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特許7416648インクジェットヘッド駆動制御装置及びインクジェットプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド駆動制御装置及びインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240110BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 401
B41J2/01 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020043276
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021142710
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】秋元 学
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-045354(JP,A)
【文献】特開2006-167974(JP,A)
【文献】特開2007-221239(JP,A)
【文献】特開2009-172784(JP,A)
【文献】特開2018-094720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストからモニタコマンドを受信する通信制御部と、
前記通信制御部からの前記モニタコマンドを受け付けて、前記モニタコマンドに応じてクリアコマンドを生成する駆動制御部と、
前記クリアコマンドを受信した場合、カウントをクリアし、前記クリアコマンドを所定の時間受信しない場合、保護回路を介してインクジェットヘッドを停止させる監視カウンタと、
を具備するインクジェットヘッド駆動制御装置。
【請求項2】
前記モニタコマンドは、前記ホストの操作アプリケーションを介して送信される、
請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動制御装置。
【請求項3】
前記監視カウンタは、タイマー回路により実現される、
請求項1又は請求項2に記載のインクジェットヘッド駆動制御装置。
【請求項4】
インクジェットヘッドと、
ホストからモニタコマンドを受信する通信制御部と、
前記通信制御部からの前記モニタコマンドを受け付けて、前記モニタコマンドに応じてクリアコマンドを生成する駆動制御部と、
前記クリアコマンドを受信した場合、カウントをクリアし、前記クリアコマンドを所定の時間受信しない場合、保護回路を介して前記インクジェットヘッドを停止させる監視カウンタと、
を具備するインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッド駆動制御装置及びインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタは、ホストコンピュータ(以下、ホストと略称)から送信された各種データ及びコマンドを解析し、解析された各種データ及びコマンドに基づいて紙等の印刷用媒体にインクを吐出することで印刷する。インクジェットプリンタに内蔵されるインクジェットヘッド駆動制御装置は、同プリンタに内蔵されるインクジェットヘッドの駆動を制御することで、印刷の開始から終了までの一連の動作を制御する。
【0003】
インクジェットヘッド駆動制御装置は、ホスト等との通信を制御する通信制御部と、インクジェットヘッドの駆動を制御する駆動制御部とから構成される。ホストは、自身に内蔵される操作アプリケーションが、ホストとインクジェットヘッド駆動制御装置との間で所定の通信規格に従った通信を実現するためのDLL(Dynamic Link Library)ファイルを組み込むことで、通信制御部とLAN(Local Area Network)を介して通信を行う。通信制御部は、駆動制御部と構造的に独立し、通信制御部に内蔵されたUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)を介して、駆動制御部に内蔵されたUARTとの間で通信を行う。
【0004】
通信制御部及び駆動制御部はそれぞれマイコンを内蔵しており、各制御部でファームウェア暴走等の異常が生じた場合には、各マイコンに内蔵されたウォッチドッグタイマ(Watchdog Timer:WDT)がオーバーフローすることで各制御部はソフトリセットが掛かり再起動される。また、駆動制御部は、インクジェットヘッドに供給される駆動電圧等を保護回路を介して遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-252192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような構成を持つインクジェットヘッド駆動制御装置では、ホストからのコマンドを受け付けて、動作中のインクジェットヘッドを停止させたいとき、例えば、通信制御部に異常が生じた場合には、通信制御部のマイコンのウォッチドッグタイマがオーバーフローして通信制御部が再起動されるまでの間、通信制御部はコマンドを受け付けることが出来ない。この場合、通信制御部が正常状態に戻るまで、駆動制御部は動作中のインクジェットヘッドを停止させることが出来ない。また、ホストの通信システム等に異常が生じてインクジェットヘッド駆動制御装置にコマンドを送信できない場合には、通信制御部が正常状態であっても駆動制御部は動作中のインクジェットヘッドを停止させることが出来ない。これらの場合、操作者は、インクジェットプリンタ等に設置された非常停止スイッチを押す等により、動作中のインクジェットヘッドを緊急停止させる必要がある。
【0007】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、インクジェットヘッドを安全かつ適切に停止させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、インクジェットヘッド駆動制御装置は、通信制御部と、駆動制御部と、監視カウンタとを具備する。通信制御部は、ホストからモニタコマンドを受信する。駆動制御部は、前記通信制御部からの前記モニタコマンドを受け付けて、前記モニタコマンドに応じてクリアコマンドを生成する。監視カウンタは、前記クリアコマンドを受信した場合、カウントをクリアし、前記クリアコマンドを所定の時間受信しない場合、保護回路を介してインクジェットヘッドを停止させる。
【0009】
本発明に開示の実施形態では、インクジェットヘッドの制御を担う通信制御部及び駆動制御部がコマンドにて実行されるインクジェットヘッド駆動制御装置において、各通信経路(例えば、LAN通信経路やUART通信経路)によってホストとの通信状態や通信制御部の状態を把握するため、ホストは、通信制御部を介して駆動制御部まで定期的にモニタコマンドを送信する。駆動制御部は、受信したモニタコマンドに応じて生成されたクリアコマンドによりカウントがクリアされる監視カウンタにより、ホストとの通信状態や通信制御部の状態を監視する。監視カウンタは、所定の時間の間にクリアコマンドを受信しない場合、カウントが閾値を超える(オーバーフローする)ことで、ホストとの通信や通信制御部の異常を検知する。このとき、監視カウンタは、保護回路を介してインクジェットヘッドへの駆動電圧を遮断し、インクジェットヘッドを停止させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御システムの構成を概略的に例示するブロック図である。
図2】実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御システムの構成を詳細に例示するブロック図である。
図3】実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置の通信制御部による振り分けタスクを例示するフロー図である。
図4】実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置の駆動制御部による監視タスクを例示するフロー図である。
図5】実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置の駆動制御部による監視タスクを例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置及びインクジェットプリンタについて図面を参照して説明する。
【0012】
実施形態に係るインクジェット駆動制御システムの構成について図1及び図2を用いて説明する。
図1は、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御システムの構成を概略的に例示するブロック図である。
【0013】
実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御システム100は、ホスト1、インクジェットヘッド駆動制御装置2、及びインクジェットヘッド3から構成される。このうち、インクジェットヘッド駆動制御装置2及びインクジェットヘッド3は同一のインクジェットプリンタ200に格納される。ホスト1及びインクジェットヘッド駆動制御装置2は、有線又は無線のLANにより互いに通信可能に接続される。例えば、ホスト1とインクジェットヘッド駆動制御装置2とはケーブル等により接続され、インクジェットヘッド駆動制御装置2とインクジェットヘッド3とはバス等により接続される。
【0014】
図2は、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御システムの構成を詳細に例示するブロック図である。
【0015】
ホスト1は、操作者からの各種データ及びコマンドを受け付けて、インクジェットヘッド駆動制御装置2に送信する装置である。ホスト1は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン等のコンピュータである。実施形態において、ホスト1は、予めインストールされた操作アプリケーションを介して、操作者からの各種データ及びコマンドをインクジェットヘッド駆動制御装置2に送信する。
【0016】
ホスト1から送信される各種データ及びコマンドは、例えば、駆動波形データ、駆動電圧ONコマンド、駆動電圧OFFコマンド、モニタコマンド、印刷データ、印刷コマンドである。駆動波形データは、駆動電圧に関する波形データである。駆動電圧ONコマンドは、駆動制御部22に、駆動波形データに基づいて周期、周波数、レベル等が変更された駆動電圧をインクジェットヘッド3に出力させるコマンドである。駆動電圧OFFコマンドは、駆動制御部22に、駆動電圧の供給を遮断させるコマンドである。モニタコマンドは、駆動制御部22に、インクジェットヘッド3等のステータスを確認させるコマンドである。印刷データは、印刷対象となる画像や文字に関するデータである。印刷コマンドは、インクジェットヘッド3に、印刷データに基づいて画像や文字を印刷させるコマンドである。
【0017】
ホスト1は、プロセッサ11、メインメモリ12、補助記憶デバイス13、通信インタフェース14、入力デバイス15、及び表示デバイス16から構成される。ホスト1を構成する各部は、互いに信号を入出力可能にバス等で接続される。図2では、インタフェースは、「I/F」と記載される。
【0018】
プロセッサ11は、ホスト1の中枢部分に相当する。例えば、プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)であるが、これに限定されない。プロセッサ11は、種々の回路で構成されていてもよい。プロセッサ11は、メインメモリ12又は補助記憶デバイス13に予め記憶されているプログラムを実行することで、種々の動作を実行する。
【0019】
メインメモリ12は、ホスト1の主記憶部分に相当する。メインメモリ12は、不揮発性のメモリ領域と揮発性のメモリ領域とを含む。メインメモリ12は、不揮発性のメモリ領域ではオペレーティングシステム又はプログラムを記憶する。メインメモリ12は、揮発性のメモリ領域を、プロセッサ11によってデータが適宜書き換えられるワークエリアとして使用する。例えば、メインメモリ12は、不揮発性のメモリ領域としてROM(Read Only Memory)を含む。例えば、メインメモリ12は、揮発性のメモリ領域としてRAM(Random Access Memory)を含む。実施形態において、ホスト1に予めインストールされる操作アプリケーションやDLLファイルはそれぞれ、ROM及びRAMのどちらにも格納されてもよい。
【0020】
補助記憶デバイス13は、ホスト1の補助記憶部分に相当する。例えば、補助記憶デバイス13は、EEPROM(登録商標)(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、及びSSD(Solid State Drive)である。補助記憶デバイス13は、上述のプログラム、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ及びプロセッサ11での処理によって生成されるデータを記憶する。
【0021】
通信インタフェース14は、所定の通信プロトコルに従い、LANを介して、ホスト1をインクジェットヘッド駆動制御装置2と通信可能に接続する種々のインタフェースを含む。通信インタフェース14は、例えば、有線LAN規格としてはEthernet(登録商標)、無線LAN規格としてはBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等、任意の通信規格に応じて通信を行うものであってもよい。実施形態において、通信インタフェース14は、入力デバイス15から受信した各種データ及びコマンドに対応する電気信号をインクジェットヘッド駆動制御装置2に送信する。
【0022】
入力デバイス15は、操作者が、ホスト1への各種データ及びコマンドを入力可能とするための装置である。例えば、入力デバイス15は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル、タッチパネルディスプレイを含む物理的な操作部品である。実施形態において、入力デバイス15は、操作者から操作アプリケーションを介して各種データ及びコマンドの入力を受け付け、それぞれの入力に応じた電気信号を生成する。入力デバイス15は、生成した電気信号をバスを介して通信インタフェース14に送信する。
【0023】
表示デバイス16は、プロセッサ11の制御により種々の画面を表示可能なデバイスである。例えば、表示デバイス16は、液晶ディスプレイ又はEL(Electro Luminescence)ディスプレイである。実施形態において、表示デバイス16は、例えば、操作者が入力デバイス15を介して入力した各種データ及びコマンドの内容を表示する画面を表示してもよい。また、表示デバイス16は、インクジェットヘッド駆動制御装置2から送信されたモニタ値を表示してもよい。
【0024】
インクジェットヘッド駆動制御装置2は、ホスト1からの各種データ及びコマンドを受け付けて、インクジェットヘッド3の駆動を制御する装置である。インクジェットヘッド駆動制御装置2は、例えば、マイコン等の各種回路を含むコンピュータである。実施形態において、インクジェットヘッド駆動制御装置2は、インクジェットヘッド3に駆動電圧や、操作者から入力された各種データ及びコマンドを出力する。なお、インクジェットヘッド駆動制御装置2は、ホスト1からの各種データ及びコマンドを受けずに、インクジェットヘッド3内部のインク温度等の各種データに応じて、自律的にインクジェットヘッド3を制御することも可能である。
【0025】
インクジェットヘッド駆動制御装置2は、通信制御部21及び駆動制御部22を含む。実施形態において、インクジェットヘッド駆動制御装置2を構成する各部は、互いに信号を入出力可能にUARTにより接続される。
【0026】
通信制御部21は、ホスト1、駆動制御部22、及びインクジェットヘッド3との間で各種データ及びコマンドの通信を行う回路である。通信制御部21は、マイコン211及びWDT212を含む。
【0027】
マイコン211は、通信制御部21の中枢部分に相当するコンピュータである。マイコン211は、例えば、処理回路、記憶回路、入力回路、出力回路、タイマー回路を含む各種回路を内蔵した集積回路である。マイコン211は、例えば、記憶回路に格納される各種プログラムに従って、通信制御部21全体の動作を制御する。実施形態において、マイコン211は、例えば、ホスト1からの各種データ及びコマンドを受け付け、各種データ及びコマンドの種類及び内容に応じて、駆動制御部22又はインクジェットヘッド3に振り分けて送信する。マイコン211は、例えば、駆動波形データ、駆動電圧ONコマンド、駆動電圧OFFコマンド、及びモニタコマンドを駆動制御部22に送信し、印刷データ及び印刷コマンドをインクジェットヘッド3に送信する。
【0028】
WDT212は、マイコン211に内蔵されるタイマー回路である。WDT212は、定期的にマイコン211から所定のクリアコマンド(第1のクリアコマンドとも呼ぶ)を受信する度に、カウントをクリアする。WDT212は、クリアコマンドの受信が所定の時間(第1のタイムアウト時間とも呼ぶ)行われないとオーバーフローし、マイコン211をリセットする。なお、WDT212は、マイコン211と通信可能にマイコン211の外部に実装されてもよい。
【0029】
駆動制御部22は、インクジェットヘッド3の駆動制御を担う回路である。駆動制御部22は、マイコン221、WDT222、保護回路223、WDT224、監視カウンタ225、駆動電圧生成回路226、及び駆動電圧ON/OFF回路227を含む。
【0030】
マイコン221は、駆動制御部22の中枢部分に相当するコンピュータである。マイコン221は、例えば、処理回路、記憶回路、入力回路、出力回路、タイマー回路を含む各種回路を内蔵した集積回路である。マイコン221は、例えば、記憶回路に格納される各種プログラムに従って、駆動制御部22全体の動作を制御する。実施形態において、マイコン221は、通信制御部21からの各種データ及びコマンドを受け付け、保護回路223、監視カウンタ225、駆動電圧生成回路226、及び駆動電圧ON/OFF回路227を制御する。マイコン221は、例えば、受信した駆動波形データ、駆動電圧ONコマンド、及び駆動電圧OFFコマンドを駆動電圧生成回路226に送信する。マイコン221は、例えば、受信したモニタコマンドに応じて生成したクリアコマンド(第4のクリアコマンドとも呼ぶ)を監視カウンタ225に送信し、また、インクジェットヘッド3等のステータスを確認する。
【0031】
WDT222は、マイコン221に内蔵されるタイマー回路である。WDT222は、定期的にマイコン221から所定のクリアコマンド(第2のクリアコマンドとも呼ぶ)を受信する度に、カウントをクリアする。WDT222は、クリアコマンドの受信が所定の時間(第2のタイムアウト時間とも呼ぶ)行われないとオーバーフローし、マイコン221をリセットする。なお、WDT222は、マイコン221と通信可能にマイコン221の外部に実装されてもよい。
【0032】
保護回路223は、インクジェットヘッド3の異常を検知して、インクジェットヘッド3を故障及び破損から保護するための回路である。保護回路223は、例えば、インクジェットヘッド3へ供給される駆動電圧や、インクジェットヘッド3内部のインク温度が閾値を超えているかを監視する。そして、保護回路223は、駆動電圧やインク温度が閾値を超えた場合等、インクジェットヘッド3の異常を検知した場合は、駆動電圧ON/OFF回路227を介してインクジェットヘッド3への駆動電圧の供給を遮断する。また、保護回路223は、マイコン221に対してはNMI(Non-Maskable Interrput:マスク不可割込み)信号によって通知し、駆動電圧生成回路226に供給される外部電源の遮断等、マイコン221に種々の処理を実行させる。
【0033】
WDT224は、保護回路223に内蔵されるタイマー回路である。WDT224は、定期的にマイコン221から所定のクリアコマンド(第3のクリアコマンドとも呼ぶ)を受信する度に、カウントをクリアする。WDT224は、クリアコマンドの受信が所定の時間(第3のタイムアウト時間とも呼ぶ)行われないとオーバーフローし、保護回路223に上記の異常検知の場合と同様な処理を行わせる。なお、WDT224は、保護回路223と通信可能に保護回路223の外部に実装されてもよい。
【0034】
監視カウンタ225は、ホストとの通信状態や通信制御部21との通信状態を駆動制御部22が監視するためのカウンタである。監視カウンタ225は、駆動制御部22のマイコン221からのクリアコマンド(第4のクリアコマンドに相当)を受信する度に、カウントをクリアする。監視カウンタ225は、クリアコマンドの受信が所定の時間(第4のタイムアウト時間とも呼ぶ)行われないとオーバーフローし、保護回路223に異常信号を通知し、保護回路223に上記の異常検知の場合と同様な処理を行わせる。
【0035】
なお、監視カウンタ225は、一般的なWDTと同様なタイマー回路であってもよい。なお、監視カウンタ225がオーバーフローするまでの当該所定の時間の長さは、任意の長さで設計可能である。なお、監視カウンタ225は、当該所定の時間のうちの経過時間をカウントにより計測する際、例えば、カウントゼロを初期状態としてカウントアップする形式であってもよいし、所定のカウントを初期状態としてカウントダウンする形式であってもよい。いずれの形式であっても、所定の閾値を超えたこと(オーバーフロー)を条件として、保護回路223に異常信号を通知すればよい。
【0036】
駆動電圧生成回路226は、インクジェットヘッド3に供給する駆動電圧を生成するための回路である。駆動電圧生成回路226は、例えば、外部電源から供給された交流(AC)電圧をトランス方式又はスイッチング方式により、インクジェットヘッド3が利用可能なレベルの直流(DC)電圧に変換する回路である。実施形態において、駆動電圧生成回路226は、受信した駆動波形データに応じて生成した駆動電圧を駆動電圧ON/OFF回路227に供給する。また、駆動電圧生成回路226は、受信した駆動電圧ONコマンド及び駆動電圧OFFコマンドを駆動電圧ON/OFF回路227に送信する。
【0037】
駆動電圧ON/OFF回路227は、駆動電圧生成回路226で生成された駆動電圧をインクジェットヘッド3へ供給する際のON/OFF制御を行う回路である。駆動電圧ON/OFF回路227は、例えば、バイポーラトランジスタやFET(Field Effect Transister)を含むトランジスタによるスイッチング回路である。実施形態において、駆動電圧ON/OFF回路227は、受信した駆動電圧ONコマンドに応じて駆動電圧をインクジェットヘッド3に出力する。また、駆動電圧ON/OFF回路227は、受信した駆動電圧OFFコマンドに応じて駆動電圧の供給を遮断する。
【0038】
インクジェットヘッド3は、インクジェットヘッド駆動制御装置2からの駆動電圧や印刷データ、印刷コマンド等に基づいて印刷を行う装置である。インクジェットヘッド3は、例えば、ピエゾ方式、サーマル方式、又はバルブ方式で駆動するオンデマンド型のインクジェットヘッドであってもよいし、コンティニュアス型のインクジェットヘッドであってもよい。
【0039】
なお、ホスト1、インクジェットヘッド駆動制御装置2、及びインクジェットヘッド3のハードウェア構成は、上述の構成に限定されるものではない。ホスト1、インクジェットヘッド駆動制御装置2、及びインクジェットヘッド3は、適宜、上述の構成要素の省略及び変更並びに新たな構成要素の追加を可能とする。
【0040】
なお、インクジェットヘッド駆動制御装置2及びインクジェットヘッド3は、同一のインクジェットプリンタ200に格納されるものとしたが、これに限らず、互いに独立した別個の装置であってもよい。
【0041】
次に、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置が行う振り分けタスクについて図3を用いて説明する。
図3は、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置の通信制御部による振り分けタスクを例示するフロー図である。実施形態において、振り分けタスクは、通信制御部21のマイコン211により実行される。マイコン211は、振り分けタスクを実行することで、駆動制御部22に送信される各種データ及びコマンドと、インクジェットヘッド3に送信される各種データ及びコマンドとを振り分ける。なお、図3では、各種コマンドの振り分けに着目して説明する。
【0042】
マイコン211は、各通信経路を初期化する(ACT31)。具体的には、マイコン211は、ホスト1とのLAN通信に関するLAN通信経路と、駆動制御部22とのUART通信に関するUART通信経路とを初期化する。マイコン211は、各通信経路に関する各種ネットワーク設定として、例えば、シリアル通信やパラレル通信に関する各種設定を初期化する。初期化後、マイコン211は、ホスト1からのコマンド受信待ち状態に移行する。
【0043】
マイコン211は、ホスト1からコマンドを受信したと判定すると(ACT32のYES)、受信したコマンドを解析する(ACT33)。例えば、マイコン211は、受信したコマンドの種類やコマンドの内容を解析する。
【0044】
マイコン211は、受信したコマンドが駆動制御部22へのコマンド(駆動制御部コマンドとも呼ぶ)であると判定すると(ACT34のYES)、受信したコマンドをUART通信経路を介して駆動制御部22に送信する(ACT35)。駆動制御部コマンドは、例えば、駆動電圧ONコマンド、駆動電圧OFFコマンド、及びモニタコマンドである。送信後、マイコン211は再びコマンド受信待ち状態に戻る。一方、マイコン211は、受信したコマンドが駆動制御部へのコマンドでないと判定すると(ACT34のNO)、受信したコマンドに応じて各種処理を行う(ACT36)。例えば、マイコン211は、受信した印刷コマンドをインクジェットヘッド3に送信する。処理後、マイコン211は再びコマンド受信待ち状態に戻る。
【0045】
最後に、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置が行う監視タスクについて図4及び図5を用いて説明する。
図4は、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置の駆動制御部による監視タスクを例示するフロー図である。実施形態において、監視タスクは、駆動制御部22のマイコン221により実行される。マイコン221は、監視タスクを実行することで、ホストとの通信状態や通信制御部21との通信状態を駆動制御部22において監視する。
【0046】
マイコン221は、各通信経路を初期化する(ACT41)。具体的には、マイコン221は、通信制御部21とのUART通信に関するUART通信経路を初期化する。マイコン221は、各通信経路に関する各種ネットワーク設定として、例えば、シリアル通信やパラレル通信に関する各種設定を初期化する。初期化後、マイコン221は、通信制御部21からのコマンド受信待ち状態に移行する。
【0047】
マイコン221は、通信制御部21からコマンドを受信したと判定すると(ACT42のYES)、受信したコマンドを解析する(ACT43)。例えば、マイコン221は、受信したコマンドの種類やコマンドの内容を解析する。
【0048】
マイコン221は、受信したコマンドが駆動制御部22に対するモニタコマンドであると判定すると(ACT44のYES)、受信したモニタコマンドに応じて生成したクリアコマンド(第4のクリアコマンドに相当)を監視カウンタ225に送信する(ACT45)。送信後、マイコン221は、インク温度、駆動電圧等を含むインクジェットヘッド3のステータスや、駆動電圧生成回路226に供給される外部電源のステータス等の各種ステータスを確認する(ACT46)。そして、確認された各種ステータスに関する情報をモニタ値として、通信制御部21を介してホスト1に送信する(ACT47)。モニタ値の送信後、マイコン221は再びコマンド受信待ち状態に戻る。一方、マイコン221は、受信したコマンドが駆動制御部22に対するモニタコマンドでないと判定すると(ACT44のNO)、受信したコマンドに応じて各種処理を行う(ACT48)。例えば、マイコン221は、受信した駆動電圧ONコマンド及び駆動電圧OFFコマンドを駆動電圧生成回路226に送信する。処理後、マイコン221は再びコマンド受信待ち状態に戻る。
【0049】
図5は、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置の駆動制御部による監視タスクを例示するフロー図である。図5では、マイコン221による監視タスクの実行時における、監視カウンタ225の処理を説明する。
【0050】
監視カウンタ225は、カウントを初期化する(ACT51)。カウントの初期化は、例えば、インクジェットヘッド駆動制御装置2の起動時に行われる。初期化後、監視カウンタ225は、カウントを開始する(ACT52)。監視カウンタ225は、所定時間の間(第4のタイムアウト時間に相当)にマイコン221からのクリアコマンド(第4のクリアコマンドに相当)を受信した場合(ACT53のYES)、監視カウンタ225は、カウントをクリアする(ACT54)。クリア後、監視カウンタ225はACT52に戻り、再びカウントを開始する。一方、当該所定時間の間にマイコン221からのクリアコマンドを受信しなかった場合(ACT53のNO)、監視カウンタ225はオーバーフローし(ACT55)、保護回路223に異常信号を通知する(ACT56)。異常信号は、例えば、ホストや通信制御部21との通信に異常が生じたことを示す信号である。
【0051】
ここで、保護回路223は、監視カウンタ225から受信した異常信号に応じて、駆動電圧ON/OFF回路227を介してインクジェットヘッド3への駆動電圧の供給を遮断する。なお、保護回路223は、マイコン221にもNMI信号を通知することで、マイコン221に、駆動電圧生成回路226に供給される外部電源の遮断等、種々の処理を実行させる。
【0052】
以上示した実施形態によれば、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動制御装置は、ホストとの通信や通信制御部に異常がないかを駆動制御部に設けられた監視カウンタによって監視する。ホストとの通信や通信制御部に異常が生じた場合には、監視カウンタがオーバーフローすることで保護回路を介してインクジェットヘッドへの駆動電圧を自動的に遮断する。これにより、ホストとの通信や通信制御部に異常が発生し、駆動制御部にコマンドを送信できない場合でも、動作中のインクジェットヘッドを安全かつ適切に停止させることが出来る。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…ホスト、2…インクジェットヘッド駆動制御装置、3…インクジェットヘッド、11…プロセッサ、12…メインメモリ、13…補助記憶デバイス、14…通信インタフェース、15…入力デバイス、16…表示デバイス、21…通信制御部、22…駆動制御部、100…インクジェットヘッド駆動制御システム、200…インクジェットプリンタ、211…マイコン、212…ウォッチドッグタイマ、221…マイコン、222…ウォッチドッグタイマ、223…保護回路、224…ウォッチドッグタイマ、225…監視カウンタ、226…駆動電圧生成回路、227…駆動電圧ON/OFF回路。
図1
図2
図3
図4
図5