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特許7416584マルチノズル押出機を用いて三次元物体に構造的支持体を提供するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】マルチノズル押出機を用いて三次元物体に構造的支持体を提供するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20240110BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240110BHJP
   B29C 64/232 20170101ALI20240110BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20240110BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240110BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240110BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/118
B29C64/232
B29C64/236
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019156640
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2020049940
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】16/142,702
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド・エイ・マンテル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・オニール
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジー・リン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジェイ・ニストロム
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105177(JP,A)
【文献】特開2018-135548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造システムにおいてマルチノズル押出機を動作させるための方法であって、
前記マルチノズル押出機内の複数のノズルを開放することと、
コントローラでアクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機を経路に沿って移動させ、前記複数の開放ノズルから押出された材料で支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群を同時に形成することと、
前記コントローラで前記アクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機を移動させ、前記支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群の上に支持構造体の複数の平行なリボンの第2の群を形成することを含み、前記支持構造体の複数の平行なリボンの第2の群が、前の層内の前記支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群が形成された方向に直角な方向に形成される、方法。
【請求項2】
前記経路が、物体の一部分を充満させるために使用される経路移動角度と整列していない角度にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経路の前記角度が、45°、-45°、135°、又は-135°のいずれかにあり、前記物体の前記一部分を充満させるために使用される前記角度が、0°、180°、90°、又は270°である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記開放されたノズルが、前記リボンが互いに均等に離間されるように、前記支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群を形成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コントローラで前記アクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機を、前記マルチノズル押出機が前記物体の前記一部分を充満させるために前進される距離よりも大きい支持構造体形成のための距離だけ前進させることと、
形成されている前記物体の周辺部の外側にある前記マルチノズル押出機内のノズルを開放して、前記物体の前記一部分を充満させるために使用される2つの方向の間の方向に、支持構造体の複数の平行なリボンの第2の群を形成することと、を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コントローラで前記アクチュエータを動作させて、前記複数の平行なリボンの第1の群を形成するための前記経路の前記方向に直角な角度で前記マルチノズル押出機を移動させ、前記押出機内の前記ノズルを動作させて前記物体の層を支持構造体の層上に形成する前に、前記支持構造体の複数の平行なリボンの第2の群で前記支持構造体の層を形成することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マルチノズル押出機を動作させて、物体の周辺部を形成すると同時に、前記マルチノズル押出機内の別のノズルを開放して、前記周辺部に平行な支持構造体のリボンを形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マルチノズル押出機内の異なるノズルを開放して、前記周辺部の配向が変化するときに、前記支持構造体のリボンを形成することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マルチノズル押出機を動作させて、前記支持構造体のリボンが前記支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群に接続されるように、前記支持構造体のリボンを形成することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記周辺部に平行な前記支持構造体を広げるように、前記マルチノズル押出機内の第2のノズルを開放することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
付加製造システムであって、
複数のノズルを有するフェースプレートを有するマルチノズル押出機と、
複数のバルブであって、前記複数のバルブ内の各バルブが、1対1の対応で前記ノズルのうちの1つを開閉するように構成されている、複数のバルブと、
前記マルチノズル押出機に動作可能に接続されたアクチュエータであって、前記マルチノズル押出機を前記フェースプレートに平行な平面内で移動させ、かつ前記マルチノズル押出機を前記マルチノズル押出機が押出材料を放出する表面に向かってかつそれから離れるように移動させるように構成されている、アクチュエータと、
前記複数のバルブ及び前記アクチュエータに動作可能に接続されたコントローラであって、
前記マルチノズル押出機内の複数のノズルを開放し、
前記アクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機を前記フェースプレートに平行な前記平面内の経路に沿って移動させ、前記複数の開放ノズルから押出された材料で支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群を同時に形成し、
前記アクチュエータを動作させて、前記支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群の上に、支持構造体の複数の平行なリボンの第2の群を形成するように、前記マルチノズル押出機を移動させるように構成され、前記支持構造体の複数の平行なリボンの第2の群が、前の層内の前記支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群が形成された方向に直角な方向に形成される、コントローラと、を備える、付加製造システム。
【請求項12】
前記コントローラが、
前記アクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機を第1の角度で移動させ、物体の一部分を充満させ、かつ
前記アクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機を前記第1の角度と整列していない第2の角度で移動させ、支持構造体を形成するように更に構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2の角度が、45°、-45°、135°、又は-135°のいずれかであり、前記第1の角度が、0°、180°、90°、又は270°のいずれかである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラが、
前記アクチュエータを動作させて、前記開放されたノズルが隣接するリボンどうしの間に均等な空間を有する前記支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群を形成するように、前記マルチノズル押出機を移動させるように更に構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラが、
前記アクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機を、前記マルチノズル押出機が前記物体の前記一部分を充満させるために前進される距離よりも大きい支持構造体形成のための距離だけ前進させ、かつ
前記複数のバルブ内のバルブを動作させて、形成されている前記物体の周辺部の外側にある前記マルチノズル押出機内のノズルを開放し、前記物体の前記一部分を充満させるために使用される2つの方向の間の方向に支持構造体の複数の平行なリボンの第2の群を形成するように更に構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラが、
前記アクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機を、前記複数の平行なリボンの第2の群を形成する距離だけ前進させるように更に構成され、前記第2の群内の隣接するリボンの距離が均等に離間されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラが、
前記アクチュエータを動作させて、前記マルチノズル押出機が前記複数の平行なリボンの第1の群を形成するために移動した角度に直角な角度で前記マルチノズル押出機を移動させ、前記マルチノズル押出機内の前記ノズルを動作させて物体の層を支持構造体の層上に形成する前に、前記支持構造体の複数の平行なリボンの第2の群で前記支持構造体の層を形成するように更に構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラが、
前記複数のバルブ内の少なくとも1つのバルブを動作させて、物体の周辺部を形成すると同時に、前記複数のバルブ内の他のバルブを動作させて、前記マルチノズル押出機内の別のノズルを開放し、前記周辺部に平行な支持構造体のリボンを形成するように更に構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記コントローラが、
前記複数のバルブ内の異なるバルブを動作させて、前記マルチノズル押出機内の異なるノズルを開放し、前記周辺部の配向が変化するときに、前記支持構造体のリボンを形成するように更に構成されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記コントローラが、
前記マルチノズル押出機内の前記複数のバルブ内のバルブを動作させて、前記リボンが前記支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群に接続されるように、前記支持構造体のリボンを形成するように更に構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記コントローラが、
前記複数のバルブ内の第2のバルブを動作させて、前記周辺部に平行な前記支持構造体を広げるように、前記マルチノズル押出機内の第2のノズルを開放するように更に構成されている、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元物体印刷機に使用されるマルチノズル押出機、より具体的には、このような押出機の動作に関する。
【0002】
付加製造としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の(three-dimensional、3D)固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、付加製造デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する付加プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、ABSプラスチックなどの押出材料を熱可塑性材料へと軟化又は溶融させ、次いで所定のパターンで熱可塑性材料を放出する押出機を使用する。印刷機は、典型的に、様々な形状及び構造を有する三次元印刷物体を形成する熱可塑性材料の連続層を形成するように、押出機を動作させる。三次元印刷物体の各層が形成された後、熱可塑性材料は、冷却し、硬化して、層を三次元印刷物体の下層に接着する。この付加製造方法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
多くの既存の三次元印刷機は、単一ノズル押出機を使用する。印刷ヘッドは、所定の経路内で移動して、三次元印刷物体用のモデルデータに基づいて、三次元印刷物体の支持部材又は前に堆積した層の選択された場所に単一ノズルを通して構築材料を放出する。しかしながら、構築材料を放出するために単一のノズルのみを有する印刷ヘッドを使用することは、三次元印刷物体を形成するためにかなりの時間を要することが多い。加えて、より大きなノズル径を有する印刷ヘッドは、三次元印刷物体をより迅速に形成することができるが、より高度に巧妙な物体に対するより微細な形状に構築材料を放出する能力に欠け、一方でより狭い直径を有するノズルは、より微細な巧妙な構造を形成することができるが、三次元物体を構築するためにより多くの時間を必要とする。
【0004】
単一のノズル押出機の制限に対処するために、マルチノズル押出機が開発された。いくつかのマルチノズル押出機では、ノズルは、共通のフェースプレート内に形成され、ノズルを通って押出される材料は、1つ以上のマニホールドからもたらされ得る。単一のマニホールドを有する押出機では、ノズルの全てが同じ材料を押出するが、マニホールドから各ノズルへの流体経路は、ノズルを選択的に開閉するように動作するバルブを含むことができる。この能力により、ノズル押出材料の数を変更し、どのノズルが材料を押出するかを選択的に動作させることによって、ノズルから押出される熱可塑性材料のスワスの形状を変えることが可能になる。複数のマニホールドを有するマルチノズル押出機では、いくつかのノズルは、ノズルが接続されるマニホールドに応じて、他のノズルによって押出される材料とは異なる材料を押出することができる。マニホールドのうちの1つから対応するノズルへの流体経路は、ノズルを選択的に開閉するように動作するバルブを含むことができる。この能力により、スワス内の材料の組成を変化させること、並びに、ノズルから押出された熱可塑性材料のスワスの形状を変化させることが可能になる。また、これらの変形例は、材料を押出するノズルの数及びどのノズルを開放して材料を押出するかを変更することによって達成される。これらのマルチノズル押出機は、異なる材料が、異なるノズルから押出されて、異なる押出機本体の移動を調整する必要なく物体を形成することを可能にする。これらの異なる材料は、異なる色、物理的特性、及び構成を有する物体を製造するための付加製造システムの能力を向上させることができる。また、材料を押出するノズルの数を変化させることにより、生成されるスワスのサイズが変更されて、物体縁部などの精密な特徴部形成が必要とされるエリア内に狭いスワスを提供し、かつその内部領域などの物体のエリアを形成するように広いスワスを迅速に提供することができる。
【0005】
多くの3D物体は、印刷面の上に片持ちされ、物体の単純な層ごとの分解を使用して印刷することができない特徴部及び付属物を有する。これらの物体を形成するとき、いくつかの形態の支持体を印刷しなければならず、そのため特徴部及び付属物の最初の層は、空中ではなく支持体上に構築され得る。場合によっては、この支持体は、部品を形成するために使用される材料とは異なる材料で形成され、支持材料は、物体から容易に除去することができる材料であるように選択される。単一のノズル押出機を使用する製造システムでは、別の単一のノズル押出機が、異なる材料で支持構造体を形成するために提供されるが、別の押出機を追加すること、及びほとんどの場合、追加の押出機を動作させて支持構造体材料を印刷するために追加の時間を必要とすることの複雑さは、時間とリソースにおいて高価になる可能性がある。
【0006】
マルチノズル押出機を使用すると、異なるノズルを異なる材料源に接続することができるため、複数の単一のノズル押出機の使用に伴う問題のいくつかに対処することができる。残念ながら、このような構成では、3D物体の構造体の形成に利用可能なノズルの数が減るため、内部充填スワスは狭くなり、より多くのパスが必要になる。加えて、マルチノズル押出機ヘッドの操作は、支持構造体のみが形成される場所に支持構造体材料を押出するためにノズルを位置決めする必要があり、物体部分及び特徴部のみが形成される場所に構築材料を押出するノズルを位置決めする必要があるため、複雑である。既知の技術を使用して、支持構造体を構築材料で形成する場合、支持構造体は、形成されている物体の一部となり、物体の構造的一体性を破壊せずに物体から分離することができない。マルチノズル押出機をより効率的に使用して、物体部分と支持構造体との両方を形成することは有益であろう。
【0007】
新しいマルチノズル押出機システムは、押出機から異なる材料を押出することなく、単一のマルチノズル押出機で物体部分及び支持構造体を形成できるように構成されている。マルチノズル押出機システムは、複数のノズルを有するフェースプレートを有するマルチノズル押出機と、複数のバルブであって、複数のバルブ内の各バルブが、1対1の対応でノズルのうちの1つを開閉するように構成されている、複数のバルブと、マルチノズル押出機に動作可能に接続されたアクチュエータであって、マルチノズル押出機をフェースプレートに平行な平面内で移動させ、かつマルチノズル押出機をマルチノズル押出機が押出材料を放出する表面に向かってかつそれから離れるように移動させるように構成されている、アクチュエータと、複数のバルブ及びアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、マルチノズル押出機内の複数のノズルを開放し、かつアクチュエータを動作させて、マルチノズル押出機をフェースプレートに平行な平面内の経路に沿って移動させ、複数の開放ノズルから押出された材料で支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群を同時に形成するように構成されている。
【0008】
マルチノズル押出機システムを動作させる方法は、押出機から異なる材料を押出することなく、物体部分及び支持構造体を単一のマルチノズル押出機で形成することを可能にする。動作の方法は、マルチノズル押出機内で複数のノズルを開放し、コントローラでアクチュエータを動作させて、マルチノズル押出機を経路に沿って移動させ、複数の開放ノズルから押出された材料で支持構造体の複数の平行なリボンの第1の群を同時に形成することと、を含む。
【0009】
押出機から異なる材料を押出することなく、物体部分及び支持構造体を単一のマルチノズル押出機で形成することを可能にするように構成されたマルチノズル押出機システムの前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して、以下の記載で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】押出機から異なる材料を押出することなく、単一のマルチノズル押出機を用いて物体部分及び支持構造体を形成するように動作できる付加製造システムを示す。
図2A図1のシステムによって形成された支持構造体の独立したカラムを示す。
図2B図1のシステムによって形成された直角な角度で交差する支持構造体の交互層を示す。
図2C】物体の周辺部が図1のシステムによって形成されているときの支持構造体の形成を示す。
図2D図1のシステムによって形成された図2Cの支持構造体に対する支持構造体の側面図を示す。
図2E図2Dの支持構造体の上面図を示す。
図2F図1のシステムによって形成された固体層のブロック上に独立したカラムを有する支持構造体の形成を示す。
図2G】独立したカラム上の固体層のブロック、及び図1のシステムによって形成された固体層のブロック上の複数の独立したカラムの形成を示す。
図2H図1のシステムによって形成された複数の独立したカラム上に45°の角度で形成されて、物体の張り出す特徴部を支持するスワスの層を示す。
図3】物体の内部領域を充填するのに有用である、先行技術の押出機ノズルアレイ構成及び移動経路を示す。
図4】円筒形の物体を形成するのに有用である、図3の従来技術のノズルアレイにおける開放及び閉鎖されたノズルの組み合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される際、「押出材料」という用語は、付加製造システムにおいて押出機から放出される材料を指す。押出材料としては、厳しく限定されるものではないが、印刷プロセス中に、三次元印刷物体の永久部分を形成する「構築材料」及び印刷プロセス中に構築材料の部分を支持する一時的な構造体を形成し、次いで印刷プロセスの完了後に任意選択的に除去される「支持材料」の両方が挙げられる。構築材料の例としては、限定されるものではないが、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene、ABS)プラスチック、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、脂肪族又は半芳香族ポリアミド(ナイロン)、懸濁した炭素繊維又は他の凝集材料を含むプラスチック、導電性ポリマー、及び押出機を通した放出に好適な熱可塑性材料を製造するために熱的に処理することができる任意の他の形態の材料が挙げられる。構築材料はまた、加熱を必要としないが、UV光又は熱などの空気又はエネルギへの曝露によって後に硬化される他の材料も含む。これらのタイプの材料としては、食品材料が挙げられる。例えば、チョコレート及びチーズを押出して、うさぎ、卵などの様々な形状の物体を形成することができる。支持材料の例としては、限定されるものではないが、高衝撃ポリスチレン(high-impact polystyrene、HIPS)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、及び熱処理後に押出することが可能な他の材料が挙げられる。いくつかの押出用印刷機では、押出材料は、「フィラメント」として一般に知られる連続的な細長い長さの材料として供給される。このフィラメントは、押出材料フィラメントをスプール又は他の供給源から引張り、押出機内のマニホールドに流体接続されるヒータにフィラメントを供給する1つ以上のローラによって固体形態で提供される。示された実施例は、フィラメントとしてヒータに供給される押出材料を使用するが、粒子状又は球状ボール押出材料などの、他の押出材料供給を使用することもできる。ヒータは、押出材料フィラメントを軟化又は溶融させて、マニホールド内に流れる熱可塑性材料を形成する。ノズルとマニホールドとの間に位置付けられたバルブが開放されると、熱可塑性材料の一部がマニホールドからノズルを通って流れ、熱可塑性材料の流れとして放出される。本明細書において使用される際、押出材料に適用される「溶融」という用語は、押出材料の相を軟化又は変化させて、三次元物体印刷機の動作中に押出機内の1つ以上のノズルを通して熱可塑性材料の押出を可能にする押出材料の温度の任意の上昇を指す。溶融押出材料はまた、本明細書において「熱可塑性材料」としても示される。当業者であれば分かるように、特定の非晶質押出材料は、印刷機の動作中に純粋な液体状態に遷移しない。
【0012】
本明細書において使用される際、「押出機」という用語は、単一のチャンバ内の押出材料を加圧し、そのため押出材料が、1つ以上の放出用ノズルに接続されたマニホールドに移動する、印刷機の構成要素を指す。押出材料は、エポキシ及びグルーなどのいくつかの材料に対して室温であってもよい。他の押出材料は、押出材料を溶融又は軟化させる温度まで加熱され、そのためそれは、通路によって1つ以上のノズルに接続されたマニホールドに流れる。本明細書に記載されるマルチノズル押出機は、ノズルへの押出材料の流れを遮断又は可能にするために、ピンを移動させるように電子的に動作され得るバルブアセンブリを含み、それによって押出材料は、ノズルから選択的かつ独立して放出される。コントローラは、バルブアセンブリを動作させて、複数のノズル内のノズルをマニホールドに独立して接続し、押出材料を放出する。本明細書において使用される際、「ノズル」という用語は、押出機内のマニホールドに流体接続され、押出材料が材料受容表面に向かって放出される、押出機ハウジング内のオリフィスを指す。動作中、ノズルは、押出機のプロセス経路に沿って押出材料の実質的に連続的な直線スワスを押出することができる。ノズルの直径は、押出材料のラインの幅に影響を及ぼす。異なる押出機の実施形態は、より広いオリフィスを有するオリフィスサイズの範囲を有するノズルを含み、より狭いオリフィスによって生成されるラインの幅よりも大きい幅を有するラインを生成する。
【0013】
本明細書において使用される際、「マニホールド」という用語は、三次元物体印刷動作中に押出機内の1つ以上のノズルに送達するための押出材料の供給を保持する、押出機のハウジング内に形成された空洞を指す。本明細書において使用される際、「スワス」という用語は、三次元物体の印刷動作中に、マルチノズル押出機の複数のノズルから材料受容表面上に同時に放出される、複数の押出材料リボンの任意のパターンを指す。単一のノズル押出機は、単一の押出のリボンのみを生成することができるため、スワスを形成することができない。一般的なスワスとしては、押出材料及び湾曲したスワスの直線的な直線配置が挙げられる。いくつかの構成では、押出機は、連続的な方法で材料を押出して、プロセス及びクロスプロセス方向の両方において押出材料の連続的な質量を有するスワスを形成し、一方で他の構成では、押出機は、断続的な方法で、又はある程度の移動角度で動作して、プロセス又はクロスプロセス方向のいずれかで不連続であり、直線又は曲線経路に沿って配置される押出材料のより小さい群を形成する。三次元物体印刷機は、押出材料の異なるスワスの組み合わせを使用して様々な構造を形成する。加えて、三次元物体印刷機内のコントローラは、マルチノズル押出機を動作させて押出材料の各スワスを形成する前に、押出材料の異なるスワスに対応する物体画像データ及び押出機経路データを使用する。
【0014】
本明細書において使用される際、「プロセス方向」という用語は、押出機と、押出機内の1つ以上のノズルから放出された押出材料を受容する材料受容表面との間の相対移動の方向を指す。材料受容表面は、付加製造プロセス中に三次元印刷物体又は部分的に形成された三次元物体の表面を保持する支持部材のいずれかである。本明細書に記載される例示的な実施形態では、1つ以上のアクチュエータは、支持部材の周りで押出機を移動させるが、代替的なシステム実施形態は、支持部材を移動させて、プロセス方向の相対運動を生成し、その間押出機は静止したままである。いくつかのシステムは、異なる運動軸に対する両方のシステムの組み合わせを使用する。加えて、1つ以上のアクチュエータは、押出機に動作可能に接続され、三次元物体が形成されるプラットフォーム、又は両方が、押出機及びプラットフォームを互いに向かって、かつ互いに離れるように移動させる。このタイプの移動は、Z軸に沿った押出機、プラットフォーム、又はその両方の垂直移動若しくは移動と呼ばれることがある。
【0015】
本明細書において使用される際、「クロスプロセス方向」という用語は、プロセス方向に直角であり、押出機フェースプレート及び材料受容表面に平行な軸を指す。プロセス方向及びクロスプロセス方向は、1つ以上のノズルから放出された押出材料を受容する押出機及び表面の移動の相対経路を指す。いくつかの構成では、押出機は、プロセス方向、クロスプロセス方向、又はその両方で延在することができるノズルのアレイを含む。押出機内の隣接するノズルは、クロスプロセス方向において所定の距離だけ分離される。いくつかの構成では、システムは、ラインがスワスを形成する際、マルチノズル押出機内の複数のノズルから放出された押出材料のラインを分離する、対応するクロスプロセス方向距離を調整するために、押出機を回転させて、押出機内の異なるノズルを分離するクロスプロセス方向距離を調節する。
【0016】
付加製造システムの動作中、押出機は、三次元物体印刷プロセス中に押出された材料を受容する表面に対して、直線経路及び湾曲経路の両方に沿ってプロセス方向に移動する。加えて、システム内のアクチュエータは、所望により、マルチノズル押出機をZ軸の周りで回転させて、押出機が押出材料の各ライン間に所定の距離で押出材料の2つ以上のラインを形成することを可能にするために、マルチノズル押出機内のノズルを分離する有効なクロスプロセス距離を調整する。マルチノズル押出機は、印刷物体の層内の二次元領域の外壁を形成するために外側周辺部、及び押出材料を有する二次元領域の全て又は一部を充填するために周辺部内部の両方に沿って移動する。
【0017】
図1は、場合によってはフェースプレート260と呼ばれる平面部材内のノズル218を通して押出材料を押出する、マルチノズル押出機ヘッド108を有する付加製造システム100を示す。印刷機100は、物体を形成するために平面運動を使用する印刷機として示されているが、他の印刷機アーキテクチャを押出機と共に使用することができ、コントローラは、押出機の角度配向に関して押出機の速度を調整するように構成されている。これらのアーキテクチャは、デルタ-ボット、選択的コンプライアンスアセンブリロボットアーム(selective compliance assembly robot arm、SCARA)、多軸印刷機、非デカルト印刷機などが挙げられる。これらの代替的な実施形態における運動は、上記で定義したようなプロセス及びクロスプロセス方向を依然として有し、かつこれらの実施形態の押出機におけるノズル間隔は、クロスプロセス方向に関するノズル間隔を依然として画定する。図1には1つのマニホールド216のみ示されている。押出機ヘッド108は複数のマニホールド216を有することができる。一実施形態では、押出機ヘッド108内の各マニホールド216は、異なる押出材料供給部110によって1対1対1の対応で供給される異なるヒータ208に動作可能に接続される。押出機ヘッド108において、各ノズル218は、押出機ヘッド108内のマニホールドのうちの1つのみに流体接続され、そのため各ノズルは、他のマニホールドに接続されたノズルから押出された材料とは異なる材料を押出することができる。各ノズルからの押出は、コントローラ128がスリーブ268内のピンに動作可能に接続されたアクチュエータ264を動作させて中空部材であるスリーブ内のピンを往復運動させることによって、選択的かつ独立して作動化及び非作動化される。アクチュエータ、ピン、及びスリーブは、互いに1対1対1の対応で、かつフェースプレート内のノズルと一緒に配置された複数のバルブを形成している。各ノズル218の遠位端は、フェースプレート260を使用して物体内の材料のスワスを成形することができるように、フェースプレート260と面一である。スリーブ268内のピンは、アクチュエータからノズル開口部まで延在し、かつ材料がノズルから選択的に流れることを可能にするように移動される細長い固体部材である。材料の流れは、バルブのアクチュエータがコントローラによって動作されて、ピンをノズルと係合するように移動させると終了し、アクチュエータがノズルからピンを後退させるように動作されると、材料が流れる。
【0018】
コントローラ128は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、又は印刷機100を動作させるように構成された任意の他のデジタル論理などのデジタル論理デバイスである。印刷機100において、コントローラ128は、押出機ヘッド108から押出された材料で形成されている物体を支持する支持部材の移動を制御する、1つ以上のアクチュエータ150に動作可能に接続される。コントローラ128はまた、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)デバイスなどの揮発性データ記憶装置、及びソリッドステートデータ記憶装置、磁気ディスク、光ディスク、又は任意の他の好適なデータ記憶装置などの不揮発性データ記憶装置を含むメモリに動作可能に接続される。メモリは、プログラムされた命令データ及び三次元(3D)物体画像データを記憶する。コントローラ128は、記憶されたプログラム命令を実行して、印刷機100内の構成要素を動作させ、支持部材上に三次元印刷された物体を形成し、物体から延在する物体特徴部を支持する支持構造体を形成する。支持構造体は、物体と同じ材料で形成することができ、又は上で説明したように、複数のマニホールドが押出機ヘッドに含まれる場合、支持構造体は、物体を形成するために使用される材料とは異なる材料で形成することができる。3D物体画像データとしては、例えば、三次元物体印刷プロセス中に印刷機100が形成する押出材料の各層に対応する複数の二次元画像データパターンが挙げられる。押出機経路制御データは、コントローラ128が、アクチュエータ150を使用して押出機ヘッド108の移動経路を制御するように、及び、アクチュエータ150内のZθアクチュエータを使用して押出機ヘッド108及びバルブアセンブリ204の配向を制御するように、処理する幾何的データ又はアクチュエータ制御コマンドのセットを含む。Zθアクチュエータは、フェースプレート260に直角であり、かつフェースプレート260と支持部材との間に延在するZ軸を中心に押出機ヘッド108及びバルブアセンブリ204を回転させるように構成されている。押出機ヘッド108及びバルブアセンブリ204は、本明細書において集合的に押出機と呼ばれる。コントローラ128は、アクチュエータを動作させて、上述のように、押出機ヘッド108を支持部材の上に移動させ、一方で、押出機は材料を押出して物体及び支持構造体を形成する。
【0019】
図1のシステム100はまた、押出機ヘッド108内のマニホールド216に接続された各ヒータ208のための押出材料分配システム212も含む。各別個の供給部110からの押出材料は、システム100の動作中に所定の範囲内でヒータ208に接続されたマニホールド216内の熱可塑性材料の圧力を維持する速度で、対応するヒータ208に供給される。分配システム212は、押出機ヘッド108の各マニホールド内の材料の圧力を調整するのに好適な一実施形態である。加えて、コントローラ128は、分配システム212が供給部によって供給部110からヒータ208に供給された押出材料を搬送する速度を制御するために、各分配システム212のアクチュエータに動作可能に接続される。ヒータ208は、駆動ローラ224によってヒータに供給される押出材料220を軟化又は溶融する。アクチュエータ240は、ローラ224を駆動し、コントローラ128に動作可能に接続されているため、コントローラは、アクチュエータがローラ224を駆動する速度を調整することができる。ローラ224の反対側の別のローラは、フリーホイーリングであるため、ローラ224が駆動される回転速度に従う。図1が、フィラメント220をヒータ208に移動させるための機械的ムーバとして、電気機械アクチュエータ及びドライバローラ224を使用する供給システムを示す一方で、分配システム212の代替的な実施形態は、回転オーガ又はねじの形態の機械的ムーバを動作させるために、1つ以上のアクチュエータを使用する。オーガ又はねじは、供給部110からの固相押出材料を、押出材料粉末又はペレットの形態でヒータ208に移動させる。
【0020】
図1の実施形態では、各ヒータ208は、コントローラ128に動作可能に接続された、電気抵抗加熱要素などの1つ以上の加熱要素228を含むステンレス鋼から形成された本体を有する。コントローラ128は、加熱要素228を選択的に電流に接続して、ヒータ208内のチャネル又は複数のチャネル内の押出材料220のフィラメントを軟化又は溶融するように構成されている。図1は、ヒータ208が、固体フィラメント220として固体相内に押出材料を受容して示している一方で、代替的な実施形態では、ヒータは、押出材料を粉末又はペレット化押出材料として固体相で受容する。冷却フィン236は、ヒータから上流のチャネル内の熱を減衰する。冷却フィン236又はその付近のチャネル内で固体のままである押出材料の一部は、熱可塑性材料がマニホールド216への接続部ではなく任意の開口部からヒータから出ることを防止する封止部をチャネル内に形成し、これは、マニホールドに入るときに押出材料が熱可塑性状態に維持される温度を維持する。押出機ヘッド108はまた、押出機ヘッド内の各マニホールド内の熱可塑性材料のために高温を維持するように、追加の加熱要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、熱絶縁体は、押出機ヘッド108の外部の部分を覆って、押出機ヘッドの内部のマニホールド内の温度を維持する。この場合もやはり、ノズルの周囲の領域は、材料を熱可塑性状態に維持する温度で維持され、そのため材料は、それがフェースプレート260内のノズル218の遠位端に進行する際に凝固を開始しない。
【0021】
マニホールド216内の熱可塑性材料の流体圧力を所定の範囲内に維持し、押出材料への損傷を回避し、ノズルを通る押出速度を制御するために、スリップクラッチ244は、供給部110からヒータにフィラメントを供給する各アクチュエータ240の駆動シャフトに動作可能に接続される。本明細書において使用される際、「スリップクラッチ」という用語は、物体を所定の設定点まで移動させるために、物体に摩擦力を加えるデバイスを指す。摩擦力のための所定の設定点についての範囲を超えるとき、デバイスはスリップし、そのためもはや物体に摩擦力を加えることはない。スリップクラッチは、ローラ224によってフィラメント220に及ぼされる力が、どのくらい頻繁に、どのくらい速く、又はどのくらい長くアクチュエータ240が駆動されるかを問わず、フィラメントの強度について制約内に留まることを可能にする。この一定の力は、アクチュエータ240をフィラメント駆動ローラ224の最速の予測される回転速度よりも速い速度で駆動するか、又はエンコーダホイール248をローラ224上に置き、センサ252で回転速度を感知することによって維持することができる。センサ252によって生成された信号は、ローラ224の角度回転を示し、コントローラ128はこの信号を受信して、ローラ224の速度を特定する。コントローラ128は、アクチュエータ240に提供される信号を調節して、アクチュエータの速度を制御するように更に構成されている。コントローラがアクチュエータ240の速度を制御するように構成されているとき、コントローラ128はアクチュエータ240を動作させ、その結果、その平均速度はローラ224の回転よりもわずかに速い。この動作は、駆動ローラ224上のトルクが常にスリップクラッチトルクの関数であることを確実とする。
【0022】
コントローラ128は、ローラ224の回転速度にわたってアクチュエータ出力軸のわずかに速い速度を特定するコントローラに接続された、メモリ内に記憶された設定点を有する。本明細書において使用される際、「設定点」という用語は、コントローラが構成要素を動作させて、設定点に対応するパラメータを設定点の周りの所定の範囲内に維持するために使用する、パラメータ値を意味する。例えば、コントローラ128は、アクチュエータ240を動作させる信号を変更して、設定点の周りの所定の範囲内の出力信号によって特定された速度で出力軸を回転させる。アクチュエータの命令された速度に加えて、バルブアセンブリ204内で開閉されるバルブの数、及びクラッチ用のトルク設定点もまた、フィラメント駆動システム212の動作に影響を及ぼす。ローラ224の得られた回転速度は、センサ252によって生成された信号によって特定される。コントローラ128内の比例積分微分(proportional-integral-derivative、PID)コントローラは、メモリ内に記憶された差動設定点を参照してこの信号からの誤差を識別し、コントローラによって出力された信号を調節して、アクチュエータ240を動作させる。代替的に、コントローラ128は、スリップクラッチのトルクレベルを変更することができ、又はコントローラ128は、トルクレベルを変更し、かつコントローラがアクチュエータを動作させる信号を調節することの両方ができる。
【0023】
スリップクラッチ244は、固定又は調節可能なトルク摩擦ディスククラッチ、磁気粒子クラッチ、磁気ヒステリシスクラッチ、フェロフルードクラッチ、空気圧クラッチ、又は永久磁気クラッチであり得る。磁気的に動作するクラッチタイプは、クラッチに電圧を印加することによって調節されたそれらのトルク設定点を有することができる。この特徴により、クラッチ上のトルク設定点が印刷条件を参照して変更されることを可能にする。「印刷条件」という用語は、物体の適切な形成のためにマニホールド内に必要とされる材料の量に影響を及ぼす、現在進行中の製造動作のパラメータを指す。これらの印刷条件としては、押出機に供給される押出材料のタイプ、押出機から放出される熱可塑性材料の温度、押出機がX-Y平面内で移動する速度、物体上に形成される特徴部の位置、押出機がプラットフォームに対して移動される角度などが挙げられる。
【0024】
従来技術のマルチノズル押出機ノズルアレイが図3に示される。このノズルの構成は、9個のノズルを有し、これらの各々は、0.4mm幅である。ノズルの列は、ノズルアレイが形成される平面部材の水平軸及び垂直軸に対して一定角度で配向される。押出機が図示されるように配向され、0°~180°(水平軸)に沿ったいずれかの方向、及び90°~270°(垂直軸)に沿ったいずれかの方向に移動され、ノズルの全てが開放されているときに、押出機は、図に示されるような押出された材料の連続したスワスを一貫して生成する。図3に示される特定の実施形態では、スワスの幅は、3.6mm幅である。このスワスは、押出機が形成することができ、かつ物体の内部領域を充填するために主に使用される、その幅にわたって連続する最も広いスワスである。
【0025】
円筒形の物体を形成するために、ノズルは、図4に示されるように開放される。中心ノズルは、物体の周辺部を形成するように開放され、一方、周辺部内にある残りのノズルは、周辺部に隣接する物体の内部部分を形成するために適切に開閉される。この意味で使用される「適切に(appropriate)」は、鋭角によって囲まれたエリアで材料に寄与するノズルが少なく、そのため材料がその領域に比例して分布することを意味する。したがって、中心ノズルによって形成される周辺部の内部内のノズルの開放/閉鎖状態は、押出機の中心ノズルが円形経路に追従し、フェースプレートに垂直な軸を中心に押出機を回転させることなく、物体の外部の円筒形壁を形成するにつれて変化する。
【0026】
いくつかの移動角度で、図3に示されている押出機のノズルは、別個の列に並んでおり、図に示されているようにクロスプロセス方向に連続していない個別の材料のリボンを形成する。この現象を補償するために、経路に沿った押出機の移動速度を低下させて、押出材料が広がり、形成されるスワスのリボン間の間隙を充填するより長い時間を可能にする。この効果が図3に示されているノズルアレイで最も顕著である角度は、18°に90°の倍数を加えたものである。これらの角度では、速度は、押出機を水平経路及び垂直経路に沿って移動させるために使用される典型的な速度の半分まで遅くすることができるが、典型的には、速度は、その典型的な速度の2/3に低下する。
【0027】
図1のシステムは、経路に沿って、図3に示されるスワス内の非連続なリボンを物体の形成中に支持構造体として有効に展開できる速度で押出機を移動させるように構成されたコントローラを有する。物体の周辺部の外側のノズルから同時に押出された複数の独立した平行な材料のリボンを有する支持構造体を形成することによって、支持構造体上に物体特徴部の固体表面を印刷することができる。支持構造体を形成する独立したリボンは、材料を節約し、完成した部品から支持構造体を切り離すことをより容易にする。
【0028】
図3に示される押出機ノズルアレイが図1のシステムで使用される場合、支持構造体を形成する押出機の移動のための良好な経路角は、45°及び225°又は-45°及び135°である。コントローラ128は、コントローラに接続されたメモリに記憶されたプログラム命令で構成され、プログラム命令は、コントローラによって実行されると、コントローラに1つ以上のアクチュエータ150を動作させて、支持構造体形成に有用なこれらの経路に沿って押出機を移動させる。これらの経路角度は、ノズルが移動経路に沿って均等に離間されることを可能にし、そのため特徴部の固体基部は、マルチノズル押出機ヘッドが0°又は90°で移動されるときに、構造体の上に形成されて、特徴部を形成し、又は物体周辺部内のエリアを充満させることができる。また、構造体形成のための経路角度に沿って、マルチノズル押出機アレイは、押出機が充満又は特徴部形成のために0°又は90°経路に沿って移動されるときに外側ノズルの中心が3.2mm離間されており、一方、45°又は-45°経路に沿った双方向移動は、支持構造体形成のために外側ノズルの中心を3.4mm離間させるため、効果的に幅広である。1つの外側ノズルの外側縁部から他の外側ノズルの外側縁部までの距離は、0°又は90°経路に沿って移動するときに3.6mmであり、45°又は-45°経路に沿って移動するときに3.8mmである。これらの経路角度はまた、支持構造体を形成するために使用される3つのノズルのみを可能にし、3つのリボンの中心は、互いに1.7mmだけ分離されており、一方で、エリアの充満部又は特徴部は、1.6mmだけ分離されている3つのリボンによって形成される。あるいは、4つのノズルをこれらの経路に沿って使用して、リボンを1.1mmだけ分離すると、これにより支持構造体間の間隔が小さくなるが、4つのノズルではなく3つのノズルを使用して、材料の節約を提供すると、これはいくつかの状況においてより有利である。これらの経路に沿って3つの開放ノズルを有する支持構造体を形成することにより、マルチノズル押出機を5.1mmの距離だけ移動経路から前進させて、均等に離間された平行な支持スワスを形成することが可能となり、これは、4.8mmの距離よりも大きく、これによって押出機ヘッドは、0°又は90°経路に沿って移動するときに横方向に前進して、充満又は特徴部形成のためにリボンを放出する。45°又は-45°経路に沿った支持構造体形成のために4つのノズルを開放して、マルチノズル押出機を4.5mmの距離だけ横方向に前進させ、支持構造体形成のために均等に離間された平行な支持スワスを形成することができる。
【0029】
支持構造体は、コントローラ128が、これらの経路に沿って異なる方法で押出機を移動させるように構成されることで形成され得る。一例として、コントローラ128は、アクチュエータを動作させて、45°及び225°経路のうちの1つに沿って、又は135°及び-45°経路に沿って押出機を双方向に移動させて、3つの平行な個々の材料のリボンを有するスワスを生成するように構成され得る。支持構造体の連続層内のスワスは、互いの上に配置され、そのためスワスが積層して、図2Aに示されるような支持体304の独立したカラム308を形成する。この図では、押出機が135°方向に移動すると、スワスS1、S3、及びS5が形成され、押出機が-45°方向に移動すると、スワスS2、S4、及びS6が形成される。このアプローチは、支持構造体を安定させ、リボン形成がより一貫性の高いものになるように助ける。充満角度のうちの1つで押出された材料で支持構造体上に物体特徴部を載置するように移行する前に、押出機の移動の角度は、支持構造体の上の領域内の物体の基部のための次の層を形成するために必要とされる移動角度に対して直角な方向において、それぞれ-135°若しくは45°、又は0°若しくは90°のいずれかに切り替えられる。物体特徴部の基部を充満させる前に層形成のための移動方向を切り替えることにより、支持構造体上に載置される物体特徴部の基部を形成する材料が、支持構造体の独立したカラムの間に落ちるリスクを低減する。図2Hに示されるように、45°に配向されたリボンで形成されたスワスの少なくとも1つの層は、物体特徴部の基部を支持するのを助けるために、複数の独立したカラム上に形成される。このタイプのマルチノズル押出機の移動は、支持構造体の層及び支持構造体によって支持される特徴部の最下層との間の間隔をわずかに大きくして、物体の支持構造体への付着を減らすことによって、強化することができる。この変化は、例えば、コントローラが押出機を動作させて、支持構造体の各層、又は少なくとも最後の層を支持構造体に近接した物体の層よりもわずかに薄くすることによって実現することができ、そのため物体特徴部の底部層とその上の支持構造体の上部層との間の距離が大きくなり、これにより2つの層間の接触が低減される。典型的には、この距離は、一般に遭遇する物体層の層厚の約1/4~約1/2の範囲である。0.4mmのノズルを有する押出機の典型的な層厚は、0.2mmであり、そのため間隙は、約0.05~約0.1mmの範囲である。
【0030】
図2Bの構造体312などの支持構造体を形成するために使用される別のコントローラ構成は、支持構造体の連続層に対して45°/225°と135°/-45°との間で押出機の移動を交互にすることである。この構造体において、底部層は、図2Aに関連して上述したように、押出機が移動されることによって形成され、次の層は、押出機が45°方向に移動されて、スワスS7及びS9を形成し、-135°において、S7とS9との間にスワスを形成することで形成される。この支持構造体形成の方法は、直角な斜め方向で互いに交差する個々のリボンのスワスを生成する。この形成方法は、複数のノズルを開放させてスワスを形成するマルチノズル押出機を移動させることによって形成されることから、これらの支持構造体がより効率的に形成されることを除いて、単一のノズル押出機で形成されたものと同様の支持構造体を生成する。リボンは互いに分離されているため、コントローラ128がステップモータ240を動作させてマルチノズル押出機に供給されるフィラメントの量を変更することによって、個々のラインの幅を調整することができる。より広いラインは、より少ないフィラメントを供給することによって、より多くのフィラメント及びより狭いラインを供給することによって生成される。
【0031】
マルチノズル押出機で支持構造体を形成するためのこれらの方法は、これらの構造体が物体特徴部の最下層を提供する支持を参照して説明されてきた。物体の全ての部分が、下にある支持体を有する必要はない。垂直に十分近い角度で印刷された部分は、支持構造体を伴わずに形成することができるが、角度が垂直から離れ過ぎると、表面品質の低下などの問題が発生する場合がある。垂直からのより極端な角度では、物体のこれらの部分が破損し、又は部品を完成させるのに十分なほど良く印刷されない場合がある。これらの問題のいずれかが発生する角度を避ける必要がある。支持構造体と物体の側面との間の相互作用はまた、物体特徴部の下側の傾斜が、これらの問題が生じる角度を下回る場合にも考慮される必要がある。典型的には、支持構造体は、十分な支持を提供するために周辺部に十分に近い必要があるが、容易に破断することができないほど近くなくてもよい。この目標を達成するための1つの方法は、物体周辺部の外側に、かつそれに平行な材料のリボンを押出することである。中間ノズルを使用して周辺部の外側を形成することによって、周辺部の外側の通常閉鎖されたノズルのうちの1つを開放して、部品の表面付近に材料を押出することができる。典型的には、放出されたリボンが部品に強く接着し過ぎるため、周辺部に最も近いノズルは非常に近過ぎるが、中心ノズルに次に最も近いノズルは、典型的には、周辺部に近過ぎる構造体を生成しない。ただし、中心ノズルから最も遠く、かつ周辺部の外側にあるノズルなど、他のノズルのうちの1つを開放して、物体の周辺部の外側に支持構造体を形成することができる。最も近いノズル以外の他のノズルは、多くの場合、中心ノズルから最も遠いノズルに加えて、又はその代わりに使用され得る。このタイプの構造体形成が図2Cに示されている。この図では、切頭円錐形物体316の内面を見ることができ、周辺部は、支持構造体320が外側ノズルによって形成されている間に、押出機108のフェースプレート内の中心ノズルによって形成される。物体316と支持体320との間の図の黒いラインは、それらの間の間隙を特定する。支持体320の支持構造体は、図2D及び図2Eに示されるように、45°~225°軸に沿って形成された独立したカラム324及び332、並びに135°~-45°軸に沿って形成された独立したカラム328及び336で形成することができる。
【0032】
周辺部はまた、様々な角度で形成することができ、外側支持体を印刷するために使用されるノズルは、周辺部の角度の関数として変化する。次いで、外側周辺部は、支持体が外側周辺部と交差できることを確実にするように選択された周囲領域内の支持構造体の層の角度で、-45°、45°、225°、又は135°で印刷された支持構造体の個々のカラムに直接取り付けることができる。したがって、外側周辺部が45°の角度でスワスで印刷される場合、支持構造体の層は、支持構造体のカラムが外側周辺部に接触することを確実にするために、135°で印刷される。場合によっては、物体の1つの部分の外部にあるノズルは、鈍角のコーナーなど、物体の他の部分に近く、又は更に重なり合う。これらの場合、ノズルは、物体の全ての側面の外部にあるときのみ開放され、いくつかの狭いコーナーでは、全ての外部のノズルがオフにされなければならない。
【0033】
コントローラ128はまた、バルブを動作させて、周辺部の外側の複数のノズルを開放し、部品の周辺部の支持体として作用できるより強い支持構造体を形成するように構成され得る。9ノズル押出機では、最大5つのノズルを開放し、物体の周辺部を印刷するために4つのノズルをオフにすることができる。これら4つの通常オフのノズルのうちの最大3つがオンにされて、物体の周辺部に近いが物体の周辺部から分離可能であり、かつ周辺部の形状に追従する支持構造体を提供することができる。
【0034】
カラムの高さが構造的に不安定になるため、支持体の独立したカラムでのみ支持構造体の高さを達成することが困難であり得る場合には、カラムの構築を再開する前に時折支持構造体内に固体層を形成することによって追加の構造強度を追加することができる。固体層を使用する1つの方法は、図2Fに示されるように、固体層で支持構造体340の大部分を形成して固体支持体ブロック344を形成し、次いで、支持体ブロック344の最上部支持層の領域に個々のカラム308を生成することである。固体層を使用する別の方法は、個別に、又は図2Gに示すように、個々のカラムを有する層のより大きな距離の間に固体層348の小さなグループとして、それらを時々挿入することである。
【0035】
-45°及び45°でスワスと交互になるか、又は-135°及び135°でスワスと交互になるかのいずれかの個々のカラムで支持構造体を印刷する場合、マルチノズル押出機は、スワス間のクロスプロセス方向に前進することができる。このように形成された個々のカラムは、より強く支持され、ノズルが開放されたままでスワス間の前進中に押出することを可能にする場合にうまく起動する可能性が高くなる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3
図4