(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】フルオロポリマーフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240110BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20240110BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20240110BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20240110BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240110BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20240110BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240110BHJP
【FI】
C08J5/18 CEW
C08K3/00
C08K5/00
C08L27/12
G02F1/15 507
H01G11/06
H01G11/56
H01M10/0565
(21)【出願番号】P 2018566246
(86)(22)【出願日】2017-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2017063394
(87)【国際公開番号】W WO2017220312
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-04-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(73)【特許権者】
【識別番号】505041416
【氏名又は名称】セントレ ナショナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】ギヨマール-ラック, オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】ル ビドー, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨマール, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】レトリエ, ベルナール
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】中村 和正
【審判官】加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063994(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/113971(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/18
C08L
C08K
G02F1/15-1/19
H01G11/00-11/86
H01M10/05-10/0587,10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー複合体を含むフルオロポリマーフィルムを製造するためのプロセスであって、
(i)混合物であって、
- 2dl/gより高い固有粘度を有する少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つのイオン液体(IL)を含有し、且つ少なくとも1つの電解質塩(ES)と、任意選択的に少なくとも1つの有機溶媒(S)とを含有する少なくとも1つの液体媒体(LM)と
の混合物を提供する工程と、
(ii)工程(i)で得られた前記液体混合物を処理してフィルムを得る工程と、
(iii)工程(ii)で得られた前記フィルムを120℃から200℃の間の温度で加熱して、硬化された透明なフィルムを得る工程と
を含
み、
得られた前記フィルムが、少なくとも200%の破断伸びを有し、且つ少なくとも15MPaの破断応力を有する、プロセス。
【請求項2】
ポリマー(F)は、2.0dl/gより高い、好ましくは2.5dl/gより高い固有粘度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(iii)は、5分以上にわたって実施される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記イオン液体(IL)は、スルホニウムイオン又はイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジニウム環若しくはピペリジニウム環から選択されるカチオンを含むものから選択され、前記環は、任意選択的に、窒素原子上において、特に1~8の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換され、且つ炭素原子上において、特に1~30の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換され、且つハライドアニオン、ペルフルオロアニオン及びボレートから選択されるアニオンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記電解質塩(ES)は、LiI、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、M[N(CF
3SO
2)(R
FSO
2)]
n(ここで、R
Fは、C
2F
5、C
4F
9、CF
3OCF
2CF
2である)、LiAsF
6、LiC(CF
3SO
2)
3、Li
2S
n及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記液体媒体(LM)は、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、メチルイソブチルケトン(MIK)、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンを含むケトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素を含むアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を含む、酸素及び/又は窒素ヘテロ原子を含む極性非プロトン性溶媒、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどの有機リン酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒(S)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
太陽光照射に対して光学的に透明である、硬化されたフルオロポリマーフィルムであって、
- 2dl/gより高い固有粘度を有する少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つのイオン液体(IL)を含み、且つ少なくとも1つの電解質塩(ES)を含有する少なくとも1つの液体媒体(LM)と
を含むフルオロポリマー複合体を含み、
40未満のヘイズ値を有
し、
前記フィルムが、少なくとも200%の破断伸びを有し、且つ少なくとも15MPaの破断応力を有する、硬化されたフルオロポリマーフィルム。
【請求項8】
前記イオン液体(IL)は、スルホニウムイオン又はイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジニウム環若しくはピペリジニウム環から選択されるカチオンを含むものから選択され、前記環は、任意選択的に、窒素原子上において、特に1~8の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換され、且つ炭素原子上において、特に1~30の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換され、且つハライドアニオン、ペルフルオロアニオン及びボレートから選択されるアニオンを含む、請求項
7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記電解質塩(ES)は、LiI、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、M[N(CF
3SO
2)(R
F
SO
2)]
n(ここで、R
F
は、C
2F
5、C
4F
9、CF
3OCF
2CF
2である)、LiAsF
6、LiC(CF
3SO
2)
3、Li
2Sn及びこれらの組み合わせから選択される、請求項
7又は8に記載のフィルム。
【請求項10】
請求項7~
9のいずれか一項に記載のフィルムを含む電気化学的又は光化学的デバイス。
【請求項11】
色素増感太陽電池、フォトクロミックデバイス又はエレクトロクロミックデバイスの形態である、請求項
10に記載の光化学的デバイス。
【請求項12】
リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池又はリチウムイオンキャパシタの形態である、請求項
10に記載の電気化学的デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年6月20日に出願された欧州特許出願公開第16175250.6号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フルオロポリマーフィルムの製造プロセス、それから得られるフルオロポリマーフィルム、並びに前記フルオロポリマーフィルムの電気化学的及び光電気化学的デバイスにおける使用に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマー、特にフッ化ビニリデンポリマーは、電気化学的用途を含む広範囲の用途において良好に使用されている。
【0004】
特に、フルオロポリマーは、化学的耐性及び熱老化耐性のために、二次電池などの電気化学的デバイスに使用するためのポリマー膜の原料として使用される。
【0005】
金属イオン二次電池は、典型的には、正極、イオン伝導膜及び負極を組み立てることによって形成される。イオン伝導膜は、多くの場合にセパレータと称され、対向する電極間の有効な分離を確実にするとともに、イオン伝導性を与えなければならないことから、セルにおいて極めて重要な役割を担っている。
【0006】
基本的には、2つのタイプのセパレータが使用され得る:適切な溶媒中の電解質の溶液がセパレータの多孔質を満たす多孔質セパレータ、又は一般的に純粋な固体ポリマー電解質(即ち、固体溶媒として作用するPEO及びPPOなどの高分子量ポリエーテルホストに溶解された電解質)若しくはポリマーホストマトリックス及び電解質中に安定なゲルを形成することができる可塑剤若しくは溶媒をポリマーマトリックスに組み込むゲル化ポリマー電解質系である非多孔質セパレータ。
【0007】
それにもかかわらず、現在のゲル化ポリマー電解質は、ゲル化ポリマー電解質の低い機械的特性のために、有効な様式で液体可塑剤/電解質溶液を組み込んで保持することができず、且つ/又は電極の効果的な分離に必要な適切な機械的特性を有することができない。従って、電池の製造及びその動作の両方でそれらの使用は制限される。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、顕著なイオン伝導性を示しながら、機械的完全性が改善されたフルオロポリマー及び電解質に基づいたイオン伝導性フルオロポリマーフィルムを製造することが可能であることを見出した。
【0009】
従って、本発明は、フルオロポリマー複合体を含むフルオロポリマーフィルムを製造するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、
(i)混合物であって、
- 1.5dl/gより高い固有粘度を有する少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つのイオン液体(IL)を含有し、且つ少なくとも1つの電解質塩(ES)と、任意選択的に少なくとも1つの有機溶媒(S)とを含有する少なくとも1つの液体媒体(LM)と
の混合物を提供する工程と、
(ii)工程(i)で得られた液体混合物を処理して、例えば流延によってフィルムを得る工程と、
(iii)工程(ii)で得られたフィルムを100℃超の温度で加熱して透明なフルオロポリマーフィルムを得る工程と
を含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、前述で定義されたプロセスによって得ることができるフルオロポリマーフィルムを提供する。
【0011】
従って、本発明は、太陽光照射に対して光学的に透明なフルオロポリマーフィルムであって、
- 1.5dl/gより高い固有粘度を有する少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つのイオン液体(IL)を含み、且つ少なくとも1つの電解質塩(ES)を含有する少なくとも1つの液体媒体(LM)と
を含むフルオロポリマー複合体を含むフルオロポリマーフィルムに更に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
驚くべきことに、本発明のフルオロポリマーフィルムは、前述のプロセス中に組み込まれた液体媒体を安定して含み且つ保持する自立フルオロポリマーフィルムであることが見出された。このようなフルオロポリマーフィルムは、向上した機械的完全性及び顕著なイオン伝導性を示す一方、有利には太陽光照射に対して光学的に透明である。
【0013】
有利には、本発明のフルオロポリマーフィルムは、特に電気化学的及び光電気化学的用途における最終的な意図される使用の典型的な機械的応力に耐えることが見出された。
【0014】
有利には、本発明のフルオロポリマーフィルムは、高い引張り力又は延伸力に問題なく耐えるように向上した柔軟性及び向上した破断点伸びを付与される。
【0015】
フルオロポリマーフィルムの柔軟性は、加えられた応力が除去されると弾性変形してその元の形状に戻る能力の尺度である。
【0016】
フルオロポリマーフィルムの破断点伸びは、適用された引張り応力下で破断する前に生じる長さの増加率の尺度である。
【0017】
本発明のフルオロポリマーフィルムは、少なくとも100%、好ましくは少なくとも150%、より好ましくは少なくとも200%の破断伸びを有する。
【0018】
フィルムの引張り強さの尺度としてのフルオロポリマーフィルムは、少なくとも10MPa、好ましくは少なくとも13MPa、より好ましくは少なくとも15MPaの破断応力を有していなければならない。
【0019】
本発明のフルオロポリマーフィルムは、有利には、光電気化学的用途に問題なく使用できるように太陽光照射に対して光学的に透明であることも見出された。
【0020】
ある波長(例えば、400nm)での全透過率(TT)と拡散透過率(DT)との比として定義されるヘイズは、太陽電池などの用途におけるポリマーフィルムの適合性を評価する重要なパラメータである。結果は、透過光のパーセント(合計又は拡散)に関して評価することができる。TTが高くなるほど、太陽電池に到達する光が多くなる。拡散光に関して、ヘイズ値が低いほど、PVモジュールの乳白色の外観が低減され、審美的により受け入れられやすくなる。ヘイズは、例えば、ASTM D1003の手順に従って測定することができる。
【0021】
好ましくは、本発明による組成物のヘイズは、40未満、より好ましくは30、20又は10未満である。
【0022】
「フルオロポリマー[ポリマー(F)]」という用語は、本明細書において、少なくとも1つのフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーから誘導された繰り返し単位を含むフルオロポリマーを意味することを意図する。
【0023】
好ましくは、ポリマー(F)は、
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%の、式I:
CH
2=CF
2 (I)
のフッ化ビニリデン(VDF)と、
(b)任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF
1)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)及びこれらの混合物から選択されるフッ素化モノマーと、
(c)任意選択的に、0.05モル%~10モル%、好ましくは0.1モル%~7.5モル%、より好ましくは0.2モル%~3.0モル%の、以下で定義される式(II):
(式中、R1、R2、R3のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して水素原子又はC
1~C
3炭化水素基であり、且つR
OHは、水素、又は少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部分である)
の(メタ)アクリルモノマー(MA)と
を含む。
【0024】
ポリマー(F)は、半結晶性であり得る。半結晶性という用語は、検出可能な融点を有するポリマー(F)を意味することを意図する。半結晶性ポリマー(F)は、有利には、少なくとも0.4J/g、好ましくは少なくとも0.5J/g、より好ましくは少なくとも1J/gの、ASTM D3418に従って決定された融解熱を有すると一般的に理解される。
【0025】
「液体媒体(LM)」という用語は、本明細書において、大気圧下で20℃において液体状態で存在する媒体を意味することを意図する。
【0026】
「イオン液体(IL)」という用語は、大気圧下で100℃未満の温度において液体状態で存在する、正に荷電したカチオンと負に荷電したアニオンとの組み合わせによって形成される物質を意味することを意図する。
【0027】
イオン液体(IL)は、典型的には、プロトン性イオン液体(ILp)及び非プロトン性イオン液体(ILa)から選択される。
【0028】
「プロトン性イオン液体(ILp)」という用語は、本明細書において、カチオンが1つ以上のH+水素イオンを含むイオン液体を意味することを意図する。
【0029】
1つ以上のH+水素イオンを含むカチオンの非限定的な例としては、特にイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジニウム環又はピペリジニウム環が挙げられ、この場合、正電荷を有する窒素原子は、H+水素イオンに結合される。
【0030】
「非プロトン性イオン液体(ILa)」という用語は、本明細書において、カチオンがH+水素イオンを含まないイオン液体を意味することを意図する。
【0031】
液体媒体は、典型的には、少なくとも95又は99~100重量%の少なくとも1つのイオン液体(IL)と、任意選択的に、少なくとも1つの添加剤(A)とから本質的になり、即ちこれらを含み、この場合、前記イオン液体(IL)は、プロトン性イオン液体(ILp)、非プロトン性イオン液体(ILa)及びこれらの混合物から選択される。
【0032】
イオン液体(IL)は、典型的には、カチオンとしてスルホニウムイオン又はイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジニウム環若しくはピペリジニウム環を含むものから選択され、前記環は、任意選択的に、窒素原子上において、特に1~8の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換され、且つ炭素原子上において、特に1~30の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換される。
【0033】
本発明の意味において、「アルキル基」という用語は、飽和炭化水素鎖、又は1つ以上の二重結合を有し、1~30の炭素原子、有利には1~18の炭素原子、更により有利には1~8の炭素原子を含有するものを示す。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、へプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-へプチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル基を挙げることができる。
【0034】
本発明の有利な実施形態では、イオン液体(IL)のカチオンは、以下から選択される。
- ここで、下記の式(III):
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、1~8の炭素原子を有するアルキル基を表し、且つR
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、又は1~30の炭素原子、有利には1~18の炭素原子、より有利には1~8の炭素原子を有するアルキル基を表す)
のピロリジニウム環、
- ここで、下記の式(IV):
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ互いに独立して、1~8の炭素原子を有するアルキル基を表し、且つR
3~R
7は、それぞれ互いに独立して、水素原子、又は1~30の炭素原子、有利には1~18の炭素原子、更により好ましくは1~8の炭素原子を有するアルキル基を表す)
のピペリジニウム環。
【0035】
本発明の特に有利な実施形態では、イオン液体(IL)のカチオンは、以下から選択される。
【0036】
イオン液体は、有利には、アニオンとして、ハライドアニオン、ペルフルオロアニオン及びホウ酸から選択されるものを含むものから選択される。
【0037】
ハロゲン化物アニオンは、特に以下のアニオン:塩化物、臭化物、フッ化物又はヨウ化物から選択される。
【0038】
本発明の特に有利な実施形態では、イオン液体(IL)のアニオンは、以下から選択される。
- 式(SO
2CF
3)
2N
-のビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
- 式PF
6
-のヘキサフルオロホスフェート、
- 式BF
4
-のテトラフルオロボレート、及び
- 式:
のオキサロホウ酸。
【0039】
本発明のプロセスにおいて使用される液体媒体中の1つ以上のイオン液体(IL)の量は、工程(i)の混合物が、前記混合物において、ポリマー(F)とイオン液体(IL)との総重量に基づいて有利には少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%のイオン液体(IL)を含むものである。
【0040】
本発明のプロセスにおいて使用される液体媒体中の1つ以上のイオン液体(IL)の量は、工程(i)の混合物が、前記混合物において、ポリマー(F)とイオン液体(IL)との総重量に基づいて有利には最大で95重量%、好ましくは最大で85重量%、好ましくは最大で75重量%のイオン液体(IL)を含むものである。
【0041】
「電解質塩(ES)」という用語は、電気導電性イオンを含む金属塩を意味することを意図する。
【0042】
様々な金属塩が電解質塩(ES)として用いられ得る。選択されるイオン液体(IL)中で安定且つ可溶である金属塩が一般的に使用される。
【0043】
適切な電解質塩(ES)の非限定的な例としては、特にMeI、Me(PF6)n、Me(BF4)n、Me(CIO4)n、Me(ビス(オキサラト)ボレート)n(「Me(BOB)n」)、MeCF3SO3、Me[N(CF3SO2)2]n、Me[N(C2F5SO2)2]n、Me[N(CF3SO2)(RFSO2)]n(ここで、RFは、C2F5、C4F9、CF3OCF2CF2である)、Me(AsF6)n、Me[C(CF3SO2)3]n、Me2Sn(式中、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくは、Meは、Li、Na、K、Csであり、且つnは、前記金属の原子価であり、典型的には、nは、1又は2である)が挙げられる。
【0044】
好ましい電解質塩(ES)は、以下から選択される:LiI、LiPF6、LiBF4、LiClO4、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、M[N(CF3SO2)(RFSO2)]n(ここで、RFは、C2F5、C4F9、CF3OCF2CF2である)、LiAsF6、LiC(CF3SO2)3、Li2Sn及びこれらの組み合わせ。
【0045】
本発明のプロセスの工程(i)の混合物は、フルオロポリマー(F)を少なくとも部分的に可溶化する液体物質である1つ以上の有機溶媒(S)を任意選択的に含むことができる。
【0046】
1つ以上の有機溶媒(S)が存在する場合、有機溶媒(S)は、一般的には、アセトン、メチルエチルケトンなどの低級ケトン及びイソホロン、メチルイソブチルケトン(MIK)、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンなどの高級ケトンを含むケトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素などのアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)など、酸素及び/又は窒素ヘテロ原子を含む極性非プロトン性溶媒、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどの有機リン酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
有機溶媒(S)は、より好ましくは、ケトン、アミド、酸素及び/又は窒素ヘテロ原子を含む極性非プロトン性溶媒、並びにこれらの混合物から選択される。
【0048】
1つ以上の有機溶媒(S)が存在する場合、ポリマー(F)と、ポリマー(F)と、有機溶媒(S)との合計の重量比は、典型的には0.01~0.9、好ましくは0.05~0.5、より好ましくは0.08~0.25に含まれる。
【0049】
溶媒(S)の含有量の上限は、特に限定されないが、それにもかかわらず、加熱工程(iii)後にフィルムを乾燥及び硬化させる効果を有し、存在する場合、1つ以上の有機溶媒(S)の量は、フルオロポリマーフィルム中に安定に組み込まれ且つ保持され、ポリマー(F)の重量に基づいて最大で10重量%、好ましくは最大で5重量%、より好ましくは最大で1重量%、更により好ましくは最大で0.2重量%となることが理解される。
【0050】
一般的に、本発明のプロセスの工程(i)では、1つ以上の電解質塩(ES)を液体媒体に溶解して、電解質溶液を提供し、この場合、電解質の濃度は、有利には、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05M、最大で2M、好ましくは1.3M、より好ましくは0.8Mである。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、本発明のプロセスの工程(i)の混合物は、少なくとも1つの無機フィラー(I)を更に含むことができる。
【0052】
このような無機フィラー(I)の添加は、改良された機械的特性を有するフルオロポリマーフィルムを有利に提供する。
【0053】
無機フィラー(I)は、一般的には、混合物中に粒子形態で提供される。
【0054】
無機フィラー(I)粒子は、一般的には、平均粒度が0.001μm~1000μm、好ましくは0.01μm~800μm、より好ましくは0.03μm~500μmである。有機フィラーは、フレーク又は繊維などの異なる形状因子を有することができる。
【0055】
本発明のプロセスにおいて適切に使用される無機フィラー(I)の中では、無機酸化物(混合酸化物を含む)、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硫化物等を挙げることができる。
【0056】
金属酸化物の中では、SiO2、TiO2、ZnO及びAl2O3を挙げることができる。
【0057】
本発明のこの実施形態に関連して特に良好な結果が得られる化合物の種類は、特にケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムであり、いずれも任意選択的にナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの更なる金属を含有する。
【0058】
これらのケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、一般的に、層状構造を有することが知られている。
【0059】
全てがナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの更なる金属を任意選択的に含有するこれらのケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、特にモンモリロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイトなど、場合により天然起源の特にスメクチック粘土であり得る。代わりとして、全てがナトリウム、カリウム、鉄又はリチウムなどの更なる金属を任意選択的に含有するケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムは、特にフルオロヘクトライト、ヘクトライト、ラポナイトなどの合成粘土の中から選択することができる。
【0060】
この実施形態によれば、本発明のプロセスによって得られるフルオロポリマーフィルムは、前記無機フィラー(I)を含む。
【0061】
本発明のプロセスは、工程(i)で得られた液体混合物からフィルムを処理する工程(ii)を含む。
【0062】
液体混合物からフィルムを処理する技術は、当技術分野で公知であり、工程(i)の液体混合物は、典型的には流延によって処理される。
【0063】
液体混合物を流延によって処理する場合、典型的には、ドクターブレードコーティング、メータリングロッド(若しくはメイヤーロッド)コーティング、スロットダイコーティング、ナイフオーバーロールコーティング又は「ギャップコーティング」等などの周知の技術に従って、標準的なデバイスを用いて支持体表面上に広げることによって塗布される。
【0064】
支持体表面の選択は、特に限定されるものではなく、フルオロポリマーフィルムを一体的な組立体として直接製造することができ、又は別の支持体表面上に流延することによって製造することができ、前記フルオロポリマーフィルムを剥離して個別化し得ることが理解される。
【0065】
本発明のプロセスは、最終的に、フルオロポリマーフィルムを得るために、工程(ii)で得られたフィルムを加熱する工程(iii)を含む。
【0066】
加熱工程(iii)の前に、任意選択的に工程(iii)の温度より低い温度でフィルムを乾燥させて残留溶媒を除去することができる。
【0067】
乾燥は、改善雰囲気下、例えば不活性ガス下で典型的には特に湿気を除いて(0.001%v/v未満の水蒸気含有量)行うか、又は真空下で行うことができる。
【0068】
更に、工程(iii)前の乾燥は、室温(約25℃)又は25℃を超える温度で行うことができ、一般的には後者の条件が好ましい。
【0069】
乾燥温度は、存在する場合、1つ以上の有機溶媒(S)の蒸発による除去を達成するように選択される。
【0070】
また、加熱工程(iii)は、100℃~250℃、好ましくは120℃~200℃の温度で行うことができる。
【0071】
好ましくは、加熱工程(iii)は、少なくとも5分間、より好ましくは少なくとも10又は20分間にわたって行われる。
【0072】
前述で定義された少なくとも1つの電解質塩(ES)を含む本発明のフルオロポリマーフィルムは、電気化学的及び光電気化学的デバイスにおけるポリマー電解質セパレータとして有利に使用することができる。
【0073】
一実施形態では、本発明は、前述で定義されたプロセスによって得ることができるフルオロポリマーフィルムを提供する。
【0074】
一実施形態では、本発明は、太陽光照射に対して光学的に透明なフルオロポリマーフィルムであって、
- 1.5dl/gより高い固有粘度を有する少なくとも1つのフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
- 少なくとも1つのイオン液体(IL)を含み、且つ少なくとも1つの電解質塩(ES)を含有する少なくとも1つの液体媒体(LM)(ここで、(F)、(IL)及び(ES)は、前述で定義された意味を有する)と
を含むフルオロポリマー複合体を含むフルオロポリマーフィルムを提供する。
【0075】
好ましくは、ポリマー(F)は、2.0dl/gより高い、更により好ましくは2.5dl/gより高い固有粘度を有する。
【0076】
フルオロポリマーフィルム中の液体媒体の量は、組成物の総体積に対して典型的には少なくとも25体積%、好ましくは少なくとも45体積%、更により好ましくは少なくとも60体積%である。
【0077】
フルオロポリマーフィルム中の液体媒体の典型的な最大体積パーセントは、組成物の総体積に対して95体積%、好ましくは90体積%、より好ましくは80体積%である。
【0078】
一態様では、本発明は、前述のフィルムを含む電気化学的デバイスを提供する。
【0079】
適切な電気化学的デバイスの非限定的な例としては、特にリチウム電池(リチウム金属に基づくもの及び黒鉛などの挿入された化合物に基づくものを含む)及びリチウム硫黄電池、並びにキャパシタ、特にリチウムイオンキャパシタが挙げられる。
【0080】
リチウムイオン電池に使用するフルオロポリマーフィルムのための好ましい電解質塩(ES)の中では、LiPF6、LiBF4、LiClO4、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、M[N(CF3SO2)(RFSO2)]n(ここで、RFは、C2F5、C4F9、CF3OCF2CF2である)、LiAsF6、LiC(CF3SO2)3、Li2Sn及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0081】
本発明は、ポリマー電解質セパレータとして前述で定義されたフルオロポリマーフィルムを含み、前記フルオロポリマーフィルムは、前述で定義された少なくとも1つの電解質塩(ES)を含む、金属イオン二次電池に更に関する。
【0082】
金属イオン二次電池は、一般的に、正極(カソード)と、前述で定義されたフルオロポリマーフィルムと、負極(アノード)とを組み立てることによって形成される。
【0083】
金属イオン二次電池は、好ましくは、Na、Li、Al、Mg、Zn、K又はY二次電池である。
【0084】
アルカリ二次電池又はアルカリ土類二次電池の代表的なアノード(負極)としては、
- 少なくとも1つのアルカリ又はアルカリ土類金属のホストとして機能する粉末、フレーク、繊維又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビード)などの形態で典型的に存在する、アルカリ又はアルカリ土類金属を挿入することができる黒鉛状炭素、
- アルカリ又はアルカリ土類金属、
- ケイ素ベースの合金、ゲルマニウムベースの合金などのアルカリ又はアルカリ土類金属合金組成物、
- 有利にはアルカリ又はアルカリ土類金属を誘起歪みなしに挿入するのに適切なアルカリ又はアルカリ土類金属チタネート
が挙げられる。
【0085】
金属イオン二次電池は、より好ましくは、リチウムイオン二次電池であり、この場合、負極材料は、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビード)などの形態で典型的に存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素、
- リチウム金属、
- 特に米国特許第6,203,944号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO.)(2001年3月20日)及び/又は国際公開第00/03444号パンフレット(MINNESOTA MINING AND MANUFACTURING)(2005年6月10日)に記載されたものを含むリチウム合金組成物、
- 一般的に式Li4Ti5O12によって表されるリチウムチタネート(これらの化合物は、一般的、可動イオン、即ちLi+を取り入れるときに低レベルの物理的膨脹を有する「ゼロ歪み」挿入材料と考えられる)、
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般的に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウム、
- 式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金
からなる群から選択される。
【0086】
負極(アノード)は、当業者によく知られている添加剤を含有し得る。それらの中でも、特にカーボンブラック、グラフェン又はカーボンナノチューブを挙げることができる。当業者に認識されるように、負極、即ちカソードは、箔、板、ロッド、ペーストなどの任意の好都合な形態で、又は導電性集電体若しくは他の適切な支持体上に負電極材料の塗膜を形成することによって作製された複合体として存在することができる。
【0087】
好ましくは、アノードは、リチウム金属である。
【0088】
アルカリ又はアルカリ土類二次電池の代表的なカソード(正電極)材料としては、高分子バインダー(PB)、粉末電極材料、並びに任意選択的に導電性付与添加剤及び/又は粘度調整剤を含む複合体が挙げられる。
【0089】
リチウムイオン電池用正極を形成する場合、活物質は、一般式LiMY2(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、及びVなどの少なくとも1種の遷移金属種を表し、且つYは、O又はSなどのカルコゲンを表す)で表される金属カルコゲン化物複合体を含むことができる。これらの中でも、一般式LiMO2(式中、Mは、前述と同じである)で表されるリチウム系複合金属酸化物を用いることが好ましい。これらの好ましい例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)及びスピネル構造化LiMn2O4を挙げることができる。導電性付与添加剤は、特に限定された導電性を示すLiCoO2などの活性物質を使用している場合、得られる複合電極の導電性を向上させるために添加され得る。この例としては、カーボンブラック、黒鉛微粉末及び繊維などの炭素質材料、並びにニッケル及びアルミニウムなどの金属の微粉末及び繊維を挙げることができる。
【0090】
ポリマーバインダー(PB)当たり、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)ポリマー、更により詳細にはVDFから誘導される繰り返し単位を含むVDFポリマー、及び前述で定義された0.01~5モル%の式(I)の少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー(MA)から誘導された繰り返し単位を含む、当技術分野で周知のポリマーを使用することができる。
【0091】
本発明は、ポリマー電解質セパレータとして前述で定義されたフルオロポリマーフィルムを含み、前記フルオロポリマーフィルムは、前述で定義された少なくとも1つの電解質塩(ES)を含む、金属イオンキャパシタにも関する。
【0092】
金属イオンキャパシタは、好ましくは、リチウムイオンキャパシタである。
【0093】
適切な光電気化学的デバイスの非限定的な例としては、特に色素増感太陽電池、フォトクロミックデバイス及びエレクトロクロミックデバイスが挙げられる。
【0094】
本発明は、ポリマー電解質セパレータとして本発明のフルオロポリマーフィルムを含み、前記フルオロポリマーフィルムは、前述で定義された少なくとも1つの電解質塩(ES)を含む、色素増感太陽電池に更に関する。
【0095】
色素増感太陽電池は、一般的に、TiO2半導体層などの金属酸化物半導体層が設けられた金属支持体を組み立てることによって形成され、この金属酸化物半導体層は、色素層、前述で定義されたフルオロポリマーフィルム、及び導電性電極で被覆される。
【0096】
適切な色素の非限定的な例としては、特にルテニウムトリス(2,2’-ビピリジル-4,4’-ジカルボキシレ-ト)などのルテニウム及びオスミウムベースの色素、ルテニウムシスジアクアビス(2,2’-ビピリジル-4,4’-ジカルボキシレ-ト)などのルテニウムシス-ジアクアビピリジル錯体、亜鉛テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリンなどのポルフィリン、鉄-ヘキサシアニド錯体などのシアニド及びフタロシアニンが挙げられる。
【0097】
色素増感太陽電池は、典型的には、絶縁層によって上部及び下部で閉じられており、この場合、電池の上部の導電性電極及び絶縁層は、太陽光照射に対して光学的に透明でなければならない。
【0098】
色素増感太陽電池に使用するフルオロポリマーフィルムのための好ましい電解質塩(ES)の中では、ヨウ化物/三ヨウ化物対及びジスルフィド/チオレート対などの酸化還元電解質を挙げることができる。
【0099】
本発明は、ポリマー電解質セパレータとして本発明のフルオロポリマーフィルムを含み、前記フルオロポリマーフィルムは、前述で定義された少なくとも1つの電解質塩(ES)を含む、フォトクロミックデバイスに更に関する。
【0100】
フォトクロミックデバイスは、一般的に、第2の導電性電極に対向する第1の導電性電極であって、前記導電性電極の少なくとも1つは、太陽光照射に対して光学的に透明である、第1の導電性電極と、前記第1の導電性電極の対向面に配置された照射感応電極と、前記第2の導電性電極の対向面に配置された挿入電極と、前述で定義されたフルオロポリマーフィルムとを組み立てることによって形成され、前記フルオロポリマーフィルムは、前記照射感応電極と前記イオン挿入電極との間に配置される。
【0101】
フォトクロミックデバイスに使用するフルオロポリマーフィルムのための好ましい電解質塩(ES)としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、銀塩及びセシウム塩などの金属塩、好ましくはLiClO4、Li(CF3SO3)及びヨウ化リチウムを挙げることができる。
【0102】
適切な照射感受性電極の非限定的な例としては、特にII-VI、III-V及びII-V元素、並びに化合物半導体、並びに遷移金属化合物、好ましくは金属酸化物、金属硫化物及び金属セレン化物などの半導体が挙げられる。
【0103】
照射感受性電極は、太陽光照射の少なくとも一部を吸収する有機又は無機染料を更に含むことができる。
【0104】
適切なイオン挿入電極の非限定的な例としては、特に無機材料、有機材料、又は無機及び有機イオンを挿入できる材料のブレンド及び複合体からなるもの、好ましくはWO3又はMoO3、又は任意選択的に遷移金属(例えば、Ti、Cr、V、Mn、Coなど)を30モル%まで含有するそれらのアルカリ金属(例えば、Li、K、Na、Rb又はCs)タングステン酸及びモリブデン酸からなるものが挙げられる。
【0105】
本発明は、ポリマー電解質セパレータとして本発明のフルオロポリマーフィルムを含み、前記フルオロポリマーフィルムは、前述で定義された少なくとも1つの電解質塩(ES)を含む、エレクトロクロミックデバイスに更に関する。
【0106】
エレクトロクロミックデバイスは、一般的に、電気化学的に活性な物質層と、選択的イオン輸送層と、前述で定義されたフルオロポリマーフィルムが前記導電性電極と前記対向導電性電極との間に順次配置されている対向電極に対向する導電性電極とを組み立てることによって形成される。少なくとも1つの電極は、太陽光照射に対して光学的に透明である。
【0107】
エレクトロクロミックデバイスに使用するフルオロポリマーフィルムのための好ましい電解質塩(ES)としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、銀塩及びセシウム塩などの金属塩、好ましくはLiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2及びヨウ化リチウムを挙げることができる。
【0108】
適切な電気化学的に活性な材料層の非限定的な例としては、特に無機物、有機物、又は無機及び有機の電気化学的に活性な材料のブレンド及び複合体、好ましくはポリアニリン及びその誘導体、リチウム、ナトリウム、カリウム、モリブデン、バナジウム又はチタンの酸化物でドープされたWO3、MoO3、及びWO3、及びMoO3が挙げられる。
【0109】
適切な選択的イオン輸送層の非限定的な例としては、特にポリマー電解質セパレータ中の酸化種が、還元された電気化学物質層に接触することを防止するものが挙げられる。
【0110】
本発明のフルオロポリマーフィルムが、少なくとも1つのプロトン性イオン液体(ILp)を含む液体媒体を含む場合、それは、燃料電池デバイスのポリマーセパレータとして有利に使用することができる。
【0111】
本発明は、ポリマーセパレータとして本発明のフルオロポリマーフィルムを含み、前記フルオロポリマーフィルムは、少なくとも1つのプロトン性イオン液体(ILp)を含む液体媒体を含む、燃料電池デバイスに更に関する。
【0112】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0113】
ここで、以下の実施例を参照しながら本発明を説明するが、これは、単に例示を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
【0114】
原材料
フルオロポリマーA、DMFにおいて25℃で3.0dl/gの固有粘度を有するPVDFホモポリマー。
【0115】
フルオロポリマーB、フルオロポリマー中の総モル数に基づいて約0.8モル%のアクリル酸を含有し、DMFにおいて25℃で2.9dl/gの固有粘度を有するPVDFコポリマー。
【0116】
フルオロポリマーC(比較)、DMFにおいて25℃で0.9dl/gの固有粘度を有するPVDFホモポリマー。
【0117】
式:
のN-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Pyr13TFSI)[イオン液体(IL-1)]。
【0118】
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)[電解質塩(ES-1)]。
【0119】
イオン導電率の測定(σ)
固体電解質セパレータは、1/2インチのステンレス鋼スウェジロックセルのプロトタイプに置かれる。固体ポリマー電解質セパレータの抵抗を測定し、イオン伝導率(σ)を、以下の式:
σ=d/(Rb.Surf)
(式中、dは、フィルムの厚さであり、Rbは、バルク抵抗であり、且つSurfは、ステンレス鋼電極の面積である)
を使用して得た。
【0120】
ポリマー(F)の固有粘度の決定(DMF、25℃)
固有粘度[η](dl/g)は、Ubbelhode粘度計において、ポリマー(F)を約0.2g/dlの濃度でジメチルホルムアミドに溶解させることにより得られた溶液の25℃における滴下時間に基づき、以下の式
(式中、cは、g/dlでのポリマー濃度であり、ηrは、相対粘度、即ち試料溶液の滴下時間と溶媒の滴下時間との比であり、η
spは、比粘度、即ちη
r-1であり、Γは、実験因子であり、ポリマー(F)において3に相当する)
を用いて決定した。
【0121】
フィルムの引張り特性の測定
引張り特性は、ASTM D638標準試験方法(タイプVの試験片、グリップ距離=25.4mm、Lo=21.5mm、1~50mm/分)に従って23℃で引張り試験によって測定した。
【0122】
フィルムのヘイズの測定
フィルムのヘイズは、ASTM E313の標準手順に従って空気中で測定した。
【0123】
ポリマー(F)によるフルオロポリマーフィルムの製造の一般的手順。
60℃で4時間、シクロヘキサノン/DMSO(80/20重量%)(28.5g)(5重量%)においてポリマー(F)の溶解(1.5g)を行った。電解質塩(ES-1)とイオン液体(IL-1)との混合物により、以下の相対量で電解質溶液(液体媒体)を形成した:Pyr13TFSIに溶解した0.5MのLiTFSI。こうして得られた電解質溶液は、25℃で2.4×10-3S/cmのイオン伝導性を有した。電解質溶液(1g)をポリマー(F)溶液(8.5g)に加え、室温で10分間撹拌した。25体積%(30重量%)のポリマー(F)と75体積%(70重量%)の電解質溶液とを含有する混合物を得た。混合物を室温で流延し50℃で乾燥させた。次いで、得られたフィルムの硬化を行うために所定の時間及び温度で加熱段階を行った。
【0124】
実施例1:
フルオロポリマーフィルムは、ポリマーAが使用され、硬化工程が150℃で40分間である前述の一般手順に従って作製した。
【0125】
こうして得られたフルオロポリマーフィルムは、欠陥がなく、透明で均質である。引張り特性を表1に、イオン伝導率を表2に、且つヘイズの結果を表3に示す。
【0126】
実施例2
フルオロポリマーフィルムは、ポリマーBが使用され、硬化工程が150℃で40分間行われる前述の一般手順に従って作製した。
【0127】
こうして得られたフルオロポリマーフィルムは、欠陥がなく、透明で均質である。
【0128】
こうして得られたフルオロポリマーフィルムは、欠陥がなく、透明で均質である。引張り特性を表1に、且つイオン伝導率を表2に示す。
【0129】
比較例1:
フルオロポリマーフィルムは、ポリマーCが使用され、硬化工程が150℃で40分間行われる前述の一般手順に従って作製した。
【0130】
こうして得られたフルオロポリマーフィルムは、透明であるが、脆すぎてイオン伝導度を測定することができない。その乏しい引張り特性を表1に示す。
【0131】
比較例2:
フルオロポリマーフィルムは、ポリマーAが使用され、硬化が70℃で48時間行われる前述の一般手順に従って作製した。こうして得られたフルオロポリマーフィルムは、白色で不均一である。このフィルムのヘイズは、40より優れている(表3を参照されたい)。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
高温(>100℃)でのフィルムの形成(硬化後)後の加熱に伴う高い固有粘度を有するポリマー(F)の本発明による組み合わせのみが、満足する結果のフィルムを提供すると結論付けることができる。
【0136】
実施例3:
実施例1のフルオロポリマーフィルムを以下の電池のイオン導電性セパレータとして試験した:LFP/フルオロポリマーフィルム/Li金属。フィルムの厚さは、30ミクロンであった。
【0137】
LFP(正極):82%のLiFePO4/10%のsuper C65(登録商標)/8%のSOLEF(登録商標)5130PVDF、充填量=0.6mAh/cm2。
【0138】
SuperC65(登録商標)=Imerysから供給された炭素粉末。
【0139】
電池の製造
電池において使用する前に、膜を一晩、減圧下において55℃で乾燥させた。陽極を一晩、減圧下において130℃で乾燥させた。電極及び膜をアルゴンの環境(酸素又は湿度なし)に置いた。2滴のESを正極に添加した。次いで、膜をコイン電池中の正極とリチウム金属との間に配置し、60℃で試験した。ここで、異なる放電速度でこうして得られたコイン電池の放電容量値を以下の表4に示す。
【0140】
実施例4。実施例3と同様であるが、実施例2のフィルムを使用した。結果を表5に報告する。
【0141】