(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240110BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240110BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20240110BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
G01S7/481 A
G01S17/88
G01C3/06 120Q
(21)【出願番号】P 2020043017
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 太一
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/107869(WO,A1)
【文献】特開平11-230740(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039053(WO,A1)
【文献】特開2017-072466(JP,A)
【文献】特開2005-077524(JP,A)
【文献】特表2009-508124(JP,A)
【文献】特開平04-370783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01S 7/481
G01S 17/88
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を測定対象物に照射し、該測定対象物からの反射測距光に基づき前記測定対象物迄の距離を測定する距離測定部を具備し、該距離測定部は前記測距光の発光繰返し周波数及びパルスのピークパワーを少なくとも2つに変更可能な発光素子と、前記測距光を射出する投光光学系と、前記反射測距光を受光素子に受光させる受光光学系とを有し、該受光光学系は、前記反射測距光の光軸に対して挿脱可能な光量調整部材を有し、該光量調整部材は前記発光繰返し周波数及びパルスのピークパワーに対応して前記反射測距光の受光量を調整する様構成され
、
前記受光光学系は、光軸がなす面が角形の受光プリズムを更に有し、該受光プリズムは前記反射測距光を前記受光プリズムの内部で少なくとも3回内部反射させる様構成され、前記反射測距光は、3度目の内部反射の際に前記受光プリズム内に入射した前記反射測距光の光軸及び1度目に内部反射された前記反射測距光の光軸と交差する様構成された測量装置。
【請求項2】
前記受光光学系は、前記測距光を前記反射測距光と同軸に偏向する偏向光学部材を更に有し、該偏向光学部材は前記測距光の入射位置に該測距光の光束と同径又は略同径のビームスプリッタ面が形成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記光量調整部材は、中心部に所定の透過率を有する膜が形成された光量調整面が形成され、該光量調整面以外の部分に反射防止膜が形成された全透過面が形成される様構成された請求項1又は請求項2に記載の測量装置。
【請求項4】
前記光量調整部材は、中心部に反射防止膜が形成された全透過面が形成され、該全透過面以外の部分に所定の透過率を有する膜が形成された光量調整面が形成される様構成された請求項1又は請求項2に記載の測量装置。
【請求項5】
前記受光光学系は、前記反射測距光を集光する受光レンズを更に有し、該受光レンズは中心部の曲率を大きくした多焦点レンズである請求項3に記載の測量装置。
【請求項6】
前記受光光学系は、前記反射測距光を受光する受光レンズを更に有し、該受光レンズは外周部の曲率を大きくした多焦点レンズである請求項4に記載の測量装置。
【請求項7】
前記光量調整部材は、回転軸を介して回転可能な円板状であり、前記光量調整部材は前記反射測距光の光軸に対して合致可能な少なくとも3つの光量調整部を有し、前記光量調整部材の回転により前記光量調整部のうちの1つを前記反射測距光の光軸上に選択的に配置可能
に構成された
請求項1~請求項6のうちのいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項8】
水平回転モータにより水平回転軸を中心に水平回転する托架部と、該托架部に設けられ鉛直回転モータにより鉛直回転軸を中心に鉛直回転し、前記測距光を前記測定対象物に照射すると共に、該測定対象物からの前記反射測距光を前記受光光学系へと入射させる走査鏡と、前記水平回転モータと前記鉛直回転モータと前記距離測定部の駆動を制御する演算制御部とを更に具備し、前記距離測定部は、前記測距光と同軸で追尾光を前記測定対象物に照射する追尾投光光学系と、前記測定対象物からの反射追尾光を追尾受光素子へと導く追尾受光光学系とを更に有し、前記演算制御部は、前記追尾受光素子に対する前記反射追尾光の受光位置に基づき、前記測定対象物を追尾する様前記水平回転モータと前記鉛直回転モータを制御する様構成された
請求項1~請求項7のうちのいずれか1項に記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の3次元座標を取得可能な測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザスキャナやトータルステーション等の測量装置は、測定対象物として反射プリズムを用いたプリズム測距、反射プリズムを用いないノンプリズム測距により測定対象物迄の距離を測定する光波距離測定装置を有している。
【0003】
例えばレーザスキャナで使用されるパルスレーザ光線は、測定対象物の点群測定密度やレーザ安全クラスの制限等に対応してパルスの繰返し周波数を変化させることが求められる。一方で、パルスの繰返し周波数を変化させると、繰返し周波数の変化に対応して、パルスのピークパワーも変化することがある。
【0004】
一般に、測量装置は、測量可能な受光量が決まっており、該受光量を超えると電気系が飽和する。この為、所定のピークパワーを想定して設計した光学系に於いて、パルスの繰返し周波数を小さくし、ピークパワーが想定値よりも大きくなった場合には、受光量が増大する。特に近距離での受光光量が増大し、電気系が飽和するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、近距離を測定した際の電気系の飽和を抑制可能な測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、測距光を測定対象物に照射し、該測定対象物からの反射測距光に基づき前記測定対象物迄の距離を測定する距離測定部を具備し、該距離測定部は前記測距光の発光繰返し周波数及びパルスのピークパワーを少なくとも2つに変更可能な発光素子と、前記測距光を射出する投光光学系と、前記反射測距光を受光素子に受光させる受光光学系とを有し、該受光光学系は、前記反射測距光の光軸に対して挿脱可能な光量調整部材を有し、該光量調整部材は前記発光繰返し周波数及びパルスのピークパワーに対応して前記反射測距光の受光量を調整する様構成された測量装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記受光光学系は、前記測距光を前記反射測距光と同軸に偏向する偏向光学部材を更に有し、該偏向光学部材は前記測距光の入射位置に該測距光の光束と同径又は略同径のビームスプリッタ面が形成された測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記光量調整部材は、中心部に所定の透過率を有する膜が形成された光量調整面が形成され、該光量調整面以外の部分に反射防止膜が形成された全透過面が形成される様構成された測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記光量調整部材は、中心部に反射防止膜が形成された全透過面が形成され、該全透過面以外の部分に所定の透過率を有する膜が形成された光量調整面が形成される様構成された測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記受光光学系は、前記反射測距光を集光する受光レンズを更に有し、該受光レンズは中心部の曲率を大きくした多焦点レンズである測量装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記受光光学系は、前記反射測距光を受光する受光レンズを更に有し、該受光レンズは外周部の曲率を大きくした多焦点レンズである測量装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記受光光学系は、光軸がなす面が4角形の受光プリズムを更に有し、該受光プリズムは前記反射測距光を前記受光プリズムの内部で少なくとも3回内部反射させる様構成された測量装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記光量調整部材は、回転軸を介して回転可能な円板状であり、前記光量調整部材は前記反射測距光の光軸に対して合致可能な少なくとも3つの光量調整部を有し、前記光量調整部材の回転により前記光量調整部のうちの1つを前記反射測距光の光軸上に選択的に配置可能な構成された測量装置に係るものである。
【0015】
更に又本発明は、水平回転モータにより水平回転軸を中心に水平回転する托架部と、該托架部に設けられ鉛直回転モータにより鉛直回転軸を中心に鉛直回転し、前記測距光を前記測定対象物に照射すると共に、該測定対象物からの前記反射測距光を前記受光光学系へと入射させる走査鏡と、前記水平回転モータと前記鉛直回転モータと前記距離測定部の駆動を制御する演算制御部とを更に具備し、前記距離測定部は、前記測距光と同軸で追尾光を前記測定対象物に照射する追尾投光光学系と、前記測定対象物からの反射追尾光を追尾受光素子へと導く追尾受光光学系とを更に有し、前記演算制御部は、前記追尾受光素子に対する前記反射追尾光の受光位置に基づき、前記測定対象物を追尾する様前記水平回転モータと前記鉛直回転モータを制御する様構成された測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測距光を測定対象物に照射し、該測定対象物からの反射測距光に基づき前記測定対象物迄の距離を測定する距離測定部を具備し、該距離測定部は前記測距光の発光繰返し周波数及びパルスのピークパワーを少なくとも2つに変更可能な発光素子と、前記測距光を射出する投光光学系と、前記反射測距光を受光素子に受光させる受光光学系とを有し、該受光光学系は、前記反射測距光の光軸に対して挿脱可能な光量調整部材を有し、該光量調整部材は前記発光繰返し周波数及びパルスのピークパワーに対応して前記反射測距光の受光量を調整する様構成されたので、近距離を測定した際に電気系が飽和するのを抑制することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る測量装置を示す正断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る測量装置の投光光学系及び受光光学系を示す構成図である。
【
図3】(A)は前記受光光学系の偏向光学部材を示す側面図であり、(B)は前記受光光学系の光量調整部材を示す側面図である。
【
図4】光量調整部材を挿脱した際の受光量と距離との関係を示すグラフである。
【
図5】(A)は本発明の第2の実施例に係る測量装置の投光光学系及び受光光学系を示す構成図であり、(B)は前記受光光学系の光量調整部材を示す側面図である。
【
図6】本発明の第3の実施例に係る測量装置の投光光学系及び受光光学系を示す構成図である。
【
図7】本発明の第4の実施例に係る測量装置の投光光学系及び受光光学系を示す構成図である。
【
図8】本発明の第5の実施例に係る測量装置の投光光学系及び受光光学系を示す構成図である。
【
図9】(A)は本発明の第6の実施例に係る測量装置の投光光学系及び受光光学系を示す構成図であり、(B)は前記受光光学系の光量調整部材を示す下面図である。
【
図10】本発明の第7の実施例に係る測量装置の投光光学系及び受光光学系を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0019】
先ず、
図1に於いて、本発明の第1の実施例に係る測量装置について説明する。
【0020】
測量装置1は、例えばレーザスキャナであり、三脚(図示せず)に取付けられる整準部2と、該整準部2に取付けられた測量装置本体3とから構成される。尚、測定はノンプリズム測定が行われる。
【0021】
前記整準部2は整準ネジ10を有し、該整準ネジ10により前記測量装置本体3の整準を行う。
【0022】
該測量装置本体3は、固定部4と、水平回転部である托架部5と、水平回転軸6と、水平回転軸受7と、水平回転駆動部としての水平回転モータ8と、水平角検出部としての水平角エンコーダ9と、鉛直回転軸11と、鉛直回転軸受12と、鉛直回転駆動部としての鉛直回転モータ13と、鉛直角検出部としての鉛直角エンコーダ14と、鉛直回転部である走査鏡15と、操作部と表示部とを兼用する操作パネル16と、演算制御部17と、記憶部18と、距離測定部19等を具備している。尚、前記演算制御部17としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。
【0023】
前記水平回転軸受7は前記固定部4に固定される。前記水平回転軸6は鉛直な軸心6aを有し、前記水平回転軸6は前記水平回転軸受7に回転自在に支持される。又、前記托架部5は前記水平回転軸6に支持され、前記托架部5は水平方向に前記水平回転軸6と一体に回転する様になっている。
【0024】
前記水平回転軸受7と前記托架部5との間には前記水平回転モータ8が設けられ、該水平回転モータ8は前記演算制御部17により制御される。該演算制御部17は、前記水平回転モータ8により、前記托架部5を前記軸心6aを中心に回転させる。
【0025】
前記托架部5の前記固定部4に対する相対回転角は、前記水平角エンコーダ9によって検出される。該水平角エンコーダ9からの検出信号は前記演算制御部17に入力され、該演算制御部17により水平角データが演算される。該演算制御部17は、前記水平角データに基づき、前記水平回転モータ8に対するフィードバック制御を行う。
【0026】
又、前記托架部5には、水平な軸心11aを有する中空の前記鉛直回転軸11が設けられている。該鉛直回転軸11は、前記鉛直回転軸受12を介して回転自在となっている。尚、前記軸心6aと前記軸心11aの交点が、測距光の射出位置であり、前記測量装置本体3の座標系の原点となっている。
【0027】
前記托架部5には、凹部21が形成されている。前記鉛直回転軸11は、一端部が前記凹部21内に延出し、前記一端部に前記走査鏡15が固着され、該走査鏡15は前記凹部21に収納されている。又、前記鉛直回転軸11の他端部には、前記鉛直角エンコーダ14が設けられている。
【0028】
前記鉛直回転軸11に前記鉛直回転モータ13が設けられ、該鉛直回転モータ13は前記演算制御部17に制御される。該演算制御部17は、前記鉛直回転モータ13により前記鉛直回転軸11を回転させ、前記走査鏡15は前記軸心11aを中心に回転される。
【0029】
前記走査鏡15の回転角は、前記鉛直角エンコーダ14によって検出され、検出信号は前記演算制御部17に入力される。該演算制御部17は、検出信号に基づき前記走査鏡15の鉛直角データを演算し、該鉛直角データに基づき前記鉛直回転モータ13に対するフィードバック制御を行う。
【0030】
又、前記演算制御部17で演算された水平角データ、鉛直角データや測定結果は、前記記憶部18に保存される。該記憶部18としては、磁気記憶装置としてのHDD、光記憶装置としてのCD、DVD、半導体記憶装置としてのメモリカード、USBメモリ等種々の記憶手段が用いられる。該記憶部18は、前記托架部5に対して着脱可能であってもよく、或は図示しない通信手段を介して外部記憶装置や外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0031】
前記記憶部18には、測距作動を制御するシーケンスプログラム、測距作動により距離を演算する演算プログラム、水平角データ及び鉛直角データに基づき角度を演算する演算プログラム、距離と角度に基づき所望の測定点の3次元座標を演算するプログラム、光量調整部材(後述)の駆動を制御する為の制御プログラム等の各種プログラムが格納される。又、前記演算制御部17により各種プログラムが実行されることで、各種処理が実行される。
【0032】
前記操作パネル16は、例えばタッチパネルであり、測距の指示や測定条件、例えば測定点間隔の変更等を行う操作部と、測距結果等を表示する表示部とを兼用している。
【0033】
次に、前記距離測定部19について説明する。
【0034】
該距離測定部19は、前記演算制御部17により制御される。発光素子22からパルス光の測距光23(
図2参照)が射出されると、該測距光23は投光光学系24、偏向光学部材25を介して射出される。該偏向光学部材25から射出される前記測距光23の光軸は、前記軸心11aと合致しており、測距光は前記走査鏡15によって直角に偏向される。該走査鏡15が前記軸心11aを中心に回転することで、前記測距光23は前記軸心11aと直交し、且つ前記軸心6aを含む平面内で回転(走査)される。
【0035】
測定対象物で反射された前記測距光23(以下反射測距光26(
図2参照))は、前記走査鏡15に入射し、該走査鏡15で偏向される。該走査鏡15で偏向された前記反射測距光26は、前記偏向光学部材25、受光光学系27を経て受光素子28で受光される。
【0036】
前記距離測定部19は、前記発光素子22の発光タイミングと、前記受光素子28の受光タイミングの時間差(即ち、パルス光の往復時間)と光速に基づき、測距光の1パルス毎に測距を実行する(Time Of Flight)。前記発光素子22は、前記演算制御部により、発光のタイミング、即ちパルス間隔が変更可能となっている。
【0037】
尚、前記距離測定部19には内部参照光光学系(後述)が設けられ、該内部参照光光学系から受光した内部参照光(後述)と前記反射測距光26の受光タイミングの時間差と光速に基づき測距を行うことで、より高精度な測距が可能となる。
【0038】
前記托架部5と前記走査鏡15とがそれぞれ定速で回転し、該走査鏡15の鉛直方向の回転と、前記托架部5の水平方向の回転との協働により、前記測距光23が2次元に走査される。又、パルス光毎の測距により測距データ(斜距離)が得られ、各パルス光毎に前記鉛直角エンコーダ14、前記水平角エンコーダ9により鉛直角、水平角を検出することで、鉛直角データ、水平角データが取得できる。鉛直角データ、水平角データ、測距データとにより、測定対象物に対応する3次元の点群データが取得できる。
【0039】
次に、
図2に於いて、前記投光光学系24及び前記受光光学系27の詳細について説明する。
【0040】
前記投光光学系24は、前記測距光23の光軸(投光光軸29)上に設けられた投光レンズ31、反射鏡32を有している。又、該反射鏡32の反射光軸29a上に前記偏向光学部材25が設けられている。尚、前記投光光学系24は、前記偏向光学部材25を含んでいてもよい。
【0041】
測距光源としての前記発光素子22は、赤外又は近赤外波長のレーザ光線を前記測距光23としてパルス発光する。或は、前記発光素子22は、レーザ光線を前記測距光23としてバースト発光する。前記反射鏡32は、前記測距光23(前記投光光軸29)を前記偏向光学部材25に向って所定の角度で偏向する様構成されている。
【0042】
該偏向光学部材25は、例えば所定の板厚を有する板状のガラスであり、前記反射光軸29aを測距光軸33へと偏向する様構成されている。尚、該測距光軸33は、後述する受光光軸34と同軸となっている。即ち、前記偏向光学部材25は、前記測距光23と前記反射測距光26の共通光路上に設けられ、前記反射光軸29aを前記受光光軸34と同軸に偏向する。
【0043】
図3(A)に示される様に、前記偏向光学部材25の前記測距光23の入射面のうち、中心部にはビームスプリッタ膜が蒸着されたビームスプリッタ面35が形成され、該ビームスプリッタ面35以外の部分には反射防止膜が蒸着された反射防止面36が形成される。尚、前記ビームスプリッタ面35は、前記測距光23が入射する部分にのみ形成されている。即ち、該測距光23の光束は円形状であるが、前記偏向光学部材25は前記反射光軸29aに対して傾斜しているので、前記ビームスプリッタ面35は前記測距光23のビーム径と同等又は僅かに大きい楕円形状となる。更に、前記ビームスプリッタ面35は、例えば80%の光を反射し、20%の光を透過する光学特性を有している。
【0044】
前記受光光学系27は、前記受光光軸34上に設けられた前記偏向光学部材25、所定のNAを有する受光レンズ37、光量調整部材38を有している。
【0045】
該光量調整部材38は、例えば既知の板厚を有する平行平面板のガラスであり、前記受光光軸34と直交する様配置される。又、前記光量調整部材38は、ソレノイド等の駆動機構40により前記反射測距光26の光路(前記受光光軸34)に対して挿脱可能となっている。更に、前記光量調整部材38の直径は、例えば6mm程度であり、該光量調整部材38を挿入した位置での前記反射測距光26のビーム径よりも大きくなっている。
【0046】
図3(B)に示される様に、前記光量調整部材38の前記反射測距光26の入射面のうち、中心部には例えば反射膜が蒸着された光量調整面39が形成され、該光量調整面39以外の部分には反射防止膜が蒸着された全透過面41が形成されている。前記光量調整面39は、例えば前記受光光軸34を中心とした直径1mm程度の円形状となっている。即ち、前記光量調整部材38の前記反射測距光26の入射面のうち、5~10%程度が前記光量調整面となっている。
【0047】
測定対象物で反射された前記反射測距光26は、近距離を測定した場合には中心部の光量が多く、遠距離を測定した場合には周辺部の光量が多くなる様になっている。従って、前記光量調整面39による減光作用は、主に近距離を測定した場合の前記反射測距光26に対して作用する。
【0048】
尚、上記では、前記光量調整面39を反射面としているが、該光量調整面39は、10%~50%の光を透過可能な光学特性を有していればよい。例えば、該光量調整面39は、反射率が80%、透過率が20%の反射膜であってもよいし、吸収率が80%、透過率が20%の吸収膜であってもよい。或は、電圧により任意の透過率に変更可能なエレクトロクロミック素子であってもよい。前記光量調整面39の面積や透過率は、前記測距光23の発光繰返し周波数(出力)や前記受光レンズ37、前記偏向光学部材25の仕様に応じて適宜設定される。
【0049】
又、前記走査鏡15の下方には、窓部42及び再帰反射性を有するリファレンスプリズム43が設けられている。前記窓部42は、前記走査鏡15で反射された前記測距光軸33に対して僅かに傾斜すると共に、前記走査鏡15と一体に回転する様構成されている。
【0050】
又、前記リファレンスプリズム43は、前記走査鏡15を介して前記測距光23を回転照射する過程で、該測距光23が入射する様に構成されている。前記リファレンスプリズム43により再帰反射された前記測距光23は、内部参照光44として前記走査鏡15を介して前記受光光学系27に入射し、前記受光素子28に受光される。
【0051】
ここで、前記発光素子22から前記リファレンスプリズム43迄の光路長、該リファレンスプリズム43から前記受光素子28迄の光路長は既知である。従って、前記リファレンスプリズム43で反射された前記測距光23を前記内部参照光44として利用することができる。前記走査鏡15と前記リファレンスプリズム43とにより内部参照光光学系45が構成される。
【0052】
前記発光素子22から発せられた前記測距光23は、前記投光光学系24、前記偏向光学部材25、前記走査鏡15を介して測定対象物に照射される。測定対象物で反射され、前記走査鏡15を介して前記受光光学系27に入射した前記反射測距光26は、前記受光レンズ37を介して、或は該受光レンズ37及び前記光量調整部材38を介して前記受光素子28に受光される。尚、前記光量調整部材38の板厚は既知である。従って、該光量調整部材38の挿入による生じる前記反射測距光26の光路長の延長は、測定結果から板厚に基づくオフセット値を引くことで容易に補正することができる。
【0053】
前記測量装置1では、測定対象物の色等、測定対象物の性質に応じて前記発光素子22が前記測距光23の発光繰返し周波数及びパルスのピークパワーを変更可能となっている。尚、前記発光素子22の種類によっては、前記測距光23の発光繰返し周波数は、発光繰返し周波数が大きくなる程パルスのピークパワーが小さくなり、発光繰返し周波数が小さくなる程パルスのピークパワーが大きくなる性質を有している。例えば、本実施例では、前記測距光23の発光繰返し周波数が1MHzであればピークパワーは200Wであり、発光繰返し周波数が500kHzであればピークパワーは350Wであり、発光繰返し周波数が100kHzであればピークパワーは1000Wとなる。
【0054】
本実施例では、例えば100kHzと1MHzを切替え可能な前記測距光23の発光繰返し周波数として予め設定している。又、前記受光素子28の許容受光光量は、前記測距光23の発光繰返し周波数が最も大きい時(1MHz)、即ちピークパワーが最も小さい時(200W)の近距離での受光光量で電気系が飽和しない値となる様設定されている。
【0055】
図4は、前記光量調整部材38を前記反射測距光26の光路から取除いた場合、前記測距光23の発光繰返し周波数を変更した場合の、距離と受光量との関係を示している。
【0056】
図4中、曲線46は前記測距光23の発光繰返し周波数を100kHzとし、前記光量調整部材38を前記反射測距光26の光路から取除いた場合の、受光光量と距離との関係を示している。又、
図4中、曲線47は前記測距光23の発光繰返し周波数を100kHzとし、前記光量調整部材38を前記反射測距光26の光路上に挿入した場合の、受光光量と距離との関係を示している。又、
図4中、曲線48は前記測距光23の発光繰返し周波数を1MHzとし、前記光量調整部材38を前記反射測距光26の光路上から取除いた場合の、受光光量と距離との関係を示している。更に、
図4中、破線49は、前記測量装置1に於いて、電気系が飽和しない受光光量を示している。
【0057】
前記曲線46で示される様に、前記測距光23の発光繰返し周波数を100kHzとした場合、前記反射測距光26の光路上に前記光量調整部材38が存在しない状態では、30m以内に近距離に於いて受光光量が前記破線49を上回り、電気系が飽和する。一方で、前記曲線47で示される様に、前記反射測距光26の光路上に前記光量調整部材38が存在している状態では、30m以内の近距離に於いても受光光量が前記破線49を下回り、電気系は飽和しない。
【0058】
又、曲線48で示される様に、前記測距光23の発光繰返し周波数を1MHzとすると、前記反射測距光26の光路上に前記光量調整部材38が存在しない場合であっても、受光光量が前記破線49を下回り、電気系は飽和しない。
【0059】
上述の様に、第1の実施例では、前記反射測距光26の光路に対する前記光量調整部材38の挿脱により、前記受光素子28に対する前記反射測距光26の受光量を調整できるので、前記測距光23の発光繰返し周波数を100kHzから1MHz、或は1MHzから100kHzに変化させた場合であっても、受光光量が前記破線49を上回り、電気系が飽和するのを防止することができる。
【0060】
従って、近距離を測定する場合であっても、測定対象物の色等、測定対象物の性質に対応して前記測距光23の発光繰返し周波数及びパルスのピークパワーを変更することができ、作業性を向上させることができる。
【0061】
又、第1の実施例では、前記測距光23の発光繰返し周波数が最も大きい時の近距離測定により、前記測量装置1の電気系が飽和しない様前記受光素子28の許容受光光量を設定し、前記測距光23の発光繰返し周波数を小さくした時に前記反射測距光26の光路上に前記光量調整部材38を挿入する様に構成されている。
【0062】
従って、使用する発光繰返し周波数を変更する際には、変更した発光繰返し周波数に対応した前記光量調整部材38を変更するだけでよいので、前記測量装置1自体の設計を変更する必要がない。
【0063】
又、第1の実施例では、前記光量調整部材38の中心部のみを前記光量調整面39としているので、近距離測定の際に増大する中心部の前記反射測距光26のみを減光させることができる。
【0064】
従って、遠距離を測定する際の受光光量の低下を最小限に抑えることができるので、測定距離が短くなるのを抑制することができる。
【0065】
又、前記光量調整部材38は既知の板厚を有する平行平面板であり、前記受光光軸34に対して直交する様配置されているので、前記光量調整部材38の挿入により前記受光光軸34が偏向されることがない。
【0066】
更に、前記走査鏡15と一体に回転する前記窓部42は、前記測距光軸33に対して僅かに傾斜しているので、前記窓部42で反射された前記測距光23が前記受光素子28に入射するのを防止することができ、測定精度の向上を図ることができる。
【0067】
次に、
図5(A)、
図5(B)に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、
図5(A)中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
第1の実施例では、ソレノイド等の駆動機構を介して、光量調整部材38を受光光軸34に対して挿脱しているが、第2の実施例では、前記受光光軸34上に円板状の光量調整部材51を設けている。該光量調整部材51は、回転軸52を中心にモータ53により回転可能に構成されている。
【0069】
前記光量調整部材51は、所定の角度間隔で、例えば120°間隔で設けられた第1光量調整部54、第2光量調整部55、第3光量調整部56を有している。前記第1光量調整部54、前記第2光量調整部55、前記第3光量調整部56は、それぞれ円形の平行平面板であり、反射測距光26のビーム径よりも大径となっている。更に、前記光量調整部材51は、前記回転軸52を中心とした回転により、前記第1光量調整部54、前記第2光量調整部55、前記第3光量調整部56のいずれか1つを前記受光光軸34上に選択的に配置できる様構成されている。
【0070】
前記第1光量調整部54は、例えば全面に反射防止膜が設けられた全透過面54aとなっている。前記第2光量調整部55の中心部には、所定の面積と所定の透過率を有する膜が設けられた光量調整面55aが形成され、該光量調整面55a以外の部分には反射防止膜が設けられた全透過面55bが形成されている。又、第3光量調整部56の中心部には、前記光量調整面55aとは面積と透過率が異なる膜が設けられた光量調整面56aが形成され、該光量調整面56a以外の部分には反射防止膜が設けられた全透過面56bが形成されている。
【0071】
前記第1光量調整部54は、全面に於いて減光作用を有さない。即ち、前記光量調整部材38を前記反射測距光26の光路上から取除いた場合と同様の効果を得られる。
【0072】
又、前記第2光量調整部55(前記光量調整面55a)は、例えば前記測距光23の発光繰返し周波数を100kHzとした場合に、近距離でも電気系が飽和しない様に減光する効果を得られる。
【0073】
又、前記第3光量調整部56(前記光量調整面56a)は、例えば前記測距光23の発光繰返し周波数を500kHzとした場合に、近距離でも電気系が飽和しない様に減光する効果を得られる。
【0074】
上述の様に、第2の実施例では、前記光量調整部材51に設けられた前記第1光量調整部54、前記第2光量調整部55、前記第3光量調整部56がそれぞれ異なる減光作用を有し、前記光量調整部材51の回転により前記第1光量調整部54、前記第2光量調整部55、前記第3光量調整部56を前記受光光軸34上に選択的に配置可能に構成されている。
【0075】
従って、電気系を飽和させることなく前記測距光23の3つの発光繰返し周波数を自在に選択することができ、作業性を向上させることができる。
【0076】
尚、第2の実施例では、前記光量調整部材51に3つの光量調整部54,55,56を形成しているが、該光量調整部は4つ以上であってもよいのは言う迄もない。
【0077】
次に、
図6に於いて、本発明の第3の実施例について説明する。尚、
図6中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
第3の実施例では、受光光学系27が、受光レンズ37と光量調整部材38との間に設けられた受光プリズム57を有している。該受光プリズム57は、前記受光光軸34がなす面が4角形のプリズムとなっている。
【0079】
前記受光プリズム57は、前記受光レンズ37を透過した反射測距光26が入射する第1面57aと、該第1面57aの表面を透過した前記反射測距光26が反射する第2面57bと、該第2面57bと前記第1面57aで反射された前記反射測距光26が入射する第3面57cと、該第3面57cで反射された前記反射測距光26が透過する透過面としての第4面57dとを有している。該第4面57dを透過した前記反射測距光26は、受光素子28に入射する。或は前記第4面57dを透過した前記反射測距光26は、前記光量調整部材38を介して前記受光素子28に入射する。
【0080】
第3の実施例に於いては、発光素子22から発せられた測距光23は、前記投光光学系24、偏向光学部材25、前記走査鏡15を介して測定対象物に照射される。測定対象物で反射され、前記走査鏡15を介して受光光学系27に入射した前記反射測距光26は、前記受光レンズ37及び前記第1面57aを透過する過程で屈折される。又、前記反射測距光26は、前記受光プリズム57の内部で前記第2面57b、前記第1面57a、前記第3面57cに順次反射され、前記第4面57dを透過し、前記受光素子28に受光される。或は、前記反射測距光26は、前記光量調整部材38を介して前記受光素子28に受光される。
【0081】
第3の実施例では、前記受光光学系27が内部に反射面を有する前記受光プリズム57を有し、該受光プリズム57の内部で前記反射測距光26を3回内部反射させ、該反射測距光26の光路を屈曲させることで、前記受光レンズ37の焦点距離分の光路長を確保している。
【0082】
従って、前記受光光学系27の光軸方向の長さを短くすることができるので、距離測定部19の光学系の小型化が図れると共に、測量装置全体の小型化を図ることができる。
【0083】
尚、第2の実施例と第3の実施例とを組合わせ、前記光量調整部材38を第2の実施例の光量調整部材51に置換えてもよいのは言う迄もない。
【0084】
次に、
図7に於いて、本発明の第4の実施例について説明する。尚、
図7中、
図6中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
第4の実施例では、光量調整部材58が受光プリズム57と受光素子28の間ではなく、偏向光学部材25と受光レンズ37との間に設けられている。
【0086】
前記光量調整部材58は、光量調整部材38(
図3(B)参照)と同様に、中心部に光量調整面(図示せず)が形成されている。一方で、前記光量調整部材58は、反射測距光26の光束よりも大きい平行平面板である。従って、前記光量調整部材58は、例えば前記受光レンズ37と同程度の径を有している。
【0087】
第4の実施例に於いても、受光光学系27に前記受光プリズム57を設け、該受光プリズム57により前記受光レンズ37の焦点距離分の光路長を確保している。従って、前記受光光学系27の光軸方向の長さを短くすることができるので、距離測定部19の光学系の小型化が図れると共に、測量装置全体の小型化を図ることができる。
【0088】
次に、
図8に於いて、本発明の第5の実施例について説明する。尚、
図8中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
第5の実施例では、偏向光学部材としての反射プリズム59が、受光レンズ61の中心部に貼付けられている。該受光レンズ61は、中心部の曲率が大きい多焦点レンズとなっている。
【0090】
第5の実施例では、前記反射プリズム59、前記受光レンズ61、受光プリズム57、光量調整部材38により、受光光学系27が構成される。
【0091】
又、投光光学系24は、発光素子22から発せられた測距光23を、反射鏡32が前記反射プリズム59に向って直角に反射する様構成されている。
【0092】
該反射プリズム59の反射面は、金属や誘電体が蒸着されたミラーとなっている。前記反射プリズム59は、前記測距光23と前記反射測距光26の共通光路上に位置し、前記反射鏡32で反射された反射光軸29aを、測距光軸33として受光光軸34と同軸となる様直角に偏向する様構成される。
【0093】
第5の実施例では、前記発光素子22から発せられた前記測距光23は、前記投光光学系24を介して前記反射プリズム59に反射され、測定対象物に照射される。測定対象物で反射された反射測距光26は、前記反射プリズム59の周囲を通過し、前記受光レンズ61に入射する。
【0094】
該受光レンズ61に入射した前記反射測距光26は、前記受光レンズ61、前記受光プリズム57を順次透過し、受光素子28に入射する。或は、前記受光レンズ61に入射した前記反射測距光26は、前記受光レンズ61、前記受光プリズム57、前記光量調整部材38を順次透過し、受光素子28に入射する。
【0095】
第5の実施例では、前記受光レンズ61として、中心部の曲率が大きい多焦点レンズを用いている。従って、前記受光光軸34近傍の中心部に於ける受光量を大きくすることができ、近距離を測定する場合の受光量を増大させることができる。
【0096】
又、偏向光学部材として、前記測距光23のビーム径と略同径の反射面を有する前記反射プリズム59が用いられ、該反射プリズム59は前記受光レンズ61に貼付けられている。従って、偏向光学部材を小型化できると共に、前記受光光学系27の光軸方向の長さを短くすることができる。
【0097】
次に、
図9(A)、
図9(B)に於いて、本発明の第6の実施例について説明する。尚、
図9(A)、
図9(B)中、
図8中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
第6の実施例では、受光レンズ62は、外周部の曲率が大きくなった多焦点レンズとなっている。又、
図9(B)に示される様に、光量調整部材63の反射測距光26の入射面のうち、中心部に反射防止膜が蒸着された全透過面64が形成され、該全透過面64以外の部分に反射膜が蒸着された光量調整面65が形成されている。
【0099】
又、
図9(B)に示される様に、前記全透過面64は、例えば受光光軸34を中心とした直径4mm程度の円形状となっている。即ち、前記光量調整部材63の前記反射測距光26の入射面のうち、5%~20%程度が前記光量調整面65となっている。
【0100】
尚、上記では、反射膜を蒸着して前記光量調整面65としているが、吸収膜を蒸着して光量調整面としてもよく、或はエレクトロクロミック素子を光量調整面としてもよい。即ち、例えば10%~50%の範囲で反射測距光26を透過可能な膜であればどの様な膜でもよい。その他の構成については第5の実施例と同様である。
【0101】
第6の実施例では、前記受光レンズ62として、外周部の曲率が大きい多焦点レンズを用いている。従って、前記受光光軸34近傍の中心部に於ける受光量を大きくすることができ、近距離を測定する場合の受光量を増大させることができる。
【0102】
又、前記受光レンズ62は、外周部の曲率が大きくなっているので、前記光量調整部材63に入射する前記反射測距光26のうち、近距離測定時に増加する前記受光レンズ62の外周部を透過する前記反射測距光26が、前記光量調整部材63の外周部に入射する。
【0103】
従って、前記光量調整部材63のうち、中心部を前記全透過面64とし、それ以外の部分を光量調整面65とすることで、近距離を測定する際の電気系の飽和を防止することができる。
【0104】
次に、
図10に於いて、本発明の第7の実施例について説明する。尚、
図10中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0105】
第7の実施例では、投光光学系24、受光光学系27に加えて他の光学系を同軸で設けている。例えば、
図10中では、距離測定部19は、追尾光を測定対象物へと導く追尾投光光学系66と、測定対象物で反射された反射追尾光を受光素子へと導く追尾受光光学系67を有している。
【0106】
前記追尾投光光学系66は、追尾発光素子68から射出される追尾光の光軸(追尾投光光軸69)上に設けられた投光レンズ71と、ビームスプリッタ72と、該ビームスプリッタ72の反射光軸上に設けられたミラー73と、該ミラー73の反射光軸上に設けられたショートパスフィルタ板74とを有している。
【0107】
前記追尾発光素子68は、例えば測距光とは異なる波長のレーザ光線を追尾光として射出するレーザダイオード(LD)となっている。前記ビームスプリッタ72は、前記追尾投光光軸69を追尾受光光軸75(後述)と同軸に偏向する。即ち、前記ビームスプリッタ72は、追尾光と反射追尾光の共通光路上に配置される。又、前記ミラー73は前記追尾投光光軸69を前記ショートパスフィルタ板74に向って反射する。
【0108】
該ショートパスフィルタ板74は、追尾光及び反射追尾光を透過し、測距光23及び反射測距光26を反射する光学特性を有している。又、前記ショートパスフィルタ板74は、該ショートパスフィルタ板74を透過した追尾光の前記追尾投光光軸69と同軸となる様、測距光軸33を偏向する。更に、前記ショートパスフィルタ板74は、受光光軸34と前記追尾受光光軸75とを分離する。即ち、前記ショートパスフィルタ板74は、前記測距光23と追尾光の共通光路上に配置される。
【0109】
前記追尾受光光学系67は、追尾受光素子76に受光される反射追尾光の光軸(前記追尾受光光軸75)上に設けられた受光レンズ群77と、前記ビームスプリッタ72と、前記ミラー73と、該ミラー73の反射光軸上に設けられた前記ショートパスフィルタ板74とを有している。
【0110】
前記追尾受光素子76は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記追尾受光素子76の中心を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。
【0111】
追尾を行なう際には、前記追尾発光素子68から追尾光が射出され、前記ビームスプリッタ72、前記ミラー73に順次反射される。該ミラー73で反射された追尾光は、前記ショートパスフィルタ板74を透過し、走査鏡15で反射されて測定対象物に照射される。
【0112】
測定対象物で反射された反射追尾光は、前記走査鏡15で反射された後、前記ショートパスフィルタ板74を透過する。該ショートパスフィルタ板74を透過した反射追尾光は、前記ミラー73で反射され、前記ビームスプリッタ72及び前記受光レンズ群77を透過して前記追尾受光素子76に入射する。
【0113】
演算制御部17(
図1参照)は、前記追尾受光素子76の中心と反射追尾光の偏差を演算し、該偏差に基づき、反射追尾光の入射位置が前記追尾受光素子76の中心となる様に水平回転モータ8(
図1参照)と鉛直回転モータ13(
図1参照)を制御する。これにより、測量装置本体3(
図1参照)が測定対象物を追尾する。
【0114】
第7の実施例では、測距光軸33と追尾投光光軸69とが同軸となる様投光光学系24及び追尾投光光学系66を設けている。従って、前記測距光23と同軸に追尾光が照射されるので、追尾精度を向上させることができる。又、測距と追尾で用いられる光学部材の一部を共用できるので、光学系の小型化が図れると共に、部品点数の削減を図ることができる。
【0115】
尚、上記では、前記投光光学系24と同軸に前記追尾投光光学系66及び前記追尾受光光学系67を設けている。一方で、前記追尾投光光学系66及び前記追尾受光光学系67に代えて、前記投光光学系24と同軸で可視光を照射するレーザポインタ照射部を設けてもよい。或は、追尾光として可視光を用いてもよい。可視光を照射することで、前記測距光23の照射位置を視認することができる。
【0116】
又、前記追尾投光光学系66及び前記追尾受光光学系67に代えて、撮像部を設けてもよい。或は、前記追尾投光光学系66及び前記追尾受光光学系67と、レーザポインタ照射部と、撮像部とを全て同軸に設けてもよい。
【0117】
尚、本発明に於いて、第1の実施例~第7の実施例を適宜組合わせてもよいのは言う迄もない。
【符号の説明】
【0118】
1 測量装置
3 測量装置本体
15 走査鏡
17 演算制御部
19 距離測定部
22 発光素子
23 測距光
24 投光光学系
25 偏向光学部材
26 反射測距光
27 受光光学系
28 受光素子
38 光量調整部材
51 光量調整部材
57 受光プリズム
58 光量調整部材
63 光量調整部材
66 追尾投光光学系
67 追尾受光光学系
76 追尾受光素子