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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】多段型スクリーン
(51)【国際特許分類】
   D21D 5/02 20060101AFI20240110BHJP
   B03B 5/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
D21D5/02 A
B03B5/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019161513
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038491
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 剛
(72)【発明者】
【氏名】岩重 尚之
(72)【発明者】
【氏名】堂阪 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 正守
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102051837(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1696400(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21D 1/00 - 99/00
B03B 1/00 - 13/06
B07B 1/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の一次スクリーンバスケット及び前記一次スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられた一次ロータを有し、前記一次ロータが回転することにより、前記一次スクリーンバスケットと前記一次ロータとの間に供給された製紙原料を、前記一次スクリーンバスケットを通過した一次良質原料と、前記一次スクリーンバスケットを通過しなかった一次残余原料とに選別する一次スクリーン装置と、
筒状の二次スクリーンバスケット及び前記二次スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられた二次ロータを有し、前記二次ロータが回転することにより、前記一次スクリーン装置から前記二次スクリーンバスケットと前記二次ロータとの間に供給された前記一次残余原料を、前記二次スクリーンバスケットを通過した二次良質原料と、前記二次スクリーンバスケットを通過しなかった二次残余原料とに選別する二次スクリーン装置と、
を備え、
前記一次スクリーン装置及び前記二次スクリーン装置は、前記一次ロータの第一回転軸線及び前記二次ロータの第二回転軸線が鉛直方向に延びるように鉛直方向に並んで配置されており、
前記二次ロータは、
前記第二回転軸線方向に延在し、前記第二回転軸線を中心に回転自在に設けられた第二シャフトと、
前記第二シャフトの外周面に少なくとも部分的に前記第二回転軸線を中心に螺旋状に延びる第二スクリュー羽根と、を有し、
前記第二シャフトは、前記製紙原料を前記二次スクリーンバスケットとの間で選別するとともに、前記第二回転軸線に並ぶ前記第二スクリュー羽根の間で脱水する
ことを特徴とする多段型スクリーン。
【請求項2】
前記第二スクリュー羽根には複数の孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多段型スクリーン。
【請求項3】
筒状の一次スクリーンバスケット及び前記一次スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられた一次ロータを有し、前記一次ロータが回転することにより、前記一次スクリーンバスケットと前記一次ロータとの間に供給された製紙原料を、前記一次スクリーンバスケットを通過した一次良質原料と、前記一次スクリーンバスケットを通過しなかった一次残余原料とに選別する一次スクリーン装置と、
筒状の二次スクリーンバスケット及び前記二次スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられた二次ロータを有し、前記二次ロータが回転することにより、前記一次スクリーン装置から前記二次スクリーンバスケットと前記二次ロータとの間に供給された前記一次残余原料を、前記二次スクリーンバスケットを通過した二次良質原料と、前記二次スクリーンバスケットを通過しなかった二次残余原料とに選別する二次スクリーン装置と、
を備え、
前記一次スクリーン装置及び前記二次スクリーン装置は、前記一次ロータの第一回転軸線及び前記二次ロータの第二回転軸線が鉛直方向に延びるように鉛直方向に並んで配置されており、
前記一次スクリーン装置から前記二次スクリーン装置へ供給される前記一次残余原料の供給量を調整する弁をさらに備えることを特徴とする多段型スクリーン。
【請求項4】
筒状の一次スクリーンバスケット及び前記一次スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられた一次ロータを有し、前記一次ロータが回転することにより、前記一次スクリーンバスケットと前記一次ロータとの間に供給された製紙原料を、前記一次スクリーンバスケットを通過した一次良質原料と、前記一次スクリーンバスケットを通過しなかった一次残余原料とに選別する一次スクリーン装置と、
筒状の二次スクリーンバスケット及び前記二次スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられた二次ロータを有し、前記二次ロータが回転することにより、前記一次スクリーン装置から前記二次スクリーンバスケットと前記二次ロータとの間に供給された前記一次残余原料を、前記二次スクリーンバスケットを通過した二次良質原料と、前記二次スクリーンバスケットを通過しなかった二次残余原料とに選別する二次スクリーン装置と、
を備え、
前記一次スクリーン装置及び前記二次スクリーン装置は、前記一次ロータの第一回転軸線及び前記二次ロータの第二回転軸線が鉛直方向に延びるように鉛直方向に並んで配置されており、
前記一次スクリーン装置は、
前記第一回転軸線方向に延在し、前記第一回転軸線を中心に回転自在に設けられた第一シャフトと、
前記第一シャフトの外周面に少なくとも部分的に前記第一回転軸線を中心に螺旋状に延びる第一スクリュー羽根と、を有し、
前記第一シャフトが回転することにより、前記一次残余原料の一部が前記第一スクリュー羽根によって前記第一回転軸線方向に押し流されて、前記一次スクリーンバスケットと前記一次ロータの間に戻される
ことを特徴とする多段型スクリーン。
【請求項5】
前記二次スクリーン装置は、前記一次スクリーン装置の上側に配置されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の多段型スクリーン。
【請求項6】
前記一次スクリーン装置及び前記二次スクリーン装置は、前記第一回転軸線と前記第二回転軸線とが一致するように配置されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の多段型スクリーン。
【請求項7】
前記二次スクリーン装置は、前記二次スクリーンバスケット内の前記一次残余原料に液体を供給する液体供給部を有することを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の多段型スクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙パルプ工場等で古紙を原料として紙、板紙、ファイバーボード等を製造する際に、製紙原料を良質の繊維を含む製紙原料と、プラスチックや砂等の異物を含む製紙原料とに選別するスクリーン装置が知られている。
【0003】
スクリーン装置において製紙原料を選別する場合、異物を含む製紙原料を排出する排出口を閉じて、製紙原料を供給する供給口を開放した状態において製紙原料を供給しながら選別する技術がある。排出口を閉じた状態で所定の時間にわたってスクリーン装置を運転すると、良質な繊維を含む製紙原料は回収口から回収される一方で、スクリーン装置内部には異物を含む製紙原料が次第に堆積してくる。
【0004】
次いで、製紙原料の供給口を閉じてスクリーン装置内部に希釈水を供給する。この状態においてスクリーン装置を運転することにより、製紙原料に含まれている良質な繊維はさらに回収され、スクリーン装置内部には、ほぼ異物のみが残るようになる。最終的に、排出口を開放することにより異物が排出される。
【0005】
上記技術は、製紙原料からの良質な繊維の回収率が非常に高く、繊維の回収という点において効率のよい技術である。しかしながら、スクリーン装置の運転中において、途中から供給口を閉鎖してしまうため、スクリーン装置の運転時間当たりの選別処理される製紙原料量は小さい。
【0006】
これに対して、複数のスクリーン装置を接続するスクリーンシステムが公知である。このスクリーンシステムにおいて異物を含む製紙原料を排出する上流側のスクリーン装置の排出口は、下流側のスクリーン装置の供給口に接続されている。上流側のスクリーン装置において異物を含むものとして排出された製紙原料は、下流側のスクリーン装置において選別処理される(例えば、特許文献1)。
【0007】
連続的に製紙原料を複数のスクリーン装置において連続的に処理することにより、製紙原料の処理量も多く、製紙原料から異物を高精度で排除することができ、抄紙された紙の品質も高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-151068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、製紙原料を複数のスクリーン装置において処理する場合、スクリーン装置の下流側には、例えば、抄紙機等のより大きな機械が配置されており、各スクリーン装置の設置場所が制限されることがある。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、省スペース化を可能にする、製紙原料を連続的に多量に処理することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る多段型スクリーンは、筒状の一次スクリーンバスケット及び前記一次スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられた一次ロータを有し、前記一次ロータが回転することにより、前記一次スクリーンバスケットと前記一次ロータとの間に供給された製紙原料を、前記一次スクリーンバスケットを通過した一次良質原料と、前記一次スクリーンバスケットを通過しなかった一次残余原料とに選別する一次スクリーン装置と、筒状の二次スクリーンバスケット及び前記二次スクリーンバスケットの内側に回転自在に設けられた二次ロータを有し、前記二次ロータが回転することにより、前記一次スクリーン装置から前記二次スクリーンバスケットと前記二次ロータとの間に供給された前記一次残余原料を、前記一次スクリーンバスケットを通過した二次良質原料と、前記二次スクリーンバスケットを通過しなかった二次残余原料とに選別する二次スクリーン装置と、を備え、前記一次スクリーン装置及び前記二次スクリーン装置は、前記一次ロータの第一回転軸線及び前記二次ロータの第二回転軸線が鉛直方向に延びるように鉛直方向に並んで配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記の態様によれば、連続的に二段階に分けて製紙原料から良質な繊維を回収することができる多段型スクリーンをコンパクトに構成することができる。2つのスクリーン装置を重ねることにより、設置場所が制限された場所においても一台分のスクリーン装置の設置広さに2台のスクリーン装置を設置することができる。また、既存のスクリーン装置を多段型スクリーンに交換する場合であっても、既存のスクリーン装置と略同じ設置スペースが必要になるだけである。
【0013】
また、前記二次スクリーン装置は、前記一次スクリーン装置の上側に配置されていてもよい。この態様によれば、水平方向に限られた設置環境において高さ方向に空いた空間を利用することができる。また、既存の一次スクリーン装置に対して簡単に取り付けることができる。
【0014】
また、前記一次スクリーン装置及び前記二次スクリーン装置は、前記第一回転軸線と前記第二回転軸線とが一致するように配置されていてもよい。この態様によれば、各スクリーン装置において発生する多段型スクリーンに対する回転振動の影響を抑えることができる。
【0015】
また、前記二次ロータは、前記第二回転軸線方向に延在し、前記第二回転軸線を中心に回転自在に設けられた第二シャフトと、前記第二シャフトの外周面に少なくとも部分的に前記第二回転軸線を中心に螺旋状に延びる第二スクリュー羽根と、を有し、前記第二シャフトは、前記製紙原料を前記二次スクリーンバスケットとの間で選別するとともに、前記第二回転軸線に並ぶ前記第二スクリュー羽根の間で脱水するようになっていてもよい。この態様によれば、二次スクリーン装置において製紙原料から繊維を回収するとともに、異物を脱水された状態において排出することができる。
【0016】
また、前記スクリュー羽根には延び方向に沿って複数の孔が形成されていてもよい。この態様によれば、第二シャフトに沿って搬送されていく製紙原料の一部は、スクリュー羽根の孔から落ち上流側に戻すことにより二次スクリーン装置における製紙原料の滞留時間を稼ぎ、繊維の回収効率を高めることができる。
【0017】
また、前記二次スクリーン装置は、前記二次スクリーンバスケット内の前記一次残余原料に液体を供給する液体供給部を有していてもよい。この態様によれば、一次スクリーン装置において異物の割合が高くなった製紙原料に液体を加えることにより、二次スクリーン装置において製紙原料から良質な繊維を含む製紙原料を回収しやすくすることができる。
【0018】
また、前記一次スクリーン装置から前記二次スクリーン装置へ供給される前記一次残余原料の供給量を調整する弁をさらに備えていてもよい。この態様によれば、二次スクリーン装置における処理量を調節して、二次スクリーン装置における過度な作業負担を回避することができる。
【0019】
また、前記一次スクリーン装置は、前記第一回転軸線方向に延在し、前記第一回転軸線を中心に回転自在に設けられた第一シャフトと、前記第一シャフトの外周面に少なくとも部分的に前記第一回転軸線を中心に螺旋状に延びる第一スクリュー羽根と、を有し、前記第一シャフトが回転することにより、前記一次残余原料の一部が前記第一スクリュー羽根によって前記第一回転軸線方向に押し流されて、前記一次スクリーンバスケットと前記一次ロータの間に戻されるようになっていてもよい。この態様によれば、一次スクリーン装置において製紙原料を循環させることができるので、多段型スクリーン全体としてより効率的に良質な繊維を含む製紙原料を回収することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、省スペース化を可能にしつつ製紙原料を連続的に多量に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施の形態に係る多段型スクリーン装置を示す概略的な断面図である。
図2】第2の実施の形態に係る多段スクリーン装置を示す概略的な断面図であり、二次スクリーン装置の供給室が拡大された状態を示す。
図3】第2の実施の形態に係る多段スクリーン装置を示す概略的な断面図であり、二次スクリーン装置の供給室が縮小された状態を示す。
図4】変形例に係る攪拌ロータを示す図であり、図(a)は攪拌ロータの正面図であり、図(b)は攪拌ロータの斜視図である。
図5】変形例に係る攪拌ロータの本体部の展開図である。
図6】攪拌ロータにおける攪拌プレートの正面図である。
図7図6におけるVII-VII線に沿った攪拌プレートの断面図である。
図8図6におけるVIII-VIII線に沿った攪拌プレートの断面図である。
図9】変形例に係る攪拌ロータと、スクリーンバスケットとの関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
紙の製造工程においては、木材チップや古紙から得たパルプ原料に、填料、サイズ剤、紙力増強剤、歩留剤等の各種薬品を適宜添加して、製紙原料を調製する。本発明に係る多段型スクリーン1は、製紙原料を連続的に、良質の繊維を含む製紙原料と異物を含む製紙原料とに選別するスクリーンシステムである。本発明に係る多段型スクリーン1は、抄紙製造ラインに適用されるものであり、特定の抄紙製造ラインに限定されない。
【0024】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態に係る多段型スクリーン1の概略的な部分断面図である。本発明に係る多段型スクリーン1は、一次スクリーン装置10と、二次スクリーン装置30と、を備える。一次スクリーン装置10は、筒状の一次スクリーンバスケット(以下、「スクリーンバスケット」ともいう)11及び一次スクリーンバスケット11の内側に回転自在に設けられた一次ロータ(以下、「攪拌ロータ」ともいう)12を有し、一次ロータ12が回転することにより、一次スクリーンバスケット11と一次ロータ12との間に供給された製紙原料Mを、一次スクリーンバスケット11を通過した一次良質原料M1と、一次スクリーンバスケット11を通過しなかった一次残余原料M2とに選別する。二次スクリーン装置30は、筒状の二次スクリーンバスケット(以下、「スクリーンバスケット」ともいう)31及び二次スクリーンバスケット31の内側に回転自在に設けられた二次ロータ(以下、「攪拌ロータ」ともいう)32を有し、二次ロータ32が回転することにより、一次スクリーン装置10から二次スクリーンバスケット31と二次ロータ32との間に供給された一次残余原料M2を、二次スクリーンバスケット31を通過した二次良質原料M3と、二次スクリーンバスケット31を通過しなかった二次残余原料M4とに選別する。一次スクリーン装置10及び二次スクリーン装置30は、一次ロータ12の第一回転軸線(以下、「回転軸線」ともいう)x1及び二次ロータ32の第二回転軸線(以下、「回転軸線」ともいう)x2が鉛直方向に延びるように鉛直方向に並んで配置されている。以下、多段型スクリーン1の構成について具体的に説明する。
【0025】
一次スクリーン装置10は、スクリーンバスケット(一次スクリーンバスケット)11と、攪拌ロータ12と、ハウジング13と、駆動装置14と、を有する。ハウジング13は、スクリーンバスケット11及び攪拌ロータ12を収容している。攪拌ロータ12は、スクリーンバスケット11の内側に収容されている。
【0026】
ハウジング13には、供給室S1と、選別室S2と、送出室S3と、排出室S4と、が形成されている。供給室S1は、ハウジング13内において、スクリーンバスケット11及び攪拌ロータ12の下側に形成されている。供給室S1には供給管路P1が接続されている。供給管路P1を通じてハウジング13の外部から供給室S1に製紙原料Mが供給される。供給管路P1を通じて供給された製紙原料Mは、ハウジング13の下方から上方に向かって選別室S2へ圧送ポンプ(図示せず)によって供給される。
【0027】
選別室S2は、径方向でスクリーンバスケット11と攪拌ロータ12との間に形成されている。選別室S2において、製紙原料Mは、良質な繊維を含む一次良質原料M1と異物を含む一次残余原料M2とに選別される。一次製原料M1は、スクリーンバスケット11を通り抜けて送出室S3へ移動する。選別室S2は、スクリーンバスケット11及び攪拌ロータ12の上流F1側の端部と下流F2側の端部との間を回転軸線x1に沿って延びている。
【0028】
送出室S3は、ハウジング13とスクリーンバスケット11との間に形成されている。送出室S3には、スクリーンバスケット11と攪拌ロータ12との作用によりスクリーンバスケット11を通り抜けた一次良質原料M1が集められる。送出室S3には送出管路P2が接続されている。一次良質原料M1は、送出管路P2を通じて送出室S3からハウジング13の外部へ、例えば、抄紙機へと送り出される。
【0029】
排出室S4は、ハウジング13内において、スクリーンバスケット11及び攪拌ロータ12の上側に形成されている。排出室S4には、攪拌ロータ12の攪拌作用によりスクリーンバスケット11を通り抜けることができなかった一次残余原料M2が集められる。一次スクリーン装置10において処理されて排出室S4に集まった一次残余原料M2は、二次供給管路P3を介して二次スクリーン装置30に送られる。また、排出室S4に集まった一次残余原料M2の一部は、排出室S4から攪拌ロータ12の中空部15へと入り込み、再度、選別室S2へと戻される。
【0030】
スクリーンバスケット11は、円筒状に形成されている。スクリーンバスケット11は、その側周部に製紙原料Mを選別するための複数の穴(図示せず)が形成されている。スクリーンバスケット11における穴を通じて、選別室S2に供給されてきた製紙原料Mから特に一次良質原料M1を選別する。スクリーンバスケット11の穴を通過して製紙原料Mから選別された良質の繊維を含む一次良質原料M1は、送出室S3に集められる。
【0031】
攪拌ロータ12は、円筒状の本体部20と、複数の攪拌ベーン21とを有する。本体部20は、回転軸線x1に沿った断面が略円錐台状に形成されている。本体部20は、周壁部22と、底壁部23とを有する。周壁部22は、回転軸線x1を中心に延びている。周壁部22は、上流F1から下流F2に向かって回転軸線x1から離れるように延びている。つまり、本体部20の外径は、上流F1から下流F2に向かって連続的に大きくなっている。周壁部22は、複数の開口部24を有する。開口部24を介して攪拌ロータ12の中空部15と選別室S2とは連結されている。
【0032】
底壁部23は、下流F2側で本体部20を閉鎖する。これにより、攪拌ロータ12の中空部15は、周壁部22と底壁部23とによって画定されていて、上流F1側に向かって開放している。
【0033】
周壁部22の外周面には、径方向外側に延びる複数のロッド25が設けられている。各ロッド25の先端部には攪拌ベーン21が取り付けられている。攪拌ベーン21は、周方向に間隔を空けて本体部20の周壁部22にロッド25を介して取付けられている。これにより、攪拌ロータ12の高速回転に伴って、攪拌ベーン21も一緒に回転する。
【0034】
駆動装置14は、一次スクリーン装置10の下側に設けられている。駆動装置14の回転シャフト(第一シャフト)16は、攪拌ロータ12の底壁部23を貫通している。回転シャフト16の先端は、本体部20の下流F2側の端部付近にまで延びている。回転シャフト16は、攪拌ロータ12の底壁部23に固定されている。したがって回転シャフト16の回転と共に、攪拌ロータ12も一緒に回転する。
【0035】
回転シャフト16の先端部における外周面には、少なくとも部分的に回転軸線x1を中心に螺旋状に延びる2枚のスクリュー羽根17が設けられている。スクリュー羽根17は、回転シャフト16の外周面から径方向に張り出している。2枚のスクリュー羽根17は、回転軸線x1を中心にそれぞれ異なる方向に螺旋状に延びている。
【0036】
なお、回転シャフト16は、回転シャフト16が回転することにより、一次残余原料M2の一部がスクリュー羽根17によって回転軸線x1方向に押し流されて、スクリーンバスケット11と攪拌ロータ12の間に戻されるように回転する。具体的には、回転シャフト16の回転に伴うスクリュー羽根17の作用により、選別室S2を下流F2の側に通り抜けて排出室S4に達した一次残余原料M2の一部が上流F1に送り戻される。
【0037】
一次スクリーン装置10と二次スクリーン装置30との間における一次残余原料M2の移動は、二次供給管路P3を介してのみ可能である。二次供給管路P3は、その一端が排出室S4に接続されている。二次供給管路P3は、後述する二次スクリーン装置30のハウジング33内を通って、多段型スクリーン1の設置状態において二次スクリーン装置30の上端部から抜け、次いで、下方に延びている。二次供給管路P3の他端は、二次スクリーン装置30の供給室SS1に接続されている。
【0038】
二次供給管路P3は、流量制御弁Vを有する。流量制御弁Vは、二次スクリーン装置30へ供給される一次残余原料M2の供給量を調整する。一次残余原料M2の供給量を調整することにより、二次スクリーン装置30における処理量が過度に増えすぎないようにすることができる。二次供給管路P3内を圧送される流量制御弁Vは、一次スクリーン装置10側の一端と、二次供給管路P3側の他端との間に設けられている。
【0039】
二次スクリーン装置30は、一次スクリーン装置10の上側に配置されている。二次スクリーン装置30は、一次スクリーン装置10に対して同軸的に、つまり、回転軸線x1と後述する回転軸線x2とが一致するように設けられている。これにより、各スクリーン装置10,30における回転振動も抑制することができる。
【0040】
二次スクリーン装置30は、スクリーンバスケット31と、攪拌ロータ32と、ハウジング33と、駆動装置(図示せず)と、を備える。ハウジング33は、スクリーンバスケット31及び攪拌ロータ32を収容している。
【0041】
ハウジング33には、供給室SS1と、選別室SS2と、送出室SS3と、排出室SS4と、が形成されている。供給室SS1は、ハウジング33において、スクリーンバスケット31及び攪拌ロータ32の下側に形成されている。供給室SS1は、回転軸線x2に沿った断面が略台形状に形成されている。
【0042】
供給室SS1を画定する隔壁は、鋼板等により形成されている。供給室SS1は、ハウジング33の下側において一次スクリーン装置10の排出室S4に突入している。供給室SS1には二次供給管路P3が接続されている。二次供給管路P3を通じて一次スクリーン装置10から供給室SS1に一次残余原料M2が供給される。二次供給管路P3を通じて供給された一次残余原料M2は、ハウジング33の下方から上方に向かって選別室SS2へ供給される。
【0043】
選別室SS2は、ハウジング33において径方向でスクリーンバスケット31と攪拌ロータ32との間に形成されている。選別室SS2において、一次残余原料M2は、良質な繊維を含む二次良質原料M3と異物を含む二次残余原料M4とに選別される。二次良質原料M3は、スクリーンバスケット31を通り抜けて送出室SS3へ移動する。選別室SS2は、スクリーンバスケット31及び攪拌ロータ32の上流F1側の端部と、下流F2側の端部との間を回転軸線x2に沿って延びている。選別室SS2において供給室SS1から供給された二次製原料M2は、流れ方向Fにおいて上流F1から下流F2に向かって流れる。
【0044】
二次スクリーン装置30は、液体供給管路(液体供給部)P4を有する。液体供給管路P4は、スクリーンバスケット31の供給室SS1における二次残余原料M2に希釈水として水を供給する。二次残余原料M2に希釈水を供給することにより、二次残余原料M2中の異物の濃度を下げて二次スクリーン装置30における繊維回収が促進される。
【0045】
送出室SS3は、ハウジング33とスクリーンバスケット31との間で径方向に形成されている。送出室SS3には、スクリーンバスケット31と攪拌ロータ32との作用によりスクリーンバスケット31を通り抜けた二次良質原料M3が集められる。送出室SS3には二次送出管路P5が接続されている。
【0046】
排出室SS4は、ハウジング33において、スクリーンバスケット31及び攪拌ロータ32の上側に形成されている。排出室SS4には、攪拌ロータ32の攪拌作用によりスクリーンバスケット31を通り抜けることができなかった異物が集められる。排出室SS4に集まった異物は、二次排出管路P6を介して外部に排出される。
【0047】
スクリーンバスケット31は、円筒状に形成されている。スクリーンバスケット31は、その側周部に一次残余原料M2を選別するための複数の穴(図示せず)が形成されている。スクリーンバスケット31における穴を通じて、一次残余原料M2から二次良質原料M3を選別する。一次残余原料M2から選別された二次良質原料M3は、スクリーンバスケット31の穴を通過して送出室SS3に移動する。
【0048】
攪拌ロータ32は、円柱状のシャフト(第二シャフト)34と、複数のスクリュー羽根35とを有する。シャフト34の上側の一端は、所定の駆動装置に連結されている。シャフト34は、駆動装置からの駆動力が伝達されて回転させられる。一次スクリーン装置10と、二次スクリーン装置30とは、互いに別個の駆動装置により駆動されている。シャフト34は、回転軸線x2方向に延在し、回転軸線x2を中心に回転自在に設けられている。シャフト34は、一次残余原料M2をスクリーンバスケット31との間で選別するとともに、回転軸線x2に並ぶスクリュー羽根35の間で脱水する。
【0049】
2枚のスクリュー羽根35がシャフト34の上流F1側の端部における外周面に設けられている。スクリュー羽根35は、少なくとも部分的に回転軸線x2を中心に螺旋状に延びている。スクリュー羽根35は、シャフト34の外周面から径方向に張り出している。2枚のスクリュー羽根35は、回転軸線x2を中心にそれぞれ異なる方向に螺旋状に延びている。
【0050】
スクリュー羽根35は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔(孔)36を有する。この貫通孔36を通じて一次残余原料M2の一部は、上流F1側に戻される。貫通孔36は、上流F1側から螺旋状に延びるスクリュー羽根35の一部分に形成されている。貫通孔36は、スクリュー羽根35の螺旋状の延び方向に沿って並んでいる。シャフト34の回転に伴い一次残余原料M2は、2枚のスクリュー羽根35の間を上流F1から下流F2に向かって押し上げられる。
【0051】
スクリュー羽根35の間で一次残余原料M2は、二次良質原料M3と二次残余原料M4とにさらに選別される。一次残余原料M2は、選別処理と共に脱水処理もされる。選別室SS2において二次良質原料M3が回収され、排出室SS4にはほぼ異物だけを含む二次残余原料M4が達する。
【0052】
次に、本発明に係る多段型スクリーン1による製紙原料Mの選別方法について説明する。まず、製紙原料Mが圧送ポンプにより一次スクリーン装置10の供給室S1に送り込まれる。送り込まれた製紙原料Mは、供給室S1の側から排出室S4の側に向かって選別室S2を通って圧送される。攪拌ロータ12は、スクリーンバスケット11に対して回転している。製紙原料Mは、回転している攪拌ロータ12とスクリーンバスケット11との間において選別室S2を流れていく。
【0053】
製紙原料Mが流れ方向Fに沿って、上流F1から下流F2に流れるにつれて、製紙原料M中の繊維を含む一次良質原料M1が選別され、スクリーンバスケット11の穴を抜けて送出室S3へと移動する。したがって、下流F2側に行くにつれて製紙原料M中の異物の割合が大きくなる。
【0054】
回転軸線x1に沿って選別室S2を流れる製紙原料Mは、攪拌ロータ12によって攪拌されながら下流F2に流されていく。選別室S2を抜けて排出室S4に到達した一次残余原料M2の一部は、二次供給管路P3を通じて二次スクリーン装置30に供給される。二次供給管路P3を流れる、二次スクリーン装置30への一次残余原料M2の供給量は、流量制御弁Vによって調整されている。
【0055】
一次残余原料M2の一部は、排出室S4から攪拌ロータ12の中空部15に送られる。中空部15に送られた一次残余原料M2は、スクリュー羽根17を備えた回転シャフト16の回転により、下流F2から上流F1に戻される。中空部15において上流F1側に戻された一次残余原料M2は、本体部20の開口部24を通じて供給室S1及び選別室S2に送られる。
【0056】
二次供給管路P3を介して二次スクリーン装置30の供給室SS1に供給された一次残余原料M2に、液体供給管路P4を介して希釈水が供給される。一次残余原料M2は、供給室SS1から選別室SS2へと流される。選別室SS2を上流F1から下流F2に搬送される過程において、二次スクリーンバスケット31及び攪拌ロータ32により、一次残余原料M2から繊維を回収しながら、回転軸線x2に沿って螺旋状に延びるスクリュー羽根35の間でプレスされる。スクリュー羽根35によるプレス作用により、一次残余原料M2は脱水されながら、下流F2に搬送される。
【0057】
選別室SS2から二次スクリーンバスケット31を通って送出室SS3に集まった二次良質原料M3は、二次送出管路P5を通じて送出室SS3からハウジング33の外部へ送り出される。
【0058】
選別室SS2から排出室SS4に到達した二次残余原料M4は、もはやほぼ異物だけとなり、製紙原料としては利用することはなく、二次排出管路P6を介してハウジング33の外部へ排出される。
【0059】
以上のような多段型スクリーン1によれば、省スペース化を可能にしつつ製紙原料を連続的に処理することができる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、多段型スクリーン装置の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0061】
<第2の実施の形態>
例えば、第2の実施の形態に係る多段スクリーン装置1Aにおいては、二次スクリーン装置30におけるシャフトとして、上記シャフト34とは異なる可動シャフト4を使用してもよい。図2は、第2の実施の形態に係る多段スクリーン装置1Aを示す概略的な断面図であり、二次スクリーン装置30の供給室SS1が拡大された状態を示す。図3は、第2の実施の形態に係る多段スクリーン装置1Aを示す概略的な断面図であり、二次スクリーン装置30Aの供給室SS1が縮小された状態を示す。なお、以下では第1の実施の形態と異なる構成についてのみ説明し、第1の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
可動シャフト4は、軸線x2に沿って移動自在であり、これにより、供給室SS1の容積は可変である。また、第2の実施の形態において製紙原料M2は、一次スクリーン装置10の排出室S4から二次スクリーン装置30の供給室SS1に直接的に供給されるようになっていてもよい。
【0063】
二次残余原料M2は二次スクリーン装置30に供給される前に、排出室S4において希釈水が供給されて二次残余原料M2の濃度は下げられている。可動シャフト4が軸線x2に沿って一次スクリーン装置10から離れる方向に移動することにより、供給室SS1の容積が拡大される(図8参照)。この状態において、一次スクリーン装置10から二次スクリーン装置30へ二次残余原料M2は供給される。これに対して、可動シャフト4が軸線x2に沿って一次スクリーン装置10に向かって移動することにより、供給室SS1の容積は減る。この状態において、一次スクリーン装置10から二次スクリーン装置30への二次残余原料M2の供給量が減じられる。これにより、一次スクリーン装置10は閉塞されず、一次スクリーン装置10から二次スクリーン装置30への製紙原料の供給は、供給量を調節しつつ継続的に行われる。
【0064】
<攪拌ロータの変形例>
上記第1及び第2の実施の形態における一次スクリーン装置10における攪拌ロータとして、上記攪拌ロータ12とは異なる攪拌ロータ5を使用してもよい。図4は、変形例に係る攪拌ロータ5を示す図であり、図(a)は攪拌ロータ5の正面図であり、図(b)は攪拌ロータ5の斜視図である。
【0065】
攪拌ロータ5は、円錐台状でかつ筒状の本体部51と、板状の複数の攪拌プレート52と、を有する。攪拌プレート52は、一次スクリーンバスケット11に対する間隔が、回転軸線xに沿った製紙原料の流れ方向Fに沿って上流F1から下流F2に向かって小さくなるように、本体部51の外周面に沿った板状部として形成された。
【0066】
攪拌ロータ5は、所定の駆動装置(図示せず)によって回転可能な回転シャフト53に取り付けられている。駆動装置の回転シャフト53の回転に伴い、攪拌ロータ5は回転方向Rに回転させられる。
【0067】
本体部51は、周壁部51aと、底壁部51bとを有する(図9参照)。周壁部51aは、回転軸線x回りに延びている。周壁部51aは、上流F1から下流F2に向かって回転軸線xから離れるように延びている。つまり、本体部51の外径は、上流F1から下流F2に向かって連続的に大きくなっている。
【0068】
底壁部51bは、下流F2側で本体部51を閉鎖する。これにより、攪拌ロータ5の中空部54は、周壁部51aと底壁部51bとによって画定されていて、上流F1側に向かって開放している。周壁部51aは、複数の開口部51cを有する。開口部51cは、底壁部51bの側に設けられている。開口部51cを介して攪拌ロータ5の中空部54と供給室S1及び選別室S2とは連結されている。
【0069】
図5は、攪拌ロータ5の本体部51の展開図である。攪拌プレート52は、回転軸線xの回りに所定の間隔をあけて本体部51に設けられている。複数の攪拌プレート52が回転軸線xに沿って本体部51の外周面に設けられている。
【0070】
攪拌プレート52は、回転軸線xに沿って互いに平行に3段(上段、中段、下段)に分けられて本体部51に設けられている。つまり、攪拌プレート52は、本体部51の回転軸線xに沿った異なる3つの位置にほぼ等間隔をあけて設けられている。複数の攪拌プレート52の少なくとも一部は、回転軸線xに沿って異なる位置に形成されている。つまり、回転軸線xに沿って隣り合う攪拌プレート52は、周方向にずれた位置に形成されている。回転軸線xに沿って隣り合う攪拌プレート52は千鳥状に配置されている。なお、本体部51において回転軸線xに沿って平行に設けられている攪拌プレート52は3段に限られず、一次スクリーン装置10の規格に応じて2段~5段に分けて設けられていてもよい。
【0071】
2つの攪拌プレート52が各段に設けられている。各段において2つの攪拌プレート52は、周方向に互いに所定の間隔をあけて設けられている。各段において2つの攪拌プレート52は、径方向において対向する位置に設けられている。上段及び下段における攪拌プレート52は、回転軸線xに沿って見て周方向に同じ位置に設けられている。中段における攪拌プレート52は、周方向において上段及び下段における攪拌プレート52の間に設けられている。なお、本体部51において各段に設けられている攪拌プレート52の数は2つに限られず、一次スクリーン装置10の仕様に応じて3つ以上であってもよく適宜設定することができる。
【0072】
図6は、攪拌ロータ5における攪拌プレート52の正面図である。攪拌プレート52は、製紙原料を一次スクリーンバスケット11に対して回転方向Rに旋回させる。攪拌プレート52の回転により、製紙原料に含まれる良質な繊維は一次スクリーンバスケット11の穴を抜けて送出室S3に集められる。複数の攪拌プレート52は、平面視略矩形状(又は平面視略台形状)に形成されている。
【0073】
攪拌プレート52は、下流縁52a、上流縁52b、前方縁52c及び後方縁52dにより周方向を画定されている。下流縁52aは、流れ方向Fにおいて下流F2側に位置する。上流縁52bは、流れ方向Fにおいて上流F1側に位置する。前方縁52cは、回転方向Rにおいて前方に位置する。後方縁52dは、回転方向Rにおいて後方に位置する。攪拌プレート52は、凹部52eを有する。凹部52eは、下流縁52a、前方縁52c及び上流縁52bに沿って延びる壁部52fによって画定されている。下流縁52aは、上流縁52bよりも短い。
【0074】
前方縁52cは、上流F1から下流F2に向かって回転方向Rとは反対側に斜めに延びている。攪拌ロータ5の回転時に前方縁52cに衝突する製紙原料は、上流F1から下流F2に向かってかつ回転方向Rとは反対方向に向かって流される。これにより、攪拌ロータ5の回転時に、回転方向Rとは反対側に相対的に流れる製紙原料を、下流F2に促進して流すことができる。
【0075】
後方縁52dは、製紙原料の流れ方向Fにおいて上流F1から下流F2に向かって回転方向Rに斜めに延びている。
【0076】
回転方向Rにおいて攪拌プレート52の前方縁52cの側でかつ流れ方向Fにおいて上流F1に位置する角部52gは、丸味付けされたR部として形成されている。これにより、上流F1から下流F2に流れる製紙原料は、角部52gに沿って下流F2に円滑に流れていく。これにより、攪拌プレート52に衝突した製紙原料の流れを妨げることを抑制することができる。
【0077】
これに対して、仮に、破線で示すように角部52gが尖端を持って形成された場合、流れ方向Fにおいて上流F1から下流F2に流れてきた製紙原料は、上流F1側に押し返されることになる。
【0078】
角部52gは、上流F1側を向いている。回転方向Rにおいて攪拌プレート52の前方縁52cの側でかつ流れ方向Fにおいて下流F2の側に位置する角部52hは、丸味付けされたR部として形成されている。角部52gにおけるR部は、角部52hにおけるR部よりも曲率が小さくなるように丸味付けられている。
【0079】
角部52hは、流れ方向Fにおいて下流F2側を向いている。攪拌ロータ5が回転方向Rに回転した場合、回転方向Rとは反対側に向かって流される製紙原料は、攪拌プレート52の角部52hに沿って下流F2に流れるので、攪拌ロータ5の回転を妨げる抵抗を小さくすることができる。これにより、攪拌ロータ5の動力負荷を抑制することができる。
【0080】
図7は、図6におけるVII-VII線に沿った攪拌プレート52の断面図である。攪拌プレート52は壁部52fにおいて、本体部51とは反対側に面する面52iが本体部51の外周面に沿って湾曲して形成されている。攪拌プレート52は、本体部51に面する面52jにおいて、本体部51の外周面における曲率に相当する曲率を持って形成されている。攪拌プレート52は、本体部51の外周面に沿って密着して一体に設けられている。
【0081】
凹部52eは、回転方向Rに沿って延びている。凹部52eは、攪拌プレート52において本体部51に向かって凹に形成されている部位である。凹部52eにおける攪拌プレート52の面52kは回転方向Rにおいて、前方縁52c側から後方縁52d側に向かって凹に湾曲して延びている。凹部52eより後方縁52dに向かって延びる面は本体部51の外周面に向かって斜めに延びている。
【0082】
各攪拌プレート52は、本体部51の外周面からこの外周面に沿って一次スクリーンバスケット11の側に突き出ている。攪拌プレート52は、例えば鋼材により形成されている。攪拌プレート52は、面52jの側で、例えば溶接により本体部51の外周面に沿って貼り付けられている。
【0083】
図8は、図6におけるVIII-VIII線に沿った攪拌プレート52の断面図である。本体部51からの下流縁52aの突出量は、本体部51からの上流縁52bの突出量よりも小さい。本体部11の外周面からの下流縁52a及び上流縁52bの突出量は、攪拌プレート52の厚さに相当する。攪拌プレート52の厚さは、下流縁52a、上流縁52b、前方縁52c及び後方縁52dの長さよりも小さい。
【0084】
凹部52eにおける攪拌プレート52の表面は、流れ方向Fにおいて、下流縁52aと上流縁52bとの間で本体部51の外周面に向かって凹に湾曲して延びている。流れ方向Fに沿った凹部52eにおける攪拌プレート52の面52kは、上流F1側よりも下流F2側で本体部51に接近している。
【0085】
図9は、変形例に係る攪拌ロータ5と、一次スクリーンバスケット11との関係を示す概略図である。上流F1側における、本体部51と一次スクリーンバスケット11との間隔D1は、下流F2側における、本体部51と一次スクリーンバスケット11との間隔D2よりも大きくなっている(D1>D2)。また、攪拌ロータ5において攪拌プレート52と一次スクリーンバスケット11との間隔は、上流F1から下流F2に向かって小さくなっている。以下、一次スクリーンバスケット11と攪拌ロータ5との間隔について、一次スクリーンバスケット11の内周面と、攪拌ロータ5における攪拌プレート52の下流縁52a側の面52iとの間隔を基準に説明する。
【0086】
一次スクリーンバスケット11の内周面と、本体部51の下段に設けられた攪拌プレート52の下流縁52a側の面52iとの間隔を「d1」、本体部51の中段に設けられた攪拌プレート52の下流縁52a側の面52iとの間隔を「d2」及び本体部51の上段に設けられた攪拌プレート52の下流縁52a側の面52iとの間隔を「d3」とする。間隔d1~d3は、回転軸線xに沿って上流F1から下流F2に向かうに連れて小さくなっている。つまり、各間隔の関係は、d1>d2>d3、となっている。
【0087】
複数の攪拌プレート52のうち、回転軸線xに沿った製紙原料の流れ方向に沿って上流F1側に設けられている攪拌プレート52の本体部51からの突出量は、下流F2側に設けられている攪拌プレート52の本体部51からの突出量よりも大きい。
【0088】
下段に設けられている攪拌プレート52の上流縁52bにおける突出量t1は、中段に設けられている攪拌プレート52の上流縁52bにおける突出量t2よりも大きく、上段に設けられている攪拌プレート52の上流縁52bにおける突出量t3よりも大きい。中段に設けられている攪拌プレート52の突出量t2は、上段に設けられている攪拌プレート52の突出量t3よりも大きい。つまり、各突出量の関係は、t1>t2>t3、となっている。
【0089】
攪拌ロータ5においては、上流F1における攪拌プレート52の本体部51からの突出量は、下流F2における攪拌プレート52の本体部51からの突出量よりも大きくなっている(t1>t2>t3)。これにより、上流F1における攪拌量を多くしつつ、攪拌プレート52と一次スクリーンバスケット11との間隔の関係、d1>d2>d3、を維持して上流F1側における攪拌ロータ5の動力負荷を抑えることができる。また、攪拌プレート52と一次スクリーンバスケット11との間での製紙原料の攪拌量を多くすることにより、一次スクリーンバスケット11に付着する異物を製紙原料自体により掻き取ることもできる。
【符号の説明】
【0090】
1 多段型スクリーン
10 一次スクリーン装置
11 一次スクリーンバスケット
12 一次ロータ
16 第一シャフト
17 スクリュー羽根
20 本体部
21 攪拌ベーン
30 二次スクリーン装置
31 二次スクリーンバスケット
32 二次ロータ
34 シャフト
35 スクリュー羽根
36 孔
P4 液体供給部
V 流量制御弁
x1 第一回転軸線
x2 第二回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9