(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エアロゾル生成材料の特性の特定
(51)【国際特許分類】
A24F 40/50 20200101AFI20240110BHJP
A24F 40/465 20200101ALI20240110BHJP
【FI】
A24F40/50
A24F40/465
(21)【出願番号】P 2021510939
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019073263
(87)【国際公開番号】W WO2020043904
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-20
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nicoventures Trading Limited
【住所又は居所原語表記】Globe House, 1 Water Street,WC2R 3LA London,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】コーラス, アントン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】モロニー, パトリック
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/129845(WO,A1)
【文献】特表2014-501105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/50
A24F 40/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル生成デバイスのエアロゾル生成材料の特性を特定するための装置であって、前記エアロゾル生成デバイスは、使用中の前記エアロゾル生成材料を加熱するための加熱器を備え、前記装置は、
前記エアロゾル生成材料の前記加熱の第1の性質を監視し、以て前記エアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定し、
前記エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の加熱に対応する前記加熱プロファイルの特徴を識別するために前記加熱プロファイルを分析し、
前記識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、前記エアロゾル生成材料の前記特性を特定する
ように構成され、
前記特性は、前記エアロゾル生成材料の温度、もしくは、前記エアロゾル生成材料の前記成分のうちの1つ又は複数の気化のエンドポイントを含む、
装置。
【請求項2】
前記装置は、前記エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化に対応する前記加熱プロファイルの特徴を識別するために前記加熱プロファイルを分析するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の性質は、前記エアロゾル生成材料の温度に関係付けることができる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記加熱器は、使用中の前記エアロゾル生成材料を誘導加熱するための誘導加熱器であり、前記装置は、前記エアロゾル生成材料の前記誘導加熱の第1の性質を監視し、以て前記エアロゾル生成材料の前記加熱プロファイルを特定するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の性質は、前記誘導加熱器の性質を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の性質は、前記誘導加熱器のサセプタの温度を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の性質は、前記誘導加熱器の電気的性質を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記電気的性質は、前記誘導加熱器のインダクタに供給される電流を示す性質を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の性質は、前記誘導加熱器の共振駆動回路の周波数特性を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記周波数特性は、前記共振駆動回路の共振周波数を含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記誘導加熱は、実質的に一定の誘導加熱電力を有する、請求項4~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、
前記第1の性質の変化率を特定し、
前記第1の性質の前記特定された変化率に基づいて前記加熱プロファイルの前記1つ又は複数の特徴を識別する
ように構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記1つ又は複数の特徴は、前記第1の性質が実質的に一定のままである、前記加熱プロファイルの一部分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記1つ又は複数の特徴は、前記第1の性質が実質的に一定のままである前記加熱プロファイルの第1の部分の直後に前記第1の性質が変化する、前記加熱プロファイルの第2の部分を含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は、
前記1つ又は複数の特定された特性に基づいて前記加熱器を制御する
ように構成される、請求項1~
14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、
前記特定された特性に基づいて、前記エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化のエンドポイントに到達したと判断し、
前記エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化のエンドポイントに到達したという前記判断に応答して、前記加熱器を制御する
ように構成される、請求項
15に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、
前記エアロゾル生成材料を、所定の量、更に加熱するように前記加熱器を制御する
ように構成される、請求項
16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、
前記エアロゾル生成材料への所定の量のエネルギーの供給を制御する
ように構成される、請求項
17に記載の装置。
【請求項19】
前記装置は、
前記特定された特性に基づいてユーザに情報を提示する
ように構成される、請求項1~
18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、
前記特定された特性に基づいて、前記エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分に関する情報をユーザに提示する
ように構成される、請求項
19に記載の装置。
【請求項21】
前記装置は、
前記特定された特性に基づいて、前記デバイスを動作させている環境に関する情報をユーザに提示する
ように構成される、請求項
18又は
19に記載の装置。
【請求項22】
前記エアロゾル生成材料の前記1つ又は複数の成分のうちの1つは液体である、請求項1~
21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
請求項1~
22のいずれか一項に記載の装置と、
前記加熱器と、
を備える、エアロゾル生成デバイス。
【請求項24】
前記加熱器は誘導加熱器であり、前記誘導加熱器は、
インダクタと、
前記インダクタを用いた誘導エネルギー転送のために構成されたサセプタであって、使用中の前記エアロゾル生成デバイス内に受けられた前記エアロゾル生成材料を加熱するように構成される、サセプタと、
を備える、請求項
23に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項25】
前記エアロゾル生成デバイスは前記エアロゾル生成材料を含む、請求項
23又は
24に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項26】
前記加熱器の質量は、前記エアロゾル生成材料の質量よりも低い、請求項
25に記載のエアロゾル生成デバイス。
【請求項27】
エアロゾル生成デバイスのエアロゾル生成材料の特性を特定するための方法であって、前記エアロゾル生成デバイスは、使用中の前記エアロゾル生成材料を加熱するための加熱器を備え、前記方法は、
前記エアロゾル生成材料の前記加熱の第1の性質を監視し、以て前記エアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定するステップと、
前記エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の加熱に対応する前記加熱プロファイルの特徴を識別するために前記加熱プロファイルを分析するステップと、
前記識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、前記エアロゾル生成材料の前記特性を特定するステップと、
を含
み、
前記特性は、前記エアロゾル生成材料の温度、もしくは、前記エアロゾル生成材料の前記成分のうちの1つ又は複数の気化のエンドポイントを含む、
方法。
【請求項28】
プロセッサにおいて実行されると、前記プロセッサに、請求項
27に記載の方法を実行させるプログラム。
【請求項29】
エアロゾル生成材料を含む物品とエアロゾル生成デバイスとを有するエアロゾル生成システムの前記エアロゾル生成材料の特性を特定するための装置であって、前記エアロゾル生成システムは、使用中の前記エアロゾル生成材料を加熱するための誘導加熱器を備え、前記装置は、
前記エアロゾル生成材料の前記加熱の第1の性質を監視し、以て前記エアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定し、
前記加熱プロファイルの1つ又は複数の特徴を識別するために前記加熱プロファイルを分析し、
前記識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、前記エアロゾル生成材料の前記特性を特定する
ように構成され、
前記特性は、前記エアロゾル生成材料の温度、及び/又は、前記エアロゾル生成材料の成分の気化のエンドポイントである、
装置。
【請求項30】
エアロゾル生成材料を含む物品とエアロゾル生成デバイスとを有するエアロゾル生成システムの前記エアロゾル生成材料の特性を特定するための装置であって、前記特性は、前記エアロゾル生成材料の温度であり、前記エアロゾル生成システムは、使用中の前記エアロゾル生成材料を加熱するための加熱器を備え、前記装置は、
前記エアロゾル生成材料の前記加熱の第1の性質を監視し、以て前記エアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定し、
前記第1の性質の変化率を特定し、
前記第1の性質の前記特定された変化率に基づいて前記加熱プロファイルの1つ又は複数の特徴を識別し、
前記識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、前記エアロゾル生成材料の前記特性を特定する
ように構成される、
装置。
【請求項31】
前記第1の性質は、前記エアロゾル生成材料の温度に関係付けることができる、請求項29又は30に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル生成材料の特性を特定すること、より詳細には、エアロゾル生成デバイスのエアロゾル生成材料の特性を特定することに関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻タバコ、葉巻タバコ等の喫煙品は、使用中にタバコを燃焼させ、タバコの煙を発生させる。燃焼なしで化合物を放出する製品を製造することによってこれらの喫煙品に対する代替物を提供する試みが行われてきた。そのような製品の例は、材料を燃焼ではなく加熱することにより化合物を放出する、いわゆる「非燃焼加熱式」製品、又はタバコ加熱デバイス若しくは製品である。材料は、例えば、タバコ又は他の非タバコ製品であり、これらはニコチンを含有する場合もしない場合もある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、エアロゾル生成デバイスのエアロゾル生成材料の特性を特定するための装置が提供され、エアロゾル生成デバイスは、使用中のエアロゾル生成材料を加熱するための加熱器を備え、装置は、エアロゾル生成材料の加熱の第1の性質を監視し、以てエアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定し、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の加熱に対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析し、識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、エアロゾル生成材料の特性を特定するように構成される。
【0004】
任意選択で、装置は、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化に対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析するように構成される。
【0005】
任意選択で、第1の性質は、エアロゾル生成材料の温度に関係付けることができる。
【0006】
任意選択で、加熱器は、使用中のエアロゾル生成材料を誘導加熱するための誘導加熱器であり、装置は、エアロゾル生成材料の誘導加熱の第1の性質を監視し、以てエアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定するように構成される。
【0007】
任意選択で、第1の性質は、誘導加熱器の性質を含む。
【0008】
任意選択で、第1の性質は、誘導加熱器のサセプタの温度を含む。
【0009】
任意選択で、第1の性質は、誘導加熱器の電気的性質を含む。
【0010】
任意選択で、電気的性質は、誘導加熱器のインダクタに供給される電流を示す性質を含む。
【0011】
任意選択で、第1の性質は、誘導加熱器の共振駆動回路の周波数特性を含む。
【0012】
任意選択で、周波数特性は、共振駆動回路の共振周波数を含む。
【0013】
任意選択で、誘導加熱は、実質的に一定の誘導加熱電力を有する。
【0014】
任意選択で、装置は、第1の性質の変化率を特定し、第1の性質の特定された変化率に基づいて加熱プロファイルの1つ又は複数の特徴を識別するように構成される。
【0015】
任意選択で、1つ又は複数の特徴は、第1の性質が実質的に一定のままである、加熱プロファイルの一部分を含む。
【0016】
任意選択で、特性は、エアロゾル生成材料の温度を含む。
【0017】
任意選択で、1つ又は複数の特徴は、第1の性質が実質的に一定のままである加熱プロファイルの第1の部分の直後に第1の性質が変化する、加熱プロファイルの第2の部分を含む。
【0018】
任意選択で、特性は、エアロゾル生成材料の成分の1つ又は複数の気化のエンドポイントを含む。
【0019】
任意選択で、装置は、1つ又は複数の特定された特性に基づいて加熱器を制御するように構成される。
【0020】
任意選択で、装置は、特定された特性に基づいて、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化のエンドポイントに到達したと判断し、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化のエンドポイントに到達したという判断に応答して、加熱器を制御するように構成される。
【0021】
任意選択で、装置は、エアロゾル生成材料を、所定の量、更に加熱するように加熱器を制御するように構成される。
【0022】
任意選択で、装置は、エアロゾル生成材料への所定の量のエネルギーの供給を制御するように構成される。
【0023】
任意選択で、装置は、特定された特性に基づいてユーザに情報を提示するように構成される。
【0024】
任意選択で、装置は、特定された特性に基づいて、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分に関する情報をユーザに提示するように構成される。
【0025】
任意選択で、装置は、特定された特性に基づいて、デバイスを動作させている環境に関する情報をユーザに提示するように構成される。
【0026】
任意選択で、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分のうちの1つは液体である。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による装置と、加熱器とを備える、エアロゾル生成デバイスが提供される。
【0028】
任意選択で、加熱器は誘導加熱器であり、誘導加熱器は、インダクタと、インダクタを用いた誘導エネルギー転送のために構成されたサセプタであって、サセプタは、使用中のエアロゾル生成デバイス内に受けられたエアロゾル生成材料を加熱するように構成される、サセプタとを備える。
【0029】
任意選択で、エアロゾル生成デバイスはエアロゾル生成材料を含む。
【0030】
任意選択で、加熱器の質量は、エアロゾル生成材料の質量よりも低い。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、エアロゾル生成デバイスのエアロゾル生成材料の特性を特定するための方法が提供され、エアロゾル生成デバイスは、使用中のエアロゾル生成材料を加熱するための加熱器を備え、方法は、エアロゾル生成材料の加熱の第1の性質を監視し、以てエアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定するステップと、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の加熱に対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析するステップと、識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、エアロゾル生成材料の特性を特定するステップとを含む。
【0032】
本発明の第4の態様によれば、プロセッサにおいて実行されると、プロセッサに、第3の態様による方法を実行させるプログラムが提供される。
【0033】
更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して単なる例として与えられる以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】一例によるエアロゾル生成デバイスを概略的に示す。
【
図4】一例による誘導加熱性質の変化率のプロットを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
誘導加熱は、電磁誘導によって導電物体(又はサセプタ)を加熱するプロセスである。誘導加熱器は、電磁石等の誘導素子と、電磁石を通じて交流電流等の変動する電流を通過させるための回路部とを備えることができる。電磁石における変動する電流は、変動する磁場を生成する。変動する磁場は、電磁石に対し適切に配置されたサセプタに侵入し、サセプタ内部に渦電流を生成する。サセプタは、渦電流に対し電気抵抗を有し、このため、この抵抗に対する渦電流の流れにより、サセプタがジュール加熱により加熱されることになる。サセプタが、鉄、ニッケル又はコバルト等の強磁性材料を含む場合、熱は、サセプタにおける磁気ヒステリシス損失によって、すなわち、磁性材料を変動する磁場と位置合わせした結果としての磁性材料における磁気双極子の変動する向きによって生成することもできる。
【0036】
誘導加熱では、例えば伝導による加熱と比較して、熱はサセプタ内部で生成され、急速な加熱を可能にする。更に、誘導加熱器とサセプタとの間に物理的接触が存在する必要がなく、構造及び用途の自由度を高めることが可能になる。
【0037】
誘導加熱器は、直列に接続される、抵抗器によって提供される抵抗(R)と、誘導素子、例えば、サセプタを誘導加熱するように構成することができる電磁石によって部分的に提供されるインダクタンス(L)と、コンデンサによって提供されるキャパシタンス(C)とを含むRLC回路を含むことができる。いくつかの場合、抵抗は、インダクタ及びコンデンサを接続する回路の一部のオーム抵抗によって提供され、このため、RLC回路は必ずしも抵抗器自体を含む必要がない。そのような回路は、例えばLC回路と呼ぶことができる。RLC及びLC回路は、回路素子のインピーダンス又はアドミタンスの虚数部が互いに相殺するときに特定の共振周波数において生じる電気共振を呈することができる。インダクタの崩壊する磁場は、巻線において、コンデンサを荷電する電流を生成するのに対し、放電するコンデンサは、インダクタにおいて磁場を構築する電流を供給するため、RLC又はLC回路において共振が生じる。上述したこれらの回路において、回路が共振周波数において駆動されるとき、インダクタ及びコンデンサの直列インピーダンスは最小となり、回路電流は最大となる。したがって、共振周波数において又はその近くでRLC又はLC回路を駆動することにより、効果的及び/又は効率的誘導加熱を提供することができる。
【0038】
図1は、一例によるエアロゾル生成デバイス100を概略的に示す。エアロゾル生成デバイス100は携帯型である。エアロゾル生成デバイス100は、バッテリー部分106と、エアロゾル生成部分104と、マウスピース部分102とを備える。エアロゾル生成部分104は、コントローラ112と、誘導加熱器114と、エアロゾル生成材料116とを備える。エアロゾル生成材料116は、例えば、エアロゾル生成デバイス100に取り外し可能に接続されたカートリッジ(図示せず)を介してエアロゾル生成デバイス100において除去可能及び/又は交換可能とすることができる。バッテリー部分106はバッテリー110を含む。バッテリー110は、誘導加熱器114に電力供給するように構成される。誘導加熱器114は、使用中のエアロゾル生成材料116を誘導加熱するように構成される。コントローラ112は、誘導加熱器114によって提供される誘導加熱を制御するように構成される。エアロゾル生成デバイス100は、エアロゾル生成材料116を加熱して、マウスピース部分102を介してユーザが吸入するためのエアロゾルを生成するように構成される。
【0039】
エアロゾル生成材料116は、加熱時に、通常は蒸気又はエアロゾルの形態の、揮発した成分を提供する材料を含むことができる。エアロゾル生成材料116は、非タバコ含有材料又はタバコ含有材料とすることができる。エアロゾル生成材料は、例えば、タバコ自体、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコ又はタバコ代替品のうちの1つ又は複数を含むことができる。エアロゾル生成材料は、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再構成された材料、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊等の形態をとることができる。エアロゾル生成材料は、他の非タバコ製品も含むことができ、これらは製品に依拠して、ニコチンを含有する場合もしない場合もある。エアロゾル生成材料は、グリセロール又はプロピレングリコール等の1つ又は複数の保湿剤を含むことができる。いくつかの例において、エアロゾル生成材料116は、互いに異なる2つ以上の成分を含むことができる。例えば、エアロゾル生成材料116は、第1の相を有する第1の成分、及び第2の相を有する第2の成分を有することができる。例えば、エアロゾル生成材料116は、(周囲温度及び圧力において)固体形態の成分及び液体形態の成分を含むことができる。例えば、エアロゾル生成材料116は、例えば、固体形態のタバコ、並びに水及び/又は保湿剤等のような液体形態の1つ又は複数の成分を含むタバコ含有材料を含むことができる。エアロゾル生成デバイスの動作温度(すなわち、エアロゾルを生成するために使用時にエアロゾル生成材料116が加熱される温度)は、エアロゾル生成材料116の1つ又は複数の成分のうちの1つの気化又は沸騰温度よりも高く、例えば、エアロゾル生成材料116の液体成分の気化又は沸騰温度よりも高く、例えば、水の沸騰温度よりも高くすることができる。エアロゾル生成材料116の液体含有量、例えば水含有量は、バッチ間、使用間、及び/又はエアロゾル生成材料116のタイプ間で変動する場合があり、並びに/或いはエアロゾル生成材料116が存在する外部環境に依拠する場合がある。
【0040】
使用時に、ユーザは、例えば、それ自体既知のボタン(図示せず)又はパフ検出器(図示せず)を介してコントローラ112を作動させ、誘導加熱器114にエアロゾル生成材料116を加熱させることができ、これによりエアロゾル生成材料116にエアロゾルを生成させる。エアロゾルは、空気入口(図示せず)からデバイス内に引き込まれる空気内に生成され、以てマウスピース102まで搬送され、マウスピース102においてエアロゾルはデバイス100を出る。
【0041】
誘導加熱器114及び/又はデバイス100は全体として、エアロゾル生成材料116を或る範囲の温度まで加熱して、エアロゾル生成材料を燃焼させることなくエアロゾル生成材料の少なくとも1つの成分を揮発させるように構成することができる。例えば、温度範囲は、約50℃~約350℃、例えば約50℃~約250℃又は約50℃~約150℃とすることができる。いくつかの例において、温度範囲は、約170℃~約220℃である。いくつかの例において、温度範囲は、この範囲以外とすることができ、温度範囲の上限は350℃よりも大きくすることができる。
【0042】
ここで
図2を参照すると、一例による、エアロゾル生成デバイス100において用いることができる誘導加熱器114が示されている。誘導加熱器114は、サセプタ210の誘導加熱のためのRLC共振回路200を含む。共振回路200は、直列に接続された、抵抗器204と、コンデンサ206と、インダクタ208とを備える。共振回路200は、抵抗Rと、インダクタンスLと、キャパシタンスCとを有する。インダクタ208は、サセプタ210への誘導エネルギー転送のために構成される。サセプタ210は、エアロゾル生成材料116を加熱するように構成される。いくつかの例において、サセプタ210にエアロゾル生成材料116が提供することができ、サセプタ210及びエアロゾル生成材料116は、例えばカートリッジ(図示せず)の交換を可能にするように、デバイス100全体に取り外し可能に接続されるカートリッジ(図示せず)内に準備することができる。
【0043】
回路200のインダクタンスLは、サセプタ210の誘導加熱のために構成されたインダクタ208によって提供される。サセプタ210の誘導加熱は、インダクタ108によって生成される交流磁場を介したものであり、これは、上述したように、サセプタ210においてジュール加熱及び/又は磁気ヒステリシス損失を誘導する。回路200のインダクタンスLの一部分は、サセプタ210の透磁率に起因したものであり得る。インダクタ208によって生成される交流磁場は、インダクタ208を通って流れる交流電流によって生成される。インダクタ208を通って流れる交流電流は、RLC共振回路200を通って流れる交流電流である。インダクタ208は、例えば、コイル状線材の形態をとることができる。
【0044】
回路200のキャパシタンスCは、コンデンサ206によって提供される。回路200の抵抗Rは、抵抗器204、共振回路200の構成要素を接続する線材の抵抗、インダクタ208の抵抗、及び/又はインダクタ108を用いた誘導エネルギー転送のために構成されたサセプタ210によって提供される、共振回路200内を流れる電流に対する抵抗によって提供することができる。回路200は必ずしも抵抗器204を含む必要がないこと、及び回路200における抵抗Rは、接続線材、インダクタ208及び/又はサセプタ210の抵抗によって提供されてもよいことが理解されよう。
【0045】
交流電流は、回路200において、適切な駆動回路部202、例えばHブリッジドライバ202又は別の変動若しくは交流電流源によって駆動される。駆動回路部202は、コントローラ112によって、共振回路200において交流電流を供給するように制御可能である。駆動回路部202は、バッテリー110からDC電圧源に接続される。例えば、駆動回路部202は、切り替え構成要素(図示せず)を介して回路にわたる電圧を反転する(次に復元する)ことによって、バッテリー110のDC電圧源から、回路100における交流電流を供給することができる。これは、RLC共振回路がDCバッテリーによって電力供給されることを可能にし、交流電流の周波数が制御されることを可能にするため、有用であり得る。
【0046】
駆動回路部202は、コントローラ112に接続される。コントローラ112は、駆動回路部202又はその構成要素(図示せず)を制御して、所与の駆動周波数fにおいてRLC共振回路200内に交流電流Iを供給する。駆動周波数fは、例えば、特定のRLC回路200の共振周波数frになるように、又は概ねその共振周波数frになるように制御することができる。
【0047】
エアロゾル生成材料116の特性、例えば、エアロゾル生成材料116の誘導加熱中のエアロゾル生成材料116の特性を特定することが望ましい。例えば、エアロゾル生成材料116の温度を特定するか、この特定を較正し、それによって例えばエアロゾル生成材料116の加熱の正確な制御を可能にすることが有用である場合がある。別の例として、加熱中、エアロゾル生成材料116の水又は他の成分がいつ気化したかを特定するか、又はエアロゾル生成材料116の成分の気化のエンドポイントにいつ達したかを特定することが有用である場合がある。なぜなら、これにより、1つ又は複数の他の成分の気化温度までのエアロゾル生成材料の更なる加熱の改善した制御を可能にすることができるためである。例えば、エアロゾル生成材料116は、製造プロセス、外部環境等のような多くの要素に依拠して、大幅に変動する場合がある変動する水含有量を含む場合がある。加熱中、エアロゾル生成材料116から実質的に全ての水がいつ気化したかを特定することにより、初期水含有量と独立したエアロゾル生成材料の更なる加熱の制御を可能にすることができ、このため、例えば、より一貫したエアロゾルの送達、及びより効率的な加熱制御を可能にすることができる。例えば、水が気化を完了したポイントにより、特定の追加エネルギー量が、次に、他の成分の気化温度に達するために必要とされることを推測することができる。
【0048】
本発明の例によれば、装置(例えば、コントローラ112)は、エアロゾル生成材料116の加熱中のエアロゾル生成材料116の特性を特定するように構成される。概観において、以下でより詳細に説明されるように、コントローラ112は、エアロゾル生成材料116の誘導加熱の第1の性質Pを監視し、以てエアロゾル生成材料116の加熱プロファイルを特定するように構成される。コントローラ112は、エアロゾル生成材料116の1つ又は複数の成分の加熱(例えば気化)に対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析できるように構成される。コントローラ112は、識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、エアロゾル生成材料の特性を特定するように構成される。例えば、特性は、エアロゾル生成材料116の温度、及び/又はエアロゾル生成材料116の成分(例えば、水)の気化のエンドポイントとすることができる。以下でより詳細に説明されるように、そのような特性を特定することにより、例えば、エアロゾル生成材料の温度の正確な特定、及び/又はエアロゾル生成材料116の更なる加熱の改善された制御を可能にすることができる。
【0049】
上述したように、コントローラ112は、エアロゾル生成材料116の誘導加熱の第1の性質Pを監視し、以てエアロゾル生成材料116の加熱プロファイルを特定するように構成される。
【0050】
ここで
図3を参照すると、エアロゾル生成材料116の例示的な加熱プロファイル302が概略的に示される。加熱プロファイル302は、時間tの関数としてのエアロゾル生成材料116の誘導加熱の第1の性質Pの値に対応する。誘導加熱器114がエアロゾル生成材料116を加熱するにつれ、誘導加熱の第1の性質Pは時間tの関数として変化する。第1の性質Pは、コントローラ121によって、時間tの関数として、例えばストレージ又はメモリ(図示せず)に連続して又は離散して記録することができる。
【0051】
いくつかの例において、第1の性質Pは、エアロゾル生成材料116の温度に関係付けることができる。例えば、性質Pは、エアロゾル生成材料116の測定温度とすることができる。例えば、エアロゾル生成材料116の温度は、エアロゾル生成材料116に又はその近くに配置された別個の温度センサ(図示せず)によって検知することができる。コントローラ112は、温度センサ(図示せず)と通信可能に結合することができ、時間tの関数としてエアロゾル生成材料116の温度を監視するために、温度センサ(図示せず)から温度データを収集することができる。
【0052】
いくつかの例において、第1の性質Pは、誘導加熱器114の性質である。例えば、第1の性質Pは、誘導加熱器114のサセプタ210の温度を含むことができる。例えば、温度センサ(図示せず)は、サセプタ210に又はその近くに配置することができる。これに関して、サセプタ210の温度は、エアロゾル生成材料116の加熱の関数とすることができることが理解されるべきである。コントローラ112は、温度センサ(図示せず)と通信可能に結合することができ、時間tの関数としてサセプタ210の温度を監視するために、温度センサ(図示せず)から温度データを収集することができる。サセプタ210は、エアロゾル生成材料116を加熱するように構成されるため、例えば、エアロゾル生成材料116と熱接触するか、又は密に熱接触する場合があり、サセプタの特定された温度は、エアロゾル生成材料116の、又は少なくともエアロゾル生成材料116の一部分の温度と同じ又は類似である場合がある。
【0053】
第1の性質Pは、必ずしも、別個の温度センサ(図示せず)によるサセプタ210及び/又はエアロゾル生成材料116の直接温度測定である必要がない。例えば、いくつかの例において、第1の性質Pは、誘導加熱器114(又はより一般的には回路200)の電気的性質を含み、これは、サセプタ210及び/又はエアロゾル生成材料116の温度を示す場合がある。
【0054】
1つの例において、第1の性質Pは、誘導加熱器114のインダクタ208に供給される電流Iを示す性質を含む。上記で説明したように、バッテリー110は、駆動回路部202にDC電圧(及び実質的にDC電流)を供給することができ、駆動回路部202は次に、インダクタ208を含む共振回路200に交流電流を供給する。誘導加熱によってサセプタ210の温度が上昇するにつれ、サセプタ210の性質(例えば、サセプタ210のオーム抵抗)が変化する場合がある。純粋に単なる例として、サセプタ210のオーム抵抗は、温度と共に増大する場合がある。そして、サセプタ210のオーム抵抗の増大により、共振回路200の全体実効抵抗Rが増大する場合がある。このため、オームの法則によって、例えばバッテリー110によって供給される所与のDC供給電圧について、共振回路200の実効抵抗Rが増大するにつれ、駆動回路部202によってバッテリー110から引き出される電流Iは減少し、共振回路200内を流れる電流Iが減少し、このため、インダクタ208に供給される電流Iが減少する。このため、誘導加熱器114のインダクタ208に供給される電流Iは、サセプタ210の相対温度に関係付けることができ、エアロゾル生成材料116の誘導加熱の第1の性質Pとして用いることができる。
【0055】
駆動回路部202によってバッテリー110から引き出される電流I、及び/又は共振回路200内を流れる電流I、及び/又はインダクタに供給される電流Iは、コントローラ112によって、複数の方式で監視することができる。例えば、電流Iは、受動的又は能動的に測定することができる。例えば、駆動回路部202によって引き出される電流を測定するために、電流メータ(図示せず)をバッテリー110と駆動回路部202との間の供給線(図示せず)に適用することができる。この測定値を、コントローラ112に提供することができ、コントローラ112は、電流Iを、時間tの関数としての第1の性質Pとして監視することができる。別の例として、ピックアップコイル(図示せず)をインダクタ208に近接して配置することができ、電圧メータ(図示せず)を用いて、インダクタ208によってピックアップコイル(図示せず)にわたって誘導された電圧を測定することができる。誘導された電圧は、共振回路200内を流れ、インダクタ208に供給される電流Iに比例することができる。したがって、誘導される電圧は、誘導加熱器114のインダクタ208に供給される電流Iを示す性質の例である。測定された誘導電圧を、コントローラ112に提供することができ、コントローラ112は、誘導電圧を監視し、及び/又は誘導電圧を、第1の性質Pとして、共振回路220内を流れる電流Iの尺度に変換することができる。
【0056】
他の実施態様において、電流I以外の回路200の電気的性質を、第1の性質Pとして測定することができることが理解されるべきである。
【0057】
いくつかの例において、第1の性質Pは、誘導加熱器114の共振回路200の周波数特性を含む。
【0058】
例えば、周波数特性は、共振駆動回路200の共振周波数frを含むことができる。回路200の共振周波数frは、回路200のキャパシタンスC及びインダクタンスLに依拠することができ、以下によって与えることができる。
【0059】
【0060】
インダクタ208の、及びこのため共振回路200のインダクタンスLは、サセプタ210の透磁率μに依拠する。透磁率μは、材料自体の中で磁場の形成を支援する材料の能力の尺度であり、印加された磁場に応答して材料が得る磁化の度合いを表す。サセプタ210の透磁率μが大きいほど、インダクタンスLが大きくなる。サセプタ116が構成される材料の透磁率μは、温度と共に変化することができる。例えば、キューリー温度Tc未満で動作する強磁性及びフェリ磁性材料を含むサセプタの場合、例えば、サセプタ210の温度が上昇するにつれて、サセプタ210の透磁率μが減少し、このため、共振回路200におけるインダクタンスLが減少し、このため、式(1)により、共振回路200の共振周波数frが減少する。このため、誘導加熱器114の共振回路200の共振周波数frは、サセプタ210の相対温度に関係付けることができ、エアロゾル生成材料116の誘導加熱の第1の性質Pとして用いることができる。
【0061】
共振回路200の共振周波数frは、任意の適切な手段を用いて測定することができる。共振周波数frにおいて、インダクタ208及びコンデンサ206の直列インピーダンスZは、最小値にあり、このため電流Iは最大値である。回路200の共振周波数frは、共振回路200の周波数応答を測定するように構成されたコントローラ112によって特定することができる。例えば、コントローラ112は、RLC回路が駆動される駆動周波数の関数として、RLC回路100内を流れる電流I(又は上記で説明したようにRLC回路200内を流れる電流Iに関係付けることができるパラメータ)を断続的に測定するように構成することができる。例えば、コントローラ112は、或る範囲の駆動周波数fにわたって走査するように駆動回路部202を制御するように構成することができる。回路200内を流れる電流I(又はこれに関係付けることができるパラメータ)を、駆動周波数の走査中に測定することができ、このため、駆動周波数fの関数としてのRLC回路200の周波数応答を特定することができる。次に、周波数応答から、共振周波数frを、例えば回路200内を流れる電流Iが最大となる周波数fとして特定することができる。このプロセスは、経時的に繰り返され、(第1の性質Pとしての)周波数fの変動が、時間tの関数として得られる。
【0062】
再び
図3を参照すると、エアロゾル生成材料の誘導加熱の第1の性質Pが、時間tの関数として監視され、以てエアロゾル生成材料116の加熱プロファイル302が特定される。説明を容易にするために、
図3の以下の説明において、第1の性質Pがエアロゾル生成材料の温度と直接比例することが想定されるが、上記で説明したように、他の例において、エアロゾル生成材料の誘導加熱の任意の第1の性質Pを用いることができることが理解されよう。更に、説明を容易にするために、
図3の以下の説明において、誘導加熱の電力(すなわち、誘導加熱によってエアロゾル生成材料に供給されるエネルギーのレート)が、加熱プロファイル320にわたって実質的に一定のままであることが想定されるが、以下でより詳細に説明されるように、これは必ずしも当てはまらず、他の例(図示せず)において、誘導加熱電力が変動する場合があることが理解されよう。
【0063】
図3に示す例において、時点t
0において、第1の性質Pは、エアロゾル生成材料116の何らかの初期温度に対応する何らかの初期値P
0にある。誘導加熱が(この例では一定の加熱電力を用いて)開始すると、第1の性質Pは、t
0~t
1の時間tの関数として増大する。これは、エアロゾル生成材料116の温度の上昇に対応する。なぜなら、サセプタ210によってエアロゾル生成材料116に印加されるエネルギーにより、エアロゾル生成材料116の温度が上昇するためである。しかしながら、時点t
1において、第1の性質Pは、実質的に上昇(これは、異なる率/実質的に低減された率で増大することを含むことができる)を止め、代わりに、時点t
2~t
3のP
1の値において実質的に一定に留まる。換言すれば、t
1~t
2に、第1の性質Pが時間tの関数として実質的に一定に留まる(停滞する)部分304が存在する。
【0064】
第1の性質Pは、エアロゾル生成材料の成分の気化の潜熱に起因して、時点t1~t2の間一定に留まる。この潜熱は、エアロゾル生成材料116の温度を変更することなくその相を(例えば液体から気体に)変更するためにその沸点でエアロゾル生成材料116の成分に供給されるエネルギーである。換言すれば、第1の性質Pは、実質的に一定に留まる。なぜなら、エアロゾル生成材料116が誘導加熱されたままである(この例では、一定加熱電力で加熱されたままである)が、エアロゾル生成材料に供給されるエネルギーは、エアロゾル生成材料116の温度の上昇ではなく、エアロゾル生成材料116の成分の気化のために用いられているためである。1つの例として、成分は、100℃の既知の沸点を有する水とすることができる。したがって、第1の性質がP1において実質的に一定のままである時点t~t2の間、エアロゾル生成材料116の温度が100℃であること、すなわち、第1の性質Pの値P1が100℃のエアロゾル生成材料116の温度に対応すると正確に判断することができる。
【0065】
時点t2において、第1の性質Pは再び増大し始め、これは、エアロゾル生成材料116の温度の上昇に対応する。第1の性質Pは、エアロゾル生成材料116の全ての又は実質的に全ての成分が気化したことに起因して、t2において増大し、このため、エアロゾル生成材料116の誘導加熱は再び、エアロゾル生成材料116の温度を上昇させる。第1の性質Pが実質的に一定のままである部分304の直後の、第1の性質Pが再び増大し始める加熱プロファイル302の部分306は、例えば、エアロゾル生成材料の成分の気化のエンドポイントに対応することができる。例えば、成分は水とすることができ、t2において、エアロゾル生成材料116の全ての又は実質的に全ての水が気化したこと、及び例えば、時点t2におけるエアロゾル生成材料の水含有量が実質的にゼロであることを正確に判断することができる。
【0066】
上述したように、装置(例えば、コントローラ112)は、加熱プロファイル302を分析して、エアロゾル生成材料116の1つ又は複数の成分の気化に対応する加熱プロファイル302の特徴を識別するように構成される。装置(例えば、コントローラ112)は、識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、エアロゾル生成材料116の特性を特定するように構成される。例えば、コントローラ112は、プロセッサ(図示せず)及びメモリ(図示せず)を含むことができる。プロセッサは、例えば、メモリに記憶された加熱プロファイルデータを抽出し、加熱プロファイルの分析及び/又は特性の特定を実行するためにデータを処理することができる。加熱プロファイルデータは、2つの異なる時点における第1の性質Pを表す少なくとも2つのデータポイントを含み、次にこれを用いて、第1の性質Pの変化を計算することができることが理解されるべきである。
【0067】
いくつかの例において、加熱プロファイル302の特徴は、第1の性質Pが実質的に一定である加熱プロファイル302の部分304を含む。コントローラ112は、実質的に一定のままである第1の性質Pの特徴の識別に基づいて、エアロゾル生成材料の温度を特定することができる。例えば、上記で説明したように、成分は、既知の100℃の沸点を有する水とすることができ、このため、実質的に一定のままである第1の性質Pの特徴を識別すると、コントローラ12は、エアロゾル生成材料116の温度が約100℃であると判断することができる。
【0068】
いくつかの例において、加熱器114の質量、例えば、誘導加熱器114のサセプタ210の質量は、エアロゾル生成材料116の質量よりも大きくすることができる。これは、第1の性質Pを、エアロゾル生成材料の温度に正確に関係付けることができることを確実にするのに役立つことができる。例えば、これは、実質的に一定のままである第1の性質Pの特徴が容易に識別可能であることを確実にするのに役立つことができ、これは、加熱プロファイルの特徴及びこのためエアロゾル生成材料116の特性の特定の信頼性及び/又は精度を改善するのに役立つことができる。更に、供給される誘導加熱の電力は、加熱プロファイルの特徴が容易に識別可能となるようにすることができる。例えば、特徴が、第1の性質Pが実質的に一定に留まる部分304である場合、供給される誘導加熱の電力は、時点t1~t2間の時間が、部分304を容易に識別可能にするのに十分大きくなるようにすることができる。理解されるように、加熱プロファイルの特徴が容易に識別可能になるようにする誘導加熱の電力は、用いられるエアロゾル生成材料の質量及び/又はタイプ、並びに/或いはエアロゾル生成材料を加熱するのに用いられるサセプタの質量及び/又はタイプに依拠することができる。
【0069】
エアロゾル生成材料116は、他の既知の気化可能な成分を含むことができる。例えば、エアロゾル生成材料116は、複数の、例えば2つの既知の気化可能な成分を含むことがわかっている場合がある。例えば、成分のうちの第1のものは、X℃の沸点を有し、成分のうちの第2のものはY℃の沸点を有することが知られている場合があり、ここでX℃はY℃よりも低い。このため、例えば、エアロゾル生成材料の加熱時に、コントローラ112は、第1の性質Pが実質的に一定のままである加熱プロファイルの第1の部分(図示せず)に到達したとき、エアロゾル生成材料の温度がX℃であると判断することができ、第1の性質Pが実質的に一定のままである加熱プロファイルの第2の部分(図示せず)に到達したとき、エアロゾル生成材料の温度がY℃であると判断することができる。したがって、コントローラ112は、エアロゾル生成材料116の温度を、信頼性をもって正確に特定することができる。これにより、例えば、温度センサを用いた直接温度測定と比較して、より信頼性の高い温度特定をもたらすことができる。なぜなら、例えば、この方法は、較正誤差の影響をより受けにくくすることができるためである。
【0070】
別の例として、1つ又は複数の特徴は、第1の性質Pが実質的に一定のままである加熱プロファイル302の第1の部分304の直後に、第1の性質Pが変化する加熱プロファイル302の第2の部分306を含むことができる。コントローラ112は、そのような特徴の識別に基づいてエアロゾル生成材料116の成分のうちの1つ又は複数の気化のエンドポイントを特定することができる。例えば、上記で説明したように、成分は水とすることができ、第1の性質Pが実質的に一定のままである部分の直後に、第1の性質が再び上昇し始めるとき、水の気化のエンドポイントに到達した、すなわち、エアロゾル生成材料116の全ての水又は実質的に全ての水が気化したと正確に判断することができる。したがって、例えば、この時点におけるエアロゾル生成材料112の水含有量が実質的にゼロであると判断することができる。以下でより詳細に説明するように、これは、エアロゾル生成材料116の更なる加熱の改善された制御を可能にすることができる。
【0071】
いくつかの例において、コントローラ112は、1つ又は複数の特定された特性に基づいて誘導加熱器114を制御するように構成することができる。例えば、コントローラ112は、誘導加熱器114を制御して、誘導加熱電力を増大又は減少させ、並びに/或いは異なる加熱電力を印加し、並びに/或いは誘導加熱器114を制御して誘導加熱の提供を止め、並びに/或いは誘導加熱器114を制御して所定の制御パターン又はシーケンスに従って誘導加熱を提供し、並びに/或いは所定の更なる誘導加熱及び/又は更なる所定のエネルギー量をエアロゾル生成材料116に供給することができる。コントローラ112は、例えば、駆動手段202に供給される電流を制御することによって、又は駆動回路部202の駆動周波数fを制御することによって、誘導加熱器114を制御することができる。
【0072】
上記で説明したように、特定される特性は、エアロゾル生成材料116の温度とすることができる。コントローラ112は、エアロゾル生成材料の特定された温度に基づいて誘導加熱器114を制御することができる。例えば、所与の温度(例えば、既知の成分の沸点に対応する)に到達したと判断されると、コントローラ112は、所定の制御シーケンス又は特定の加熱プロファイルに従って誘導加熱器114を制御することができる。これは例えば、エアロゾル生成材料の過熱を阻止するのに役立つことができる。
【0073】
上記で説明したように、別の例として、特定される特性は、エアロゾル生成材料の成分の気化のエンドポイントとすることができる。コントローラ112は、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化のエンドポイントに到達したと判断し、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化のエンドポイントに到達したという判断に応答して、誘導加熱器を制御するように構成することができる。例えば、コントローラ112は、エアロゾル生成材料116を所定の量更に誘導加熱するように誘導加熱器114を制御することができる。例えば、コントローラ112は、エアロゾル生成材料116への所定のエネルギー量の供給を制御することができる。
【0074】
例えば、エアロゾル生成デバイス100と共に用いることができる様々なエアロゾル生成材料116、又はエアロゾル生成デバイス100と共に用いる(例えば、連続的に用いる)ことができる同じエアロゾル生成材料116の異なるバッチは、変動する水含有量(又は他の成分の変動する含有量)を含むことができる。加熱中、全ての水(又は他の成分)がエアロゾル生成材料116から気化したポイントを特定することにより、初期の水(又は他の成分)含有量と独立してエアロゾル生成材料の更なる加熱の制御を可能にし、このため、より一貫したエアロゾル送達、及びより効率的な加熱制御を可能にすることができる。換言すれば、水に起因した変動は除去され(又は実質的に低減され)、このため、コントローラ112は、水が実質的に気化したポイントから、設定された電力量をサセプタ210/エアロゾル生成材料116に供給することができる。これは、動作温度により高い精度で到達することができることを意味する。
【0075】
例えば、水(又は他の成分)が気化した後、エアロゾル生成材料116の温度を所与の動作温度(例えば、エアロゾル生成材料116がエアロゾルを生成した最適温度)まで上昇させるために必要な追加のエネルギーを予め特定することができ、コントローラ112は、その予め特定された量のエネルギーをエアロゾル生成材料116に供給するように誘導加熱器114を制御することができる。これにより、誘導加熱のより単純及び/又はより正確な制御を可能にすることができる。例えば、制御は、エアロゾル生成材料の使用間、バッチ間、又はタイプ間等で変動し得るエアロゾル生成材料の初期の成分(例えば、水)含有量と独立して行うことができる。例えば、これは、誘導加熱制御の少なくとも一部分が、例えばこれらの変動が考慮に入れられない制御と比較してより正確に、及び/又は例えばこれらの変動が制御範囲全体にわたって考慮に入れられる制御と比較してより単純に、適用され得ることを可能にすることができる。したがって、コントローラ112は、エアロゾル生成材料の誘導加熱の改善された制御、及び改善されたエアロゾル生成デバイス100を可能にすることができる。
【0076】
別の例において、コントローラ112は、エアロゾル生成材料116の特定された特性に基づいて情報をユーザに提示するように構成することができる。例えば、特定された特性が、全ての水(又は他の成分)がエアロゾル生成材料116から気化したことを示す場合、ユーザに、これを示す情報を提供することができる。別の例では、ユーザに提示される情報は、エアロゾル生成材料116の温度を示すことができる。例えば、特定された特性が、全ての水がエアロゾル生成材料116から気化したことを示すとき、情報は、ユーザに、エアロゾル生成材料116が水の沸騰温度にあることを通知することができる。他の例では、ユーザに、エアロゾル生成材料116の組成に関する情報を提示することができる。例えば、エアロゾル生成材料116の組成に関する情報は、加熱プロファイル302の分析に基づいて特定することができる。例えば、上記で論考したように、加熱プロファイルの分析により、エアロゾル生成材料116に異なる沸点を有する第1の気化可能成分及び第2の気化可能成分が存在することを明らかにすることができる。したがって、ユーザに、これらの成分がエアロゾル生成材料116内に存在することを示す情報を提示することができる。コントローラ112は更に、いくつかの例において、エアロゾル生成材料116の組成に関する特定された情報に基づいて、エアロゾル生成材料116が、デバイス100と共に用いることを承認された材料であるか否かを判断することができる。例において、コントローラ112は、そのような情報をユーザに提示することができ、及び/又はコントローラ112は、エアロゾル生成材料116がデバイス100と共に用いることを承認されているか否かに基づいてエアロゾル生成材料を加熱するデバイス100の動作を可能にするか否かを判断する等のアクションを行うように構成することができる。別の例では、コントローラ112は、エアロゾル生成材料116の特定された特性に基づいて、デバイス100が動作している環境に関するパラメータを特定するように構成することができる。例えば、コントローラ112は、加熱プロファイル302の特徴に基づいてエアロゾル生成材料116における水の量を特定することができる。例において、エアロゾル生成材料116における水の量は、デバイス100が動作している環境の湿度を示すことができる。したがって、ユーザに、例えば、環境の湿度に関する情報を提示することができる。
【0077】
いくつかの例において、コントローラ112は、第1の性質Pの変化率、例えば、時間の関数としての第1の性質の変化率を特定するように構成される。コントローラ112は、第1の性質の特定された変化率に基づいて、加熱プロファイルの1つ又は複数の特徴を識別するように構成することができる。
図4は、時間tの関数としての第1の性質Pの変化率dP/dtのプロット402を概略的に示す。
図3と同様に、
図4において、誘導加熱が一定の加熱電力を有すること、及び性質Pがエアロゾル生成材料116の温度に直接比例することが想定される。時点t
0において、誘導加熱が開始し、変化率dP/dt(すなわち、この例では、時点tに対する第1の性質Pの1次導関数)は値Q
1にある。これは、時点t
1までそのままであり、時点t
1において変化率dP/dtが実質的にゼロまで低減し、t
2までそのままである。これは、時間範囲t
1~t
2のプロット402の部分404において、性質Pが実質的に変化せず、すなわち、時点tの関数として実質的に一定のままであることを示す。上記で説明したように、ここから、例えば、成分(例えば、水)がその沸点(又は気化点)に達したこと、及びこのため、このポイントにおけるエアロゾル生成材料116の温度が成分の沸点(又は気化点)、例えば水の場合100℃であることを判断することができる。時点t
2に、プロット402の第2の部分において、変化率dP/dtは再び増大する。これは、性質Pが(性質Pが実質的に一定のままであった部分404の直後に)再び増大し始め、このため、コントローラ112が、ここから、上記で説明したように、エアロゾル生成材料116の成分(例えば、水)の気化のエンドポイントに到達したと判断することができる。コントローラ112は、上記で説明したように、そのような判断に基づいて、誘導加熱器114の制御を行うことができる。第1の性質Pの特定された変化率に基づいて加熱プロファイルの1つ又は複数の特徴を識別することによって、第1の性質Pにおける関連変化のコントローラ112による感度の高い識別を可能にし、このため、信頼性のある正確な制御を可能にすることができる。
【0078】
図5は、エアロゾル生成デバイス100のエアロゾル生成材料116の特性を特定するための方法を概略的に示す。上述したように、エアロゾル生成デバイス100は、使用中のエアロゾル生成116材料の誘導加熱のための誘導加熱器114を備える。方法は、例えば装置、例えばエアロゾル生成デバイス100のコントローラ112によって実行することができる。コントローラ112(又は他の装置)はプロセッサ(図示せず)及びメモリ(図示せず)を含むことができる。メモリ(図示せず)は、プロセッサ(図示せず)によって実行されると、コントローラ112(又は他の装置)に方法を実行させる命令(例えばコンピュータプログラム)を記憶することができる。
【0079】
ステップ502において、方法は、エアロゾル生成材料116の誘導加熱の第1の性質Pを監視し、以てエアロゾル生成材料116の加熱プロファイルを特定することを含む。いくつかの例では、第1の性質Pは、上記で説明した第1の性質Pのうちの任意のものとすることができる。加熱プロファイルは、例えば、
図3を参照して上記で説明したものと同様とすることができる。
【0080】
ステップ504において、方法は、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化に対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析することを含む。上記で説明したように、特徴は、第1の性質Pが実質的に一定のままである部分(例えば、成分の気化を示す)、及び/又は第1の性質が実質的に一定のままである部分の直後に、第1の性質Pが変更する部分(例えば、成分の気化のエンドポイントを示す)を含むことができる。
【0081】
ステップ506において、方法は、識別された1つ又は複数の特徴に基づいて、エアロゾル生成材料の特性を特定することを含む。上記で説明したように、特性は、例えば、エアロゾル生成材料116の温度及び/又はエアロゾル生成材料116の成分の気化のエンドポイントとすることができる。
図5には示されていないが、方法は、例えば上記で説明したように、特定された特性に基づいて誘導加熱を制御することを含むことができる。
【0082】
いくつかの例において、誘導加熱の第1の性質Pを監視し、以て加熱プロファイルを特定することと、エアロゾル生成材料116の1つ又は複数の成分の気化に対応する特徴を識別するために加熱プロファイルを分析することとは、実質的に連続して行ってもよく、又は実質的に同時点に(すなわち同時に)行ってもよい。例えば、加熱プロファイルの分析は、第1の性質の監視が行われているときに、すなわちリアルタイムで行うことができる。例えば、分析は、第1の性質の現在の値、及び第1の性質Pの現在の値の直前に特定又は記録された第1の性質Pの1つ又は複数の値に対し行うことができる。監視及び分析を実質的に同時点に行うことにより、エアロゾル生成材料116の特性の応答性の高い特定を可能にすることができ、エアロゾル生成デバイス100の応答性の高い、このためより正確で信頼性の高い制御を可能にすることができる。
【0083】
上記の例のうちのいくつかにおいて、第1の性質Pがエアロゾル生成材料の温度に直接比例することが想定された。しかしながら、これは必ずしも当てはまらず、他の例において、第1の性質Pはエアロゾル生成材料の温度に対し他の依存性を有する場合があるが、それにもかかわらず、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化に対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析することができることが理解されよう。
【0084】
上記の例のうちのいくつかにおいて、一定の誘導加熱電力を用いて誘導加熱が行われたと想定された。しかしながら、エアロゾル生成材料116は、必ずしも、特性を特定するために一定の誘導加熱電力を用いて加熱される必要がなく、他の例では、可変の誘導加熱電力が用いられてもよいことが理解されよう。同様に、第1の性質Pは、必ずしも、加熱プロファイルを特定するために時間tの直接関数として監視される必要がないことが理解され、すなわち、特定される加熱プロファイルは必ずしもtの直接関数としての第1の性質Pである必要がないことが理解されよう。例えば、他の例において、第1の性質Pは、例えば、エアロゾル生成材料116に供給される及び/又は誘導加熱器114によって消費されるエネルギーEの関数として監視することができる。したがって、加熱プロファイルは、エアロゾル生成材料116に供給されるエネルギーE、及び/又は誘導加熱器114によって消費されるエネルギーの関数としての第1の性質Pを含むことができる。エネルギーEは、例えば、誘導加熱器114に供給される(すなわち、誘導加熱器114によって消費される)電力(例えば、誘導加熱器104によって供給される誘導加熱電力と同じか又は類似か又はこれに比例することができる)に、電力が供給された時間tを乗算することによって特定することができる。上記の例の場合と同様に、エアロゾル生成材料116の成分が気化し始めるとき、第1の性質Pは、供給されるエネルギーEの関数として実質的に一定のままである場合がある。なぜなら、エネルギーEは、エアロゾル生成材料の温度の上昇の代わりに、エアロゾル生成材料の成分を気化するために用いられるためである。このため、例えば、このポイントにおいて、エアロゾル生成材料116の温度は、成分の沸点(又は気化点)として正確に特定することができる。同様に、第1の性質が実質的に一定のままであった部分の直後に第1の性質Pが増大するとき、成分の気化のエンドポイントに到達したと判断することができる。上記のように、次に、誘導加熱器114による更なる加熱の制御を、このポイントが達成されたことに基づいて制御することができる。
【0085】
上記の例のうちのいくつかにおいて、エアロゾル生成材料116の特性を特定するための装置が、エアロゾル生成デバイス100のコントローラ112であることが記載されている。しかしながら、これは必ずしも当てはまる必要がなく、他の例において、装置はエアロゾル生成デバイス100の内部構成要素又は一体構成要素ではない場合があり、例えば別個の装置として提供される場合があることが理解されよう。
【0086】
更なる例において、第1の性質Pの特徴を用いてエアロゾル生成材料116を識別し、及び/又はエアロゾル生成材料116がエアロゾル生成デバイス100との使用を意図されているか否かを判断することができる。例えば、コントローラは、エアロゾル生成材料116がエアロゾル生成デバイス100と共に用いられないことを判断することができる。これは、エアロゾル生成材料を明示的に(例えば、名称又は成分によって)識別すること、又は第1の性質Pの特徴を予測される特徴(例えば、事前に記憶される)と比較することに基づくことができる。第1の性質Pの測定された特徴が予測される特徴と異なる場合、コントローラは、エアロゾル生成材料116の加熱を阻止することができるか、デバイス100のユーザに警告を与えることができる。
【0087】
上記の例のうちのいくつかにおいて、エアロゾル生成デバイスが、使用中のエアロゾル生成材料の誘導加熱のための誘導加熱器を含むこと、及び装置がエアロゾル生成材料の誘導加熱の第1の性質を監視して、エアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定するように構成されることが記載されている。しかしながら、これは必ずしも当てはまる必要がなく、いくつかの例において、エアロゾル生成デバイスは、使用中のエアロゾル生成材料の加熱のための任意の加熱器を含むことができること、及び装置は、エアロゾル生成材料の加熱の第1の性質を監視し、以てエアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定するように構成することができることが理解されよう。例えば、いくつかの例において、加熱器は抵抗加熱器とすることができ、第1の性質は、例えば、例として上記で説明したような、温度センサによって測定されるエアロゾル生成材料の温度とすることができる。
【0088】
上記の例のうちのいくつかにおいて、装置が、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化に対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析することが記載されている。しかしながら、これは必ずしも当てはまる必要がなく、いくつかの例において、装置は、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の加熱に(より一般的に)対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析することができることが理解されよう。例えば、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化は別として、加熱プロファイルの特徴は、例えば、或る特定の加熱勾配(例えば、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分が加熱している率)とすることができる。次に、識別された加熱勾配を用いて、例えば、エアロゾル生成材料の特性を特定することができる。例えば、エアロゾル生成材料の異なる成分は、異なる熱容量を有することができ、これは、識別される加熱勾配に影響を及ぼす場合がある。したがって、エアロゾル生成材料の特性は、エアロゾル生成材料の成分のアイデンティティ、及び/又は例えばエアロゾル生成材料のタイプとすることができる。別の例として、異なる量の或る特定のエアロゾル生成材料(又はその成分)の結果として、異なる観測される加熱勾配を得ることができる。したがって、エアロゾル生成材料の特性は、エアロゾル生成材料(又はその成分)の(現在の)量とすることができる。エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の加熱に対応する加熱プロファイルの他の特徴を識別し、これを用いてエアロゾル生成材料の特性を特定することができることが理解されよう。
【0089】
別の例において、装置は、加熱プロファイルの異なる部分に関係する勾配を用いてエアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化に対応する加熱プロファイルの特徴を識別するために加熱プロファイルを分析することができる。例えば、水等の成分がエアロゾル生成材料から気化される前、加熱プロファイルは第1の勾配M1を有することができる。しかしながら、エアロゾル生成材料の全ての水が気化した後、加熱プロファイルは、第2の勾配M2を有することができる。この例において、第2の勾配M2は第1の勾配M1よりも大きくなる。なぜなら、勾配M2を有する加熱プロファイルにおけるポイントにおいて、水がもはや加熱されていないため、エアロゾル生成材料116は、所与の量だけその温度を上昇させるのに必要なエネルギーが少ないためである。加熱プロファイルにおける屈曲点を特定するために、加熱プロファイルに対する接線が勾配M1及びM2を有するポイントを特定することができる。エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の気化に対応する加熱プロファイルの特徴を以て特定することができる。これは、屈曲点が他の技法によって容易に識別可能でない場合、例えば、誘導加熱電力が、屈曲点が短寿命になるほど高い場合に有用とすることができる。
【0090】
エアロゾル生成材料の特性を特定するために識別されるのが、エアロゾル生成材料の加熱プロファイルの特徴自体であることに留意されたい。したがって、いくつかの例では、(誘導)加熱器の性質が、エアロゾル生成材料の加熱プロファイルを特定するために監視される場合があるが、それにもかかわらず、エアロゾル生成材料の特性を特定するために識別されるのは、エアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の加熱に対応する加熱プロファイルの特徴である。これは、例えば、加熱器(例えば、誘導加熱器のサセプタ)自体のいくつかの特徴と対照的である場合がある。エアロゾル生成材料の特徴を特定するためにエアロゾル生成材料の1つ又は複数の成分の加熱に対応する加熱プロファイルの特徴を識別することは、加熱されているエアロゾル生成材料に固有の特性が特定されることを可能にすることができ、これは、例えば本明細書において上記で説明した、改善された一貫性及び加熱制御等の利点を有する。
【0091】
上記の例は、本発明の例示的な実例として理解される。任意の1つの例に関連して説明された任意の特徴は、単独で用いることができるか、又は記載される他の特徴と組み合わせて用いることができ、例のうちの任意の他のものの1つ又は複数の特徴と組み合わせて、又は他の例のうちの任意の他のものの任意の組み合わせで用いることもできることが理解されよう。更に、上記で説明されていない均等物及び変更も、本発明の範囲から逸脱することなく用いることができ、これは添付の特許請求の範囲に定義される。