IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ペルノックス株式会社の特許一覧

特許7416503エポキシ樹脂組成物及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物が塗装されたモーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子
<>
  • 特許-エポキシ樹脂組成物及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物が塗装されたモーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子 図1
  • 特許-エポキシ樹脂組成物及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物が塗装されたモーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子 図2
  • 特許-エポキシ樹脂組成物及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物が塗装されたモーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子 図3
  • 特許-エポキシ樹脂組成物及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物が塗装されたモーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物が塗装されたモーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/18 20060101AFI20240110BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240110BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20240110BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240110BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240110BHJP
   C09D 163/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08G59/18
C08L63/00 C
C09D163/00
C09D7/61
C09D7/63
C09D163/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023113738
(22)【出願日】2023-07-11
(62)【分割の表示】P 2023004142の分割
【原出願日】2023-01-13
【審査請求日】2023-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591153983
【氏名又は名称】ペルノックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】岩村 栄治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄一郎
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-001342(JP,A)
【文献】特開2017-179011(JP,A)
【文献】特開2013-203764(JP,A)
【文献】特開2013-072028(JP,A)
【文献】特開平11-104481(JP,A)
【文献】特開平10-130542(JP,A)
【文献】特開平09-272820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の、(X)、(Y)及び(Z)の群から選択される1つを含有する混合材料を含み、
(X)エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、第1シリカ粒子(c1)及び第2シリカ粒子(c2)
(Y)エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、第1シリカ粒子(c1)、第2シリカ粒子(c2)及び炭酸カルシウム(d)
(Z)エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、第1シリカ粒子(c1)及び炭酸カルシウム(d)
且つ、次の(1)~(3)の全ての条件を満たすとともに、前記第1シリカ粒子(c1)が、以下の(X1)、(Y1)、又は(Z1)からなるBステージ化した粒子の外周部の少なくとも一部に付着している、
エポキシ樹脂組成物。
(1)前記第1シリカ粒子(c1)の平均粒子径が、0.001μm以上3μm以下、又は、前記第1シリカ粒子(c1)の比表面積が50m/g~500m/g
(2)前記第1シリカ粒子(c1)の含有量が、0.05質量%以上0.5質量%以下
(3)前記第2シリカ粒子(c2)の平均粒子径が、5μm以上50μm以下、又は前記炭酸カルシウム(d)の平均粒子径が、1μm超50μm以下
(X1)エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)及び第2シリカ粒子(c2)
(Y1)エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、第2シリカ粒子(c2)及び炭酸カルシウム(d)
(Z1)エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、及び炭酸カルシウム(d)
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(a)が、ビスフェノールA型、変性ビスフェノールA型、多官能クレゾールノボラック型の群から選択される少なくとも1種であり、且つ
前記エポキシ樹脂(a)の数平均分子量が450以上5000以下、又は前記エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量が100以上1000以下である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(b)が、イミダゾール、ジシアンジアミド、酸無水物、フェノール樹脂の群から選択される少なくとも1種である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
発泡剤(e)をさらに含み、
前記発泡剤(e)が、前記エポキシ樹脂組成物の応力を緩和させるアゾジカルボンアミドである、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
レベリング剤、応力緩和剤、耐熱付与剤、消泡剤、密着性付与剤、防錆剤、顔料、無機粒子の群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の前記エポキシ樹脂組成物が表面に塗装された、
モーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子。
【請求項7】
前記(X1)、前記(Y1)及び前記(Z1)の群から選択される1つを混合した後、混錬して半硬化状態のBステージの粉体を得る粉体形成工程と、
前記粉体と前記第1シリカ粒子(c1)とを混合して混合物を得る混合工程と、を含む、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記混合工程において、前記第1シリカ粒子(c1)をスプレー方式によって前記粉体に吹き付けて混合する、
請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物が塗装されたモーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エポキシ樹脂は、機械的特性、耐熱性、各種材料への密着/接着性、成形寸法精度、及び電気的絶縁性に優れているため、電気・電子機器や部品の電気的絶縁被膜として広く用いられてきた。
【0003】
特に、モーターや発電機の固定子や回転子では、コイルや電極部分を周辺部材から電気的に絶縁する必要があるため、従来から、流動(ディップ)浸漬、静電流動塗装、又はコロナ帯電式静電塗装を用いたエポキシ樹脂粉体塗料によって、絶縁が必要な部分を被覆する手段が採用されている。
【0004】
近年、市場へのEV車の浸透とともにEV車が搭載する各種モーターの利用が急増している。特に、より大きなトルクを持つモーターや、小型化するモーターへの要求の高まりにより、モーターにおいて絶縁被覆される部位は精細化やエッジ部分の微細化が進んでいる。その結果、微細で立体的な形状に対してできるだけ均質に塗布することができる被覆性に優れたエポキシ樹脂組成物が市場において求められている。一方で、このようなエポキシ樹脂絶縁被膜では、高速動作下でのコイルのゆるみを防ぐとともに、熱的及び/又は振動による破壊や剥離に対する耐久性も同じく、市場において求められる。
【0005】
これまで、エポキシ樹脂の被覆性を改善する技術としては、例えば、ビスフェノール型とノボラック多官能型の混合エポキシ樹脂を用いる技術(特許文献1)、エポキシ樹脂にポリエステル樹脂を配合する技術(特許文献2)、マレイミド樹脂を配合する技術(特許文献3)、滑剤を含有する技術(特許文献4)、応力緩和剤としてシリコーンゴムを配合する技術(特許文献5)、流動性改質剤を配合する技術(特許文献6)、多孔質粒子を含むエポキシ樹脂をコロナ帯電式静電塗装する技術(特許文献7)、アクリル系粒子を配合する技術(特許文献8)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-193969号公報
【文献】特開平2-102274号公報
【文献】特開平3-86034号公報
【文献】特開平9-272820号公報
【文献】特開平10-130542号公報
【文献】特開平11-104481号公報
【文献】特開2013-072028号公報
【文献】特開2018-48314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年の高トルク化、小型化するモーターにおいて、特に微細かつエッジ形状に、均一かつ適度な膜厚が形成できることに加えて、さまざまな塗装法で良好な塗装作業性を確保しつつ、各種モーターに必要とされる高い電気的絶縁性や耐熱性を満たすエポキシ樹脂組成物は、本願発明者の知る限り、未だ実現されていない。特に、電気的絶縁性や耐熱性を満たすために無機や有機系の粒子を配合すると、エッジ部での被覆性や塗装作業性が損なわれるという問題が生じ得る。一方、樹脂自体の流動性を向上させようとすると、塗装時及び硬化時に、特にエッジ部や部材隙間部において、液ダレを生じるなど形状保持性が不十分になるという問題が生じ得る。そのため、現状においては、立体形状に対しても高精細化を実現し得る被覆特性(以下、「高精細性」という。)と、高い電気的絶縁性及び/又は耐熱性とを両立させるエポキシ樹脂組成物の研究及び開発は未だ道半ばと言える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の少なくとも1つの技術課題を解決することにより、立体形状への高精細性と、電気的絶縁性及び/又は耐熱性とに優れたエポキシ樹脂組成物の実現に大きく貢献し得る。
【0009】
本発明者は、エポキシ樹脂組成物が備える特有の構造と機能との関係性に着目した。具体的には、本発明者は、エポキシ樹脂に添加されるシリカ粒子に工夫を加えることにより、該シリカ粒子に、耐熱性や機械的強度を担保する機能と、流動性や塗装性を担保する機能の2つの機能とを、独立に発現させることができる点に着目した。その上で、本発明者が鋭意研究に取り組み、試行錯誤を重ねた結果、架橋性の高いエポキシ樹脂と、適切な活性開始温度を持つ硬化剤とを含み、半硬化状態(以下、「Bステージ」ともいう。)にある粉体に含有させるシリカ粒子とは別に、特定の平均粒子径と比表面積を持つシリカ粒子を適当量含有するエポキシ樹脂組成物を形成することが、上述の技術的課題の解決に寄与し得ることを知得した。
【0010】
加えて、本発明者は、上記の特定の平均粒子径と比表面積を持つシリカ粒子が、当該半硬化状態にある粉体の外周物に付着させることにより、上述の技術的課題が最適な形で解決されることを見出した。
【0011】
また、本発明者は、さらに研究を進めることにより、該エポキシ樹脂組成物が、下記(A)~(C)の特性を備えることを知得した。
【0012】
(A)微細なエッジ形状に対しても、均一かつ均質で十分な膜厚の塗膜を形成するなど、立体形状にも優れた被覆性を実現する。
【0013】
(B)様々な塗装手法においても良好な作業性を実現する。
【0014】
(C)優れた電気的絶縁性と耐熱性を実現する。
【0015】
その結果、本発明者は、前述のエポキシ樹脂組成物を用いた場合、流動(ディップ)浸漬、静電流動塗装、コロナ帯電式静電塗装等の塗装手法によらず、モーターの固定子や回転子のエッジ部を適度な膜厚で均一かつ均質に被覆でき、さらに電気絶縁性、耐熱性と機械的特性を発現することができ、モーターのスロット絶縁やコイルの固着に好適なエポキシ樹脂組成物を実現し得るという知見を得た。本発明はそのような視点により創出された。
【0016】
本発明の1つのエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、第1シリカ粒子(c1)、第2シリカ粒子(c2)及び/又は炭酸カルシウム(d)を含有する混合材料を含み、且つ、以下の(1)~(3)の全ての条件を満たす。
(1)該第1シリカ粒子(c1)の平均粒子径が、0.001μm以上3μm以下、又は、該第1シリカ粒子(c1)の比表面積が50m/g~500m/g
(2)該第1シリカ粒子(c1)の含有量が、0.5質量%以下
(3)該第2シリカ粒子(c2)の平均粒子径が、5μm以上50μm以下、又は該炭酸カルシウム(d)の平均粒子径が、1μm超50μm以下である。
【0017】
このエポキシ樹脂組成物によれば、微細かつ鋭いエッジ、突起などの立体形状をもった部材に対して、優れた被覆性を有し、かつ高い電気的絶縁性及び/又は耐熱性を有し得る。
【0018】
また、本発明の1つのエポキシ樹脂組成物の製造方法は、本発明の1つのエポキシ樹脂(a)と、硬化剤(b)と、第2シリカ粒子(c2)及び/又は炭酸カルシウム(d)とを混合した後、混錬して半硬化状態のBステージの粉体を得る粉体形成工程と、該粉体と該第1シリカ粒子(c1)とを混合して混合物を得る混合工程と、を含む。
【0019】
このエポキシ樹脂組成物の製造方法によれば、微細かつ鋭いエッジ、突起などの立体形状をもった部材に対して、優れた被覆性を有し、かつ高い電気的絶縁性及び/又は耐熱性を有し得るエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0020】
なお、本発明が適用される応用製品は特に限定されない。具体的な適用例の幾つかは、電気的絶縁に用いられる上述のエポキシ樹脂組成物が、各種モーターのスロット又はコイルに塗装されたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の1つのエポキシ樹脂組成物によれば、微細かつ鋭いエッジ、突起などの立体形状をもった部材に対して、優れた被覆性を有し、かつ高い電気的絶縁性及び/又は耐熱性を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態におけるエポキシ樹脂組成物を示す模式図である。
図2】第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物を用いて塗装された、第2の実施形態におけるモータースロット200の外観写真(a)及び(a)のX-Y断面写真(b)である。
図3】第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物を用いて塗装された、第2の実施形態におけるモーターコイルの外観写真((a)全体写真,(b)(a)の拡大写真)である。
図4】第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物を用いて塗装された、第2の実施形態における電極端子の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示されていない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号及び形状が省略され得る。
【0024】
<第1の実施形態>
[本実施形態のエポキシ樹脂組成物100]
本実施形態のエポキシ樹脂組成物100は、エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、第1シリカ粒子10(c1)、第2シリカ粒子30(c2)及び/又は炭酸カルシウム32(d)を含有する混合材料を含み、且つ、以下の(1)~(3)の全ての条件を満たす。
【0025】
(1)第1シリカ粒子10(c1)の平均粒子径が、0.001μm以上3μm以下、又は、第1シリカ粒子10(c1)の比表面積が50m/g~500m/g
(2)第1シリカ粒子10(c1)の含有量が、0.5質量%以下
(3)第2シリカ粒子30(c2)の平均粒子径が、5μm以上50μm以下、又は炭酸カルシウム(粒子)32(d)の平均粒子径が、1μm超50μm以下である。
【0026】
なお、第2シリカ粒子30(c2)及び/又は炭酸カルシウム32(d)は、第1シリカ粒子10(c1)とは異なる役割を担わせるために、本実施形態のエポキシ樹脂組成物内に含有されている。
【0027】
図1は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を示す模式図である。図1に示すように、エポキシ樹脂組成物100は、第2シリカ粒子30(c2)及び/又は炭酸カルシウム32(d)を含有したエポキシ樹脂及び硬化剤からなるBステージ化した粒子の外周部の少なくとも一部に、第1シリカ粒子10(c1)が付着又は吸着している。なお、この第1シリカ粒子10(c1)が付着又は吸着する態様は、主として物理的な(すなわち、ファンデルワールス力による)付着又は吸着であると考えられる。なお、図1の一部に示すように、第2シリカ粒子30(c2)と炭酸カルシウム32(d)とを、一つのエポキシ樹脂組成物が含有することも採用され得る本実施形態の他の一態様である。
【0028】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、後述するように、エポキシ樹脂(a)と、硬化剤(b)と、第2シリカ粒子30(c2)及び/又は炭酸カルシウム32(d)とを予め混合し、さらに混錬したものを粉砕及び分級することによって形成されたものに、第1シリカ粒子10(c1)を混合することによって得られる。
【0029】
ここで、本実施形態のエポキシ樹脂(a)は、ビスフェノールA型、変性ビスフェノールA型、多官能クレゾールノボラック型、の群から選択される少なくとも1種である。また、エポキシ樹脂(a)の全体としての平均分子量は、450以上5000以下であることが好ましく、より好ましい該平均分子量の下限側の範囲は1000以上である。また、エポキシ樹脂(a)の全体としてのエポキシ当量は、100以上1000以下であることが好ましく、より好ましくは200以上900以下、更に好ましくは500以上800以下である。なお、本実施形態のエポキシ樹脂(a)は、2官能以上であれば本実施形態の効果の少なくとも一部を発揮し得る。
【0030】
また、本実施形態の硬化剤(b)は、イミダゾール、ジシアンジアミド(Dicyandiamide:「DICY」ともいう。)、酸無水物、フェノール樹脂の群から選択される少なくとも1種である。耐熱性を高める観点から、硬化剤(b)の活性開始温度が、100℃以上であることは好適な一態様である。また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の耐熱性をより高めるために、多官能、エポキシ当量が小さい、より架橋性の高いエポキシ樹脂(a)との組み合わせであることが好ましい。なお、硬化剤の量は、特に限定されない。但し、本実施形態のエポキシ樹脂(a)の合計質量を100質量部とした場合に、本実施形態の硬化剤(b)の合計質量を1質量部以上20質量部以下の範囲に調製することは、十分な硬化性と適切な反応性を同時に実現し得るため好ましい。
【0031】
加えて、本実施形態の第1シリカ粒子10(c1)は、平均粒子径が、0.001μm以上3μm以下、又は比表面積が50m/g~500m/gである。流動浸漬塗装や、スプレー塗装において、より流動性を高め、平滑な塗膜外観を実現する観点から、0.005μm以上2μm以下であることはより好適な一態様である。比表面積が50m/g~500m/gであることにより、粒子の帯電が促されるとともに、静電スプレー塗装、静電流動塗装、又はコロナ帯電式静電塗装において、さらに部材で鋭いエッジ又は、電極端子など突起状の立体形状をもつ被塗装物に対しても、平滑であって、且つ優れた被覆性を実現することができる。
【0032】
一方、本実施形態において第2シリカ粒子30(c2)、又は炭酸カルシウム32(d)を含有することは、耐熱性及び難燃性を高め、さらに立体な形状に塗装し加熱硬化する場合に、液ダレなどを生じることなく、均一、均質な塗膜を得ることに寄与することができる。第2シリカ粒子30(c2)の平均粒子径は5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下であることは、エッジ又は突起状の立体形状に対して均質な被覆性を実現する上で好適である。同様に、もしくは、該炭酸カルシウム32(d)の平均粒子径が1μm超50μm以下、より好ましくは5μm以上30μm以下であることは、エッジ又は突起状の立体形状に対して均質な被覆性を実現する上で好適である。
【0033】
上述の第1シリカ粒子10(c1)及び第2シリカ粒子30(c2)の含有量は特に限定されない。本実施形態のエポキシ樹脂組成物100の用途に求められる物性、塗装作業性、及び塗装物に求められる外観形状の群から選択される少なくとも一種の特性に応じて、該含有量は適宜選択され得る。本実施形態において、第1シリカ粒子10(c1)の含有量が0.05質量%以上0.5質量%以下であることは、該エポキシ樹脂組成物をモーター部品等の被塗装物に塗装する際に、良好な流動性を保ち、外観上平滑で、かつ均質な絶縁被膜を形成する観点において好適な一態様である。一方、第2シリカ粒子30(c2)、及び/又は炭酸カルシウム32(d)の含有量は、塗装および硬化時の加温環境においても、塗膜の形状を保持して、液ダレなどを防ぐことで、エッジや突起などの立体形状を有する被塗装物に対して優れた被覆性を確保する観点において0.5質量%以上60質量%以下であることが好適な一態様である。
【0034】
なお、炭酸カルシウム32(d)は、第2シリカ粒子30(c2)の代わりとして用いることができるが、高い機械的強度を保持する観点から、第2シリカ粒子30(c2)を採用することは、より好適な一態様である。
【0035】
なお、本実施形態のエポキシ樹脂組成物100は、発泡剤(e)、レベリング剤(f)、応力緩和剤(g)、消泡剤(h)、密着性付与剤(i)、防錆剤(j)、顔料(k)、無機粒子(m)を任意に含み得る。これらの物質の含有の有無、又含有量については特に限定されない。例えば、発泡剤(e)の例を挙げると、エポキシ樹脂組成物100を用いて形成された硬化物において応力を緩和する効果を発現するアゾジカルボンアミドを発泡剤(e)として採用することは他の好適な一態様である。
【0036】
レベリング剤(f)の種類ついては特に限定されない。代表的なレベリング剤の例は、メタアクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル系重合物である。
【0037】
また、応力緩和剤(g)の代表例は、エチレン・アクリル酸エステル共重合体やポリビニルブチラール樹脂である。
【0038】
また、消泡剤(h)の代表例は、ベンゾインである。
【0039】
また、密着性付与剤(i)の代表例は、シランカップリングである。
【0040】
また、防錆剤(j)の代表例は、ベンゾトリアゾールである。
【0041】
また、顔料(k)について説明すると、該顔料(k)は、有機顔料又は無機顔料のいずれも含有することができる。顔料(k)の代表例は、インドリン、イソインドリン、インダンスレンに代表されるアントラキノン顔料、ベンツイミダゾロンやナフトール染料に代表されるアゾ顔料、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン顔料、水酸化鉄、酸化第二鉄、カーボンブラック、三酸化2クロム、チタンブラックなどである。
【0042】
本実施形態における無機粒子(m)の種類ついては特に限定されない。該無機粒子(m)の例は、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、ハイドロタルサイト、クレイ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、三酸化モリブデン、酸化ビスマス、アルミナ、チタニア、チタンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの群から選択される、任意の1種又は2種以上である。
【0043】
[本実施形態のエポキシ樹脂組成物100の製造方法]
本実施形態のエポキシ樹脂組成物100の製造方法は、次のとおりである。
【0044】
大きく分類すれば、次の2つの工程によりエポキシ樹脂組成物100は製造され得る。
【0045】
まず、第1シリカ粒子10(c1)を除く上述の各成分(エポキシ樹脂(a)と、硬化剤(b)と、第2シリカ粒子30(c2)及び/又は炭酸カルシウム32(d)を混合した後に、加熱混錬して半硬化状態のBステージとした混錬物50の粉末が形成される。
【0046】
次に、上述の混錬物50の該粉末と、第1シリカ粒子10(c1)とを混合することにより、本実施形態のエポキシ樹脂組成物100が形成される。
【0047】
従って、本実施形態のエポキシ樹脂組成物100の製造方法の詳細に説明すれば、該製造方法は、第1シリカ粒子10(c1)を除く上述の各成分を混合する第1の混合工程と、混錬して半硬化状態のBステージとした混錬物50とする混錬工程と、混錬物50を粉砕して粉体を得る粉体形成工程と、該粉体と第1シリカ粒子10(c1)を混合して混合物を得る第2の混合工程からなる。
【0048】
各工程を詳細に見ていくと、まず第1の混合工程においては、第1シリカ粒子10(c1)を除く上述の各成分が、回転撹拌機等の公知の混合機を用いて混合される。ここで、第1の混合工程において液状の成分を用いる場合には、充分量の固体状成分と混合して半固体状とした中間体を作成して、残成分と混合することができる。この場合、該液状成分と該固体状成分の存在比(質量比)は特に限定されない。
【0049】
次に、混錬工程では、上述の第1の混合工程にて、第1シリカ粒子10(c1)を除く上述の各成分が混合された混合物を、短時間加熱しながら混錬することにより、半硬化状態のBステージ化した混錬物50が得られる。この際、公知の加熱設備と混錬機を用いることができる。なお、加熱温度及び加熱時間は特に限定されない。この混錬工程においては、作業性を高める及び/又は製造コストを削減する観点から、あるいは、前述の観点に加えて、又は前述の観点に替えて、該エポキシ樹脂組成物の各構成成分をできるだけ均一に分散させる観点から、エポキシ樹脂(a)が適度に軟化するなど、各原料の好適な各温度範囲に基づいて温度設定が行われるとともに、処理速度及び/又は処理時間が設定されることが好ましい。特に、適度な半硬化状態を得るために、エポキシ樹脂成分(a)と硬化剤(b)の反応に基づいて、設定する温度と時間が設定され得る。例えば、100℃で1分間の混錬工程が行われることは、本実施形態での好ましい一態様である。
【0050】
また、粉体形成工程においては、混錬物50が冷却された後、粉砕機を用いて、約1μm以上約150μm以下の範囲の粒度分布を持つように混錬物50が粉砕される粉砕処理が行われる。その後、さらに数μm(例えば、5μm)以上150μm以下の平均粒子径となるように分級処理を行うことにより、固形状粉体50Aを得る。この際、例えば、ピンミル式粉砕機などの公知の粉砕機、風力分級法などの公知の分級方式を用いることができる。
【0051】
また、第2の混合工程において、上述の固形状粉体50Aと第1シリカ粒子10(c1)とが混合されることにより、本実施形態のエポキシ樹脂組成物100が得られる。この混合工程は、公知の混合設備を用いることによって実施され得るが、上述の粉砕と同時に行うことが、作業性を高める、及び又は製造コストを削減する観点から好ましい。なお、より好適には、公知の吹き付け塗装設備等を用いて、第1シリカ粒子10(c1)を該固体状粉体50Aに吹き付けながら混合することは、微細な第1シリカ粒子10(c1)をできるだけ均一かつ確実に固体状粉体50Aの外周部に付着させ、当該エポキシ樹脂組成物の作業性および塗装性をより高める観点から好適な実施形態である。
【0052】
<第2の実施形態>
本実施形態においては、第1の実施形態において製造されたエポキシ樹脂組成物100を応用製品に適用した具体例の幾つかについて説明する。
【0053】
図2は、第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物100を用いて塗装された、本実施形態におけるモータースロット200の外観写真(a)及び(a)のX-Y断面写真(b)である。なお、図2(b)の「R」は、モータースロット200の本体部分を意味する。また、図3は、第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物100を用いて塗装された、本実施形態におけるモーターコイル300の全体外観写真である。また、図4は、第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物100を用いて塗装された、本実施形態における電極端子400の一部拡大図である。
【0054】
図2に示すように、本実施形態におけるモータースロット200の表面に均質かつ表面が平滑な第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物100が塗装されていることが分かる。
【0055】
図2に示すようなエポキシ樹脂組成物100の表面塗装により、モータースロット200のエッジ形状などの立体的な被覆性を含めて優れた塗装性、並びに、モータースロット200の高い電気的絶縁性及び高い耐熱性が実現され得る。
【0056】
また、図3に示すように、本実施形態におけるモーターコイル300の表面の少なくとも一部(より具体的には、巻き線コイル部全体)は、第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物100が塗装されていることが分かる。
【0057】
図3に示すようなエポキシ樹脂組成物100の表面塗装により、モーターコイル300の鋭角的なエッジ及び曲面などの立体的な被覆性を含めて優れた塗装性、並びに、モーターコイル300の高い電気的絶縁性、コイルの固着性及び高い耐熱性が実現され得る。
【0058】
また、図4に示すように、本実施形態における電極端子400の表面の少なくとも一部(より具体的には、電極端子の突起部)は、第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物100が塗装されていることが分かる。
【0059】
図4に示すようなエポキシ樹脂組成物100の表面塗装により、電極端子400の先端突起及び曲面などの立体的な被覆性を含めて優れた塗装性、並びに、電極端子400の高い電気的絶縁性及び高い耐熱性が実現され得る。
【0060】
本実施形態における塗装手段には、公知の塗装技術及び設備を用いることができる。例えば、流動浸漬や、ディップ含浸、コロナ帯電式静電塗装、スプレー塗装などを用いて、塗装対象物の表面及び/又は内部に塗布され、その後、乾燥及び/又は加熱硬化されることは、本実施形態の「塗装」の代表的な例であり、それらの「塗装手段」により塗膜が形成される。
【0061】
本実施形態の乾燥及び加熱硬化の条件は、特に限定されない。例えば、150℃以上220℃以下の温度条件下において、5分以上1時間以下の間、連続して加熱を行うことは、本実施形態の好ましい一態様である。この乾燥及び加熱硬化工程においては、公知の加熱装置を用いることができる。また、乾燥及び加熱硬化工程においては、エポキシ樹脂組成物100に使用される各硬化剤の活性温度に留意して、十分に硬化させるための加熱温度及び/又は加熱処理時間が設定されることが好ましい。
【0062】
本実施形態の塗膜の厚みは特に限定されない。例えば、約50μm以上約1mm以下の厚みの塗膜が形成される。なお、平坦部の厚みを1としたときに、エッジ部等の平坦部とは異なる領域における厚みが0.5以上となるように調整することは、本実施形態における好適な一態様である。
【0063】
[実施例]
以下に、実施例及び比較例を示して、本実施形態についてより具体的に説明するが、該実施例は、本実施形態の例示のみを目的として開示されるものであり、本発明及び本実施形態を限定するものではない。なお、各実施例中、「部」、「%」は、それぞれ質量部、質量%を意味する。
【0064】
第1の実施形態において説明した、エポキシ樹脂、硬化剤、第2シリカ粒子、及び添加剤の各成分を、ドラムミキサー(株式会社シンマルエンタープライズ社製、型式DX-200)を用いて混合し、100℃で1分間混錬して半硬化状態のBステージ化した固体を得る。その後、ピンミル粉砕機(ヤリヤ機械製作所製、製品名:ヤリヤ式粉砕機)を用いて、約1μm以上約150μm以下の範囲に粒度分布を持つように粉砕し、10μm以上100μm以下の範囲に平均粒子径を持つ粉末となるよう、風力分級法によって分級することにより、固体粉末状樹脂を得る。
【0065】
この固体粉末状樹脂に、トリボガン(旭サナック株式会社製)を用いて第1シリカ粒子を吹き付け、その後ロッキングミキサーを用いて室温で混合することにより、本実施例のエポキシ樹脂組成物を得る。
【0066】
<性能評価>
上述のエポキシ樹脂組成物について、流動(ディップ)浸漬、静電流動塗装、トリボガンによる静電スプレー塗装、コロナ帯電式静電塗装の各塗装方式による塗装性、さらには、日本工業規格、電気絶縁用粉体塗料試験方法「JIS C 2161:2010」に従って、立体形状への被覆性をエッジカバー率、電気的絶縁性と耐熱性をカットスルー抵抗により評価した。
【0067】
まず、塗装性は、塗装し加熱硬化後の塗膜の目視外観において、平滑な状態を合格(〇)と評価し、塗膜がうねりや梨地状の外観を呈するものを不合格(×)と評価した。
【0068】
次に、エッジカバー性は、エッジカバー率が50%以上を合格(〇)と評価し、50%未満を不合格(×)と評価した。
【0069】
また、電気的絶縁性と耐熱性は、カットスルー抵抗測定において、絶縁破壊がおこる温度が450℃以上を合格(〇)と評価し、450℃未満を不合格(×)と評価した。
【0070】
[実施例1]
エポキシ樹脂組成物を構成する成分は、エポキシ樹脂(a)の一例であるビスフェノールA型エポキシ樹脂JER-1007(三菱ケミカル株式会社(以下、「三菱ケミカル」)製、分子量2900)を45.63%と、硬化剤(b)の一例であるイミダゾール系硬化剤キュアゾール2MZ-A(四国化成工業株式会社(以下、「四国化成」)製、活性開始温度120℃)を0.68%と、第1シリカ粒子(c1)の一例であるアエロジル#200(日本アエロジル株式会社(以下、「日本アエロジル」)製、比表面積175~225m/g)を0.09%と、炭酸カルシウム(d)の一例であるSL-100(竹原化学工業株式会社(以下、「竹原化学」)製、平均粒子径5μm~8μm)を48.36%、レベリング剤の一例であるニカライトXK-21(日本カーバイ工業株式会社(以下、「日本カーバイ」)製を0.23%、その他添加剤として応力緩和剤の一例であるハイドロタルサイトDHT-4A-2(協和化学工業株式会社(以下、「協和化学」)製)を3.64%、顔料の一例である酸化クロムND812(株式会社日本電工製(以下、「日本電工」))を1.37%である。
【0071】
[実施例2]
エポキシ樹脂組成物を構成する成分は、エポキシ樹脂(a)の一例である変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピクロン5800(DIC株式会社製(以下、「DIC」という。)、エポキシ当量800)を22.45%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER-1007(三菱ケミカル製、分子量2900)を13.32%と、多官能クレゾールノボラック型エポキシ樹脂エピクロンN-675(DIC製、エポキシ当量210)を10.77%、硬化剤(b)の一例であるイミダゾール系硬化剤キュアゾール2MZ-A(四国化成製、活性開始温度120℃)を2.69%、ジシアンジアミド系硬化剤DICY#7(三菱ケミカル製、活性開始温度約160℃)を0.90%、及び酸無水物系硬化剤BTDA(エボニックジャパン株式会社(以下、「エボニックジャパン」)製)を0.70%、第1シリカ粒子(c1)の一例であるアエロジル#200(日本アエロジル製、比表面積175~225m/g)を0.13%、及び第2シリカ粒子(c2)の一例であるハイセフター#200K(キンセイマテック株式会社(以下、「キンセイマテック」)製、平均粒子径15μm)を0.89%と、炭酸カルシウム(d)の一例であるSL-100(竹原化学製、平均粒子径5~8μm)を45.76%、レベリング剤の一例であるニカライトXK-21(日本カーバイ製)を0.19%、その他添加剤として応力緩和剤の一例であるハイドロタルサイトDHT-4A-2(協和化学製)を0.34%、顔料の一例である酸化クロムND812(日本電工製)を1.86%である。
【0072】
[実施例3]
エポキシ樹脂組成物を構成する成分は、エポキシ樹脂(a)の一例であるビスフェノールA型エポキシ樹脂JER-1007(三菱ケミカル製、分子量2900)を46.24%と、硬化剤(b)の一例であるイミダゾール系硬化剤キュアゾール2MZ-A(四国化成製、活性開始温度120℃)を0.18%、及び酸無水物系硬化剤BTDA(エボニックジャパン製)を6.10%、第1シリカ粒子(c1)の一例であるアエロジル#200(日本アエロジル製、比表面積175~225m/g)を0.14%と、炭酸カルシウム(d)の一例であるSL-100(竹原化学製、平均粒子径5μm~8μm)を46.24%、レベリング剤の一例であるニカライトXK-21(日本カーバイ製)を0.14%、その他添加剤として応力緩和剤の一例であるハイドロタルサイトDHT-4A-2(協和化学製)を0.46%、顔料の一例である酸化クロムND812(日本電工製)0.50%である。
【0073】
[実施例4]
エポキシ樹脂組成物を構成する成分は、エポキシ樹脂(a)の一例である変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピクロン5800(DIC製、エポキシ当量800)を29.06%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂JER-1007(三菱ケミカル製、分子量2900)を2.49%と、多官能クレゾールノボラック型エポキシ樹脂エピクロンN-675(DIC社製、エポキシ当量210)を12.03%、硬化剤(b)の一例であるイミダゾール系硬化剤キュアゾール2MZ-A(四国化成製、活性開始温度120℃)を2.24%、ジシアンジアミド系硬化剤DICY#7(三菱ケミカル製、活性開始温度約160℃)を0.58%、及びフェノール系硬化剤BRG-557(昭和高分子製)を0.42%、第1シリカ粒子(c1)の一例であるアエロジル#200(日本アエロジル製、比表面積175~225m/g)を0.21%、及び第2シリカ粒子(c2)の一例であるハイセフター#200K(キンセイマテック製、平均粒子径15μm)を0.82%と、炭酸カルシウム(d)の一例であるSL-100(竹原化学製、平均粒子径5μm~8μm)を47.31%、レベリング剤の一例であるニカライトXK-21(日本カーバイ製)を0.54%、その他添加剤として応力緩和剤の一例であるハイドロタルサイトDHT-4A-2(協和化学製)を0.70%、顔料の一例である酸化クロムND812(日本電工製)を3.60%である。
【0074】
[実施例5]
エポキシ樹脂組成物を構成する成分は、エポキシ樹脂(a)の一例であるビスフェノールA型エポキシ樹脂JER-1007(三菱ケミカル製、分子量2900)を36.84%と、硬化剤(b)の一例であるイミダゾール系硬化剤キュアゾール2MZ-A(四国化成製、活性開始温度120℃)を0.07%、及び酸無水物系硬化剤BTDA(エボニックジャパン製)を9.13%、第1シリカ粒子(c1)の一例であるアエロジル#200(日本アエロジル製、比表面積175~225m/g)を0.11%、及び第2シリカ粒子(c2)の一例であるハイセフター#200K(キンセイマテック製、平均粒子径15μm)を51.55%と、レベリング剤の一例であるニカライトXK-21(日本カーバイ製)を0.07%、その他添加剤として応力緩和剤の一例であるハイドロタルサイトDHT-4A-2(協和化学製)を2.23%である。
【0075】
[比較例]
比較例1及び2の成分は、それぞれ第1の実施形態の第1シリカ粒子(c1)を含まない点を除いて、実施例1、実施例2の成分と同様である。また、比較例3の成分は、第1の実施形態の第2シリカ粒子(c2)と炭酸カルシウム(d)とをいずれも含まない点を除いて、実施例1の成分と同様である。
【0076】
表1は、上述の実施例1~5及び比較例1~3のエポキシ樹脂組成物の各成分及び評価結果を示している。なお、表1中の「-」は、該当する成分を含有しないことを意味する。
【0077】
【表1】
【0078】
上述の実施例1~5、並びに比較例1~3について、塗装性、電気的絶縁性と耐熱性を評価した結果、少なくとも、以下の(1)乃至(3)の結果が得られた。
(1)実施例1~5に基づくエポキシ樹脂組成物は、比較例1~3に対して優れた塗装性を示した。
(2)実施例1~5に基づくエポキシ樹脂組成物は、比較例1~3に対して優れたエッジカバー性を示した。
(3)実施例1~5に基づくエポキシ樹脂組成物は、比較例1~3に対して優れた電気的絶縁性と耐熱性を示した。
【0079】
従って、本実施形態のエポキシ樹脂組成物によれば、エッジ形状などの立体的な被覆性を含めて優れた塗装性と、電気的絶縁性と耐熱性を持つことができる。
【0080】
上述の各実施形態及び各実施例の開示は、該実施形態及び該実施例の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、該実施形態及び該実施例の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する他の変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のエポキシ樹脂組成物が採用される代表的な例は、モーター回転子、モータースロット、モーター固定子、モーターコイル、又は電極端子であるが、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途は、前述の例に限定されず、広範囲な用途に使用され得る。
【符号の説明】
【0082】
10 第1シリカ粒子
30 第2シリカ粒子
32 炭酸カルシウム
50 混錬物
50A 固形状粉体
100 エポキシ樹脂組成物
200 モータースロット
300 モーターコイル
400 電極端子
【要約】
【課題】立体形状への高精細性と、電気的絶縁性及び/又は耐熱性とに優れたエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の1つのエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(a)、硬化剤(b)、第1シリカ粒子10(c1)、第2シリカ粒子30(c2)及び/又は炭酸カルシウム32(d)を含有する混合材料を含み、且つ、以下の(1)~(3)の全ての条件を満たす。
(1)第1シリカ粒子(c1)の平均粒子径が、0.001μm以上3μm以下、又は、第1シリカ粒子10(c1)の比表面積が50m/g~500m/g
(2)第1シリカ粒子10(c1)の含有量が、0.5質量%以下
(3)第2シリカ粒子30(c2)の平均粒子径が、5μm以上50μm以下、又は炭酸カルシウム32の平均粒子径が、1μm超50μm以下である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4