(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】フェライト磁心コイルデバイス、そのようなフェライト磁心コイルデバイスを備える、回転可能物体の回転速度を判定するためのセンサデバイス、およびそのようなセンサデバイスを備えるターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240110BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20240110BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240110BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240110BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01F17/04 F
F02B39/00 G
F02D45/00 360Z
H01F17/04 A
H01F17/00 B
G01D5/245 110P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020105718
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-03-15
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518345815
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ソリューソンズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(72)【発明者】
【氏名】ティーゲーラー,ヨナタン アー.
(72)【発明者】
【氏名】トール,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】イストラーテ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】リビス,ロイク
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0024158(US,A1)
【文献】特開2018-013421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187366(US,A1)
【文献】特開2010-056996(JP,A)
【文献】特開2015-046463(JP,A)
【文献】特開2007-240404(JP,A)
【文献】特表2015-535571(JP,A)
【文献】特開2007-198821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00-41/10
F02D 43/00-45/00
G01D 5/00- 5/252
G01D 5/39- 5/62
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 38/42
H05K 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属回転可能物体(28)の回転速度を判定するためのセンサデバイス(1a)の検知素子としてのフェライト磁心コイルデバイス(1)であって、
前記フェライト磁心コイルデバイス(1)は、
- 電磁コイル(2)と、
- 前記電磁コイル(2)を保持するフェライト磁心(3)とを備え、
前記フェライト磁心(3)は、部分円のない円板の形状、したがって前記円板の輪郭および前記円板の弦(4a)によって画定される形状を有し、
前記弦(4a)は前記フェライト磁心(3)の曲がり縁部(4a)を形成し、
前記電磁コイル(2)の第1のセクタ(2a)はベッド(3a)に配置されず、前記電磁コイル(2)の第2のセクタ(2b)は前記ベッド(3a)に配置され、
前記第1のセクタ(2a)は、前記曲がり縁部(4a)の周りで、前記第2のセクタ(2b)に対して曲がり角度(a)で曲げられている、
フェライト磁心コイルデバイス。
【請求項2】
前記フェライト磁心(3)は前記ベッド(3a)から突出するピン(5)を有し、特に、前記ピン(5)は前記フェライト磁心(3)と同一の軸(x)を有し、
前記電磁コイル(2)は、前記ピン(5)に巻き付けられている、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項3】
前記ベッド(3a)は、前記円板の前記輪郭に沿って延びる前記フェライト磁心(3)の支持縁壁(3b)と、前記曲がり縁部(4a)とによって画定されている、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項4】
前記ベッド(3a)は、前記円板の前記輪郭に沿って延びる前記フェライト磁心(3)の支持縁壁(3b)と、前記曲がり縁部(4a)とによって画定されており、
前記ピン(5)の高さは、前記ベッド(3a)からの前記
支持縁壁(3b)の高さと略同一である、
請求項2に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項5】
巻き付けられた前記電磁コイルの半径(R2)が、前記フェライト磁心(3)の半径(R1)より小さい、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項6】
前記電磁コイル(2)の前記第1のセクタ(2a)と前記電磁コイル(2)の前記第2のセクタ(2b)との比は、1:1~1.5:1である、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項7】
前記曲がり角度(a)は70~110°であり、特に、前記電磁コイル(2)は90°の曲がり角度を有する略L字形のコイルである、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項8】
前記電磁コイル(2)は10~30の巻きを有する、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項9】
前記電磁コイル(2)は、前記電磁コイル(2)のすべての巻きが前記ベッド(3a)に接触するように巻き付けられている、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項10】
前記電磁コイル(2)は可撓性ポリマー基板にプリントされている、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項11】
前記フェライト磁心(3)は0.2mm~2mmの厚さを有する、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項12】
前記フェライト磁心(3)は50~3000の透磁率μrを有する、
請求項1に記載のフェライト磁心コイルデバイス。
【請求項13】
回転可能物体(28)の回転速度を判定するためのセンサデバイス(1a)であって、
前記センサデバイス(1a)は、センサ部(9)、取付部(8)、およびコネクタ部(7)を有するセンサハウジングを備え、
請求項1から12のいずれか一項に記載のフェライト磁心コイルデバイス(1)が、前記センサ部(9)のセンサ先端部(15)に配置されている、
センサデバイス。
【請求項14】
ターボチャージャ(20)であって、
前記ターボチャージャ(20)は、
- ターボチャージャハウジング(21)と、
- 請求項13に記載のセンサデバイス(1a)と、を備え、
圧縮機インペラ(28)が、前記ターボチャージャハウジング(21)内に配置され、前記ターボチャージャハウジング(21)の壁(30)に凹部が設けられ、前記凹部に、少なくとも前記センサデバイス(1a)のセンサ部(9)が配置されて、前記センサデバイス(1a)の前記フェライト磁心コイルデバイス(1)が、前記壁(30)を通って突出し、前記圧縮機インペラ(28)から所定距離(37)、特に0.5~1mmの距離で前記圧縮機インペラ(28)に面するようになっている、
ターボチャージャ。
【請求項15】
請求項13に記載のセンサデバイス(1a)を用いて、回転可能物体、特にターボチャージャブレードの回転速度を判定するための方法であって、
- センサ先端部(15)が回転物体(28)から所定距離(37)にあるように前記センサデバイス(1a)を配置するステップと、
- 前記フェライト磁心コイルデバイス(1)に入力電流を加えるステップと、
- 振幅変調出力電圧信号を前記センサデバイス(1a)の出力として読み取るステップと、
- 前記センサデバイス(1a)の復調出力電圧信号を評価することによって前記回転速度を判定するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト磁心コイルデバイスに関し、より詳細には、センサデバイスのフェライト磁心コイルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャは、自動車エンジンの排ガスの廃エネルギーを圧縮空気に変換し、その後、この圧縮空気を自動車エンジンに送り返す。これにより、エンジンはより多くの燃料を燃やして、より多くの電力を発生させるが、エネルギーの消費は少なくなり、したがって、燃焼プロセスの全体的な効率が向上する。ターボチャージャは、通常、タービンホイールと圧縮機ホイールとを備え、これらは軸受システムに支持された共通の軸によって接続される。タービンホイールは排ガスによって駆動され、これにより圧縮機ホイールを駆動し、圧縮機ホイールは周囲空気を吸引して圧縮し、その後、この空気がエンジンのシリンダに供給される。ターボ過給により、小型エンジンの性能レベルを、少ない燃料消費および排気で、ターボ過給のない大型エンジンの性能レベルまで上げることができる。
したがって、ターボチャージャは、乗用車、商用車、オフロード車、およびスポーツ車において、ディーゼルエンジンおよびガソリンエンジンと共にますます使用されるようになっている。
【0003】
ターボチャージャの圧縮機ホイールの回転速度を判定することは、ターボチャージャの効率を最適化するため、かつターボチャージャとエンジンとがそれぞれ安全な動作範囲に確実に収まるようにするために重要である。現在のターボチャージャは、ますます高くなる排ガス温度および圧縮機入口温度で確実に連続して動作する必要がある。ディーゼルのターボチャージャと比べると、最新のガソリンターボチャージャは、圧縮機ホイールの温度が約200℃以上である状態で、はるかに高いアンダーフード温度環境(underhood temperature environment)において動作しなければならない。最新のターボチャージャの圧縮機ホイールは、通常、高応力に耐えることのできるアルミニウム、チタン、またはマグネシウムなどの頑丈で軽量の導電性材料から構成される。
そのような圧縮機ホイールの回転速度を、有効渦電流の原理によって測定することができると好ましい。この原理では、振動系によって磁場が発生し、検知コイルを使用して、圧縮機ブレードがセンサ先端部前の磁場を通過したときに圧縮機ブレードを検出する。
【0004】
ターボチャージャ速度センサは、センサヘッド/センサ先端部を、センサ電子機器につながるケーブルを介して、圧縮機ホイールの近くに位置する検知素子に接続することによって実施されることが多い。
【0005】
ターボチャージャ速度を測定するための適用は、インペラ/圧縮機ホイール(ターゲットホイール)が、通常、非常に薄く(特に乗用車の場合、10分の数ミリメートル)、したがって伝える信号が小さいという点で課題がある。また、コイルが平面状であるが、ターボチャージャハウジングの内壁が円形/サドル状であり、インペラ/圧縮機ホイールのエンベロープが湾曲しているため、検知距離/空隙、すなわち検知素子(通常、パンケーキコイルなどの標準的な平面コイル)とターゲット(ブレード)との間の距離が変動する。
【0006】
一般に、検知素子として使用されるコイルの種類は、とりわけ、検出信号の形状に決定的な影響を与える。確実に回転速度を計算するためには、ブレードがセンサ先端部前を通過するたびに、検出信号が、十分な振幅を有するできるだけ急な信号ピークを示すことが好ましい。例えば信号ピークの振幅が十分に大きくない(すなわち、信号が十分に強くない)場合、ピークを検出することができないため、誤った回転速度になる。通常、ブレード厚さが薄くなるほど検出信号の振幅は小さくなるため、薄型ブレードを検出することはより困難になる。センサを組み込んだデバイスのケーシングなどの外的影響も、重要な役割を果たし、最大50%の信号振幅変調損失を生じさせることがある。
【0007】
薄型ブレードの信号が弱いという問題に加えて、これらのすべての解決策には、検出信号にいわゆる「ダブルピーク」が発生するという別の共通の問題がある。これは、1つのシングルピークが実際には2つのピークを示すことがあることを意味する。これによっても、システムがダブルピークを2つの別個のシングルピーク、すなわち、1つではなく2つのブレードの通過と解釈するおそれがあるため、誤った回転速度になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ターボチャージャの検知素子の出力信号のこのような特性により、測定される毎分回転数(rpm)の値が誤っていることがあるという点で、利用可能な解決策についての問題が生じる。
【0009】
公知の適用では、比較的大きいコイルを使用して、十分に強い出力信号を取得している。しかしながら、ターボチャージャの適用では、ターボチャージャの機能に悪影響を与え得るホットスポットおよび空気力学的外乱などの副作用を避けるために、小型の検知素子/コイルによって小型/薄型のセンサデバイス先端部を可能にする必要がある。利用可能な解決策で使用される大きい平面コイルでは、変動する検知距離/空隙の外乱作用がさらに強くなる。さらに、そのような大きいコイルを有するセンサ先端部は、新世代の小型ターボチャージャに挿入するには大きすぎる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
金属回転可能物体の回転速度を判定するセンサデバイスの検知素子としてのフェライト磁心コイルデバイスは、第1のセクタおよび第2のセクタを有するコイルと、コイルを保持するフェライト磁心とを備える。フェライト磁心は、部分円のない円板の形状で、円板の輪郭および円板の弦によって画定される形状を有する。弦は、フェライト磁心の曲がり縁部を形成する。コイルの第1のセクタはフェライト磁心のベッドに配置されず、コイルの第2のセクタはベッドに配置される。第1のセクタは、曲がり縁部の周りで、第2のセクタに対して曲がり角度で曲げられている。
【0011】
以下で、添付図面を参照しながら、本発明について例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態によるフェライト磁心の斜視図である。
【
図3】実施形態によるフェライト磁心コイルデバイスの斜視図である。
【
図4】
図3のフェライト磁心コイルデバイスの側面図である。
【
図5】
図3のフェライト磁心コイルデバイスを備えるセンサデバイスの斜視図である。
【
図6】
図5のセンサデバイスのセンサ先端部の断面図である。
【
図7】
図5のセンサデバイスを備える、実施形態によるターボチャージャの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で、図面を参照しながら、本発明について、実施形態を用いてより詳細かつ例示的に説明する。図中、同一の参照符号は同一の要素を示す。説明する実施形態は可能な構成のみであり、本明細書に記載の個々の特徴を互いに独立して設けることができ、または省略することができる。
【0014】
本発明の目的で、回転可能物体は、例えば、自動車で使用されるターボチャージャの圧縮機ホイールであり得るが、これに限定されない。また、回転物体が本明細書に記載の検出方法に適した金属から形成されるか、または十分な量のそのような金属を含んでいれば、本発明を様々な回転物体に適用することができる。
【0015】
回転可能物体に関連する「金属」という用語は、金属または金属合金を含むものと理解されるが、一般に、金属量/金属伝導性が、検出可能な信号ピークを本発明によってトリガするのに十分であれば、回転可能物体はプラスチックなどの他の材料を含んでいてもよい。
【0016】
本明細書全体を通じて、「弦」という用語は、「円の弦」として数学的な意味で理解され、したがって円上に両端点を持つ線分として定義される。しかしながら、本発明の目的で、弦という用語は、弦によって切られる円の曲率より大きい曲率を有する(すなわち、円の半径より小さい半径を有する)曲線も示す。
【0017】
「半径」という用語は、フェライト磁心コイルデバイスの中心軸xから見たものとして本明細書で使用される。
【0018】
実施形態によるフェライト磁心コイルデバイス1のフェライト磁心3が、
図1および
図2に示される。
図1および
図2に示すように、フェライト磁心3は、部分円のない、最大直径D1の円板の形状を有する。フェライト磁心3は、円板の輪郭および円板の弦4aによって画定される。したがって、残りの部分円の大きさは、フェライト磁心コイルデバイス1の中心軸xから弦4aまでの距離によって定義される。フェライト磁心3はまた、
図3に示すように、コイル2を配置するための面として、最大直径D2のベッド3aを有する。ベッド3aは、円板の前記輪郭に沿って延びるフェライト磁心3の縁壁3bと、フェライト磁心3の曲がり縁部を示す弦4aとによって画定される。したがって、縁壁3bはD1-D2によって与えられる厚さを有する。
【0019】
図1および
図2に示すように、フェライト磁心3はベッド3aから突出するピン5を有する。図示した実施形態において、ピン5は直径D3の円形断面を有し、したがって全体として円筒形状を有する。ピン5は、フェライト磁心3と同一の軸を有する。
図3に示すように、ピン5の高さは、ベッド3aからの縁壁3bの高さ4bと略同一であるが、実施形態においては、縁壁3bの高さ4bをわずかに超えていてもよい。他の実施形態において、フェライト磁心コイルデバイス1をピン5なしで使用してもよい。しかしながら、ピン5を使用すると、コイルデバイス1の性能が向上することがわかっている。さらに、コイルがずれることができないため、以下で説明するコイルの取付けがより強固になる。実施形態において、フェライト磁心3は0.2mm~2mmの厚さを有する。実施形態において、フェライト磁心3は50~3000の相対透磁率μrを有する。
【0020】
実施形態によるフェライト磁心コイルデバイス1が、
図3および
図4に示されている。フェライト磁心コイルデバイス1は、
図1のフェライト磁心3に支持された電磁コイル2を備える。コイル2の出力コネクタ6が
図3に示され、この出力コネクタ6により、コイルデバイス1によって伝えられる信号を処理するために使用する外部回路にコイル2を接続することができる。コイル2はピン5に巻き付けられ、実施形態においては、10~30の巻きを有する。実施形態において、コイル2は、縁壁3bとピン5との間の略全面を隙間なく塞いでいるが、巻き付けられたコイル2の半径R2は、
図1に示すフェライト磁心3の半径R1より小さい。
【0021】
図3および
図4に示すように、コイル2は2つの部分に分割され、コイル2の第1のセクタ2aは、曲がり縁部4a(弦)の周りでこれに沿って曲げられている。コイル2は、略L字形コイルを形成するように曲げられている。コイル2の第2のセクタ2bは、ベッド3a上に位置する。コイル2の第1のセクタ2aとコイル2の第2のセクタ2bとの比は、1:1~1.5:1である。前述したように、実施形態において、ピン5は円筒形である。フェライト磁心3の寸法も間接的に定義し得るコイル2の2つのセクタ2a、2bの比に応じて、ピン5は円板自体と同様の形状を有することができる。これは、セクタ2a、2bの比が1:1である場合に特に当てはまる。この場合、ピン5は、曲がり縁部4aまでの半円の断面を有する。
図1に示す例の寸法は、ピン5が全円のままであるようになっている。
【0022】
実施形態において、コイル2は可撓性ポリマー基板にプリントされる。可撓性ポリマー基板の材料は、特に少なくとも最高200℃、実施形態においては少なくとも最高230℃の温度に耐える高い耐熱性を有するように選択される。適切な材料は、例えば、液晶ポリマーまたはポリイミドである。また、コイル2は普通なら固有の脆性により破損し得るため、可撓性ポリマー基板によってコイル2を破損から保護する。この手法の別の利点は、コイル2をピン5の周りに手動または機械により巻き付ける必要がないため、取付プロセスが簡単なことである。
【0023】
図4は、コイル2のL字形を強調した、
図3のフェライト磁心コイルデバイス1の側面図である。前述したように、コイル2を曲がり縁部4aの周りでこれに沿って曲げることにより、2つのセクタ2a、2bが互いに対して曲がり角度aで形成される。実施形態において、曲がり角度aは70~110°である。この例では、この例示的な適用に最良の結果をもたらす90°の曲がり角度aが選択されている。曲がり角度aが90°より大きくなると、磁場にますます対抗するため、信号振幅が小さくなる。曲がり角度aが平面パンケーキコイルに向けて90°より小さくなると、薄型ブレードで信号がダブルパルス挙動を示す。このような作用は、1mm未満のブレード厚さの場合に特に顕著である。
【0024】
ベッド3aを画定する弦4aは、ベッド3aが終わり、曲がり領域の曲率が始まる線とみなされる。
図3および
図4において線4aにおける湾曲領域によって示されるこの曲率は、コイル2のワイヤ厚さを考慮して、コイル2の曲がり領域がこの湾曲面に平滑に寄り添うようになっている。いずれにしても、曲率は、鋭い縁部が形成されるほど大きすぎないように選択される。このような鋭い縁部は、コイルワイヤに損傷を与える、またはコイルワイヤを折り曲げるおそれがあるため、望ましくない。
【0025】
図3のフェライト磁心コイルデバイス1を備える、実施形態によるセンサデバイス1aが
図5に示され、センサデバイス1aのセンサ先端部15の詳細断面図が
図6に示される。回転可能物体の回転速度を判定するためのセンサデバイス1aは、コネクタ部7、取付部8、およびセンサ部9を有するセンサハウジング(図示せず)を備える。前記フェライト磁心コイルデバイス1、すなわち検知素子は、センサ部9のセンサ先端部15に配置される。
図6は、フェライト磁心コイルデバイス1が、センサデバイス1aのセンサ部9に線10において取り付けられている様子を示す。この目的で、センサ部9の先端部15は、この例では、フェライト磁心3と略同一の面を有し、この面は、コイル2の曲がった第1のセクタ2aを収容するための段付部分を有する。段付設計は、コイル2の第1のセクタ2aを支持するため有利である。センサ部の先端部15の直径は、コイルデバイス1の直径D1に必ずしも一致しなくてよい。
【0026】
フェライト磁心コイルデバイス1は、検知素子1の出力信号を評価するためにセンサ電子機器に接続され、このセンサ電子機器は、
図5および
図6に示すセンサ部9内に配置されている。センサ電子機器は、特にASICの形の集積シリコン・オン・インシュレータ(SOI)回路を備える。そのようなSOI回路の使用は、高温に耐えることができる程度に有利であることがわかっており、したがって、ターボチャージャ内のような困難な環境における使用に適している。特に、ASICは、以下のパラメータ/機構、すなわち、ブレード(デバイダ)の数、デバウンサ、出力パルス幅、出力信号の最大周波数範囲、エラー検出周波数範囲、検出閾値およびヒステリシス、短絡検出時間、温度過昇(overtemperature)シャットダウン閾値、発振器トリミング、復調器トリミング、バンドギャップトリミング、および/またはエラーフラッギング無効化および有効化に合わせて構成することができる。
エラーフラッギング無効化および有効化は、コイル破損(検知素子1の破損)、温度過昇検出(センサデバイス1aの環境に関する)、データ完全性検出、過電圧および不足電圧検出(例えば、センサデバイス1aが接続されたエンジン制御ユニットを保護するため)、周波数エラー(例えば、圧縮機ホイール速度が遅すぎるかどうか)に特に関連し得る。したがって、診断機能/システムをASICに組み込んで、適用に応じた方法で構成することができ、診断システムは、過電圧および不足電圧、温度過昇、データ完全性、周波数エラー、コイル/検知素子の破損、および/または短絡を監視する。
【0027】
実施形態によるターボチャージャ20が、
図5および
図6のセンサデバイス1aを組み込んだ状態で
図7に示される。ターボチャージャ20はターボチャージャハウジング21を有する。圧縮機入口29を有する軸に取り付けられた圧縮機ホイールまたはインペラ28が、ターボチャージャハウジング21内に配置され、軸(図示せず)によってタービンホイールに接続される。ターボチャージャハウジング21の壁30(ハッチング領域)に凹部が設けられ、この凹部に、少なくともセンサデバイス1aのセンサ部9を導入し、意図した動作位置に取り付けることができる。
【0028】
図7に示すように、センサデバイス1aのコネクタ部7が、センサ信号をさらに処理するためにセンサ電子機器に接続される。取付部8は、挿入孔を有するフランジとして形成され、この挿入孔にボルトまたは他の固定デバイスを通して、ターボチャージャハウジング21の外側にセンサデバイス1aをしっかりと取り付けることができる。
図7に示すように、センサデバイス1aのセンサ部9は、センサ先端部15、すなわちセンサデバイス1aのフェライト磁心コイルデバイス1が、圧縮機ホイール28の複数のブレード26に面するように位置決めされる。実施形態において、センサデバイス1aを収容する穴は、センサデバイス1aの残りの部分より小さい直径を有し得るセンサ先端部15に向かって先細になっている。このようにして、センサ先端部15は穴の先細部に確実にぴったりと嵌入する。
【0029】
以下で、センサデバイス1aの設置および動作方法を、最初に概要を簡潔に述べたフェライト磁心コイルデバイス1の基本的な測定原理に関連して、より詳細に説明する。
【0030】
圧縮機ホイール28の回転速度を測定するために、検知素子1は、コイル2、キャパシタ、および集積SOI回路/ASICによって形成された発振器タンクの一部をなす。これにより、検知素子1の周りに電磁場が発生し、その磁束線が検知素子1の面から「外に出る」。インペラ/圧縮機ブレード26などの導電性ターゲット/物体が検知素子1に接近すると、磁束線はブレード26を通過し、ブレード26内に渦電流を誘導する。また、ブレード26内の渦電流は、検知素子1によって発生した電磁場を打ち消す電磁場を発生させることにより、検知素子1のインピーダンス、したがって振動周波数に影響を与える。ブレード26が検知素子1に接近すると、渦電流効果が高まる。検知素子1のインピーダンスの変化が、振動周波数の変調に反映される。センサ電子機器および/またはエンジン制御ユニットによってこの周波数を評価すると、電流または電圧信号がインペラ/圧縮機ホイールブレード26の回転速度に対応し、回転速度を判定することができる。
【0031】
前述したように、センサデバイス1aは、センサ先端部15が回転可能物体から所定距離にあるように配置される。
図7のターボチャージャ20の特定の例では、管状センサデバイス1aは、ターボチャージャ20の壁30の凹部に導入され、センサ先端部15がインペラから特定距離になるまで凹部に挿入される。これは、
図7において、矢印37で示す位置に見られる。実施形態において、この距離は回転インペラから0.5~1mmである。
【0032】
一般に、さらなる処理のためにセンサ1aをセンサ電子機器に接続した後、入力電流をフェライト磁心コイルデバイス1に加え、振幅変調出力電圧信号をセンサデバイス1aの出力として読み取り、センサ電子機器によって処理する。センサ電子機器は、センサデバイス1aの復調出力電圧信号を評価することによってインペラの回転速度を判定する。
【0033】
センサデバイス1aを、例えば自動車、トラック、オフハイウェイ車両、航空宇宙産業、または発電の適用において、ターボチャージャの圧縮機ホイールブレード26の検知に使用することができる。さらに、センサデバイス1aを、回転速度を測定/検出する必要のある任意の適用、特に小型かつ/または周囲温度が高い適用、および/またはターゲット/物体材料がアルミニウムより低い導電性を有する適用(例えば、チタンから形成された薄型形状のインペラブレード)において使用することができる。しかしながら、本発明を、特に回転部品の高い信頼性を必要とする適用のために、回転部品を含むあらゆる種類の工業用機械、例えば製造ラインなどに組み込むことができる。ターボチャージャ20は、自動車のモータで使用されるが、特に航空宇宙産業を含む推進技術などに関する他の適用に使用してもよい。
【0034】
フェライト磁心3をL字形コイル2と共に使用することにより、信号振幅が大きくなり得るが、フェライト磁心3は検出信号の増幅器と同様に作用する。これによって、別個の「実の」信号ピークがより確実に区別される。同時に、センサデバイス1aのコイル2およびフェライト磁心3の形状および相対配置により、(約0.2mmの薄型コイルの場合でも)ダブルピークを完全に回避し、公知のセンサと比べて高いセンサ感度に有利に達することができ、より良好でエラーのない信号ピーク検出が可能になる。これにより、1つではなく2つの信号ピーク(すなわち2つのブレードの通過)があるという誤った仮定(検出)の危険が最小限になる、または回避される。さらに、センサ感度が高いと、センサデバイス1aとブレードとの距離、すなわち空隙を大きくすることができ、したがって、公知の解決策よりもセンサの位置決めに必要な精度が低くなるため、製造プロセスが簡単になる。