該一のセンサとは異なる他のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の組み合わせが異なるものであるため、同じ位置に設置されていても、つまり、同じ媒体に接触していても、一のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTと、該一のセンサとは異なる他のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTは、異なるものとなる。一のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の組み合わせと、該一のセンサとは異なる他のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の組み合わせが異なるものであるとは、一のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の素材の組み合わせと、該一のセンサとは異なる他のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の素材の組み合わせが異なるものであるということを表す。具体的には、例えば、一のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の素材には、亜鉛とステンレスが用いられ、該一のセンサとは異なる他のセンサにおける第一導電部及び第二導電部の素材には、亜鉛と白金が用いられるようなことである。
【0087】
測定された、センサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTに関する情報は、センサの通信部から、他のコンピュータ装置へ送信される。そして、他のコンピュータ装置によって、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが、所定の条件を満たすかが検知される。
【0088】
ここで、他のコンピュータ装置は、通信部、及び制御部を有するコンピュータ装置であれば特に限定されないが、例えば、サーバ装置、他のセンサが備えるマイコン、端末装置が挙げられる。他のコンピュータ装置が、端末装置の場合は、専用アプリケーションがインストールされていることが好ましい。
【0089】
また、他のコンピュータ装置がサーバ装置である場合であって、サーバ装置によって少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが、所定の条件を満たすことが検知されたときには、サーバ装置の通信部から、端末装置に、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信されることとしてもよい。そして、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報は、端末装置の表示画面に表示され、あるいは、端末装置の音声出力部から音声として出力されることとしてもよい。
【0090】
他のコンピュータ装置が他のセンサが備えるマイコンである場合には、例えば、センサシステムが備える少なくとも2つ以上のセンサのうちの一つをマスタセンサとし、他の全てのセンサをサブセンサとしてもよい。この場合、サブセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTに関する情報はマスタセンサに送信され、マスタセンサのマイコンによって、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが所定の条件を満たすかが検知される。また、この場合、マスタセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTに関する情報は、他のセンサが備えるマイコンに送信されず、マスタセンサのマイコンによって、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが所定の条件を満たすかが検知される際に利用される。
【0091】
そして、マスタセンサのマイコンによって、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが所定の条件を満たすことが検知された場合には、マスタセンサの通信部から、サーバ装置、又は端末装置に、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信されることとしてもよい。サーバ装置に所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信された場合は、サーバ装置の通信部から、さらに、端末装置に、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報が送信されることとしてもよい。そして、所定の条件を満たしたことなどを通知する旨の情報は、端末装置の表示画面に表示され、あるいは、音声出力部から音声として出力されることとしてもよい。
【0092】
所定の条件を満たす、とは、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTの関係が、所定の条件を満たすことでもよい。例えば、あるセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTと、あるセンサとは異なる他のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTとの大小関係が、所定の条件を満たすことでもよい。
【0093】
あるいは、所定の条件を満たす、とは、少なくとも2つ以上のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTが、それぞれ、所定の条件を満たすことでもよい。例えば、あるセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTと、あるセンサとは異なる他のセンサにおける内部インピーダンスZ、又は、昇圧回路若しくは降圧回路における入力電圧VIN若しくは出力電圧VOUTとが、それぞれ、所定の閾値を超える、所定の閾値以上となる、所定の閾値より小さくなる、又は、所定の閾値以下となる等の条件を満たすことでもよい。
【0094】
本発明の実施の形態にかかるセンサシステムは、センサが自立した電源を備えているため、センサを駆動するための外部電源の確保や電池の交換等の手間が省け、センサ、及びセンサシステムの長期的な利用が容易となる。
【0095】
本発明の実施の形態において、「導電部」とは、例えば、通電可能部材であればよく、材質を問わない。「機能部」とは、例えば、電流を流すことで所定の機能を実行するものをいう。機能は、電気を光や熱等のエネルギーに変換するもの、回路を制御するものであってもよい。
【0096】
本発明の実施の形態において、「昇圧回路」とは、例えば、入力電圧を昇圧して出力する回路をいう。「降圧回路」とは、例えば、入力電圧を降圧して出力する回路をいう。「導電性ポリマー」とは、例えば、電気伝導性を持つ高分子化合物をいう。「カーボン」とは、例えば、導電性を有する炭素繊維をいう。「一体的に構成」とは、例えば、異なる物体同士を接合させることをいい、より具体的には、接着剤による接着、他の部材を使用した機械的接合、溶接、圧着等、化学的及び/又は物理的な力により接合させることが挙げられる。
【0097】
[参考例]
以下、本発明の実施の形態にかかる参考例を記載する。本発明はこれらの参考例により何ら限定されるものではない。
【0098】
(参考例1)
以下の試験は、常温、常圧で行った。
図1(A)に示す、第一導電部1、第二導電部2、機能部3及び媒体4を備える回路を用いた。第一導電部1として、ステンレス製(オーステナイト、SUS304系)の板状部材(0.5mm厚、10cm×15cm)を用い、第二導電部2として、亜鉛メッキ鋼板(鉄)製の板状部材(0.5mm厚、10cm×15cm)を用い、第一導電部1、第二導電部2及び機能部3を、それぞれ銅製の導線で接続した。機能部3は、電力消費部、出力電圧変換部、通信部及び制御部を備えている。また、その入力インピーダンスは1kΩ以上であり、非線形な電流-電圧特性を有するものを用いた。電力消費部には、2mA以上の電流が流れると点灯するLED電球を用いた。出力電圧変換部には
図2(A)に示す昇圧回路を用い、
図3のようなセンサを構成した。
【0099】
第一導電部1を、出力電圧変換部の昇圧回路の入力端子A1に接続し、また、昇圧回路の出力端子B1をLED電球に接続した。さらに、第二導電部2を、昇圧回路の入力端子A2に接続し、また、昇圧回路の出力端子B2を、LED電球の出力端子B1と接続されている端子とは反対側の端子に接続した。
【0100】
アクリル製容器(外径15cm×15cm×15cmの立方体、内径14.5cm)に高さ7.5cmまで、純水(古河薬品工業株式会社製、高純度精製水、温度25度:媒体4)を入れ、第一導電部1及び第二導電部2を浸してセンサを構築した。第一導電部1及び第二導電部2は非接触であり、第一導電部1及び第二導電部2の距離は12cmであり、第一導電部1と第二導電部2の板状の平面が平行になるように設置した。
【0101】
センサの第一導電部1及び第二導電部2との間の電圧を測定した(測定1)。測定には、Agilent Technologies社製の34401Aマルチメーターを使用した。結果を表1に示す。参考例1に示したセンサでは、LED電球は270~330秒おきに点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、起電していることを確認できた。
【0102】
次に、アクリル製容器(外径15cm×15cm×15cmの立方体、内径14.5cm)に高さ7.5cmまで、純水(古河薬品工業株式会社製、高純度精製水、温度25度:媒体4)を入れ、第一導電部1及び第二導電部2を浸した。第一導電部1及び第二導電部2は非接触であり、第一導電部1及び第二導電部2の距離は12cmであり、第一導電部1と第二導電部2の板状の平面は、平行になるように設置した。また、第一導電部1及び第二導電部2が、電気的に接続されていない状態とした。そして、34401Aマルチメーターを用いて、第一導電部1及び第二導電部2との間の電圧を測定した(測定2)。さらに、この状態において、第一導電部1と第二導電部2との間の媒体4の抵抗値を測定した(測定3)。
【0103】
(参考例2)
媒体4を、土(株式会社プロトリーフ製、観葉植物の土)に変更したこと以外は、参考例1と同様にして、測定1~3を実施した。結果を表1に示す。参考例2に示したセンサでは、LED電球は21~23秒おきに、略等間隔に点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、起電していることを確認できた。
【0104】
(参考例3)
純水(参考例1のものと同じ)50gに塩(伯方塩業株式会社製、伯方の塩)5gを溶かした水溶液に浸したウエスを、媒体4と接触する第一導電部1及び第二導電部2の面に貼り付け、媒体4を砂(トーヨーマテラン株式会社製、粒度ピーク(重量比)が、約0.9mmの珪砂)に変更したこと以外は、参考例1と同様にして、測定1~3を実施した。結果を表1に示す。参考例2に示したセンサでは、LED電球は80~100秒おきに点滅を繰り返した。すなわち、第一導電部1及び/又は第二導電部2から、起電していることを確認できた。
【0105】
【0106】
(参考例4)
参考例1において、アクリル製容器に、高さ7.5cmまで純水を入れていたところ、高さ10cmまで純水を追加した。純水を追加することで、前述したセンサの内部インピーダンスの変化を確認できた。また、純水を追加することで、Toff期間が開始した時の入力電圧V2
INの変化を確認できた。なお、内部インピーダンスは、上述した算定方法により算定した。
【0107】
(参考例5)
参考例2において、土に水を加え、含水率を高くしたところ、前述したセンサの内部インピーダンスの変化を確認できた。また、水を追加することで、Toff期間が開始した時の入力電圧V2
INの変化を確認できた。なお、内部インピーダンスは、上述した算定方法により算定した。
【符号の説明】
【0108】
1 第一導電部、2 第二導電部、3 機能部、4 媒体、5 絶縁部