(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ジッパーテープ付き袋体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 33/25 20060101AFI20240110BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20240110BHJP
A44B 19/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B65D33/25 A
B65D30/02
A44B19/16
(21)【出願番号】P 2019235714
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000143880
【氏名又は名称】株式会社細川洋行
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】要藤 昭男
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 太士郎
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111911(WO,A1)
【文献】特開2014-226311(JP,A)
【文献】特許第6309925(JP,B2)
【文献】特開2001-146241(JP,A)
【文献】特開平08-268445(JP,A)
【文献】国際公開第2006/075644(WO,A1)
【文献】特開2013-056678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/25
B65D 30/02
A44B 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジッパーテープ付き袋体であって、
前記ジッパーテープは、
ポリオレフィンを主ポリマーとする樹脂組成物で形成され、1対の基部条片および前記1対の基部条片の互いに対向する面からそれぞれ突出し互いに係合可能な係合部とを含む第1の樹脂部分と、
ポリエステルを主ポリマーとする樹脂組成物で形成され、少なくとも前記1対の基部条片の前記係合部とは反対側の面を覆う第2の樹脂部分と
を備え、
前記袋体は、シーラント用フィルムとしてヒートシール性を有するポリエステルフィルムを有し、
前記ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体0.1~3重量部、柔軟化材3~20重量部、および成形助剤0.05~1.5重量部のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からな
り、
前記柔軟化材は、前記第2の樹脂部分に用いられるポリエステル樹脂を含むことを特徴とするジッパーテープ付き袋体。
【請求項2】
前記柔軟化材が、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、または共重合体ポリエステルであることを特徴とする、請求項1に記載のジッパーテープ付き袋体。
【請求項3】
前記第1の樹脂部分と前記第2の樹脂部分との間に位置する接着樹脂層をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のジッパーテープ付き袋体。
【請求項4】
前記第2の樹脂部分は、さらに、前記ジッパーテープの幅方向における前記基部条片の端面を少なくとも部分的に覆う、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のジッパーテープ付き袋体。
【請求項5】
前記第2の樹脂部分は、さらに、前記ジッパーテープの幅方向における前記基部条片の端面に続く前記基部条片の前記係合部側の面を部分的に覆う、請求項4に記載のジッパーテープ付き袋体。
【請求項6】
前記第2の樹脂部分は、前記ジッパーテープの幅方向における前記基部条片の端面よりも前記幅方向の外側に広がるスラブ状部分を形成する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のジッパーテープ付き袋体。
【請求項7】
前記第1の樹脂部分は、前記ジッパーテープの幅方向に並列される複数の樹脂部分を含み、
前記第2の樹脂部分は、前記複数の樹脂部分の間にスラブ状部分を形成する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のジッパーテープ付き袋体。
【請求項8】
前記係合部は、雄部材と雌部材とが互いに面接触する密封型係合部を含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のジッパーテープ付き袋体。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のジッパーテープ付き袋体の製造方法であって、
回転可能なドラムの周面と、該ドラムの周面に対抗するシール面を有するシールバーとの間に、前記ジッパーテープと前記ポリエステルフィルムをシーラント用フィルムとしたフィルムとを重ね合わせた状態で挟み込むことにより熱溶着する溶着工程を含むことを特徴とするジッパーテープ付き袋体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッパーテープ付き袋体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品など医薬品などのための包装体では、安全性およびヒートシール性に優れるポリエチレンやポリプロピレンを主成分とするポリオレフィン系樹脂フィルムで内容物と接触する内層が形成されることが多い。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は香気成分の透過性および吸着性が高いため、内層材として用いた場合にプラスチック臭を発したり、内容物の薬効成分や香気成分の移行や吸着によって商品価値を損ねたりする場合がある。そこで、内容物の薬効成分や香気成分の移行や吸着が発生しにくいPET(ポリエチレンテレフタレート)を内層として用いた包装体が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、PETを内層として用いたジッパー付き袋体が記載されている。特許文献1に記載された袋体は内層がヒートシール性PETで形成され、ジッパー部材はPETとポリエステル系エラストマーとを特定比率でブレンドした混合樹脂、またはPETおよびポリエチレンに相溶化剤を添加した混合樹脂で形成される。これによってジッパー部材を袋体内層のPETに融着可能とし、かつジッパー部材に柔軟性を与えることによって開閉を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような混合樹脂でジッパー部材を形成する場合、ブレンドの比率によってジッパー部材の柔軟性とPETとの融着強度とが大きく変動するため、これらのバランスをとることが容易ではなかった。より具体的には、PETの比率が高いとジッパー部材の柔軟性が不足して開閉が困難になり、PETの比率が低いと袋体内層のPETとの間の融着強度が不十分になる。それゆえ、特許文献1に記載されたジッパー付き袋体では、ジッパー部材に関わる品質を安定させることが容易ではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、安定した封止性や適度な開封感といったジッパーテープとしての機能性を維持しながら、内層がPETを含む袋体にジッパーテープを確実に融着可能なジッパーテープ付き袋体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、ジッパーテープ付き袋体であって、ジッパーテープは、ポリオレフィンを主ポリマーとする樹脂組成物で形成され、1対の基部条片および1対の基部条片の互いに対向する面からそれぞれ突出し互いに係合可能な係合部とを含む第1の樹脂部分と、ポリエステルを主ポリマーとする樹脂組成物で形成され、少なくとも1対の基部条片の係合部とは反対側の面を覆う第2の樹脂部分とを備え、袋体は、シーラント用フィルムとしてヒートシール性を有するポリエステルフィルムを有し、ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体0.1~3重量部、柔軟化材3~20重量部、および成形助剤0.05~1.5重量部のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるジッパーテープ付き袋体が提供される。
上記の構成によれば、ジッパーテープの係合部がポリオレフィンを主ポリマーとする樹脂組成物で形成されることによって、安定した封止性や適度な開封感といったジッパーテープとしての機能性を維持することができる。また、接合面がポリエステルを主ポリマーとする樹脂組成物で形成されることによって、シーラント層がPETを含む袋体にジッパーテープを確実に融着することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上で説明したように、本発明によれば、安定した封止性や適度な開封感といったジッパーテープとしての機能性を維持しながら、内層がPETを含む袋体にジッパーテープを確実に融着可能なジッパーテープ付き袋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の平面図である。
【
図2】
図1に示すジッパーテープ付き袋体のII-II線断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の他の例の断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体のさらに他の例の断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の断面図である。
【
図7】第3の実施形態の変形例に係るジッパーテープ付き袋体の断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の断面図である。
【
図9】本発明のジッパーテープ付き袋体の製造方法に用いる製造装置の概略的な構成を示す図である。
【
図10】
図9に示す製造装置のドラムシール部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
なお、本明細書において、主ポリマーとは、各層の構成成分中、最も多い成分を意味するが、各層がn成分(nは2以上の整数)のポリマーで構成されている場合100/n%以上、好ましくは100/n×1.2倍%以上含有している成分を意味する。主ポリマーであることは、赤外分光法、NMR、DSC等で分析できる。なお、本発明の効果を失わない範囲で、不純物を含むことが出来るものとする。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の平面図であり、
図2は
図1に示すジッパーテープ付き袋体のII-II線断面図である。
図1および
図2に示されるように、第1の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体1は、第1面11Aおよび第2面11Bを有する袋体を形成するフィルム10と、ジッパーテープ20とを含む。
【0013】
フィルム10は、例えば単層または多層の熱可塑性樹脂で形成される。より具体的には、フィルム10は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリプロピレン(PP)で形成された層を含んでもよい。PPは、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、またはブロックポリプロピレン(BPP)であってもよい。フィルム10が多層である場合、表基材に二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)、または二軸延伸ナイロン(ONy)を用いてもよい。また、フィルム10は、アルミニウム蒸着やアルミニウム箔の積層などによって形成された無機材料の層を含んでもよい。フィルム10を多層化するためにはドライラミネートやサンドラミネートの方法が用いられる。本実施形態において、フィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bのシーラント層、すなわちジッパーテープ20に対向する層は、ヒートシール性PET(ポリエチレンテレフタレート)を主ポリマーとする樹脂組成物で形成される。
【0014】
なお、本実施形態では、2枚のフィルム10がボトムシール部12およびサイドシール部13において互いに接合されることによって第1面11Aおよび第2面11Bを有する袋体を形成しているが、別の実施形態では、1枚のフィルム10がサイドシール部13に対応する部分で折り返されることによって第1面11Aおよび第2面11Bが形成されてもよい。あるいは、
図1の例におけるボトムシール部12またはサイドシール部13に対応する部分でフィルム10が内側に折り込まれた部分、いわゆるガセットが形成されてもよい。この場合、ガセットは、フィルム10によって形成されてもよいし、フィルム10に接合された別のフィルムによって形成されてもよい。また、ジッパーテープ付き袋体1は、底部にガセットが形成されることによって立てて置くことが可能なスタンディングパウチであってもよい。
【0015】
また、本実施形態では、ボトムシール部12およびサイドシール部13が形成される一方で、トップシール部が形成されないことによってジッパーテープ付き袋体1の開口部14が形成されているが、別の実施形態では、ボトムシール部12およびサイドシール部13に加えてトップシール部が形成され、トップシール部とジッパーテープ20との間を切断することによって事後的にジッパーテープ付き袋体1に開口部14を形成することが可能であってもよい。さらに別の実施形態では、ボトムシール部12が形成されない、すなわちジッパーテープ付き袋体1がジッパーテープ20とは反対側で封止されていない状態で袋体が提供されてもよい。この場合、ボトムシール部12はジッパーテープ付き袋体1に内容物を充填した後で形成される。これ以外にも、ジッパーテープが融着されるものであれば、公知の各種の構成の袋体、および袋体以外の容器に本発明を適用することが可能である。
【0016】
ジッパーテープ20は、
図2に示されるように、フィルム10の第1面11Aに融着される第1部材20Aと、第2面11Bに融着される第2部材20Bとからなる。第1部材20Aおよび第2部材20Bのそれぞれは、ポリオレフィンを主ポリマーとする樹脂組成物で形成されるポリオレフィン部分21A,21Bと、接着樹脂層22A,22Bと、ポリエステルを主ポリマーとする樹脂組成物で形成されるポリエステル部分23A,23Bとを含む。ポリオレフィン部分21A,21Bは、基部条片211A,211Bと、基部条片211A,211Bの互いに対向する面からそれぞれ突出する係合部212A,212Bとを含む。一方、ポリエステル部分23A,23Bは、基部条片211A,211Bの係合部212A,212Bとは反対側の面を覆い、フィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bとの接合面231A,231Bを形成する。接着樹脂層22A,22Bは、ポリオレフィン部分21A,21Bとポリエステル部分23A,23Bとの間に位置し、これらの部分を互いに接合する。このようなジッパーテープ20は、例えば各部分の樹脂を共押出成形することによって形成される。
【0017】
ここで、接着樹脂層22A,22Bは、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンゴム、酸変性ポリオレフィン、エポキシ基含有モノマー-エチレン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステルとジカルボン酸無水物モノマーとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-イソブチルアクリレート共重合体、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体、ジシクロペンタジエン樹脂などの脂環族系樹脂、スチレン系・ポリエステル系・オレフィン系エラストマー系等の接着性樹脂およびこれらの樹脂の一種または二種以上の混合物で形成される。これらの樹脂のうち、低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンゴム、脂環族系樹脂の混合物を、その混合割合が低密度ポリエチレンが55~70、エチレン-プロピレンゴムが15~30、脂環族系樹脂が5~20の範囲で使用することが好ましい。この範囲とすることで、十分なポリオレフィンとポリエステルの接着強度を得ることができる。また、接着樹脂層の厚みは特に限定するものではないが10μm~200μmとすることが好ましい。
これらの接着性樹脂を用いることによって、ポリオレフィン部分21A,21Bとポリエステル部分23A,23Bとの間でより高い層間接合強度を得ることができる。これによって、例えば、
図1に示すようなジッパーテープ付き袋体1が成形されたときに、サイドシール部13でジッパーテープ20の層間の隙間がトンネル状のピンホールになってジッパーテープ付き袋体1の密封性が損なわれ、内容物の劣化や袋の保香性が低下するのを防止できる。
【0018】
上記のようなジッパーテープ20において、ポリオレフィン部分21A,21Bによって形成される係合部212A,212Bは、互いに係合可能である。
図2に示された例において、係合部212Aは雄型の断面形状を有し、係合部212Bは雌型の断面形状を有し、これらの係合部212A,212Bが互いに係合することによってジッパーテープ20が閉じられ、ジッパーテープ付き袋体1の開口部14が封止される。なお、雄型および雌型に限られず、爪状、鉤状、または瘤状などを組み合わせた公知の各種のジッパーテープの係合部の形状を、上記の例の係合部212A,212Bに適用することも可能である。1対のポリオレフィン部分に2組以上の係合部が設けられてもよい。いずれの場合も、係合部212A,212Bは、略矩形の断面を有する基部条片211A,211Bから突出する異形部分になる。このような異形部分の形状を維持し、係合部212A,212Bが係合したときに開口部14を確実に封止したり、係合を解除したときに適度な開封感を発現させたりするためには、ポリオレフィンを主ポリマーとするポリオレフィン部分21A,21Bに係合部212A,212Bを形成することが有利である。ここでポリオレフィン部分に用いられるポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、プロピレン-エチレン-ブテン1ランダム三元共重合体等のポリプロピレン樹脂、およびこれらの樹脂の混合物などが挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、公知の添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、または着色剤などが添加されてもよい。また、ポリオレフィン部分21Aおよびポリオレフィン部分21Bには、同一または異なるポリオレフィン樹脂を用いることもできる。
【0019】
その一方で、本実施形態のようにフィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bのシーラント層がヒートシール性PETを主ポリマーとする樹脂組成物で形成される場合、ポリオレフィンとヒートシール性PETとの間の融着性が低いため、係合部212A,212Bを形成するポリオレフィン部分21A,21Bを直接的に第1面11Aおよび第2面11Bに融着させることは容易ではない。そこで、本実施形態では、ポリオレフィン部分21A,21Bの係合部212A,212Bとは反対側の面をポリエステル部分23A,23Bで覆い、ポリエステル部分23A,23Bに形成される接合面231A,231Bをそれぞれフィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bに融着させる。ポリエステルとヒートシール性PETとの間の融着性は高いため、ポリエステル部分23A,23Bは第1面11Aおよび第2面11Bに安定して融着させることができる。ポリオレフィン部分21A,Bとポリエステル部分23A,23Bとの間はどのようにして接合されてもよいが、本実施形態では接着樹脂層22A,22Bを用いてポリオレフィン部分21A,Bとポリエステル部分23A,23Bとの間を接合している。ここでポリエステル部分に用いられるポリエステル樹脂としてはポリエステルエラストマーなどの共重合ポリエステルが挙げられ、これらには結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂などがあり、市販品としては具体的には、ペルプレン(登録商標)(東洋紡製)、ハイトレル(登録商標)(東レ・デュポン製)、アーニテル(商品名、DSM製)、バイロン(登録商標)(東洋紡製)、プリマロイ(登録商標)(三菱ケミカル製)などが挙げられる。また、ポリエステル部分の厚みは特に限定するものではないが10μm~200μmとすることが好ましい。
【0020】
以上で説明したような本発明の第1の実施形態によれば、ジッパーテープ20の係合部212A,212Bがポリオレフィンを主ポリマーとする樹脂組成物で形成されることによって、安定した封止性や適度な開封感といったジッパーテープとしての機能性を維持することができる一方で、接合面231A,231Bがポリエステルを主ポリマーとする樹脂組成物で形成されることによって、シーラント層がPETを含むフィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bにジッパーテープ20を確実に融着することができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の断面図である。
図3に示されるように、第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体2は、フィルム10と、ジッパーテープ40とを含む。なお、フィルム10の構成については、上記の第1の実施形態と同様であるため、以下では重複した説明を省略する。
【0022】
ジッパーテープ40は、
図3に示されるように、フィルム10の第1面11Aに融着される第1部材40Aと、第2面11Bに融着される第2部材40Bとからなる。第1部材40Aおよび第2部材40Bのそれぞれは、ポリオレフィン部分21A,21Bと、接着樹脂層42A,42Bと、ポリエステル部分43A,43Bとを含む。なお、ポリオレフィン部分21A,21Bの基部条片211A,211Bおよび係合部212A,212Bについては、上記の第1の実施形態と同様であるため重複した説明は省略する。
【0023】
ポリエステル部分43A,43Bは、第1の実施形態と同様にポリエステルを主ポリマーとする樹脂組成物で形成され、基部条片211A,211Bの係合部212A,212Bとは反対側の面を覆い、接合面231A,231Bを形成する。加えて、本実施形態においてポリエステル部分43A,43Bは、ジッパーテープ40の幅方向(
図3における上下方向)における基部条片211A,211Bの端面213A,213Bを覆う立ち上がり部432A,432Bを含む。ここで、立ち上がり部432A,432Bは、ポリエステル部分43A,43Bの断面形状において幅方向の両端部が立ち上がる部分である。図示された例では、立ち上がり部432A,432Bが端面213A,213Bの全体を覆っているが、少なくとも部分的に覆っていてもよい、すなわち、立ち上がり部432A,432Bは端面213A,213Bの一部、具体的にはポリエステル部分43A,43Bに近い側だけを覆ってもよい。
【0024】
接着樹脂層42A,42Bは、第1の実施形態と同様の樹脂で形成されるが、基部条片211A,211Bの係合部212A,212Bとは反対側の面だけではなく、端面213A,213Bにも回り込んで、ポリエステル部分43A,43Bとの間に形成される。
【0025】
本実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られるのに加えて、ポリエステル部分43A,43Bが基部条片211A,211Bの幅方向の端面213A,213Bを覆っていることによって、ジッパーテープ40の第1部材40Aおよび第2部材40Bがフィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bとともに互いに接合されるサイドシール部13(
図1参照)におけるピンホールの形成を防止することができる。
【0026】
より具体的には、例えば、サイドシール部13を2枚のフィルムを加熱押圧して融着によって形成するときに、体積的に大きな係合部を含む場合があるポリオレフィン部分21A,21Bの樹脂が溶融して、サイドシール部13とジッパーテープ40とが重なる部分で広がり、基部条片211A,211Bの端面213A,213Bがポリエステル部分から張り出し、ポリオレフィン樹脂が第1面11Aまたは第2面11Bのシーラント層の樹脂に接触すると、ポリオレフィン樹脂とシーラント層の樹脂の相溶性が悪いため、その接触した部分が融着されずにピンホールが形成される可能性がある。本実施形態では、基部条片211A,211Bの端面213A,213Bをポリエステル部分43A,43Bの立ち上がり部432A,432Bで覆うことによって、ポリオレフィン部分21A,21Bの樹脂と第1面11Aまたは第2面11Bのシーラント層の樹脂との接触によるピンホールの形成を防止することができる。なお、立ち上がり部432A,432Bと呼ばれるような形状でなくても、同様に基部条片211A,211Bの端面を覆うことが可能な形状がポリエステル部分43A,43Bに形成される場合には、同様の効果が得られる。
【0027】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の他の例の断面図である。
図4に示されるジッパーテープ付き袋体2Aでは、ジッパーテープ40の幅は
図3に示された例と同程度であるが、ポリオレフィン部分41A,41Bで基部条片411A,411Bが狭幅に形成されている。基部条片411A,411Bの幅は、例えば図示された例のように係合部212A,212Bと同程度か、より狭くてもよい。この結果、図示された例において、ポリエステル部分43A,43Bは基部条片411A,411Bの端面213A,213Bよりも幅方向の外側に広がるスラブ状部分433A,433Bを形成する。
【0028】
なお、図示された例ではスラブ状部分433A,433Bが基部条片411A,411Bの端面213A,213Bの全体を覆っているが、他の例においてスラブ状部分433A,433Bが端面213A,213Bの一部、具体的にはポリエステル部分43A,43Bに近い側だけを覆っていてもよく、あるいはスラブ状部分433A,433Bが端面213A,213Bを覆っていなくてもよい。この場合、ジッパーテープ40の第1部材40Aおよび第2部材40Bの互いに対向する内側面では、基部条片411A,411Bとスラブ状部分433A,433Bとの間に段差が形成される。
【0029】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体のさらに他の例の断面図である。
図5に示されるジッパーテープ付き袋体2Bでは、ジッパーテープ40がポリオレフィンを主ポリマーとする樹脂組成物で形成される2組のポリオレフィン部分、すなわちポリオレフィン部分41A,41Bおよびポリオレフィン部分44A,44Bを含む。ポリオレフィン部分44A,44Bも、ポリオレフィン部分41A,41Bと同様に構成され、狭幅の基部条片441A,441Bと、上述の係合部212A,212Bと同様に構成される係合部442A,442Bとを含む。図示された例では、ポリオレフィン部分41A,41Bとポリオレフィン部分44A,44Bとがジッパーテープ40の幅方向に並列して配置されることによって、所謂ダブルジッパーが構成される。
【0030】
図示された例では、ポリオレフィン部分41A,41B,44A,44Bの基部条片411A,411B,441A,441Bが狭幅であるため、ポリエステル部分43A,43Bは
図4の例と同様にジッパーテープ40の幅方向両端側にスラブ状部分433A,433Bを形成するのに加えて、基部条片411Aと基部条片441Aとの間、および基部条片411Bと基部条片441Bとの間にそれぞれスラブ状部分434A,434Bを形成する。なお、本明細書において、スラブ状部分(スラブ状部分433A,433Bおよびスラブ状部分434A,434B)は、ジッパーテープ40を厚さ方向で見た場合にポリエステル部分43A,43Bがポリオレフィン部分に接合されておらず、当該部分においてジッパーテープ40がスラブ(一枚板)状のポリエステル部分43A,43Bによって形成されている部分を意味する。
【0031】
上記で
図4および
図5を参照して説明した例では、ポリオレフィン部分41A,41B,44A,44Bの基部条片を狭幅に形成し、ジッパーテープ40の幅方向両端側、および幅方向に並列された複数のポリオレフィン部分の間をポリエステル部分43A,43Bが形成するスラブ状部分433A,433B,434A,434Bとすることによって、ポリオレフィン部分41A,41B,44A,44Bとポリエステル部分43A,43Bとの貼り合わせ面積を最小化し、貼り合わせ部分で反りなどが生じることによるジッパーテープ40の変形を抑制することができる。
【0032】
なお、上記で
図5を参照して説明した例のようなダブルジッパーは、他の例においても採用可能である。例えば、
図4に示された例において、基部条片411A,411Bの互いに対向する面からそれぞれ2つの係合部212A,212Bが突出することによってダブルジッパーが構成されてもよい。また、
図2および
図3に示された例において、基部条片211A,211Bの互いに対向する面からそれぞれ2つの係合部212A,212Bが突出することによってダブルジッパーが構成されてもよい。後述する他の実施形態および変形例でも、基部条片の互いに対向する面からそれぞれ2つの係合部が突出することによってダブルジッパーを構成することができる。あるいは、基部条片の互いに対向する面からそれぞれ3つ以上の係合部が突出してもよい。
【0033】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の断面図である。
図6に示されるように、第3の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体3は、フィルム10と、ジッパーテープ60とを含む。なお、フィルム10の構成については、上記の第1の実施形態と同様であるため、以下では重複した説明を省略する。
【0034】
ジッパーテープ60は、
図6に示されるように、フィルム10の第1面11Aに融着される第1部材60Aと、第2面11Bに融着される第2部材60Bとからなる。第1部材60Aおよび第2部材60Bのそれぞれは、ポリオレフィン部分61A,61Bと、接着樹脂層62A,62Bと、ポリエステル部分63A,63Bとを含む。
【0035】
ポリオレフィン部分61A,61Bは、第1の実施形態と同様にポリオレフィンを主ポリマーとする樹脂組成物で形成され、基部条片611A,611Bと、基部条片611A,611Bの互いに対向する面からそれぞれ突出する係合部212A,212Bとを含む。なお、係合部212A,212Bについては、上記の第1の実施形態と同様であるため重複した説明は省略する。基部条片611A,611Bは、第1の実施形態と同様に係合部212A,212B側の面とその反対側の面とを有する。加えて、本実施形態では、ジッパーテープ60の幅方向(
図6における上下方向)における基部条片611A,611Bの両端部に、後述するポリエステル部分63A,63Bの返し部633A,633Bに対応する形状の段部614A,614Bが形成される。本実施形態において、段部614A,614Bは、基部条片611A,611Bの係合部212A,212B側の面の一部である。
【0036】
ポリエステル部分63A,63Bは、第1の実施形態と同様にポリエステルを主ポリマーとする樹脂組成物で形成され、基部条片611A,611Bの係合部212A,212Bとは反対側の面を覆い、接合面231A,231Bを形成する。加えて、ポリエステル部分63A,63Bは、ジッパーテープ60の幅方向における基部条片611A,611Bの端面213A,213Bを覆う立ち上がり部432A,432Bを含む。さらに、本実施形態において、ポリエステル部分63A,63Bは、基部条片611A,611Bの段部614A,614Bを覆う返し部633A,633Bを含む。ここで、返し部633A,633Bは、ポリエステル部分63A,63Bの断面形状において幅方向の両端部が立ち上がった立ち上がり部432A,432Bのそれぞれの先端が、基部条片611A,611Bの幅方向の内側の係合部212A,212Bに向かって返るように折れ曲がった部分である。上述のように、本実施形態において、段部614A,614Bは、基部条片611A,611Bの係合部212A,212B側の面の一部である。従って、返し部633A,633Bは、基部条片611A,611Bの係合部212A,212B側の面を部分的に覆う。なお、本実施形態の他の例では、基部条片が段部の形成されない略矩形の断面を有し、返し部633A,633Bが基部条片の係合部側の平坦な面を全面的に覆ってもよい。
【0037】
接着樹脂層62A,62Bは、第1の実施形態と同様の樹脂で形成されるが、基部条片611A,611Bの係合部212A,212Bとは反対側の面だけではなく、端面213A,213B、および段部614A,614Bにも回り込んで、ポリエステル部分63A,63Bとの間に形成される。
【0038】
本実施形態では、上記の第2の実施形態と同様の効果が得られるのに加えて、ポリエステル部分63A,63Bが基部条片611A,611Bの幅方向の端面213A,213Bに加えて係合部212A,212B側の面の一部を覆っていることによって、ジッパーテープ60の第1部材60Aおよび第2部材60Bがフィルム10の第1面11Aおよび第2面11Bとともに互いに接合されるサイドシール部13(
図1参照)におけるピンホールの形成をより確実に防止することができる。より具体的には、例えば、サイドシール部13を2枚のフィルムを加熱押圧して融着によって形成するときに、体積的に大きな係合部を含むポリオレフィン部分61A,61Bの樹脂が溶融して、サイドシール部13とジッパーテープ60とが重なる部分で広がり、立ち上がり部432A,432Bを越え、第1面11Aまたは第2面11Bのシーラント層の樹脂に接触すると、ポリオレフィン樹脂とシーラント層の樹脂との間の融着性が低いためにピンホールが形成される可能性があるが、本実施形態では、ポリエステル部分63A,63Bが返し部633A,633Bによって基部条片611A,611Bの係合部212A,212B側の面までを覆うことによって、溶融したポリオレフィン部分61A,61Bが広がる際の先端部を、融着した返し部633A,633Bが覆うこととなり、ポリオレフィン部分61A,61Bの樹脂と第1面11Aまたは第2面11Bのシーラント層の樹脂との接触によるピンホールの形成をより確実に防止することができる。なお、返し部633A,633Bと呼ばれるような形状でなくても、同様に基部条片211A,211Bの係合部212A,212B側の面を部分的に覆うことが可能な形状がポリエステル部分63A,63Bに形成される場合には、同様の効果が得られる。
【0039】
(変形例)
図7は、第3の実施形態の変形例に係るジッパーテープ付き袋体の断面図である。
図7に示されるジッパーテープ付き袋体3Aでは、ポリエステル部分63A,63Bの返し部633A,633Bが延伸され、係合部212A,212Bの根元まで達している。この場合も、係合部212A,212Bの根元は返し部633A,633Bで覆われないため、ポリエステル部分63A,63Bが基部条片611A,611Bの係合部212A,212B側の面を部分的に覆っていることは上記で
図6を参照して説明した例と同じである。ただし、
図7の例では段部614A,614Bが形成されない。
【0040】
上記の第2および第3の実施形態では、ジッパーテープ付き袋体2,3にサイドシール部13を形成するときのピンホールの形成をより確実に防止することができる。フィルム10の内層がPETを含む樹脂組成物で形成される場合、ジッパーテープ付き袋体は優れた保香性を有するが、ピンホールの形成を防止することによって保香性をさらに向上させることができる。なお、第1の実施形態のようにピンホールの形成を防止するための構造がない場合でも、ポリオレフィン部分21A,21Bの材質および寸法によっては顕著なピンホールが形成されない場合もあり、またジッパーテープ付き袋体1に要求される性能によってはピンホールの形成が許容可能な程度である場合もある。同様の理由で、第2および第3の実施形態についても、ピンホールの形成を防止する必要性およびその程度に応じて、適宜選択可能である。
【0041】
図8は、本発明の第4の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の断面図である。
図8に示されるジッパーテープ付き袋体4では、ジッパーテープ70の第1部分70A,70Bにおいて、ポリオレフィン部分71A,71Bの係合部が、雄部材712Aと雌部材712Bとが互いに面接触する密封型係合部を形成している。このような密封型係合部については、例えば特開平8-268445号公報に記載されている。本実施形態では、ジッパーテープ70の雄部材712Aおよび雌部材712Bからなる密封型係合部によって、ジッパーテープ付き袋体4の密封性能および耐圧強度を向上させることができる。なお、
図8に示された例ではポリオレフィン部分71A,71Bが上記で
図4および
図5を参照して説明した例と同様に狭幅の基部条片411A,411Bを含むが、他の図を参照して説明した例と同様に狭幅ではない基部条片に密封型係合部を組み合わせることも可能である。また、フィルム10の構成並びにポリオレフィン部分71A,71B、ポリエステル部分および接着樹脂層に用いられる樹脂については第1の実施形態と同様である。
【0042】
(ジッパーテープ付き袋体の製造方法)
次に本発明のジッパーテープ付き袋体の製造方法について、その特徴部であるジッパーテープとフィルムとの溶着工程と、同工程を含むジッパーテープ付き袋体の製造方法をその製造装置の概略と併せて説明する。
図9は上記で説明した本発明の実施形態に係るジッパーテープ付き袋体の製造装置の概略的な構成を示す図であり、
図10は
図9に示す製造装置のドラムシール部の拡大断面図である。
図9に示されているように、製造装置100は、供給部101と、ドラムシール部102と、搬送部103と、製袋部104とを含む。
【0043】
供給部101は、フィルム10の第1面11Aおよび第2面11B(以下、フィルム11A,11Bともいう)をそれぞれ供給するフィルムロール110A,110Bと、ジッパーテープ20の第1部材20Aおよび第2部材20B(以下、ジッパーテープ20A,20Bともいう)を供給するテープ巻取ロール120と、テープ巻取ロール120から引き出されたジッパーテープ20A,20Bを分離する分離手段130と、搬送装置140とを含む。搬送装置140は、フィルム11A,11Bおよびジッパーテープ20A,20Bを、それぞれの部材の長手方向に搬送しながら互いに重ね合わせてドラムシール部102に供給する。
【0044】
ドラムシール部102は、回転可能なドラム151と、ドラム151の周面152に対向するシール面154を有するシールバー153と、周面152とシール面154との間に介挿される無端ベルト155とを含む。無端ベルト155は、ドラム151の周面152に対向する部分で周面152に同期して移動することができるように配置される。なお、ドラム151、および無端ベルト155のいずれかまたは両方を、例えば電動モーターなどの駆動装置によって駆動してもよい。供給部101から互いに重ね合わされた状態で供給されるフィルム11A,11Bおよびジッパーテープ20A,20Bは、それぞれ異なるドラム151の周面152に巻き付けられ、周面152に当接されるシールバー153のシール面154によってジッパーテープ20A,20Bがそれぞれフィルム11A,11Bに熱溶着される。
【0045】
ここで、
図10に示された例では、ドラム151の周面152に、ドラム151の周方向、すなわちフィルム11A,11Bおよびジッパーテープ20A,20Bの搬送方向に沿って延びる溝156が形成されている(第1面11Aおよび第1部材20Aの側のみ図示する)。溝156は、ドラム151の軸方向でいうと、第1面11Aおよび第1部材20Aが互いに重ね合わされた状態で周面152に巻き付けられたときに第1部材20Aの係合部が通過する位置に形成される。溝156の幅は、例えば係合部の幅よりも大きく、基部条片の幅よりも小さい。このような溝156を形成し、係合部に溝156を通過させることによって、係合部とドラム151の周面152とが干渉することを防ぎ、フィルム11A,11Bとジッパーテープ20A,20Bとを均等な圧力でシールバー153のシール面154と周面152との間に挟み込むことによって、安定的に接合することができる。
【0046】
再び
図3を参照して、搬送部103は、ジッパーテープ20A,20Bが取り付けられたフィルム11A,11Bを製袋部104まで搬送する搬送装置160を含む。製袋部104では、ジッパーテープ20A,20Bが取り付けられたフィルム11A,11Bに対して折り曲げ、接合および切断などの工程を実施することによってジッパーテープ付き袋体が製造される。なお、製袋部104の構成については、公知の各種の構成を適用することが可能であるため詳細な説明は省略する。製造装置100の構成については、上記の説明に加えて、例えば国際公開第2006/075644号などに記載された公知の各種の構成を適用することが可能である。
本発明のジッパーテープ付き袋体の製造工程において、ヒートシール性を有するポリエステルフィルムをシーラント用フィルムとしたフィルムと、本発明におけるジッパーテープとを熱溶着するには、上述した本発明の回転可能なドラムを用いて熱溶着する方法や、平板状のシールバーにより加熱押圧して熱溶着する方法を採用することができるが、回転可能なドラムを用いて熱溶着する方法では、ジッパーテープとフィルムの流れに随伴しドラムが回転することによって、ジッパーテープとフィルムが他の部材と擦れることなく送られることから、ジッパーテープとフィルムを送る際の抵抗が小さくなり、ジッパーテープに発生する皺や、ジッパーテープとフィルムとの間に発生する皺を抑制することができるため好ましい。
【0047】
本発明のジッパー付き袋体に用いられるシーラント用フィルムは、ヒートシール性を有するポリエステルフィルムである。
【0048】
このポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体0.1~3重量部、柔軟化材3~20重量部および成形助剤0.05~1.5重量部のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフィルムである。
【0049】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、その固有粘度が好ましくは0.6~0.8dl/g、より好ましくは0.6~0.7dl/g、さらに、好ましくは0.6~0.65dl/gである。0.6dl/g未満では、溶融粘度が不十分となり、成膜が不安定となり易い。一方、0.8dl/gを越えると、ヒートシール性が発現しにくい傾向にある。ポリエチレンテレフタレート樹脂は単独で用いても2種以上を組合せて使用してもよい。なお固有粘度は、ポリエチレンテレフタレート樹脂をフェノール:テトラクロロエタン=1:1の混合溶媒に溶解させ、25℃にてウベローデ型粘度計で測定した粘度である。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、単独の樹脂のみならず2種以上を組合せて使用してもよい。また使用済みペットボトル等から再生されたリサイクル樹脂であってもよい。
【0050】
本発明に用いるスチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体は、ASTM-D1652の方法により測定したエポキシ価が0.5~4.0meq/gであることが好ましい。より好ましいエポキシ価は1.0から3.5meq/gである。エポキシ価が0.5meq/g未満では、成膜や成形に十分な溶融粘度が維持できないとともに、フィルムの結晶化度が所望の範囲内まで低下せず十分なヒートシール性が発現しない場合がある。一方、4.0meq/gを越えるとポリエチレンテレフタレート分子間の再結合が過剰に進行し、成膜や成形時にゲル異物が多発する等の支障をきたす傾向にある。
【0051】
スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体の例は、例えば、特開2005-154690号公報に記載されており、またBASFジャパン株式会社のジョンクリル(登録商標)、東亜合成株式会社のアルフォン(登録商標)などが市販されている。スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体は単独で用いても2種以上を組合せて使用してもよい。
【0052】
本発明に用いる柔軟化材とは、ポリエチレンテレフタレート樹脂と親和性があり且つ柔軟性に富んだ材料を指す。具体的には、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体やポリエチレンテレフタレート以外のポリエステルが挙げられる。前者の好適な例として、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体やエチレン-アクリル酸ブチル等が挙げられる。後者の好適な例として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸に由来する単位と、炭素数1~10の多価アルコールに由来する単位の2種以上とからなる共重合体ポリエステル、テレフタル酸-エチレングリコール-1,4-シクロヘキサンジメタノールの共重合体(PCTG)、ポリエステルのハード成分とポリエーテルのソフト成分の共重合体など、結晶性を低下させたポリエステル等が挙げられる。これらは市販品があり、それを用いることができる。また、本発明のジッパー付き袋体のジッパーテープのポリエステル部分に用いられるポリエステル樹脂を柔軟化材として用いることもできる。この場合において、ジッパーテープのポリエステル部分に用いられるポリエステル樹脂と同一の樹脂を、シーラント用フィルムの柔軟化材として用いることは、袋体へのジッパーテープをより確実に融着可能とできるため好ましい。なお、シーラントの透明が求められる場合には、柔軟化材としてポリエチレンテレフタレート以外のポリエステルを用いることが好ましい、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いるとフィルムが白濁するからである。
【0053】
本発明に用いる成形助剤とは、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸などの炭素数10~20程度の飽和、不飽和脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛などのアルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛族などの金属との金属塩が好ましい。具体的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が挙げられるが、とりわけ食品や医療品包装材料として安全衛生性に優れたステアリン酸カルシウムが最も好適である。
【0054】
本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物には、前記に加えて分散助剤を添加してもよい。分散助剤は、成形助剤の粒の表面を湿潤させ分散を均一にする作用がある化合物である。分散助剤は多官能のエポキシ基を有する高級脂肪酸エステルが好ましい。代表的な分散助剤として、エポキシ化大豆油およびエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0055】
本発明におけるヒートシール製を有するポリエステルフィルムには、その他の物質も更に含むことができる。その他の物質として、具体的には炭酸カルシウムおよびタルク等の充填材、ポリメタクリル酸メチル微粒子等のアンチブロッキング剤、顔料などが挙げられる。
【0056】
本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の配合割合は、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体0.1~3重量部、柔軟化材3~20重量部、および成形助剤0.05~1.5重量部である。
【0057】
本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物において、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体は、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、0.1~3重量部、好ましくは0.3~2重量部が配合される。スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体の配合量が0.1重量部未満では、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物溶融時の溶融張力が不足し、インフレーションフィルム成形においてはバブルが安定せず、Tダイキャストフィルム成形においてはネックインが激しくなるなどして、フィルムの製膜が安定しない。一方、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体が3重量部を超えると、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物溶融時の粘度上昇が激しく成形が困難となる。
【0058】
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物において、柔軟化材は、PET樹脂100重量部に対し、3~20重量部が配合される。柔軟化材の配合量が3重量部未満では、成膜されたフィルムの剛性が高くなり、十分な製品機能を発揮することができない場合がある。一方、20重量部を越えると過剰に柔軟化し過ぎてフィルムとしてのコシが著しく低下して好ましくない。
【0059】
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物において、成形助剤は、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、0.05~1.5重量部、好ましくは0.1~1重量部が配合される。成形助剤の配合量が0.05重量部未満では、成形時に樹脂組成物のべたつきが発生し樹脂塊ができやすく安定成形に支障をきたす。一方、成形助剤の配合量が1.5重量部を超えると、成形時に樹脂組成物同士または樹脂組成物とスクリューとが滑り、成形用スクリューへの樹脂組成物の安定供給が困難となり好ましくない。
本発明は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を組成物化して改質することにより、改質前より低温でのヒートシールを可能にした特定のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるシーラント用フィルムと、これに強固に熱接着を可能とした特定の素材の組合せからなるジッパーテープとを組合せることにより、低吸着性、保香性に優れたジッパーテープ付き袋体を提供することができる。また、さらにジッパーテープの特定の層構造とすることにより、ジッパーテープ付き袋体のピンホールの形成を防止することによって保香性をさらに向上させたジッパーテープ付き袋体を提供することができる。
以下、本発明のジッパー付き袋を、実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は以下に例示する実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
上記で
図2を参照して説明した本発明の第1の実施形態のジッパーテープ付き袋体1を実施例1、
図3を参照して説明した第2の実施形態のジッパーテープ付き袋体2を実施例2、
図6を参照して説明した第3の実施形態のジッパーテープ付き袋体3を実施例3、
図8を参照として説明した第4の実施形態のジッパーテープ付き袋体4を実施例4として、固有粘度が0.70dl/gであるポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、ASTM-D1652の方法により測定したエポキシ価が3.5meq/gであるスチレン-(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体0.35重量部、柔軟化材として、固有粘度が0.76dl/gのテレフタル酸-エチレングリコール-1,4-シクロヘキサンジメタノールの共重合体4重量部、および成形助剤としてステアリン酸カルシウム0.1重量部のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるヒートシール性PETを主ポリマーとする樹脂組成物で形成されるシーラント層に対するジッパーテープ20,40,60,70のヒートシール性、およびジッパーテープ付き袋体1,2,3,4のサイドシール部13でのピンホールの有無を評価した。なお、評価に当たっては、フィルム10として、前記シーラント層を構成するシーラントフィルム20μm、アルミニウム箔7μmおよび二軸延伸ポリエチレンテレフタレート12μmをこの順番で、ウレタン系接着剤でドライラミネートしたフィルムを用いた。
【0061】
実施例1~実施例4のジッパーテープでは、ポリオレフィン部分の材料として、密度915kg/m3、メルトフローレート4.0g/分の直鎖状低密度ポリエチレン、接着樹脂層の材料として低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンゴム、脂環族系樹脂をそれぞれ63:23:14(単位はwt%)の比率で含有した接着樹脂、ポリエステル部分の材料として結晶性ポリエステル(東洋紡株式会社 バイロン SI-173とGM-913の6対4のブレンド物)を用意した。これらの原料組成物を押出機により、押出温度230℃で、押出成形した後、水冷することによりジッパーテープ20,40,60,70を作製した。なお、実施例1において、ジッパーテープの基部条片の幅は7mm、ポリステル部分、接着層、基部条片の厚みは、それぞれ、35μm、35μm、175μmであり、他の実施例についても実施例1に準ずるものとした。
【0062】
また、比較例として、第1の実施形態のジッパーテープ20においてポリエステル部分23A,23Bを省略し、ポリオレフィン部分21A,21Bと接着樹脂層22A,22Bとで構成されるジッパーテープを上記と同様の原料組成物および成形方法にて作製し、第1の実施形態と同様のフィルム10に接合してジッパーテープ付き袋体とした。
【0063】
実施例1~実施例4および比較例におけるヒートシール性およびピンホールの有無の評価結果を表1に示す。評価方法は以下のとおりである。
【0064】
(1)ヒートシール性
東洋精機製作所社製「熱傾斜試験機」を用いて、PET#12/アルミニウム箔7μm/ヒートシール性PET#20(総厚み約40μm)のラミネートフィルムを使用し、実施例1~実施例4および比較例のジッパーテープとラミネートフィルムとをシール時間1.0秒、シール圧力2.0MPa、シール温度180℃にてシールし、評価サンプルを得た。この評価サンプルについて、イマダ社製「デジタルフォースゲージ」を用いて、幅15mm当たりのジッパーテープとラミネートとのヒートシール強度(N/15mm)を測定した。なお、シール強度測定の際の引張速度は300mm/分とした。表1では、ヒートシール強度が15(N/15mm)以上の場合を0.15(N/15mm)未満の場合を×として示している。
【0065】
(2)ピンホールの有無
実施例1~実施例4および比較例のジッパーテープ付き袋体内にインクで着色したアルコールを封入し、サイドシール部13におけるピンホールの有無を評価した。表1では、サイドシール部から着色したアルコールが漏れなかった場合を○、サイドシール部から着色したアルコールが漏れた場合を×として示している。
【0066】
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0068】
1,2,3,4…ジッパーテープ付き袋体、10…フィルム、11A…第1面、11B…第2面、12…ボトムシール部、13…サイドシール部、14…開口部、20,40,60,70…ジッパーテープ、20A,40A,60A,70A…第1部材、20B,40B,60B,70B…第2部材、21A,21B,41A,41B,61A,61B,71A,71B…ポリオレフィン部分、211A,211B,411A,411B,611A,611B…基部条片、212A,212B,712A,712B…係合部、22A,22B,42A,42B,62A,62B…接着樹脂層、23A,23B,43A,43B,63A,63B…ポリエステル部分、231A,231B…接合面。