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特許7416630杭の載荷試験方法および杭の載荷試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】杭の載荷試験方法および杭の載荷試験装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20240110BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20240110BHJP
   E02D 33/00 20060101ALI20240110BHJP
   E02D 7/22 20060101ALI20240110BHJP
   E02D 7/28 20060101ALI20240110BHJP
   E02D 13/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E02D1/02
E02D5/28
E02D33/00
E02D7/22
E02D7/28
E02D13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020004113
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110195
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 栄
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌敏
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】古谷 浩平
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-197452(JP,A)
【文献】特開平11-303069(JP,A)
【文献】特開平09-242068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/115
E02D 5/22- 5/80
E02D 33/00
E02D 7/00-13/10
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭本体と、掘削羽根を有し前記杭本体の先端部に嵌合する羽根付き回転部とを備える先端羽根付き鋼管杭を用いた杭の載荷試験方法であって、
前記杭本体の内部に挿入される施工治具を前記羽根付き回転部に連結する工程と、
前記施工治具から前記羽根付き回転部に回転トルクを伝達して前記羽根付き回転部を地中に回転貫入させながら、前記杭本体を地中に圧入することによって前記先端羽根付き鋼管杭を所定の深さまで打設する工程と、
前記羽根付き回転部に鉛直荷重または引張荷重を加える工程と
を含み、
前記施工治具は、前記羽根付き回転部に連結可能な連結部と、前記連結部に回転トルクを伝達する管状部とを有し、
前記羽根付き回転部は、前記杭本体の先端部に挿入される挿管部を有し、
前記連結部および前記管状部の外径は、前記挿管部の内径に対応する杭の載荷試験方法。
【請求項2】
前記施工治具を用いて前記羽根付き回転部に前記鉛直荷重または前記引張荷重を加える、請求項1に記載の杭の載荷試験方法。
【請求項3】
前記施工治具を前記杭本体の内部から撤去する工程と、
前記杭本体の内部に前記施工治具とは別の試験用治具を挿入する工程と
をさらに含み、
前記試験用治具を用いて前記羽根付き回転部に前記鉛直荷重または前記引張荷重を加える、請求項1に記載の杭の載荷試験方法。
【請求項4】
杭本体と、
掘削羽根を有し前記杭本体の先端部に嵌合する羽根付き回転部と、
前記杭本体の内部に挿入されて前記羽根付き回転部に連結され、前記羽根付き回転部に回転トルク、および鉛直荷重または引張荷重の少なくともいずれかを伝達することが可能な施工治具と
を備え
前記施工治具は、前記羽根付き回転部に連結可能な連結部と、前記連結部に回転トルクを伝達する管状部とを有し、
前記羽根付き回転部は、前記杭本体の先端部に挿入される挿管部を有し、
前記連結部および前記管状部の外径は、前記挿管部の内径に対応する杭の載荷試験装置。
【請求項5】
前記羽根付き回転部は、前記挿管部の内周面に形成される突出部を有し、
前記連結部は、前記挿管部の内部に挿入可能であり、前記連結部の外周面には前記突出部に係合可能な凹部が形成される、請求項に記載の杭の載荷試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の載荷試験方法および杭の載荷試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
杭の支持力特性を算出するために、杭頭部に荷重を加えて杭の先端部荷重を測定する杭頭載荷試験を行うことが一般的である。このような杭頭載荷試験に関する技術として、例えば特許文献1には、載荷桁を頂部に連結した外管内に、摺動可能に内管先端部を外管と同径にして下方に突き出すように遊嵌させた試験杭を構成し、該内管頂部に連結した座と、前記外管に連結した載荷桁の間にジャッキを設置し、外管外周の摩擦抵抗を反力として杭の鉛直支持力を測定する方法が記載されている。このような構成によれば、外管の摩擦抵抗を反力とするため、従来の方法では必須である反力杭を省略するか、または縮小することができる。また、載荷重が杭先端のみに伝達されるので、比較的小さな載荷装置で支持力評価ができる。
【0003】
一方、特許文献2では、試験杭よりも杭径が大きく、かつ試験杭よりも杭長が短く、試験杭が挿入される筒状で支持層まで到達していない反力杭と、反力杭の杭頭に配設され、反力杭に反力を取って試験杭を押込むもしくは引き抜くジャッキと、からなる杭の載荷試験装置が記載されている。このような構成によれば、特殊な形状を有していない一般的な反力杭を使用しながら、反力杭を先端支持層まで貫入させることを必要とせず、狭小なエリアでも杭の載荷試験を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-6775号公報
【文献】特開2017-166137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の技術に対し、本発明者らは、杭本体と、掘削羽根を有し杭本体の先端部に嵌合する羽根付き回転部とを備える先端羽根付き鋼管杭を考案した(特願2019-063935)。このような先端羽根付き鋼管杭を用いた杭の載荷試験方法については、上記の特許文献1および特許文献2には記載されていない。今般、上記の先端羽根付き鋼管杭を用いた杭の載荷試験方法を検討するにあたり、本発明者らは以下のような従来の杭の載荷試験における問題点を解決することを目的とした。
【0006】
従来、杭の載荷試験にあたっては、杭の支持力を算出するために必要な先端部荷重に、杭の周面に作用する摩擦荷重を加えた荷重を杭頭部に加える方法が一般的であった。摩擦荷重が加わることによって杭頭部に加えられる荷重は大きくなり、載荷に用いるジャッキなどの装置が大型化するとともに、大きな荷重に耐えられるように杭を構成する鋼管の板厚も厚くしなければならないため、不経済であった。また、杭の周面摩擦を低減するためにスリップレイヤーを塗布することも行われてきたが、例えば杭を回転させながら打設する際にスリップレイヤーが剥げる可能性があり、またスリップレイヤーを塗布しても周面摩擦は0にはならないため、必ずしも効果的ではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、杭本体と、掘削羽根を有し杭本体の先端部に嵌合する羽根付き回転部とを備える先端羽根付き鋼管杭を用いて、経済的に実施することが可能な杭の載荷試験方法および杭の載荷試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]杭本体と、掘削羽根を有し杭本体の先端部に嵌合する羽根付き回転部とを備える先端羽根付き鋼管杭を用いた杭の載荷試験方法であって、杭本体の内部に挿入される施工治具を羽根付き回転部に連結する工程と、施工治具から羽根付き回転部に回転トルクを伝達して羽根付き回転部を地中に回転貫入させながら、杭本体を地中に圧入することによって先端羽根付き鋼管杭を所定の深さまで打設する工程と、羽根付き回転部に鉛直荷重または引張荷重を加える工程とを含む杭の載荷試験方法。
[2]施工治具を用いて羽根付き回転部に鉛直荷重または引張荷重を加える、[1]に記載の杭の載荷試験方法。
[3]施工治具を杭本体の内部から撤去する工程と、杭本体の内部に施工治具とは別の試験用治具を挿入する工程とをさらに含み、試験用治具を用いて羽根付き回転部に鉛直荷重または引張荷重を加える、[1]に記載の杭の載荷試験方法。
[4]杭本体と、掘削羽根を有し杭本体の先端部に嵌合する羽根付き回転部と、杭本体の内部に挿入されて羽根付き回転部に連結され、羽根付き回転部に回転トルク、および鉛直荷重または引張荷重の少なくともいずれかを伝達することが可能な施工治具とを備える杭の載荷試験装置。
[5]施工治具は、羽根付き回転部に連結可能な連結部と、連結部に回転トルクを伝達する管状部とを有する、[4]に記載の杭の載荷試験装置。
[6]羽根付き回転部は、杭本体の先端部に挿入される挿管部と、挿管部の内周面に形成される突出部とを有し、連結部は、挿管部の内部に挿入可能であり、連結部の外周面には突出部に係合可能な凹部が形成される、[5]に記載の杭の載荷試験装置。
[7]杭本体と、掘削羽根を有し杭本体の先端部に嵌合する羽根付き回転部と、杭本体の内部に挿入されて羽根付き回転部に鉛直荷重または引張荷重の少なくともいずれかを伝達することが可能な試験用治具とを備える杭の載荷試験装置。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、鉛直荷重および引張荷重を伝達しない杭本体の板厚を薄くすることができ、また鉛直荷重または引張荷重は杭本体に作用する周面摩擦力の影響を受けることなく伝達されるため、鉛直荷重または引張荷重を小さくすることができる。さらに、施工治具および試験用治具はいずれも載荷試験の終了後に撤去可能であるため、再利用が可能である。従って、杭の載荷試験を経済的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の一実施形態に係る先端羽根付き鋼管杭の縦断面図である。
図1B図1AのB-B線断面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る施工治具の側面図である。
図2B図2AのB-B線断面図である。
図3】本発明の一実施形態における先端羽根付き鋼管杭と施工治具との連結について説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態において先端羽根付き鋼管杭を地中に打設する工程の例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る先端鉛直載荷試験の例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る先端引張載荷試験の例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る先端鉛直載荷試験の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
図1Aは本発明の一実施形態に係る先端羽根付き鋼管杭の縦断面図であり、図1B図1AのB-B線断面図である。図示されているように、先端羽根付き鋼管杭1は、杭本体2と、掘削羽根31を有し杭本体2の先端部に嵌合する羽根付き回転部3とを備える。
【0013】
杭本体2は、例えば直径が50mmから150mm、板厚が2.3mmから6mmの円形鋼管であり、具体的には例えば一般構造用円形鋼管STK400などが用いられる。杭本体2は、上端に継手部材21を有し、継手部材21を介して他の鋼管(図示せず)に連結されてもよい。継手部材21は、例えば内継手管、外継手管、および連結ピンなどで構成される。
【0014】
羽根付き回転部3は、掘削羽根31を有し、地中で回転することによって地盤を掘削するとともに推進力を得ることが可能な部材である。羽根付き回転部3を地中に回転貫入させながら杭本体2を地中に圧入することによって、先端羽根付き鋼管杭1の全体を地中に貫入させることができる。羽根付き回転部3は、杭本体2の先端部に挿入されるとともに後述する施工治具に連結される挿管部32と、掘削羽根31が取り付けられる掘削管部33と、挿管部32と掘削管部33との間に介挿されるプレート34とをさらに含む。
【0015】
ここで、本実施形態において、羽根付き回転部3は杭本体2の先端部に嵌合している。これは、羽根付き回転部3の挿管部32が杭本体2に挿入されることによって羽根付き回転部3が杭本体2とほぼ同軸の状態を維持しながら回転することが可能であるが、杭本体2の内周面と挿管部32の外周面との間が接合されないために羽根付き回転部3の回転トルクが杭本体2に伝達されないような羽根付き回転部3と杭本体2との関係を意味する。
【0016】
挿管部32は、杭本体2と同様に円形鋼管で形成されるが、回転トルクを伝達するために板厚が杭本体2よりも大きい。例えば、杭本体2の板厚が3.2mmの場合、挿管部32は板厚が5mmの円形鋼管であり、具体的には例えば一般構造用円形鋼管STK400またはSTK490などが用いられる。杭本体2に挿入される挿管部32の長さは、例えば130mm程度である。挿管部32の内周面には、施工治具から回転トルクが伝達される突出部35が設けられる。突出部35は、例えば挿管部32を形成する鋼管の内周面に溶接された矩形断面の棒状鋼材である。図示された例に限られず、例えば円形断面の棒状鋼材で突出部を形成してもよい。
【0017】
掘削管部33は、杭本体2と同程度の外径を有する円形鋼管で形成される。掘削管部33も回転トルクを伝達するために板厚が大きく、具体的には例えば板厚6mmの一般構造用円形鋼管STK400またはSTK490などが用いられる。掘削羽根31は、羽根付き回転部3が杭本体2の先端部に嵌合したときに杭本体2と同軸になるように形成された螺旋羽根であり、掘削管部33の外周面に溶接される。図示された例において掘削羽根31は掘削管部33を1周しない長さを有するが、掘削管部33を1周以上する長さで掘削羽根が設けられてもよく、また掘削羽根が二重螺旋羽根であってもよい。
【0018】
プレート34は、杭本体2の外径よりも大きい直径の円板形の鋼板で形成される。具体的には例えば板厚6mmの一般構造用圧延鋼板SM490AまたはSS400などが用いられる。挿管部32および掘削管部33は、それぞれプレート34の上面および下面に溶接などによって接合される。本実施形態において杭本体2はプレート34に接合されないが、プレート34の外径が杭本体2の外径よりも大きいことによって、先端羽根付き鋼管杭1を地中に貫入させたときに杭本体2と挿管部32との間に土砂が流入するのを防止することができる。
【0019】
なお、後述する例のように、載荷試験時に試験用治具を用いて羽根付き回転部3に鉛直荷重または引張荷重を加える場合、プレート34は荷重に耐えられる板厚で形成される。また、試験用治具を用いて羽根付き回転部3に引張荷重を加える場合、プレート34には試験用治具と係合可能な構造が設けられる。
【0020】
図2Aは本発明の一実施形態に係る施工治具の側面図であり、図2B図2AのB-B線断面図である。図示されているように、施工治具5は、施工機械に取り付け可能な接合部51と、管状部53と、羽根付き回転部3に連結可能な連結部6とを含む。管状部53は、施工機械から接合部51に伝達された回転トルクを、連結部6を介して羽根付き回転部3に伝達する。
【0021】
接合部51は、施工治具5の上端で後述する施工機械のオーガモーターに取り付けられる。具体的には、接合部51は、オーガモーターのキャップ(図示せず)の内部形状に対応した多角形の断面形状(図示された例では六角形だが、三角形や四角形などでもよい)を有し、オーガモーターのキャップに挿入される。これによって、オーガモーターの回転駆動によって生じる回転トルクが管状部53に伝達される。接合部51には、オーガモーターのキャップに固定するためのボルト孔52が設けられてもよい。
【0022】
管状部53は、接合部51に溶接される管状の部分であり、接合部51がある先端羽根付き鋼管杭1の上部から羽根付き回転部3の挿管部32がある先端羽根付き鋼管杭1の下部まで達する長さを有する。図示していないが、管状部53は複数の部分に分割され、途中で連結されていてもよい。管状部53は、回転トルクを伝達するために厚肉の円形鋼管で形成される。ここで、管状部53の板厚は、先端羽根付き鋼管杭1を地中に貫入させるときに羽根付き回転部3を回転させるために必要な回転トルクの大きさを考慮して決定される。なお、本実施形態では杭本体2の内周面と挿管部32の外周面との間が接合されないため、管状部53の板厚を決定するにあたり杭本体2に作用する周面摩擦力は考慮しなくてよい。
【0023】
連結部6は、内管61と外管62とを組み合わせて構成される。内管61は、例えば管状部53と同様に厚肉の円形鋼管で形成され、管状部53と同軸に配置されて溶接などによって管状部53の下端に接合される。外管62は、図2Bに示されるように内管61の外側に配置され、溶接などによって内管61に接合される。外管62の切り欠きによって、凹部63およびゲート部64が形成される。凹部63は連結部6の外周面に形成され、羽根付き回転部3の挿管部32に設けられる突出部35に係合可能である。具体的には、凹部63の管軸方向の寸法は突出部35の長さよりも大きく、凹部63の側面63Aの形状は突出部35の形状に対応する。図示された例では、突出部35が棒状であるため、側面63Aは直線状である。ゲート部64は、連結部6の外周面の下端から凹部63に向けて切り込まれた溝状の部分であり、連結部6が上方から挿管部32の内部に挿入されたときに突出部35を凹部63に導入することが可能なように形成される。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態における先端羽根付き鋼管杭と施工治具との連結について説明するための図である。図示されているように、施工治具5は、先端羽根付き鋼管杭1の杭本体2の内部に挿入される。連結部6が羽根付き回転部3の挿管部32の内部まで挿入されたときに、挿管部32の内周面に設けられる突出部35がゲート部64を通過して凹部63に導入される。その後に連結部6を含む施工治具5を軸回りに回転させることによって、突出部35を凹部63に係合させ、施工治具5を羽根付き回転部3に連結することができる。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態において先端羽根付き鋼管杭を地中に打設する工程の例を示す図である。まず、図4(A)に示すように、施工治具5を杭本体2の内部に挿入し、羽根付き回転部3に連結する。上述のように、羽根付き回転部3と施工治具5とは、施工治具5の連結部6を挿管部32の内部に挿入し、突出部35を凹部63に係合させることによって連結される。
【0026】
次に、図4(B)に示すように、杭打機7のオーガモーター71の回転軸の先端に設けられたキャップと、施工治具5の接合部51とをボルト孔52に挿通されるボルトおよびナットを用いて連結する。さらに、オーガモーター71および圧入機72を上昇させ、所定の杭芯位置に先端羽根付き鋼管杭1を建て込んだ後、オーガモーター71を駆動させて施工治具5を回転させるとともに、圧入機72を用いて杭本体2を地中に圧入する。施工治具5を介して伝達される回転トルクによって羽根付き回転部3が地中に回転貫入し、さらに杭本体2が地中に圧入されることによって、先端羽根付き鋼管杭1の全体が地中に貫入させられる。
【0027】
図4(C)に示すように、先端羽根付き鋼管杭1が所定の深さまで打設されたら、オーガモーター71をそれまでとは逆方向に所定の角度だけ回転させることによって、突出部35と凹部63との係合を解除する。後述する例のように施工治具5を用いて載荷試験を実施する場合、この段階で、つまり突出部35と凹部63との係合を解除する前に載荷試験が実施される。突出部35と凹部63との係合を解除した後、オーガモーター71および圧入機72を引き上げることによって、図4(D)に示すように施工治具5を撤去し、先端羽根付き鋼管杭1を地中に埋設する。後述する別の例のように試験用治具を用いて載荷試験を実施する場合、この段階で、つまり施工治具5を撤去した後に載荷試験が実施される。以上のような工程によって地中に埋設された先端羽根付き鋼管杭1は、例えば軟弱地盤の長期許容鉛直支持力を補強する地盤補強材や、軟弱地盤上に建設される軽量建築物の長期許容支持力を保持する杭として機能する。
【0028】
ここまでで説明したように、本実施形態に係る先端羽根付き鋼管杭1を地中に打設する工程では、羽根付き回転部3を回転させるための回転トルクが施工治具5を介して伝達される。従って、回転トルクを伝達しない杭本体2の板厚を薄くすることができる。回転トルクを伝達する羽根付き回転部3の挿管部32および掘削管部33は厚肉に形成されるが、杭本体2に比べて短い。また、施工治具5は回転トルクを伝達するため厚肉に形成されるが、先端羽根付き鋼管杭1の打設後に撤去されるため、再利用が可能である。従って、本実施形態によれば、先端羽根付き鋼管杭1を経済的に打設することができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、上述したような先端羽根付き鋼管杭1を用いて以下で説明するような杭の載荷試験が実施される。従って、本実施形態において、先端羽根付き鋼管杭1および施工治具5は、杭の載荷試験を実施するための載荷試験装置でもある。
【0030】
図5は、本発明の一実施形態に係る先端鉛直載荷試験の例を示す図である。上記で図4(C)に示したように先端羽根付き鋼管杭1が所定の深さまで打設された時点では、突出部35と凹部63とが係合しているため、施工治具5に加えられた鉛直荷重P1を羽根付き回転部3に伝達することが可能である。図示された例では、先端羽根付き鋼管杭1の打設後に、図5(A)に示されるように施工治具5に鉛直荷重P1を加える。このとき、鉛直荷重P1は施工治具5を介して羽根付き回転部3に伝達されるため、図5(B)に示されるように杭本体2の深さL0は変化せず、羽根付き回転部3だけが鉛直荷重P1によって深さL1から深さL2まで変位量d1だけ押し下げられる。この変位量d1と鉛直荷重P1の大きさとに基づいて、例えば先端羽根付き鋼管杭1の鉛直支持力を算出することができる。
【0031】
図6は、本発明の一実施形態に係る先端引張載荷試験の例を示す図である。上記で図4(C)に示したように先端羽根付き鋼管杭1が所定の深さまで打設された時点では、突出部35と凹部63とが係合しているため、施工治具5に加えられた引張荷重P2を羽根付き回転部3に伝達することが可能である。図示された例では、先端羽根付き鋼管杭1の打設後に、図6(A)および(B)に示されるように杭本体2を深さL0から深さL2まで引き上げ、その後に施工治具5に引張荷重P2を加える。このとき、杭本体2が引き上げられているため、羽根付き回転部3のプレート34は杭本体2に接触せず、従って羽根付き回転部3は図6(C)に示されるように引張荷重P2によって深さL1から深さL3まで変位量d2だけ引き上げられる。この変位量d2と引張荷重P2の大きさとに基づいて、例えば先端羽根付き鋼管杭1の引張支持力を算出することができる。
【0032】
図7は、本発明の一実施形態に係る先端鉛直載荷試験の別の例を示す図である。図示された例では、上記で図4(D)に示したように先端羽根付き鋼管杭1の内部から施工治具5を撤去した後に、施工治具5とは別の試験用治具8を先端羽根付き鋼管杭1の内部に挿入する。図示された例において試験用治具8は棒状である。試験用治具8の直径は突出部35の突出高さを含めた挿管部32の内径よりも小さいため、先端が羽根付き回転部3のプレート34に当接するまで先端羽根付き鋼管杭1の内部に挿入し、試験用治具8を用いて羽根付き回転部3に鉛直荷重を伝達することができる。図7(A)に示されるように、先端をプレート34に当接させた試験用治具8に鉛直荷重P1を加えた場合、図7(B)に示されるように杭本体2の深さL0は変化せず、羽根付き回転部3だけが鉛直荷重P1によって深さL1から深さL2まで変位量d1だけ押し下げられる。この変位量d1と鉛直荷重P1の大きさとに基づいて、例えば先端羽根付き鋼管杭1の鉛直支持力を算出することができる。なお、先端引張載荷試験においても、例えばプレート34と試験用治具8の先端とに係合可能な機構を設けることによって、施工治具5を撤去した後に試験用治具を用いて羽根付き回転部3に引張荷重を伝達し、載荷試験を実施することが可能である。
【0033】
以上で説明したような本実施形態に係る試験方法では、施工治具5または試験用治具8を利用することによって、鉛直荷重P1または引張荷重P2が杭本体2を介することなく羽根付き回転部3に伝達される。従って、鉛直荷重および引張荷重を伝達しない杭本体2の板厚を薄くすることができる。また、鉛直荷重P1または引張荷重P2は施工治具5または試験用治具8を介して杭本体2に作用する周面摩擦力の影響を受けることなく伝達されるため、鉛直荷重P1または引張荷重P2を小さくすることができる。これによって、載荷に用いるジャッキなどの装置が小さくてよくなる。さらに、施工治具5および試験用治具8はいずれも載荷試験の終了後に撤去可能であるため、再利用が可能である。従って、本実施形態によれば、杭の載荷試験を経済的に実施することができる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0035】
1…先端羽根付き鋼管杭、2…杭本体、21…継手部材、3…羽根付き回転部、31…掘削羽根、32…挿管部、33…掘削管部、34…プレート、35…突出部、5…施工治具、51…接合部、52…ボルト孔、53…管状部、6…連結部、61…内管、62…外管、63…凹部、63A…側面、64…ゲート部、7…杭打機、71…オーガモーター、72…圧入機、8…試験用治具。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7