IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7416588スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ
<>
  • 特許-スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ 図1
  • 特許-スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ 図2
  • 特許-スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ 図3
  • 特許-スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ 図4
  • 特許-スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ 図5
  • 特許-スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ 図6
  • 特許-スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータ
(51)【国際特許分類】
   D21D 5/02 20060101AFI20240110BHJP
   B03B 5/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D21D5/02 A
B03B5/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019161512
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038490
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 剛
(72)【発明者】
【氏名】岩重 尚之
(72)【発明者】
【氏名】堂阪 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 正守
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/083509(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/193364(WO,A1)
【文献】特表平07-505928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21D 1/00 - 99/00
B03B 1/00 - 13/06
B07B 1/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙原料を選別すべく複数の穴が形成された筒状のスクリーンバスケットを有するスクリーン装置用のロータであって、
前記スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられており、
筒状の本体部と、
前記本体部の外周面に該外周面に沿った板状部として形成された複数の攪拌部と、
を備え
前記本体部は、前記スクリーンバスケットに対する間隔が回転軸線に沿った前記製紙原料の流れ方向に沿って上流から下流に向かって小さくなるように形成されており、
前記複数の攪拌部は、回転軸線に沿って異なる位置に形成されており、
前記複数の攪拌部のうち、回転軸線に沿った前記製紙原料の流れ方向に沿って上流側に設けられている攪拌部の前記本体部からの突出量は、下流側に設けられている攪拌部の前記本体部からの突出量よりも大きいことを特徴とするスクリーン装置用のロータ。
【請求項2】
前記回転軸線に沿って異なる位置に形成された前記攪拌部に対して、周方向に所定の間隔をあけて設けられた他の攪拌部を備えることを特徴とする請求項に記載のスクリーン装置用のロータ。
【請求項3】
製紙原料を選別すべく複数の穴が形成された筒状のスクリーンバスケットを有するスクリーン装置用のロータであって、
前記スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられており、
筒状の本体部と、
前記本体部の外周面に該外周面に沿った板状部として形成された複数の攪拌部と、
を備え、
回転方向において前記攪拌部の前縁は、前記製紙原料の流れ方向に沿って上流から下流に向かって前記回転方向とは反対側に延びていることを特徴とするスクリーン装置用のロータ。
【請求項4】
前記複数の攪拌部は、前記本体部に向かって凹に形成された凹部を有することを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載のスクリーン装置用のロータ。
【請求項5】
前記攪拌部の表面は、前記凹部において回転方向における前縁の側から後縁の側に向かって前記本体部の外周面に向かって延びていることを特徴とする請求項に記載のスクリーン装置用のロータ。
【請求項6】
回転方向において前記攪拌部の前縁側でかつ前記製紙原料の流れ方向において上流側に位置する前記攪拌部の角部は、丸味付けされていることを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載のスクリーン装置用のロータ。
【請求項7】
製紙原料を選別すべく複数の穴が形成された筒状のスクリーンバスケットと、
請求項1からまでのいずれか一項に記載のロータと、
を備える
ことを特徴とするスクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン装置及びスクリーン装置用のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙パルプ工場等で古紙を原料として紙、板紙、ファイバーボード等を製造する際に、製紙原料を良質の繊維を含む製紙原料と、プラスチックや砂等の異物を含む製紙原料とに選別するスクリーン装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1におけるスクリーン装置は、スクリーンシリンダ(スクリーンバスケット)と、ロータと、を備える。スクリーンシリンダは製紙原料に含まれる繊維と異物とを選別する。スクリーンシリンダは、ロータの回転軸と同一の中心を有し、円筒形状に形成されている。スクリーンシリンダの中空内部にロータが配置されている。
【0004】
ロータは、所定の駆動装置によって回転駆動されるようになっている。ロータは、有底円筒状に形成されている。ロータの側壁の外周には、複数のロッドが設けられている。複数のロッドは、外側横方向に延びている。ロッドの先端部には、複数のベーンが取り付けられている。ベーンは、ロータの回転に伴って回転する。スクリーンシリンダとベーンとの間には、ベーンの回転時にベーンがスクリーンシリンダに干渉しない程度に僅かな隙間が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-55375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、異物が多量に含まれた古紙原料をスクリーン装置で処理しなければならないことがある。このような古紙原料において含有されている繊維と異物とを選別する場合、スクリーンシリンダが異物により塞がれて、良質の繊維の選別の効率が低下する。
【0007】
また、スクリーンシリンダを塞いだ異物は、ロータの回転によりベーンの外表面を流れる流れの速い古紙原料の作用により引きはがされことになるが、異物が多量に含まれた古紙原料を選別する場合、ベーンにも異物が堆積する傾向にある。ベーンに堆積した異物により、スクリーンシリンダとベーンとの間の隙間が閉塞し、スクリーンシリンダから異物を引きはがす作用が弱まる。これにより、良質の繊維の選別の効率が低下する。
【0008】
したがって、本発明に係る発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製紙原料を良質の繊維を含む製紙原料と、異物を含む製紙原料とに効果的に選別することができるスクリーン装置に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るスクリーン装置用のロータは、製紙原料を選別すべく複数の穴が形成された筒状のスクリーンバスケットを有するスクリーン装置用のロータであって、前記スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられており、筒状の本体部と、前記本体部の外周面に該外周面に沿った板状部として形成された複数の攪拌部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の態様によれば、攪拌部により、製紙原料の流れ方向に沿って、上流側(入口側)に対して下流側(出口側)においてスクリーンバスケットに対する間隔が小さくなっており、入口側でより多くの製紙原料を取り込むことができる。製紙原料の流れ方向において下流側では、製紙原料中に残る異物が多くなり、スクリーンバスケットが異物によって閉塞しやすい傾向にある。しかしながら、上流側よりも下流側においてスクリーンバスケットとロータとの間隔を小さくすることにより、通過する製紙原料の量を抑制することができる。これにより、スクリーンバスケットが異物により閉塞することを効果的に抑制することができる。また、攪拌部は本体部に密接しているため、製紙原料中の異物が攪拌部に堆積することが抑制される。
【0011】
また、前記本体部は、前記スクリーンバスケットに対する間隔が回転軸線に沿った前記製紙原料の流れ方向に沿って上流から下流に向かって小さくなるように形成されていてもよい。この態様によれば、本体部が上流側よりも下流側においてスクリーンバスケットとロータとの間隔が小さくなっている。上流側においては通過する製紙原料の流速を抑えつつ流量を増やして流れる製紙原料の体積を多くし、製紙原料自体によりスクリーンバスケットに対する異物の付着を抑制することができる。下流側においてはスクリーンバスケットとロータとの間隔を小さくして製紙原料の流速を高めることにより、スクリーンバスケットに対する異物の付着を抑制することができる。これにより、上流側と下流側との間において製紙原料の流量の勾配及びスクリーンバスケットが異物により閉塞することをさらに効果的に抑制することができる。
【0012】
また、前記複数の攪拌部は、回転軸線に沿って異なる位置に形成されていてもよい。この態様によれば、スクリーンバスケットに製紙原料が付着した場合、攪拌部に接触している製紙原料がスクリーンバスケットに付着した製紙原料に作用して、付着した製紙原料をスクリーンバスケットから引きはがす。複数の攪拌部が、回転軸線に沿って設けられているので、ロータの回転時に、複数の箇所で同時にスクリーンバスケットに付着した製紙原料の特に異物の引きはがし作用が働いている。
【0013】
また、前記複数の攪拌部のうち、回転軸線に沿った前記製紙原料の流れ方向に沿って上流側に設けられている攪拌部の前記本体部からの突出量は、下流側に設けられている攪拌部の前記本体部からの突出量よりも大きくてもよい。上流側においてはスクリーンバスケットとロータとの間隔が大きく流入してくる製紙原料も多い。この態様によれば、スクリーンバスケットとロータとの間隔が大きい上流側でも攪拌部による製紙原料の攪拌量を多くすることができる。攪拌量を多くすることにより、スクリーンバスケットに対する異物の付着を抑制することもできる。
【0014】
また、前記回転軸線に沿って異なる位置に形成された前記攪拌部に対して、周方向に所定の間隔をあけて設けられた他の攪拌部を備えていてもよい。この態様によれば、周方向において複数箇所で攪拌部に接触している製紙原料がスクリーンバスケットに付着した製紙原料に作用して、付着した製紙原料をスクリーンバスケットから引きはがすことができる。また、ロータの回転軸線に沿って上流から下流に流れる製紙原料の移動を妨げることがないため、製紙原料の効果的な選別作業を実施することができる。
【0015】
また、前記複数の攪拌部は、前記本体部に向かって凹に形成された凹部を有していてもよい。この態様によれば、ロータの回転と共に攪拌部に沿って製紙原料が流れやすくなる。攪拌部に凹部を設けることにより、攪拌部の表面を流れる製紙原料の流量を増やすことができるので、スクリーンバスケットに付着した製紙原料を引きはがす効果が向上する。
【0016】
また、前記攪拌部の表面は、前記凹部において前記回転方向における前縁の側から後縁の側に向かって前記本体部の外周面に向かって延びていてもよい。この態様によれば、回転方向において後方に向かって攪拌部における凹部は、本体部に向かって傾斜している。これにより、攪拌部を通過する製紙原料の流速は、本体部の外周面における製紙原料の流速よりも高まり、スクリーンバスケットに付着した製紙原料の引きはがしに有利に作用する。
【0017】
また、回転方向において前記攪拌部の前方縁の側でかつ前記製紙原料の流れ方向において上流側に位置する角部は、丸味付けされていてもよい。この態様によれば、回転軸線に沿って上流側から下流側に向かって流れ、攪拌部に衝突した製紙原料の流れを妨げることを抑制することができる。
【0018】
また、回転方向において前記攪拌部の前方縁は、前記製紙原料の流れ方向に沿って上流から下流に向かって前記回転方向とは反対側に延びていてもよい。この態様によれば、ロータの回転時に、回転方向とは反対側に相対的に流れる製紙原料を下流に促進して流すことができる。
【0019】
さらに、上記課題を解決するために、本発明によれば、製紙原料を選別すべく複数の穴が形成された筒状のスクリーンバスケットと、本発明に係るロータと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製紙原料から良質な繊維を含む製紙原料と異物を含む製紙原料とを効果的に選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るスクリーン装置を示す概略的な断面図である。
図2】本発明に係る攪拌ロータを示す図であり、図(a)は攪拌ロータの正面図であり、図(b)は攪拌ロータの斜視図である。
図3】本発明に係る攪拌ロータの本体部の展開図である。
図4】本発明に係る攪拌ロータの攪拌プレートの正面図である。
図5図4におけるV-V線に沿った攪拌プレートの断面図である。
図6図4におけるVI-VIに沿った攪拌プレートの断面図である。
図7】本発明に係る攪拌ロータと、スクリーンバスケットとの関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
本発明に係るスクリーン装置は、製紙原料を良質な繊維を含む製紙原料と、異物を含む製紙原料とに選別する製紙用のスクリーン装置である。本発明に係るロータは、製紙用のスクリーン装置に適用される。本発明に係るロータが適用されるスクリーン装置は、特定のスクリーン装置に限定されない。例えば、本発明の実施の形態に係るロータ1は、図1に示すスクリーン装置100に適用される。
【0024】
図1は、本発明に係る製紙用のスクリーン装置100の回転軸線xに沿った概略的な部分断面図である。本発明に係るロータ1が適用されるスクリーン装置100は、ハウジング110と、スクリーンバスケット120と、ロータ(以下、「攪拌ロータ」ともいう)1と、を備える。なお、スクリーン装置100は、図1に示すように設置される。スクリーン装置100において製紙原料が流れる流れ方向Fは、攪拌ロータ1の回転軸線xに沿っている。製紙原料は、流れ方向Fにおいて回転軸線xに沿って下側(上流F1)から上側(下流F2)に向かって流れる。
【0025】
攪拌ロータ1の回転軸線xに沿ったハウジング110の断面形状は、略円筒状である。ハウジング110は、中空空間Sにおいてスクリーンバスケット120及び攪拌ロータ1を収容している。ハウジング110において、攪拌ロータ1は、スクリーンバスケット120の内側に収容されている。
【0026】
ハウジング110の中空空間Sには、供給室S1と、選別室S2と、送出室S3と、排出室S4と、が形成されている。供給室S1は、ハウジング110において、スクリーンバスケット120及び攪拌ロータ1の下側に形成されている。供給室S1には供給管路111が接続されている。供給管路111を通じてハウジング110の外部から供給室S1に製紙原料が供給される。供給管路111を通じて供給された製紙原料は、ハウジング110の下方から上方に向かって選別室S2へ圧送ポンプ(図示せず)によって供給される。
【0027】
選別室S2は、ハウジング110において径方向でスクリーンバスケット120と攪拌ロータ1との間に形成されている。選別室S2において、製紙原料は、良質な繊維を含む製紙原料と異物を含む製紙原料とに選別される。良質な繊維を含む製紙原料は、送出室S3へとスクリーンバスケット120を通り抜ける。選別室S2は、スクリーンバスケット120及び攪拌ロータ1の上流F1側の端部と、下流F2側の端部との間を回転軸線xに沿って延びている。供給室S1から供給された製紙原料が、選別室S2を流れ方向Fにおいて上流F1から下流F2に向かって流れる。
【0028】
送出室S3は、ハウジング110とスクリーンバスケット120との間に形成されている。送出室S3には、スクリーンバスケット120と攪拌ロータ1との作用によりスクリーンバスケット120を通り抜けた良質な繊維を含む製紙原料が集められる。送出室S3には送出管路112が接続されている。良質の繊維を含む製紙原料は、送出管路112を通じて送出室S3からハウジング110の外部へ、例えば、抄紙機へと送り出される。
【0029】
排出室S4は、ハウジング110において、スクリーンバスケット120及び攪拌ロータ1の上側に形成されている。排出室S4には、攪拌ロータ1の攪拌作用によりスクリーンバスケット120の複数の穴(図示せず)を通り抜けることができなかった異物を含む製紙原料が集められる。排出室S4には排出管路113が接続されている。異物を含む製紙原料の一部は、排出管路113を通じて排出室S4からハウジング110の外部へ排出される。また、異物を含む製紙原料の一部は、排出室S4から攪拌ロータ1の中空部14へと入り込み、再度、選別室S2へと戻される。
【0030】
スクリーンバスケット120は、円筒状に形成されている。スクリーンバスケット120は、その周壁部に製紙原料を選別するための複数の穴が形成されている。スクリーンバスケット120における穴を通じて、選別室S2に供給されてきた製紙原料から特に良質な繊維を含む製紙原料を選別する。製紙原料から選別された良質の繊維を含む製紙原料は、スクリーンバスケット120の穴を通過して送出室S3に集められる。
【0031】
上述の構成を有するスクリーン装置100には、本発明に係る攪拌ロータ1が設けられている。図2は、本発明に係る攪拌ロータ1を示す図であり、図(a)は攪拌ロータ1の正面図であり、図(b)は攪拌ロータ1の斜視図である。
【0032】
本発明に係る攪拌ロータ1は、製紙原料を選別する円筒状のスクリーンバスケット120の内側に回転自在に設けられたスクリーン装置100用のロータである。攪拌ロータ1は、円錐台状でかつ筒状の本体部11と、板状の複数の攪拌部(以下、「攪拌プレート」ともいう)12と、を有する。攪拌部12は、スクリーンバスケット120に対する間隔が、回転軸線xに沿った製紙原料の流れ方向Fに沿って上流F1から下流F2に向かって小さくなるように、本体部11の外周面に沿った板状部として形成されている。以下、攪拌ロータ1の構成について具体的に説明する。
【0033】
攪拌ロータ1は、所定の駆動装置(図示せず)によって回転可能な回転シャフト13に取り付けられている。駆動装置の回転シャフト13の回転に伴い、攪拌ロータ1は回転方向Rに回転させられる。本体部11は、周壁部11aと、底壁部11bとを有する。周壁部11aは、回転軸線x回りに延びている。周壁部11aは、上流F1から下流F2に向かって回転軸線xから離れるように延びている。つまり、本体部11の外径は、上流F1から下流F2に向かって連続的に大きくなっている。
【0034】
底壁部11bは、下流F2側で本体部11を閉鎖する。これにより、攪拌ロータ1の中空部14は、周壁部11aと底壁部11bとによって画定されていて、上流F1側に向かって開放している。周壁部11aは、複数の開口部11cを有する。開口部11cは、底壁部11bの側に設けられている。開口部11cを介して攪拌ロータ1の中空部14と供給室S1及び選別室S2とは連結されている。
【0035】
図3は、攪拌ロータ1の本体部11の展開図である。攪拌プレート12は、回転軸線xの回りに所定の間隔をあけて本体部11に設けられている。複数の攪拌プレート12が回転軸線xに沿って本体部11の外周面に設けられている。
【0036】
攪拌プレート12は、回転軸線xに沿って互いに平行に3段(上段、中段、下段)に分けられて本体部11に設けられている。つまり、攪拌プレート12は、本体部11の回転軸線xに沿った異なる3つの位置にほぼ等間隔をあけて設けられている。複数の攪拌プレート12の少なくとも一部は、回転軸線xに沿って異なる位置に形成されている。つまり、回転軸線xに沿って隣り合う攪拌プレート12は、周方向にずれた位置に形成されている。回転軸線xに沿って隣り合う攪拌プレート12は千鳥状に配置されている。
【0037】
2つの攪拌プレート12が各段に設けられている。各段において2つの攪拌プレート12は、周方向に互いに所定の間隔をあけて設けられている。各段において2つの攪拌プレート12は、径方向において対向する位置に設けられている。上段及び下段における攪拌プレート12は、回転軸線xに沿って見て周方向に同じ位置に設けられている。中段における攪拌プレート12は、周方向において上段及び下段における攪拌プレート12の間に設けられている。
【0038】
図4は、攪拌ロータ1における攪拌プレート12の正面図である。攪拌プレート12は、製紙原料をスクリーンバスケット120に対して回転方向Rに旋回させる。攪拌プレート12の回転により、製紙原料に含まれる良質な繊維はスクリーンバスケット120の穴を抜けて送出室S3に集められる。複数の攪拌プレート12は、平面視略矩形状(又は平面視略台形状)に形成されている。
【0039】
攪拌プレート12は、下流縁12a、上流縁12b、前方縁12c及び後方縁12dにより周方向を画定されている。下流縁12aは、流れ方向Fにおいて下流F2側に位置する。上流縁12bは、流れ方向Fにおいて上流F1側に位置する。前方縁12cは、回転方向Rにおいて前方に位置する。後方縁12dは、回転方向Rにおいて後方に位置する。攪拌プレート12は、凹部12eを有する。凹部12eは、下流縁12a、前方縁12c及び上流縁12bに沿って延びる壁部12fによって画定されている。下流縁12aは、上流縁12bよりも短い。
【0040】
前方縁12cは、上流F1から下流F2に向かって回転方向Rとは反対側に斜めに延びている。攪拌ロータ1の回転時に前方縁12cに衝突する製紙原料は、上流F1から下流F2に向かってかつ回転方向Rとは反対方向に向かって流される。これにより、攪拌ロータ1の回転時に、回転方向Rとは反対側に相対的に流れる製紙原料を、下流F2に促進して流すことができる。
【0041】
後方縁12dは、製紙原料の流れ方向Fにおいて上流F1から下流F2に向かって回転方向Rに斜めに延びている。
【0042】
回転方向Rにおいて攪拌プレート12の前方縁12cの側でかつ流れ方向Fにおいて上流F1に位置する角部12gは、丸味付けされたR部として形成されている。これにより、上流F1から下流F2に流れる製紙原料は、角部12gに沿って下流F2に円滑に流れていく。これにより、攪拌プレート12に衝突した製紙原料の流れを妨げることを抑制することができる。
【0043】
これに対して、仮に、破線で示すように角部12gが尖端を持って形成された場合、流れ方向Fにおいて上流F1から下流F2に流れてきた製紙原料は、上流F1側に押し返されることになる。
【0044】
角部12gは、上流F1側を向いている。回転方向Rにおいて攪拌プレート12の前方縁12cの側でかつ流れ方向Fにおいて下流F2の側に位置する角部12hは、丸味付けされたR部として形成されている。角部12gにおけるR部は、角部12hにおけるR部よりも曲率が小さくなるように丸味付けられている。
【0045】
角部12hは、流れ方向Fにおいて下流F2側を向いている。攪拌ロータ1が回転方向Rに回転した場合、回転方向Rとは反対側に向かって流される製紙原料は、攪拌プレート12の角部12hに沿って下流F2に流れるので、攪拌ロータ1の回転を妨げる抵抗を小さくすることができる。これにより、攪拌ロータ1の動力負荷を抑制することができる。
【0046】
図5は、図4におけるV-V線に沿った攪拌プレート12の断面図である。攪拌プレート12は壁部12fにおいて、本体部11とは反対側に面する面12iが本体部11の外周面に沿って湾曲して形成されている。攪拌プレート12は、本体部11に面する面12jにおいて、本体部11の外周面における曲率に相当する曲率を持って形成されている。攪拌プレート12は、本体部11の外周面に沿って密着して一体に設けられている。
【0047】
凹部12eは、回転方向Rに沿って延びている。凹部12eは、攪拌プレート12において本体部11に向かって凹に形成されている部位である。凹部12eにおける攪拌プレート12の面12kは回転方向Rにおいて、前方縁12c側から後方縁12d側に向かって凹に湾曲して延びている。凹部12eより後方縁12dに向かって延びる面は本体部11の外周面に向かって斜めに延びている。
【0048】
各攪拌プレート12は、本体部11の外周面からこの外周面に沿ってスクリーンバスケット120の側に突き出ている。攪拌プレート12は、例えば鋼材により形成されている。攪拌プレート12は、面12jの側で、例えば溶接により本体部11の外周面に沿って貼り付けられている。
【0049】
図6は、図4におけるVI-VI線に沿った攪拌プレート12の断面図である。本体部11からの下流縁12aの突出量は、本体部11からの上流縁12bの突出量よりも小さい。本体部11の外周面からの下流縁12a及び上流縁12bの突出量は、攪拌プレート12の厚さに相当する。攪拌プレート12の厚さは、下流縁12a、上流縁12b、前方縁12c及び後方縁12dの長さよりも小さい。
【0050】
凹部12eにおける攪拌プレート12の表面は、流れ方向Fにおいて、下流縁12aと上流縁12bとの間で本体部11の外周面に向かって凹に湾曲して延びている。流れ方向Fに沿った凹部12eにおける攪拌プレート12の面12kは、上流F1側よりも下流F2側で本体部11に接近している。
【0051】
図7は、本発明に係る攪拌ロータ1と、スクリーンバスケット120との関係を示す概略図である。上流F1側における、本体部11とスクリーンバスケット120との間隔D1は、下流F2側における、本体部11とスクリーンバスケット120との間隔D2よりも大きくなっている(D1>D2)。また、攪拌ロータ1において攪拌プレート12とスクリーンバスケット120との間隔は、上流F1から下流F2に向かって小さくなっている。以下、スクリーンバスケット120と攪拌ロータ1との間隔について、スクリーンバスケット120の内周面と、攪拌ロータ1における攪拌プレート12の下流縁12a側の面12iとの間隔を基準に説明する。
【0052】
スクリーンバスケット120の内周面と、本体部11の下段に設けられた攪拌プレート12の下流縁12a側の面12iとの間隔を「d1」、本体部11の中段に設けられた攪拌プレート12の下流縁12a側の面12iとの間隔を「d2」及び本体部11の上段に設けられた攪拌プレート12の下流縁12a側の面12iとの間隔を「d3」とする。間隔d1~d3は、回転軸線xに沿って上流F1から下流F2に向かうに連れて小さくなっている。つまり、各間隔の関係は、d1>d2>d3、となっている。
【0053】
複数の攪拌プレート12のうち、回転軸線xに沿った製紙原料の流れ方向に沿って上流F1側に設けられている攪拌プレート12の本体部11からの突出量は、下流F2側に設けられている攪拌プレート12の本体部11からの突出量よりも大きい。
【0054】
下段に設けられている攪拌プレート12の上流縁12bにおける突出量t1は、中段に設けられている攪拌プレート12の上流縁12bにおける突出量t2よりも大きく、上段に設けられている攪拌プレート12の上流縁12bにおける突出量t3よりも大きい。中段に設けられている攪拌プレート12の突出量t2は、上段に設けられている攪拌プレート12の突出量t3よりも大きい。つまり、各突出量の関係は、t1>t2>t3、となっている。
【0055】
次に、本発明に係るスクリーン装置100による製紙原料の選別方法について説明する(図1,3参照)。まず、製紙原料が圧送ポンプによりスクリーン装置100の供給室S1に送り込まれる。送り込まれた製紙原料は、供給室S1の側から排出室S4の側に向かって選別室S2を通って圧送される。攪拌ロータ1は、スクリーンバスケット120に対して回転している。製紙原料は、回転している攪拌ロータ1とスクリーンバスケット120との間において選別室S2を流れていく。
【0056】
上流F1側における攪拌ロータ1とスクリーンバスケット120との間の間隔d1は、選別室S2において最も大きくなっている。そのため、選別室S2において最も多く量の製紙原料が供給される。
【0057】
上記関係(d1>d2>d3)を満たすことは、製紙原料の選別に有利である。供給される製紙原料の選別室S2における処理量は、上流F1側及び下流F2側において相対的に上流F1側で多くなっている。これは、選別室S2において上流F1側に製紙原料がまず供給され、上流F1側における製紙原料に多くの繊維及び異物が含まれているためである。
【0058】
製紙原料が流れ方向Fに沿って、上流F1から下流F2に流れるにつれて、製紙原料中の繊維は選別されスクリーンバスケット120の穴を抜けて送出室S3へと集められる。したがって、下流F2側に行くにつれて製紙原料中の異物の割合が大きくなる。仮に、下流F2側における攪拌プレート12とスクリーンバスケット120との間隔d3が上流F1側における間隔d1と同じ場合、下流F2側に異物の含有割合が多い製紙原料が供給されていく。下流F2側において異物の含有量が多い製紙原料から良質の繊維を選別することになるため、下流F2側でのスクリーンバスケット120における負担が大きくなる。
【0059】
これに対して本発明に係る攪拌ロータ1においては、上流F1から下流F2に向かって外径が大きくなっている。これにより、選別室S2を通過する製紙原料の量を、異物の含有量が大きくなるにつれて相対的に少量に規制することができる。さらに、攪拌プレート12と、スクリーンバスケット120との間隔を、d1、d2、d3の順に狭めた構成により、スクリーンバスケット120全体で均等に製紙原料から繊維を適切に選別することができる。
【0060】
なお、本体部11の各段において回転軸線xに沿った攪拌プレート12のいずれの部分を基準としても、上記関係(d1>d2>d3)は満たされる。
【0061】
さらに、攪拌ロータ1においては、上流F1における攪拌プレート12の本体部11からの突出量は、下流F2における攪拌プレート12の本体部11からの突出量よりも大きくなっている(t1>t2>t3)。これにより、上流F1における攪拌量を多くしつつ、攪拌プレート12とスクリーンバスケット120との間隔の関係、d1>d2>d3、を維持して上流F1側における攪拌ロータ1の動力負荷を抑えることができる。また、攪拌プレート12とスクリーンバスケット120との間での製紙原料の攪拌量を多くすることにより、スクリーンバスケット120に付着する異物を製紙原料自体により掻き取ることもできる。
【0062】
回転軸線xに沿って選別室S2を流れる製紙原料は、攪拌ロータ1の攪拌プレート12によって攪拌されながら下流F2に流されていく。攪拌プレート12の凹部12eにおいて多くの製紙原料を流すことができる。これにより、攪拌プレート12において回転方向Rに製紙原料の量が多くなる。攪拌プレート12により回転方向Rに製紙原料が流されることにより、スクリーンバスケット120に付着している製紙原料中の異物を引きはがすことができる。
【0063】
選別室S2を抜けて排出室S4に到達した製紙原料の一部は、排出管路113を通じてスクリーン装置100の外部に排出される。排出された製紙原料は、供給室S1に送られる製紙原料と合流し、再度、スクリーン装置100に供給されてもよい。また、製紙原料の一部は、排出室S4から攪拌ロータ1の中空部14に送られる。中空部14に送られた製紙原料は、下流F2から上流F1に戻される。中空部14において上流F1側に戻された製紙原料は、本体部11の開口部11cを通じて供給室S1及び選別室S2に送られる。なお、中空部14における下流F2から上流F1への製紙原料の流れは、所定の手段(図示せず)により達成される。
【0064】
以上のようなスクリーン装置100によれば、製紙原料から良質な繊維を含む製紙原料と異物を含む製紙原料とを効果的に選別することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、上記の実施の形態においては、本体部11において回転軸線xに沿って平行に設けられている攪拌プレート12は3段に限られず、スクリーン装置100の仕様に応じて2段~5段に分けて設けられていてもよい。さらに、回転軸線xに沿って各段には2つの攪拌プレート12が対向する位置に設けられていたが、攪拌ロータ1に設けられる攪拌プレート12の位置及び個数は、上記の実施の形態に限定されず、スクリーン装置の仕様等に応じて適宜変更することができる。
【0066】
上記の実施の形態においては、回転軸線xに沿って3段に分かれてかつ回転方向Rに沿って各段に2つの攪拌プレート12が設けられていたが、回転軸線xに沿って1つの攪拌プレート12が上流F1から下流F2に亘って本体部11に延びていてもよい。この場合、回転方向Rには、1つ又は2つ以上の攪拌プレート12が設けられていてもよい。
【0067】
上記の実施の形態においては、本体部11を略円錐台状に形成することにより、攪拌プレート12とスクリーンバスケット120との間隔が、上流から下流に行くに伴い小さくなるように構成されていた。例えば、攪拌ロータ1の本体部11に形状の異なる攪拌プレート12を設けてもよい。これにより、本体部11が円筒状に形成されている場合であっても、本体部11からの突出量が異なる攪拌プレート12を用いることで、攪拌プレート12とスクリーンバスケット120との間隔を上流F1から下流F2に行くに伴い小さくなるように構成することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 攪拌ロータ(ロータ)
11 本体部
12 攪拌プレート(攪拌部)
12a 下流縁
12b 上流縁
12c 前方縁
12d 後方縁
12e 凹部
12g 角部
100 スクリーン装置
110 ハウジング
120 スクリーンバスケット
F1 上流
F2 下流
R 回転方向
x 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7