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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】流体噴管及び送風作業機
(51)【国際特許分類】
   E01H 1/08 20060101AFI20240110BHJP
   F04D 25/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E01H1/08 B
F04D25/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020101386
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021195756
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】白井 健
(72)【発明者】
【氏名】西原 章太
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏高
(72)【発明者】
【氏名】白石 郁美
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-34198(JP,U)
【文献】特許第2609716(JP,B2)
【文献】特開2016-123398(JP,A)
【文献】特開2016-8504(JP,A)
【文献】特開2006-46689(JP,A)
【文献】特開2002-227153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/08
F04D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出口開口を有する噴管本体と、前記出口開口内に配設されるガイドシャッタと、該ガイドシャッタを制御するための操作部と、を備える流体噴管であって、前記ガイドシャッタは、前記噴管本体の内面に沿って延びる風上側端縁と、該風上側端縁から風下側へと延在する風向案内面と、を備え、さらに、前記ガイドシャッタは、前記操作部が駆動されることにより、前記風向案内面が前記噴管本体の軸線に沿って延びる不作用姿勢と、前記風上側端縁が前記噴管本体の内面に近接又は接触し且つ前記風向案内面によって前記出口開口が部分的に閉じられる作用姿勢との間で、揺動変位可能である、流体噴管。
【請求項2】
前記噴管本体が先端部に狭窄部を有する窄まり形状であり、該狭窄部によって前記出口開口が形成され、前記ガイドシャッタが前記不作用姿勢にあるときには、前記出口開口を正面から見て、前記風向案内面が前記狭窄部に隠れる位置となる、請求項1に記載の流体噴管。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体噴管と、該流体噴管に送風する送風機と、該送風機を駆動する原動機と、前記送風機と前記原動機とを支持すると共に作業者によって保持される機体枠と、前記操作部を遠隔的に駆動させるための遠隔操作部と、を備え、前記機体枠を保持した状態で作業者の手が届く位置に前記遠隔操作部が配設される、送風作業機。
【請求項4】
前記出口開口が地面へ向けて斜めに対向するように作業者が前記流体噴管を保持した状態において、前記ガイドシャッタを前記作用姿勢へと変位させることで前記風向案内面が水平に近くなるように、前記流体噴管が前記送風作業機に含まれている、請求項3に記載の送風作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴管に関し、特に、落ち葉等の、吹き飛ばし作業や吹き寄せ作業等に用いて好適な流体噴管に関する。本発明はまた、流体噴管を有する送風作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーブロワと呼ばれる携帯式の送風作業機は、落ち葉等の、吹き飛ばし作業や吹き寄せ作業等に用いて好適なものである。
【0003】
この種の送風作業機においては、使用条件や使用場所に応じて、比較的大きい風量の吐出噴流を必要とするときと、比較的高い風速をもった勢いの強い吐出噴流を必要とするときとがある。例えば、広範囲に亘って大量に散乱している乾燥した落ち葉を吹き寄せる場合には、大きな吐風口から大量に吐出される噴流が適している。一方、側溝に溜まって密集した湿り気のある落ち葉を除去する場合には、狭小な吐風口から高速で吐出される噴流の方が適している。このため、噴管から吐出される噴流の風量と風速を作業中に適宜に調整できると便利である。
【0004】
下記特許文献1には、吐出口近傍に調節体を回動自在若しくは長手方向に沿い移動自在に装着してなる加圧風調節噴頭(特許文献1の実用新案登録請求の範囲(1)参照)が掲載されている。特許文献1によれば、この加圧風調節噴頭は、調節体によって吐出口の開口断面積若しくは開口方向を適宜に変更することで、噴出される風量、風向、風圧等を必要に応じて容易に選定可能としたものであるとされている(特許文献1の明細書第1頁第18行~同第2頁第2行)。
【0005】
特許文献1には、調節体は吐出口近傍において内壁への近接状態のもとに揺動自在に装着される(特許文献1の実用新案登録請求の範囲(2)参照)態様が例示されている。この実施例は、特許文献1の第4図及び第5図に示されている。そして、この実施例によれば、「調節体の夫々を支軸aを介して所望位置に設定することで、吐出口eからの風量や風向を容易に変更可能である」とされている(特許文献1の明細書第6頁第1行~同第4行)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実願昭60-124049号(実開昭62-34198号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、特許文献1の第4図及び第5図のものは、調節体の向きを変更することで、吐出噴流の風向は調節できるかも知れない。しかしながら、調節体の向きを変えても風量には大きな変化は期待できず、したがって、風量及び風速の調節が確実にできるとは言えない。
【0008】
また、特許文献1の第4図及び第5図のものは、風向を横広がりの噴頭の横方向に変更できるに止まるので、地面に張り付いた濡れ落ち葉を吐出噴流で剥がし取る作業には適さない。
【0009】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、吐出噴流の風量、風速及び風向を同時且つ確実に調整し得る、流体噴管及び送風作業機を提供しようとするものである。本発明はまた、地面に張り付いた濡れ落ち葉を剥がし取る作業にも適する送風作業機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係る流体噴管は、出口開口を有する噴管本体と、前記出口開口内に配設されるガイドシャッタと、該ガイドシャッタを制御するための操作部と、を備える流体噴管であって、前記ガイドシャッタは、前記噴管本体の内面に沿って延びる風上側端縁と、該風上側端縁から風下側へと延在する風向案内面と、を備え、さらに、前記ガイドシャッタは、前記操作部が駆動されることにより、前記風向案内面が前記噴管本体の軸線に沿って延びる不作用姿勢と、前記風上側端縁が前記噴管本体の内面に近接又は接触し且つ前記風向案内面によって前記出口開口が部分的に閉じられる作用姿勢との間で、揺動変位可能であることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
本発明の流体噴管によれば、ガイドシャッタが不作用姿勢にあるときには、噴管本体の出口開口が全開状態である。したがって、吐出される噴流は、風量が最大、風速が最小、風向は噴管本体の軸線方向となる。一方、ガイドシャッタが作用姿勢にあるときには、ガイドシャッタによって噴管本体の出口開口が部分的に閉じられる。したがって、吐出される噴流は、風量が最小で風速が最大となる。加えて、ガイドシャッタが作用姿勢にあるときには、噴管本体内を流れる噴流が風向案内面の延在方向へと案内される。したがって、操作部を駆動してガイドシャッタを不作用姿勢と作用姿勢との間で揺動変位させることで、吐出噴流の風量、風速及び風向を同時且つ確実に調整することができる。
【0012】
好適な実施の一形態として、前記噴管本体が先端部に狭窄部を有する窄まり形状であり、該狭窄部によって前記出口開口が形成され、前記ガイドシャッタが前記不作用姿勢にあるときには、前記出口開口を正面から見て、前記風向案内面が前記狭窄部に隠れる位置となる態様としてもよい(請求項2)。
【0013】
本発明に係る送風作業機は、前記流体噴管と、該流体噴管に送風する送風機と、該送風機を駆動する原動機と、前記送風機と前記原動機とを支持すると共に作業者によって保持される機体枠と、前記操作部を遠隔的に駆動させるための遠隔操作部と、を備え、前記機体枠を保持した状態で作業者の手が届く位置に前記遠隔操作部が配設されることを特徴とする(請求項3)。
【0014】
本発明の送風作業機によれば、作業者が、送風作業を行いながら遠隔操作部を操作することで、ガイドシャッタを揺動変位させることができる。このため、送風作業中に、流体噴管から吐出される噴流の風量、風速及び風向を同時に調整することができ、作業性が向上する。
【0015】
好適な実施の一形態として、前記出口開口が地面へ向けて斜めに対向するように作業者が前記流体噴管を保持した状態において、前記ガイドシャッタを前記作用姿勢へと変位させることで前記風向案内面が水平に近くなるように、前記流体噴管が前記送風作業機に含まれる態様としてもよい(請求項4)。このようにすれば、作業者が自然な送風作業姿勢をとった状態で、出口開口から水平に近い方向に高速な噴流を吐出させることができる。このため、地面に張り付いた濡れ落ち葉を作業者が楽な作業姿勢で剥がし取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の一形態に係る送風作業機の概略斜視図である。
図2図1中の流体噴管の先端部(前端部)の縦断側面図である。
図3図2の流体噴管の概略斜視図であり、(a)はガイドシャッタが不作用姿勢の状態を、(b)はガイドシャッタが作用姿勢の状態を示している。
図4図2の流体噴管の好適な使用態様を示す断面図であり、(a)はガイドシャッタが不作用姿勢の状態を、(b)はガイドシャッタが作用姿勢の状態を示している。
図5図1中の流体噴管の先端部(前端部)の左側面図である。手元側操作部と操作力伝達部材と先側操作部との連動連結関係の説明図も含んでいる。
図6】ガイドシャッタを不作用姿勢と作用姿勢との間で変位させたときの風量と風速との関係を示すグラフである。
図7】手元側操作部の配設位置の別例を示す送風作業機の概略斜視図である。
図8】ガイドシャッタと噴管本体の組み合わせの他の実施の形態を示す説明図である。(a)は、半円弧状のガイドシャッタと円筒状の噴管本体の組み合わせの例の斜視図であり、(b)~(d)は、平板状のガイドシャッタと出口開口が四角形の噴管本体の組み合わせの例の斜視図であり、(c),(d)は、(b)のものにおいて、ガイドシャッタの支軸の位置の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明に係る流体噴管は、携帯式又は可搬式の送風作業機に適用すると好適なものである。具体的には、背負式の送風作業機や手持式の送風作業機が挙げられる。ここでは、背負式の送風作業機を例示して説明する。
【0019】
図1に示す本発明の実施の一形態に係る送風作業機1は、作業者が機体2を背負って移動しながら、落ち葉等の、吹き飛ばし作業や吹き寄せ作業等を行うのに適する作業機である。
【0020】
図1の送風作業機1は、背負式の機体枠(背負架台)3を備え、この機体枠3には、機体2を構成する送風機4と原動機5等が搭載される。原動機5は、送風機4の駆動源であり、一例として小型空冷二サイクル等の内燃エンジン5aである。機体枠3上には、内燃エンジン5aに燃料を供給するための燃料タンク6も搭載される。内燃エンジン5aに代えて、電動モータを原動機5として採用してもよい。この場合には、燃料タンク6に代えて、モータ駆動電源としてのバッテリが機体枠3に搭載される。
【0021】
送風機4は、吹き出し口7aを有するファンケース7を備える。吹き出し口7aには、L字状に屈曲したエルボパイプ8が接続され、このエルボパイプ8には、可撓性を有するベローズホース9と、回り接手パイプ10とを介して、本発明の本実施の一形態に係る流体噴管11が接続される。これにより、送風機4によって創出される気流が、流体噴管11の先端(前端)から吐出される。
【0022】
流体噴管11上にはハンドル12が固定される。機体枠3を背負った状態の作業者は、片手(右手)でハンドル12を把持して、流体噴管11の向きや位置を制御しながら送風作業を行う。ハンドル12の先端(上端)には、原動機5の出力を制御するためのトリガ式等の出力操作部材13が配設される。作業者は、ハンドル12を把持した状態で、出力操作部材13を指で駆動することで、原動機5の出力を制御する。
【0023】
流体噴管11は、先端(前端)に出口開口14aを有する円筒状の噴管本体14と、出口開口14a内に配設されるガイドシャッタ15と、ガイドシャッタ15を制御するための先側操作部16と、を備える。ガイドシャッタ15は、噴管本体14内に揺動変位可能に取り付けられる。
【0024】
詳しくは後述するが、ガイドシャッタ15は、先側操作部16が駆動されることにより、不作用姿勢と作用姿勢との間を揺動変位する。これにより、ガイドシャッタ15は、出口開口14aの開口面積を変化させると共に、出口開口14aから吐出される噴流の向きを変化させる。よって、先側操作部16を駆動してガイドシャッタ15の姿勢を変更させることで、吐出噴流の風量、風速及び風向を同時に調整することができる。作業者は、手元に配設される手元側操作部25を操作することで、操作力伝達部材としてのボーデンケーブル26を介して、先側操作部16を遠隔的に駆動させることができる。
【0025】
図2に示すガイドシャッタ15は、噴管本体14よりもやや小径の短い円筒状の部材であり、上部の上流側の部分に斜めの切欠き17を有する形状とされている。ガイドシャッタ15は、対向する二箇所で支軸18L,18Rによって噴管本体14に対して上下揺動可能に枢支されている。これにより、ガイドシャッタ15は、図2に実線で示す不作用姿勢P1と、図2に仮想線で示す作用姿勢P2との間を揺動変位可能である。ガイドシャッタ15の切欠き17は、ガイドシャッタ15が送風風上側へ最大限傾斜した作用姿勢P2において、噴管本体14内を出口開口14aへ向けて流れる噴流を遮断することがないようにするためである。
【0026】
ガイドシャッタ15は、下部位置に、噴管本体14の内面に沿って延びる風上側端縁19と、同じく噴管本体14の内面に沿って延びる風下側端縁20と、風上側端縁19から風下側端縁20へと延在する風向案内面21と、を備える。ガイドシャッタ15が不作用姿勢P1にあるときには、風向案内面21が噴管本体14の軸線Xに沿って延びている。ガイドシャッタ15が不作用姿勢P1から作用姿勢P2に移行することで、風上側端縁19が噴管本体14の内面に近接又は接触し、且つ、風向案内面21が出口開口14aを部分的に閉じる。ガイドシャッタ15が作用姿勢P2にあるときには、ガイドシャッタ15の風向案内面21が噴管本体14の軸線Xと交差する方向に延びる。
【0027】
図2及び図3(a)に示すように、ガイドシャッタ15が不作用姿勢P1にあるときには、噴管本体14の出口開口14aが全開状態である。したがって、吐出される噴流は、風量が最大、風速が最小、風向は噴管本体の軸線方向となる。一方、ガイドシャッタ15が作用姿勢P2にあるときには、図2及び図3(b)に示すように、ガイドシャッタ15によって噴管本体14の出口開口14aの下部が閉じられる。すなわち、出口開口14aの開口面積が小さくなる。したがって、吐出される噴流は、風量が最小で風速が最大となる。加えて、ガイドシャッタ15が作用姿勢P2にあるときには、噴管本体14内を流れる噴流が風向案内面21の延在方向(図2及び図3(b)の例では風上側から風下側へ向けて斜め上向き)へと案内される。
【0028】
図2の例では、噴管本体14が、先端部に狭窄部22を有する窄まり形状とされ、この狭窄部22によって出口開口14aが形成されている。そして、ガイドシャッタ15が不作用姿勢P1にあるときには、出口開口14aを正面(図2の左方)から見て、風向案内面21が狭窄部22に隠れて位置している。ガイドシャッタ15の下面と噴管本体14の内面との間には隙間Cがあり、この隙間Cがあることで、ガイドシャッタ15の不作用姿勢P1から作用姿勢P2への揺動変位が可能となる。
【0029】
図2のガイドシャッタ15の変形例として、図2のガイドシャッタ15の支軸18L,18Rより上の部分を省略した、断面半円弧状のガイドシャッタとしてもよい。
【0030】
図2の流体噴管11の好適な使用態様について、図4を参照して説明する。図1の送風作業機1を用いて落ち葉吹き寄せ作業を行う場合、作業者は、噴管本体14の出口開口14aが地面Gへ向けて斜めに対向するように流体噴管11を保持する。図4(a)に示すように、ガイドシャッタ15が不作用姿勢P1にあるときには、全開の出口開口14aから噴管本体14の軸線X方向へと大きな風量の噴流F1が吐出される。この噴流F1は、地面Gに斜めに当たって扇形状に広がりながら前進する。このため、図4(a)の使用態様は、例えば、広範囲に亘って大量に散乱している乾燥した落ち葉を吹き寄せる場合に適する。
【0031】
図4(a)の使用態様での送風作業中に、側溝に溜まって密集した湿り気のある落ち葉や、地面Gに張り付いた濡れ落ち葉に遭遇したとする。この場合には、図4(b)に示すように、作業者は、ガイドシャッタ15を作用姿勢P2へと変位させる。これにより、ガイドシャッタ15によって出口開口14aの下部が閉じられるので、風量が減少する一方、風速は上がる。加えて、出口開口14aから吐出される噴流F2の風向が水平に近い向きとなる。出口開口14aから水平に近い方向に高速で吐出される噴流F2は、地面Gと濡れ落ち葉との間に入り込んで濡れ落ち葉の剥がし取りに貢献する。しかも、作業者が流体噴管11を斜め下向きに保持した自然な送風作業姿勢で、出口開口14aから水平に近い方向に高速な噴流F2を吐出させることができるので、張り付いた濡れ落ち葉を楽な作業姿勢で剥がし取ることができる。先端部が上方へと屈曲した取替用部品としての曲がり噴管のような使用感となる。
【0032】
図1に示すように、流体噴管11の先端部に配設される先側操作部16は、作業者の手元側に配設される遠隔操作部としての手元側操作部25によって遠隔操作可能とされる。手元側操作部25と先側操作部16は、操作力伝達部材としてのボーデンケーブル26で互いに連結される。作業者によって手元側操作部25が駆動されると、ボーデンケーブル26を介して先側操作部16が駆動され、噴管本体14内でガイドシャッタ15が揺動変位させられる。
【0033】
図5に示すように、先側操作部16は操作部材としての先側操作レバー27を備える。この先側操作レバー27は、噴管本体14の外部において、ガイドシャッタ15の二つの支軸18L,18Rの内の一方(図示例では18L)に固着される。先側操作レバー27の先端部にはワイヤエンド受入部28が形成される。ワイヤエンド受入部28には、ボーデンケーブル26を構成するインナーワイヤ29の先側ワイヤエンド24が嵌め込まれる。先側操作レバー27は、図5に示す原位置(不作用姿勢P1のガイドシャッタ15に対応する位置)に戻るように図示しないばねで常時付勢されている。
【0034】
噴管本体14上にはアウターチューブ固定具30が固着される。アウターチューブ固定具30には、インナーワイヤ29と共にボーデンケーブル26を構成するアウターチューブ31の先側端部31aが固定される。先側操作部16を、アウターチューブ固定具30周辺をも含めて、図示しないカバーで覆っておくと、送風作業時や倉庫等への収納時や車両の荷台に乗せての運搬時等の衝突による破損を防止できて好適である。
【0035】
図5に示すように、手元側操作部25は取付フレーム32を備え、この取付フレーム32上に手元側回転体33を備える。取付フレーム32上には支軸34が固着され、この支軸34に手元側回転体33が正逆回転自在に配設される。手元側回転体33の外周には、周方向のワイヤ溝35と、ワイヤエンド受入部36が形成される。ワイヤエンド受入部36には、インナーワイヤ29の手元側ワイヤエンド37が嵌め込まれ、インナーワイヤ29はワイヤ溝35に受け入れられる。手元側回転体33には、操作部材としての手元側操作レバー38が固着される。
【0036】
取付フレーム32には、アウターチューブ固定具39が配設される。アウターチューブ固定具39には、アウターチューブ31の手元側端部31bが固定される。
【0037】
図5において、作業者が手元側操作レバー38を時計回り方向へ回動操作することで、ボーデンケーブル26が駆動力を伝達し、先側操作レバー27が時計回り方向へ回転駆動される。これにより、図5に仮想線で示すように、噴管本体14内でガイドシャッタ15が不作用姿勢P1から作用姿勢P2へ向けて時計回り方向へと揺動駆動される。その結果、図2及び図3を参照して既に述べたように、出口開口14aから吐出される噴流の風量、風速及び風向が、ガイドシャッタ15によって同時に変化させられる。作業者が手元側操作レバー38から手を離すと、先側操作レバー27がばねにより図5に示す原位置に復帰し、ガイドシャッタ15が元の不作用姿勢P1に復帰する。
【0038】
限定はされないが、手元側操作部25は、支軸34と手元側回転体33との間にフリクション機構を介装する等して、手元側操作レバー38を、選択された任意の操作位置に停留可能な構成としてもよい。このようにすれば、作業者が手元側操作レバー38を解放しても、選択された操作位置に手元側操作レバー38が留まるので、作業者が出力操作部材13の操作や流体噴管11の向きの操作に集中でき、作業性が向上する。
【0039】
また、手元側操作部25は、クリックストップ機構を採用する等して、段階的に操作可能な構成としてもよいが、無段階に操作可能な構成とするのが好ましい。このようにすれば、出口開口14aの開口面積と風向とが無段階に調整可能となるので、吐出噴流の風量と風速と風向の組み合わせを微細に調整できる。
【0040】
図6は、図1の送風作業機において、ガイドシャッタ15を揺動変位させて出口開口14aの面積を変化させたときに得られる風量(CFM:cubic feet per minute:立方フィート毎分)と風速(mph:miles per hour:マイル毎時)との関係を示したグラフである。
【0041】
図6中、点Aは、ガイドシャッタ15が不作用姿勢P1にある(出口開口14aの面積が最大)のときの吐出噴流の風量及び風速の組み合わせを示している。点Aの状態からガイドシャッタ15を作用姿勢P2へ向けて揺動変位させて出口開口14aを徐々に狭めると、点B~Fのデータが得られた。点Fは、ガイドシャッタ15が作用姿勢P2にある(出口開口14aの面積が最小)のときの吐出噴流の風量及び風速の組み合わせである。
【0042】
図6の点A~Fの分布から、出口開口14aの面積を無段階に変化させたときの吐出噴流の風量と風速の関係は、近似的に直線Lで示される。図6の数値は、ある条件の下での一例である。しかし、全開時の出口開口14aの面積、原動機5の出力、送風機4の性能等がどのような場合であっても、ガイドシャッタ15を揺動変位させて出口開口14aの面積を変化させたときの吐出噴流の風量と風速の関係は、図6に示されるように近似的に直線で表すことができるものと推測される。よって、ガイドシャッタ15を揺動変位させることで、直線上の風量と風速の組み合わせを容易に実現できると考えられる。
【0043】
手元側操作部25は、機体枠3を背負った状態で作業者の手が届く位置に配設される。このため、作業者は、出力操作部材13の操作や流体噴管11の向きの操作をして送風作業を行いながら、空いている手で手元側操作部25を操作することで、ガイドシャッタ15を自在に揺動変位させることができる。送風作業中に、作業現場の状況に応じて、吐出噴流の風量、風速及び風向を同時に調整することができ、作業性が向上する。
【0044】
図1の例では、ハンドル12の元部近傍に手元側操作部25が配設されている。この場合、作業者は、ハンドル12を右手で持ち、原動機5の出力操作部材13を操作しながらでも、空いている左手で手元側操作部25を操作することができる。
【0045】
手元側操作部25の配設位置の別例として、図1の機体枠3の前部の下部の左側の位置(エルボパイプ8とは反対側の位置)を挙げることもできる。この場合、作業者は、ハンドル12を持って流体噴管11を右手で操作しながら、空いている左手を腰の後ろに回して手元側操作部25を操作することができる。
【0046】
手元側操作部25の配設位置のさらに他の例として、図7に示すものを挙げることもできる。図7において、図1と同一の構成要素には図1と同一の符号を付してある。図7の例においても、流体噴管11には、作業者によって把持されるハンドル12が配設され、このハンドル12に、原動機5の出力を制御するための出力操作部材13が配設される。
【0047】
図7の送風作業機50においては、例えば特開平10-299503号公報に掲載されているように、機体枠3の前部の下部の左側に、上下揺動可能なアーム51が配設される。そして、アーム51の先端側のグリップ部52の近傍に手元側操作部25が配設される。作業者は、グリップ部52を把持する左手の指で、手元側操作部25を操作することができる。
【0048】
なお、図7において、ハンドル12上の出力操作部材13を、手元側操作部25と同様に、アーム51上に配設することもできる。
【0049】
他の実施の形態として、ガイドシャッタ15と噴管本体14の具体的な組み合わせを次のようにしても良い。
【0050】
図8(a)の例は、断面半円弧状のガイドシャッタ40を採用し、このガイドシャッタ40の風上側端縁41の中央部を支軸42で円筒状の噴管本体43に揺動変位可能に枢支したものである。
【0051】
図8(b)~(d)の例は、出口開口44aが四角形の噴管本体44内に、平板状のガイドシャッタ45を支軸46で揺動変位可能に枢支したものである。この場合、支軸46の位置は、図8(b)に示すように、ガイドシャッタ45の風上側端縁47付近としても良いし、図8(c)に示すように、ガイドシャッタ45の風下側端縁48付近としても良いし、図8(d)に示すように、それらの中間位置としても良い。
【0052】
なお、図8のいずれの例においても、ガイドシャッタ40,45は、噴管本体43,44の内面に沿って延びる風上側端縁41,47と、風上側端縁から風下側へと延在する風向案内面と、を備え、ガイドシャッタ40,45の不作用姿勢P1において、風向案内面が噴管本体43,44の軸線に沿って延び、ガイドシャッタの作用姿勢P2において、風上側端縁41,47が噴管本体の内面に近接又は接触し且つ風向案内面によって噴管本体43,44の出口開口が部分的に閉じられることは勿論である。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 送風作業機
3 機体枠
4 送風機
5 原動機
11 流体噴管
14 噴管本体
14a 出口開口
15 ガイドシャッタ
16 操作部(先側操作部)
19 風上側端縁
20 風下側端縁
21 風向案内面
22 狭窄部
25 遠隔操作部(手元側操作部)
P1 不作用姿勢
P2 作用姿勢
X 噴管本体の軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8