(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】インク補給具及び補給式筆記具セット
(51)【国際特許分類】
B43L 25/00 20060101AFI20240110BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20240110BHJP
B43K 11/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B43L25/00
B43K8/02 100
B43K8/02 110
B43K8/02 120
B43K11/00 100
(21)【出願番号】P 2020107585
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 敬士
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-227388(JP,A)
【文献】特開平7-251587(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3162586(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 25/00
B43K 8/02
B43K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口部を有する有底筒状のメス側筒状部材と、逆端側に開口部を有する有底筒状のオス側筒状部材とを備え、前記メス側筒状部材の開口部側に、前記オス側筒状部材の開口部側を挿入し嵌め合わせ、これらメス側筒状部材とオス側筒状部材のうち、何れか一方の筒状部材を上側に配置して該筒状部材に筆記具本体を挿入するための挿入口を設け、下側に位置する他方の筒状部材にインクを貯溜するようにしたインク補給具において、
前記メス側筒状部材は、その内周面に環状突起を有し、
前記オス側筒状部材は、周壁に厚肉部を有するとともに、前記厚肉部よりも開口部側の周壁に、前記厚肉部よりも肉厚が小さく且つ前記メス側筒状部材の周壁よりも肉厚が小さい薄肉部を有し、この薄肉部の外周面を前記環状突起に圧接していることを特徴とするインク補給具。
【請求項2】
前記メス側筒状部材は、その内周面における前記環状突起よりも開口部側にメネジ部を有し、
前記オス側筒状部材は、前記薄肉部よりも底部側に位置する前記厚肉部の外周面に、前記メネジ部に螺合するオネジ部を有し、さらに、該オネジ部よりも底部側の外周面に、前記メス側筒状部材の開口部側の端部に当接してねじ込み量を規制する規制凸部を有することを特徴とする請求項1記載のインク補給具。
【請求項3】
前記薄肉部の肉厚を、その周囲部分の前記メス側筒状部材の周壁の肉厚の1/2以下に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載のインク補給具。
【請求項4】
請求項1~3何れか1項記載のインク補給具と、前記挿入口に挿入可能な筆記具本体とを具備したことを特徴とする補給式筆記具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着される筆記具本体の中芯にインクを補給するためのインク補給具、及びこのインク補給具を備えた補給式筆記具セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、特許文献1に記載されるように、インクを収容する容器と、この容器の一部に形成されたマーキングペン挿入口と、この挿入口から容器内へ延びる筒状の嵌合部及び保持筒と、保持筒の底側に挿入されたインク吸収体とを備え、前記挿入口から挿入されたマーキングペンのペン先に、前記インク吸収体を接触させて、インクを補給するようにしたマーキングペン用インク補給具がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術において、容器内のインクを消費しきってしまった場合に、容器内へのインクの再充填を容易にするために、前記容器を着脱可能な2部材から構成することが提案される。
しかしながら、このような構成にする場合、着脱箇所の摩耗によって密閉性が損なわれないように工夫を要する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
一端側に開口部を有する有底筒状のメス側筒状部材と、逆端側に開口部を有する有底筒状のオス側筒状部材とを備え、前記メス側筒状部材の開口部側に、前記オス側筒状部材の開口部側を挿入し嵌め合わせ、これらメス側筒状部材とオス側筒状部材のうち、何れか一方の筒状部材を上側に配置して該筒状部材に筆記具本体を挿入するための挿入口を設け、下側に位置する他方の筒状部材にインクを貯溜するようにしたインク補給具において、前記メス側筒状部材は、その内周面に環状突起を有し、前記オス側筒状部材は、周壁に厚肉部を有するとともに、前記厚肉部よりも開口部側の周壁に、前記厚肉部よりも肉厚が小さく且つ前記メス側筒状部材の周壁よりも肉厚が小さい薄肉部を有し、この薄肉部の外周面を前記環状突起に圧接していることを特徴とするインク補給具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、メス側筒状部材とオス側筒状部材の着脱によって内部にインクを容易に再充填できる上、その再充填作業により着脱箇所の密閉性が低下するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るインク補給具を備えた補給式筆記具セットの一例を示す斜視図であり、(a)は筆記具本体がインク補給具に装着された状態、(b)は筆記具本体がインク補給具に装着される前の状態を示す。
【
図4】オス側筒状部材をメス側筒状部材から外した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図5】オス側筒状部材と第二のインク誘導体の接続構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、一端側に開口部を有する有底筒状のメス側筒状部材と、逆端側に開口部を有する有底筒状のオス側筒状部材とを備え、前記メス側筒状部材の開口部側に、前記オス側筒状部材の開口部側を挿入し嵌め合わせ、これらメス側筒状部材とオス側筒状部材のうち、何れか一方の筒状部材を上側に配置して該筒状部材に筆記具本体を挿入するための挿入口を設け、下側に位置する他方の筒状部材にインクを貯溜するようにしたインク補給具において、前記メス側筒状部材は、その内周面に環状突起を有し、前記オス側筒状部材は、周壁に厚肉部を有するとともに、前記厚肉部よりも開口部側の周壁に、前記厚肉部よりも肉厚が小さく且つ前記メス側筒状部材の周壁よりも肉厚が小さい薄肉部を有し、この薄肉部の外周面を前記環状突起に圧接している(
図2~
図4参照)。
【0009】
第2の特徴として、前記メス側筒状部材は、その内周面における前記環状突起よりも開口部側にメネジ部を有し、前記オス側筒状部材は、前記薄肉部よりも底部側に位置する前記厚肉部の外周面に、前記メネジ部に螺合するオネジ部を有し、さらに、該オネジ部よりも底部側の外周面に、前記メス側筒状部材の開口部側の端部に当接してねじ込み量を規制する規制凸部を有する(
図2~
図3参照)。
【0010】
第3の特徴は、前記薄肉部の肉厚を、その周囲部分の前記メス側筒状部材の周壁の肉厚の1/2以下に設定した(
図3参照)。
【0011】
第4の特徴は、前記インク補給具と、前記挿入口に挿入可能な筆記具本体とを具備して補給式筆記具セットを構成した(
図1参照)。
【0012】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインク補給具を備えた補給式筆記具セットの一例を示す。
この補給式筆記具セットAは、前方へ突出する筆記部30を具備した筆記具本体1と、この筆記具本体1が着脱されるインク補給具2とを具備している。
【0013】
筆記具本体1は、インク補給具2の筆記部導入筒部52cに抜差し可能に嵌合する軸筒10と、軸筒10の前端側に支持されて軸筒10内のインクを吐出する筆記部30とを備え、例えば、サインペンやマーカーペン等を構成する。
なお、
図1中、符号40は、撓み片部43を撓ませる操作により軸筒10と筆記部導入筒部52cとの嵌合状態を解除する係脱操作部40である。
【0014】
インク補給具2は、インク容器50と、第一及び第二のインク誘導体60,70と、インク容器50内に貯溜したインクとから構成され、インク容器50に挿入される筆記部30に対し、第二のインク誘導体70を接触させて、インクを補給する。
【0015】
インク容器50は、開口部を一端側(
図2によれば上端側)に有する有底筒状のメス側筒状部材51と、開口部を逆端側(下端側)に有する有底筒状のオス側筒状部材52とを備える。このインク容器50は、メス側筒状部材51の開口部側に、オス側筒状部材52の開口部側を挿入し嵌め合わせ、オス側筒状部材52をメス側筒状部材51の上側に配置している。オス側筒状部材52には、筆記具本体1を挿入するための挿入口52a1が設けられ、メス側筒状部材51には、第二のインク誘導体70よりも下側に、インクが貯溜される。
【0016】
メス側筒状部材51は、上方を開口した周壁51bの下端側を底壁部51aにより塞いだ有底筒状に形成される。
【0017】
底壁部51aの内面には、複数の柱状部材を環状に配設してなる支持部51cが設けられる。この支持部51cは、第一のインク誘導体60の外周面に接して第一のインク誘導体60を鉛直状に支持する(
図2参照)。
【0018】
また、周壁51bの内周面には、上端位置を略同じ高さにした複数の縦リブ51b1が、周方向に間隔を置いて配設される。
各縦リブ51b1は、底壁部51aから上方へ延設され、その上端部を、第二のインク誘導体70の下面よりも下側に配置している。
これら複数の縦リブ51b1は、周壁51bの径方向外側への撓みを抑制する補強リブとして機能するとともに、メス側筒状部材51内に充填されるインク表面の上限位置の目安としても機能する。
【0019】
そして、周壁51bの内周面の上半部側には、インク容器50に圧接される環状突起51eと、環状突起よりも開口部側(図示例によれば上側)に位置するメネジ部51dと、メネジ部51dよりもさらに開口部側に位置するガイド面部51fとが設けられる。
【0020】
環状突起51eは、縦断面凸曲状に形成され、周壁51bの全周にわたって連続している。
ガイド面部51fは、凹凸の無い内周面であり、オス側筒状部材52を挿入する際の案内面として機能する。
【0021】
オス側筒状部材52は、下方を開口した円筒状の周壁52bと、この周壁52bの上端部を覆う上底部52aと、上底部52aの中央側から下方へ延設されその下端部をインク表面よりも上方側で第二のインク誘導体70の上面に接する筆記部導入筒部52cとを一体に具備している。
【0022】
周壁52bは、比較的厚肉の略円筒状に形成された厚肉部52b1と、この厚肉部52b1よりも開口部側(図示例によれば下方側)に位置するとともに厚肉部52b1よりも肉厚が小さく且つメス側筒状部材51の周壁51bよりも肉厚が小さい略円筒状の薄肉部52b2とを有し、この薄肉部52b2の外周面を、メス側筒状部材51の環状突起51eに圧接している。
【0023】
厚肉部52b1は、その外周面に、メス側筒状部材51のメネジ部51dに螺合するオネジ部52dを有し、さらに、このオネジ部52dよりも上底部52a側の外周面に、メス側筒状部材51の開口部側の端部に当接してねじ込み量を規制する規制凸部52eを有する。
【0024】
規制凸部52eは、図示例によれば、周方向へ連続する環状に形成され、その下側面を、メス側筒状部材51の周壁51bの上端面に対し、全周にわたって密接状に圧接している。
【0025】
薄肉部52b2は、厚肉部52b1の肉厚t1よりも小さく、且つメス側筒状部材51の周壁51bの肉厚t3よりも小さい肉厚t2の円筒状に形成される(
図3参照)。
この薄肉部52b2の外周面は、凹凸の無い円筒状の面であり、メス側筒状部材51の環状突起51eに対し、全周にわたって圧接される。
薄肉部52b2は、環状突起51eとの圧接によって径方向内側へ適宜に撓むように、その肉厚t2を、その周囲部分のメス側筒状部材51の周壁51bの肉厚t3に対し、1/2以下の比率になるように設定している(
図3参照)。
すなわち、本願発明者等は、肉厚t2が前記比率以下である場合には、薄肉部52b2が径方向内側へ適宜に変形し、エアタイト部分の摩耗や損傷を生じ難いことを実験的に確認した。
【0026】
周壁52bの内周面には、後述する第二のインク誘導体70の周縁側に嵌り合う複数(
図5の例示によれば4つ)の誘導体支持部52fが設けられる。
各誘導体支持部52fは、周壁52b内周面から径方向内側へ突出するとともに上下方向へ連続する突条であり、その突端側が、第二のインク誘導体70の角部に嵌り合う入隅状に形成される。複数の誘導体支持部52fは、組立作業中に、第二のインク誘導体70がインク容器50から外れないように、第二のインク誘導体70に圧接される。
また、これら複数の誘導体支持部52f(突条)は、薄肉部52b2には設けられずに、その上底部52a側の厚肉部52b1のみに設けられ、オス側筒状部材52がメス側筒状部材51へ挿入される際に厚肉部52b1が径方向内側へ撓むのを阻む補強部材としても機能する。
【0027】
上底部52aは、略円盤状に形成され、その周縁部を、周壁52bの上端に接続している。この上底部52aの中心側には、下方へ突出するように筆記部導入筒部52cが設けられる。
【0028】
筆記部導入筒部52cは、内部空間を上下方向へ連続させた略円筒状に形成される。この筆記部導入筒部52cは、インク容器50の中心線上に位置し、その上端を上底部52aに接続して開口するとともに、その下端の開口部を、第二のインク誘導体70に接する(
図2参照)。
【0029】
第一のインク誘導体60は、メス側筒状部材51内の底部側にて、水平方向に間隔を置いて複数(図示例によれば二つ)鉛直状に設けられる。
各第一のインク誘導体60は、多数の連続気孔を有する多孔質樹脂から円柱状に形成され、下端側をインク内に没入するとともに上端側をインク表面よりも上方へ突出して、第二のインク誘導体70に圧接している。
【0030】
第二のインク誘導体70は、多数の繊維を板状(図示例によれば矩形板状)に収束してなる繊維収束体であり、インク表面よりも上方側で、第一のインク誘導体60に対し上方側から接するとともに筆記部導入筒部52cに挿入される筆記部30の下端側に接する。そして、この第二のインク誘導体70は、毛細管力によって第一のインク誘導体60から吸入するインクを筆記部30に補給する。
この第二のインク誘導体70の中心部には、筆記部導入筒部52c内と、第二のインク誘導体70よりも下側であってインク表面よりも上側の空間とを連通するように、上下方向へ貫通する円形状の通気孔71が設けられる。この通気孔71は、筆記部30の前端側部分よりも若干小さい外径に形成される。
【0031】
よって、上記構成によれば、製造時に、メス側筒状部材51に対しオス側筒状部材52を挿入し螺合すると、薄肉部52b2が、環状突起51eに圧接されて径方向内側へ弾性的に撓んで縮径する。この際、厚肉部52b1は、薄肉部52b2に相対して、殆ど縮径しない。
また、インク交換等のために、メス側筒状部材51に対しオス側筒状部材52が緩められ外されると、薄肉部52b2が、環状突起51eから離れて径方向外側へ弾性的に復元して拡径する。
【0032】
このように薄肉部52b2が適宜に撓むため、メス側筒状部材51とオス側筒状部材52の着脱が繰り返されることで、薄肉部52b2と環状突起51eとの接触箇所が摩耗し、密閉性が低下するのを防ぐことができ、ひいては、インク漏れの発生を低減することができる。
しかも、万が一、薄肉部52b2と環状突起51eとの接触箇所が摩耗したり損傷したりした場合でも、メス側筒状部材51の上端に規制凸部52eが全周にわたって密接するため、この密接によっても、インク漏れを防ぐことができる。
【0033】
なお、上記実施態様によれば、インク容器50を構成する下半部側の部材をメス側筒状部材51とし、上半部側の部材をオス側筒状部材52としたが、他例としては、前記構成とは上下逆に、インク容器50を構成する下半部側の部材をオス側筒状部材とし、上半部側の部材をメス側筒状部材とすることも可能である。
【0034】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:筆記具本体
2:インク補給具
51:メス側筒状部材
51d:メネジ部
51e:環状突起
52:オス側筒状部材
52a1:挿入口
52b1:厚肉部
52b2:薄肉部
52d:オネジ部
52e:規制凸部
A:補給式筆記具セット