(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】コンクリート保護剤、コンクリート保護剤の製造方法、コンクリート改質剤、コンクリート改質剤の製造方法、及び鉄筋腐食抑制剤
(51)【国際特許分類】
C04B 41/68 20060101AFI20240110BHJP
E04B 1/62 20060101ALI20240110BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20240110BHJP
E02B 3/04 20060101ALI20240110BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20240110BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20240110BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C04B41/68
E04B1/62 Z
E21D11/10 Z
E02B3/04
E01D22/00 Z
E01D1/00 C
E01C23/00 Z
(21)【出願番号】P 2023133927
(22)【出願日】2023-08-21
【審査請求日】2023-08-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512145114
【氏名又は名称】株式会社スーパーシールド
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(74)【代理人】
【識別番号】100152098
【氏名又は名称】林 剛史
(72)【発明者】
【氏名】平井 智紀
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-271370(JP,A)
【文献】特公昭48-014769(JP,B1)
【文献】特開昭56-043359(JP,A)
【文献】特開2009-107910(JP,A)
【文献】特開2016-216302(JP,A)
【文献】特開2021-075775(JP,A)
【文献】特開2019-172564(JP,A)
【文献】特開2001-089211(JP,A)
【文献】特開2015-129092(JP,A)
【文献】特表2003-534227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0074736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/60 - 41/72
E02B 3/04
E01D 22/00
E01D 1/00
E01C 23/00
E04B 1/62
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート保護剤であって、
アルカリ金属のケイ酸塩、及び溶媒を含み、
前記溶媒が、水、
アルカリ金属イオン、水酸化物イオン、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、を含むアルカリ性溶媒であ
り、
前記アルカリ金属イオン、及び前記水酸化物イオンが、前記水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させることで電離したものであり、
前記電離したアルカリ金属イオンには、前記水に水酸化リチウムを溶解させることで電離したリチウムイオンが含まれ、
前記電離したアルカリ金属イオン全体のモル濃度に対する前記電離したリチウムイオンのモル濃度が33.3%以上である、
コンクリート保護剤。
【請求項2】
前記アルミン酸塩が、アルミン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カルシウムの何れかである、
請求項1に記載のコンクリート保護剤。
【請求項3】
前記アルミン酸塩が、アルミン酸カリウムである、
請求項1に記載のコンクリート保護剤。
【請求項4】
コンクリート保護剤の製造方法であって、
水、アルカリ金属のケイ酸塩、アルカリ金属の水酸化物、及びアルミン酸塩を混合してコンクリート保護剤を得る工程を含み、
前記アルカリ金属の水酸化物には、水酸化リチウムが含まれ、
前記工程で得られるコンクリート保護剤には、前記アルカリ金属の水酸化物から電離したアルカリ金属イオン、及び水酸化物イオンが含まれ、
前記電離したアルカリ金属イオンには、前記水酸化リチウムから電離したリチウムイオンが含まれ、
前記工程においては、前記電離したアルカリ金属イオン全体のモル濃度に対する前記電離したリチウムイオンのモル濃度が33.3%以上となるように前記アルカリ金属の水酸化物を混合する、
コンクリート保護剤の製造方法。
【請求項5】
コンクリート改質剤であって、
カルシウムイオン、及び溶媒を含み、
前記溶媒が、水、水酸化物イオン、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、を含むアルカリ性溶媒であり、
前記カルシウムイオンのモル濃度が、0.1モル/L以上2.5モル/L以下であり、
前記カルシウムイオンのモル濃度に対する前記水酸化物イオンのモル濃度が、0.0004以上10以下であり、
前記アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンのモル濃度が、0.005モル/L以上0.015モル/L以下である、
コンクリート改質剤。
【請求項6】
コンクリート改質剤の製造方法であって、
水、カルシウム化合物、アルカリ金属の水酸化物及びアルミン酸塩を混合してコンクリート改質剤を得る工程を含み、
前記工程においては、
前記カルシウム化合物を、カルシウムイオンのモル濃度が、0.1モル/L以上2.5モル/L以下となるように混合し、
前記アルカリ金属の水酸化物を、前記カルシウムイオンのモル濃度に対する水酸化物イオンのモル濃度が0.0004以上10以下となるように混合し、
前記アルミン酸塩を、アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンのモル濃度が、0.005モル/L以上0.015モル/L以下となるように混合する、
コンクリート改質剤の製造方法。
【請求項7】
鉄筋腐食抑制剤であって、
水、アルカリ金属イオン、水酸化物イオン及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンの混合物を含むアルカリ性溶媒を含み、
前記アルカリ金属イオン、及び前記水酸化物イオンが、前記水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させることで電離したものであり、
前記電離したアルカリ金属イオンには、前記水に水酸化リチウムを溶解させることで電離したリチウムイオンが含まれ、
前記電離したアルカリ金属イオン全体のモル濃度に対する前記電離したリチウムイオンのモル濃度が33.3%以上である、
鉄筋腐食抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート保護剤、コンクリート保護剤の製造方法、コンクリート改質剤、コンクリート改質剤の製造方法、及び鉄筋腐食抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、コンクリート構造物が、塩害、中性化、凍害、アルカリ骨材反応等によって劣化することを抑制するために、コンクリート構造物にコンクリート保護剤を塗布、噴霧、又は含浸(以下、これらを総称してコンクリート保護剤を付着という)させてコンクリート構造物を補強することが行われている。コンクリート構造物の劣化因子としては、水素イオン、塩化物イオン等が知られている。コンクリート構造物を補強するコンクリート保護剤については、各種の検討がなされており、特許文献1には、アルカリ金属を含むケイ酸塩系のコンクリート保護剤が提案されている。特許文献1に提案がされているようなケイ酸塩系のコンクリート保護剤によれば、コンクリート構造物の内部に存在しているカルシウムイオンとの反応を介して、C-S-Hゲルを生成でき、生成したC-S-Hゲルにより、劣化因子の浸入経路となるコンクリート構造物の毛細管や、ひび等を塞ぐことができるとされている。
【0003】
コンクリート構造物を補強するためのコンクリート保護剤の付着は、コンクリート構造物の施工時のみならず、コンクリート構造物の施工から一定期間が経過した後のメンテナンスとして行われる場合もある。ところで、コンクリート構造物中に存在しているカルシウムイオンは、(i)コンクリート構造物の内部に浸入した二酸化炭素との反応による消費、(ii)コンクリート構造物の施工時にコンクリート保護剤を付着させた際のケイ酸塩系コンクリート保護剤との反応による消費、(iii)雨水等による外部への溶出により、経時的に減少していき、コンクリート構造物の施工から一定期間が経過した後のコンクリート構造物の内部には、C-S-Hゲルを十分に生成するのに必要なカルシウムイオンが不足している場合も多い。このような状況において、特許文献2には、ケイ酸塩系表面含浸材(コンクリート保護剤に相当)とコンクリートとの反応を促進する反応促進材(コンクリート改質剤に相当)であって、カルシウム成分と亜硝酸塩とを含有する溶液が提案されている。特許文献2に提案がされている反応促進材によれば、カルシウム成分(カルシウムイオン)が不足したコンクリート構造物にカルシウム成分を供給でき、ケイ酸塩系表面含浸工法による補強効果を改質できるとされている。
【0004】
しかしながら、ケイ酸塩系コンクリート保護剤を使用して、コンクリート構造物の補強を行った場合であっても、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を長期間にわたって抑制することは困難である。例えば、融雪剤や、凍結防止剤等の散布が必要な地域のコンクリート構造物や、沿岸部のコンクリート構造物は、常時、塩化物イオンにより鉄筋に腐食が生じやすい状況にさらされている。また、コンクリート構造物の施工において、海砂や塩化物含有混和剤等を使用した場合にも、コンクリート材由来の塩化物イオンにより鉄筋に腐食が生じやすい。つまり、コンクリート構造物の鉄筋の腐食の抑制に関しては、改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-52815号公報
【文献】特開2014-201929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コンクリート構造物の鉄筋が腐食しやすいような環境下においても、鉄筋の腐食を十分に抑制できるコンクリート保護剤、コンクリート改質剤、及び鉄筋腐食抑制剤を提供すること、及びこれらのコンクリート保護剤や、コンクリート改質剤の製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態のコンクリート保護剤は、アルカリ金属のケイ酸塩、及び溶媒を含み、前記溶媒が、水、アルカリ金属イオン、水酸化物イオン、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、を含むアルカリ性溶媒であり、前記アルカリ金属イオン、及び前記水酸化物イオンが、前記水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させることで電離したものであり、前記電離したアルカリ金属イオンには、前記水に水酸化リチウムを溶解させることで電離したリチウムイオンが含まれ、前記電離したアルカリ金属イオン全体のモル濃度に対する前記電離したリチウムイオンのモル濃度が33.3%以上であるある。
本発明の一実施形態のコンクリート保護剤は、アルカリ金属のケイ酸塩、及び溶媒を含み、前記溶媒が、水、リチウムイオン、水酸化物イオン及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、を含むアルカリ性溶媒である。
前記リチウムイオン、及び前記水酸化物イオンが、前記水に水酸化リチウムを溶解させることで電離したリチウムイオン、及び水酸化物イオンであってもよい。
本発明の一実施形態のコンクリート保護剤は、アルカリ金属のケイ酸塩、及び溶媒を含み、前記溶媒が、水、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、を含む。
【0008】
上記のコンクリート保護剤において、前記溶媒が、水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒であってもよい。
上記のコンクリート保護剤において、前記水酸化物イオンが、水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させることにより電離した水酸化物イオンであってもよい。
上記のコンクリート保護剤において、前記アルミン酸塩が、アルミン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カルシウムの何れかであってもよい。
【0009】
本発明の一実施形態のコンクリート保護剤の製造方法は、水、アルカリ金属のケイ酸塩、アルカリ金属の水酸化物、及びアルミン酸塩を混合してコンクリート保護剤を得る工程を含み、前記アルカリ金属の水酸化物には、水酸化リチウムが含まれ、前記工程で得られるコンクリート保護剤には、前記アルカリ金属の水酸化物から電離したアルカリ金属イオン、及び水酸化物イオンが含まれ、前記電離したアルカリ金属イオンには、前記水酸化リチウムから電離したリチウムイオンが含まれ、前記工程においては、前記電離したアルカリ金属イオン全体のモル濃度に対する前記電離したリチウムイオンのモル濃度が33.3%以上となるように前記アルカリ金属の水酸化物を混合する。
本発明の一実施形態のコンクリート保護剤の製造方法は、水、アルカリ金属のケイ酸塩、水酸化リチウム及びアルミン酸塩を混合する。
本発明の一実施形態のコンクリート保護剤の製造方法は、水、アルカリ金属のケイ酸塩、及びアルミン酸塩を混合する。
【0010】
上記のコンクリート保護剤の製造方法において、さらに、アルカリ金属の水酸化物を混合してもよい。
【0011】
本発明の一実施形態のコンクリート改質剤は、カルシウムイオン、及び溶媒を含み、前記溶媒が、水、水酸化物イオン、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、を含むアルカリ性溶媒であり、前記カルシウムイオンのモル濃度が、0.1モル/L以上2.5モル/L以下であり、前記カルシウムイオンのモル濃度に対する前記水酸化物イオンのモル濃度が、0.0004以上10以下であり、前記アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンのモル濃度が、0.005モル/L以上0.015モル/L以下である。
本発明の一実施形態のコンクリート改質剤は、カルシウムイオン、及び溶媒を含み、前記溶媒が、水、水酸化物イオン及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、を含むアルカリ性溶媒である。
本発明の一実施形態のコンクリート改質剤は、カルシウムイオン、及び溶媒を含み、前記溶媒が、水、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、を含む。
【0012】
上記のコンクリート改質剤において、前記溶媒が、水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態のコンクリート改質剤の製造方法は、水、カルシウム化合物、アルカリ金属の水酸化物及びアルミン酸塩を混合してコンクリート改質剤を得る工程を含み、前記工程においては、前記カルシウム化合物を、カルシウムイオンのモル濃度が、0.1モル/L以上2.5モル/L以下となるように混合し、前記アルカリ金属の水酸化物を、前記カルシウムイオンのモル濃度に対する水酸化物イオンのモル濃度が0.0004以上10以下となるように混合し、前記アルミン酸塩を、アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンのモル濃度が、0.005モル/L以上0.015モル/L以下となるように混合する。
本発明の一実施形態のコンクリート改質剤の製造方法は、水、カルシウム化合物、アルカリ金属の水酸化物及びアルミン酸塩を混合する。
本発明の一実施形態のコンクリート改質剤の製造方法は、水、カルシウム化合物、及びアルミン酸塩を混合する。
【0014】
上記のコンクリート改質剤の製造方法において、さらに、アルカリ金属の水酸化物を混合してもよい。
【0015】
本発明の一実施形態の鉄筋腐食抑制剤は、水、アルカリ金属イオン、水酸化物イオン及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンの混合物を含むアルカリ性溶媒を含み、前記アルカリ金属イオン、及び前記水酸化物イオンが、前記水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させることで電離したものであり、前記電離したアルカリ金属イオンには、前記水に水酸化リチウムを溶解させることで電離したリチウムイオンが含まれ、前記電離したアルカリ金属イオン全体のモル濃度に対する前記電離したリチウムイオンのモル濃度が33.3%以上である。
本発明の一実施形態の鉄筋腐食抑制剤は、水、リチウムイオン、水酸化物イオン及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンの混合物を含むアルカリ性溶媒である。
前記リチウムイオン、及び前記水酸化物イオンが、前記水に水酸化リチウムを溶解させることで電離したリチウムイオン、及び水酸化物イオンであってもよい。
本発明の一実施形態の鉄筋腐食抑制剤は、水、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンの混合物を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンクリート保護剤や、コンクリート改質剤によれば、これらコンクリート保護剤や、コンクリート改質剤に要求される機能を満たしつつも、コンクリート構造物の鉄筋が腐食しやすいような環境下においても、鉄筋の腐食を十分に抑制できる。また、本発明の鉄筋腐食抑制剤によれば、コンクリート構造物の鉄筋が腐食しやすいような環境下においても、鉄筋の腐食を十分に抑制できる。また、本発明のコンクリート保護剤や、コンクリート改質剤の製造方法によれば、上記のコンクリート保護剤や、コンクリート改質剤を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のコンクリート保護剤、コンクリート保護剤の製造方法、コンクリート改質剤、コンクリート改質剤の製造方法、及び鉄筋腐食抑制剤について説明する。本発明は以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
<<コンクリート保護剤>>
本開示の実施の形態に係るコンクリート保護剤(以下、一実施形態のコンクリート保護剤と言う)は、アルカリ金属のケイ酸塩、及び溶媒を含む。一実施形態のコンクリート保護剤に含まれるアルカリ金属のケイ酸塩によれば、コンクリート構造物のカルシウムイオンとの反応を介してC-H-Sゲルを生成できる。したがって、一実施形態のコンクリート保護剤をコンクリート構造物に付着させることで、コンクリート構造物の欠陥をC-H-Sゲルで充填でき、結果、コンクリート構造物を補強できる。
【0019】
(アルカリ金属のケイ酸塩)
一実施形態のコンクリート保護剤は、アルカリ金属のケイ酸塩を含む。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(ナトリウムシリケート)、ケイ酸カリウム(カリウムシリケート)、及びケイ酸リチウム(リチウムシリケート)等を例示できる。一実施形態のコンクリート保護剤に含まれるアルカリ金属のケイ酸塩は、1種でもよく、2種以上でもよい。一例としてのコンクリート保護剤は、ケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウムを含む。
【0020】
アルカリ金属のケイ酸塩由来の二酸化ケイ素のモル濃度は、0.1モル/L以上が好ましく、0.3モル/L以上10モル/L以下がより好ましい。アルカリ金属のケイ酸塩が上記モル濃度で含まれた一実施形態のコンクリート保護剤は、コンクリート構造物をより良好に補強できる。
【0021】
(溶媒)
一実施形態のコンクリート保護剤は、溶媒を含む。ここで、一実施形態のコンクリート保護剤は、溶媒が、水、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを含む。一実施形態のコンクリート保護剤は、アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンにより、上述のコンクリート構造物の補強とともに、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を抑制できる。以下、テトラヒドロキソアルミン酸イオンという場合には、アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを意味する。
【0022】
一実施形態のコンクリート保護剤により、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を抑制できるメカニズムは現時点では明確ではないが、一実施形態のコンクリート保護剤に含まれるテトラヒドロキソアルミン酸イオンが、鉄筋の腐食要因となる劣化因子を排除でき、また、鉄筋自体に耐腐食性を付与できることによるものと推察される。なお、このメカニズムによらないとしても、一実施形態のコンクリート保護剤に含まれるテトラヒドロキソアルミン酸イオンが、コンクリート構造物の鉄筋の腐食の抑制に寄与していることは、後述する実施例、及び比較例の結果からも明らかである。
【0023】
コンクリート構造物の鉄筋を腐食させる劣化因子は、主として、塩化物イオン、及び水素イオンである。例えば、融雪剤や、海水がコンクリート構造物と接触することで、コンクリート構造物の内部に塩化物イオンが供給される。また、大気中に存在している二酸化炭素が、コンクリート構造物中の余剰水等に溶け込んだ場合には、加水分解により、コンクリート構造物の内部に水素イオンが供給される。また、酸性雨等によっても、コンクリート構造物の内部に水素イオンが供給される。一実施形態のコンクリート保護剤は、上述の通り、コンクリート構造物の欠陥を充填するC-H-Sゲルを生成できるものであるが、コンクリート構造物の欠陥をC-H-Sゲルを充填しても、外部からコンクリート構造物の内部への塩化物イオンや、水素イオンの供給(浸入)を完全には抑制できないのが現状である。したがって、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を十分に抑制するためには、外部から供給された、又は内部に存在する塩化物イオンや、水素イオンを排除(消費、減少又は除去と称してもよい)する必要がある。
【0024】
テトラヒドロキソアルミン酸イオンは、劣化因子である塩化物イオン、及び水素イオンとの反応性を有する。具体的には、テトラヒドロキソアルミン酸イオンは、塩化物イオンと反応して塩化アルミニウムを生成する。また、テトラヒドロキソアルミン酸イオンは、水素イオンと反応し水酸化アルミニウムを生成する。これらの反応において、劣化因子は消費されることから、コンクリート構造物の内部に劣化因子が供給、又は存在している場合であっても、劣化因子を排除できると推察される。
【0025】
また、テトラヒドロキソアルミン酸イオンは、コンクリート構造物の鉄筋自体に耐腐食性を付与できる。具体的には、テトラヒドロキソアルミン酸イオンは、コンクリート構造物の鉄筋の鉄成分(Fe)から放出された電子を受け取ることで、鉄筋表面に水酸化アルミニウムの被膜が生成されるものと推察され、この水酸化アルミニウムの被膜が、劣化因子による鉄筋の腐食を抑制する作用を果たすと推察される。
【0026】
つまり、一実施形態のコンクリート保護剤によれば、劣化因子の排除と、鉄筋自体に付与される耐腐食性の両面から、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を十分に抑制できる。
【0027】
テトラヒドロキソアルミン酸イオンとしては、アルミン酸ナトリウム由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、アルミン酸カリウム由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン、及びアルミン酸カルシウム由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオン等を例示できる。中でも、添加するアルミン酸塩のモル濃度を同じとした場合、アルミン酸カリウムは、他のアルミン酸塩と比較して、テトラヒドロキソアルミン酸イオンによる鉄筋の腐食の抑制効果が高く好ましい。テトラヒドロキシアルミン酸イオンは、これ以外のアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンでもよい。
【0028】
一例としての溶媒は、水にアルミン酸塩を溶解させたものであり、水、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを含む。なお、水にアルミン酸塩を溶解させて得られた溶媒中において、テトラヒドロキソアルミン酸イオンは、不安定な状態で存在している。テトラヒドロキソアルミン酸イオンによる上述の効果を十分に高めるためには、溶媒中に、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを安定した状態で存在させておくことが好ましい。
【0029】
好ましい形態の溶媒は、アルミン酸塩のモル濃度が0.005モル/L以上、より好ましくは0.006モル/L以上0.05モル/L以下となるように、水にアルミン酸塩を溶解させた溶媒である。このような溶媒を含む一実施形態のコンクリート保護剤によれば、鉄筋の腐食の抑制効果を良好なものとできる。また、溶液安定性を良好なものとでき、コンクリート保護剤中での酸化アルミニウムの沈殿を抑制できる。アルミン酸塩のモル濃度を、アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンのモル濃度と読み替えてもよい。
【0030】
アルカリ金属のケイ酸塩由来の二酸化ケイ素のモル濃度に対するアルミン酸塩のモル濃度(アルミン酸塩のモル濃度/二酸化ケイ素のモル濃度)は、0.0005以上0.5以下が好ましい。
【0031】
好ましい形態の溶媒は、水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒である。この形態の溶媒を含む一実施形態のコンクリート保護剤によれば、テトラヒドロキソアルミン酸イオンを安定した状態で存在させることができ、コンクリート構造物の鉄筋の腐食の抑制効果をより高めることができる。これに加え、水酸化物イオンの作用により、コンクリート構造物に、一実施形態のコンクリート保護剤を付着させたときの、コンクリート構造物内部へのコンクリート保護剤の浸透性を良好なものとでき、コンクリート構造物の欠陥をより効果的に改善できる。
【0032】
水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒のpHに限定はないが、11以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。この形態のアルカリ性溶媒を含む一実施形態のコンクリート保護剤によれば、テトラヒドロキソアルミン酸イオンをより安定した状態で存在させることができ、コンクリート構造物の鉄筋の腐食の抑制効果をさらに高めることができる。一例としての一実施形態のコンクリート保護剤のpHは11以上である。
【0033】
水酸化物イオンのモル濃度に限定はないが、0.001モル/L以上が好ましく、0.01モル/L以上がより好ましい。好ましい上限に限定はないが、一例としては、1モル/Lである。かかるモル濃度とすることで、アルカリ性溶媒に、テトラヒドロキソアルミン酸イオンをより安定した状態で存在させることができ、コンクリート構造物の鉄筋の腐食の抑制効果をさらに高めることができる。
【0034】
アルカリ金属のケイ酸塩由来の二酸化ケイ素のモル濃度に対する水酸化物イオンのモル濃度(水酸化物イオンのモル濃度/二酸化ケイ素のモル濃度)は、0.0001以上10以下が好ましい。
【0035】
一例としてのアルカリ性溶媒は、水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させることにより電離した水酸化物イオンを含む。この形態のアルカリ性溶媒は、簡便に、水酸化物イオンを存在させることができ好ましい。
【0036】
アルカリ性溶媒中に、電離した水酸化物イオンを存在させるために、水に溶解させるアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等を例示できる。一例としてのアルカリ性溶媒は、水に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムの何れか1種、又は2種以上を溶解したものである。
【0037】
(A)一例としてのアルカリ性溶媒は、リチウムイオンと、水酸化物イオンとを含む。
(B)一例としてのアルカリ性溶媒は、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンの何れか一方、又は双方と、リチウムイオンと、水酸化物イオンとを含む。
(C)一例としてのアルカリ性溶媒は、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンの何れか一方、又は双方と、水酸化物イオンとを含み、リチウムイオンを含まない。
【0038】
なかでも上記(A)、(B)のアルカリ性溶媒は、リチウムイオンの作用により、鉄筋表面に十分な量の水酸化アルミニウムの被膜を形成でき好ましい。なお、上記(A)のアルカリ性溶媒は、水酸化アルミニウムの被膜形成の観点では良好であるものの、そのストークス半径の大きさから、アルカリ性溶媒中の水酸化物イオンを消費しやすい。この点を考慮すると、アルカリ性溶媒は、リチウムイオンとともに、リチウムイオンよりも水酸化物イオンを消費しにくい他のアルカリ金属イオンを含んでいることが好ましい。換言すれば、リチウムイオンと、リチウムイオンよりもストークス半径の小さいアルカリ金属イオンを含んでいることが好ましい。
【0039】
一例としてのアルカリ性溶媒は、リチウムイオンと、他のアルカリ金属イオンを含んでいる。一例としてのアルカリ性溶媒は、リチウムイオンと、他のアルカリ金属イオンを含んでおり、且つ、アルカリ金属イオン全体(リチウムイオンと他のアルカリ金属イオン含む)のモル濃度に対するリチウムイオンのモル濃度が50%以上90以下%である。
【0040】
上記では、アルカリ性溶媒に含まれる水酸化物イオンが、水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させることで電離した水酸化物イオンである場合を例に挙げて説明を行ったが、これ以外の方法で、水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒としてもよい。例えば、水の電気分解により水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒としてもよい。水の電気分解により得られるアルカリ性溶媒も、水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させることで得られるアルカリ性溶媒と同様の作用効果を奏する。アルカリ性溶媒の好ましい形態についても同様である。なお、水にアルカリ金属の水酸化物を溶解させる方法は、簡便に、水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒とでき好ましい。水を電気分解して水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒を得る方法に限定はなく、アルカリ電解水の分野で従来公知の方法を適宜選択して得ることができる。
【0041】
一実施形態のコンクリート保護剤は、アルカリ金属のケイ酸塩、及び溶媒とともに、他の機能性成分等を含んでもよい。機能性成分としては、充填率向上剤、界面活性剤、耐水性向上剤、耐摩耗性向上剤、はっ水性付与剤及び鉄筋防止剤等を例示できる。
充填率向上剤としては、コロイダルシリカ等を例示できる。
耐水性向上剤としては、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を例示できる。
耐摩耗性向上剤としては、ケイフッ化マグネシウム等を例示できる。
はっ水性付与剤としては、アルキルアルコキシシラン等を例示できる。
【0042】
<<コンクリート保護剤の製造方法>>
本開示の実施の形態に係るコンクリート保護剤の製造方法(以下、一実施形態のコンクリート保護剤の製造方法と言う)は、水、アルカリ金属のケイ酸塩、及びアルミン酸塩を混合するコンクリート保護剤の製造方法である。一実施形態のコンクリート保護剤の製造方法によれば、コンクリート構造物を良好に補強でき、さらに、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を十分に抑制できるコンクリート保護剤を製造できる。
【0043】
一実施形態のコンクリート保護剤の製造方法によれば、一実施形態のコンクリート保護剤を製造できる。したがって、一実施形態のコンクリート保護剤の製造方法で使用する成分、混合量(モル濃度)等については、一実施形態のコンクリート保護剤で説明したものを適宜選択して使用できここでの説明は省略する。
【0044】
一実施形態のコンクリート保護剤の好ましい製造方法は、一実施形態の好ましいコンクリート保護剤の製造方法である。
一実施形態のコンクリート保護剤の好ましい製造方法は、アルカリ金属の水酸化物を混合する工程を含む。この形態のコンクリート保護剤の製造方法によれば、アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを、コンクリート保護剤中に安定した状態で存在させることができる。つまり、コンクリート保護剤の溶液安定性を良好なものとできる。
【0045】
また、一実施形態のコンクリート保護剤の製造方法における、各成分の混合順序(投入順序)に限定もされない。例えば、水に、アルカリ金属のケイ酸塩、アルミン酸塩をまとめて投入してもよく、水に、アルカリ金属のケイ酸塩、アルミン酸塩を段階的に投入してもよい。好ましい形態のコンクリート保護剤は、水、アルミン酸塩を含む溶媒を調製した後に、この溶媒とアルカリ金属のケイ酸塩を混合して製造したものである。この形態によれば、各成分が均一に混合されたコンクリート保護剤とできる。
【0046】
<<コンクリート改質剤>>
本開示の実施の形態に係るコンクリート改質剤(以下、一実施形態のコンクリート改質と言う)は、カルシウムイオン、及び溶媒を含む。一実施形態のコンクリート改質剤によれば、コンクリート構造物にカルシウムイオンを供給できる。なお、一実施形態のコンクリート改質剤は、一実施形態のコンクリート保護剤における、アルカリ金属のケイ酸塩を、カルシウムイオンとした点において相違し、これ以外の点においては、特に、断りがある場合を除いて、一実施形態のコンクリート保護剤で説明した構成を適宜選択できる。
【0047】
また、一実施形態のコンクリート改質剤は、溶媒がアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを含む。一実施形態のコンクリート改質剤によれば、一実施形態のコンクリート保護剤と同じ作用効果を奏し、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を抑制できる。
【0048】
(カルシウムイオン)
一実施形態のコンクリート改質剤に含まれるカルシウムイオンは、水、又は溶媒に、カルシウム化合物を溶解して得られたものである。カルシムイオンを得るためのカルシウム化合物としては、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム、及び硫酸カルシウム等を例示できる。これらの中でも、乳酸カルシウムは、水への溶解性が他のカルシウム化合物よりも高く、容易に、溶媒に、カルシウムイオンを含ませることができ、好ましい。
【0049】
カルシウムイオンのモル濃度は、0.1モル/L以上が好ましく、0.3モル/L以上2.5モル/L以下がより好ましい。かかるモル濃度とすることで、コンクリート構造物に十分な量のカルシウムイオンを供給できる。また、カルシウム化合物の溶解性を良好にできる。
【0050】
カルシウムイオンのモル濃度に対するアルミン酸塩のモル濃度(アルミン酸塩のモル濃度/カルシウムイオンのモル濃度)は、0.002以上0.15以下が好ましい。
【0051】
(溶媒)
一実施形態のコンクリート改質剤の溶媒は、水、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸を含む。好ましい形態の溶媒は、アルミン酸塩のモル濃度が0.005モル/L以上0.015モル/L以下となるように、水にアルミン酸塩を溶解させた溶媒である。
【0052】
好ましい形態の溶媒は、水、水酸化物イオン、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを含むアルカリ性溶媒である。一例としてのアルカリ性溶媒は、水に、アルカリ金属の水酸化物を溶解させることで電離した水酸化物イオンを含む。
【0053】
なお、一実施形態のコンクリート保護剤では、アルカリ性溶媒を得るための好ましい成分として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等を例示したが、溶液安定性の観点からは、一実施形態のコンクリート改質剤が含むアルカリ性溶媒は、リチウムイオンを含まないか、又はリチウムイオンを含む場合であっても、そのモル濃度が0.32モル/L未満であることが好ましい。つまり、水酸化リチウムを使用しないか、又は使用する場合であっても、その量を少量としたアルカリ性溶媒が好ましい。このようなアルカリ性溶媒を含むコンクリート改質剤によれば、コンクリート改質剤の溶液中に水酸化アルミニウムの沈殿物が生成されることを抑制でき、溶液安定性が良好である。なお、このような溶液安定性を考慮したコンクリート改質剤を使用する場合、コンクリート構造物を改質した後に、当該コンクリート構造物に上記一実施形態のコンクリート保護剤を付着させることが好ましい。
【0054】
一例としてのアルカリ性溶媒は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びリチウムイオンの少なくとも一つと、水酸化物イオンとを含む。
一例としてのアルカリ性溶媒は、カリウムイオンと、水酸化物イオンとを含む。
一例としてのアルカリ性溶媒は、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンの何れか一方、又は双方と、水酸化物イオンとを含む。
一例としてのアルカリ性溶媒は、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンの何れか一方、又は双方と、水酸化物イオンとを含み、リチウムイオンを含まない。
【0055】
水酸化物イオンを含むアルカリ性溶媒のpHに限定はないが、11以上が好ましい。一例としての一実施形態のコンクリート改質剤のpHは11以上である。
【0056】
水酸化物イオンのモル濃度は0.001モル/L以上が好ましく、0.015モル/L以上がより好ましい。好ましい上限に限定はないが、一例としては、1モル/Lである。
かかるモル濃度とすることで、アルカリ性溶媒に、テトラヒドロキソアルミン酸イオンをより安定した状態で存在させることができ、コンクリート構造物の鉄筋の腐食の抑制効果をさらに高めることができる。
【0057】
カルシウムイオンのモル濃度に対する水酸化物イオンのモル濃度(水酸化物イオンのモル濃度/カルシウムイオンのモル濃度)は、0.0004以上10以下が好ましい。
【0058】
一実施形態のコンクリート保護剤と同じく、アルカリ性溶媒は、水の電気分解で得たものでもよい。
【0059】
<<コンクリート改質剤の製造方法>>
本開示の実施の形態に係るコンクリート改質剤の製造方法(以下、一実施形態のコンクリート改質剤の製造方法と言う)は、水、カルシウム化合物、及びアルミン酸塩を混合するコンクリート改質剤の製造方法である。一実施形態のコンクリート改質剤の製造方法によれば、コンクリート構造物にカルシウムイオンを供給でき、さらに、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を十分に抑制できるコンクリート改質剤を製造できる。
【0060】
一実施形態のコンクリート改質剤の製造方法によれば、一実施形態のコンクリート改質剤を製造できる。したがって、一実施形態のコンクリート改質剤の製造方法で使用する成分、混合量(モル濃度)等については、一実施形態のコンクリート改質剤で説明したものを適宜選択して使用できここでの説明は省略する。
【0061】
一実施形態のコンクリート改質剤の好ましい製造方法は、一実施形態の好ましいコンクリート改質剤の製造方法である。
一実施形態のコンクリート改質剤の好ましい製造方法は、アルカリ金属の水酸化物を混合する工程を含む。この形態のコンクリート改質剤の製造方法によれば、アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを、コンクリート保護剤中に安定した状態で存在させることができる。つまり、コンクリート改質剤の溶液安定性を良好なものとできる。
【0062】
また、一実施形態のコンクリート改質剤の製造方法における、各成分の混合順序(投入順序)に限定もされない。例えば、水に、カルシウム化合物、アルミン酸塩をまとめて投入してもよく、水に、カルシウム化合物、アルミン酸塩を順不同に段階的に投入してもよい。好ましい形態のコンクリート改質剤は、水、アルミン酸塩を含む溶媒を調製した後に、この溶媒とカルシウム化合物を混合して製造したものである。この形態によれば、各成分が均一に混合されたコンクリート改質剤とできる。
【0063】
<<鉄筋腐食抑制剤>>
本開示の一実施形態の鉄筋腐食抑制剤(以下、一実施形態の鉄筋腐食抑制剤という)は、水、アルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを含む。一実施形態の鉄筋腐食抑制剤によれば、テトラヒドロキソアルミン酸塩イオンにより、コンクリート構造物の鉄筋の腐食を十分に抑制できる。
【0064】
一実施形態の鉄筋腐食抑制剤は、一実施形態のコンクリート保護剤から、必須成分であるアルカリ金属のケイ酸塩を除いたもの、または、一実施形態のコンクリート改質剤から、必須成分であるカルシウムイオンを除いたものに対応する。
【0065】
<<コンクリート構造物の保護方法、及び改質方法、並びに腐食抑制方法>>
一実施形態のコンクリート構造物の保護方法は、コンクリート構造物に、上記一実施形態のコンクリート保護剤を付着させる。
一実施形態のコンクリート構造物の改質方法は、コンクリート構造物に、上記一実施形態のコンクリート改質剤を付着させる。
一実施形態のコンクリート構造物の保護・改質方法は、コンクリート構造物に、上記一実施形態のコンクリート改質剤を付着させて、コンクリート構造物を改質した後に、改質されたコンクリート構造物に、上記一実施形態のコンクリート保護剤を付着させる。この方法によれば、コンクリート改質剤とコンクリート保護剤の相乗効果でコンクリート構造物の腐食抑制効果を高くできる。
一実施形態のコンクリート構造物の腐食抑制方法は、コンクリート構造物に、上記一実施形態の鉄筋腐食抑制剤を付着させる。
コンクリート保護剤、コンクリート改質剤、及び鉄筋腐食抑制剤の付着量に限定はなく、コンクリート構造物に応じて適宜設定すればよい。一例としての付着量は、100ml/m2以上である。
コンクリート構造物としては、橋梁(地覆、床版)、橋脚、橋台、ダム堤体、トンネル(孔壁)、ボックスカルバート、港湾施設、港湾構造物、河川構造物、護岸構造物、用水路、樋管、樋門、貯水タンク、地下ピット、立体駐車場、コンクリート二次製品等を例示できる。これ以外のコンクリート構造物でもよい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
(溶媒の準備)
下表1~3に示す溶媒を準備した。各表においてアルカリ金属の水酸化物として2種以上のものが記載されているものの配合比は1:1(又は1:1:1)である(但し、表中に配合比が記載されているものを除く)。表中のアルミン酸Kは、アルミン酸カリウムを意味し、アルミン酸Naはアルミン酸ナトリウムを意味する。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
(塩化ナトリウムの添加)
塩化物イオンのモル濃度/水酸化物イオンのモル濃度=0.625となるように、表1~3の各溶媒(表中のグループNo.11、Dの溶媒は除く)に塩化ナトリウムを添加した。塩化ナトリウムを添加した各溶媒の量は250mlである。
表2中のグループNo.11、及び表3中のグループNo.Dについては、塩化物イオンのモル濃度/水酸化物イオンのモル濃度=0.31となるように、塩化ナトリウムを添加した。塩化ナトリウムを添加した溶媒の量は250mlである。
なお、塩化物イオンのモル濃度/水酸化物イオンのモル濃度=0.625は、鉄筋が腐食しやすい過酷な環境である。
【0072】
(鉄筋の腐食評価1)
表面の被覆をケレンした長さが10cmの鉄筋を、上記塩化ナトリウムを添加した各溶媒に一部分浸漬させ、7日間浸漬後の鉄筋の状態を目視で確認し、各評価基準1に基づいて、鉄筋の腐食評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0073】
「評価基準1」
A(1):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が形成されており、鉄筋全体に腐食が確認できない。
A(2):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が僅かに形成されており、、鉄筋全体に腐食が確認できない。
A(3):鉄筋表面への水酸化アルミニウムの白色被膜の形成は目視で確認できなかったが、鉄筋全体に腐食が確認できない。
B(1):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が形成されているが、液界面部分の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
B(2):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が形成されているが、液中の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
B(3):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が形成されているが、液中液界面部分の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
B(4):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が僅かに形成されているが、液界面部分の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
B(5):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が僅かに形成されているが、液中の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
B(6):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が僅かに形成されているが、液中と液界面部分の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
B(7):鉄筋表面に水酸化アルミニウムの白色被膜が僅かに形成されているが、液中の鉄筋にB(5)よりも多くの問題とはならない腐食がみられる。
C(1):鉄筋表面への白色の水酸化アルミニウム被膜の形成を目視で確認できず、液界面部分の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
C(2):鉄筋表面への白色の水酸化アルミニウム被膜の形成を目視で確認できず、液中の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
C(3):鉄筋表面への白色の水酸化アルミニウム被膜の形成を目視で確認できず、液中と液界面部分の鉄筋に問題とならない僅かな腐食がみられる。
NG(1):鉄筋表面への白色の水酸化アルミニウム被膜の形成を目視で確認できず、液中の鉄筋全体に問題となる腐食がみられる。
NG(2):鉄筋表面への白色の水酸化アルミニウム被膜の形成を目視で確認できず、液中の鉄筋の局所に問題となる腐食がみられる。
NG(3):鉄筋表面への白色の水酸化アルミニウム被膜の形成を目視で確認できず、液界面部分の鉄筋に問題となる腐食がみられる。
【0074】
【0075】
(鉄筋の腐食評価2)
表1の溶媒1-4、及び1-9のそれぞれに、ケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウムを添加して、コンクリート保護剤1-4、及び1-9を得た。ケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウムの添加量は、それぞれ、4.5モル/Lである。表面の被覆をケレンした長さが10cmの鉄筋を、上記コンクリート保護剤に一部分浸漬させ、7日間浸漬後の鉄筋の状態を目視で確認し、各評価基準に基づいて、鉄筋の腐食評価を行った。
コンクリート保護剤1-4、及び1-9の双方とも、鉄筋に腐食の発生は見られなかった。
【0076】
(コンクリート改質剤の準備)
水、水酸化カリウム、アルミン酸カリウム、カルシウムを混合して、コンクリート改質剤1、2を調製した。
コンクリート改質剤1における水酸化物イオンのモル濃度は0.002モル/Lであり、アルミン酸カリウムのモル濃度は0.012モル/Lであり、カルシウムのモル濃度は0.44モル/Lである。
コンクリート改質剤2における水酸化物イオンのモル濃度は0.032モル/Lであり、アルミン酸カリウムのモル濃度は0.012モル/Lであり、カルシウムのモル濃度は0.44モル/Lである。
【0077】
(塩化ナトリウムの添加)
上記で準備したコンクリート改質剤1、2のそれぞれに対して、塩化物イオンのモル濃度が0.02モル/Lとなるように塩化ナトリウムを添加して、塩化ナトリウムが添加されたコンクリート改質剤1、2を得た。塩化ナトリウムが添加されたコンクリート改質剤1、2はそれぞれ250mlに調製した。
【0078】
(鉄筋の腐食評価3)
表面の被覆をケレンした長さが10cmの鉄筋を、上記塩化ナトリウムを添加したコンクリート改質剤1、2に一部分浸漬させ、7日間浸漬後の鉄筋の状態を目視で確認し、上記の評価基準1に基づいて、鉄筋の腐食評価を行った。コンクリート改質剤1の評価はB(7)であり、コンクリート改質剤2の評価はA(2)であった。
【要約】
【課題】コンクリート構造物の鉄筋が腐食しやすいような環境下においても、鉄筋の腐食を十分に抑制できるコンクリート保護剤、コンクリート改質剤、及び鉄筋腐食抑制剤を提供すること、及びこれらのコンクリート保護剤や、コンクリート改質剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート保護剤は、アルカリ金属のケイ酸塩、及び溶媒を含み、前記溶媒が、水、及びアルミン酸塩由来のテトラヒドロキソアルミン酸イオンを含む。
【選択図】なし