(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】水質浄化装置
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A01K63/04 F
(21)【出願番号】P 2023168613
(22)【出願日】2023-09-28
(62)【分割の表示】P 2020023813の分割
【原出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520002760
【氏名又は名称】株式会社クラハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 雄一
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176149(JP,A)
【文献】特開2006-180829(JP,A)
【文献】実開平7-42605(JP,U)
【文献】特開2001-47050(JP,A)
【文献】特開2009-55821(JP,A)
【文献】特開2005-245329(JP,A)
【文献】特開2003-274796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00-63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
前記輸送機構により輸送される排出水を生物学的に浄化する生物浄化槽と、
前記輸送機構により輸送される排出水および前記生物浄化槽から排出される水の少なくとも一部の水を電気分解によって浄化する電気分解槽と、
前記収容容器に前記水生生物用の餌を投入する投入時刻に基づいて、前記水生生物の種類によって定まる消化開始時刻を算出する濃度計測部と、
前記濃度計測部の算出結果に基づいて、前記生物浄化槽および前記電気分解槽のそれぞれへの排出水の輸送先および流量の少なくとも一方を制御する輸送制御部と、
前記生物浄化槽で浄化されて得られる生物浄化水および前記電気分解槽で浄化されて得られる分解浄化水を、前記収容容器に還流させる還流機構と、を備え、
前記輸送制御部は、前記消化開始時刻に基づいて、前記排出水の略全量を前記生物浄化槽に輸送させる、もしくは、前記排出水を前記生物浄化槽および前記電気分解槽のそれぞれに輸送させることを選択する、水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項2】
前記輸送制御部は、前記消化開始時刻までは、前記排出水の略全量を前記生物浄化槽に輸送させ、前記消化開始時刻以降は、前記排出水を前記生物浄化槽および前記電気分解槽のそれぞれに輸送させ、
あるいは、
前記輸送制御部は、前記消化開始時刻から所定時間を経過した第3タイミングまでは、前記排出水の略全量を前記生物浄化槽に輸送させ、前記第3タイミング以降は、前記排出水を前記生物浄化槽および前記電気分解槽のそれぞれに輸送させる、請求項1記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項3】
前記輸送制御部は、前記収容容器からの排出水を、前記生物浄化槽および前記電気分解槽の両方に輸送させる場合において、前記生物浄化槽および前記電気分解槽のそれぞれへの流量を制御する、請求項1記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【請求項4】
前記収容容器からの前記排出水は、前記水生生物に由来する汚濁を含んでおり、
前記生物浄化槽および前記電気分解槽は、前記汚濁を浄化もしくは分解し、
前記汚濁は、アンモニア成分を含み、
前記生物浄化槽は、微生物により前記アンモニア成分を分解し、
前記電気分解槽は、電気分解による次亜塩素酸の発生により、前記アンモニア成分を分解し、
前記微生物は、前記アンモニア成分を分解する第1微生物群と、前記アンモニア成分が分解されて生じる亜硝酸を分解する第2微生物群と、を含む、請求項1記載の水生生物収容装置用の水質浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物を保管もしくは輸送でき水生生物収容装置に適した水生生物収容装置用の水質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の水生生物を、一定時間において保管したり輸送したりすることが求められるようになってきている。例えば、食用に供される水生生物(食用の魚類や魚介類など)を、漁獲地において一定時間(数日から数週間など、種類や必要性に応じて様々)で、保管することが求められることがある。漁獲から販売や輸送までの待機時間があり、この待機時間において、漁獲された水生生物を活かしておく必要があるからである。この活かしておくための保管においても、水生生物の健康状態や鮮度を維持することが求められる。
【0003】
ここで、保管とは上述のような漁獲後の一定時間の保管もありえるし、漁獲地以外での一定時間の保管もありえる。あるいは、養殖や蓄養などにおいて、成長まであるいは出荷までの間において保管する場合も含む。すなわち、出荷用として漁獲された水生生物を保管(あるいは輸送)する場合もあり得るし、養殖や蓄養のために、ある程度の期間において保管する場合もありえる。これらのいずれの意味でも、ここでいう保管は対応する。
【0004】
例えば、いけす料理などを提供する飲食店において、かなりの長い期間で食事用の魚介類を生きたまま保管することもある。このような保管でも、魚介類をはじめとする水生生物を、新鮮かつ健康な状態で保管することが求められる。
【0005】
あるいは、漁獲地や集積地から、水生生物を生きたまま輸送することが求められるようになってきている。例えば、地方の漁港で漁獲された水生生物を、消費地である都市部に活きたまま輸送することが求められている。輸送では、水生生物を生きたまま輸送することに加えて、その鮮度や健康状態を維持することが重要である。
【0006】
輸送中においては、輸送の特性上、水生生物に様々なストレスが掛かるからである。このストレスに対して、鮮度や健康状態をきちんと維持することが求められる。
【0007】
更には、輸送された水生生物を、消費地において実際の用途に供されるまでの間において、一定時間保管することが求められる。水生生物が食用に供される場合には、実際に食事に供されるまでの時間は、保管が求められることがある。生きた状態で調理されて食事に供される必要のある魚介類の場合などである。あるいは、観賞用の水生生物を販売するまでの時間において、健康状態を維持しつつ保管することが求められる。
【0008】
このような保管あるいは輸送においては、次のような事情がある。
【0009】
漁獲地において生きたまま保管するのは、実際の消費する場所に輸送するタイミングや間隔に合わせて運び出す必要があるからである。これは消費地における事情(購入するための条件が整う必要性や、消費に最適なタイミング)や、輸送が可能となるタイミングなどの事情による。このような事情によって、漁獲地において、水生生物の鮮度や健康状態を維持して保管する必要がある。
【0010】
あるいは、生きたまま輸送する必要があるのは、食用であれば、新鮮な状態で食事として供する(場合によっては活き造りで)必要があることで、生きた状態で水生生物を輸送する必要があるからである。特に、鮮度や健康状態を維持して輸送することが求められる。このとき、漁獲地と消費地が遠いことが多い。食用(かつ、活き造りや新鮮な状態で食する)の水生生物は、地方の沿岸部で水揚げされる。
【0011】
一方で、消費地としては、漁獲地周辺の都市部あるいは、関東、近畿、中京といった三大都市圏である。このような都市部や三大都市圏は、漁獲地と遠隔であることが多い。例えば活き造りなどの新鮮な状態で食されることの多いイカは、九州、中国地方、北海道などが代表的な漁獲地である。イカに限らず、他の魚介類も、漁獲地と消費地とが遠隔になっていることが多い。もちろん、消費地の近隣でも水揚げされることがあるが、量の不足、品質の不足などの問題があり、消費地の多くでは、より品質の高い魚介類を食したいとの高い要望をもっている。
【0012】
このような事情があり、漁獲地から消費地まで、鮮度と健康状態を維持して輸送を行う必要がある。これは、観賞用の水生生物であっても同様である。
【0013】
また、輸送された消費地においても、実際の食用に供されるまでの間、生きたまま保管される必要がある。輸送された生きた状態の水生生物を、実際に調理して供するまでの期間においては、鮮度や健康状態を維持して保管する必要があるからである。
【0014】
このように、漁獲された水生生物の鮮度と健康状態を維持して、保管や輸送することが求められている。特に、専用の生簀、水槽、などの施設で保管が行われるまでの間の保管や輸送が必要となりうる。
【0015】
ここで、輸送は、トラックや列車などの輸送機器で輸送される必要がある。この輸送においては、種々の状況が発生し、輸送される水生生物の健康状態を維持することが難しいことが多い。例えば、魚介類であれば、魚介類が必要とする酸素量の維持、魚介類からの排泄物や老廃物の処理、水質の維持などが必要条件となるからである。ストレスなく水生生物を生きたまま輸送することも大切である。
【0016】
輸送において、水生生物にストレスを与えにくい環境を実現する必要がある。例えば、酸素量(水中の溶存酸素)の維持、水生生物の排泄物や老廃物の除去、水質の維持などの必要性がある。
【0017】
同様に、定置された場所での保管においても、水生生物の鮮度や健康状態を維持することが必要である。このため、水生生物にストレスを与えにくい環境を実現する必要がある。例えば、酸素量(水中の溶存酸素)の維持、水生生物の排泄物や老廃物の除去、水質の維持などの必要性がある。
【0018】
ここで、水生生物を保管する容器の水質を汚損する要因としては、水生生物の呼吸、排泄、体液等の分泌、産卵、水生生物の損傷による生体組織などがある。これらの中でも、水にアンモニアが蓄積(排泄による)されていく問題が大きい。アンモニアが水に蓄積されれば、水質が汚損されてしまう。アンモニアによる汚損は、水質汚濁において非常に大きな問題であり、水生生物への悪影響が大きい。
【0019】
このような状況において、魚介類の保管や輸送における水質改善の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献1は、隔膜2で仕切られた陽極室3と陰極室4とを備え、飼育水槽1から供給される海水Sを電気分解する電解槽5。陽極室3から海水Sが供給される曝気槽8。水面より上の空間部14が曝気槽8の水面より上の空間部15と連通され、水Wが貯溜あるいは通水されている塩素溶解槽10。塩素溶解槽10の空間部14の空気を曝気槽8の海水S中及び塩素溶解槽10の水W中に噴出して曝気する散気装置16。曝気槽8から供給される海水S中に残留する活性塩素を炭化剤6で中和する中和槽7。陰極室4から供給される海水Sと中和槽7から供給される海水Sを混合して飼育水槽1に返送する混合槽9。これらを備えて形成されるpH調整装置100を具備する。海水Sの電気分解で、海水SのpH調整を行なうことができる閉鎖式循環養殖システムを開示する。
【0022】
特許文献1は、電気分解を用いて、海水のPH調整を行うことを開示している。すなわち、特許文献1の技術は、水質浄化を実現することを開示していない。
【0023】
仮に、電気分解を水質浄化に用いるとしても、水質浄化は不十分である問題がある。上述したように、水生生物を保管する容器内部の水質悪化の主原因は、排泄などによるアンモニアである。電気分解では、このアンモニアを分解するために、次亜塩素酸を必要とする。しかしながらこの次亜塩素酸そのものも、収容容器に戻されると、水生生物に悪影響を与える。電気分解による水質浄化は、収容容器の水を電気分解に取り込んで、分解後の水を収容容器に循環させるからである。
【0024】
この循環によって、次亜塩素酸が収容容器に還流されることは、水生生物への悪影響をもたらす点で好ましくない。
【0025】
一方で、この次亜塩素酸を除去するために、除去機構を設ける必要があるが、この除去機構がコストや装置規模の点で大きくなってしまう問題もある。
【0026】
また、電気分解は、収容容器の水のアンモニアを分解できるが、収容容器の水量が大きくなったりアンモニア量が多くなったりすると、電気分解の能力を上げる必要がある。この場合には、電気分解のコストが増加する問題がある。また、能力不足に備えて、予めオーバースペックの電気分解装置を設ける必要があり、コストやサイズの面で、保管や輸送に向かない問題がある。
【0027】
以上のように、従来技術においては、水質浄化の能力が不十分であったり、そのコストが大きくなったり、輸送や保管に向きにくかったりする問題がある。
【0028】
本発明は、これらの課題に鑑み、水生生物の収容容器の水を最適なタイミングで最適な手法で浄化して、コスト面でも低下できる水生生物収容装置用の水質浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題に鑑み、水生生物収容装置用の水質浄化装置は、水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
輸送機構により輸送される排出水を生物学的に浄化する生物浄化槽と、
輸送機構により輸送される排出水および生物浄化槽から排出される水の少なくとも一部の水を電気分解によって浄化する電気分解槽と、
排出水中の溶存酸素濃度を計測する濃度計測部と、
濃度計測部で計測された濃度結果に基づいて、生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへの排出水の輸送先および流量の少なくとも一方を制御する輸送制御部と、
生物浄化槽で浄化されて得られる生物浄化水および電気分解槽で浄化されて得られる分解浄化水を、収容容器に還流させる還流機構と、を備え、
輸送制御部は、濃度結果に基づいて、排出水の略全量を生物浄化槽に輸送させる、排出水を生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれに輸送させることを選択する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の水生生物収容装置用の水質浄化装置は、微生物の働きによる生物浄化槽と電気分解による電気分解槽の必要な切り替えを行い、より効果的な水の浄化を実現できる。
【0031】
また、収容装置内部の水の汚濁レベルが強くなるタイミングを高い精度で推定して、汚濁レベルが高くなるのに合わせて、生物浄化槽と電気分解槽の両方を用いた浄化を行う。これにより、汚濁レベルが高い場合には、生物浄化槽と電気分解槽の両方を用いて、十分な浄化を実現することができる。
【0032】
また、汚濁レベルが高まるまでにおいては、生物浄化槽を用いることで、電気分解槽の動作に必要となる電力エネルギーを抑えることができる。これにより、水質浄化装置および水生生物収容装置全体のエネルギーコストを抑えることができる。
【0033】
また、上述のように、低エネルギー、低コスト、小型化が実現できることで、輸送機器に設置される水生生物収容装置に、本発明の水質浄化装置を取り付けることが容易である。この結果、活魚輸送などでの水生生物の健康状態を維持した輸送のレベルを上げることができる。もちろん、定置型の水生生物収容装置でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】発明者の解析における水生生物収容容器内部におけるアンモニア濃度の変化を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施の形態1における水生生物収容装置用の水質浄化装置のブロック図である。
【
図3】溶存酸素濃度とアンモニア成分濃度との逆相関関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施の形態1における濃度計測部での濃度結果を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施の形態1における収容容器の模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における水質浄化装置のブロック図である。
【
図7】本発明の実施の形態2における排出水の輸送先の切り替えを示す模式図である。
【
図8】本発明の実施の形態2における排出水の輸送先の切り替えを示す模式図である。
【
図9】本発明の実施の形態2における排出水の輸送先の切り替えを示す模式図である。
【
図10】本発明の実施の形態2における排出水の輸送先の切り替えを示す模式図である。
【
図11】本発明の実施の形態2における輸送機器に水生生物収容装置が備わっている模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の第1の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置は、水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
水生生物を収容可能な収容容器から排出される排出水を輸送する輸送機構と、
輸送機構により輸送される排出水を生物学的に浄化する生物浄化槽と、
輸送機構により輸送される排出水および生物浄化槽から排出される水の少なくとも一部の水を電気分解によって浄化する電気分解槽と、
排出水中の溶存酸素濃度を計測する濃度計測部と、
濃度計測部で計測された濃度結果に基づいて、生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへの排出水の輸送先および流量の少なくとも一方を制御する輸送制御部と、
生物浄化槽で浄化されて得られる生物浄化水および電気分解槽で浄化されて得られる分解浄化水を、収容容器に還流させる還流機構と、を備え、
輸送制御部は、濃度結果に基づいて、排出水の略全量を生物浄化槽に輸送させる、排出水を生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれに輸送させることを選択する。
【0036】
この構成により、直接的に計測しにくいアンモニア濃度を、溶存酸素濃度から測定することで、汚濁のレベルによって、浄化手段を生物浄化槽のみとするか、生物浄化槽と電気分解槽の両方とするかを切り替えることができる。これにより、適切な浄化と消費エネルギーの抑制とのバランスを実現できる。
【0037】
本発明の第2の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第1の発明に加えて、輸送制御部は、濃度結果が所定値以上の場合には、収容容器からの排出水の略全量を、生物浄化槽に輸送させる。
【0038】
この構成により、汚濁レベルが基準以下であれば、生物浄化槽のみで浄化する。これにより、消費エネルギーを抑制できる。
【0039】
本発明の第3の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第2の発明に加えて、輸送制御部は、濃度結果が所定値未満の場合には、収容容器からの排出水を、生物浄化槽および電気分解槽の両方に輸送させる。
【0040】
この構成により、汚濁レベルが高い場合には、生物浄化槽と電気分解槽の両方を用いて浄化できる。これにより、汚濁が高い場合でも、十分かつ確実な浄化を行うことができる。
【0041】
本発明の第4の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第2または第3のいずれかの発明に加えて、輸送制御部は、濃度結果が所定値未満となった第1タイミングで、収容容器からの排出水を、生物浄化槽および電気分解槽の両方に輸送させる。
【0042】
この構成により、汚濁レベルが高い場合には、生物浄化槽と電気分解槽の両方を用いて浄化できる。これにより、汚濁が高い場合でも、十分かつ確実な浄化を行うことができる。
【0043】
本発明の第5の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第2または第3の発明に加えて、輸送制御部は、濃度結果が所定値未満となった第1タイミングから、所定時間経過した第2タイミングで、収容容器からの排出水を、生物浄化槽および電気分解槽の両方に輸送させる。
【0044】
この構成により、アンモニア濃度を中心とする汚濁レベルが、非常に上がったことを確実に推定してから、電気分解槽での浄化も併用できる。これにより、消費エネルギーの抑制を更に高めることができる。
【0045】
本発明の第6の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第5の発明に加えて、第1タイミングから第2タイミングまでの時間量は、収容容器に収容されている水生生物の種類および水生生物の食餌から消化開始までの時間の少なくとも一方に基づいて定められる。
【0046】
この構成により、生体活動や消化活動による汚濁の高まりに合わせた最適なタイミングで電気分解槽での浄化も併用できる。消費エネルギーの抑制の最適化も高めることができる。
【0047】
本発明の第7の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第1の発明に加えて、濃度計測部は、収容容器に水生生物用の餌を投入する投入時刻に基づいて、水生生物の種類によって定まる消化開始時刻を算出し、
輸送制御部は、消化開始時刻に基づいて、排出水の略全量を生物浄化槽に輸送させる、排出水を生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれに輸送させることを選択する。
【0048】
この構成により、消化活動による汚濁の高まりに合わせた最適なタイミングで電気分解槽での浄化も併用できる。消費エネルギーの抑制の最適化も高めることができる。
【0049】
本発明の第8の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第7の発明に加えて、輸送制御部は、消化開始時刻までは、排出水の略全量を生物浄化槽に輸送させ、消化開始時刻以降は、排出水を生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれに輸送させ、
あるいは、
輸送制御部は、消化開始時刻から所定時間を経過した第3タイミングまでは、排出水の略全量を生物浄化槽に輸送させ、第3タイミング以降は、排出水を生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれに輸送させる。
【0050】
この構成により、より汚濁レベルが高まることに合わせて電気分解槽を併用することができるので、消費エネルギーの抑制を更に高めることができる。
【0051】
本発明の第9の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第3から第8のいずれかの発明に加えて、輸送制御部は、収容容器からの排出水を、生物浄化槽および電気分解槽の両方に輸送させる場合において、生物浄化槽および電気分解槽のそれぞれへの流量を制御する。
【0052】
この構成により、生物浄化槽と電気分解槽のそれぞれの能力に合わせた排出水の供給を実現できる。
【0053】
本発明の第10の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、収容容器からの排出水は、水生生物に由来する汚濁を含んでおり、
生物浄化槽および電気分解槽は、汚濁を浄化もしくは分解する。
【0054】
この構成により、水生生物を収容している収容容器からの排出水において、水生生物に由来する汚濁を浄化できる。この浄化された水が還流するので、水生生物収容装置では、清浄な水が常に使用可能になる。
【0055】
本発明の第11の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第10の発明に加えて、汚濁は、アンモニア成分を含み、
生物浄化槽は、微生物によりアンモニア成分を分解し、
電気分解槽は、電気分解による次亜塩素酸の発生により、アンモニア成分を分解する。
【0056】
この構成により、生物浄化槽及び電気分解槽のそれぞれで、それぞれのメカニズムでアンモニア成分を分解する。
【0057】
本発明の第12の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第11の発明に加えて、濃度結果は、収容容器の水におけるアンモニア成分濃度の増加に関連する。
【0058】
この構成により、溶存酸素濃度からアンモニア成分濃度を推定して、汚濁レベルを図ることができる。
【0059】
本発明の第13の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第11または第12の発明に加えて、電気分解槽で発生する次亜塩素酸を除去する活性炭槽を、更に備える。
【0060】
この構成により、電気分解槽で用いられた次亜塩素酸を、除去したうえで電解浄化水を収容容器に還流させる。
【0061】
本発明の第14の発明に係る水生生物収容装置用の水質浄化装置では、第11から第13のいずれかの発明に加えて、微生物は、アンモニア成分を分解する第1微生物群と、アンモニア成分が分解されて生じる亜硝酸を分解する第2微生物群と、を含む。
【0062】
この構成により、微生物によるアンモニア成分の確実な分解を実現できる。
【0063】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0064】
(発明者の解析)
【0065】
図1は、発明者の解析における水生生物収容容器内部におけるアンモニア濃度の変化を示すグラフである。水生生物収容容器の内部においては、魚介類などを始めとする水生生物が収容されている。例えば、イカ類が収容されていたり、食用に供される鯵や鯖といった魚類が収容されていたりする。あるいは、観賞用の水生生物(熱帯魚)などが収容されている。このような水生生物収容容器は、漁獲地から消費地への移動において使用されたり、活魚料理を提供する飲食店に設置されて使用されたりする。
【0066】
このような水生生物収容容器においては、収容されている水生生物の活動によって、排泄物、体液、卵、その他の排出物が生じる。これらの排出物は、収容容器内の水質汚濁に繋がる。特に、排出物によって、収容容器内部には、アンモニアが増加していくことがある。特に、水生生物が餌を食することによる生体活動によって、アンモニアが増加していくことが、発明者によって解析された。
【0067】
このアンモニア濃度が増加していく状態が、
図1のグラフに示されている。
図1のグラフに示されるように、収容容器内部において、アンモニア濃度が増加していく。
【0068】
ここで、このようなアンモニア濃度が増加した収容容器内部の水を浄化して、収容している水生生物の生活環境を維持することが必要である。もちろん、収容容器内部の水は、アンモニア以外によっても汚濁しており、この汚濁した水を浄化することが必要である。この浄化によって、
図1のグラフのように、一旦増加したアンモニア濃度が、やがて低下していくことができる。
【0069】
ここで、発明者は、アンモニアを含む汚濁した水を浄化するのに、(1)バクテリアなどの生物分解を利用する生物浄化、(2)電気分解による生物浄化、の2つを検討した。これらは、方法は異なるものの、アンモニアなどを始めとする汚濁を浄化する機能を発揮する。
【0070】
生物浄化と、電気分解による浄化とは、方法が異なることでの、それぞれの特徴がある。特に、その能力的な相違、あるいは、必要とするエネルギー量での相違などがある。
【0071】
ここで、生物浄化は、微生物であるバクテリアを利用するために、その浄化能力には限界がある(生物浄化装置の大型化やバクテリア数の増加により、浄化能力を上げていくことはできるが、コストや装置サイズの限界などの点で、結局は生物浄化の浄化能力には限界がある。)
【0072】
一方で、電気分解による浄化は、海水中に含まれる塩素を用いて電気分解を行うことにより、汚濁した水の浄化を行う。この電気分解において、次亜塩素酸が発生し、これにより汚濁した水の浄化を行う。このため、電気分解に係るエネルギーを上げていけば、浄化能力を高めることができる。また、微生物であるバクテリアを用いることはないので、機械的あるいは電気的な人工装置によって、その浄化能力を高めることもできる。
【0073】
しかしながら、電気分解による浄化能力を高めようとすると、必要とするエネルギー量を高くしなければならない問題がある。エネルギー量を高くすることは、多くの電力(およびそれに伴う機械的負担)を増やすことになり、水生生物収容装置の運転コストを高め、環境負荷にも悪影響である問題がある。もちろん、水生生物収容装置が設置されている場所によっては、大きな電力供給を持続させることが難しく、電気分解による浄化能力を上げることについて、困難となることもあり得る。
【0074】
加えて、生物浄化による水の浄化と、電気分解による水の浄化とは、その方法の違いによる精度や効果に違いもあり得る。それぞれにメリットとデメリットがある。特に生物浄化による水の浄化は、微生物であるバクテリアを利用するので、直接的な電力エネルギーを必要としない。また、バクテリアの生存維持がなされれば、永続的かつ繰り返しの浄化を実現できる。このため、生物浄化による水の浄化は、より主体的に利用されることが好ましいと、発明者は解析した。一方で、上述したように、浄化能力の限界に対応することを併せて含むことが、水生生物収容装置においては必要であると、発明者は解析した。
【0075】
このような解析結果に基づいて、発明者は、「消費エネルギーを抑制しつつ十分な汚濁成分を分解する」ために、生物浄化による浄化で対応できる期間においては生物浄化のみ(あるいは主として)で収容容器からの排出水を浄化し、生物浄化のみでは対応できない期間においては、生物浄化と電解浄化とを併用することで排出水を浄化することが、適切であると判断した。この生物浄化のみでの浄化と併用での浄化とを、適切なタイミングで切り替えることが、消費エネルギー抑制にも適切である。
【0076】
しかしながら、
図1を用いて説明したようなアンモニア成分の濃度変化を、収容容器からの排出水で測定することは難しい問題がある。特に、アンモニア濃度をリアルタイムに計測することは難しい。アンモニア濃度の計測は、pHをアルカリ側にして排出水を発色させて、吸光光度計で測定する必要がある。このため、排出水をサンプル抽出して、別の装置に移動させて、試薬投入、反応、計測を行う別ルートの処理が必要となる。この結果、水質浄化装置において、排出水を直接取り扱ってアンモニア濃度を計測できず、別の装置と処理ルートを作る必要がある問題がある。すなわち、装置が大掛かりになったり、コストを増加させたりするからである。
【0077】
加えて、試薬投入に反応時間を確保する必要もあるので、排出水のアンモニア濃度を計測しても、リアルタイム性が悪くなる問題がある。実際の計測結果が出たときのタイミングの排出水は、すでにアンモニア濃度が変化している可能性があるからである。このため、次々と出る排出水のアンモニア濃度を計測して、水質浄化装置での浄化方法を切り替えることは、水生生物収容装置での水生生物の生存にとっては適していない。
【0078】
発明者は、このアンモニア成分の濃度変化を、別のパラメーターからアンモニア成分の濃度変化を推定し、浄化方式の切り替えを行うことを検討した。
【0079】
なお、生物浄化による浄化能力および電気分解による浄化能力は、汚濁成分の分解能力として把握することができる。以下では、そのような把握に基づいて説明できる。
【0080】
以上のような解析および検討に基づいて、発明者は、本発明に至った。
【0081】
(全体概要)
図2は、本発明の実施の形態1における水生生物収容装置用の水質浄化装置のブロック図である。以下、必要に応じて、「水生生物収容装置用の水質浄化装置」を、「水質浄化装置」として、略す。水質浄化装置1は、水生生物収容装置100に用いられる。ここで、水生生物収容装置100は、
図2において、水生生物を収容する収容容器101と、それに必要な要素を含む。
図2では、この範囲を示しているが、厳密に解釈される必要はなく、水生生物を収容する収容容器101とこれに必要となる要素とを、水生生物収容装置100として把握すればよい。
【0082】
また、水質浄化装置1は、この水生生物収容装置100と組み合わされることで、実際の使用となる。輸送機構2や還流機構6などのように、収容容器101との間での水のやり取りを行う要素については、水質浄化装置1および水生生物収容装置100とにまたがっている。このため、これら水質浄化装置1と水生生物収容装置100との間をつなぐ要素については、水質浄化装置1の構成要素と把握されてもよいし、水生生物収容装置100の構成要素と把握されてもよい。水質浄化装置1は、水生生物収容装置100に使用されるので、
図2に示されるように、水生生物収容装置100に組み合わされて使用される。
【0083】
水質浄化装置1は、輸送機構2、生物浄化槽3、電気分解槽4、輸送制御部5、還流機構6、濃度計測部20を備える。
【0084】
輸送機構2は、収容容器101から排出される排出水を輸送する。収容容器101は、水生生物を収容する。また、水生生物を生きた状態で収容するので、水生生物に必要となる水を収容している。このため、収容容器101内部では、水生生物が生体活動を行っており、上述したように、生体活動により汚濁が発生する。すなわち、収容容器101に収容されている水は、汚濁を含んでいる。言い換えれば、収容容器101からの排出水には、汚濁が含まれている。
【0085】
後述するが、汚濁成分はアンモニア成分を含んでいる。このアンモニア成分を分解して浄化し、浄化された浄化水を収容容器101に還流させることを連続することが求められる。
【0086】
輸送機構2は、この排出水を収容容器101から水質浄化装置1に輸送する。収容容器101には排出部102が備わっており、輸送機構2は、この排出部102と接続されている。この排出部102から排出される排出水を、排出部102に接続される輸送機構2が、水質浄化装置1に輸送する。この輸送は、連続的であってもよいし、断続的であってもよい。輸送機構2は、排出水を輸送する管路や、この輸送を促進する圧力ポンプなどを備えている。
【0087】
生物浄化槽3は、排出水を、生物学的に浄化する。バクテリアなどの微生物の生体活動により、排出水に含まれる汚濁を浄化もしくは分解する。生物浄化槽3で使用される微生物の種類や数は、水生生物の汚濁の種類によって、あるいは汚濁の濃度によって、適宜定められれば良い。生物浄化槽3は、このような微生物の活動に基づいて、排出水の汚濁を浄化もしくは分解して、排出水を浄化する。
【0088】
また、輸送機構2は、収容容器101からの排出水を生物浄化槽3に輸送する。後述するが、輸送機構2は、基本的に、排出水を常に生物浄化槽3に輸送する。すなわち、生物浄化槽3には、常に排出水が供給され、生物浄化槽3は、排出水を常に浄化している状態にある。
【0089】
電気分解槽4は、輸送機構2から輸送される排出水および生物浄化槽3から排出される水の少なくとも一部が供給される。すなわち、電気分解槽4には、収容容器101から排出される排出水の少なくとも一部が、供給される。あるいは、電気分解槽4には、生物浄化槽3からの水の少なくとも一部が供給される。すなわち、2つのルートからの水が供給される。
【0090】
このように、電気分解槽4には、いずれかのルートの少なくとも一部の水が供給される。後述する輸送制御部5での働きによって、電気分解槽4には、排出水の少なくとも一部が供給されるので、状況によっては、排出水(生物浄化槽3からの水も含めて)が、供給される状態と、まったく供給されない状態とがあり得る。
【0091】
電気分解槽4は、供給される排出水を電気分解によって浄化する。具体的には、排出水に含まれる汚濁を、塩素を含む排出水が電気分解される段階で発生する次亜塩素酸が浄化する。この汚濁の分解により、排出水が浄化される。もちろん、生物浄化槽3から供給される水も、電気分解によって浄化される。
【0092】
ここで、電気分解槽4は、電気分解により汚濁を分解する。このため、電気分解においては、電力エネルギーを必要とする。このため、電気分解槽4での浄化する排出水の量や時間を増加させると、電力エネルギーの消費量が増加する問題がある。増加することは、コストや環境負荷の面で好ましくない。
【0093】
濃度計測部20は、排出水中の溶存酸素濃度を計測する。排出水は、水生生物が活動している収容容器101から排出される。収容容器101においては、水生生物が活動しており、活動の結果、溶存酸素濃度が変化していく。水生生物は、当然に収容容器101内部で呼吸しているので、収容容器101に収容されている水に溶け込んでいる溶存酸素を消費していく。水生生物の通常の活動は、排せつなども含んでいるので、溶存酸素を消費するのに合わせて、汚濁の主成分であるアンモニア成分が増えていく。
【0094】
また、収容容器101には、水生生物に定期的にえさが与えられる。餌が与えられることで、水生生物の生体活動を持続させるためである。この餌が与えられると、水生生物はこれを食す。食した結果、消化活動も開始する。この消化活動によって、溶存酸素を消費する。さらには、消化に続く排せつなどで溶存酸素を消費する。
【0095】
ここで、上述のような通常の生体活動、餌を食する活動、食した餌を消化する活動、消化によって排せつ等を行う活動などにより、溶存酸素濃度が減少する。これと併せて、このような活動によって、汚濁であるアンモニア成分が増加していく。生体活動による呼吸や排せつに対応して、アンモニア成分が増加するからである。すなわち、アンモニア成分の増加と溶存酸素濃度の減少とは逆相関関係を有している。
【0096】
濃度計測部20は、溶存酸素濃度を計測することで、アンモニア成分濃度を推測することができる。すなわち、濃度計測部20で計測される溶存酸素濃度により、排出水(すなわち収容容器101内部の水)におけるアンモニア成分の濃度を推測できる。濃度計測部20は、この計測結果である濃度結果を、輸送制御部5に出力する。
【0097】
輸送制御部5は、濃度計測部20での濃度結果に基づいて、生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれへの水の流量を制御する。より具体的には、輸送制御部5は、濃度結果に基づいて、収容容器101からの排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送させる、あるいは排出水を生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれに輸送させることを選択する。
【0098】
発明者の解析で説明したように、排出水の十分な浄化をしつつ消費エネルギーを抑制するには、生物浄化槽3での浄化で十分な状態では生物浄化槽3のみで排出水を浄化し、生物浄化槽3では不足となる状態では生物浄化槽3と電気分解槽4とで並列して浄化することが好適である。
【0099】
このため、濃度結果に基づいて、生物浄化槽3のみに排出水の略全量を輸送させる場合と、生物浄化槽3および電気分解槽4との両方に排出水を輸送させる場合とを、輸送制御部5が制御する。既述したように、排出水のアンモニア成分濃度を直接的に計測することは難しい。これに対して、溶存酸素濃度を計測することは容易である。計測される溶存酸素濃度の濃度結果は、アンモニア成分濃度と逆相関関係を有している。この逆相関関係をベースにして、輸送制御部5は、濃度結果に基づいて、排出水の輸送先を選択する。
【0100】
生物浄化槽3で浄化されることで、排出水は浄化されて生物浄化水が得られる。同様に、電気分解槽4で排出水は電気分解されて浄化され、分解浄化水が得られる。生物浄化槽3は、浄化後に、生物浄化水を出力する。電気分解槽4は、浄化後に、電解浄化水を出力する。還流機構6は、これらの生物浄化水および電解浄化水を、収容容器101に還流させる。すなわち、収容容器101から排出された汚濁を含む排出水を、浄化した後の浄化水を、収容容器101に還流させる。これにより、水生生物を収容する収容容器101内部の水は、清浄状態が保たれる。
【0101】
還流機構6によって、生物浄化槽3および電気分解槽4によって浄化されて得られる浄化水は、再び収容容器101に送り戻される。戻されることにより、浄化された水が、収容容器101に再供給される。こうして、収容容器101には、恒常的に浄化水が供給されて水生生物の生体活動や生存が維持される。
【0102】
特に、水生生物収容装置100が輸送機器に備えられる場合には、水生生物に必要となる水(例えば海水)を、収容容器101に適宜供給できるのは難しい。このような場合でも、水質浄化装置1によって浄化された水が次々と還流するシステムであることは便利である。
【0103】
もちろん、飲食店や養殖施設で据え置きされる水生生物収容装置100であっても、水生生物の生体活動に必要となる水を常に供給することは難しいこともある。海水であれば、水生生物の種類や漁獲地に適した海水を、頻繁に輸送して供給することは難しいからである。このような場合でも、水質浄化装置1により、排出水が次々と浄化されて収容容器101に還流することは便利である。水生生物の生体活動や生存維持において、必要となる水を、恒常的に供給できるからである。
【0104】
この還流させる浄化水を生成するプロセスにおいて、十分な浄化レベルの維持と消費エネルギーとのバランスを最適に撮ることができる。
【0105】
このように、実施の形態1における水質浄化装置1は、溶存酸素濃度に基づいて、浄化能力と消費エネルギーとのバランスを有した排出水の浄化を実現できる。
【0106】
(溶存酸素濃度とアンモニア成分濃度)
図3は、溶存酸素濃度とアンモニア成分濃度との逆相関関係を示すグラフである。上述したように、収容容器101に収容されている水生生物の種々の生体活動に伴って、溶存酸素が消費されていく。この消費に従って、アンモニア成分濃度は高まっていく。生体活動が活発になれば当然に溶存酸素が消費されて、溶存酸素濃度は下がっていく。一方で、生体活動が活発になれば(あるいは積分的に進んでいけば)、水生生物からの排せつなどによりアンモニア成分濃度は高まっていく。
【0107】
このように、溶存酸素濃度が下がればアンモニア成分濃度が高まる(逆も然り)との逆相関関係を有している。このため、
図3のようなグラフの関係を有するようになる。溶存酸素濃度が下がってくるとアンモニア成分濃度が高まり、浄化された浄化水が収容容器101に還流していくと溶存酸素濃度が高まっていきアンモニア成分濃度が下がっていく関係である。
【0108】
アンモニア成分濃度を直接的に測定することは、装置が大掛かりとなったりコスト増になったりして困難である。加えて、計測のリアルタイム性も悪い(発明者の解析において説明した通りである)。これに対して、溶存酸素濃度の測定は容易である。
【0109】
例えば、溶存酸素濃度の計測には、隔膜電極法を利用するセンサーデバイスや蛍光法を利用するセンサーデバイスをもちいることができる。
【0110】
隔膜電極法を利用するセンサーデバイスの場合には、これが排出水の中に漬けられると、デバイスを構成する電極間を電気が通電する。この通電での電流値は、溶存酸素濃度により変化するので、電流値の測定により溶存酸素濃度を計測することができる。電流値からの溶存酸素濃度の計測であるので、排出水の溶存酸素濃度は、高いリアルタイム性をもって計測される。
【0111】
蛍光法を利用するセンサーデバイスでは、青色LED(発光ダイオード)の光で励起された蛍光物質より発せられる蛍光が、透過してきた酸素により消光(クエンチング)される現象を利用して溶存酸素濃度が計測される。すなわち、溶存酸素濃度が高いほど消光現象が強くなるため検出器(受光ダイオード)で検出される蛍光が少なくなる。この変化に基づいて、溶存酸素濃度を計測することができる。
【0112】
このような蛍光法を利用するセンサーデバイスが用いられる場合も、高いリアルタイム性により、溶存酸素濃度を計測することができる。これら以外の方法がもちいられてもよい。また、いずれの方法でも、溶存酸素濃度が計測されれば、これと逆相関を持つアンモニア濃度を高い精度で推定して、水質浄化装置1での排出水の輸送先の切り替えにつなげることができる。
【0113】
このように、濃度計測部20は、溶存酸素濃度を計測して、輸送制御部5に出力する。
【0114】
(輸送制御部での制御)
輸送制御部5は、濃度結果に基づいて、収容容器101からの排出水を生物浄化槽3のみ、もしくは生物浄化槽3と電気分解槽4の両方に輸送させる。
図4は、本発明の実施の形態1における濃度計測部での濃度結果を示すグラフである。収容容器101からの排出水の溶存酸素濃度を計測すると、
図4のグラフのようになる。
【0115】
収容容器101での水生生物の生体活動に伴い溶存酸素濃度が下がっていく。水質浄化装置1での浄化水が還流することで(浄化水に酸素供給部110で酸素が溶存させられてから還流することで)、収容容器101内部の水の溶存酸素濃度は再び上がっていく。排出水は、収容容器101内部の水と同等の状態であるから、排出水の溶存酸素濃度を計測すれば、収容容器101内部の水の溶存酸素濃度を計測していることと同様である。
【0116】
図4では、溶存酸素濃度の濃度結果において、所定値のラインを示している。所定値は、溶存酸素濃度がある基準に達しており、これは汚濁成分であるアンモニア成分濃度が基準を超えるレベルとなることを示している。この所定値未満となると、アンモニア成分濃度が高くなって、生物浄化槽3のみの浄化だけでは不十分となる。
【0117】
所定値は、このように生物浄化槽3のみでの浄化で充分であるのか、不十分であるのかを判断する基準値である。所定値は、収容容器101の容量、水生生物の種類や数、生物浄化槽3および電気分解槽4の浄化能力などによって適宜定められれば良い。また、変更されてもよいし、使用されながら変化させられてもよい。
【0118】
輸送制御部5は、濃度結果が所定値以上の場合には、収容容器101からの排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送させる。濃度結果である溶存酸素濃度が所定値以上である場合には、汚濁レベルがまだ高くなりすぎておらず、生物浄化槽3のみで十分に浄化できるからである。輸送制御部5は、輸送機構2の管路を制御することで(例えば、弁の切り替えなどで)、収容容器101からの排出水の略全量を、生物浄化槽3に輸送させる。
図4に示されるように、濃度結果が所定値以上の期間では、輸送制御部5は排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送する。この輸送により、排出水の略全量は、生物浄化槽3においてそのアンモニア成分の分解が行われて浄化が行われる。浄化されると、生物浄化槽3から生物浄化水が出力されて、還流機構6によって収容容器101に還流する。この還流の過程で、酸素供給部110により生物浄化水に酸素が供給される。酸素が溶存させられて、溶存酸素濃度が高まった生物浄化水が、収容容器101に還流する。
【0119】
一方、輸送制御部5は、濃度結果が所定値未満の場合には、収容容器101からの排出水を、生物浄化槽3および電気分解槽4の両方に輸送させる。
図4には、この両方への輸送期間が示されている。
【0120】
濃度結果が所定値未満ということは、アンモニア成分濃度がかなり高まっていることを示している。特に、生物浄化槽3のみでは浄化が不十分となりえる状態であることを示している。このため、輸送制御部5は、濃度結果が所定値未満の場合には、収容容器101からの排出水を、生物浄化槽3および電気分解槽4の両方に輸送させる。
【0121】
ここで、輸送制御部5は、生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれへの流量も制御することもよい。流量を制御することで、生物浄化槽3の浄化能力を超えることを防止しつつ、浄化能力を超える量の排出水を電気分解槽4に輸送させる。浄化能力を超える量だけを電気分解槽4に輸送するので、電気分解槽4の消費エネルギーを最小限に抑制できる。
【0122】
例えば、生物浄化槽3で浄化可能な量の排出水を生物浄化槽3に輸送し、残りの量の排出水を、電気分解槽4に輸送する。輸送制御部5は、このように輸送先に加えて、輸送先への水量も制御する。あるいは、生物浄化槽3で浄化可能な量よりも少ない量の排出水を生物浄化槽3に輸送し、残量を電気分解槽4に輸送することでもよい。あるいは、排出水を所定割合に分けて、ある割合を生物浄化槽3に輸送し、残りの割合の排出水を電気分解槽4に輸送することでもよい。
【0123】
このような輸送制御部5による輸送先と水量の制御によって、浄化能力を超える量を電気分解槽4に輸送して、電気分解槽4の消費エネルギーを最小限に抑制できる。
【0124】
(排出水)
排出水は、収容容器101から排出される。この排出水は、収容容器101で生体活動を営んでいる水生生物に由来する汚濁を含んでいる。汚濁は、水生生物の通常の生体活動、排せつ、排卵、餌を食することによる消化活動などにより生じる。
【0125】
水生生物収容装置100が、水生生物を生きたまま収容して保管や運搬することで、収容容器101において、水生生物由来の汚濁は必ず発生する。このため、排出水は、この汚濁を含んでいる。
【0126】
図5は、本発明の実施の形態1における収容容器の模式図である。水生生物収容装置100を構成する要素である収容容器101を、模式的に示している。収容容器101は、内部に水生生物を収容する。
図5では、一例としてイカ類200が収容されている。当然に、収容容器100には、イカ類200の生体活動に必要な水が収容されている。また、イカ類200の生体活動に必要な餌なども供給される。
【0127】
イカ類200は、この餌を食すことで、排泄物を出したりする。また、体液などの分泌物を出したり、排卵による卵を排出したりする。さらに、生体活動を通じて、種々の排出物を出す。これらの排出物が相まって、水生生物に由来する汚濁が、収容容器101内部にたまっていく。
【0128】
収容容器101は、排出部102を備えている。収容容器101は、蓋103を備えており、内部を密閉状態とできる。この密閉状態において、還流機構6を介して、浄化された浄化水(あるいは別ルートから供給される新しい水)が、収容容器101内部に供給される。供給口104から、これら浄化水などが供給される。
【0129】
蓋103によって密閉されていることで、浄化水などが供給され続けると、収容容器101においては水があふれる状態となる。このあふれる水は、排出部102からあふれ出す。このあふれ出しによって、余分な量の水が輸送機構2に排出される。これが、排出水となって、水質浄化装置1に輸送される。
【0130】
この排出水は、上述の水生生物由来の汚濁を含んでいる。汚濁成分は、その種類によっては、収容容器101の上方に移動しやすく、上方にある排出部102から余分な水があふれ出るのに合わせて、汚濁を含んだ排出水が、輸送機構2に排出されるようになる。もちろん、密閉による水のあふれ出し以外の、ポンプなどでの吸引で排出水が排出されることでもよい。
【0131】
この排出水が、上述のように汚濁を含んでおり、汚濁を含んだ排出水が、生物浄化槽3および電気分解槽4に輸送される生物浄化槽3および電気分解槽4は、この汚濁を浄化もしくは分解する。
【0132】
ここで、濃度計測部20で計測される溶存酸素濃度の濃度結果は、収容容器101の水におけるアンモニア成分濃度の増加に関連する。関連することで、
図3、
図4を用いて説明した処理が実現される。
【0133】
(生物浄化槽および電気分解槽での浄化)
【0134】
生物浄化槽3は、微生物の生体活動によって、この排出水に含まれる汚濁を分解する。電気分解槽4は、電気分解の作用によって、この排出水に含まれる汚濁を分解する。
【0135】
汚濁は、アンモニア成分を含む。もちろん、他の成分も含んでいる。生物浄化槽3は、微生物によりアンモニア成分を分解する。電気分解槽4は、電気分解による次亜塩素酸の発生により、アンモニア成分を分解する。
【0136】
生物浄化槽3は、水生生物由来の汚濁の種類や量などに適した微生物を収容している。あるいは、水生生物の種類や特徴に適した微生物を収容している。この選択された微生物の生体活動によって、アンモニア成分を分解する。アンモニア成分の分解を通じて、生物浄化槽3は、供給された排出水の汚濁を浄化する。浄化によって、浄化された後の生物浄化水を、出力する。この生物浄化水が、還流機構6によって収容容器101に還流される。
【0137】
ここで、生物浄化槽3に含まれる微生物は、アンモニア成分を分解する第1微生物群と、アンモニア成分が分解されて生じる亜硝酸を分解する第2微生物群を含んでいる。第1微生物群と第2微生物群は、それぞれの役割が異なる。
【0138】
第1微生物群がアンモニア成分を分解して亜硝酸に変化させる。第2微生物群は、亜硝酸を分解する。これらの2段階での分解の結果、アンモニア成分は無害な成分に変化させられる。このようにして、生物浄化槽3は、汚濁を浄化して、浄化された後の生物浄化水を得る。これが、収容容器101に還流することで、収容容器101には、水生生物が生活するのに適した浄化水が供給され続けるようになる。
【0139】
電気分解槽4は、次亜塩素酸が発生した状態で、アンモニア成分を分解する。水質浄化装置1において、電気分解槽4は、海水中に含まれる塩素を電気分解に利用し、これにより次亜塩素酸が発生する。この次亜塩素酸によって、汚濁が浄化される。
【0140】
次亜塩素酸の発生を利用して、電気分解槽4は、アンモニア成分を分解する。この分解により汚濁を浄化する。この浄化によって、浄化された後の電解浄化水を生成して、還流機構6を通じて、浄化された水を収容容器101に還流させることができる。
【0141】
生物浄化水と同様に、一度汚濁された後の排出水は、浄化された電解浄化水に変化させられて、水生生物が生活するのに適した浄化水が供給されるようになる。
【0142】
このように、生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれは、異なるメカニズムで、アンモニア成分を分解する。このアンモニア成分の分解を通じて、汚濁を分解して排出水を浄化する。
【0143】
電気分解槽4には、常に排出水が供給されるわけではなく、ある場合において、排出水が供給される。この供給される場合のみ、電気分解槽4は、電気分解を実行すればよい。このため、例えば、輸送制御部5は、電気分解槽4に排出水を供給(輸送)する場合に、電気分解槽4の電気分解の電力起動を行わせることも好適である。電気分解槽4での電気分解が必要な状態においてのみ、電気分解槽4では電力エネルギーを消費するようになる。結果として、水質浄化装置1での電力消費量を低減できる。
【0144】
生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれからの浄化された後の水が、収容容器101に供給され続けることで、水生生物収容装置100は、水生生物の生体活動を維持できる。特に、収容容器101に収容されていた水を、汚濁から浄化までを循環させることで、収容容器101に外部から水を供給することが難しい状態でも、水生生物の生活を維持させることができる。
【0145】
例えば、水生生物収容装置100が、トラックなどの輸送機器に備えられて輸送に用いられる場合には、水生生物に必要となる海水などが適宜供給されることは難しい。あるいは、生け簀などとして飲食店などに設置されている場合でも、水生生物に必要となる海水などが、適宜供給されることは難しい。このような場合でも、水質浄化装置1によって、最初に収容容器101に収容されていた水が浄化されて還流するサイクルが続けられる。これにより、新たな海水などの供給を続けることを低減して、水生生物収容装置100での、水生生物の健康的に生きた状態を維持させることができる。
【0146】
なお、電気分解槽4には、収容容器101からの排出水だけでなく、生物浄化槽3からの水も供給されることがある。この場合には、生物浄化槽3での処理を超える水あるいは生物浄化槽3で微生物による分解を経た生物浄化水が、電気分解槽4に供給される。この供給により、電気分解槽4は、生物浄化槽3からの水も、電気分解により浄化する。
【0147】
(活性炭槽)
図6は、本発明の実施の形態1における水質浄化装置のブロック図である。
図6の水質浄化装置1は、活性炭槽8を備えている。活性炭槽8は、電気分解槽4で発生する次亜塩素酸を除去する。このため、電気分解槽4からの出力の先に備わっている。電気分解槽4では、電気分解の過程で、次亜塩素酸を発生させる。この次亜塩素酸が利用されて、電気分解槽4では、アンモニア成分などの汚濁が分解されて浄化される。
【0148】
この浄化により、電気分解槽4は、浄化後の電解浄化水を出力する。しかし、この出力される電解浄化水は、電気分解槽4から出力された次亜塩素酸を含んだまままの状態である。活性炭槽8は、電気分解槽4の出力の先に備わるので、電気分解槽4から出力される電解浄化水は、活性炭槽8を経由する。
【0149】
活性炭槽8は、活性炭を備えている。この活性炭は、電解浄化水に含まれる次亜塩素酸を還元する。この還元により、活性炭槽8は、電解浄化水から次亜塩素酸を除去できる。
【0150】
この除去によって、最終的に還流機構6から収容容器101に還流される電解浄化水は、次亜塩素酸をほとんど含まない状態となって還流する。これにより、収容容器101には、浄化されていることに加えて、次亜塩素酸も除去された、水生生物の生活により適した水が、循環しつつ供給されることになる。
【0151】
(酸素供給部)
また、水質浄化装置1は、
図6に示されるように、酸素供給部110を備えていることも好適である。酸素供給部110は、水質浄化装置1に含まれる要素として把握されてもよいし、水生生物収容装置100に含まれる要素として把握されてもよい。
【0152】
酸素供給部110は、生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれで浄化された、生物浄化水および電解浄化水が、収容容器101に還流する過程で、これらの浄化水に酸素を溶存させる。浄化されて還流する浄化水は、この酸素供給部110による酸素の供給を受けて、酸素濃度を高めて収容容器101に還流する。
【0153】
収容容器101には、水生生物が収容されている。水生生物の生体活動により、収容容器101内部の水の溶存酸素は減少している。この溶存酸素が減少した後の状態で、排出水が浄化される。このため、浄化されて汚濁成分が減少していても、溶存酸素の濃度は下がったままである。
【0154】
この浄化水に、酸素供給部110が、酸素を溶存させることで、収容容器101に還流する水の溶存酸素濃度は、適切なレベルに復帰できる。浄化と合わせて、溶存酸素濃度も復帰することで、水質浄化装置1を循環した水は、収容容器101にて再び水生生物の生体活動のために使用可能となる。
【0155】
これらの結果、水生生物の生存に必要となる水が、外部から十分に供給できない環境であっても、水の浄化を繰り返して循環させることで、収容容器101での水生生物の生体活動を維持して保管を実現できる。
【0156】
以上のように、実施の形態1における水質浄化装置1は、溶存酸素濃度を計測することで、直接的に計測しにくいアンモニア成分の濃度増加を検出して、最適な方法で排出水を浄化できる。特に、濃度結果に基づき、生物浄化槽3のみであるか、生物浄化槽3と電気分解槽4の両方を使用するかを切り替えることで、消費エネルギーの節減と確実な浄化とのバランスを実現できる。
【0157】
(実施の形態2)
【0158】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、排出水を生物浄化槽3のみから、生物浄化槽3と電気分解槽4の両方に排出水を輸送するように切り替えるタイミングの、種々のバリエーションについて説明する。
【0159】
(その1:濃度悔過が所定値未満となった第1タイミングでの切り替え)
図7は、本発明の実施の形態2における排出水の輸送先の切り替えを示す模式図である。
図7においては、輸送制御部5は、濃度計測部20で計測される溶存酸素濃度の濃度結果が、所定値未満となった第1タイミングを切り替えのタイミングとしている。
【0160】
濃度結果が第1タイミングとなるまでは、輸送制御部5は、収容容器101からの排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送する。輸送制御部5は、第1タイミングとなったところで、収容容器101からの排出水を、生物浄化槽3と電気分解槽4の両方に(それぞれに)輸送する。
【0161】
このように、濃度結果が所定値未満ということは、
図4でも説明した通り、汚濁の中心であるアンモニア成分が所定値を超えたことを示している。アンモニア濃度を直接的に測定するのは難しいが、溶存酸素濃度の計測から、アンモニア濃度を間接的に測定できる。これを利用して、濃度計測部20での溶存酸素濃度を計測した濃度結果から、排出水の浄化の能力を考慮して、輸送先を両方にすることができる。
【0162】
この第1タイミングで輸送制御部5が、排出水の輸送先を生物浄化槽3と電気分解槽4との両方とにすることで、アンモニア濃度が高まって、生物浄化槽3の浄化能力を超える汚濁状態の排出水を、電気分解槽4も用いて浄化することができるようになる。これが、自動的に切り替わることで、汚濁レベルに適した輸送先の切り替えができる。
【0163】
汚濁レベルが一定以下であれば、消費エネルギーを抑えることのできる生物浄化槽3のみで排出水を浄化する。汚濁レベルが一定を超えれば、生物浄化槽3と電気分解槽4との両方で排出水を浄化する。これにより、高い汚濁レベルの排出水に対しても、十分な浄化を実現できる。加えて、全体として消費エネルギーを抑制することもできる。結果として、汚濁の浄化と消費エネルギーの抑制とのバランスを実現できる。
【0164】
(その2:第1タイミングより後の第2タイミングでの切り替え)
図8は、本発明の実施の形態2における排出水の輸送先の切り替えを示す模式図である。
図8では、
図7で説明した第1タイミングから所定時間経過した第2タイミングで、収容容器101からの排出水を、生物浄化槽3および電気分解槽4の両方に輸送させる。すなわち、第2タイミングまでは、輸送制御部5は、排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送する。第2タイミングとなると、輸送制御部5は、収容容器101からの排出水を、生物浄化槽3と電気分解槽4の両方に輸送するように切り替える。
【0165】
第1タイミングよりも所定時間経過した後の第2タイミングで切り替えることで、生物浄化槽3での浄化能力を十分に活用しつつ、電力エネルギーを消費する電気分解槽4の動作時間をなるべく節減することができる。結果として、消費エネルギーの抑制をより強めることができる。
【0166】
また、濃度結果が所定値未満となっても、溶存酸素濃度からアンモニア濃度を推定することとのずれがある場合もある。このため、溶存酸素濃度を示す濃度結果が所定値未満となってから、所定時間後の第2タイミングのほうが、アンモニア濃度が所定値以上であると判断することが好ましい場合もありえる。
【0167】
このような状況を鑑みて、第1タイミングから所定時間経過した第2タイミングで、輸送制御部5は、排出水の輸送先を切り替えることも好適である。
【0168】
また、第1タイミングから第2タイミングまでの時間量(所定時間経過する所定時間)は、収容容器101に収容されている水生生物の種類および水生生物の食餌から消化開始までの時間の少なくとも一方に基づいて定められることも好適である。
【0169】
溶存酸素濃度である濃度結果が、所定値未満となる第1タイミングから、輸送先を切り替えるべき第2タイミングまでの時間量は、水生生物の種類によって変化しうる。時間量は、溶存酸素濃度と実際の汚濁であるアンモニア成分濃度との逆相関関係のずれを吸収する。このため、この時間量は、水生生物の種類によって定められることが好適である。あるいは、水生生物の食餌から消化開始までの時間に基づいて、時間量が定められてもよい。もちろん、種類および消化開始までの時間の両方に基づいてもよい。
【0170】
このように、水生生物の特性を溶存酸素濃度の濃度結果に合わせた第2タイミングを基準とすることで、より適切なタイミングで、排出水の輸送先を切り替えることができる。
【0171】
(その3:餌の投入時刻に基づく切り替え)
図9は、本発明の実施の形態2における排出水の輸送先の切り替えを示す模式図である。
図9では、収容容器101に水生生物用の餌を投入する投入時刻と、水生生物の種類によって定まる消化開始時刻の算出結果に基づいて、輸送先の切り替えタイミングを設定する。
【0172】
収容容器101に餌を投入した投入時刻は把握できる。餌が投入されると、水生生物は、これを食べる。食べると、食べ始めてからある時間経過後に水生生物は消化活動を開始する。消化を行うと、活動が活発になりさらに排せつも始まる。これにより、収容容器101内部の水のアンモニア成分濃度が上がっていく。
【0173】
餌の投入時刻から、消化開始までの時間量は、水生生物の種類によって逆相関関係を有している。このため、投入時刻に基づいて、消化開始時刻を算出することは可能である。例えば、水生生物がイカ類である場合、サバ類である場合などに応じて、消化開始時刻を算出できる。
【0174】
この消化開始時刻は、上述の通り、収容容器101内部の水の汚濁レベル(アンモニア成分濃度)の増加を示す。このことに基づいて、輸送制御部5は、この消化開始時刻に基づいて、排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送する、あるいは排出水を生物浄化槽3と電気分解槽4のそれぞれに輸送することを選択する。
【0175】
図9のように、輸送制御部5は、消化開始時刻までは、排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送させる。消化開始時刻までは、排出水を生物浄化槽3および電気分解槽4のそれぞれに輸送させる。
【0176】
これにより、消化開始時刻以降の汚濁濃度の増加に対応して、十分な排出水の浄化を実現できる。
【0177】
図10は、本発明の実施の形態2における排出水の輸送先の切り替えを示す模式図である。
図10は、消化開始時刻から所定時間を経過した第3タイミングで、輸送先を切り替えるバリエーションである。
【0178】
輸送制御部は、
図9のように、消化開始時刻までは、排出水の略全量を生物浄化槽3へ輸送し、消化開始時刻以降は、排出水を生物浄化槽3と電気分解槽4とに輸送することでもよい。
【0179】
これに対して、
図10のように消化開始時刻から所定時間経過した第3タイミングを基準としてもよい。この第3タイミングまでは、排出水の略全量を生物浄化槽3に輸送し、第3タイミング以降は、排出水を生物浄化槽3と電気分解槽4との両方に輸送させる。この第3タイミングを基準とすることで、消化活動によるアンモニア濃度の高まりに、より適切に対応でき、かつ電気分解槽4の動作時間を短縮して、消費エネルギーを抑制できるようになる。
【0180】
図10のような第3タイミングを基準とすることで、汚濁濃度の高まりにより合わせた浄化を実現しつつ、水質浄化装置1全体での消費エネルギーのさらなる抑制を実現できる。
【0181】
(輸送機器における適用)
図11は、本発明の実施の形態2における輸送機器に水生生物収容装置が備わっている模式図である。実施の形態1、2で説明した水質浄化装置1およびこれと接続する水生生物収容装置100とが、輸送機器300に積載されている。輸送機器300は、例えば、トラックや活魚輸送車などである。もちろん、船舶や鉄道車両であってもよい。
【0182】
このような輸送機器300によって水生生物が生きた状態で輸送される必要性は、多々ある。漁獲地から消費地へ輸送する必要だったり、ある保管地区から消費される店舗などに輸送される場合だったりである。
図11では、水生生物としてイカ類200が収容されている。輸送先において生きたまま必要となることで、生きたイカ類200が、水生生物収容装置100に収容されている。この状態で、輸送機器300によって輸送される。
【0183】
また、輸送機器300で輸送されることで、水生生物収容装置100には、外部から必要となる海水などを供給し続けることが困難である。このため、水生生物収容装置100の収容容器101に、最初に供給された海水などを、浄化しながら繰り返し使用することが求められる。
【0184】
輸送機器300には、実施の形態1、2で説明した水質浄化装置1が一緒に積載されている。水質浄化装置1は、輸送機構2と還流機構6とによって、水生生物収容装置100と接続されている。この接続は、水の循環のやり取りを実現する。
【0185】
水質浄化装置1は、実施の形態1、2で説明した通り、水生生物収容装置100からの排出水を浄化して還流させる。この循環により、輸送機器300に積載されて輸送される場合に、外部からの海水などの供給が難しくても、水生生物を生かしたまま輸送できる。水生生物収容装置100および水質浄化装置1は、実施の形態1、2で説明したような動作を行う。これらの結果、外部からの水の供給が難しい輸送においても、水生生物の生体活動を維持することができる。
【0186】
なお、実施の形態1~2で説明された水質浄化装置1は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0187】
1 水質浄化装置
2 輸送機構
3 生物浄化槽
4 電気分解槽
5 輸送制御部
6 還流機構
8 活性炭槽
9 計測部
10 電気分解槽制御部
11 輸送路
20 濃度計測部
100 水生生物収容装置
101 収容容器
102 排出部
103 蓋
104 供給口