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特許7416491ワイヤボンディング装置、ワイヤ切断方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置、ワイヤ切断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022569661
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047415
(87)【国際公開番号】W WO2022130617
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉野 浩章
(72)【発明者】
【氏名】手井 森介
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-294581(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122410(WO,A1)
【文献】特開平09-252005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-21/449
H01L 21/60-21/607
H01L 21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置であって、
ワイヤを挿通するボンディングツールと、
超音波ホーンを介して前記ボンディングツールに超音波振動を供給する超音波振動子と、
前記ボンディングツールを移動させる駆動機構と、
前記ワイヤボンディング処理を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ボンディングツールでワイヤを押圧することによって、ボンディング対象であるボンド点にワイヤをボンディングするボンディング工程と、
前記ボンド点にボンディングされたワイヤからワイヤテールを繰り出すテール繰出工程と、
ワイヤをクランプした状態で、前記ボンディングツールを上昇させて、ワイヤにテンションを付与するテンション付与工程と、
前記ボンディングツールを下降させて、ワイヤに付与されたテンションを解放するテンション解放工程と、
前記テンション付与工程及び前記テンション解放工程を含む一連の工程を少なくとも1回実行した後、前記ボンディングツールを上昇させて、前記ボンド点にボンディングされたワイヤから前記ワイヤテールを切断するテールカット工程と、
を実行する、ワイヤボンディング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記テールカット工程において、前記テンション付与工程及び前記テンション解放工程を含む一連の工程を複数回実行する、
請求項1に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項3】
前記テンション付与工程は、第1テンション付与工程と、前記第1テンション付与工程よりも後に実行される第2テンション付与工程とを含み、
前記テンション解放工程は、前記第1テンション付与工程と前記第2テンション付与工程の間に実行され、
前記第2テンション付与工程における前記ボンディングツールの上昇の移動量は、前記テンション解放工程における前記ボンディングツールの下降の移動量よりも大きい、
請求項2に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項4】
前記第1テンション付与工程における前記ボンディングツールの上昇の移動量は、前記第2テンション付与工程における前記ボンディングツールの上昇の移動量と同一である、
請求項3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項5】
前記第1テンション付与工程における前記ボンディングツールの上昇の移動量は、前記テンション解放工程における前記ボンディングツールの下降の移動量と同一である、
請求項3に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記ボンディングツールの先端のワイヤを第1ボンド点にボンディングする第1ボンディング工程と、
前記第1ボンディング工程を実行した後、前記第1ボンド点から、前記ボンド点である第2ボンド点に向かってワイヤをループさせるワイヤループ工程と、
をさらに実行する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項7】
前記ボンディング工程は、前記ボンディングツールの先端のワイヤをボール状に形成し、前記ボール状に形成されたワイヤを前記ボンド点にボンディングすることを含む、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のワイヤボンディング装置。
【請求項8】
クランプされたワイヤに供給される電気信号に基づいて、前記ボンド点で前記ワイヤテールが切断されたことを検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部において前記ボンド点で前記ワイヤテールが切断されたことが検知されたときに、前記テンション付与工程及び前記テンション解放工程を含む一連の工程を停止させる、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のボンディング装置。
【請求項9】
ワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置を用いて実行されるワイヤ切断方法であって、
前記ワイヤボンディング装置は、
ワイヤを挿通するボンディングツールと、
超音波ホーンを介して前記ボンディングツールに超音波振動を供給する超音波振動子と、
前記ボンディングツールを移動させる駆動機構と、
前記ワイヤボンディング処理を制御する制御部と、
を備え、
前記ワイヤ切断方法は、
前記ボンディングツールでワイヤを押圧することによって、ボンディング対象であるボンド点にワイヤをボンディングするボンディング工程と、
前記ボンド点にボンディングされたワイヤからワイヤテールを繰り出すテール繰出工程と、
ワイヤをクランプした状態で、前記ボンディングツールを上昇させて、ワイヤにテンションを付与するテンション付与工程と、
前記ボンディングツールを下降させて、ワイヤに付与されたテンションを解放するテンション解放工程と、
前記テンション付与工程及び前記テンション解放工程を含む一連の工程を少なくとも1回実行した後、前記ボンディングツールを上昇させて、前記ボンド点にボンディングされたワイヤから前記ワイヤテールを切断するテールカット工程と、
を実行する、ワイヤ切断方法。
【請求項10】
ワイヤボンディング装置にワイヤボンディング処理を実行させるプログラムであって、
前記ワイヤボンディング装置は、
ワイヤを挿通するボンディングツールと、
超音波ホーンを介して前記ボンディングツールに超音波振動を供給する超音波振動子と、
前記ボンディングツールを移動させる駆動機構と、
前記ワイヤボンディング処理を制御する制御部と、
を備え、
前記プログラムは、前記ワイヤボンディング装置に、
前記ボンディングツールでワイヤを押圧することによって、ボンディング対象であるボンド点にワイヤをボンディングするボンディングステップと、
前記ボンド点にボンディングされたワイヤからワイヤテールを繰り出すテール繰出ステップと、
ワイヤをクランプした状態で、前記ボンディングツールを上昇させて、ワイヤにテンションを付与するテンション付与ステップと、
前記ボンディングツールを下降させて、ワイヤに付与されたテンションを解放するテンション解放ステップと、
前記テンション付与ステップ及び前記テンション解放ステップを含む一連のステップを少なくとも1回実行した後、前記ボンディングツールを上昇させて、前記ボンド点にボンディングされたワイヤから前記ワイヤテールを切断するテールカットステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項11】
前記テンション付与工程における上昇量、及びテンション解放工程における下降量は、前記ワイヤの太さに対する所定の割合によって設定される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置、ワイヤ切断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1ボンド点(例えば半導体ダイのパッド)と第2ボンド点(例えばパッケージのリード)とをワイヤで電気的に接続するワイヤボンディング装置が知られている。ワイヤボンディング装置のボンディングの条件によっては、ワイヤテールの下端と第2ボンド点である電極パッドとの接続部分であるボンディング端部の形状が細くなっていないことがある。この場合、クランパでワイヤを把持してワイヤテールを引っ張り上げると、ワイヤテールに大きな張力が付与されるため、ワイヤテールが引き伸ばされた状態となる。その後、さらにワイヤテールを引っ張り上げた後に、ワイヤテールがボンディング端部で切断される。このとき、引き伸ばされたワイヤテールが切断時の反力で跳ね上がる。これにより、クランパの下部におけるワイヤ及びワイヤテールがS字状に曲がる。曲がったワイヤテールによって、次の電極パッドへのボンディングの際に、放電などによるボール形成の不良を引き起こす虞がある。そこで、ワイヤテールに曲がりを生じさせないワイヤテールの切断方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2723277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているワイヤボンディング方法は、ボンディングをした後にキャピラリをボンディング位置から斜め上方に上昇させることで、キャピラリの先端に導出されているワイヤテールが曲がらないようにしている。しかし、当該ワイヤボンディング方法では、テールワイヤの下端と電極パッドとの接続部分であるボンディング端部が十分細くなっていない場合、ワイヤテールの切断時にワイヤに大きな引張り力がかかる。この場合、当該ワイヤボンディング方法では、ワイヤテールの切断時の反力でワイヤが跳ね上がり、クランパの下部のワイヤ及びワイヤテールがS字状に曲がる虞がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ワイヤテールに大きな引張り力をかけずに切断し、ワイヤテールを切断したときのワイヤの曲がりを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るワイヤボンディング装置は、ワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置であって、ワイヤを挿通するボンディングツールと、超音波ホーンを介して前記ボンディングツールに超音波振動を供給する超音波振動子と、前記ボンディングツールを移動させる駆動機構と、前記ワイヤボンディング処理を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ボンディングツールでワイヤを押圧することによって、ボンディング対象であるボンド点にワイヤをボンディングするボンディング工程と、前記ボンド点にボンディングされたワイヤからワイヤテールを繰り出すテール繰出工程と、ワイヤをクランプした状態で、前記ボンディングツールを上昇させて、ワイヤにテンションを付与するテンション付与工程と、前記ボンディングツールを下降させて、ワイヤに付与されたテンションを解放するテンション解放工程と、前記テンション付与工程及び前記テンション解放工程を含む一連の工程を少なくとも1回実行した後、前記ボンディングツールを上昇させて、前記ボンド点にボンディングされたワイヤから前記ワイヤテールを切断するテールカット工程と、実行する。
【0007】
本発明の一態様に係るワイヤ切断方法は、ワイヤボンディング処理を行うワイヤボンディング装置を用いて実行されるワイヤ切断方法であって、前記ワイヤボンディング装置は、ワイヤを挿通するボンディングツールと、超音波ホーンを介して前記ボンディングツールに超音波振動を供給する超音波振動子と、前記ボンディングツールを移動させる駆動機構と、前記ワイヤボンディング処理を制御する制御部と、を備え、前記ワイヤ切断方法は、前記ボンディングツールでワイヤを押圧することによって、ボンディング対象である第1ボンド点にワイヤをボンディングするボンディング工程と、前記ボンド点にボンディングされたワイヤからワイヤテールを繰り出すテール繰出工程と、ワイヤをクランプした状態で、前記ボンディングツールを上昇させて、ワイヤにテンションを付与するテンション付与工程と、前記ボンディングツールを下降させて、ワイヤに付与されたテンションを解放するテンション解放工程と、前記テンション付与工程及び前記テンション解放工程を含む一連の工程を少なくとも1回実行した後、前記ボンディングツールを上昇させて、前記ボンド点にボンディングされたワイヤから前記ワイヤテールを切断するテールカット工程と、を実行する。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、ワイヤボンディング装置にワイヤボンディング処理を実行させるプログラムであって、前記ワイヤボンディング装置は、ワイヤを挿通するボンディングツールと、超音波ホーンを介して前記ボンディングツールに超音波振動を供給する超音波振動子と、前記ボンディングツールを移動させる駆動機構と、前記ワイヤボンディング処理を制御する制御部と、を備え、前記プログラムは、前記ワイヤボンディング装置に、前記ボンディングツールでワイヤを押圧することによって、ボンディング対象であるボンド点にワイヤをボンディングするボンディングステップと、前記ボンド点にボンディングされたワイヤからワイヤテールを繰り出すテール繰出ステップと、ワイヤをクランプした状態で、前記ボンディングツールを上昇させて、ワイヤにテンションを付与するテンション付与ステップと、前記ボンディングツールを下降させて、ワイヤに付与されたテンションを解放するテンション解放ステップと、前記テンション付与ステップ及び前記テンション解放ステップを含む一連のステップを少なくとも1回実行した後、前記ボンディングツールを上昇させて、前記ボンド点にボンディングされたワイヤから前記ワイヤテールを切断するテールカットステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワイヤテールに大きな引張り力をかけずに切断し、ワイヤテール切断の際のワイヤの曲がりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るワイヤボンディング装置の一例を示す図である。
図2A】ボンディングアームの頂面図である。
図2B】ボンディングアームの底面図である。
図3】検出部の概要の一例を示す図である。
図4】検出部の概要の他の例を示す図である。
図5】ワイヤボンディング方法の一例を示すフローチャートである。
図6A】ボール部を形成する動作の一例を示す図である。
図6B】ボール部を電極パッドに接触させる動作の一例を示す図である。
図6C】リバース動作の一例を示す図である。
図6D】ワイヤループ工程の動作の一例を示す図である。
図6E】ワイヤの一部を電極パッドに押圧する動作の一例を示す図である。
図6F】ワイヤを繰り出す動作の一例を示す図である。
図6G】クランパを閉じる動作の一例を示す図である。
図6H】第1テンション付与工程の動作の一例を示す図である。
図6I】第1テンション解放工程の動作の一例を示す図である。
図6J】第2テンション付与工程の動作の一例を示す図である。
図6K】第2テンション解放工程の動作の一例を示す図である。
図6L】ワイヤテールを切断した状態の一例を示す図である。
図7】各工程を示すタイミングチャートの一例である。
図8】テンション付与工程及びテンション解放工程の詳細のタイミングチャートの一例である。
図9】テンション付与工程及びテンション解放工程の詳細のタイミングチャートの他の例である。
図10】ワイヤボンディング方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0012】
[ワイヤボンディング装置1の構成]
図1図4を参照して、ワイヤボンディング装置1について説明する。図1は、本実施形態に係るワイヤボンディング装置1の一例を示す図である。図2Aは、ボンディングアーム20の頂面図である。図2Bは、ボンディングアーム20の底面図である。図3は、検出部70の概要の一例を示す図である。図4は、検出部70の概要の他の例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、ワイヤボンディング装置1は、例えば、XY駆動機構10と、Z駆動機構12と、ボンディングアーム20と、超音波ホーン30と、ボンディングツール40と、荷重センサ50と、超音波振動子60と、検出部70と、制御部80と、ボンディングツール位置検出部90とを含む。
【0014】
XY駆動機構10は、例えば、XY軸方向(ボンディング面に平行な方向)に移動可能に構成されいる。XY駆動機構10には、例えば、ボンディングアーム20をZ軸方向(ボンディング面に垂直な方向)に移動可能なZ駆動機構12が設けられている。
【0015】
ボンディングアーム20は、支軸14に支持され、XY駆動機構10に対して揺動自在に構成されている。ボンディングアーム20は、XY駆動機構10から、ボンディングの対象である半導体装置100が置かれたボンディングステージ16に向かって延出するよう略直方体に形成されている。ボンディングアーム20は、XY駆動機構10に取り付けられるアーム基端部22と、アーム基端部22の先端側(-Y方向側)に位置して超音波ホーン30が取り付けられるアーム先端部24と、アーム基端部22とアーム先端部24とを連結して可撓性を有する連結部23とを含む。この連結部23は、例えば、ボンディングアーム20の頂面21aから底面21bに向かって延出した所定幅のスリット25a、25b、及び、ボンディングアーム20の底面21bから頂面21aの方向に向かって延出した所定幅のスリット25cによって構成されている。このように、連結部23が各スリット25a、25b、25cによって局部的に薄肉部として構成されることで、アーム先端部24はアーム基端部22に対して撓むことができる。
【0016】
図1及び図2Bに示すように、ボンディングアーム20の底面21b側には、超音波ホーン30が収容される凹部26が形成されている。超音波ホーン30は、ボンディングアーム20の凹部26に収容された状態で、アーム先端部24にホーン固定ネジ32によって取り付けられている。この超音波ホーン30は、凹部26から突出した先端部においてボンディングツール40を保持しており、凹部26には超音波振動を発生する超音波振動子60が設けられている。超音波振動子60によって超音波振動が発生し、これが超音波ホーン30によってボンディングツール40に伝達される。これにより、超音波振動し60は、ボンディングツール40を介してボンディングの対象に超音波振動を付与することができる。超音波振動子60は、例えばピエゾ振動子である。
【0017】
また、図1及び図2Aに示すように、ボンディングアーム20の頂面21a側には、頂面21aから底面21bに向かって順番にスリット25a及び25bが形成されている。上部のスリット25aは、下部のスリット25bよりも幅広に形成されている。そして、この幅広に形成された上部のスリット25aに、荷重センサ50が設けられている。荷重センサ50は、予圧用ネジ52によってアーム先端部24に固定されている。荷重センサ50は、アーム基端部22とアーム先端部24との間に挟み込まれるように配置されている。すなわち、荷重センサ50は、超音波ホーン30の長手方向の中心軸からボンディング対象に対する接離方向にオフセットして、ボンディングアーム20の回転中心とアーム先端部24における超音波ホーン30の取付面(すなわち、アーム先端部24におけるボンディングツール40側の先端面)との間に取り付けられている。そして、上記のように、ボンディングツール40を保持する超音波ホーン30がアーム先端部24に取り付けられているため、ボンディングの対象からの反力によりボンディングツール40の先端に荷重が加わると、アーム基端部22に対してアーム先端部24が撓み、荷重センサ50において荷重を検出することが可能となっている。荷重センサ50は、例えばピエゾ荷重センサである。
【0018】
ボンディングツール40は、ワイヤ42を挿通するためのものであり、例えば挿通穴41が設けられたキャピラリである。ボンディングツール40は、その挿通穴41にボンディングに使用するワイヤ42が挿通される。ボンディングツール40は、その先端からワイヤ42の一部を繰り出し可能に構成されている。以下、便宜上、ボンディングツール40の先端から繰り出されたワイヤ42をワイヤテール42aという。また、ボンディングツール40の先端には、ワイヤ42を押圧するための押圧部40aが設けられている。押圧部40aは、ボンディングツール40の挿通穴41の軸方向の周りに回転対称の形状を有しており、挿通穴41の周囲の下面に押圧面を有している。ボンディングツール40は、バネ力などによって交換可能に超音波ホーン30に取り付けられている。
【0019】
クランパ44は、例えば、ボンディングツール40の上方に設けられ、ボンディングツール40とともに動作する。クランパ44は、例えば、クランパ制御部81から出力される制御信号に基づいて、所定のタイミングでワイヤ42を把持(拘束)又は解放するよう構成されている。クランパ44のさらに上方には、ワイヤテンショナ(不図示)が設けられていてもよい。ワイヤテンショナは、例えば、ワイヤ42を挿通し、ボンディング中のワイヤ42に適度なテンションを付与するよう構成されている。
【0020】
ワイヤ42の材料は、加工の容易さと電気抵抗の低さなどから適宜選択され、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又は銀(Ag)等が用いられる。なお、ワイヤ42は、ボンディングツール40の先端から延出したボール部43を形成する。ボール部43は、所定のボンド点(例えば電極パッド112であり、以下、第1ボンド点という)にボンディングされる。
【0021】
検出部70は、例えば、ボンディングツール40に挿通されたワイヤ42の先端に形成されるボール部43が、ボンディングの対象である半導体装置100に接地されているか否かを電気的に検出する。また、検出部70は、例えば、ワイヤ42に供給された電気信号の出力に基づいて、ワイヤテール42aが半導体装置100の所定のボンド点(例えば、電極パッド122であり、以下、第2ボンド点という)から切断されたか否かを検出する。
【0022】
検出部70は、例えば、電源部71と、出力測定部72と、判定部73とを備える。電源部71は、例えば、半導体装置100とワイヤ42との間に所定の電気信号を印加する。出力測定部72は、例えば、電源部71によって供給された電気信号の出力を測定する。判定部73は、例えば、出力測定部72の測定結果に基づいて、ワイヤ42が半導体装置100に電気的に接触したか否かを判定する。図1に示すように、検出部70は、一方の端子がボンディングステージ16に電気的に接続され、他方の端子がクランパ44(又はワイヤスプール(図1では省略))に電気的に接続されている。
【0023】
図3に示すように、検出部70は、その電源部71が直流電圧電源で構成されていてもよい。すなわち、検出部70は、半導体装置100のボンド点とボンディングステージ16とが抵抗成分のみで接続されているとみなされる場合(例えば両者が電気的に導通している場合)、直流電圧信号を所定の電気信号として用いることができる。この場合、ワイヤ42のボール部43が半導体装置100のボンド点に接触すると、ボンディングステージ16とワイヤ42との間に電気的短絡が生じる。検出部70は、この電気的短絡の有無の変化(例えば出力電圧vの変化)に基づいて、ボール部43が半導体装置100の第2ボンド点である電極パッド122に接触したか否かを判定することができる。換言すると、検出部70は、ワイヤテール42aが半導体装置100の第2ボンド点から切断されたか否かを検出することができる。
【0024】
図4に示すように、検出部70は、その電源部71が交流電圧電源で構成されていてもよい。すなわち、半導体装置100のボンド点とボンディングステージ16との間が容量成分を含む場合(例えば両者が電気的に導通していない場合)、交流電圧信号を所定の電気信号として用いることができる。この場合、ワイヤ42のボール部43が半導体装置100のボンド点に接触すると、ワイヤボンディング装置1の容量値に、半導体装置100が有する容量値がさらに加算される。これにより、ボンディングステージ16とワイヤ42との間の容量値が変化する。したがって、検出部70は、この容量値の変化(例えば出力電圧vの変化)に基づいて、ボール部43が半導体装置100の第2ボンド点に接触したか否かを判定することができる。換言すると、検出部70は、ワイヤテール42aが半導体装置100の第2ボンド点から切断されたか否かを検出することができる。
【0025】
図1に戻り、ボンディングツール位置検出部90は、例えば、ボンディングツール40のZ軸方向における位置を含むボンディングツール40の位置(例えば、ボンディングツール40の先端の位置)を検出する。ボンディングツール位置検出部90は、検出した結果に関する情報(以下、検出結果情報という)を、制御部80に出力する。
【0026】
制御部80は、例えば、クランパ制御部81と、XYZ軸制御部82とを含む。クランパ制御部81は、クランパ44の開閉動作を制御する。XYZ軸制御部82は、ボンディングツール40におけるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の動作を制御する。
【0027】
制御部80は、XY駆動機構10、Z駆動機構12、超音波ホーン30(超音波振動子60)、クランパ44、荷重センサ50、検出部70及びボンディングツール位置検出部90などの各構成との間で信号の送受信が可能になるよう接続されている。制御部80は、これらの構成の動作を制御することにより、ワイヤボンディングにおいて、ワイヤテール42aに曲がりを生じさせないよう、ワイヤテール42aを切断する処理を実行できる。
【0028】
制御部80は、ボンディングツール位置検出部90から出力される検出結果情報に基づいて、ボンディングツール40をZ軸方向に上昇および下降させる。制御部80は、第2ボンド点にワイヤ42をボンディングした後に、ボンディングツール40をZ軸方向に上昇させることにより、ワイヤ42にテンションを付与する(以下、テンション付与工程という)。すなわち、制御部80は、ワイヤテール42aと第2ボンド点との接続部分に応力を加える。その後、制御部80は、ボンディングツール40をZ軸方向に下降させることにより、ワイヤ42に付与されているテンションを解放する(以下、テンション解放工程という)。すなわち、制御部80は、ワイヤテール42aと第2ボンド点との接続部分の応力を解放する。
【0029】
制御部80は、例えば、予め設定された上昇に関する情報(以下、上昇情報という)に基づき、テンション付与工程において、ボンディングツール40の先端の上昇の移動方向及び高さを決定する。同様に、制御部80は、例えば、予め設定された下降に関する情報(以下、下降情報という)に基づき、テンション解放工程において、ボンディングツール40の先端の下降の移動方向及び高さを決定する。ここで、ボンディングツール40の先端の高さとは、所定の基準地点からの距離をいい、所定の基準地点は特に限定されず、例えば第2ボンド点であってもよい。なお、上記において、制御部80は、上昇情報又は下降情報に基づき、ボンディングツール40の先端の高さを決定していると説明したが、これに限定されない。例えば、制御部80は、上昇情報又は下降情報に基づいて、ボンディングツール40の先端の移動距離を決定してもよい。具体的には、一例として、制御部80は、テンション付与工程では第2ボンド点からZ軸方向に上昇する移動距離を決定してもよいし、テンション解放工程ではテンション付与工程で上昇した終点からZ軸方向に下降する移動距離を決定してもよい。以下、便宜上、ボンディングツール40の先端の、上昇の高さ又は移動距離を「上昇の移動量」といい、下降の高さ又は移動距離を「下降の移動量」ということもある。
【0030】
ここで、上昇の移動方向とは、例えば、第2ボンド点から遠ざかる方向であり、Z軸方向であることが望ましい。下降の移動方向とは、例えば、第2ボンド点に近づく方向であり、上昇の移動方向に沿った方向であることが望ましい。ただし、上昇の移動方向及び下降の移動方向をZ軸方向に対して角度をもたせた場合、ワイヤテール42aの下端にX軸方向又はY軸方向の応力を付与できる。これにより、小さい引張り力で、後述するようにワイヤテール42aを切断できる。ここで、上昇の移動方向の始点は、例えば、第2ボンド点であってもよいし、第2ボンド点に対してXY平面でズレた点であってもよい。これにより、ワイヤテール42aの下端にX軸方向又はY軸方向の応力を付与できるため、小さい引張り力で、後述するようにワイヤテール42aを切断できる。また、下降の移動方向の始点は、例えばテンション付与工程の終点であってもよい。以下、便宜上、制御部80において、上昇の移動方向および下降の移動方向がZ軸方向に設定され、始めの上昇の移動方向の始点が第2ボンド点に設定され、始めの下降の移動方向の始点がテンション付与工程の終点に設定されていることとして説明する。
【0031】
また、制御部80は、例えば、ワイヤ42の太さに基づき、テンション付与工程及びテンション解放工程における高さ又は移動距離(移動量)を、自動的に設定してもよい。具体的には、制御部80は、例えば、ワイヤ42の太さに対する所定の割合(例えば、60%)を、上昇の移動量として設定してもよい。制御部80は、ワイヤ42の太さに対する所定の割合(例えば、30%)を、下降の移動量として設定してもよい。また、制御部80は、例えば、上昇情報に基づき、テンション解放工程における下降の移動量を、自動的に設定してもよい。具体的には、制御部80は、上昇の移動量に対する所定の割合(例えば、50%)を、下降の移動量として設定してもよい。さらに言うと、制御部80は、例えば、ワイヤ42の太さに加えて、ワイヤ42の材質に基づき、テンション付与工程の上昇の移動量及びテンション解放工程の下降の移動量を、自動的に設定してもよい。具体的には、制御部80は、例えば、ワイヤ42の材質が固い材質であるほど、上昇の移動量を大きく設定し、下降の移動量を小さく設定してもよい。これは、ワイヤ42の強度が強いほど、大きなテンションを付与しても曲げ変形を生じないためである。これにより、作業者の設定にかかる作業量を減らすことができる。
【0032】
また、制御部80は、例えば、テンション付与工程における上昇の移動量がテンション解放工程における下降の移動量よりも大きくなるよう設定する。そして、制御部80は、例えば、テンション付与工程およびテンション解放工程を複数回繰り返すことが望ましい。すなわち、制御部80は、例えば、今回のテンション付与工程(後述する第2テンション付与工程)におけるボンディングツール40の先端の高さが、前回のテンション付与工程(後述する第1テンション付与工程)におけるボンディングツール40の先端の高さよりも高くなるよう設定している。これにより、制御部80は、テンション付与工程およびテンション解放工程を繰り返すことにより、ワイヤテール42aの下端(-Z軸方向の端部)と、第2ボンド点に接続されたワイヤ42が細く押しつぶされた形状の端部(以下、ボンディング端部42cという)との間の部分に、徐々に金属疲労を生じさせる。つまり、ワイヤテール42aの下端とボンディング端部42cとの間の部分における引っ張り強度が低下する。これにより、当該部分に大きな引張り力をかける必要なく、ワイヤテール42aを第2ボンド点から切断できる。換言すると、ワイヤテール42aと第2ボンド点との接続部分を徐々に薄くして、切断時点では小さい引っ張り力でワイヤテール42aを切断できる。これにより、ワイヤテール42aに曲げ変形を生じさせず、ボンディング品質の向上を図ることができる。
【0033】
また、制御部80は、例えば、検出部70においてワイヤテール42aが半導体装置100の第2ボンド点から切断されたことを検知したことを契機に、テンション付与工程及びテンション解放工程を含む一連の工程を停止させる。これにより、テンション付与工程およびテンション解放工程を最小限の回数で実行できるため、ワイヤテール42aの切断工程の時間を短くできる。また、テンション付与工程およびテンション解放工程の回数の設定が不要となるため、作業者の作業量を減らすことができる。
【0034】
制御部80には、例えば、制御するための情報(以下、制御情報という)を入力するための操作部132と、制御情報を出力するための表示部134とが接続されている。作業者は、表示部134で画面を確認して、操作部132で制御情報(上昇情報や下降情報など)を入力する。なお、制御部80は、CPU及びメモリなどを備えるコンピュータ装置であり、メモリには予めワイヤボンディングに必要な処理を実行するためのプログラムなどが格納される。制御部80は、後述するワイヤボンディング方法において説明するボンディングツール40の動作を制御するための各工程を行うように構成されている(例えば、各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを備える)。
【0035】
[ワイヤボンディング方法]
次に、図5図8を参照して、ワイヤボンディング方法について説明する。ワイヤボンディング方法は、ワイヤボンディング装置1によるワイヤボンディング方法を用いた方法である。図5は、ワイヤボンディング方法の一例を示すフローチャートである。図6A図6Lは、各工程の動作の一例を示す図である。図7は、各工程を示すタイミングチャートである。図6A図6Lの時刻t1~t9は、図7の時刻t1~t9に対応する。図8は、テンション付与工程及びテンション解放工程の詳細の一例を示すタイミングチャートである。
【0036】
ステップS10(時刻t1)において、図6Aに示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40の先端から延び出るワイヤ42の先端部にボール部43を形成させる。ステップS10において、クランパ44は例えば開いた状態である。
【0037】
ステップS11(時刻t1)において、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40を半導体ダイ110の電極パッド112に向かって下降させる。ステップS11において、クランパ44は例えば閉じた状態である。
【0038】
ステップS12(時刻t2)において、図6Bに示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボール部43を電極パッド112に接触させる。そして、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44を開いた状態にして、超音波振動をON制御する(第1ボンディング工程)。これにより、ボール部43が電極パッド112にボンディングされる。ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40の先端をZ軸方向に上昇させつつ、当該先端からワイヤ42を繰り出す。ステップS12において、検出部70は電気信号を検知する。このとき、クランパ44は開いた状態である。
【0039】
ステップS13(時刻t3)において、図6Cに示すように、ワイヤボンディング装置1は、第2ボンド点(ここでは、電極パッド122)とは反対側(図6Cの「矢印」の方向)にワイヤ42を動作させる(リバース動作)。これにより、ワイヤ42は屈曲形状を呈する。
【0040】
ステップS14(時刻t4)において、図6Dに示すように、ワイヤボンディング装置1は、第2ボンド点に向かってワイヤ42を屈曲させながら、ワイヤ42のワイヤループを形成させる(ワイヤループ工程)。そして、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤ42の一部を電極パッド122の上面に接触させる。これにより、第1ボンド点である電極パッド112と、第2ボンド点である電極パッド122とを電気的に接続するワイヤループ(不図示)を形成する。ステップS14において、クランパ44は閉じた状態である。
【0041】
ステップS15(時刻t5)において、図6Eに示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40の押圧部40aによって、ワイヤ42の一部を電極パッド122に押圧する。ワイヤボンディング装置1は、超音波振動をON制御して、ワイヤ42の一部を電極パッド122にボンディングする(第2ボンディング工程)。このとき、電極パッド122に接続されたワイヤ42の端部に、細く押しつぶされた形状のボンディング端部42cが形成される。
【0042】
時刻t6において、図6Fに示すように、ワイヤボンディング装置1は、ボンディングツール40の先端をZ軸方向に上昇させて、当該先端からワイヤテール42aを繰り出す(テール繰出工程)。このとき、クランパ44は開いた状態である。ボンディングツール位置検出部90は、ボンディングツール40の先端の高さを検出し、その高さを示す情報(以下、高さ情報という)を制御部80に出力する。
【0043】
また、時刻t6において、制御部80は、ボンディングツール40の高さが高さH1を示す高さ情報を取得すると、XYZ軸制御部82によりZ駆動機構12を制御させて、ボンディングツール40の動作を停止させる。このとき、図6Fに示すように、ボンディングツール40の先端の高さが高さH1となり、ボンディングツール40の先端からワイヤテール42aが導出している。
【0044】
時刻t7において、図6Gに示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44を閉じてワイヤ42を把持する。クランパ44を閉じた状態で、時刻t8において、ワイヤボンディング装置1は、テンション付与工程及びテンション解放工程を実行する。図7に示すように、ワイヤボンディング装置1は、例えば、テンション付与工程及びテンション解放工程において、超音波振動をON制御する。以下、図8も参照しつつ、時刻t8におけるテンション付与工程及びテンション解放工程について説明する。
【0045】
ステップS16(図8の時刻t81)において、図6Hに示すように、ワイヤボンディング装置1は、クランパ44でワイヤ42を把持しながら、クランパ44とともにボンディングツール40の先端を、Z軸方向に所定の高さ(ここでは、高さH1+D1)まで上昇させる(以下、第1テンション付与工程という)。換言すると、ボンディングツール40の先端を所定の移動距離(ここでは、移動距離D1)上昇させる。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ボンディング端部42cにZ軸方向にテンションを付与することができる。このとき、制御部80は、例えば、ボンディングツール40の先端の高さが高さH1+D1を示す高さ情報を取得すると、XYZ軸制御部82によりZ駆動機構12を制御して、ボンディングツール40(クランパ44)の動作を停止させる。
【0046】
ステップS17(図8の時刻t82)において、図6Iに示すように、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aをZ軸方向に所定の高さ(ここでは、高さH1+D1-D2)まで下降させる(以下、第1テンション解放工程という)。換言すると、ボンディングツール40の先端を所定の移動距離(ここでは、移動距離D2)下降させる。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ボンディング端部42cにかかるテンションを解放することができる。このとき、制御部80は、例えば、ボンディングツール40の先端の高さが高さH1+D1-D2を示す高さ情報を取得すると、XYZ軸制御部82によりZ駆動機構12を制御して、ボンディングツール40(クランパ44)の動作を停止させる。
【0047】
ステップS18において、ワイヤボンディング装置1は、例えば、第1テンション付与工程及び第1テンション解除工程に対する、次のテンション付与工程(以下、第2テンション付与工程という)及びテンション解放工程(以下、第2テンション解放工程という)それぞれのボンディングツール40の高さ又は移動距離を示す移動量を設定する。ワイヤボンディング装置1は、例えば、所定の記憶部に記憶されている移動量に関する情報(上昇情報、下降情報など)に基づいて、各工程の移動量を設定する。
【0048】
ここで、ワイヤボンディング装置1は、例えば、第1テンション付与工程の高さよりも高い高さを、第2テンション付与工程の高さに設定する。同様に、ワイヤボンディング装置1は、例えば、第1テンション解放工程の高さよりも高い高さを、第2テンション解放工程の高さに設定する。また、ワイヤボンディング装置1は、例えば、第1テンション付与工程の移動距離及び第1テンション解放工程の移動距離と同一の移動距離を、第2テンション付与工程の移動距離及び第2テンション解放工程の移動距離に設定してもよい。ここで、「同一の移動距離」とは、例えば、二つの移動距離においてワイヤボンディング装置1の機械的な誤差を許容する移動距離をいう。
【0049】
ステップS19(図8の時刻t83)において、図6Jに示すように、ワイヤボンディング装置1は、第2テンション付与工程において、クランパ44でワイヤ42を把持しながら、クランパ44とともにボンディングツール40の先端を、Z軸方向に所定の高さ(ここでは、高さH1+2D1-D2)まで上昇させる。換言すると、ボンディングツール40の先端を、第1テンション解放工程の終点(ここでは、高さH1+D1-D2)を始点として、所定の移動距離(ここでは、移動距離D1)上昇させる。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ボンディング端部42cにZ軸方向にテンションを付与することができる。このとき、制御部80は、例えば、ボンディングツール40の先端の高さが高さH1+2D1-D2を示す高さ情報を取得すると、XYZ軸制御部82によりZ駆動機構12を制御して、ボンディングツール40(クランパ44)の動作を停止させる。
【0050】
ステップS20(図8の時刻t84)において、図6Kに示すように、ワイヤボンディング装置1は、第2テンション解放工程において、ワイヤテール42aをZ軸方向に所定の高さ(ここでは、高さH1+2D1-2D2)まで下降させる。換言すると、ボンディングツール40の先端を、第2テンション付与工程の終点(ここでは、高さH1+2D1-D2)を始点として、所定の移動距離(ここでは、移動距離D2)下降させる。これにより、ワイヤボンディング装置1は、ボンディング端部42cにかかるテンションを解放することができる。このとき、制御部80は、例えば、ボンディングツール40の先端の高さが高さH1+2D1-2D2を示す高さ情報を取得すると、XYZ軸制御部82によりZ駆動機構12を制御して、ボンディングツール40(クランパ44)の動作を停止させる。
【0051】
ステップS21において、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aが切断されたか否かを判定する。具体的には、ワイヤボンディング装置1は、検出部70において電気信号が検知されなかった場合、ワイヤテール42aが切断されたと判定する(ステップS21:YES)。この場合、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aを切断するための処理を終了させる。一方、ワイヤボンディング装置1は、検出部70において電気信号が検知された場合、ワイヤテール42aが切断されていないと判定する(ステップS21:NO)。この場合、ワイヤボンディング装置1は、処理をステップS18に移行する。
【0052】
また、上記では、時刻t81~時刻t84に示すように、第1,第2テンション付与工程及び第1,第2テンション解放工程のみ説明したが、図8の時刻t85,t86に示すように、検出部70において電気信号が検知されなくなるまで、テンション付与工程及びテンション解放工程を繰り返す。
【0053】
このように、テンション付与工程及びテンション解放工程を繰り返すことで、図8に示すように、複数回のテンション付与工程により段階的にワイヤテール42aにテンションをかけて、ワイヤテール42aに過大なテンションがかからないよう、ボンディングツール40を動作させることができる。これにより、ワイヤテール42aとボンド点との接続部分(ここでは、ボンディング端部42c)を徐々に薄くして、切断時点において小さい引っ張り力でワイヤテール42aを切断できる。
【0054】
図6Lに示すように、ワイヤボンディング装置1は、ワイヤテール42aが切断された場合、図7に示す「電気信号」のグラフ(OFF)に示すように、検出部70において電気信号が検知されないと判定して、テンション付与工程及びテンション解除工程を終了する。
【0055】
[変形例]
上記において、ワイヤボンディング装置1は、図8に示すように、第1テンション付与工程の移動距離及び第1テンション解放工程の移動距離と同一の移動距離を設定した動作について説明したが、これに限定されない。図9は、テンション付与工程及びテンション解放工程の他の例を示すタイミングチャートである。図9に示すように、ワイヤボンディング装置1は、例えば、第2テンション付与工程の高さ(図9では高さH+D)が第1テンション付与工程の高さ(図9では高さH)よりも高くなるよう設定されていればよい。すなわち、第2テンション解除工程の高さが第1テンション解除工程の高さと同一であってもよい。さらに言うと、第2テンション解除工程の高さ及び第1テンション解除工程の高さは、第2ボンド点と略同一の高さであってもよい。これにより、テンション解除工程における下降の移動量に対する処理が簡素化されるため、システムの処理速度が向上する。
【0056】
上記において、ワイヤボンディング方法の一例として、ボンディング対象の2点間をワイヤ接続するワイヤボンディングについて説明したが、これに限定されない。例えば、上記の実施形態を、図10に示すバンプボンディングにおいて、半導体装置200のボンド点である電極212上にバンプ140を形成する方法に適用してもよい。この場合、図5のフローチャートからステップS10乃至ステップS14の工程を省略して実現することができる。また、例えば、上記の実施形態を、ウェッジボンディングに適用してもよい。この場合、図5のフローチャートからステップS10の工程を省略して実現することができる。
【0057】
上記において、ワイヤボンディング装置1は、第2テンション解放工程(ステップS20)の後に、ワイヤテール42aが切断されたか否かを判定することとして説明したが、これに限定されない。ワイヤボンディング装置1は、第2テンション付与工程(ステップS19)の後に、ワイヤテール42aが切断されたか否かを判定してもよいし、常にワイヤテール42aが切断されたか否かを判定してもよい。これにより、遅滞なくワイヤテール42aが切断したか否かを判定できるため、ワイヤボンディング装置1のワイヤテール42aの切断にかかる動作を減らすことができる。
【0058】
上記において、ワイヤボンディング装置1は、テンション解放工程においてクランパ44が閉じているとして説明したが、これに限定されない。テンション解放工程において、クランパ44が開いていてもよい。これにより、ワイヤ42のテンションを解放する動作が容易になる。
【0059】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施の態様は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0060】
1…ワイヤボンディング装置、12…Z駆動機構、40…ボンディングツール、42…ワイヤ、42a…ワイヤテール、44…クランパ、60…超音波振動子、80…制御部。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図7
図8
図9
図10