(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】赤外線ボイドパンタグラフマークを使用した文書セキュリティの検証
(51)【国際特許分類】
B41J 5/30 20060101AFI20240110BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20240110BHJP
H04N 1/32 20060101ALI20240110BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J5/30 Z
H04N1/387 110
H04N1/32 144
B41J29/00 Z
(21)【出願番号】P 2020125439
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-07-24
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・エヌ・チャップマン
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-054713(JP,A)
【文献】特開2006-085506(JP,A)
【文献】特開2017-049360(JP,A)
【文献】特開2006-010721(JP,A)
【文献】特開2005-130113(JP,A)
【文献】特開2008-188794(JP,A)
【文献】特開2005-125552(JP,A)
【文献】特開2005-141626(JP,A)
【文献】特開昭61-175092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 5/30
H04N 1/387
H04N 1/32
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書にセキュリティマークを作成する方法であって、
1つ以上の非赤外線吸収色を含む第1のパターンを選択することと、
1つ以上の非赤外線吸収色を含む第2のパターンを選択することであって、前記第1のパターンと前記第2のパターンとが、赤外線スペクトルにおいて実質的に同じ反射率を呈する、ことと、
印刷デバイスによって、第1の色空間で、第1の基材にセキュリティマークを印刷することであって、前記印刷することが、
前記第1のパターン又は前記第2のパターンのうちの一方を前景として印刷すること、及び
前記第1のパターン又は前記第2のパターンのうちの他方を背景として印刷すること、を含む、ことと、
印刷エンジンによって、前記セキュリティマークのコピーを作成し、前記セキュリティマークの前記コピーを第2の基材に印刷することと、
赤外線カメラによって、前記第
2の基材に印刷されたセキュリティマークの画像を取り込むことと、
ディスプレイによって、前記赤外線カメラによって取り込まれた前記画像を表示することであって、前記表示された画像が、前記ディスプレイ上の前記画像の他の部分とは異なる透かしを露わにする、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記印刷デバイスによって、前記第1の基材に前記セキュリティマークを印刷することが、赤外線吸収インクを使用せずに印刷することを含み、
前記印刷エンジンによって、前記第2の基材に前記セキュリティマークの前記コピーを印刷することが、赤外線吸収インクを使用して印刷することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパターンの前記非赤外線吸収色には、C、M、Y、CM、CY、又はMYのいずれか又はすべてが含まれ、
前記第1のパターンを印刷することが、C、M、Y、CM、CY、又はMYのインクの組み合わせのいずれかを使用して要素を印刷することを含み、
前記第2のパターンの前記非赤外線吸収色には、CMYが含まれ、
前記第2のパターンを印刷することが、CMYのインクの組み合わせを使用して要素を印刷することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のパターンの前記非赤外線吸収色にはまた、C、M、Y、CM、CY、又はMYのいずれか又はすべても含まれ、
前記第2のパターンを印刷することが、C、M、Y、CM、CY、又はMYのインクの組み合わせのいずれかを使用して要素を印刷することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非赤外線吸収色には、黒色が含まれない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記印刷エンジンによって第2の文書を印刷することが、前記第2の文書をCMY色空間で印刷することを含み、
前記ディスプレイによって前記画像を表示することが、前記画像を第2の色空間で表示することを含み、
前記第2の色空間が、RGB色空間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記セキュリティマークを印刷することが、前記前景と前記背景とを実質的に等しいサイズで印刷することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記前景は、第1のドットパターンを含み、
前記背景は、第2のドットパターンを含む
、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のドットパターンが、前記第2のドットパターンのサイズ又は形状とは異なるサイズ又は形状を呈する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のドットパターン又は前記
第2のドットパターンのいずれかが、CMY色要素を含む一方、他方のドットパターンはCMY色要素を含まない、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
文書セキュリティマーキングシステムであって、
プロセッサと、
印刷デバイスと、
印刷エンジン、赤外線カメラ、ディスプレイと、
プログラミング命令が入っているコンピュータ可読媒体と、を備え、前記プログラミング命令が、前記プロセッサに、
1つ以上の非赤外線吸収色を含む第1のパターンを選択することと、
1つ以上の非赤外線吸収色を含む第2のパターンを選択することであって、前記第1のパターンと前記第2のパターンとが、赤外線スペクトルにおいて実質的に同じ反射率を呈する、ことと、
前記第1のパターン又は前記第2のパターンのうちの一方を前景として印刷すること、
前記第1のパターン又は前記第2のパターンのうちの他方を背景として印刷することによって、前記印刷デバイスに、第1の色空間で第1の基材にセキュリティマークを印刷させることと、
前記印刷エンジンに、前記セキュリティマークのコピーを作成させ、前記セキュリティマークの前記コピーを第2の基材に印刷させることと、
前記赤外線カメラによって取り込まれた、前記第2の基材上の前記セキュリティマークの画像を受け取ると、前記ディスプレイに、前記赤外線カメラによって取り込まれた前記画像を表示させることを、プロセッサに行わせ、前記表示された画像が、前記ディスプレイ上の前記画像の他の部分とは異なる透かしを露わにすることと、を行わせるように構成されている、文書セキュリティマーキングシステム。
【請求項12】
前記印刷デバイスに、前記セキュリティマークを前記第1の基材に印刷させる前記
プログラミング命令には、赤外線吸収インクを使用せずに印刷するための命令が含まれ、
前記印刷エンジンに、前記セキュリティマークの前記コピーを前記第2の基材に印刷させる前記
プログラミング命令には、赤外線吸収インクを使用して印刷するための命令が含まれる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のパターンの前記非赤外線吸収色には、C、M、Y、CM、CY、又はMYのいずれか又はすべてが含まれ、
前記第1のパターンを印刷するための前記
プログラミング命令には、C、M、Y、CM、CY、又はMYのインクの組み合わせのいずれかを使用して要素を印刷するための命令が含まれ、
前記第2のパターンの前記非赤外線吸収色には、CMYが含まれ、
前記第2のパターンを印刷するための前記
プログラミング命令には、CMYのインクの組み合わせを使用して要素を印刷するための命令が含まれる、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2のパターンの前記非赤外線吸収色にはまた、C、M、Y、CM、CY、又はMYのいずれか又はすべても含まれ、
前記第2のパターンを印刷するための前記
プログラミング命令には、C、M、Y、CM、CY、又はMYのインクの組み合わせのいずれかを使用して要素を印刷するための命令が含まれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記非赤外線吸収色には、黒色が含まれない、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記印刷エンジンに前記セキュリティマークの前記コピーを前記第2の基材上に印刷させる前記
プログラミング命令が、前記セキュリティマークの前記コピーをCMY色空間で印刷する命令を含み、
前記ディスプレイに前記画像を表示させる前記
プログラミング命令には、前記画像を第2の色空間で表示するための命令が含まれ、
前記第2の色空間が、RGB色空間である、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記セキュリティマークを印刷するための前記
プログラミング命令には、前記前景と前記背景とを実質的に等しいサイズで印刷するための命令が含まれる、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記前景は、第1のドットパターンを含み、
前記背景は、第2のドットパターンを含む
、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のドットパターンが、前記第2のドットパターンのサイズ又は形状とは異なるサイズ又は形状を呈する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1のドットパターン又は前記第2のドットパターンのいずれかが、CMY色要素を含む一方、他方のドットパターンは、CMY色要素を含まない、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
セキュリティは、多くの印刷用途において重要な要件である。公文書又は政府文書の印刷、イベントチケット印刷、金融商品印刷などの場合、フォトコピー、捏造、及び/又は偽造に対して、多くの印刷物を保護する必要がある。
【0002】
場合によっては、文書作成者は、人間の目には見えないが、文書がコピーされると見えてくるように、文書内のセキュリティマークを符号化したいと思うことがある。例えば、小切手などの金融商品、イベント入場券、また原本をコピーと視覚的に区別することが重要である他の文書は、このようなセキュリティマークを含み得る。このようなマークの例には、パンタグラフマークがある。パンタグラフマークの特徴については、以下に記述するが、例としては、セキュリティマークのある内容が原本では肉眼で見えないが、その内容が原本のコピーでは見えるように、「ボイド」パンタグラフマークを文書に印刷することがよくある。これの例は、
図1に示され、銀行小切手などの原本11に、セキュリティマークが印刷されている。この例に示されるセキュリティマークは、「VOID」という語を含むが、この語は、原本11では、人間の目には見えない。しかし、原本のカラーコピー12が印刷されると、このカラーコピー12では、「VOID」の語が肉眼で見える。
【0003】
UVボイドパンタグラフの利点は、偽造者には、おそらく透かしが分からないことである。透かしは、UV光下で調べられるときのみ現れる。ただし、スキャナの変調伝達関数(modulation transfer function、MTF)を活かすのに必要とされる非常に小さな穴のせいで、画質が劣り、透かしの虚弱性が強まる可能性がある。
【0004】
本明細書では、上記の問題及び/又は他の問題のうちの少なくともいくつかに対処するパンタグラフマークを作成するための方法及びシステムを説明する。
【発明の概要】
【0005】
様々な実施形態において、文書セキュリティマーキングシステムは、印刷デバイスと、プロセッサと、プロセスに、セキュリティマークを基材に印刷させるように構成されているプログラミング命令が入っているコンピュータ可読媒体と、を含む。これを行う際、このシステムは、1つ以上の非赤外線吸収色を含む第1のパターンを選択し、また1つ以上の非赤外線吸収色を含む第2のパターンを選択する。第1のパターンと第2のパターンとは、実質的に同じ色、実質的に同じパターン(すなわち、画像内のオブジェクトのサイズ及び形)、並びに赤外線スペクトルにおける実質的に同じ反射率を呈する。システムは、(a)第1のパターン又は第2のパターンのいずれかを前景として印刷し、(ii)パターンのうちの他方を背景として印刷することによって、印刷デバイスに、第1の色空間で、第1の基材にセキュリティマークを印刷させる。
【0006】
システムはまた、印刷エンジンと、印刷エンジンに、セキュリティマークのコピーを作成させ、そのコピーを第2の基材に印刷させる追加の命令とを含み得る。システムはまた、赤外カメラ、ディスプレイ、及び追加のプログラミング命令を含み得、追加のプログラミング命令は、プロセッサ(上記のプロセッサと同じであってもなくてもよい)に、赤外線カメラによって取り込まれたセキュリティマークの画像を第2の基材上に受け取ると、ディスプレイに、赤外線カメラによって取り込まれた画像を表示させることを行わせるように構成される。表示画像には、ディスプレイ上の画像の他の部分とは目に見えて異なる透かしが含まれる。
【0007】
印刷デバイスが第1の基材にセキュリティマークを印刷する際、印刷デバイスは、赤外線吸収色を使用しないで、そうすることができる。しかし、印刷エンジンが第2の基材にセキュリティマークのコピーを印刷する際、印刷エンジンは、そうするのに少なくともいくつかの赤外線吸収インクを使用する。
【0008】
第1のパターンの非赤外線吸収色には、C、M、Y、CM、CY、若しくはMYのうちのいずれか又はすべてが含まれ得、第1のパターンを印刷する際、印刷デバイスは、C、M、Y、CM、CY、又はMYのインクの組み合わせのいずれでも使用し得る。第2のパターンの非赤外線吸収色には、CMYが含まれ得る。第2のパターンを印刷する際、印刷デバイスは、CMYのインクの組み合わせを使用する。第2のパターンはまた、C、M、Y、CM、CY、及び/又はMYを含み得る。第1の基材の各パターンにおける非赤外線吸収色には、黒色が含まれない場合がある。
【0009】
第2の文書を印刷する際、印刷エンジンは、CMY色空間などの第1の色空間で行うことができる。画像を表示する際、ディスプレイは、RGB色空間などの第2の色空間でそうすることができる。
【0010】
必要に応じて、セキュリティマークを印刷する際、印刷デバイスは、前景と背景を実質的に等しいサイズで印刷し得る。
【0011】
必要に応じて、セキュリティマークは、前景が第1のドットパターンを含み、背景が第2のドットパターンを含む、パンタグラフマークであり得る。第1のドットパターンは、第2のドットパターンのサイズ、形状、又は他の特徴とは異なるサイズ、形状、又は他の特徴を呈する。第1のドットパターン又は第2のドットパターンのいずれかは、CMY色要素を含み得るが、他方のドットパターンは、CMY色要素を含まないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】先行技術において見られるものなど、ボイドパンタグラフマークが入っている文書の一例を、このような文書のコピーと共に示す。
【
図2A】先行技術による、パンタグラフマーク例の特徴を示す。
【
図2B】先行技術による、パンタグラフマーク例の特徴を示す。
【
図3】本明細書の実施形態に使用され得る様々なインク色の分光反射特性を示す。
【
図4】パンタグラフマークを印刷するプロセス例、及びフォトコピーにおいてそれと分かるセキュリティマークを作るステップを示す。
【
図5】
図4のプロセスを行い得るハードウェア要素例を示す。
【
図6】本明細書に記載のプロセスの様々な実施形態を実施するのに使用され得る様々な機器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される際、「a」、「an」、及び「the」と共に、単数形のいずれの語も、文脈上そうではないことがはっきり示されない限り、複数照応的指示を含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語のすべては、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書には、本明細書に記載の実施形態が、先行発明によってこのような開示に先行する権利がないという容認として解釈されるべきものは何もない。本明細書で使用される際、「含む(comprising)」という用語は、「含むが、それに限られるわけではない」を意味する。本明細書で、項目を、「実質的に同じ」、「実質的に同様」、又は「実質的に等しい」として説明する場合、項目が、周囲光下で互いに目に見えて違いがないことを意味するものであり、その項目が数値を有する限り(色値、色温度、又はサイズの寸法など)、これらの用語は、+/-10%以下を意味し、場合によっては、+/-5%以下を意味する。
【0014】
本開示に関連するさらなる用語は、この「発明を実施するための形態」節の最後に定義される。
【0015】
パンタグラフマークは、第1の周波数を有するパターンで作られた前景と、第2の周波数のパターンを有する背景とを有する、セキュリティマークである。パンタグラフマークは、通常、実質的に微細である(すなわち、小さいサイズの)ドットパターンを使用して作成され、これは、マークの全体パターンが人間の目には容易に見分けが付ないような、基材に印刷された他の材料が点在し得る。通常、パンタグラフマークは、少なくとも2つのサイズのドットのパターンを含み得る。パンタグラフマークにおける2つのサイズのドットのそれぞれは、同じ色調を有することがあり、又は同様であるが同一ではない色調を有することがある。2つのクラスのドットのサイズ及び/又は色調を変えることによって、一方のクラスを背景として使用することができ、他方のクラスを使用して、マーク内に前景メッセージを提示することができる。
【0016】
パンタグラフのパターンのうちの1つは、周囲光などの通常の環境条件下で視覚的に知覚できないセキュリティ要素(語、画像、又はパターンなど)を含み得る。しかし、特定の条件では、セキュリティ要素は、視覚的に知覚可能になる。この例を
図2A及び
図2Bに示す。
図2Aは、標準的なサイズではセキュリティ要素が見えないほぼ通常のサイズのパンタグラフマーク21を示す(ただし、これは、便宜上わずかに拡大されているので、ここでは、要素がかすかに見える可能性がある)。しかし、
図2Bでは、パンタグラフマーク21は、サイズが拡大され、相対的に小さいドットの背景22及び相対的に大きなドットの前景23を露わにする。前景23は、文字「X」の形状である。各パターンの「周波数」は、パターン内のドットの密度の尺度である。例えば、頻度は、ドットとその最近傍との間の距離の逆数、又はこのような測定値の関数であり得る。
【0017】
パンタグラフマークの背景のドットは、前景のドットとは異なるドット頻度を有することも、有さないこともある。例えば、1インチ当たり600ドット(dpi)印刷デバイスでは、背景画素ドットが2×2画素のサイズ、10%の密度(すなわち、白色背景におけるインクによる10%被覆率)を有する状態で、パンタグラフマーク例が作成され得るが、前景画素ドットは、2×2画素のサイズ、約25%の密度を有し得る。他の画素サイズ及び密度も可能であり、パンタグラフマークによっては、前景の密度が背景の密度よりも大きい可能性がある。また、前景ドットが背景ドットよりも大きい必要はなく、マークによっては、背景ドットが、前景ドットよりも大きい可能性がある。更に、本明細書の実施形態では、前景ドットと背景ドットとは、同じサイズを呈しても、異なる形状を呈する可能性がある。加えて、実施形態によっては、一方のレイヤ(前景又は背景)のドットは、CMY色として印刷され得る一方、他方のレイヤは、CMY色要素を何も含まない可能性がある。
【0018】
上記のとおり、パンタグラフマークでは、セキュリティ要素は、特定の条件でのみ知覚可能になる。赤外線(IR)マークでは、前景又は背景のいずれかが、マークの他の構成要素のインクのIR吸収特性とは実質的に異なるIR吸収特性を有するインクで印刷される。例えば、
図3は、トナー製品によっては、黒色のトナーK31が、対応するシアンC32、マゼンタM33、及び黄色Y34のトナーよりも大幅に低いIRスペクトルの反射率を呈することを示す。(この例では、「大幅に低い」反射率は、低い方の反射率が、高い方の反射率値の50%以下の値を有することを意味する。実施形態によっては、「大幅に低い」とは、高い方の反射率の30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、又は10%以下など、低い方の反射率が更に小さい可能性がある)。したがって、
図3に示す性質を有するトナーでは、IR照明下で、Kは、IR光の大部分を吸収する一方、C、M、及びYのそれぞれ(並びにC、M及び/又はYの任意の組み合わせ)は、IR光の大部分を反射する。Kは、この「赤外線吸収」トナーであり、一方、C、M、及びYは、「非赤外線吸収」色である。このようなトナーが刷り込まれた印刷文書を紫外線下で見た場合、Kトナーが刷り込まれた印刷文書の要素(C、M、及び/又はY要素の有無を問わず)は、C、M、及び/又はYのみを有する要素(Kを含まない)とは目に見えて異なる。
【0019】
本明細書では、マークのフォトコピーの特定のセキュリティ特徴がIR光の存在下でのみ見える、「赤外線(IR)ボイドパンタグラフマーク」と呼ぶことがある新規なセキュリティマークを作成することについて説明する。これまでのパンタグラフでは、原本もフォトコピーも、通常(周囲)光下で隠しパターンを表示することはない。標準パンタグラフ及びUVパンタグラフでの問題点としては、それらが様々なスキャナ/プリンタの組み合わせにおいて働かないことがある点である。それらは脆弱であり、使用される特定のハードウェアに合わせて調整する必要がある。
【0020】
先行技術におけるこの問題に対処するために、本開示は、マークのフォトコピーにおけるセキュリティ要素がIR照明下で見えるが、元の文書では、同じIR照明下で見えない、IRボイドパンタグラフマークを生み出す新しい印刷プロセスを提案する。IRボイドパンタグラフマークは、スキャナの変調伝達関数、ドットサイズ、及びドット頻度には左右されない。したがって、IRボイドパンタグラフマークは、それほど脆弱ではなく、2Dバーコードなどのより詳細なマーク用に使用することができる。このプロセスでは、1つの色が、マークを印刷するのに使用される他の色よりもIR照明下で大幅に低い反射特性を呈する、
図3のものなどの反射特性を有するトナーを使用し得る。
【0021】
図4は、IRパンタグラフマークを印刷し、復号する方法の様々な態様を示すフロー図である。印刷デバイス又は印刷デバイスに対して命令を発生させるコンピューティングデバイスは、1つ以上の非赤外線吸収色を含む第1のパターンを選択し(41において)、また1つ以上の非赤外線吸収色を含む第2のパターンを選択する(42において)ことによって、セキュリティマークを生成する。セキュリティマークがパターンのいずれか又は両方において符号化されるように、第1のパターンと第2のパターンとは、例えば、様々なサイズのドットとして異なる(例として、
図2Bのパターン22及び23を参照)。
【0022】
第1のパターンと第2のパターンとに対して選択された色は、赤外線スペクトルにおいて実質的に同じ反射率を呈する。この文脈において、「実質的に同じ反射率」とは、2つのパターンで印刷された文書が、周囲光下で見るか又はIR光下で見るかに関わらず、互いに目に見えて異なるようには見えてこないことを意味する。実測的には、これは、各パターンの全反射率が、+/-10%以内、又は+/-5%.などのより低い閾値内にあることを意味する。例えば、第1及び第2のパターンに対して使用される色は、C、M、及びYの様々な組み合わせを含み得るが、Kは、赤外線吸収色であるため、Kは、両方のパターンから除外される可能性がある。その代わりに、第1のパターンを印刷するのに使用される非赤外線吸収色には、C、M、Y、CM、CY、又はMYのうちのいずれか又はすべてが含まれ得る。第1のパターンを印刷するのに使用される非赤外線吸収色にはまた、CMY、並びにC、M、Y、CM、CY、又はMYのうちのいずれか又はすべてが含まれ得る。CMYで印刷された要素は、以下に記載のような、プロセスの後の方の工程でのみ見えるようになる隠しセキュリティコードに対応し得る。
【0023】
パンタグラフマークでは、第1のパターンは、第1のドットパターンであり得、第2のパターンは、第2のドットパターンであり得る。第1のパターンのドットは、第2のパターンのドットとは、形状、サイズ、CMY対非CMY、使用されるインクの化学的性質において、又は他の特性によって異なり得る。
【0024】
印刷デバイスは、第1のパターンを前景として印刷し、第2のパターンを前景として印刷することによって、又はその逆で印刷することによって、第1及び第2のパターンを基材に印刷する(43において)。印刷が行われる際(43において)、必要に応じて、前景及び背景は、
図2Aに示すものなどの先行マークに見られるような、実質的に同じサイズである範囲(すなわち、周囲光下でもIR光下でも目に見えて違いがない縁である共通の境界内)に印刷され得る。
【0025】
セキュリティマークが第1の文書に印刷された後、44において、印刷エンジンは、第2の文書にセキュリティマークのコピーを作成する。印刷エンジンは、原本を印刷したのと同じ印刷デバイスのものであってもよく、又は別個の印刷デバイスの印刷エンジンであってもよい。しかし、印刷エンジンは、原本を印刷する際に適用されるのと同じ制約を受けることはない。具体的には、隠しセキュリティコードコピーに対応する要素を印刷する際、印刷エンジンは、黒(K)などの赤外線吸収色のインクを使用し得る。具体的には、原本にCMYで印刷されているマークの要素をコピーする際、システムは、K.などの赤外線吸収インクを使用し得る。標準的な印刷エンジンでは、CMYが、それらの要素を複製するのにKを必要とするように見えることがあるので、印刷エンジンは、このために何ら特別なプログラミングを必要としない。したがって、印刷されたコピーは、周囲光下で見たときに原本と目に見えて同様に見える可能性がある。しかし、ここで印刷されるコピーには、いくつかの赤外線吸収インクを使用するため、そのインクで印刷された要素は、IR撮像下で露わになり得る。
【0026】
このようなフォトコピーを検出するために、第2の文書が印刷された後、45において、赤外線カメラが、基材のデジタル画像を取り込むことができる。赤外線カメラは、多機能印刷デバイスの要素であり得、又は別個のデバイスであり得る。カメラは、市販のIRカメラ、そのIRフィルタを取り除いたWebカメラ、及び必要に応じて、夜間用のセキュリティIRカメラであり得る。
【0027】
次に、カメラは、デジタル画像を、ディスプレイデバイスに接続されているプロセッサに転送することができる。46において、ディスプレイデバイスは、第1の(元の)文書及び第2の(コピー)文書を印刷するのに使用される色空間(CMYなど)とは異なる色空間(RGBなど)で、マークの取り込み画像を表示する。コピー(第2の)に赤外線吸収インクで印刷されていた要素が、ここで、コピーの他の要素とは目に見えて異なって現れるようになるので、表示された画像には、ディスプレイ上の画像の他の部分とは目に見えて異なる透かし(すなわち、セキュリティ要素)が露わになる。
【0028】
図5は、特定のハードウェア要素が上記のプロセスをどのように行うことができるかを示す。次に、印刷デバイス51が、第1の文書52としての基材に、第1及び第2のパターンを含むセキュリティマークを印刷する。印刷エンジン53は、基材を受け取り、第2の文書54にセキュリティマークのコピーを作成する。印刷エンジン53は、原本を印刷したのと同じ印刷デバイス51のものであリ得、又は
図5に示すような別個の印刷デバイスの印刷エンジンであり得る。第2の文書54を印刷する際、印刷エンジン53は、黒色などの赤外線吸収色のインクを使用して、原本に非赤外線吸収色の組み合わせ(CMYなど)のみで印刷されているセキュリティ要素を印刷することができる。第2の文書54は、周囲光下で見たとき、第1の文書52とは目に見えて同様に見える可能性がある。しかし、第2の文書54では、ここでいくつかの赤外線吸収インクを使用するので、そのインクで印刷された要素は、赤外線カメラで見ることができる。第2の文書54が印刷された後、赤外線カメラ55は、第2の文書54のデジタル画像を取り込むことができる。赤外線カメラは、多機能印刷デバイスの要素であってもよく、又は別個のデバイスであってもよい。次に、赤外線カメラ55は、デジタル画像を、ディスプレイデバイス56に接続されているプロセッサに転送することができ、ディスプレイデバイス56は、セキュリティ要素が露わになったマークの取り込み画像を表示する。ディスプレイデバイス56は、赤外線カメラ55と一体であってもよく、又は
図5に示すような別個の電子デバイスの一部であってもよい。
【0029】
上記の実施形態は、黒色インク(K)が他の色(C/M/Y)とは大幅に異なる反射率を呈し、そのため原本のマークを印刷するのに使用されない例を示しているが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。他の色の組み合わせが使用されてもよく、又は、あるインクが他のインクとは大幅に異なる反射率を呈し、そのインクが原本のマークを作成するのに使用されない限り、同じ色であるが異なる化学的性質のインクが使用されてもよい。
【0030】
上記の方法は、処理デバイス及び通信可能に接続された又は一体型の印刷デバイスによって実施され得る。メモリは、プロセッサによって実行されると、印刷デバイスに、文書及びスキャン文書を印刷させ、プロセッサにスキャン済みデータを分析させて、上記のプロセスを実施させるプログラミング命令を含み得る。
【0031】
図6は、処理能力を有する印刷デバイス、又は印刷デバイスと通信するローカル若しくはリモートコンピューティングデバイス、又はバーコード走査デバイスなど、システムの電子構成要素のいずれかに含まれ得る内部ハードウェアの例を示す。
図6では、電気バス600は、ハードウェアの他の図示の構成要素を相互接続する情報ハイウェイとして働く。プロセッサ605は、プログラミング命令を実行するのに必要とされる計算及び論理演算を行うように構成された、システムの中央処理デバイスである。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、用語「プロセッサ」及び「処理デバイス」は、中央処理ユニット(central processing unit、CPU)、グラフィック処理ユニット(graphics processing unit、GPU)、リモートサーバ、又はこれらの組み合わせなどの一連の演算を集合的に実行するプロセッサのセット内の単一のプロセッサ又は任意の数のプロセッサを指し得る。読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、フラッシュメモリ、ハードドライブ、及び電子データを記憶することができる他のデバイスは、プログラミング命令を記憶し得るメモリデバイス610の例を構成する。メモリデバイスには、データ及び/又は命令が記憶される単一のデバイス又はデバイスの集合が含まれ得る。本発明の様々な実施形態には、1つ以上のプロセッサ、印刷デバイス、及び/又は走査デバイスに、これまでの図との関連で説明される機能を行わせるように構成されているプログラミング命令が入っているコンピュータ可読媒体が含まれ得る。
【0032】
任意選択のディスプレイインターフェース630は、バス600からの情報が、視覚、グラフィック、又は英数字の形式でディスプレイデバイス635に表示されることを可能にし得る。オーディオインターフェース及びオーディオ出力(スピーカーなど)も提供されてもよい。外部デバイスとの通信は、無線アンテナ、RFIDタグ、及び/又は短距離若しくは近距離通信送受信機などの様々な通信デバイス640を使用して行われ得、これらのそれぞれは、必要に応じて、1つ以上の通信システムを介して、そのデバイスの他の構成要素と通信可能に接続し得る。通信デバイス640は、インターネット、ローカルエリアネットワーク、又はセルラ電話データネットワークなどの通信ネットワークに通信可能に接続されるように構成され得る。
【0033】
ハードウェアには、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチスクリーン、タッチパッド、リモートコントロール、ポインティングデバイス、及び/又はマイクロフォンなどの入力デバイス650からのデータの受信を可能にするユーザインターフェースセンサ645も含まれ得る。電子デバイスがスマートフォン又は別の画像取り込みデバイスである実施形態では、文書又は他の画像内容のデジタル画像は、映像及び/又は静止画像を取り込むことができるカメラ620を介して取得され得る。電子デバイスが印刷デバイスを含む実施形態では、印刷デバイスは、プリントヘッド、ドキュメントフィードシステム、及び印刷デバイスにおいて通常使用される他の構成要素などの構成要素を備える印刷エンジン670を含み得る。
【0034】
本開示において、「文書」という用語は、内容が印刷されるか又は印刷されているいずれの基材も指す。内容は、トナー及び/又はインクを使用して基材に印刷され得る。文書は、例えば、文字を含む1つ以上の範囲、及び/又は画像を含む1つ以上の他の範囲を含み得る。
【0035】
用語「コンピューティングデバイス」及び「電子デバイス」は、プロセッサ及び非一時的コンピュータ可読媒体(すなわち、メモリ)を有するデバイスと言い換えることが可能である。メモリは、プロセッサによって実行されると、プログラミング命令に従って1つ以上の処理動作を実行させるソフトウェアアプリケーションの形態のプログラミング命令を含んでもよい。電子デバイスにはまた、ユーザインターフェースとして機能するタッチ感知ディスプレイデバイス、並びに画像を取り込むためのカメラなどの追加の構成要素が含まれ得る。電子デバイスにはまた、通信ネットワークを介して、又は近距離通信プロトコル若しくは狭域通信プロトコルを介して、デバイスが他のデバイスに信号を送信し、及び/又はそれから信号を受信することを可能にする送信機及び/又は受信機などの1つ以上の通信ハードウェア構成要素が含まれ得る。その場合、プログラミング命令は、リモートデバイスに記憶され、シンクライアント又はモノのインターネット(Internet of Things、IoT)構成におけるように、コンピューティングデバイスのプロセッサで実行されてもよい。電子デバイスの例示的な構成要素は、以下で
図6の文脈で論じられる。
【0036】
用語「メモリ」、「メモリデバイス」、「コンピュータ可読媒体」、及び「データストア」はそれぞれ、コンピュータ可読データ、プログラミング命令、又はその両方が記憶される非一時的デバイスを指す。文脈により、デバイスが1つだけ必要とされるか、又は複数のデバイスが必要とされるかが明確に示されていない限り、用語「メモリ」、「メモリデバイス」、「コンピュータ可読媒体」、及び「データストア」は、単数及び複数の実施形態の両方、並びにメモリセクタなどのそのようなデバイスの部分を含む。
【0037】
「印刷デバイス」又は「印刷エンジン」は、デジタルデータに基づいて文書を印刷するように構成されているデバイス、又は機能のうちの1つがデジタルデータに基づいて印刷する多機能デバイスである。印刷デバイスの構成要素例としては、インク、トナー、又は別の印刷材料を収容するプリントカートリッジ又はリザーバなどの構成要素を含み得るプリントヘッドと、プリントヘッドが基材に文字及び/又は画像を印刷することができるように、印刷デバイスに基材を通すように構成されたドキュメントフィードシステムと、が挙げられる。
【0038】
「プロセッサ」又は「処理デバイス」は、プログラミング命令を実行するように構成されている電子デバイスのハードウェア構成要素である。「プロセッサ」という用語は、単一のプロセッサを指す場合もあれば、プロセスの様々なステップを共に実施する複数のプロセッサを指す場合もある。文脈により、プロセッサが1つだけ必要とされるか、又は複数のプロセッサが必要とされるかが明確に示されていない限り、「プロセッサ」という用語は、単数及び複数の両方の実施形態を含む。
【0039】
上に開示された特徴及び機能、並びに代替物は、組み合わされて他の多くの異なるシステム又はアプリケーションになり得る。様々な現時点で不測の又は予想されていない代替、修正、変形、又は改良が、当業者によってなされる可能性があり、それらのそれぞれも、本開示の実施形態に含まれることが意図されている。