(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】多電極カテーテルにおける電極表面インピーダンスの自動調節
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20240110BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B5/287
A61B5/367
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019147153
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-06-17
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】エーヤル・ロットマン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・レビン
(72)【発明者】
【氏名】エフゲニー・ボニャック
(72)【発明者】
【氏名】アレク・ビレンスキー
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】オレグ・ドゥルガー
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07207987(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0269581(US,A1)
【文献】特表平09-508293(JP,A)
【文献】特表2010-514504(JP,A)
【文献】特開2012-000465(JP,A)
【文献】米国特許第05991650(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
水溶液中に浸漬された多電極カテーテルの複数の電極に交流電流(AC)信号を印加するように構成された制御可能な信号源と、
プロセッサであって、
印加された
前記AC信号に応答して、前記電極
のそれぞれの表面インピーダンス又はそれぞれの電気ノイズレベルを推定することと、
推定された
前記電極の表面インピーダンス又は電気ノイズレベルが事前設定値を下回ったときに、各電極を他の電極とは独立して
前記信号源から接続解除することと、を行うように構成された、プロセッサと、を備え、
各電極と直列に接続されたそれぞれの抵抗器を備え、前記プロセッサが、各抵抗器の両端のそれぞれの電圧降下を検知することと、前記電圧降下に応答して前記電極の前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルを推定することと、を行うように構成されている、装置。
【請求項2】
ユーザから前
記信号源の出力パラメータを受信するように構成されたユーザインターフェースを備え、前記プロセッサが、前記
AC信号を前記ユーザから受信された前記出力パラメータを用いて構成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各電極と直列に接続されたそれぞれのスイッチを備え、前記プロセッサが、前記それぞれのスイッチを制御することによって各電極を接続解除するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルの以前の調節プロセスの結果に基づいて前記事前設定値を設定するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
水溶液中に浸漬された多電極カテーテルの複数の電極に交流電流(AC)信号を印加することと、
印加された
前記AC信号に応答して、前記電極
のそれぞれの表面インピーダンス又はそれぞれの電気ノイズレベルを推定することと、
推定された
前記電極の表面インピーダンス又は電気ノイズレベルが事前設定値を下回ったときに、各電極を他の電極とは独立して
前記AC信号の信号源から接続解除することと、を含
み、
各電極の前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルを推定することが、各電極と直列に接続されたそれぞれの抵抗器の両端のそれぞれの電圧降下を検知することと、前記電圧降下に応答して、前記電極の前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルを推定することと、を含む、方法。
【請求項6】
ユーザから前記AC信号のパラメータを受信することと、前記AC信号を前記ユーザから受信された前記パラメータを用いて構成することと、を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
各電極を接続解除することが、各電極と直列に接続されたそれぞれのスイッチを制御することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記事前設定値を、前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルの以前の調節プロセスの結果に基づいて設定することを含む、請求項
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療用プローブに関し、具体的には、電気生理学的検知カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
生体適合性電極の電気特性を改善するために、様々な既知の技術が提案された。例えば、「An Electrode for Recording Single Motor Unit Activity during Strong Muscle Contractions」、IEEE Transactions on Biomedical Engineering,Vol.BME-19,No.5,September,1972,pages367~372では、De Luca及びForrestが、4つの単極及び6つの双極微小電極の組み合わせを提案する軽量針電極の構築を説明している。電極のインピーダンスを低減する電解処理が説明されている。12個の単極及び12個の双極微小電極の周波数応答が、電解処理前、電解処理の10分後、及び電解処理の72時間後に測定された。Bode形態が、3つの状況の各々について、単純な抵抗容量(resistance-capacitance、RC)モデルを合成するために使用され、電極の先端の物理変化に対するいくつかの洞察を与えた。
【0003】
別の例として、「Comparison of Electrode Impedances of Pt,PtIr(10%Ir)and Ir-AIROF Electrodes Used in Electrophysiological Experiments」、Medical & Biological Engineering & Computing,January,1982,volume20,pages77~83では、Gielen及びBergveldが、低周波数範囲で深刻な測定不良をもたらし得る、4つの電極のアレイにおける電極インピーダンス及び浮遊容量の組み合わせのため、予想外の困難に直面した、4つの電極アセンブリを用いた組織インピーダンス測定を説明している。刊行物は、電解エッチングを使用して、電極の有効な表面を拡大し、より低い電極インピーダンスを結果としてもたらすことを説明している。エッチングは、両方が生理食塩水に浸漬された、電極と大きい不活性Ptリング電極との間に正弦波電圧を印加することによって達成された。
【0004】
米国特許第4,721,551号は、生物医学人口器官での使用のための金属微小電極の表面上にイリジウム金属を電気めっきする方法を説明している。本方法の別の態様は、in vitro条件下で選択された生理学的に等価なリン酸緩衝生理食塩水中で、約6~150時間保管することにより、微小電極を調整することを開示している。微小電極の更なる調整は、微小電極の表面上に少なくとも1つの酸化イリジウムを形成するために、100~10,000ミリボルト/秒で約+1~-1ボルトを、約1~100サイクルで印加することによって行われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、制御可能な信号源及びプロセッサを含む装置を提供する。制御可能な信号源は、水溶液中に浸漬された多電極カテーテルの複数の電極に交流電流(Alternating Current、AC)信号を印加するように構成されている。プロセッサは、印加されたAC信号に応答して、電極の各々のそれぞれの表面インピーダンス又はそれぞれの電気ノイズレベルを推定するように構成されている。プロセッサは、電極の推定された表面インピーダンス又は電気ノイズレベルが事前設定値を下回ったときに、各電極を他の電極とは独立して接続解除するように更に構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、装置は、ユーザから制御可能な信号源の出力パラメータを受信するように構成されたユーザインターフェースを更に含み、プロセッサが、制御可能な信号源をユーザから受信された出力パラメータを用いて構成するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、装置は、各電極と直列に接続されたそれぞれの抵抗器を更に含み、プロセッサが、各抵抗器の両端のそれぞれの電圧降下を検知することと、電圧降下に応答して電極の表面インピーダンス又は電気ノイズレベルを推定することと、を行うように構成されている。
【0008】
一実施形態では、装置は、各電極と直列に接続されたそれぞれのスイッチを更に含み、プロセッサが、それぞれのスイッチを制御することによって各電極を接続解除するように構成されている。
【0009】
別の実施形態では、プロセッサは、表面インピーダンス又は電気ノイズレベルの以前の調節プロセスの結果に基づいて事前設定値を設定するように構成されている。
【0010】
本発明の一実施形態によると、水溶液中に浸漬された多電極カテーテルの複数の電極に交流電流(AC)信号を印加することを含む方法が追加的に提供される。各電極のそれぞれの表面インピーダンス又はそれぞれの電気ノイズレベルは、印加されたAC信号に応答して推定される。電極の推定された表面インピーダンス又は電気ノイズレベルが事前設定値を下回ったときに、各電極が、他の電極とは独立して接続解除される。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく電気生理学的マッピングシステムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、多電極カテーテルの微小電極の表面インピーダンスを均等化するための電気化学装置の概略ブロック図である。
【
図3A】本発明の一実施形態による、微小電極のインピーダンス又は電気ノイズのいずれかを均等化する調整プロセスを例示する概略グラフである。
【
図3B】本発明の一実施形態による、微小電極のインピーダンス又は電気ノイズのいずれかを均等化する調整プロセスを例示する概略グラフである。
【
図4A】本発明の一実施形態による、調整プロセスの前後の微小電極によって発生した、測定された電気ノイズを示すグラフ対である。
【
図4B】本発明の一実施形態による、調整プロセスの前後の微小電極によって発生した、測定された電気ノイズを示すグラフ対である。
【
図4C】本発明の一実施形態による、調整プロセスの前後の微小電極によって発生した、測定された電気ノイズを示すグラフ対である。
【
図4D】本発明の一実施形態による、調整プロセスの前後の微小電極によって発生した、測定された電気ノイズを示すグラフ対である。
【
図4E】本発明の一実施形態による、調整プロセスの前後の微小電極によって発生した、測定された電気ノイズを示すグラフ対である。
【
図4F】本発明の一実施形態による、調整プロセスの前後の微小電極によって発生した、測定された電気ノイズを示すグラフ対である。
【
図5】本発明の一実施形態による、微小電極のインピーダンスを均等化するための方法を概略的に例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
マッピングカテーテルは、不整脈等の電気生理学的条件を診断するために患者の心臓内に導入され得る。カテーテルの遠位端に適合された電極を使用して、医師は、次いで、電気生理学的医学的条件に関与する1つ又は2つ以上の心内部位の性質及び場所を示す電気生理学的信号を取得し得る。医師は、次いで、心内アブレーション等の局所治療を実施し得る。
【0014】
組織の電位の局所測定は、2つの隣接する小面積電極を利用して、即ち、双極信号取得幾何形状で実施され得る。心臓等の器官内でこのような双極測定を実施するために、電極は、心臓内に挿入される電気生理学的マッピングカテーテルの遠位端等の、プローブの遠位端に適合される。追加的に又は代替的に、同一カテーテルが、単極測定幾何形状で使用されてもよく、この場合、小面積電極のうちの1つ又は2つ以上が、皮膚に取り付けられた1つ又は2つ以上の表面電極に対して心臓組織電位を測定する。
【0015】
小面積電極の表面品質に伴う様々な問題は、双極又は単極検知幾何形状を使用するか否かにかかわらず、電気生理学的信号が望ましくない結果を被ることを引き起こし得る。このような障害は、低周波数ノイズ(例えば、基線ワンダー)及び/又は高周波数ホワイトノイズを含み得る。このようなノイズは、侵襲的処置中に実施される測定に基づいて、堅牢な臨床診断を妨げ得る。
【0016】
以下に説明される本発明の実施形態は、多電極カテーテルの小面積電極(以下、「マイクロ電極」とも称される)の表面インピーダンス、及び/又は小面積電極によって生成された電気ノイズを均等化し、より優れた信号品質を結果としてもたらす。測定された信号品質の改善は、例えば、双極測定幾何形状を使用してカテーテルの遠位端に適合された微小電極によって取得された心内心電図(electrocardiogram、ECG)信号において明らかであり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、電気分解による微小電極調整方法が提供され、この方法は、所与の許容差内で、全ての微小電極の表面インピーダンスを事前設定最小値に自動的に均等化することを含む。方法は、電極の各々とリターン電極(即ち、共通接地)との間の低振幅(例えば、数μA~数mA)及び低周波数(例えば、数ヘルツ~数十ヘルツ)の電流を通過させることに基づき、一方で電極及びリターン電極は、水溶液(例えば、生理食塩水)内に配置される。
【0018】
一実施形態では、信号源は、上記の電流を発生させる。制御可能な信号源は、電極に電流を印加する。電気分解プロセス中、プロセッサは、例えば、リアルタイムの電圧測定を使用して、微小電極の各々とリターン電極との間のインピーダンスを連続的に推定する。インピーダンスを均等化するために、個々の微小電極インピーダンスが事前設定最小値に達するときはいつでも、プロセッサは、電気分解による電極調整のプロセスが停止するように、信号源から微小電極を自動的に(かつ残りの電極とは独立して)接続解除する。微小電極の全てが、要求された事前設定最小インピーダンス値に達し、かつ信号源から全て接続解除されたとき、微小電極セットを調整するプロセス全体が終了する。
【0019】
代替的実施形態では、開示された方法の変形例は、微小電極によって発生した電気ノイズのリアルタイムでの測定に基づいて電極を調整して、電極ノイズが事前設定ノイズ値を下回ったときに各微小電極を電気分解から独立して接続解除するように適用される。
【0020】
微小電極を使用して取得された電気生理学的信号の品質を改善するための開示された技術は、侵襲的処置の堅牢な臨床診断結果を提供することを補助し得る。このようにして、開示された技術は、心臓カテーテル法等の侵襲的処置の全体的な有効性を改善し得る。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく電気生理学的マッピングシステム21の概略描写図である。
図1は、患者25の心臓23の電気解剖学的マッピングを実施するために電気解剖学的マッピングカテーテル29を使用している医師27を図示している。マッピングカテーテル29は、その遠位端に、1つ又は2つ以上のアーム20を含み、その各々は、1つ又は2つ以上の電極22に連結されている。
【0022】
マッピング処置中、電極22が患者の心臓23の内側にある間、電極22の場所が追跡される。その目的のために、電気信号が、電極22と外部電極24との間で伝達される。例えば、3つの外部電極24が患者の胸に連結されてもよく、別の3つの外部電極が患者の背中に連結されてもよい。(例示し易いように、1本の外部電極しか
図1に示されていない)。
【0023】
信号に基づいて、患者の身体上の電極24の既知の位置を考慮して、プロセッサ28は、患者の心臓内の電極22の各々の推定された場所を計算する。心内ECGトレース等のそれぞれの電気生理学的データが、電極22を使用することによって心臓23の組織から追加的に取得される。こうして、プロセッサは、電気生理学的信号等の電極22から受信された任意の所与の信号を、信号が取得された場所と関連付け得る。プロセッサ28は、電気インターフェース35を介して結果的に得られた信号を受信し、これらの信号に含有される情報を使用して、電気生理学的マップ31及びECGトレース40を構築し、これらをディスプレイ26上に提示する。
【0024】
図1に示される例示的な図は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。Lasso(登録商標)カテーテル(Biosense Webster,Inc.,Irvine,Californiaにより製造されている)等の、他のタイプの電気生理学的検知カテーテル幾何形状が採用されてもよい。加えて、接触センサは、マッピングカテーテル29の遠位端に適合され、組織との電極接触の物理的品質を示すデータを送信してもよい。一実施形態では、1つ又は2つ以上の電極22の測定値が、その物理的接触品質が悪いと示される場合に廃棄され得るが、他の電極の測定値が、その接触品質が十分であると示される場合に有効と見なされ得る。
【0025】
プロセッサ28は、通常、本明細書に述べられる機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアを有する汎用コンピュータを含む。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は代替として、又は更には、磁気メモリ、光学メモリ又は電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上で提供及び/又は記憶されてもよい。
【0026】
電極インピーダンスの自動調節
図2は、本発明の一実施形態による、多電極カテーテル29の微小電極22の表面インピーダンスを均等化するための電気化学装置50の概略ブロック図である。示されるように、微小電極22は、生理食塩水で充填された浴41に浸漬され、これは、電流が、同様に浴41に浸漬された電極22とリターン電極33との間を流れるときに電気分解条件を引き起こす。カテーテル29は、カテーテルのハンドル32でコネクタ45を介して装置50に電気的に接続される。
【0027】
装置50のユーザインターフェース30は、制御可能な交流(AC)信号源34及びプロセッサ37に接続されている。ユーザインターフェース30は、ユーザが、制御可能な信号源34の出力パラメータを設定し、かつ制限プロセッサ37が電気分解を停止する目標電気インピーダンス及び/又は電気ノイズ値を事前設定することを可能にする。
【0028】
電気分解の間、信号源34は、それぞれの微小電極22を介して独立AC電流の数N、N≧2を駆動する。電極33は、AC電流のリターン経路を形成する。それぞれのスイッチ、例えば、リレー55は、リレーの接点「3-4」を開くことによって、各電極22を信号源34から選択的に接続解除するように構成されている。リレー55は、プロセッサ37によって制御される。
【0029】
電気分解の間、プロセッサ37は、直列抵抗器44 R1~RN上のそれぞれの電圧降下を測定することによって、電極22を介して流れる個々の電流を評価する。プロセッサ37は、チャネルを介して接続された電極の評価されたインピーダンスが事前設定目標最小インピーダンス値に達したとき、及び/又は評価された電気ノイズが事前設定電気ノイズ値を下回ったとき、それぞれの電極22を接続解除するように、リレー55の各々を独立してスイッチオフ(即ち、接続解除)するように構成されている。
【0030】
図2に示される例示的な図は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。
図2は、本発明の実施形態に関連する部分のみを示す。例えば、プロセッサ37は、直列抵抗器44 R
1~R
N上の電圧降下のノイズのRMS値又はピーク間値を測定し得る。電圧源の使用に代えて、制御可能な信号源34は、調整プロセス中に直列抵抗器44 R
1~R
N上で降下する、変化する電圧を測定するプロセッサ37を含む電流源を備えてもよい。デジタルオシロスコープ等の他のシステム要素が使用され得るが、提示の簡略化のために省略される。
【0031】
図3A及び
図3Bは、本発明の一実施形態による、微小電極のインピーダンス又は電気ノイズのいずれかを均等化する調整プロセスを例示する概略グラフである。
図3Aは、調整の持続時間の関数として測定された電極22のインピーダンスの大きさの曲線58を示す。示されるように、調整プロセスの開始時(時間=0)、インピーダンスの大きさ58の初期値は、電極間で変化する。電流が異なる電極を介して流れると、それらのインピーダンスの大きさは、各々、個々の様式で降下する。インピーダンスの大きさの曲線58kを有する電極22k等の所与の電極のインピーダンスの大きさが、時間t
kで事前設定されたインピーダンスの大きさ56|Z
o|に到達すると、プロセッサ37は、チャネルkリレーをスイッチオフする。電極22kのインピーダンス均等化(即ち、調整)プロセスが、次いで、終了される。
図3Aに見られるように、様々な電極は、値の事前設定|Z
o|に達するまでの、それらのインピーダンスの大きさに対する処置の異なる持続時間を有する。
【0032】
代替的に、いくつかの実施形態では、装置50は、例えば、電圧RMSで提示される、電極22によって発生したピーク間電気ノイズを、所与の許容差まで均等化するために使用される。同様の調整プロセスが、
図3Bに示される装置50によって適用され、プロセッサ37は、インピーダンスを測定する代わりに、曲線59が示すように時間と共に個々に降下する、測定された電圧の電気ノイズを分析する。最大RMS電気ノイズに対する事前設定目標値|V
o|は、電圧ユニットの電気ノイズ制限57によって与えられる。個々のチャネルの分析ノイズが|V
o|未満の値に達すると、プロセッサ37は、それぞれのリレー55をスイッチオフすることによって電極の調整を応答的に終了する。
【0033】
図3A及び
図3Bに示されている描写図は、概念を明確化する目的のために単に選択されているに過ぎない。曲線58及び曲線59の実際の形態は、変化してもよい。事前設定インピーダンス56及びRMS電気ノイズ57は、それぞれ、曲線58及び曲線59について例示されている値よりも端点に対してより大きい又はより小さい値を有してもよい。
【0034】
図4A~
図4Fは、本発明の一実施形態による、調整プロセスの前後の微小電極によって発生した、測定された電気ノイズを示すグラフ対である。
図4A、
図4C及び
図4Eのグラフは、電気化学装置50によるノイズ最小化を受ける前の測定されたノイズ(電圧の変動として提示される)のトレースを示す。示されるように、未調整電極によって発生した
図4Eのピーク間ノイズは、
図4Aに示される別の未調整電極によって発生したノイズの2倍を超える。開示された電気ノイズ均等化プロセス後、電極のピーク間ノイズ値は、
図4B、
図4D及び
図4Fによってもたらされるそれぞれのグラフによって示されるように、所与の許容差内で、より小さく、かつ非常に類似するようになる。
【0035】
図5は、本発明の一実施形態による、微小電極22のインピーダンスを均等化するための方法を概略的に例示するフロー図である。プロセスは、準備ステップ60において、カテーテル29を装置50に電気的に接続し、電極22を生理食塩水浴41内に浸漬することで開始する。
【0036】
次に、インピーダンスを均等化するプロセスが、調整プロセスステップ62において、電気分解電流を印加する信号源34によって開始する。電極22の個々のインピーダンスは、測定ステップ64において、プロセッサ37による調整プロセス中に周期的に測定される。プロセッサ37は、比較ステップ66において、評価されたインピーダンスを事前設定インピーダンス値と比較する。所与の電極22のインピーダンスが事前設定値に達した場合、プロセッサ37は、電極を接続解除して電気分解を停止する。インピーダンスが事前設定値に未だ達していない場合、調整プロセスは、調整プロセスステップ62にループすることによって継続する。
【0037】
いくつかの実施形態では、事前設定インピーダンス値及び所与の許容差の両方は、電極セットのそれぞれ個々の調整プロセスを開始する前に設定される。例えば、目標インピーダンス値は、カテーテルの電極22間の最低測定インピーダンスとして事前設定される。別の実施形態では、プロセッサ37は、以前の均等化プロセスで達成されたインピーダンス値の統計分析に基づいて(即ち、表面インピーダンスを均等化するための開示されたプロセスを受けた電極の電極インピーダンスデータを分析することに基づいて)、事前設定インピーダンスを設定する。同様に、プロセッサ37は、以前の均等化プロセスで達成されたノイズレベルの統計分析に基づいて、事前設定ノイズレベルを設定し得る。
【0038】
図5に示す例示的なフロー図は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。代替的実施形態では、プロセッサ37は、各電極によって発生した電気ノイズを分析して、事前設定ノイズ値と比較する。プロセッサ37は、プロセッサ37によって示されるように、電極によって発生した電気ノイズが事前設定ノイズ値を下回ったときに、電極の調整プロセス62を終了する。
【0039】
本明細書に説明される実施形態は、主として侵襲的心臓用途に関するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、侵襲的神経学的処置等の他の用途で使用されることもできる。本明細書に説明される方法及びシステムはまた、脳波図(electroencephalogram、EEG)の記録等の非侵襲的処置向けの電極と共に使用されることもできる。
【0040】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
水溶液(aquatic solution)中に浸漬された多電極カテーテルの複数の電極に交流電流(AC)信号を印加するように構成された制御可能な信号源と、
プロセッサであって、
前記印加されたAC信号に応答して、前記電極の各々のそれぞれの表面インピーダンス又はそれぞれの電気ノイズレベルを推定することと、
前記電極の前記推定された表面インピーダンス又は電気ノイズレベルが事前設定値を下回ったときに、各電極を他の電極とは独立して接続解除することと、を行うように構成された、プロセッサと、を備える、装置。
(2) ユーザから前記制御可能な信号源の出力パラメータを受信するように構成されたユーザインターフェースを備え、前記プロセッサが、前記制御可能な信号源を前記ユーザから受信された前記出力パラメータを用いて構成するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 各電極と直列に接続されたそれぞれの抵抗器を備え、前記プロセッサが、各抵抗器の両端のそれぞれの電圧降下を検知することと、前記電圧降下に応答して前記電極の前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルを推定することと、を行うように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 各電極と直列に接続されたそれぞれのスイッチを備え、前記プロセッサが、前記それぞれのスイッチを制御することによって各電極を接続解除するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記プロセッサが、前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルの以前の調節プロセスの結果に基づいて前記事前設定値を設定するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0042】
(6) 水溶液中に浸漬された多電極カテーテルの複数の電極に交流電流(AC)信号を印加することと、
前記印加されたAC信号に応答して、前記電極の各々のそれぞれの表面インピーダンス又はそれぞれの電気ノイズレベルを推定することと、
前記電極の前記推定された表面インピーダンス又は電気ノイズレベルが事前設定値を下回ったときに、各電極を他の電極とは独立して接続解除することと、を含む、方法。
(7) ユーザから前記AC信号のパラメータを受信することと、前記AC信号を前記ユーザから受信された前記パラメータを用いて構成することと、を含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 各電極の前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルを推定することが、各電極と直列に接続されたそれぞれの抵抗器の両端のそれぞれの電圧降下を検知することと、前記電圧降下に応答して、前記電極の前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルを推定することと、を含む、実施態様6に記載の方法。
(9) 各電極を接続解除することが、各電極と直列に接続されたそれぞれのスイッチを制御することを含む、実施態様6に記載の方法。
(10) 前記事前設定値を、前記表面インピーダンス又は電気ノイズレベルの以前の調節プロセスの結果に基づいて設定することを含む、実施態様6に記載の方法。