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特許7416577紡績機用のドラフト装置ユニットおよびドラフト装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】紡績機用のドラフト装置ユニットおよびドラフト装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 5/26 20060101AFI20240110BHJP
   D01H 5/86 20060101ALI20240110BHJP
   D01H 5/66 20060101ALI20240110BHJP
   D01H 5/72 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D01H5/26
D01H5/86 A
D01H5/66
D01H5/72
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019143260
(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公開番号】P2020020086
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】10 2018 006 100.1
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカラン ゼスハヤー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル コアン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シファース
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ズィーヴェアト
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ-ヨーゼフ ポイカー
(72)【発明者】
【氏名】カロリーネ ギュンター
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-001831(JP,A)
【文献】国際公開第2005/113872(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02865792(EP,A1)
【文献】特開平11-050339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 5/26
D01H 5/86
D01H 5/66
D01H 5/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績機のドラフト装置(20)用のドラフト装置ユニット(1)であって、当該ドラフト装置ユニット(1)は、スライバ搬送方向(R)に沿って、第1のトップローラ(2)と、該第1のトップローラ(2)に対して間隔をおいて配置された第2のトップローラ(4)とを有しており、前記第1のトップローラ(2)および前記第2のトップローラ(4)は、相応に対応配置されたボトムローラ(3,5)と共働して、前記第1のトップローラ(2)から前記第2のトップローラ(4)に搬送されるスライバをドラフトするために設けられており、前記第1のトップローラ(2)および前記第2のトップローラ(4)のそれぞれの回転軸線が、前記スライバ搬送方向(R)に対して横方向に延びている、ドラフト装置ユニット(1)において、
負圧供給可能なエプロンケージ(8)が、前記第1のトップローラ(2)と前記第2のトップローラ(4)との間において、通気性のエプロン(10)が前記エプロンケージ(8)および1つのエプロントップローラ(2,6)を一緒に取り囲んで循環しながら案内されるように配置されており、前記エプロントップローラ(2,6)は、前記第1のトップローラ(2)によって、または前記エプロンケージ(8)に対応配置された第3のトップローラ(6)によって形成されていて、該第3のトップローラ(6)は、搬送すべき前記スライバに関して、前記第1のトップローラ(2)および前記第2のトップローラ(4)と同じ側に配置されており、かつ前記エプロンケージ(8)は、負圧供給可能な少なくとも1つの貫通開口(12)を、前記第1のトップローラ(2)と前記第2のトップローラ(4)との間において延びる前記スライバに通気性の前記エプロン(10)を介して吸込み空気を供給するために有しており、
前記貫通開口(12)が、当該貫通開口(12)を前記エプロンケージ(8)と間接的に連結させるために前記エプロンケージ(8)と接続可能でかつ負圧が前記エプロンケージ(8)を介して供給可能である手段によって形成されており、
前記貫通開口(12)は、前記スライバに向かい合って位置するように前記エプロンケージ(8)に配置されていることを特徴とする、ドラフト装置ユニット(1)。
【請求項2】
前記貫通開口(12)は、前記スライバ搬送方向(R)に沿って、前記第2のトップローラ(4)に対して、前記エプロントップローラ(2,6)に対する間隔よりも僅かな間隔を有している、
請求項1記載のドラフト装置ユニット(1)。
【請求項3】
前記貫通開口(12)は、前記エプロンケージの、前記第2のトップローラ(4)に向かい合って位置している端部に形成されている、
請求項1または2記載のドラフト装置ユニット(1)。
【請求項4】
前記貫通開口(12)は、前記スライバ搬送方向(R)に対して横方向に延びる長孔として形成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のドラフト装置ユニット(1)。
【請求項5】
前記貫通開口(12)は、前記スライバの縁部側の間において該スライバに向かい合って位置するように配置されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のドラフト装置ユニット(1)。
【請求項6】
前記第2のトップローラ(4)は、当該ドラフト装置ユニット(1)を有するドラフト装置(20)のための出口トップローラを構成している、
請求項1から5までのいずれか1項記載のドラフト装置ユニット(1)。
【請求項7】
紡績機用のドラフト装置(20)であって、第1のトップローラ(2)および第1のボトムローラ(3)を含む第1のローラ対(2,3)と、第2のトップローラ(4)および第2のボトムローラ(5)によって構成された第2のローラ対(4,5)とを有しており、前記第1のローラ対(2,3)と前記第2のローラ対(4,5)とは、スライバ搬送方向(R)に沿って互いに間隔をおいて、かつ前記第1のローラ対(2,3)から前記第2のローラ対(4,5)に搬送されるスライバをドラフトするために設けられており、前記第1のローラ対(2,3)および前記第2のローラ対(4,5)のそれぞれの回転軸線が、前記スライバ搬送方向(R)に対して横方向に延びている、ドラフト装置(20)において、
負圧供給可能なエプロンケージ(8)が、前記第1のローラ対(2,3)と前記第2のローラ対(4,5)との間において、通気性のエプロン(10)が前記エプロンケージ(8)および1つのエプロントップローラ(2,6)を一緒に取り囲んで循環しながら案内されるように配置されており、前記エプロントップローラ(2,6)は、前記スライバ搬送方向において上流側に配置された前記第1のローラ対(2,3)の前記第1のトップローラ(2)によって、または前記エプロンケージ(8)に対応配置された第3のトップローラ(6)によって形成されていて、該第3のトップローラ(6)は、搬送すべき前記スライバに対して、前記第1のトップローラ(2)および前記第2のトップローラ(4)と同じ側に配置されており、かつ前記エプロンケージ(8)は、負圧供給可能な少なくとも1つの貫通開口(12)を、前記第1のローラ対(2,3)と前記第2のローラ対(4,5)との間において延びる前記スライバに通気性の前記エプロン(10)を介して吸込み空気を供給するために有しており、
前記貫通開口(12)が、当該貫通開口(12)を前記エプロンケージ(8)と間接的に連結させるために前記エプロンケージ(8)と接続可能でかつ負圧が前記エプロンケージ(8)を介して供給可能である手段によって形成されており、
前記貫通開口(12)は、前記スライバに向かい合って位置するように前記エプロンケージ(8)に配置されていることを特徴とする、ドラフト装置(20)。
【請求項8】
前記エプロントップローラ(2,6)、前記第1のトップローラ(2)および前記第2のトップローラ(4)、ならびに前記エプロンケージ(8)は、請求項1から6までのいずれか1項のドラフト装置ユニット(1)を構成している、
請求項7記載の、紡績機用のドラフト装置。
【請求項9】
ドラフト装置(20)の出口トップローラ(4)を通過してドラフトされるスライバを、ドラフト装置(20)において集束するための、スライバ集束装置の使用であって、当該スライバ集束装置は、負圧供給可能なエプロンケージ(8)を有していて、通気性のエプロン(10)が1つのエプロントップローラ(2;6)および前記エプロンケージ(8)を取り囲んで循環しながら案内されるようになっており、前記エプロンケージ(8)は、負圧供給可能な少なくとも1つの貫通開口(12)を有している、スライバ集束装置の使用において、
前記スライバ集束装置は、前記ドラフト装置(20)の第1のローラ対(2,3)と第2のローラ対(4,5)との間に配置されており、前記エプロンケージ(8)が通気性の前記エプロン(10)を、前記エプロントップローラ(2,6)および前記エプロンケージ(8)を一緒に取り囲んで案内するようになっており、前記エプロントップローラ(2,6)は、スライバ搬送方向において上流側に配置された前記第1のローラ対(2,3)の第1のトップローラ(2)によって、または前記エプロンケージ(8)に対応配置された第3のトップローラ(6)によって構成されていて、該第3のトップローラ(6)は、搬送すべき前記スライバに対して、前記第1のローラ対(2,3)および前記第2のローラ対(4,5)のトップローラ(2,4)と同じ側に配置されており、かつ前記貫通開口(12)は、互いに間隔をおいて配置された2つの前記ローラ対(2,3;4,5)の間において延びる前記スライバに通気性の前記エプロン(10)を介して吸込み空気を供給するために配置されており、
前記貫通開口(12)が、当該貫通開口(12)を前記エプロンケージ(8)と間接的に連結させるために前記エプロンケージ(8)と接続可能でかつ負圧が前記エプロンケージ(8)を介して供給可能である手段によって形成されており、
前記貫通開口(12)は、前記スライバに向かい合って位置するように前記エプロンケージ(8)に配置されていることを特徴とする、スライバ集束装置の使用。
【請求項10】
前記エプロントップローラ(2,6)、前記第1のトップローラ(2)および前記第2のトップローラ(4)、ならびに前記エプロンケージ(8)は、請求項1から7までのいずれか1項のドラフト装置ユニット(1)を構成している、
請求項9記載のスライバ集束装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機、特に空気紡績機のドラフト装置用のドラフト装置ユニットであって、このときドラフト装置ユニットは、スライバ搬送方向に沿って、第1のトップローラと、該第1のトップローラに対して間隔をおいて配置された第2のトップローラとを有しており、第1のトップローラおよび第2のトップローラは、相応に対応配置されたボトムローラと共働して、第1のトップローラから第2のトップローラに搬送されるスライバをドラフトするために設けられており、このとき第1のトップローラおよび第2のトップローラのそれぞれの回転軸線が、スライバ搬送方向に対して横方向に延びている、ドラフト装置ユニットに関する。本発明はさらに、このようなドラフト装置に関する。
【0002】
通常、ドラフト装置は、紡績プロセス時に、例えばリング精紡機または空気紡績機を用いて、確定された製造速度で、最終繊度にドラフトされたスライバを製造することができる。空気紡績は、リング紡績、圧縮紡績、およびロータ紡績のような公知の紡績法と並んで、今日確立されている紡績法であり、この紡績法では、空気流のコントロールされた使用によって空気紡績ユニットにおいて糸を紡績することができる。ドラフト装置は、紡績機において一般的に、スライバ搬送方向において紡績ユニットの上流に、空気紡績機では空気紡績ユニットの上流に配置されている。このような紡績装置は、例えば刊行物である欧州特許出願公開第2865792号明細書(EP 2865792 A1)に基づいて公知である。ドラフト装置の、出口ローラ対によって形成された端部において、ドラフトされたスライバは、空気紡績機では下流に配置された空気紡績ユニットのノズルブロックを通して、空気紡績ユニットに対応配置された中空の紡績スピンドルの入口開口に達する。スライバの自由端部は、紡績スピンドル内への進入時に、円錐形に形成された紡績コップの周りを流れる方向付けられた空気流によって捩られ、かつこのときスピンドル内への糸の引込み中に、芯繊維の周りに螺旋形に巻き付く。芯繊維は、芯繊維の周りに螺旋形に巻き付けられた、いわゆる巻付き繊維と一緒に、空気紡績された糸を形成する。
【0003】
このようにして得られた糸の品質のために重要なことは、糸の製造のために使用されるスライバの均一性である。このとき特に重要なのは、スライバの繊維の確実な平行性である。通常、ドラフト装置内において存在している、相前後して配置された複数のローラ対であって、それぞれボトムローラとトップローラとから成っているローラ対は、スライバをドラフトするために、かつ中空の紡績スピンドルの入口開口の方向にスライバを搬送するために働き、このときローラ対の周速度は、スライバの搬送方向において増大し、これによって、確定されたドラフトを達成することができる。特に、ドラフト装置の出口ローラ対の高い回転速度は、図1において概略的に例示されているように、スライバ搬送方向Rにおけるスライバ搬送のために、回転方向ORに回転可能なトップローラ4と、それとは逆の回転方向URに回転可能なボトムローラ5とによって形成されている、出口ローラ対のくさび形領域において、随伴流Sのような空気流と、くさび形領域から側方に流出する流れHSのような空気流とを発生させる。このような流れS,HSは、個々のドラフトされた繊維をスライバから逸脱させるか、または部分的にそれどころかスライバから解離させるような結果をもたらすことがあり、このことは結果として、スライバ品質、ひいては糸均一性を、一般的に糸品質をも不都合に損なうことになる。このとき品質に対する空気流の影響は、出口ローラ対4,5の回転速度の増大に連れて、ひいては顕著になった空気流S,HSによっても、さらに高まる。
【0004】
本発明によって、特に、例えば空気紡績機である紡績機のドラフト装置用のドラフト装置ユニットであって、ローラ対の、回転に起因する空気流に基づいて発生する、スライバからの繊維の逸脱を、最小にすることができる、ドラフト装置ユニットを提供することが望まれている。
【0005】
そのために本発明は、ドラフト装置ユニットであって、該ドラフト装置ユニットは、スライバ搬送方向に沿って、第1のトップローラと、該第1のトップローラに対して間隔をおいて配置された第2のトップローラとを有しており、第1のトップローラおよび第2のトップローラは、相応に対応配置されたボトムローラと共働して、第1のトップローラから第2のトップローラに搬送されるスライバをドラフトするために設けられており、このとき第1のトップローラおよび第2のトップローラのそれぞれの回転軸線が、スライバ搬送方向に対して横方向に延びている、ドラフト装置ユニットを提案している。
【0006】
本発明は、負圧供給可能なエプロンケージが、第1のトップローラと第2のトップローラとの間において、通気性のエプロンがエプロンケージおよび1つのエプロントップローラを一緒に取り囲んで循環しながら案内されるように配置されていることによって、特徴付けられている。このときエプロントップローラは、第1のトップローラによって、またはエプロンケージに対応配置された第3のトップローラによって形成されていてよく、該第3のトップローラは、搬送すべきスライバに関して、第1のトップローラおよび第2のトップローラと同じ側に配置されている。エプロンケージは、負圧供給可能な少なくとも1つの貫通開口を、第1のトップローラと第2のトップローラとの間において延びるスライバに通気性のエプロンを介して吸込み空気を供給するために有している。
【0007】
本発明の好適な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
提案された本発明によって、さもなくばくさび形領域において随伴流によって、かつ/または流出する流れによって、スライバから進出する繊維を、スライバに留め、かつスライバと一緒にスライバ搬送方向において連行することができることを、簡単に保証することができる。これによって、スライバの特に高い品質、改善された糸均一性、ひいては品質が改善された糸を製造するための可能性を、保証することができる。
【0009】
好適な実施形態によれば、貫通開口は、スライバ搬送方向に沿って、第2のトップローラに対して、エプロントップローラに対する間隔よりも僅かな間隔を有している。第2のトップローラの近くにおける配置形態は、下流に配置されたローラ対のくさび形領域での、スライバにおける繊維のまとまりの効果を促進する。
【0010】
さらに好適な実施形態では、貫通開口を、トップローラとスライバとの間におけるくさび形領域の近くに、またはくさび形領域内に配置することができ、このように構成されていると、随伴流および流出する流れを、直接、吸込み空気供給によって生ぜしめられる反力によって阻止することができる。この好適な配置形態は、くさび形領域でのスライバにおける繊維のまとまりに対して好適に作用する。
【0011】
好ましくは、貫通開口は、エプロンケージの、第2のトップローラに向かい合って位置している端部に形成されている。このように構成されていると、第2のトップローラに最も近い配置形態を可能にすることができる。
【0012】
さらに好ましくは、貫通開口は、スライバ搬送方向に対して横方向に延びる長孔として形成されている。スライバの、吸込み空気供給可能な領域は、スライバ搬送方向に対して横方向に延びる方向において増大することができ、これによって、くさび形領域でのスライバにおける繊維のさらに改善されたまとまりを達成することができる。
【0013】
別の好適な実施形態によれば、エプロンケージは、1つよりも多くの貫通開口を有することができる。このようになっていると、貫通開口の、それぞれの寸法、およびスライバに向かい合って位置している配置形態を、必要に応じて選択し、かつ設けることができ、これによって、くさび形領域でのスライバにおける繊維のまとまりのさらなる改善を保証することができる。
【0014】
好ましくは、貫通開口は、スライバの互いに向かい合って位置している縁部側の間において、スライバに向かい合って位置するように配置されている。このように構成されていると、スライバ中心に向けられた吸込み流を、通気性のエプロンを介してスライバに作用させることができ、これによって、くさび形領域でのスライバにおける繊維、特に縁部側の繊維のまとまりを、さらに改善することができる。
【0015】
貫通開口は、エプロンケージに直接的にまたは間接的に連結されていてよい。直接的な連結は、貫通開口が例えばエプロンケージに形成されている場合に行われる。間接的な連結は、貫通開口が、エプロンケージに接続可能でかつ負圧がエプロンケージを介してまたは直接的に供給可能である手段によって形成されている場合に、行われる。
【0016】
別の好適な実施形態によれば、第2のトップローラは、ドラフト装置ユニットを含むドラフト装置のための出口トップローラを構成している。このように構成されていると、負圧供給可能なエプロンケージは、ドラフト装置の主ドラフト領域において配置することができる。これによって、スライバにおける繊維のまとまりを、ドラフト装置からの、かつ例えばスライバ搬送方向に沿って下流に配置された紡績ユニット内への移行部からの、スライバの進出直前において、確実に保証することができる。
【0017】
択一的にまたは追加的に、負圧供給可能なエプロンケージが、スライバ搬送方向において主ドラフト領域の上流に配置されている予備ドラフト領域に配置されていることが考えられる。このように構成されていると、既にこの箇所において、スライバ搬送方向において出口ローラ対の上流に配置されたローラ対のくさび形領域でのスライバにおける繊維のまとまりを、保証することができる。既に、好適な択一的な配置形態は、公知のドラフト装置に比べて、スライバの品質の改善を促進する。追加的な配置形態は、スライバ搬送方向に沿ってドラフト装置のほぼ全長にわたって、ドラフト装置に所属のローラ対のそれぞれのくさび形領域でのスライバにおける繊維のまとまりが可能になることによって、さらに好適に作用する。
【0018】
本発明の別の態様によれば、紡績機、特に空気紡績機用のドラフト装置であって、第1のトップローラおよび第1のボトムローラを含む第1のローラ対と、第2のトップローラおよび第2のボトムローラによって構成された第2のローラ対とを有している、紡績機が提供される。第1のローラ対と第2のローラ対とは、スライバ搬送方向に沿って互いに間隔をおいて、かつ第1のローラ対から第2のローラ対に搬送されるスライバをドラフトするために設けられている。第1のローラ対および第2のローラ対のそれぞれの回転軸線、つまり対応配置されたボトムローラおよびトップローラの回転軸線が、スライバ搬送方向に対して横方向に延びている。
【0019】
ドラフト装置は、負圧供給可能なエプロンケージが、第1のローラ対と第2のローラ対との間において、通気性のエプロンがエプロンケージおよび1つのエプロントップローラを一緒に取り囲んで循環しながら案内されるように配置されており、このときエプロントップローラは、スライバ搬送方向において上流側に配置された第1のローラ対の第1のトップローラによって、またはエプロンケージに対応配置された第3のトップローラによって形成されていて、該第3のトップローラは、搬送すべきスライバに関して、第1のトップローラおよび第2のトップローラと同じ側において、第1のトップローラと第2のトップローラとの間に配置されていることによって、特徴付けられている。エプロンケージは、負圧供給可能な少なくとも1つの貫通開口を、第1のローラ対と第2のローラ対との間において延びるスライバに通気性のエプロンを介して吸込み空気を供給するために有している。
【0020】
好適な実施形態によれば、エプロントップローラ、第1のトップローラおよび第2のトップローラ、ならびにエプロンケージは、上に記載した実施形態のうちの1つの実施形態によるドラフト装置ユニットを構成している。
【0021】
このようなドラフト装置によって、上において既に記載した利点と同じ利点を得ることができる。
【0022】
本発明の別の態様によれば、ドラフト装置の出口トップローラを通過してドラフトされるスライバを、ドラフト装置において集束するために設けられている、スライバ集束装置を使用することが提案され、このときスライバ集束装置は、負圧供給可能なエプロンケージを有していて、通気性のエプロンが1つのエプロントップローラおよびエプロンケージを一緒に取り囲んで循環しながら案内されるようになっており、エプロンケージは、負圧供給可能な少なくとも1つの貫通開口を有している。
【0023】
この使用は、スライバ集束装置が、ドラフト装置の第1のローラ対と第2のローラ対との間に配置されており、エプロンケージが通気性のエプロンを、エプロントップローラおよびエプロンケージを一緒に取り囲んで案内するようになっており、このときエプロントップローラは、スライバ搬送方向において上流側に配置された第1のローラ対の第1のトップローラによって、またはエプロンケージに対応配置された第3のトップローラによって構成されていて、該第3のトップローラは、搬送すべきスライバに対して、第1のローラ対および第2のローラ対のトップローラと同じ側に配置されていることによって、特徴付けられている。貫通開口は、互いに間隔をおいて配置された2つのローラ対の間において延びるスライバに通気性のエプロンを介して吸込み空気を供給するために配置されている。
【0024】
好適な実施形態によれば、エプロントップローラ、第1のトップローラおよび第2のトップローラ、ならびにエプロンケージは、上に記載した実施形態のうちの1つの実施形態によるドラフト装置ユニットを構成している。
【0025】
スライバ集束装置のこのような使用によって、上において既に記載した利点と同じ利点を得ることができる。
【0026】
上に記載した好適な実施形態は、特に空気紡績機のために有利である。上に記載した好適な実施形態は、いずれにせよ、例えばリング精紡機、フライヤ、コンパクト紡績機、サイロ紡績機、およびその他の紡績機のような、他の紡績機型式においても使用することができる。
【0027】
次に本発明について、図面に示された実施形態を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術による回転するローラ対において発生する空気流を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態によるドラフト装置ユニットを概略的に示す図である。
図3図1に示されたドラフト装置ユニットを含むドラフト装置を概略的に示す図である。
【0029】
実施形態の以下の記載において、異なった図面において示されかつ類似の作用を有するエレメントに対しては、等しいまたは類似の符号が使用され、このときこれらのエレメントについて、繰り返し記載することは省く。
【0030】
図2には、1実施形態によるドラフト装置ユニット1が概略的に側面図で示されている。ドラフト装置ユニット1は、スライバ搬送方向Rに沿って、第1のトップローラ2と、この第1のトップローラ2に対して間隔をおいて配置された第2のトップローラ4とを有している。第1のトップローラ2および第2のトップローラ4は、相応に対応配置されたボトムローラ3,5と共働して、スライバ搬送方向Rにおいて第1のトップローラから第2のトップローラに搬送されるスライバをドラフトするために設けられている(図3)。両トップローラ2,4のそれぞれの回転軸線2R,4Rは、スライバ搬送方向Rに対して横方向に延びている。このようないわゆるドラフト装置トップローラの構成および配置は、一般的であり、かつ本発明の核心を成すものではないので、詳細な説明は省く。
【0031】
第1のトップローラ2と第2のトップローラ4との間には、負圧供給可能なエプロンケージ8がエプロントップローラ6を備えて配置されており、通気性のエプロン10がエプロンケージ8およびエプロントップローラ6を一緒に取り囲んで循環しながら案内されている。エプロントップローラ6は、エプロンケージ8に対応配置されていて本実施形態ではエプロンケージ8内に配置された第3のトップローラ6として構成されている。エプロントップローラ6は、スライバ搬送方向に搬送すべきスライバに対して、第1のトップローラ2および第2のトップローラ4と同じ側に配置されている。これとは択一的に、エプロントップローラは、1実施形態によれば、第1のトップローラ2によって構成されており、このようになっていると、これにより通気性のエプロン10は第1のトップローラ2を取り囲んで循環することになる。
【0032】
エプロンケージ8は、負圧供給可能な少なくとも1つの貫通開口12を、第1のトップローラ2と第2のトップローラ4との間において延びるスライバに通気性のエプロン10を介して吸込み空気を供給するために有している。貫通開口12は、スライバに向かい合って位置するようにエプロンケージ8に配置されており、かつ図示されていない負圧源に、エプロンケージ8を介して間接的に、または直接的に接続されている。そのために貫通開口12は、エプロンケージ8を備えて形成された負圧通路に、または貫通開口12に通じる外部の負圧通路に連結されていてよい。貫通開口12は、通気性のエプロン10を介してスライバに吸込み空気を供給するために、必要に応じて選択された構成を有することができる。
【0033】
図3には、それぞれスライバドラフト領域VZとスライバドラフト領域HZにおいて、図1に示されたドラフト装置ユニット1を有するドラフト装置20が、概略的に示されている。
【0034】
ドラフト装置20は、第1のローラ対2,3を有しており、この第1のローラ対2,3は、第1のトップローラ2と、この第1のトップローラ2と共働する第1のボトムローラ3とによって構成される。第1のトップローラ2および第1のボトムローラ3は、両ローラの間に、第1のトップローラ2と第1のボトムローラ3との間において貫通案内されるスライバをニップするためのニップラインが形成されるように配置されている。第1のローラ対2,3は、ドラフト装置20の作動中に、確定された第1の回転速度で、スライバをスライバ搬送方向Rにおいて搬送するように回転する。
【0035】
さらに第2のローラ対4,5が設けられており、この第2のローラ対4,5は、第2のトップローラ4と、この第2のトップローラ4と共働する第2のボトムローラ5とによって、第1のローラ対2,3と同等の形式で構成されている。第2のローラ対4,5は、ドラフト装置20の作動中に、第1のローラ対2,3に比べて高い速度で回転する。第2のローラ対4,5は、本実施形態ではドラフト装置20の出口ローラ対を構成している。第1のローラ対2,3と第2のローラ対4,5との互いに異なった回転速度によって、第1のローラ対2,3および第2のローラ対4,5によってニップされて搬送されるスライバのドラフトが行われる。第1のローラ対2,3のニップラインと第2のローラ対4,5のニップラインとの間に形成された領域は、本実施形態では、いわゆる主ドラフト領域HZを構成している。第1のローラ対2,3および第2のローラ対4,5の駆動は、汎用の形式で、例えば所属のトップローラまたはボトムローラの個別駆動装置を用いて、または機械長手方向に配置されたドラフト装置の複数のボトムローラまたは1つの共通のボトムローラを駆動する1つの共通の駆動装置を用いて行うことができる。
【0036】
ドラフト装置20はさらに第3のローラ対14,15を有しており、この第3のローラ対14,15は、第1のローラ対2,3および第2のローラ対4,5と同等の形式で、第3のトップローラ14と、この第3のトップローラ14と共働する第3のボトムローラ15とによって構成されている。第3のローラ対14,15は、ドラフト装置20のための本実施形態では、入口ローラ対を構成しており、この入口ローラ対を介してスライバは、ドラフト装置20内に導入される。第3のローラ対14,15は、ドラフト装置20の作動中に、第1のローラ対2,3に比べて低い速度で回転する。これによって第1のローラ対2,3と入口ローラ対14,15との間において、さらなるドラフト領域が、いわゆる予備ドラフト領域が構成され、この予備ドラフト領域においてスライバには、主ドラフト領域におけるよりも僅かな第1のドラフトが加えられる。
【0037】
予備ドラフト領域VZおよび主ドラフト領域HZにおいて、本実施形態では、エプロントップローラ6と、エプロンケージ8およびエプロントップローラ6を一緒に取り囲んで循環する通気性のエプロン10とを備えた、それぞれ1つのエプロンケージ8が配置されている。エプロンケージ8は、図示されていない負圧源に接続されていて、かつ貫通開口12に通じる負圧通路を有している。貫通開口12は、それぞれのエプロンケージ8において、スライバ搬送方向Rにおいて下流側に配置された第1のローラ対2,3もしくは第2のローラ対4,5の近くで、搬送すべきスライバに向かい合って位置するように設けられており、これによってスライバに、通気性のエプロン10を介して吸込み空気を供給することができる。好ましくは、貫通開口12は、エプロンケージ8の、下流側に配置された第1のローラ対2,3もしくは第2のローラ対4,5に向かい合って位置している縁部に形成されていてよく、このようになっていると、通気性のエプロン10を介して行われる、スライバへの吸込み空気供給を、下流側に配置された対応する第1のローラ対2,3もしくは第2のローラ対4,5の可能な限り近くで、もしくは各ローラ対2,3,4,5のくさび形領域において、実施することができる。
【0038】
記載されかつ図面に示された実施形態は、単に一例として選択されている。種々様々な実施形態を、完全に、または個々の特徴との関連において組み合わせることが可能である。また1つの実施形態を、別の実施形態の特徴によって補足することも可能である。
【0039】
1実施形態が、第1の特徴と第2の特徴との間における「および/または」という接続詞を含んでいる場合、このことは、実施形態は、1つの実施形態によれば第1の特徴および第2の特徴を有しており、かつ別の実施形態によれば、第1の特徴だけ、または第2の特徴だけを有していると、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0040】
1 ドラフト装置ユニット
2 第1のトップローラ
2R 第1のトップローラの回転軸線
3 第1のボトムローラ
4 第2のトップローラ
4R 第2のトップローラの回転軸線
5 第2のボトムローラ
6 第3のトップローラ
7 第3のボトムローラ
8 エプロンケージ
10 通気性のエプロン
12 貫通開口
20 ドラフト装置
HS 流出する流れ
OR トップローラの回転方向
R スライバ搬送方向
S 随伴流
UR ボトムローラの回転方向
VZ 予備ドラフト領域
HZ 主ドラフト領域
図1
図2
図3