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特許7416613多層シートおよびそれを備えるセルユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】多層シートおよびそれを備えるセルユニット
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/00 20060101AFI20240110BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240110BHJP
   B32B 15/06 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240110BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/623 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B25/00
B32B7/027
B32B15/06 Z
B32B18/00 C
B32B9/00 A
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/623
H01M10/653
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019231358
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021098308
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 均
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167612(WO,A1)
【文献】特開2019-079780(JP,A)
【文献】特開2019-125665(JP,A)
【文献】特開2016-028880(JP,A)
【文献】特開2021-099940(JP,A)
【文献】特表2023-506095(JP,A)
【文献】特許第6916976(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01M 10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源同士の間に少なくとも配置され、前記熱源からの熱を伝導可能な多層シートであって、
ゴム状弾性体からなるゴムシートと、
前記ゴムシートの両面に分離して積層され、隣り合う複数の前記熱源の間の熱の伝導を低減可能な断熱シートと、
前記断熱シートの外側に分離して積層されており前記ゴムシートおよび前記断熱シートよりも熱伝導性に優れるシートであって、金属、炭素若しくはセラミックスの少なくとも1つを含む第1熱伝導シートと、
を備え
前記第1熱伝導シートの少なくとも端面と接触して当該端面の長さ方向に長い熱伝導部材を、さらに備え、
前記熱伝導部材は、その外側面を覆う第2熱伝導シートを備えることを特徴とする多層シート。
【請求項2】
前記断熱シートは、シリカエアロゲルを含むシートであることを特徴とする請求項1に記載の多層シート。
【請求項3】
前記ゴムシートは、シリコーンゴムを含むシートであることを特徴とする請求項1または2に記載の多層シート。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、その長さ方向に沿う中空部を備え、
前記熱伝導部材は、前記中空部の外周に沿って1周を超えて非接触状態で巻かれた筒状部材であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の多層シート。
【請求項5】
前記熱伝導部材は、前記第2熱伝導シートの内側に備えられ、前記第2熱伝導シートに比べて変形容易なクッション部材を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の多層シート。
【請求項6】
前記熱伝導部材は、その長さ方向に沿う中空部を備え、
前記クッション部材は、前記熱伝導部材の長さ方向に長い前記中空部を備える筒状クッション部材であることを特徴とする請求項に記載の多層シート。
【請求項7】
前記第1熱伝導シートと前記第2熱伝導シートとは連続したシートであることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の多層シート。
【請求項8】
前記熱伝導部材は、前記ゴムシート、前記断熱シートおよび前記第1熱伝導シートを延長してなることを特徴とする請求項に記載の多層シート。
【請求項9】
複数の熱源としてのセルと、
複数の前記セル同士の間に少なくとも配置される請求項1からのいずれか1項に記載の多層シートと、
を備えるセルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層シートおよびそれを備えるセルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車の普及が進行してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が大きな課題となっている。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【0003】
バッテリー等の熱源から冷却剤への熱の移動を促進するには、熱の移動経路を高熱伝導性の材料で形成すること、及び熱源と当該高熱伝導性の材料との熱抵抗を下げることが必要になる。例えば、熱源から冷却剤への熱の移動を促進する構造として、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属製の筐体に水冷パイプを配置し、バッテリーセルと筐体の底面との間に密着性のゴムシートを挟んだ構造が採用されている。このような構造のバッテリーでは、バッテリーセルは、ゴムシートを通じて筐体に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。
【0004】
一方、自動車用バッテリー等の各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等が生じる虞がある。近年、自動車用バッテリーとして、筐体内に複数のバッテリーセルを並べて装着したものが知られている。このような複数のバッテリーセルが並べて装着されたバッテリーにおいて、1つのバッテリーセルに発火や発煙等が生じた場合、周囲のバッテリーセルに熱が伝わることにより、さらに大きな発火、発煙、爆発等の不具合が生じる虞がある。このような不具合による被害を最小限に抑えるため、異常高温になったバッテリーセルの熱を周囲のバッテリーセルに伝え難くする方法が検討されており、例えば、複数のバッテリーセル同士の間に耐火材や断熱層等を設ける方法が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-206604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような従来のバッテリーにおいて、ゴムシートは、アルミニウムやグラファイトと比べて熱伝導性が低いため、バッテリーセルから筐体に効率よく熱を移動させることが難しい。ゴムシートに代えてグラファイト等のスペーサを挟む方法も考えられるが、バッテリーセルとスペーサとの間に隙間が生じ、伝熱効率が低下する。また、上述のように、バッテリーセルの異常高温若しくは発火の際には、バッテリーセル間の熱の伝達を抑制する必要がある。一方、バッテリーセルの異常高温若しくは発火以外の平常時には、バッテリーセルのような熱源から冷却部位への伝熱効率を高めることが望まれている。上記要請は、バッテリーセルのみならず、回路基板、電子部品あるいは電子機器本体のような他の熱源にも通じる要請である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の熱源同士の間の熱伝導を低減し、且つ、熱源から冷却部位への伝熱効率を高めることが可能な多層シートおよびそれを備えるセルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る多層シートは、複数の熱源同士の間に少なくとも配置され、前記熱源からの熱を伝導可能な多層シートであって、ゴム状弾性体からなるゴムシートと、前記ゴムシートの両面に連続して若しくは分離して積層され、隣り合う複数の前記熱源の間の熱の伝導を低減可能な断熱シートと、前記断熱シートの外側に分離して積層されており前記ゴムシートおよび前記断熱シートよりも熱伝導性に優れるシートであって、金属、炭素若しくはセラミックスの少なくとも1つを含む第1熱伝導シートと、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)別の実施形態に係る多層シートでは、好ましくは、前記断熱シートは、シリカエアロゲルを含むシートであることを特徴とする。
【0010】
(3)別の実施形態に係る多層シートでは、好ましくは、前記ゴムシートは、シリコーンゴムを含むシートであることを特徴とする。
【0011】
(4)別の実施形態に係る多層シートは、好ましくは、前記第1熱伝導シートの少なくとも端面と接触して当該端面の長さ方向に長い熱伝導部材を、さらに備え、前記熱伝導部材は、その外側面を覆う第2熱伝導シートを備えることを特徴とする。
【0012】
(5)別の実施形態に係る多層シートでは、好ましくは、前記熱伝導部材は、その長さ方向に沿う中空部を備え、前記熱伝導部材は、前記中空部の外周に沿って1周を超えて非接触状態で巻かれた筒状部材であることを特徴とする。
【0013】
(6)別の実施形態に係る多層シートでは、好ましくは、前記熱伝導部材は、前記第2熱伝導シートの内側に備えられ、前記第2熱伝導シートに比べて変形容易なクッション部材を備えることを特徴とする。
【0014】
(7)別の実施形態に係る多層シートでは、好ましくは、前記熱伝導部材は、その長さ方向に沿う中空部を備え、前記クッション部材は、前記熱伝導部材の長さ方向に長い前記中空部を備える筒状クッション部材であることを特徴とする。
【0015】
(8)別の実施形態に係る多層シートは、好ましくは、前記第1熱伝導シートと前記第2熱伝導シートとは連続したシートであることを特徴とする。
【0016】
(9)別の実施形態に係る多層シートでは、好ましくは、前記熱伝導部材は、前記ゴムシート、前記断熱シートおよび前記第1熱伝導シートを延長してなることを特徴とする。
【0017】
(10)一実施形態に係るセルユニットは、複数の熱源としてのセルと、複数の前記セル同士の間に少なくとも配置される上述のいずれか1つの多層シートと、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の熱源同士の間の熱伝導を低減し、且つ、熱源から冷却部位への伝熱効率を高めることが可能な多層シートおよびそれを備えるセルユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態に係る多層シートの斜視図およびその一部Aの拡大図をそれぞれ示す。
図2図2は、第2実施形態に係る多層シートの斜視図およびその一部Bの拡大図をそれぞれ示す。
図3図3は、第3実施形態に係る多層シートの斜視図およびその一部Cの拡大図をそれぞれ示す。
図4図4は、第1実施形態に係るセルユニットの斜視図(4A)および当該セルユニットを備えるバッテリーの縦断面図(4B)を、それぞれ示す。
図5図5は、第2実施形態に係るセルユニットの斜視図(5A)および当該セルユニットを備えるバッテリーの縦断面図(5B)を、それぞれ示す。
図6図6は、図5の領域Dの拡大図を示す。
図7図7は、第2実施形態に係るセルユニットを備えるバッテリーの変形例における図5の領域Dと同様の領域の拡大図を示す。
図8図8は、第3実施形態に係るセルユニットの斜視図(8A)および当該セルユニットを備えるバッテリーの縦断面図(8B)を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
1.多層シート
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る多層シートの斜視図およびその一部Aの拡大図をそれぞれ示す。
【0022】
(1)多層シートの概略構成
この実施形態に係る多層シート1は、複数(ここでは、2つ)の熱源同士の間に少なくとも配置され、熱源からの熱を伝導可能なシートである。多層シート1は、ゴムシート13と、ゴムシート13の両面に連続して若しくは分離して積層され、隣り合う複数の熱源の間の熱の伝導を低減可能な断熱シート12と、断熱シート12の外側に分離して積層されておりゴムシート13および断熱シート12よりも熱伝導性に優れる第1熱伝導シート11と、を備える。
【0023】
次に、多層シート1の各構成要素について説明する。
【0024】
(2)第1熱伝導シート
第1熱伝導シート11は、図1に示すように、断熱シート12の外側に分離して積層されるシート、すなわち、多層シート1の最外層を形成するシートである。第1熱伝導シート11は、好ましくは炭素を含むシートであり、さらに好ましくは90質量%以上を炭素から構成されるシートである。例えば、第1熱伝導シート11に、樹脂を焼成して成るグラファイト製のフィルムを用いることもできる。ただし、第1熱伝導シート11は、炭素と樹脂とを含むシートであっても良い。その場合、樹脂は、合成繊維でも良く、その場合には、樹脂として好適にはアラミド繊維を用いることができる。本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。第1熱伝導シート11は、この実施形態では、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。第1熱伝導シート11は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。なお、グラファイト繊維、カーボン粒子あるいはカーボンファイバーといった各種フィラーも、すべて、炭素フィラーの概念に含まれる。
【0025】
第1熱伝導シート11を炭素と樹脂とを備えるシートとする場合には、当該樹脂が第1熱伝導シート11の全質量に対して50質量%を超えていても、あるいは50質量%以下であっても良い。すなわち、第1熱伝導シート11は、熱伝導に大きな支障が無い限り、樹脂を主材とするか否かを問わない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)等を好適に挙げることができる。樹脂は、第1熱伝導シート11の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状あるいは繊維状に分散している。第1熱伝導シート11は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。第1熱伝導シート11は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金などの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、Al、AlN、cBN、hBNなどの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
【0026】
第1熱伝導シート11は、導電性に優れるか否かは問わない。第1熱伝導シート11の熱伝導率は、好ましくは10W/mK以上である。この実施形態では、第1熱伝導シート11は、好ましくは、グラファイト製のフィルムであり、熱伝導性と導電性に優れる材料から成る。第1熱伝導シート11は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.02~3mmが好ましく、0.1~0.5mmがより好ましい。ただし、第1熱伝導シート11の熱伝導率は、その厚さが増加するほど低下するため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0027】
(3)断熱シート
断熱シート12は、図1に示すように、第1熱伝導シート11の内側且つゴムシート13の外側に分離して積層されるシートである。断熱シート12は、好ましくは、シート状繊維塊を担持体として、シリカエアロゲルを含侵担持させたシリカエアロゲルシートである。シート状繊維塊としては、ガラス繊維; シリカ繊維、アルミナ繊維、チタニア繊維、炭化ケイ素繊維等のセラミックファイバー; 金属繊維; ロックウール、バサルト繊維等の人造鉱物繊維; 炭素繊維; ウイスカー等を抄造法にて紙状またはボード状にするか、適宜バインダーを添加してシート状に成形した不織布、マット、フェルト等のシート状成形物を用いることができる。これらのうち、シリカエアロゲルの断熱効果を有効に得るためには、シリカエアロゲルの耐熱温度(750℃程度)でも担持体としての形状を保持できる担持体がより好ましい。シリカエアロゲルの空孔率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。シリカエアロゲルは、単にシート状繊維塊中に含侵され分散しているだけでも良いし、バインダー等を用いてシート状繊維塊の構成繊維状に担持されるようにしても良い。
【0028】
断熱シート12の熱伝導率は、好ましくは0.2W/mk以下、より好ましくは、0.15W/mK以下である。断熱シート12は、担持体に基づく空孔およびシリカエアロゲルに基づく空孔内の対流とその低い熱伝導率により、優れた断熱性を示す。断熱シート12は、その厚さに制約はないが、0.05~2mmが好ましく、0.1~1.0mmがより好ましい。ただし、断熱シート12は、その厚さが薄くなるほど担持されるシリカエアロゲルの量が少なくなるため、断熱性は低下する。このため、断熱シート12の厚さは、シートの強度、可撓性および断熱性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。また、断熱シート12として、シリカエアロゲル以外に、ステアタイト(MgO・SiO)、ジルコニア(ZrO)、コージライト(2MgO・2Al・5SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、又はムライト(3Al・2SiO)の内の1又は2以上を備えたシートを用いても良い。
【0029】
(4)ゴムシート
ゴムシート13は、図1に示すように、断熱シート12の内側に積層される、すなわち、断熱シート12に挟まれて配置されるシートである。ゴムシート13は、ゴム状弾性体からなるシートである。「ゴム状弾性体」という文言に代えて「弾性体」あるいは「クッション部材」という文言を使用しても良い。ゴムシート13は、複数の熱源同士の間にあってクッション性を発揮させて熱源と第1熱伝導シート11との密着性を高める機能と、第1熱伝導シート11および断熱シート12に加わる荷重によって第1熱伝導シート11および断熱シート12が破損しないようにする保護部材としても機能とを有する。ゴムシート13は、第1熱伝導シート11に比べて低熱伝導性の部材である。
【0030】
ゴムシート13は、その内部に気泡を有するスポンジ状の部材、あるいは気泡を含まないゴム状弾性体のいずれでも良いが、より好ましくはスポンジ状の部材である。ゴムシート13は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。ゴムシート13は、第1熱伝導シート11および断熱シート12を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、ゴムシート13は、より好ましくは、シリコーンゴムの発泡体シートであるシリコーンスポンジシートである。ゴムシート13は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAl、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。
【0031】
第1熱伝導シート11と断熱シート12とゴムシート13とは、耐熱性の接着剤、両面テープ等の固定手段を用いて固定しても良いし、何らの固定手段も用いずに固定しても良い。
【0032】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る多層シートについて説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0033】
図2は、第2実施形態に係る多層シートの斜視図およびその一部Bの拡大図をそれぞれ示す。
【0034】
第2実施形態に係る多層シート1aは、第1実施形態に係る多層シート1と同様の第1シート部材10と、第1熱伝導シート11の少なくとも端面と接触して当該端面の長さ方向に長い熱伝導部材20と、を備える。第1シート部材10は、第1実施形態に係る多層シート1と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。熱伝導部材20は、好ましくは、その長さ方向(第1シート部材10の幅方向に相当)に沿う中空部27を備える。また、熱伝導部材20は、好ましくは、第2シート部材24が中空部27の外周に沿って1周を超えて非接触状態で巻かれた筒状部材である。すなわち、熱伝導部材20は、中空部27の外側面の周の長さを超えて非接着状態で重なり合うことのできる余剰領域25を備える。「余剰領域」は、「重複領域」、あるいは「舌片部位」と言い換えても良い。熱伝導部材20の余剰領域25は、熱伝導部材20が熱源と冷却部位との間で圧縮されて扁平になっても、中空部27の周方向にて第2シート部材24同士を接触維持可能とするのに十分な長さを有する。この結果、熱源から冷却部位への熱の移動ルートを、熱伝導部材20の長さ方向端面から見て確実に左右両方向に形成できる。この実施形態では、余剰領域25は、第1シート部材10の端面と接触するよう設けられる。なお、余剰領域25は、図2に示す位置ではなく、第1シート部材10の端面と反対側(図2における下側)に設けられていても良い。
【0035】
熱伝導部材20は、その外側面を覆う第2熱伝導シート21を備える。第1熱伝導シート11と第2熱伝導シート21とは、連続したシートであることが好ましい。また、熱伝導部材20は、好ましくは、ゴムシート13、断熱シート12および第1熱伝導シート11を延長してなる部材である。すなわち、熱伝導部材20を構成する第2シート部材24は、第1シート部材10と同様に、第1熱伝導シート11(第2熱伝導シート21)、断熱シート12、およびゴムシート13から構成される。また、第1シート部材10と第2シート部材24とは、連続したシートである。よって、多層シート1aは、第1シート部材10と、第2シート部材24が中空部27の外周に沿って1周を超えて非接触状態で巻かれた熱伝導部材20とが1枚のシートで形成された部材となる。なお、熱伝導部材20は、その開口部から見た形状を楕円形、長円形あるいは長方形でも良い。後述の熱伝導部材についても同様である。
【0036】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る多層シートについて説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0037】
図3は、第3実施形態に係る多層シートの斜視図およびその一部Cの拡大図をそれぞれ示す。
【0038】
第3実施形態に係る多層シート1bは、第2実施形態と同様に、第1シート部材10と、第1熱伝導シート11の少なくとも端面と接触して当該端面の長さ方向に長い熱伝導部材20aと、を備える。多層シート1bは、熱伝導部材20aがクッション部材26を備える点で、第2実施形態に係る多層シート1aと異なる。その他の構成については、先述の実施形態と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0039】
熱伝導部材20aは、第2熱伝導シート21の内側、好ましくは、第2シート部材24の内側に備えられ、第2熱伝導シート21に比べて変形容易なクッション部材26を備える。クッション部材26は、熱伝導部材20aの長さ方向に長い中空部27aを備える筒状クッション部材である。中空部27aは、この実施形態では、クッション部材26の長さ方向に貫通する貫通路である。ただし、中空部27aは、その長さ方向の両端の少なくとも一方を閉塞されていても良い。また、クッション部材26は、その長さ方向に中空部27aを備えず、中実の形状(柱状形状ともいう)を有していても良い。
【0040】
クッション部材26の重要な機能は、変形容易性と回復力である。回復力は、クッション部材26の弾性変形性に依る。変形容易性は、熱源の形状に追従するために必要な特性であり、特にリチウムイオンバッテリーなどの半固形物、液体的性状も持つ内容物などを変形しやすいパッケージに収めるようなバッテリーセルの場合には、設計寸法的にも不定形または寸法精度があげられない場合が多い。このため、クッション部材26の変形容易性や追従力を保持するための回復力の保持は重要である。
【0041】
クッション部材26は、熱伝導部材20aに接触する熱源が平坦でない場合でも、第2熱伝導シート21と熱源との接触を良好にする機能を有する。さらに、中空部27aは、クッション部材26の変形を容易にし、加えて多層シート1aの軽量化に寄与する。クッション部材26は、熱源からの第2熱伝導シート21に加わる荷重によって第2熱伝導シート21が破損等しないようにする保護部材としての機能も有する。クッション部材26は、第2熱伝導シート21に比べて弾性変形しやすく、熱源からの押圧及びその開放による変形に起因して、割れや亀裂が入りにくい。このため、クッション部材26は、第2熱伝導シート21に亀裂が生じる事態を抑制することができる。なお、クッション部材26は、第2熱伝導シート21に比べて低熱伝導性の部材である。
【0042】
クッション部材26は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。クッション部材26は、第2シート部材24を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、クッション部材26は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。クッション部材26は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAl、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。クッション部材26は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「クッション部材」は、柔軟性に富み、熱源の表面に密着可能に弾性変形可能な部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」と読み替えることもできる。さらに、クッション部材26の変形例としては、上記ゴム状弾性体ではなく、金属を用いて構成することもできる。クッション部材26は、樹脂やゴム等から形成されたスポンジあるいはソリッド(スポンジのような多孔質ではない構造のもの)で構成することも可能である。
【0043】
2.セルユニットおよびバッテリー
次に、本発明に係るセルユニットおよび当該セルユニットを備えるバッテリーの好適な実施形態について説明する。
【0044】
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態に係るセルユニットの斜視図(4A)および当該セルユニットを備えるバッテリーの縦断面図(4B)を、それぞれ示す。ここで、「縦断面図」は、バッテリーの筐体内部のバッテリーセルの長さ方向にバッテリーを切断する図を意味する。
【0045】
この実施形態に係るセルユニット30は、先述の第1実施形態に係る多層シート1を備えるセルユニットである。セルユニット30は、複数の熱源としてのバッテリーセル(以後、「セル」という。)50と、複数のセル50同士の間に少なくとも配置される多層シート1と、を備える。セルユニット30は、好ましくは、複数の多層シート1を襞のように立設させた状態で、第3熱伝導シート31上に配置される。第3熱伝導シート31は、第1熱伝導シート11および/または第2熱伝導シート21と同一の構成であることが好ましい。セル50は、第3熱伝導シート31上、且つ、多層シート1同士の間に配置される。なお、セルユニット30は、第3熱伝導シート31の代わりに、多層シート1を備えても良い。すなわち、セルユニット30は、多層シート1上に、複数の多層シート1が襞のように立設させた状態で配置されていても良い。また、セルユニット30は、第3熱伝導シート31を備えなくても良い。
【0046】
この実施形態に係るセルユニット30を備えるバッテリー40は、冷却剤45を流す構造を持つ筐体41内に、セルユニット30を備える。バッテリー40は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のセル50を備える。バッテリー40は、好ましくは一方に開口する有底型の筐体41を備える。筐体41は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。セル50は、筐体41の内部44に配置される。セル50の上方には、電極(不図示)が突出して設けられている。複数のセル50は、好ましくは、筐体41内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体41の底部42(冷却部位の一例)には、冷却剤45の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ43が備えられている。冷却剤45は、冷却媒体あるいは冷却材と称しても良い。セル50は、底部42との間に、第3熱伝導シート31を挟むようにして筐体41内に配置されている。また、セル50は、隣接するセル50との間に、多層シート1を挟むようにして筐体41内に配置されている。
【0047】
このような構造のバッテリー40では、セル50は、多層シート1および第3熱伝導シート31を通じて筐体内41に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。また、バッテリー40は、セル50同士の間に多層シート1が配置されるため、1つのセル50が異常発熱または発火した場合であっても、多層シート1を構成する断熱シート12により、隣接するセル50への熱伝導を低減させることができる。また、セル50の充放電時(発熱時)にセル50が膨張した場合であっても、多層シート1は、ゴムシート13により、セル50の形状に追従することができる。よって、複数のセル50同士の間の熱伝導を低減し、且つ、セル50からの伝熱効率を高めることができる。なお、冷却剤45は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却剤45は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。
【0048】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るセルユニットおよび当該セルユニットを備えるバッテリーについて説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0049】
図5は、第2実施形態に係るセルユニットの斜視図(5A)および当該セルユニットを備えるバッテリーの縦断面図(5B)を、それぞれ示す。
【0050】
この実施形態に係るセルユニット30aは、先述の第2実施形態に係る多層シート1aを備えるセルユニットである。セルユニット30aは、複数の熱源としてのセル50と、複数のセル50同士の間に少なくとも配置される多層シート1aと、を備える。セルユニット30aは、好ましくは、複数の多層シート1aを立設させた状態で配置される。セル50は、多層シート1a同士の間に配置される。なお、セルユニット30aは、第1実施形態に係るセルユニット30と同様に、第3熱伝導シート31を備えていても良い。この場合、セルユニット30aは、上から、第1シート部材10、熱伝導部材20、第3熱伝導シート31の順に積層される。
【0051】
この実施形態に係るセルユニット30aを備えるバッテリー40aは、第1実施形態のバッテリー40と同様に、冷却剤45を流す構造を持つ筐体41内に、セルユニット30aを備える。セル50は、底部42との間に、熱伝導部材20を挟むようにして筐体41内に配置されている。また、セル50は、隣接するセル50との間に、第1シート部材10を挟むようにして筐体41内に配置されている。多層シート1aにおいて、熱伝導部材20は、余剰領域25を備える。熱伝導部材20における余剰領域25がセル50若しくは筐体41(具体的には、この実施形態では底部42)のいずれかに接触するように、熱伝導部材20がセル50と筐体41との間に備えられる。この実施形態において、熱伝導部材20は、余剰領域25をセル50側に向けて、セル50と底部42との間に挟持された状態で筐体41内に備えられる。
【0052】
図6は、図5の領域Dの拡大図を示す。なお、図6では、一部の熱伝導部材20を拡大して示す。また、図6では、熱伝導部材20を構成する第2シート部材24を、一色(灰色)で簡略化して図示しているが、実際には、先述の通り、第2シート部材24は、第1シート部材10と同様に、第1熱伝導シート11(第2熱伝導シート21)、断熱シート12、およびゴムシート13から構成される。
【0053】
バッテリー40aにおいて、セル50は、多層シート1aを通じて筐体内41に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。より具体的には、熱伝導部材20は、余剰領域25をセル50側に向けて、セル50と底部42との間に挟持された状態で筐体41内に備えられる。このため、セル50からの熱は、余剰領域25から両側の周に沿って底部42へと伝わる(図中のE1およびE2のルートを参照)。したがって、熱の伝達ルートを確実に増大させることができ、もって、セル50からの放熱性をより高めることができる。また、バッテリー40aは、セル50同士の間に多層シート1aの第1シート部10が配置されるため、1つのセル50に異常発熱或いは発火等が生じた場合であっても、第1シート部10を構成する断熱シート12により、隣接するセル50への熱伝導を低減させることができる。また、セル50の充放電時(発熱時)にセル50が膨張した場合であっても、多層シート1aは、ゴムシート13により、セル50の形状に追従することができる。よって、複数のセル50同士の間の熱伝導を低減し、且つ、セル50からの伝熱効率を高めることができる。
【0054】
(第2実施形態の変形例)
次に、第2実施形態に係るセルユニットおよび当該セルユニットを備えるバッテリーの変形例について説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0055】
図7は、第2実施形態に係るセルユニットを備えるバッテリーの変形例における図5の領域Dと同様の領域の拡大図を示す。なお、図7では、一部の熱伝導部材20を拡大して示す。また、図7では、熱伝導部材20を構成する第2シート部材24を、一色(灰色)で簡略化して図示しているが、実際には、先述の通り、第2シート部材24は、第1シート部材10と同様に、第1熱伝導シート11(第2熱伝導シート21)、断熱シート12、およびゴムシート13から構成される。
【0056】
この変形例において、セルユニット30aは、多層シート1aの余剰領域25が第1シート部材10の端面と反対側(図7における下側)に設けられる点で、第2実施形態に係るセルユニット30aと異なる。よって、この変形例のバッテリー40aにおいて、熱伝導部材20は、余剰領域25が底部42側を向くように、配置されている。このような配置形式であっても、セル50からの熱は、熱伝導部材20の周方向両側を伝って底部42へと伝わる(図中のE1およびE2のルートを参照)。よって、第2実施形態と同様、セル50からの放熱性をより高めることができる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るセルユニットおよび当該セルユニットを備えるバッテリーについて説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
図8は、第3実施形態に係るセルユニットの斜視図(8A)および当該セルユニットを備えるバッテリーの縦断面図(8B)を、それぞれ示す。
【0059】
この実施形態に係るセルユニット30bは、先述の第3実施形態に係る多層シート1bを備えるセルユニットである。セルユニット30bは、複数の熱源としてのセル50と、複数のセル50同士の間に少なくとも配置される多層シート1bと、を備える。セルユニット30bは、多層シート1aに代えて、多層シート1bを備える点で、第2実施形態に係るセルユニット30aと異なる。より詳細には、セルユニット30bは、多層シート1bの熱伝導部材20aがクッション部材26を備える点で、第2実施形態に係るセルユニット30aと異なる。その他の構成については、先述の実施形態と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0060】
この実施形態に係るセルユニット30bを備えるバッテリー40bは、第2実施形態のバッテリー40aと同様に、冷却剤45を流す構造を持つ筐体41内に、セルユニット30bを備える。セル50は、底部42との間に、熱伝導部材20aを挟むようにして筐体41内に配置されている。また、セル50は、隣接するセル50との間に、第1シート部材10を挟むようにして筐体41内に配置されている。多層シート1bにおいて、熱伝導部材20aは、余剰領域25を備える。熱伝導部材20aにおける余剰領域25がセル50若しくは筐体41(具体的には、この実施形態では底部42)のいずれかに接触するように、熱伝導部材20aがセル50と筐体41との間に備えられる。この実施形態において、熱伝導部材20aは、余剰領域25をセル50側に向けて、セル50と底部42との間に挟持された状態で筐体41内に備えられる。なお、先述の第2実施形態に係るセルユニット30aおよびバッテリー40aの変形例(図7参照)と同様に、熱伝導部材20aは、余剰領域25を底部42側に向けて、セル50と底部42との間に挟持された状態で筐体41内に備えられていても良い。
【0061】
3.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0062】
第2実施形態および第3実施形態に係る多層シート1a,1bでは、第1シート部材10と第2シート部材24とが連続したシートで形成されているが、第1シート部材10と第2シート部材24とは、連続したシートで形成されていなくとも良い。すなわち、第1シート部材10と第2シート部材24とが別々のシートにより形成され、耐熱性の接着剤、両面テープ等の固定手段を用いて固定されても良いし、何らの固定手段も用いずに接触していても良い。
【0063】
また、第2実施形態および第3実施形態に係る多層シート1a,1bでは、第2シート部材24は、第1シート部材10と同様に、第2熱伝導シート21、断熱シート12、およびゴムシート13から構成されているが、少なくとも第2熱伝導シート21を備えていれば、断熱シート12またはゴムシート13のいずれか一方を備えていても良いし、断熱シート12およびゴムシート13を備えていなくとも良い。また、第2熱伝導シート21は、少なくとも断熱シート12およびゴムシート13より熱伝導性に優れるシートであれば、第1熱伝導シート11と同一成分のシートでなくとも良い。
【0064】
また、第2実施形態および第3実施形態に係る多層シート1a,1bでは、熱伝導部材20,20aは、中空部27,27aを備えていたが、中空部27,27aを備えていなくとも良い。
【0065】
また、第2実施形態および第3実施形態に係るセルユニット30a,30bを備えるバッテリー40a,40bでは、全ての熱伝導部材20,20aの余剰領域25は、セル50の下端側若しくは筐体41の底部42側を向いている。しかし、一部の熱伝導部材20,20aの余剰領域25がセル50の下端側を向き、残りの熱伝導部材20,20aの余剰領域25が底部42側を向いていても良い。
【0066】
また、第2実施形態および第3実施形態に係る多層シート1a,1bでは、熱伝導部材20,20aは余剰領域25を備えていたが、余剰領域25を備えていなくても良い。すなわち、熱伝導部材20,20aは、第2シート部材24が中空部27またはクッション部材26の外周に沿って1周巻かれた筒状部材であっても良い。また、第2実施形態および第3実施形態に係るセルユニット30a,30bを備えるバッテリー40a,40bでは、全ての熱伝導部材20,20aが余剰領域25を備えていたが、一部の熱伝導部材20,20aのみ余剰領域25を備えていても良い。また、熱伝導部材20,20aは、その開口部から見て、閉じた円形、閉じた楕円形、閉じた長円形、又は閉じた長方形のように閉じた筒状若しくは柱状の部材でも良い。
【0067】
また、熱源は、セル50のみならず、回路基板や電子機器本体などの熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。同様に、冷却剤45は、冷却用の水のみならず、有機溶剤、液体窒素、冷却用の気体であっても良い。また、多層シート1およびセルユニット30,30a,30bは、バッテリー40以外の構造物、例えば、電子機器、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【0068】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、多層シート1bは、セルユニット30aに備えられていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る多層シートおよびセルユニットは、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係る多層シートおよびセルユニットは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1,1a,1b・・・多層シート、11・・・第1熱伝導シート、12・・・断熱シート、13・・・ゴムシート、20,20a・・・熱伝導部材、21・・・第2熱伝導シート、26・・・クッション部材(筒状クッション部材はその一例)、27,27a・・・中空部、30,30a,30b・・・セルユニット、50・・・セル(熱源の一例)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8