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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】マイクロカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/16 20060101AFI20240110BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20240110BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240110BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240110BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20240110BHJP
   C09K 23/56 20220101ALI20240110BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20240110BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B01J13/16
A61K8/04
A61K8/11
A61K8/64
A61K8/65
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/87
A61L9/01 Q
A61Q13/00 102
A61Q15/00
A61Q19/00
C09K23/52
C09K23/56
C11B9/00 Z
C11D3/50
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019504120
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017068904
(87)【国際公開番号】W WO2018019894
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】16181447.0
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フロランス ヴィグルー エリ
(72)【発明者】
【氏名】ソニア ゴドフルワ
(72)【発明者】
【氏名】マリー オズボーン
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】塩見 篤史
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特公昭42-771(JP,B1)
【文献】特開昭51-119683(JP,A)
【文献】特開平6-175388(JP,A)
【文献】特開平3-173565(JP,A)
【文献】特表2014-526954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J13/02-13/22
C09K23/00-23/56
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
A61L9/00-9/20
C11B1/00-15/00
C11C1/00-5/02
C11D1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ尿素系コアシェル型マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、
1)香料、フレーバー、栄養補助食品、化粧料、昆虫防除剤、殺生物活性剤およびそれらの混合物からなる群から選択される疎水性活性成分を、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートと混合して油相を形成する工程、ただし、前記油相は、ジイソシアネートを含有しないことを条件とする、と、
2)イオン性または非イオン性乳化剤を水に溶解させて、水相を形成する工程であって、前記イオン性乳化剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ダイズタンパク質、カゼインナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、テンサイペクチン、加水分解ダイズタンパク質、加水分解セリシン、疑似コラーゲン、バイオポリマーSA-N(Biopolymer SA-N)、ペンタケア-NA PF(Pentacare-NA PF)およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記非イオン性乳化剤は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、化工デンプン、変性セルロース、多糖類およびそれらの混合物からなる群から選択される工程と、
3)前記油相を前記水相に添加して水中油型分散液を形成する工程と、
4)界面重合を誘発させてマイクロカプセルをスラリーの形態で形成するのに十分な条件を適用する工程と
を含む方法において、該方法は、
- 前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートが、前記油相の1~15質量%に含まれる量で存在し、
- 該方法のいずれの段階においてもアミンまたはポリアミンを添加せず、かつ
- 該方法が、カチオン性ポリマーを添加して前記マイクロカプセルに外側被覆を形成するさらなる工程を含まない
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記界面重合を、70~90℃の温度で1~4時間にわたって実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロカプセルスラリーを乾燥させて、乾燥したマイクロカプセルを得る工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートは、前記油相の2~8質量%に含まれる量で存在することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートは、前記油相の2~6質量%に含まれる量で存在することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートとの混合物であり、前記脂肪族ポリイソシアネートと前記芳香族ポリイソシアネートとは、80:20~10:90の範囲の各モル比であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記油相は、前記疎水性活性成分と、前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートとからなることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1、2および4から8までのいずれか1項記載の方法により得ることができる、ポリ尿素系マイクロカプセルスラリー。
【請求項10】
請求項9記載のマイクロカプセルスラリーを乾燥させることにより得られた、ポリ尿素系マイクロカプセル粉末。
【請求項11】
請求項9記載のマイクロカプセルスラリーであって、前記マイクロカプセルスラリーはマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセルはコアシェル形のモルホロジーを有し、かつ
香油またはフレーバーオイルから選択される疎水性活性成分を含む油系コアと、
- ポリアミンまたはアミンの不在下で、少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートと、請求項1で定義された乳化剤とから形成された重合ポリイソシアネートからなるシェルと
を含むマイクロカプセルスラリーにおいて、前記マイクロカプセルは、カチオン性被覆を含まない、マイクロカプセルスラリー。
【請求項12】
請求項10記載のマイクロカプセル粉末であって、前記マイクロカプセル粉末はマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセルはコアシェル形のモルホロジーを有し、かつ
- 疎水性活性成分を含む油系コアと、
- ポリアミンまたはアミンの不在下で、少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートと請求項1で定義された乳化剤とから形成された重合ポリイソシアネートからなるシェルと
を含むマイクロカプセル粉末において、前記マイクロカプセルは、カチオン性被覆を含まない、マイクロカプセル粉末。
【請求項13】
(i)請求項9もしくは11記載のマイクロカプセルスラリーまたは請求項10もしくは12記載のマイクロカプセル粉末であって、前記油は芳香剤を含むものとするマイクロカプセルスラリーまたはマイクロカプセル粉末と、
(ii)香料担体および香料補助成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
(iii)任意に、少なくとも1種の香料補助剤と
を含む、付香組成物。
【請求項14】
付香された液体の消費者製品において、
a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全質量に対して2~65質量%と、
b)水または水混和性の親水性有機溶媒と、
c)請求項9または11記載のマイクロカプセルスラリーと
を含む、液体の消費者製品。
【請求項15】
付香された粉末の消費者製品において、
(a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全質量に対して2~65質量%と、
(b)請求項10もしくは12記載のマイクロカプセル粉末または請求項13記載の付香組成物と
を含む、粉末の消費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルの新規な製造方法に関する。前記方法により得ることができるマイクロカプセルも、本発明の対象である。前記マイクロカプセルを含む付香組成物および消費者製品、特にホームケア製品またはパーソナルケア製品の形態である付香された消費者製品も、本発明の一部である。
【0002】
発明の背景
香料産業が直面する課題の1つとして、発香性の化合物によりもたらされる嗅覚上の有益性が、その揮発性、特に「トップノート」の揮発性ゆえに比較的に急速に失われてしまうことが挙げられる。揮発性物質の放出速度を調節するためには、コアのペイロードを保護し、かつトリガが与えられた際にコアのペイロードを遅れて放出することができる送達システム、例えば芳香剤を含有するマイクロカプセルのような送達システムが必要である。こうしたシステムに関する産業界からの重要な要求の1つに、困難を伴うベースにおいて、物理的に解離も分解もせずに懸濁性が保持されることが挙げられる。これは、送達システムについての安定性に関する性能と呼ばれる。例えば、攻撃性の界面活性剤を高レベルで含有する個人向けおよび家庭用の香料入り洗浄剤は、マイクロカプセルの安定性に関して非常に課題が多い。
【0003】
主に疎水性活性剤を封入することにより該活性剤を保護し、そしてその制御された放出を提供するために、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂で形成されたアミノプラストマイクロカプセルが使用されてきた。しかしアミノプラストマイクロカプセルのようなカプセルには、香料消費者製品のような界面活性剤を含有する消費者製品への使用時に、特に高温での長期間の貯蔵後に、安定性の問題がある。このような製品では、たとえカプセルシェルが無傷なままであっても、製品のベースに封入された活性剤を可溶化し得る界面活性剤の存在によって、封入された活性剤がシェルを通って拡散することによりカプセル外に漏出する傾向にある。この漏出現象によって、活性剤を保護し、かつ活性成分の制御された放出を提供するはずのカプセルの有効性が低下する。
【0004】
油系コアをベースとするマイクロカプセルの安定性を向上させるための様々な戦略が記載されてきた。マイクロカプセルの安定性を向上させるための方法として、ポリアミンおよびポリイソシアネートのような化学物質群によるカプセルシェルの架橋が記載されている。国際公開第2011/154893号(WO 2011/154893)には例えば、特定の相対濃度で芳香族ポリイソシアネートと脂肪族ポリイソシアネートとの組合せを用いたポリ尿素マイクロカプセルの製造方法が開示されている。アミノプラストと比較して、ポリ尿素系マイクロカプセルにより、メラミン-ホルムアルデヒド不含であるという付加的な利点が提供される。しかし、こうしたカプセルは砕けやすくないため、機械的特性に関して常に満足がいくわけではない。このことは、取扱い時や、意図的に例えば擦ることによって破壊した後に知覚される匂い強度により表されるその嗅覚性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
一方で、一部の従来技術には、ポリアミンを添加せずに製造されたポリ尿素系マイクロカプセルが記載されている。特に国際公開第97/44125号(WO 97/44125)には、界面重合法により製造されたマイクロカプセルが開示されており、該方法では、ポリ尿素が、カプセルシェルを形成するための必須成分として記載された芳香族ジイソシアネートのみによって形成される。この開示においては、3つ以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートが存在する場合があるが、これは架橋剤として使用されるのみである。しかし、ジイソシアネートは非常に反応性が高いことが知られているため、ポリマーシェルを形成するためには魅力的ではあるものの、安全性の観点から常に適切な成分であると考えられているわけではない。Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 37 (2004) 129.132におけるKen Teraoら著,Single-particle light scattering study of polyethyleneglycol-grafted poly(ureaurethane) microcapsule in ethanolには、封入すべき油の量と比較して高レベルのトリイソシアネートを使用してカプセルシェルを製造することに基づくカプセルについて、エージング時に油保持性が低いことが判明したことが、さらに教示されている。より具体的には、この論文によれば、ほぼ等質量のポリイソシアネートを使用して大型の高logP分子(ジ-2-エチルヘキシルフタレート)を封入した場合(これについては、厚いカプセルシェルからの漏出の傾向が低いことが示されるものと予測された)であっても、得られたカプセルは、有機溶媒に導入した際に貯蔵安定性が低く、該カプセルから(ジ-2-エチルヘキシルフタレート)が非常に高度に漏出する。このことは、使用したポリイソシアネート(トリイソシアネート)が、漏出を誘発するおそれがある強力な媒体におけるコア油の漏出を防止し得るシェルを得るのには適していないことを示唆している。ここで、該媒体は、有機溶媒または高レベルの界面活性剤を含む水溶液である。
【0006】
したがって、当技術分野においてコアシェル型マイクロカプセルは知られてはいるものの、該カプセルの品質および/またはその製造方法には改善の余地がある。
【0007】
したがって、例えば界面活性剤系消費者製品のような困難を伴う媒体において嗅覚性能に優れ、かつ安定であって、簡便化された費用対効果の高い方法により製造されたポリ尿素系カプセルを提供することが依然として求められている。
【0008】
発明の概要
ここで、従来の教示に基づいて予測され得るものとは対照的に、香油のような疎水性活性成分をポリ尿素系マイクロカプセルに封入することにより、ジイソシアネート以外のポリイソシアネートで実質的に形成されたシェルが得られることが判明した。したがって本発明の方法によって、上記の課題に対する解決策が提供される。なぜならば本発明の方法により、少なくとも3つのイソシアネート官能基を含むポリイソシアネート(好ましくは、芳香族であって、ジイソシアネートを含まない)で実質的に形成された重合ポリイソシアネートからなる膜を用いることで、さらなる架橋剤の不在下でカプセルを製造することができるためである。意想外にも、このようなポリイソシアネートを非常に限られた量でしか使用しない場合であっても、こうしたカプセルが安定性および嗅覚性能に関して高性能であることが実証されている。
【0009】
第1の態様において、本発明は、ポリ尿素系コアシェル型マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、
1)疎水性活性成分を、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートと混合して油相を形成する工程、ただし、前記油相は、ジイソシアネートを実質的に含有しないことを条件とする、と、
2)イオン性または非イオン性乳化剤を水に溶解させて、水相を形成する工程であって、前記イオン性乳化剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ダイズタンパク質、カゼインナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、テンサイペクチン、加水分解ダイズタンパク質、加水分解セリシン、疑似コラーゲン、バイオポリマーSA-N(Biopolymer SA-N)、ペンタケア-NA PF(Pentacare-NA PF)およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記非イオン性乳化剤は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、化工デンプン、変性セルロース、多糖類およびそれらの混合物からなる群から選択される工程と、
3)前記油相を前記水相に添加して水中油型分散液を形成する工程と、
4)界面重合を誘発させてマイクロカプセルをスラリーの形態で形成するのに十分な条件を適用する工程と
を含む方法において、該方法は、
- 前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートが、前記油相の1~15質量%に含まれる量で存在し、
- 該方法のいずれの段階においても相当量のアミンまたはポリアミンを添加せず、かつ
- 該方法が、カチオン性ポリマーを添加して前記マイクロカプセルに外側被覆を形成するさらなる工程を含まない
ことを特徴とする方法に関する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、上記の方法により得ることができる、ポリ尿素系マイクロカプセルスラリーに関する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、上記のマイクロカプセルスラリーを乾燥させることにより得られた、ポリ尿素系マイクロカプセル粉末に関する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、マイクロカプセルスラリーであって、前記マイクロカプセルスラリーはポリ尿素系マイクロカプセルを含み、該マイクロカプセルはコアシェル形のモルホロジーを有し、かつ
- 疎水性活性成分を含む油系コアと、
- アミンまたはポリアミンの不在下で、少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートと上記の乳化剤とから形成された重合ポリイソシアネートから実質的になるシェルと
を含むマイクロカプセルスラリーにおいて、前記マイクロカプセルは、カチオン性被覆を含まないマイクロカプセルスラリーに関する。
【0013】
第5の態様において、本発明は、
(i)上記で定義されたマイクロカプセルであって、前記油は芳香剤を含むものとするマイクロカプセルと、
(ii)香料担体および香料補助成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
(iii)任意に、少なくとも1種の香料補助剤と
を含む付香組成物に関する。
【0014】
最後に、第6および第7の態様において、本発明は、先に定義されたマイクロカプセルまたは付香組成物を含有する、液体または粉末の形態の付香された界面活性剤系消費者製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、パネルにより芳香強度の評点がつけられた、シャワージェル組成物におけるカプセルの評価結果を示す([本発明による]アミンを使用せずに製造されたカプセルと、[本発明によらない]アミンを使用して製造されたカプセルとの比較)。
図2図2は、パネルにより芳香強度の評点がつけられた、シャワージェル組成物におけるカプセルの評価結果を示す(自由な状態の油および本発明によるマイクロカプセルと、自由な状態の油のみとの比較)。
図3図3は、パネルにより芳香強度の評点がつけられた、シャワージェル組成物における(本発明による)カプセルの評価結果を示す。
図4図4は、パネルにより芳香強度の評点がつけられた、キッチンワイプにおけるカプセルの評価結果を示す。
図5図5は、パネルにより芳香強度の評点がつけられた、AP/Deoのロールオンベースにおけるカプセルの評価結果を示す。
図6図6は、パネルにより芳香強度の評点がつけられた、AP/Deoのロールオンベースにおけるカプセルの評価結果を示す。
【0016】
発明の詳細な説明
特に明記しない限り、パーセンテージ(%)は、組成物の質量に対するパーセンテージを表すことを意図している。
【0017】
「香油またはフレーバーオイル」とは、単一の付香もしくは着香化合物または複数の付香もしくは着香化合物の混合物を意味する。
【0018】
明確にするために述べると、本発明における「分散液」という表現は、異なる組成の連続相に粒子が分散された系を意味し、これには具体的には、懸濁液またはエマルションが含まれる。
【0019】
本発明における「コアシェル型マイクロカプセル」または類似の表現は、カプセルがマイクロメートル範囲(例えば約1~3000μmに含まれる平均径(d(v,0.5)))の粒径分布を有し、オリゴマー系の固体の外側シェルと、該外側シェルに覆われた内側の連続油相とを含むことを意味する。換言すれば、コアセルベートまたは押出成形物などの物体(すなわち液滴を含有する多孔性の固体相)は、本発明の一部ではない。
【0020】
本発明によれば、「平均直径」または「平均径」という語は、互換的に使用される。
【0021】
本発明によれば、「相当量のアミンまたはポリアミンを添加せず」とは、本発明の方法におけるアミンまたはポリアミンの添加量が、たとえポリイソシアネートと反応したとしても、マイクロカプセルシェルの特性を大きく変化させることがないような、十分に低いものでなければならないことを意味する。典型的には、本発明の方法において添加し得るアミン官能基の量は、イソシアネート官能基の量の50モル%未満、好ましくは25モル%未満、最も好ましくは10モル%未満である。
【0022】
特定の一実施形態によれば、本発明による方法のいずれの段階においてもアミンまたはポリアミンを添加しない。
【0023】
「ポリ尿素系」壁またはシェルとは、ポリマーシェルが尿素結合を含むことを意味する。該尿素結合は、アミノ官能性架橋剤か、またはイソシアネート基の加水分解により生成されるアミノ基が界面重合時にさらにイソシアネート基と反応し得ることによって製造される。したがって、界面重合時にポリオールとイソシアネート基との反応により生成されるウレタン結合は、この定義から除外される。
【0024】
本発明の文脈において、さらなる架橋剤(cross-linker)またはさらなる架橋性薬剤(cross-linking agent)とは、ポリマー鎖同士を結合し得るスペーサーを示すことを意図している。
【0025】
本発明によれば、油相は、ジイソシアネートを実質的に含有しない。
【0026】
特定の一実施形態によれば、油相は、ジイソシアネートをまったく含有しない。
【0027】
本発明によれば、マイクロカプセルは、メラミン-ホルムアルデヒド不含である。
【0028】
特定のポリイソシアネートを限られた量で使用した界面重合に基づくプロセスに、架橋剤、すなわち(ポリ)アミンを添加することなく、良好な性能を示す、すなわち界面活性剤系製品における安定性と匂いの知覚とのバランスが適切であるマイクロカプセルが得られることが判明した。このことは、これまでポリアミンを添加しないポリ尿素系カプセルについて記載された方法については、ジイソシアネートがその反応性に基づいて必須成分として使用されていたか、あるいは得られるカプセルの性能が低く、特に貯蔵時に高度に油が漏出することが記載されていることからトリイソシアネートの使用を避けるように教示されていたかのいずれかのみであったという観点から、非常に驚くべきことである。
【0029】
したがって第1の態様において、本発明は、ポリ尿素系コアシェル型マイクロカプセルスラリーの製造方法であって、
1)疎水性活性成分を、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートと混合して油相を形成する工程、ただし、前記油相は、ジイソシアネートを実質的に含有しないことを条件とする、と、
2)イオン性または非イオン性乳化剤を水に溶解させて、水相を形成する工程であって、前記イオン性乳化剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ダイズタンパク質、カゼインナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、テンサイペクチン、加水分解ダイズタンパク質、加水分解セリシン、疑似コラーゲン、バイオポリマーSA-N(Biopolymer SA-N)、ペンタケア-NA PF(Pentacare-NA PF)およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記非イオン性乳化剤は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、化工デンプン、変性セルロース、多糖類およびそれらの混合物からなる群から選択される工程と、
3)前記油相を前記水相に添加して水中油型分散液を形成する工程と、
4)界面重合を誘発させてマイクロカプセルをスラリーの形態で形成するのに十分な条件を適用する工程と
を含む方法において、該方法は、
- 前記少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートが、前記油相の1~15質量%に含まれる量で存在し、
- 該方法のいずれの段階においても相当量のアミンまたはポリアミンを添加せず、かつ
- 該方法が、カチオン性ポリマーを添加して前記マイクロカプセルに外側被覆を形成するさらなる工程を含まない
ことを特徴とする方法に関する。
【0030】
一実施形態によれば、ポリイソシアネートと重合し得るアミンまたはポリアミン以外の水溶性反応物質の相当量を該方法のいずれの段階においても添加せず、前記水溶性反応物質は、ポリオール、チオール、尿素、ウレタンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
したがって、ジイソシアネートの不在下で、少なくとも3つのイソシアネート官能基を含むポリイソシアネート(好ましくは、芳香族化合物)が油相中に限られた量でしか存在しない場合であっても、良好な性質を有するカプセルシェルを提供するのに十分な効率でポリイソシアネートを重合できることが判明した。
【0032】
工程1:油相の提供
本方法の第1の工程において、疎水性活性成分を、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有する少なくとも1種のポリイソシアネートと混合して油相を形成するが、ただし、前記油相は、ジイソシアネートを実質的に含有しないことを条件とする。
【0033】
疎水性活性成分
「疎水性活性成分」とは、水中で2相の溶液を形成するいずれの活性成分(単一の成分または複数の成分の混合物)をも意味する。
【0034】
疎水性活性成分は好ましくは、フレーバー、フレーバー成分、芳香剤、芳香剤成分、栄養補助食品、化粧料、昆虫防除剤、殺生物活性剤およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
油相中に存在する昆虫防除剤の性質および種類について、本明細書はこれ以上詳細な記載を保証するものではないが、いずれにせよ全てのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、当業者であれば、自身の一般知識に基づいて、また用途に応じて、それらを選択することができるであろう。
【0036】
このような昆虫防除剤の例は、カバノキ、DEET(N,N-ジエチル-m-トルアミド)、レモンユーカリ(Corymbia citriodora)の精油およびその活性化合物、p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、イカリジン(ヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシレート)、ネペラクトン、シトロネラ油、ニーム油、ボグミルトル(Bog Myrtle)(セイヨウヤチヤナギ)、ジメチルカルバート、トリシクロデセニルアリルエーテル、IR3535(3-[N-ブチル-N-アセチル]アミノプロピオン酸、エチルエステル、エチルヘキサンジオール、フタル酸ジメチル、メトフルトリン、インダロン、SS220、アントラニレート系昆虫忌避剤ならびにそれらの混合物である。
【0037】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、芳香剤と、栄養補助食品、化粧料、昆虫防除剤および殺生物活性剤からなる群から選択される他の成分との混合物を含む。
【0038】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、芳香剤を含む。
【0039】
特定の一実施形態によれば、疎水性活性成分は、芳香剤からなる。
【0040】
「香油」は「芳香剤」とも呼ばれ、これは本明細書では、約20℃で液状である成分または組成物を意味する。上記実施形態のいずれか1つによれば、前記香油は、単独の付香成分であってもよいし、付香組成物の形態での複数の成分の混合物であってもよい。「付香成分」とは、本明細書では、匂いの付与または調整を主な目的として使用される化合物を意味する。すなわち、付香成分であると考えられるべきこのような成分は、単に匂いを有しているものとしてではなく、少なくとも組成物にポジティブな、または心地よい匂いを付与するか、または匂いをポジティブに、または心地よいように変更できるものとして、当業者には認識されるはずである。本発明においては、香油には、付香成分と、付香成分の送達を一緒に改善、向上または変更する物質(例えば、芳香剤前駆体、エマルションまたは分散液)との組合せ、ならびに匂いを変更または付与するという有益性以外の、例えば長期持続性、ブルーミング、悪臭中和作用、抗微生物作用、微生物安定性、昆虫防除性といったさらなる有益性を付与する組合せも含まれる。
【0041】
油相中に存在する付香成分の性質および種類について、本明細書はこれ以上詳細な記載を保証するものではないが、いずれにせよ全てのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、当業者であれば、自身の一般知識に基づき、また用途および所望の感覚受容作用に従って、それらを選択することができるであろう。一般的に言えば、これらの付香成分は、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペノイド類、含窒素複素環式化合物または含硫黄複素環式化合物および精油といった様々な化学種に属し、また該香料補助成分は、天然由来のものであっても合成由来のものであってもよい。こうした補助成分の多くは、いずれにせよ、S.Arctanderによる著作Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版のような参考文献、または類似の性質の他の論文、および香料分野の多数の特許文献に列記されている。また前記成分は、様々な種類の付香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0042】
付香成分を、芳香剤産業で現在使用されている溶媒に溶解させてもよい。溶媒は、好ましくはアルコールではない。このような溶媒の例は、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、Eastmanより入手可能)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネン類もしくは他のテルペン類またはイソパラフィン類である。溶媒は好ましくは、非常に疎水性が高く、高立体障害性であり、例えばAbalyn(登録商標)または安息香酸ベンジルである。芳香剤は好ましくは、30%未満の溶媒を含む。芳香剤はより好ましくは、20%未満、さらにより好ましくは10%未満の溶媒を含む。これらのパーセンテージはいずれも、芳香剤の全質量に対する質量により定められる。最も好ましくは、芳香剤は溶媒を実質的に含まない。
【0043】
一実施形態によれば、疎水性活性成分は、工程3)後に得られた分散液の全質量に対して20~50質量%で存在する。
【0044】
少なくとも3つのイソシアネート官能基を有するポリイソシアネート
本発明により使用される適切なポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよびそれらの混合物が挙げられる。本発明によれば、油相は、少なくとも1種のポリイソシアネートを含み、該ポリイソシアネートは、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有するが、ただしイソシアネート官能基を6つまで含んでよく、またはさらにイソシアネート官能基を4つしか含んでいなくてもよい。
【0045】
特定の一実施形態によれば、トリイソシアネート(イソシアネート官能基3つ)が使用される。
【0046】
一実施形態によれば、前記ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートである。
【0047】
本明細書では、「芳香族ポリイソシアネート」という用語は、芳香族部分を含む任意のポリイソシアネートも包含することを意味する。好ましくはこの用語は、フェニル、トルイル、キシリル、ナフチルまたはジフェニル部分を含み、より好ましくはトルイルまたはキシリル部分を含む。好ましい芳香族ポリイソシアネートは、ビウレット、ポリイソシアヌレートおよびジイイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物であり、より好ましくは上記で言及された特定の芳香族部分のうちの1つを含む。芳香族ポリイソシアネートはより好ましくは、トルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレート(商品名Desmodur(登録商標)RCとしてBayerより市販)、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名Desmodur(登録商標)L75としてBayerより市販)、キシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名Takenate(登録商標)D-110NとしてMitsui Chemicalsより市販)である。最も好ましい一実施形態では、芳香族ポリイソシアネートは、キシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物である。
【0048】
もう1つの実施形態によれば、前記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートである。「脂肪族ポリイソシアネート」という用語は、芳香族部分を何ら含まないポリイソシアネートと定義される。好ましい脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(Mitsui Chemicalsより入手可能)またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(商品名Desmodur(登録商標)N100としてBayerより市販)であり、これらの中でもヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットがさらにより好ましい。
【0049】
もう1つの実施形態によれば、前記少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも1種の脂肪族ポリイソシアネートと少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネート(双方とも少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む)との混合物の形態であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのポリイソシアヌレートとの混合物およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとトルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物の形態である。最も好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットとキシリレンジイシソアネートのトリメチロールプロパン付加物との混合物である。好ましくは、混合物として使用される場合、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとのモル比は、80:20~10:90の範囲である。
【0050】
本発明の方法に使用される少なくとも1種のポリイソシアネートは、油相の1~15質量%、好ましくは1.5~12質量%、より好ましくは2~8質量%、さらにより好ましくは2~6質量%を表す量で存在する。
【0051】
特定の一実施形態によれば、油相は実質的に、少なくとも3つのイソシアネート官能基を有するポリイソシアネートと、疎水性活性成分とからなる。
【0052】
工程2:水への乳化剤の溶解による水相の形成
本発明によるマイクロカプセルのポリマーシェルは、乳化剤の存在下での界面重合により形成される。
【0053】
本発明によれば、乳化剤を水に可溶化させることで水相を形成し、ここで、好ましくはpH>5である。
【0054】
本発明によれば、乳化剤は、イオン性であっても非イオン性であってもよい。
【0055】
本発明によれば、イオン性乳化剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ダイズタンパク質、カゼインナトリウム、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、テンサイペクチン、加水分解ダイズタンパク質、加水分解セリシン、疑似コラーゲン、バイオポリマーSA-N(Biopolymer SA-N)(INCI名:ヒアルロン酸(および)血清アルブミン(および)硫酸デキストラン)、ペンタケア-NA PF(Pentacare-NA PF)(加水分解コムギグルテン(および)イナゴマメ(Carob)ガム(および)水(および)硫酸デキストランナトリウム(および)ビス-ヒドロキシエチルトロメタミン(および)フェノキシエタノール(および)エチルヘキシルグリセリン)ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
好ましい一実施形態によれば、イオン性乳化剤は、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、カゼインナトリウム、テンサイペクチンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0057】
本発明によれば、非イオン性乳化剤は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、化工デンプン、変性セルロース、多糖類およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0058】
特定の一実施形態によれば、非イオン性乳化剤は、ポリビニルアルコール、化工デンプンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、分散液は、少なくとも1種の乳化剤を約0.1~5質量%含み、ここで、パーセンテージは、工程3)後に得られた分散液の全質量に対する質量/質量ベースで表される。本発明のさらにもう1つの態様において、分散液は、少なくとも1種の乳化剤を約0.1~2質量%含む。本発明のさらにもう1つの態様において、分散液は、少なくとも1種の乳化剤を約0.1~1質量%含む。
【0060】
工程3:油相と水相との混合による分散液の形成
本発明の方法の次の工程において、次いで油相を水相に添加して、分散液を形成する。
【0061】
一実施形態によれば、平均液滴径は1~3000μmに含まれ、これによって1~3000μmに含まれるサイズを有するマイクロカプセルが得られる。
【0062】
当業者は、所望の用途の性質に応じてマイクロカプセルのサイズを容易に調節することができる。
【0063】
したがって一実施形態によれば、マイクロカプセルは、1~100μm、好ましくは5~50マイクロメートルに含まれる平均径を有する。なぜならば、こうしたマイクロカプセルが長期持続性に有用であることが判明したためである。
【0064】
もう1つの実施形態によれば、マイクロカプセルは、100マイクロメートル超3000μm以下、好ましくは300~1500マイクロメートルの平均径を有する。なぜならば、こうしたマイクロカプセルがブルーミングにおいて有用であることが判明したためである。
【0065】
工程4:硬化工程
この後に、硬化工程4)を行う。この工程4)により、スラリーの形態のマイクロカプセルにすることができる。好ましい一実施形態によれば、前記工程は、50~130℃に含まれる温度で、場合により圧力下で、15分~8時間かけて行われる。前記工程はより好ましくは、50~90℃で30分~4時間かけて行われる。前記工程は最も好ましくは、75~90℃で1~4時間かけて行われる。
【0066】
任意の工程
非カチオン性外側被覆
本発明による方法は、カチオン性ポリマーを添加してマイクロカプセルに外側被覆を形成するさらなる工程を含まない。
【0067】
しかし本発明の特定の一実施形態によれば、工程4)の終了時に本発明のスラリーに非イオン性多糖類を添加して、マイクロカプセルに外側被覆を形成してもよい。
【0068】
非イオン性多糖類ポリマーは、当業者に周知である。好ましい非イオン性多糖類は、ローカストビーンガム、キシログルカン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアー、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される。
【0069】
本発明の上記実施形態のいずれか1つによれば、上記のポリマーが、約0~5質量%、またはさらに約0.1~2質量%に含まれる量で添加され、ここで、パーセンテージは、工程4)後に得られたスラリーの全質量に対する質量/質量ベースで表される。当業者には、前記添加されたポリマーの一部のみがマイクロカプセルのシェルに組み込まれ/該シェル上に堆積されることが明確に理解される。
【0070】
乾燥
一実施形態によれば、上記の方法により得られたスラリーを例えば噴霧乾燥のような乾燥に供することで、そのままの、すなわち粉末形態のマイクロカプセルを得ることができる。こうした乾燥の実施には、当業者に知られている任意の標準的な方法を適用してよいことが理解される。
【0071】
特に、当業者であれば、乾燥に適した方法を、特にマイクロカプセルのサイズに従って選択することができよう。
【0072】
一例として、粉末形態のマイクロカプセルを得るためにスラリーを噴霧乾燥することができ、これは好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、天然または化工デンプン、植物ガム、ペクチン、キサンタン、アルギン酸塩、カラギーナンまたはセルロース誘導体のようなポリマー担体材料の存在下で行われる。
【0073】
上記実施形態のいずれかに定義された方法により得ることができるマイクロカプセルスラリーまたはマイクロカプセル粉末は、本発明のもう1つの対象である。
【0074】
本発明のもう1つの対象は、ポリ尿素系マイクロカプセルスラリーであって、前記マイクロカプセルスラリーはマイクロカプセルを含み、該マイクロカプセルはコアシェル形のモルホロジーを有し、かつ
- 疎水性活性成分を含む油系コアと、
- ポリアミンまたはアミンの不在下で、少なくとも3つのイソシアネート官能基を含む少なくとも1種のポリイソシアネートと上記の乳化剤とから形成された重合ポリイソシアネートから実質的になるシェルと
を含むマイクロカプセルスラリーにおいて、前記マイクロカプセルは、カチオン性被覆を含まない、マイクロカプセルスラリーである。
【0075】
本発明によれば、該マイクロカプセルは、メラミン-ホルムアルデヒド不含である。
【0076】
ポリイソシアネートが膜を形成する性質を示すにもかかわらず、そして該方法の間に使用されるポリイソシアネートの量が限られていることを考慮すると、このような膜は比較的薄いにもかかわらず、本発明のカプセルは、困難を伴う媒体における安定性の点で極めて良好な性能を示すとともに、良好な嗅覚性能を示す。
【0077】
本発明のもう1つの対象は、
(i)上記で定義されたマイクロカプセルであって、前記油は芳香剤を含むものとするマイクロカプセルと、
(ii)香料担体、香料補助成分およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
(iii)任意に、少なくとも1種の香料補助剤と
を含む、付香組成物である。
【0078】
液体の香料担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系または香料に一般的に使用される溶媒を挙げることができる。香料に一般的に使用される溶媒の性質および種類については、全てのものを余すことなく詳細に記載できるものではない。ただし非限定的な例として、ジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノールまたはクエン酸エチルといった溶媒を挙げることができ、これらが最も一般的に使用されている。香料担体および香料補助成分の双方を含む組成物について、先に明記したもの以外の適切な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン類または他のテルペン類、イソパラフィン類、例えば商標Isopar(登録商標)(供給元・Exxon Chemical)で知られているもの、またはグリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類、例えば商標Dowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)で知られているものであってもよい。「香料補助成分」とは本明細書では、快楽的な作用を付与する付香調製物または組成物において使用される化合物であって、上記で定義されたマイクロカプセルではないものを意味する。すなわち、付香成分であると考えられるべきこのような補助成分は、単に匂いを有しているものとしてではなく、組成物にポジティブな、または心地よい匂いを付与するか、あるいは組成物の匂いをポジティブに、または心地よいように変更できるものとして、当業者には認識されるはずである。
【0079】
付香組成物中に存在する香料補助成分の性質および種類について、本明細書はこれ以上詳細な記載を保証するものではないが、いずれにせよ全てのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、当業者であれば、自身の一般知識に基づき、また用途および所望の感覚受容作用に従って、それらを選択することができるであろう。一般的に言えば、これらの香料補助成分は、アルコール類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペノイド類、含窒素複素環式化合物または含硫黄複素環式化合物および精油といった様々な化学種に属し、また該香料補助成分は、天然由来のものであっても合成由来のものであってもよい。こうした補助成分の多くは、いずれにせよ、S.Arctanderによる著作Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはその最新版のような参考文献、または類似の性質の他の論文、および香料分野の多数の特許文献に列記されている。また前記補助成分は、様々な種類の付香化合物を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0080】
「香料補助剤」とは本明細書においては、色、特定の耐光性、化学的安定性などのさらに付加された有益性を付与し得る成分を意味する。付香ベースにおいて一般的に使用される補助剤の性質および種類については、全てのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、前記成分は当業者に周知であることに言及する必要がある。
【0081】
好ましくは本発明による付香組成物は、上記で定義されたマイクロカプセルを0.05~30質量%、好ましくは0.1~30質量%含む。
【0082】
本発明のマイクロカプセルを、多くの適用分野および消費者製品において有利に使用することができる。マイクロカプセルは、液体の消費者製品に適用可能な液体形態で使用することも、粉末の消費者製品に適用可能な粉末形態で使用することも可能である。
【0083】
本発明のもう1つの対象は、液体の消費者製品であって、
a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全質量に対して2~65質量%と、
b)水または水混和性の親水性有機溶媒と、
c)上記で定義されたマイクロカプセルと、
d)任意に、封入されていない芳香剤と
を含む、液体の消費者製品である。
【0084】
粉末の消費者製品であって、
(a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全質量に対して2~65質量%と、
(b)上記で定義されたマイクロカプセルと、
(c)任意に、上記で定義されたマイクロカプセルとは異なる芳香剤粉末と
を含む粉末の消費者製品も、本発明による対象である。
【0085】
芳香剤の油系コアを含むマイクロカプセルの場合、本発明の製品は特に、付香された消費者製品、例えばファインフレグランスまたは「機能性」香料に属する製品に使用されるものであり得る。機能性香料としては特に、ヘアケア、ボディクレンジング、スキンケア、衛生ケアを含むパーソナルケア製品ならびに洗濯ケアおよび空気ケアを含むホームケア製品が挙げられる。したがって本発明のもう1つの対象は、上記で定義されたマイクロカプセルまたは上記で定義された付香組成物を付香成分として含む、付香された消費者製品からなる。前記消費者製品の芳香要素は、上記で定義された芳香剤マイクロカプセルと、自由な状態の、または封入されていない芳香剤と、本明細書に開示されたもの以外の種類の芳香剤マイクロカプセルとの組合せであり得る。
【0086】
特に、液体の消費者製品であって、
a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全質量に対して2~65質量%と、
b)水または水混和性の親水性有機溶媒と、
c)上記で定義された付香組成物と
を含む液体の消費者製品は、本発明のもう1つの対象である。
【0087】
また、粉末の消費者製品であって、
(a)少なくとも1種の界面活性剤を、該消費者製品の全質量に対して2~65質量%と、
(b)上記で定義された付香組成物と
を含む粉末の消費者製品も、本発明の一部である。
【0088】
したがって、本発明のマイクロカプセルを、そのまま添加することも、付香された消費者製品中の本発明の付香組成物の一部として添加することもできる。
【0089】
明確にするために述べると、「付香された消費者製品」とは、様々な有益性の中でも、付香作用を、適用される表面(例えば、皮膚、毛髪、布地、紙または家庭における表面)または空気中に(エアフレッシュナー、消臭剤など)送達することが期待される消費者製品を意味することに言及する必要がある。すなわち、本発明による付香された消費者製品とは、「ベース」とも呼ばれる機能性配合物を、有益な作用剤とともに、その中でも有効量の本発明によるマイクロカプセルとともに含む製品である。
【0090】
付香された消費者製品の他の構成要素の性質および種類について、本明細書はこれ以上詳細な記載を保証するものではないが、いずれにせよ全てのものを余すことなく詳細に記載できるものではなく、当業者であれば、自身の一般知識に基づき、また該製品の性質および所望の作用に従って、それらを選択することができる。本発明のマイクロカプセルを組み込むことができる消費者製品のベース配合物は、このような製品に関する多数の文献に記載されている。これらの配合物については、本明細書ではより詳細な記載は保証されないが、いずれにせよ全てのものを余すことなく詳細に記載できるものではない。このような消費者製品を配合する当業者であれば、自身の一般的な知識および利用可能な文献に基づいて、適切な成分を完全に選択することができる。
【0091】
適切な香料消費者製品の非限定的な例は、芳香剤、例えばファインパフューム、コロンまたはアフターシェーブローション;布地ケア製品、例えば液体または固体の洗剤、タブレットおよびポッド、布地柔軟剤、乾燥機用シート、布地リフレッシャー、アイロン水または漂白剤;ボディケア製品、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー、ヘアコンディショナー、カラーリング調製物またはヘアスプレー)、化粧調製物(例えば、バニシングクリーム、ボディローションまたは消臭剤もしくは発汗抑制剤)またはスキンケア製品(例えば、付香された石鹸、シャワーもしくはバスムース、ボディウォッシュ、オイルもしくはジェル、バスソルトまたは衛生製品);空気ケア製品、例えばエアフレッシュナーまたは「すぐに使用可能な」粉末状エアフレッシュナー;またはホームケア製品、例えば万能クリーナー、液状もしくは粉末状またはタブレット状の台所洗剤製品、トイレクリーナーまたは種々の表面を清浄化するための製品、例えば布地または硬質表面(床、タイル、石目床など)の処理/リフレッシュを目的としたスプレー&ワイプ、衛生製品、例えば生理用ナプキン、おむつ、トイレットペーパーであり得る。特定の一実施形態によれば、消費者製品は、シャンプー、シャワージェル、リンスオフコンディショナー、固形石鹸、粉末状または液状の洗剤、布地柔軟剤および床用クリーナーからなる群から選択される。
【0092】
消費者製品は好ましくは、本発明のマイクロカプセルを0.05質量%、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.2~5質量%含み、ここで、これらのパーセンテージは、該消費者製品の全質量に対する質量により定められる。当然のことながら、上記濃度を、各製品に望まれる嗅覚作用に従って適合させてもよい。
【0093】
本発明のカプセルは、具体的かつ有利には、著量の界面活性剤を含有する消費者製品において安定であることが判明し、より具体的には、ポリイソシアネートの重合を誘発すべくアミンを使用して製造されたカプセルと比較して安定性の向上を示すことが実証された。
【0094】
ここで、本発明を実施例によりさらに説明する。特許請求の範囲に記載された本発明は、これらの実施例により何ら限定されることを意図するものではないことを認識されたい。
【実施例
【0095】

注記:
カプセルA~H、J、KおよびLは、本発明によるカプセルである。
【0096】
カプセルI、MおよびNは、比較を目的とした本発明の範囲外のものである。
【0097】
例1
カプセルA~Iの製造
マイクロカプセルA~Iを、下記成分により製造した:
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
カプセルA~Iのカプセル壁を構成するのに使用した可変的な量のポリイソシネートおよび芳香剤を、以下の表3にまとめる:
【表3】
【0100】
マイクロカプセルA~Iの製造方法
可変的な量のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、供給元Mitsui Chemicalsの商標)と可変的な量の香油Aとを、表1および3に定めた量で混合することにより、油相を調製した。
【0101】
アラビアガムを水に溶解させることにより、水相を調製した。この水相に撹拌装置を用いて230rpmで芳香剤/ポリイソシアネートプレミックス油を分散させて、エマルションを調製した。このエマルションのpHを測定したところ、6.7であった。温度を70℃に上げ、70℃で1時間30分保持してこれらのカプセルを硬化させた。この時点でカプセルが形成され、これは架橋されて安定であった。この混合物を静置して、室温まで冷却した。
【0102】
カプセルI(本発明によらない)について、ポリアミン(炭酸グアニジン)を水相に添加し、その後、温度を70℃に上げた。これにより、界面でこれがポリイソシアネートと反応してポリ尿素を形成することができた。Takenate(登録商標)D-110Nの封入および使用によりカプセル壁を形成した後に、香油中の未反応ポリイソシアネートの残留レベルは非常に低く、したがって、カプセルの内側コアは、実質的に香油から構成されていた。
【0103】
カプセルのサイズ分布を、光学顕微鏡法および光散乱法(Mastersizer 3000,Malvern)により制御した。
【0104】
例2
カプセルJの製造
1.6gのポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、供給元Mitsui Chemicalsの商標)を25.4gの香油A(表2に定めた組成物)と混合することにより、油相を調製した。
【0105】
0.1gのテンサイペクチン(供給元CP Kelco)を72.36gの水に溶解させることにより、水相を調製した。この水相に撹拌装置を用いて230rpmで芳香剤/ポリイソシアネートプレミックス油を分散させて、エマルションを調製した。温度を70℃に上げ、70℃で1時間30分保持してこれらのカプセルを硬化させた。この時点でカプセルが形成され、これは架橋されて安定であった。この混合物を静置して、室温まで冷却した。
【0106】
Takenate(登録商標)D-110Nの封入および使用によりカプセル壁を形成した後に、香油中の未反応ポリイソシアネートの残留レベルは非常に低く、したがって、カプセルの内側コアは、実質的に香油から構成されていた。
【0107】
カプセルのサイズ分布は640μmであり、これを光学顕微鏡法および光散乱法(Mastersizer 3000,Malvern)により制御した。
【0108】
例3
カプセルKの製造
2.2gのポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、供給元Mitsui Chemicalsの商標)を19.6gの香油A(表2に定めた組成)と混合することにより、油相を調製した。
【0109】
1.2gの化工デンプン(Hicap-100(登録商標)、供給元Ingredion Inc.)を76.7gの水に溶解させることにより、水相を調製した。この水相に撹拌装置を用いて230rpmで芳香剤/ポリイソシアネートプレミックス油を分散させて、エマルションを調製した。温度を70℃に上げ、70℃で1時間30分保持してこれらのカプセルを硬化させた。この時点でカプセルが形成され、これは架橋されて安定であった。この混合物を静置して、室温まで冷却した。
【0110】
Takenate(登録商標)D-110Nの封入および使用によりカプセル壁を形成した後に、香油中の未反応ポリイソシアネートの残留レベルは非常に低く、したがって、カプセルの内側コアは、実質的に香油から構成されていた。
【0111】
このカプセルのサイズ分布は540μmであり、これを光学顕微鏡法および光散乱法(Mastersizer 3000,Malvern)により制御した。
【0112】
例4
本発明によるカプセルの安定性能
本発明によるカプセルの安定性を、シャワージェルにおいて実験した。使用したモデルとなるシャワージェルベースは、脱イオン水50%、増粘剤(アクリレート/ベヘネス-25 メタクリレートコポリマー、Lubrizolより入手可能)5%、界面活性剤(パレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタイン)43%、保存剤(安息香酸ナトリウム)0.5%から構成されており、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を使用してpH値を調節する。シャワージェルベース中の封入芳香剤濃度は、0.44%に相当していた。
【0113】
カプセルから漏出した芳香剤の量を測定した。
【0114】
結果を、表4にまとめる。
【0115】
【表4】
【0116】
これらの結果から、本発明のカプセルが、ポリイソシアネートの濃度、芳香剤の濃度またはカプセルのサイズにかかわらず、シャワージェルベースに適していることが明らかである。
【0117】
比較例5
本発明によるカプセル(カプセルE)の安定性能およびカプセルI(本発明によらない)との比較
カプセルE(アミン不使用)および比較カプセルI(アミン使用)の安定性を、シャワージェルにおいて比較した。使用したモデルとなるシャワージェルベースは、脱イオン水50%、増粘剤(アクリレート/ベヘネス-25 メタクリレートコポリマー、Lubrizolより入手可能)5%、界面活性剤(パレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタイン)43%、保存剤(安息香酸ナトリウム)0.5%から構成されており、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を使用してpH値を調節する。
【0118】
シャワージェルベース中の封入芳香剤濃度は、0.44%に相当していた。
【0119】
カプセルから漏出した芳香剤の量を測定した。
【0120】
結果を、表5にまとめる。
【0121】
【表5】
【0122】
これらの安定性データは、プロセス時にアミンを使用しないことによって、高濃縮された界面活性剤媒体に供した際のカプセルの安定性能が顕著に向上することを明示している。
【0123】
したがって本発明によって、費用対効果が高いだけでなく時間もかからない最適化された方法が提供される。
【0124】
例6
本発明によるカプセル(カプセルE)の嗅覚性能およびカプセルI(本発明の一部ではない)との比較
以下の組成:脱イオン水50%、増粘剤(アクリレート/ベヘネス-25 メタクリレートコポリマー、Lubrizolより入手可能)5%、界面活性剤(パレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタイン)43%、保存剤(安息香酸ナトリウム)0.5%を有する配合シャワージェルベースにカプセルを分散させ、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を使用してpH値を調節する。
【0125】
シャワージェルベース中の封入芳香剤濃度は、0.20%に相当する。
【0126】
評価プロトコル:8名の専門家パネリストによる
1)カプセルを含有する各シャワージェル1mlを、前腕に塗布する。
2)1~7の等級で香り強度を評価する。
3)数秒間の泡立て工程。1~7の等級で香り強度を新たに評価する。
【0127】
評価等級:(香り強度):1=香り・匂いなし;2=かろうじて検出可能;3=弱い;4=中程度;5=やや強い;6=強い;7=非常に強い。
【0128】
結果
結果を、図1に示す。
【0129】
以下のように結論付けることができる:
1)泡立ち前には、香り強度は、本発明によるカプセルEの場合よりもカプセルI(アミンを使用することにより製造)の場合の方が高い。
2)泡立ち段階後には、カプセルIおよびEはどちらも同様の性能を示す。
【0130】
結論
これらの結果は、泡立ち前にカプセルIから多量の芳香剤が漏出したことを意味するため、比較例5に開示された安定性の結果と一致している。
【0131】
例7
自由な状態の油+本発明によるカプセル(カプセルB)の嗅覚性能および自由な状態の油のみの場合との比較
評価プロトコル(20名のパネリスト):
1)全体的な香り強度および2)シトラス強度をシャワー/バスキャビンにて以下の3段階で評価:
1)(容器から)そのまま。
2)シャワー中→パネリストは、通常量の製品を使用して自身の身体を洗い、泡立ち工程の評価中はシャワーを止める。
3)シャワー後→パネリストは、バスルームまたはシャワーキャビンから1分間出て、その後に戻って最終強度を評価する。
【0132】
香り強度およびシトラス強度:標識なしの連続した目盛線で評価した。0=匂いの知覚不可能な属性、および10=所与の属性について非常に強力な強度。
【0133】
データ分析:スチューデント検定(α=0.05、対応あり)
同一の文字の平均は、有意差なし(α=0.05)
エラーバーは、95%信頼区間を示す。
【0134】
使用したモデルとなるシャワージェルベースは、脱イオン水50%、増粘剤(アクリレート/ベヘネス-25 メタクリレートコポリマー、Lubrizolより入手可能)5%、界面活性剤(パレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタイン)43%、保存剤(安息香酸ナトリウム)0.5%から構成されており、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を使用してpH値を調節する。
【0135】
サンプルX1は、0.50質量%の自由な状態の油(芳香剤A)のみを含む。一方で本発明によるサンプルX2は、0.50質量%の自由な状態の油と、2%のマイクロカプセルB(0.39%の封入香油)とを含む。
【0136】
結果を、図2に示す。
【0137】
これらの結果は、容器からそのまま嗅いだ場合、サンプルX2は、自由な状態の油のみを含むサンプルX1と同等の全体強度およびシトラス強度を有することを明示している。
【0138】
しかし、
- 腕で泡立てると、サンプルX2は、自由な状態の油のみ(サンプルX1)より、シトラスが有意に強い。
- バス/シャワーキャビンでは、サンプルX2は、自由な状態の油のみ(サンプルX1)よりも、シトラスおよび全体の香りのどちらも有意により強いままであると知覚される。
【0139】
これらの結果から、自由な状態の油のみを含む組成物と比較して、自由な状態の油と本発明によるカプセルとを含む組成物について、より良好な嗅覚性能が得られると結論付けることができる。
【0140】
例8
シャワージェルにおける本発明によるカプセル(カプセルBおよびカプセルK)の嗅覚性能
以下の組成:脱イオン水50%、増粘剤(アクリレート/ベヘネス-25 メタクリレートコポリマー、Lubrizolより入手可能)5%、界面活性剤(パレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタイン)43%、保存剤(安息香酸ナトリウム)0.5%を有する配合シャワージェルベース中にカプセルを分散させ、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を使用してpH値を調節する。
【0141】
シャワージェルベース中の封入芳香剤濃度は、0.20%に相当する。
【0142】
評価プロトコル:8名の専門家パネリストによる
1)(容器から)そのまま。
2)カプセルを含有する各シャワージェル1mlを、前腕に塗布する。
3)1~7の等級で香り強度を評価する。
4)数秒間の泡立て工程。1~7の等級で香り強度を新たに評価する。
【0143】
評価等級:(香り強度):1=香り・匂いなし;2=かろうじて検出可能;3=弱い;4=中程度;5=やや強い;6=強い;7=非常に強い。
【0144】
結果を、図3に示す。
【0145】
本発明によるカプセルを用いた場合には、乳化剤の性質にかかわらず良好な嗅覚性能が得られると結論付けることができる。
【0146】
例9
キッチンワイプにおける本発明によるカプセルの嗅覚性能
試験プロトコル:
カプセルBを、標準的な香料入りキッチンワイプに0.1%の供給量で添加した(サンプルA)。床用タイルに使用したワイプおよび空気に放出された香り強度を参照(ベンチマーク:標準的なワイプ)と比較し、ワイプ後に5名のパネリストにより評価した。
【0147】
結果:
図4に示すように、本発明によるカプセルを含むサンプル(サンプルA)によって、標準的な香料入りワイプよりも非常に強力な香り強度(++)が送達される。ワイプ後2時間たっても強度は強力なままであることが分かる。
【0148】
例10
APデオ(AP/Deo)におけるカプセルの嗅覚性能
本発明によるカプセルLの製造
1.23gのポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、供給元Mitsui Chemicalsの商標)を20.52gの香油B(表6に定めた組成物)と混合することにより、油相を調製した。
【0149】
1.21gのアラビアガム(供給元CP Kelco)を76.67gの水に溶解させることにより、水相を調製した。この水相に、撹拌装置を用いて1030rpmで芳香剤/ポリイソシアネートプレミックス油を分散させることにより、エマルションを調製した。温度を70℃に上げ、70℃で1時間30分保持してこれらのカプセルを硬化させた。この時点でカプセルが形成され、これは架橋されて安定であった。この混合物を静置して、室温まで冷却した。
【0150】
Takenate(登録商標)D-110Nの封入および使用によりカプセル壁を形成した後に、香油中の未反応ポリイソシアネートの残留レベルは非常に低く、したがって、カプセルの内側コアは、実質的に香油から構成されていた。
【0151】
カプセルのサイズ分布は75マイクロメートルであり、これを光学顕微鏡法および光散乱法(Mastersizer 3000,Malvern)により制御した。
【0152】
【表6-1】
【0153】
【表6-2】
【0154】
比較カプセルMおよびN(本発明によらない)の製造
比較カプセルM
2.05gのポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、供給元Mitsui Chemicalsの商標)を、40.94gの香油B(表6に定めた組成物)と混合することにより、油相を調製した。
【0155】
1.0gのアラビアガム(供給元CP Kelco)を54.8gの水に溶解させることにより、水相を調製した。この水相に、撹拌装置を用いて750rpmで芳香剤/ポリイソシアネートプレミックス油を分散させて、エマルションを調製した。
【0156】
次いでこのエマルションに、0.43gの水に溶解させた0.16gの炭酸グアニジン(供給元:Fluka)を添加した。
【0157】
温度を80℃に上げ、80℃で2時間保持してこれらのカプセルを硬化させた。この時点でカプセルが形成され、これは架橋されて安定であった。この混合物を静置して、室温まで冷却した。
【0158】
Takenate(登録商標)D-110Nの封入および使用によりカプセル壁を形成した後に、香油中の未反応ポリイソシアネートの残留レベルは非常に低く、したがって、カプセルの内側コアは、実質的に香油から構成されていた。
【0159】
カプセルのサイズ分布は76マイクロメートルであり、これを光学顕微鏡法および光散乱法(Mastersizer 3000,Malvern)により制御した。
【0160】
比較カプセルN
4.92gのポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、Takenate(登録商標)D-110N、供給元Mitsui Chemicalsの商標)を38.6gの香油B(表6に定めた組成物)と混合することにより、油相を調製した。
【0161】
0.53gのポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)18-88、供給元Fluka)を、54.37gの水に溶解させることにより、水相を調製した。この水相にロータ/ステータシステムを用いて芳香剤/ポリイソシアネートプレミックス油を分散させてエマルションを調製した。撹拌の時間および速度を調節して、所望のサイズ分布のエマルションを得た。
【0162】
このエマルションの調製後、プロセスの終了まで撹拌を撹拌装置により400rpmで継続した。
【0163】
次いでこのエマルションに、2.3gの水に溶解させた0.9gの炭酸グアニジン(供給元:Fluka)を1時間かけて添加した。
【0164】
温度を70℃に上げ、70℃で2時間保持してこれらのカプセルを硬化させた。この時点でカプセルが形成され、これらは架橋されて安定であった。この混合物を静置して、室温まで冷却した。
【0165】
Takenate(登録商標)D-110Nの封入および使用によりカプセル壁を形成した後に、香油中の未反応ポリイソシアネートの残留レベルは非常に低く、したがって、カプセルの内側コアは、実質的に香油から構成されていた。
【0166】
カプセルのサイズ分布は75マイクロメートルであり、これを光学顕微鏡法および光散乱法(Mastersizer 3000,Malvern)により制御した。
【0167】
APロールオン(AP Roll on)ベースの調製
予め75℃に温めておいたBRIJ 72(3.25g,Croda,英国)、BRIJ 721(0.75g,Croda,英国)およびARLAMOL E(4.00g,Croda,英国)の混合物を、撹拌下に水(51.00g)に添加した。この混合物を10分間均質化させ、次いで撹拌下に室温まで冷却した。LOCRON L(40.00g,Clariant,スイス国)を45℃でゆっくり添加し、この混合物を室温で保持した(表7参照)。本発明のカプセル分散液(約2.60g)を35℃で添加することにより、白色の液体エマルションを得た。このエマルションは、0.24%の封入香油と同一の濃度を有しており、これは、カプセルLについては1.17%のカプセルスラリーに相当し、カプセルMについては0.59%のカプセルスラリーに相当し、中性の匂い(pH4.2~4.7)および1000~2500cPsの粘度(製造の24~48時間後に測定)を有していた。
【0168】
【表7】
【0169】
A - 安定性能
カプセルLおよび比較カプセルMの安定性能を、APロールオンベース中で(サンプルを3℃および45℃で貯蔵)3ヶ月後に評価した。この評価を、20名のパネリストにより、フレグランスブロッター上で擦る前および擦った後に行った。
【0170】
評価等級:(香り強度):1=香り・匂いなし;2=かろうじて検出可能;3=弱い;4=中程度;5=やや強い;6=強い;7=非常に強い。
【0171】
結果を、図5に示す。
【0172】
カプセルL中にアミンが存在しないことは、Apデオロールオンにおける本発明によるマイクロカプセルの嗅覚性能に影響を及ぼさないと結論付けることができる。
【0173】
B - 嗅覚性能
APデオロールベース(表7参照)の塗布使用時の嗅覚香り強度を、カプセルLおよび比較カプセルNについて評価した。この評価を、24名のパネリストにより、塗布後の種々の時間で行った。
【0174】
評価等級:(香り強度):1=香り・匂いなし;2=かろうじて検出可能;3=弱い;4=中程度;5=やや強い;6=強い;7=非常に強い。
【0175】
結果を、図6に示す。
【0176】
カプセルL中にアミンが存在しないことは、Apデオベースにおける本発明によるマイクロカプセルの嗅覚性能に影響を及ぼさないと結論付けることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6