(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】複合構造体
(51)【国際特許分類】
B62D 27/02 20060101AFI20240110BHJP
B62D 25/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B62D27/02
B62D25/00
(21)【出願番号】P 2020071800
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】三原 真弥
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-162920(JP,A)
【文献】特開2014-080183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 27/02
B62D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状を成す金属製の複数の構造要素を同一面上に配置して隣接する2つの前記構造要素同士を交差領域で一体化した構造を有すると共に、前記構造要素に繊維強化樹脂製の補強部材を接合した構造を有する複合構造体であって、
前記構造要素が、長手方向に交差する断面において、前記同一面に沿う天板部と、前記天板部の両端部から同一側に延出する一対の側板部とを備え、
前記補強部材が、連続した強化繊維を長手方向に配向するとともに前記構造要素の長手方向に沿って配置するテープ状の第1補強部材と、不連続の強化繊維を多方向に配向するとともに前記構造要素の局部範囲に配置する第2補強部材とを備え、
前記構造要素の前記天板部に、前記第1補強部材を前記側板部と接する状態で配置し、 前記交差領域における前記構造要素同士の角部を含む局部範囲に、前記第2補強部材を前記第1補強部材と接する状態で配置し
、
前記第2補強部材が、前記第1補強部材を部分的に被覆する状態で前記第1補強部材と接していると共に、前記構造要素にも接していることを特徴とする複合構造体。
【請求項2】
前記第2補強部材が、
前記構造要素の前記天板部と一対の前記側板部に接していることを特徴とする請求項1に記載の複合構造体。
【請求項3】
前記構造要素の中間部における局部範囲に、一方の前記側板部から他方の前記側板部に至る第2補強部材を前記第1補強部材と接する状態で配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合構造体。
【請求項4】
隣接する2つの前記構造要素が、T字形状又はL字形状に一体化した構造を有し、
前記交差領域における複数の局部範囲に前記第2補強部材を配置すると共に、夫々の前記第2補強部材が、少なくとも一部で連続していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項5】
前記第1補強部材が、前記交差領域に連続して配置してあることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項6】
前記交差領域において、隣接する2つの前記構造要素の前記第1補強部材同士が交差していることを特徴とする請求項5に記載の複合構造体。
【請求項7】
前記構造要素の長手方向に交差する断面において、前記天板部に、2つの前記第1補強部材を互いに離間した状態で配置し、一方の前記第1補強部材が、一方の前記側板部に接していると共に、他方の前記第1補強部材が、他方の前記側板部に接していることを特徴とする請求項1~6に記載の複合構造体。
【請求項8】
前記構造要素が、
自動車のボディパネルにおいて上下方向を長手方向とするフロントピラー部、センターピラー部、及びリアピラー部であると共に、前記ボディパネルにおいて前後方向を長手方向として前記フロントピラー部、前記センターピラー部及び前記リアピラー部の上端及び下端を夫々連ねるルーフサイド部及びシル部であり、
前記交差領域が、
前記フロントピラー部の上端と前記ルーフサイド部の前端とを一体化するフロント上側交差領域、
前記フロントピラー部の下端と前記シル部の前端とを一体化するフロント下側交差領域、
前記センターピラー部の上端と前記ルーフサイド部の中間とを一体化するセンター上側交差領域、
前記センターピラー部の下端と前記シル部の中間とを一体化するセンター下側交差領域、
前記リアピラー部の上端と前記ルーフサイド部の後端とを一体化するリア上側交差領域、
及び前記リアピラー部の下端と前記シル部の後端とを一体化するリア下側交差領域であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項9】
前記センター下側交差領域において、前記シル部の前記天板部に配置した前記第1補強部材に対して、前記センターピラー部の前記天板部に配置した前記第1補強部材が乗り上げて交差していることを特徴とする請求項8に記載の複合構造体。
【請求項10】
長尺状を成す金属製の複数の構造要素を同一面上に配置して隣接する2つの前記構造要素同士を交差領域で一体化した構造を有すると共に、前記構造要素に繊維強化樹脂製の補強部材を接合した構造を有する複合構造体であって、
前記構造要素が、長手方向に交差する断面において、前記同一面に沿う天板部と、前記天板部の両端部から同一側に延出する一対の側板部とを備え、
前記補強部材が、連続した強化繊維を長手方向に配向するとともに前記構造要素の長手方向に沿って配置するテープ状の第1補強部材と、不連続の強化繊維を多方向に配向するとともに前記構造要素の局部範囲に配置する第2補強部材とを備え、
前記構造要素の前記天板部に、前記第1補強部材を前記側板部と接する状態で配置し、 前記交差領域における前記構造要素同士の角部を含む局部範囲に、前記第2補強部材を前記第1補強部材と接する状態で配置し、
前記第1補強部材が、前記交差領域に連続して配置してあり、
前記交差領域において、隣接する2つの前記構造要素の前記第1補強部材同士が交差していることを特徴とする複合構造体。
【請求項11】
長尺状を成す金属製の複数の構造要素を同一面上に配置して隣接する2つの前記構造要素同士を交差領域で一体化した構造を有すると共に、前記構造要素に繊維強化樹脂製の補強部材を接合した構造を有する複合構造体であって、
前記構造要素が、長手方向に交差する断面において、前記同一面に沿う天板部と、前記天板部の両端部から同一側に延出する一対の側板部とを備え、
前記補強部材が、連続した強化繊維を長手方向に配向するとともに前記構造要素の長手方向に沿って配置するテープ状の第1補強部材と、不連続の強化繊維を多方向に配向するとともに前記構造要素の局部範囲に配置する第2補強部材とを備え、
前記構造要素の前記天板部に、前記第1補強部材を前記側板部と接する状態で配置し、 前記交差領域における前記構造要素同士の角部を含む局部範囲に、前記第2補強部材を前記第1補強部材と接する状態で配置し、
前記構造要素が、
自動車のボディパネルにおいて上下方向を長手方向とするフロントピラー部、センターピラー部、及びリアピラー部であると共に、前記ボディパネルにおいて前後方向を長手方向として前記フロントピラー部、前記センターピラー部及び前記リアピラー部の上端及び下端を夫々連ねるルーフサイド部及びシル部であり、
前記交差領域が、
前記フロントピラー部の上端と前記ルーフサイド部の前端とを一体化するフロント上側交差領域、
前記フロントピラー部の下端と前記シル部の前端とを一体化するフロント下側交差領域、
前記センターピラー部の上端と前記ルーフサイド部の中間とを一体化するセンター上側交差領域、
前記センターピラー部の下端と前記シル部の中間とを一体化するセンター下側交差領域、
前記リアピラー部の上端と前記ルーフサイド部の後端とを一体化するリア上側交差領域、
及び前記リアピラー部の下端と前記シル部の後端とを一体化するリア下側交差領域であり、
前記センター下側交差領域において、前記シル部の前記天板部に配置した前記第1補強部材に対して、前記センターピラー部の前記天板部に配置した前記第1補強部材が乗り上げて交差していることを特徴とする複合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状を成す複数の金属製の構造要素と、構造要素に接合した繊維強化樹脂製の補強部材とを備えた複合構造体に関し、自動車のボディパネル等に用いるのに好適な複合構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の複合構造体としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の複合構造体は、車両用の仕切りパネルであって、トランクと車両内部とを仕切る複合材で形成したパネル部と、パネル部の下部中央から上方に傾斜した複合材で形成された補強部とを備えている。補強部は、連続した強化繊維を長手方向に配向したテープ状の複合材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような複合構造体にあっては、例えば、自動車のボディサイドパネル等のように、開口を有する枠状を成すとともに外部からの荷重が想定される場合、引張とねじりとの両方に対する剛性が必要になる。このため、単にテープ状の補強部を採用した従来の複合構造体では、軽量化には有利であるが、充分な剛性を確保することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、複数の金属製の構造要素と、構造要素に接合した繊維強化樹脂製の補強部材とを備えた複合構造体において、引張及びねじりの両方に対する剛性を確保することができ、自動車のボディパネル等に用いるのに好適な複合構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる複合構造体は、長尺状を成す金属製の複数の構造要素を同一面上に配置して隣接する2つの構造要素同士を交差領域で一体化した構造を有すると共に、構造要素に繊維強化樹脂製の補強部材を接合した構造を有する。構造要素は、長手方向に交差する断面において、上記の同一面に沿う天板部と、天板部の両端部から同一側に延出する一対の側板部とを備えている。補強部材は、連続した強化繊維を長手方向に配向するとともに構造要素の長手方向に沿って配置するテープ状の第1補強部材と、不連続の強化繊維を多方向に配向するとともに構造要素の局部範囲に配置する第2補強部材とを備えている。そして、複合構造体は、構造要素の天板部に、第1補強部材を側板部と接する状態で配置し、交差領域における構造要素同士の角部を含む局部範囲に、第2補強部材を第1補強部材と接する状態で配置し、第2補強部材が、第1補強部材を部分的に被覆する状態で第1補強部材と接していると共に、構造要素にも接していることを特徴としている。
なお、上記構成において、長尺状の構造要素とは、形材のように同一断面が連続する部材だけでなく、一般的な長めの部材、長手方向を特定し得る各種形態の部材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる複合構造体は、上記構成を採用したことにより、複数の金属製の構造要素と、構造要素に接合した繊維強化樹脂製の補強部材とを備えた複合構造体において、引張及びねじりの両方に対する剛性を確保することができ、自動車のボディパネル等に用いるのに好適であり、とくに、第2補強部材が、第1補強部材を部分的に被覆する状態で第1補強部材と接していると共に、構造要素にも接しているので、連続した強化繊維を配向した第1補強部材に対して、その配向に交差する方向の強度を第2補強部材で確保し、補強部材の使用量を必要最低限にして引張及びねじりの両方に対する剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係わる複合構造体の一実施形態を説明する正面図である。
【
図2】構造要素を説明する正面図(A)、
図A中のI-I線矢視に基づく断面図(B)、
図A中のII-II線矢視に基づく断面図(C)、及び
図A中のIII-III線矢視に基づく断面図(D)である。
【
図3】第1補強部材を配置した構造要素を説明する正面図(A)、
図A中のI-I線矢視に基づく断面図(B)、
図A中のII-II線矢視に基づく断面図(C)、及び
図A中のIII-III線矢視に基づく断面図(D)である。
【
図4】
図1中のI-I線矢視に基づく断面図(A)、II-II線矢視に基づく断面図(B)、III-III線矢視に基づく断面図(C)、IV-IV線矢視に基づく断面図(D)、及びV-V線矢視に基づく断面図(E)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図4は、本発明に係わる複合構造体の一実施形態を説明する図である。
すなわち、複合構造体は、長尺状を成す金属製の複数の構造要素を同一面上に配置して隣接する2つの構造要素同士を交差領域で一体化した構造を有すると共に、構造要素に繊維強化樹脂製の補強部材を接合した構造を有する。
【0010】
複数の構造要素は、とくに、同一面上に配置して一体化した構造を有し、全体として、開口を有する二次元的な枠状を成す。交差領域は、隣接する2つの構造要素に共通する領域であり、構造要素の一部と解釈することもできるが、補強部材の配置を説明する都合上、一構成部位として説明する。
【0011】
より具体的に説明すると、
図1に例示する複合構造体Aは、自動車のボディパネルである。
図1は、車体右側を構成するボディパネルを車体内側から見た正面図である。
【0012】
図示の複合構造体Aにおける構成要素は、ボディパネルにおいて上下方向を長手方向とするフロントピラー部FP、センターピラー部CP、及びリアピラー部RPである。
【0013】
また、同じく構造要素は、ボディパネルにおいて前後方向を長手方向としてフロントピラー部FP、センターピラー部CP及びリアピラー部RPの上端及び下端を夫々連ねるルーフサイドRS部及びシル部CLである。
【0014】
そして、複合構造体(ボディサイドパネル)Aは、構造要素間に、前側ドア及び後側ドアを取り付けるための前側開口部FO及び後側開口部ROを形成し、全体として2つの開口部FO,ROを有する枠状を成している。
【0015】
図示の複合構造体Aにおいて、隣接する2つの構造要素同士の交差領域は、フロントピラー部FPの上端とルーフサイド部RSの前端とを一体化するフロント上側交差領域C1、フロントピラー部FPの下端とシル部CLの前端とを一体化するフロント下側交差領域C2である。これにより、フロントピラー部FPと、ルーフサイド部RS及びシル部CLとは、概略的に夫々L字形状に一体化した構造になっている。
【0016】
また、同じく交差領域は、センターピラー部CPの上端とルーフサイド部RSの中間とを一体化するセンター上側交差領域C3、センターピラー部CPの下端とシル部CLの中間とを一体化するセンター下側交差領域C4である。これにより、センターピラー部CPと、ルーフサイド部RS及びシル部CLとは、概略的に夫々T字形状に一体化した構造になっている。
【0017】
さらに、同じく交差領域は、リアピラー部RPの上端とルーフサイド部RSの後端とを一体化するリア上側交差領域C5、リアピラー部RPの下端とシル部CLの後端とを一体化するリア下側交差領域C6である。これにより、リアピラー部RPと、ルーフサイド部RS及びシル部CLとは、概略的に夫々L字形状に一体化した構造になっている。
【0018】
上記の構造要素のうちのセンターピラー部CP、ルーフサイド部RS、及びシル部CLは、
図2に示すように、長手方向に交差する断面において、上述の同一面(各構造要素を配置する面)に沿う天板部1と、天板部1の両端部から同一側に且つ互いに平行に延出する一対の側板部2,2とを備えている。両側板部2,2は、天板部1に対して所定角度を成して延出しており、平行でない場合もあり得る。これにより、センターピラー部CP、ルーフサイド部RS、及びシル部CLは、車体内側に開放された断面形状を有している。
【0019】
また、構造要素のうちのフロントピラー部FP及びリアピラー部RPは、同様に、天板部1及び側板部2を有している。なお、フロントピラー部FP及びリアピラー部RPの側板部2は、前後の開口部FO,RO側のみに設けても良い。
【0020】
複合構造体Aにおいて、金属製の構造要素は、その材料が限定されるものではないが、一例として、軽量化に有利なアルミニウム合金であり、例えば、一枚のブランク材にプレス加工を施すことにより長尺状を成す金属製の複数の構造要素が交差領域で一体化した構造を成形することができる。
【0021】
補強部材は、連続する強化繊維を長手方向に配向したテープ状の第1補強部材R1と、不連続の強化繊維を多方向に配向した第2補強部材R2とを備えている。補強部材は、その材料が限定されるものではないが、好適な例として、炭素繊維を強化繊維とする熱可塑性樹脂(CFRTP)を挙げることができる。
【0022】
第1補強部材R1は、連続する多数の強化繊維を一方向に揃えて樹脂を含浸することにより、所定の幅及び厚さを有するテープ状に形成されたものであり、要求強度に応じて適数枚を積層配置しても良い。この第1補強部材R1は、構造要素の長手方向に沿って配置することで、強化繊維の配向を構造要素の長手方向に合わせる。
【0023】
他方、第2補強部材R2は、不連続の多数の強化繊維(短繊維)を樹脂に含浸することにより、強化繊維を多方向に配向したものである。第2補強部材R2は、例えば、熱溶着積層により形成することができ、要求強度に応じて積層高さや範囲を決定することができる。なお、第2補強部材R2は、射出成形や樹脂プレス成形により成形することも可能である。この第2補強部材R2は、交差領域を含む構造要素の局部範囲に配置する。
【0024】
そして、複合構造体Aは、構造要素(FP,CP,RP,RS,CL)の天板部1に、第1補強部材R1を側板部2と接する状態で配置して、交差領域C1~C6における構造要素同士の角部Kを含む局部範囲に、第2補強部材R2を第1補強部材R1と接する状態で配置する。
【0025】
複合構造体Aは、より好ましい実施形態として、第2補強部材R2が、第1補強部材R1を部分的に被覆する状態で同第1補強部材R1と接している構成を採用し得る。この場合、補強部材は、
図3に示すように、第1補強部材R1を先に配置することになる。
【0026】
第1補強部材R1は、構造要素における天板部1の全面を被覆するように配置して両側の側板部2,2に接する状態にしても良いが、この実施形態では、天板部1の両端のみに配置している。つまり、複合構造体Aは、
図3(B)~(D)に、構造要素であるルーフサイド部RS、センターピラー部CP、及びシル部CLの横断面を示すように、天板部1に、2つの第1補強部材R1,R1を互いに離間した状態で配置している。この際、一方の第1補強部材R1は、一方の側板部2に接し、他方の第1補強部材R1は、他方の側板部2に接している。なお、図示を省略したが、第1補強部材R1は、構造要素であるフロントピラー部FP及びリアピラー部RPに配置しても良い。
【0027】
複合構造体Aは、より好ましい実施形態として、第1補強部材R1が、交差領域に連続して配置してある構成を採用し得る。また、複合構造体Aは、より好ましい実施形態として、交差領域において隣接する2つの構造要素の第1補強部材R1同士が交差している構成を採用し得る。
【0028】
複合構造体Aは、
図3(A)に示すように、センターピラー部CPの第1補強部材R1,R1の上端が、センター上側交差領域C3に連続して、ルーフサイド部RSの上側の側板部2にも接している。また、センターピラー部CPの第1補強部材R1,R1の下端が、センター下側交差領域C4に連続して、シル部CLの下側の側板部2にも接している。
【0029】
さらに、複合構造体Aは、同じく
図3(A)に示すように、ルーフサイド部RSの第1補強部材R1,R1が、ルーフサイド部RSの前端からセンター上側交差領域C3を経て後端に至る長手方向全体にわたって連続している。また、複合構造体Aは、シル部CLの第1補強部材R1,R1が、シル部CL前端からセンター下側交差領域C4を経て後端に至る長手方向全体にわたって連続している。
【0030】
そして、複合構造体Aは、同じく
図3(A)に示すように、センター上側交差領域C3において、センターピラー部CPの第1補強部材R1とルーフサイド部RSの第1補強部材R1とが交差している。また、複合構造体Aは、センター下交差領域C4において、センターピラー部CPの第1補強部材R1とシル部CLの第1補強部材R1とが交差している。
【0031】
ここで、複合構造体Aは、ボディサイドパネルに好適な実施形態として、とくにセンター下側交差領域C4においては、シル部CLの天板部1に配置した第1補強部材R1,R1に対して、センターピラー部CPの天板部1に配置した第1補強部材R1,R1が乗り上げて交差している。
【0032】
さらに、複合構造体Aは、より好ましい実施形態として、構造要素の中間部における局部範囲に、一方の側板部2から他方の側板部2に至る第2補強部材R2を第1補強部材R1と接する状態で配置した構成を採用し得る。
【0033】
この実施形態の複合構造体Aは、
図1及び
図4(A)~(C)に示すように、センターピラー部CPの中間部、ルーフサイド部RS及びシル部CLの前側開口部FOに対応する範囲の中間部、並びにルーフサイド部RS及びシル部CLの後側開口部ROに相当する範囲の中間部における夫々の局部範囲に、一方の側板部2から他方の側板部2に至る第2補強部材R2が配置してある。これらの第2補強部材R2は、センターピラー部CP、ルーフサイド部RS及びシル部CLに夫々配置した2つの第1補強部材R1,R1に接している。
【0034】
さらに、複合構造体Aは、先述の如く、隣接する2つの構造要素が、概略的にT字形状又はL字形状に一体化した構造を有しており、より好ましい実施形態として、交差領域における複数の局部範囲に第2補強部材R2を配置すると共に、夫々の第2補強部材R2が、少なくとも一部で連続している構成を採用し得る。
【0035】
この実施形態の複合構造体Aは、フロント上側交差領域C1及びフロント下側交差領域C2においては、角部Kを含む局部範囲に、第2補強部材R2が夫々配置してある。また、複合構造体Aは、リア上側交差領域C5及びリア下側交差領域C6においては、角部Kを含む局部範囲に、第2補強部材R2が夫々配置してある。
【0036】
さらに、複合構造体Aは、
図1及び
図4(D)に示すように、センター上側交差領域C3においては、2つの角部K,Kを有するので、夫々の角部K,Kを含む2つの局部範囲と、ルーフサイド部RSの上側の第1補強部材R1を含む局部範囲との三箇所に、第2補強部材R2が配置してある。そして、複合構造体Aは、上記三箇所の局部範囲に配置した第2補強部材R2同士を一部で連続させている。これらの連続部分は、同じ第2補強部材R2で形成する。
【0037】
図示例では、センター上側交差領域C3において、センターピラー部CPの2つの第1補強部材R1及びルーフサイド部RSの下側の第1補強部材R1を夫々被覆し且つ隣接する2つの第2補強部材R2,R2間に掛け渡すように配置した第2補強部材R2により、各局部範囲の第2補強部材R2同士を連続させている。
【0038】
さらに、複合構造体Aは、
図1及び
図4(E)に示すように、センター下側交差領域C4においては、センター上側交差領域C3と同様に、夫々の角部K,Kを含む2つの局部範囲と、シル部CLの下側の第1補強部材R1を含む局部範囲との三箇所に、第2補強部材R2が配置してあり、これらの第2補強部材R2同士を連続させている。その連続部分は、センター上側交差領域C3と同様に配置した第2補強部材R2で形成している。
【0039】
なお、第2補強部材R2は、例えば、センター上側交差領域C3やセンター下側交差領域C4の全体を被覆するように配置し、複数の局部範囲に配置したものを一体化した構造にすることも可能であるが、要求される強度や重量、材料の歩留まり及び製造コストなどを考慮して、配置の形態を決定するのがより望ましい。
【0040】
上記構成を備えた複合構造体Aは、構造要素が、天板部1と一対の側板部2,2とにより片側に開口した断面形状を有すると共に、補強部材が、連続する強化繊維を長手方向に配向したテープ状の第1補強部材R1と、不連続の強化繊維を多方向に配向した第2補強部材R2を有する。
【0041】
上記複合構造体Aは、構造要素(FP,CP,RP,RS,DL)の天板部1に、その長手方向に沿って、第1補強部材R1を配置することで、構造要素の長手方向と連続した強化繊維の配向とが一致した状態になる。これにより、複合構造体Aは、構造要素の長手方向の引張に対する充分な剛性を確保し、しかも、第1補強部材R1を構造要素の側板部2に接した状態にすることで、構造要素のねじりに対する剛性を確保する。
【0042】
また、上記複合構造体Aは、交差領域C1~C6における構造要素同士の角部Kを含む局部範囲に、第2補強部材R2を第1補強部材R1と接する状態で配置することで、交差領域C1~C6に不特定の方向から荷重を受けた際、これにより生じる曲げ応力に対する剛性を高めることができる。
【0043】
さらに、上記複合構造体Aは、複数の構造要素を同一面上に配置して一体化した構造を有し、全体として開口を有する二次元的な枠状を成すものであるから、全体的なねじりが生じ易い。そこで、複合構造体Aは、連続した強化繊維を一方向に配向して構造要素の長手方向に配置する第1補強部材R1と、不連続の強化繊維を多方向に配向して局部範囲に配置する第2の補強部材R2とを採用することで、構造体全体のねじりに対する剛性を確保している。
【0044】
このようにして、上記複合構造体Aは、複数の金属製の構造要素(FP,CP,RP,RS,DL)と、繊維強化樹脂製の補強部材である第1及び第2の補強部材R1,R2とで構成することで、軽量化を実現しつつ、引張及びねじりの両方に対する剛性を確保することができる。
【0045】
また、上記複合構造体Aは、必要な部位に第1及び第2の補強部材R1,R2を配置するので、材料の歩留まりが良好であると共に、生産性の向上、製造コストの低減、及び軽量化などに貢献することができる。
【0046】
このような複合構造体Aは、とくに、開口を有する枠状を成すとともに外部からの荷重が想定されるものとして、自動車のボディパネルに用いるのに非常に好適である。換言すれば、引張及びねじりの両方に対する剛性を充分に備えた自動車のボディパネルを提供し得ることとなる。
【0047】
上記複合構造体Aは、ボディパネルに適用した場合、センター下側交差領域C4において、シル部CLの天板部2に配置した第1補強部材R1に対して、センターピラー部CPの天板部1に配置した第1補強部材R1が乗り上げて交差している。これにより、ボディサイドパネルは、シル部Clに配置した第1補強部材R1の連続強化繊維が、曲がることなくシル部CLの全長にわたって配向された状態となり、これに第2補強部材R2が加わるので、センター下側交差領域C4の剛性が充分に得られ、側面衝突に充分に耐える強度を確保することができる。
【0048】
また、上記複合構造体Aは、第2補強部材R2が、第1補強部材R1を部分的に被覆する状態で第1補強部材R1と接している。これにより、複合構造体Aは、構造要素に対して第1補強部材R1を配置して、第1補強部材R1の連続した強化繊維が曲がるのを極力回避し、強化繊維による剛性確保をより高めることができる。
【0049】
さらに、上記複合構造体Aは、構造要素の中間部における局部範囲に、一方の側板部2から他方の側板部2に至る第2補強部材R2を第1補強部材R1と接する状態で配置している。これにより、上記複合構造体Aは、連続した強化繊維を配向した第1補強部材R1に対して、その配向に交差する方向の強度を第2補強部材R2で確保し、補強部材の使用量を必要最低限にして引張及びねじりの両方に対する剛性を確保することができる。
【0050】
さらに、上記複合構造体Aは、隣接する2つの構造要素が、T字形状又はL字形状に一体化した構造を有しており、交差領域(C1~C6)における複数の局部範囲に第2補強部材R2を配置すると共に、夫々の第2補強部材R2が、少なくとも一部で連続している。これにより、上記複合構造体Aは、交差領域に引張、曲げ、及び剪断の複雑な力が作用した際に、第1補強部材R1を第2補強部材R2で補強することができ、補強部材の使用量を必要最低限にして引張及びねじりの両方に対する剛性を確保することができる。
【0051】
さらに、上記複合構造体Aは、第1補強部材R1が、交差領域C1~C6に連続して配置してある。これにより、上記複合構造体Aは、各構造要素(FP,CP,RP,RS,DL)の全長にわたって第1補強部材R1を配置した構造になり、長手方向の引張及びねじりの両方に対する剛性を確実に維持し得る。
【0052】
さらに、上記複合構造体Aは、交差領域C1~C6において、2つの構造要素の第1補強部材R1同士が交差している。これにより、上記複合構造体Aは、交差領域に不特定方向の力が作用した場合でも、各構造要素の引張及びねじりに対する剛性を確保し得る。
【0053】
さらに、上記複合構造体Aは、構造要素の長手方向に交差する断面において、天板部1に、2つの第1補強部材R1,R1を互いに離間した状態で配置し、一方の第1補強部材R1が、一方の側板部2に接し、他方の第1補強部材R1が、他方の側板部2に接している構造である。これにより、複合構造体Aは、は、第1補強部材R1の使用量を必要最低限にして、構造要素の引張及びねじりに対する剛性を確保し得る。
【0054】
本発明に係る複合構造体は、
図1~
図4に示す上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。つまり、複合構造体は、自動車のボディサイドパネル以外にも当然適用可能であり、構造要素の数や配置、第1及び第2の補強部材の配置数や配置範囲を適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
A 複合構造体(ボディサイドパネル)
CL シル部(構造要素)
CP センターピラー部(構造要素)
FP フロントピラー部(構造要素)
RP リアピラー部(構造要素)
RS ルーフサイド部(構造要素)
C1 フロント上側交差領域
C2 フロント下側交差領域
C3 センター上側交差領域
C4 センター下側交差領域
C5 リア上側交差領域
C6 リア下側交差領域
K 角部
R1 第1補強部材
R2 第2補強部材
1 天板部
2 側板部