(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】移動支援装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/04 20060101AFI20240110BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20240110BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240110BHJP
G01M 3/02 20060101ALI20240110BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01M3/04 F
G08G1/005
G08G1/00 X
G01M3/02 B
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020132641
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大貫 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】今野 実
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-520927(JP,A)
【文献】特開2018-181232(JP,A)
【文献】特開2020-086980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0345292(US,A1)
【文献】特開平11-132894(JP,A)
【文献】特開平05-322688(JP,A)
【文献】実開昭63-152546(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス漏えい検知器により、路面に埋設されたガス管からのガス漏えいの有無を検査するガス漏えい検査作業を遂行するときの作業者の移動を支援するための移動支援装置であって、
前記作業者の周囲を撮影する撮影部と、
前記撮影部の撮影領域内において、前記ガス漏えい検査作業を安全に遂行するために予め設定された注意喚起対象を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出した前記注意喚起対象に設定されている注意喚起情報を読み出す読出部と、
前記読出部で読み出した注意喚起情報を報知する報知部と、
を有する移動支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に埋設されたガス管に関連する作業を実行する際の、路面の移動を支援する移動支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測定対象の気体中にレーザビームを通過させ、該通過させたレーザビームの強度の変化に基づいて前記気体中の所定のガスを検出するLD分光ガス検出装置と、現在位置を測定する測位装置と、前記LD分光ガス検出装置によって前記所定のガスを検出した場所を、前記測位装置の出力に基づいて表示する表示制御装置とを移動体に搭載して成ることを特徴とするガス検出装置が記載されている。
【0003】
なお、特許文献1では、電子地図情報やガス管の埋設位置に関する情報等を有するとともにガス漏えい検出位置等を表示する表示制御装置を備えている。表示制御装置としては、携帯型地理情報システム(mobile GIS「Geographic information system」)が適用されている。また、mobile GISは、ガス管の埋設状況などの電子地図情報を保有しており、通信線を通じて得た情報にしたがって、電子地図上にリアルタイムでガス検出情報と位置情報とを表示することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、車両の自動走行を制御する自動走行制御装置であって、前記車両の車外を撮影可能な可視光カメラと、赤外線の入射、または赤外線の入射及び出射を行う赤外線装置と、前記可視光カメラにより撮影された画像から周辺環境情報を取得する周辺環境情報取得手段と、前記赤外線装置を用いてガス漏えいの有無を判定する判定手段と、前記車両の位置情報と、前記車両の目的位置と、前記判定手段による判定結果とに基づいて、前記車両が走行する走行ルートを生成する走行ルート生成手段と、を備え、前記走行ルート生成手段によって生成された前記走行ルートと、前記周辺環境情報取得手段によって取得された前記周辺環境情報とに基づいて、前記車両の自動走行を制御することを特徴とする自動走行制御装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ガス工場において車両の自動走行を行う場合には、通常の一般道路とは異なり、ガス漏えい等から搭乗者の安全性を確保し、かつ着火源(車両)による火災、爆発を防止しなければならないという固有の課題を解決するべく、走行ルートと周辺環境情報とに基づいて、車両の自動走行を制御する場合に、ガス漏えいの度合いを判定し、ガス漏えいの度合いに基づいて、走行ルートを生成することが記載されている。
【0006】
従来、地中に埋設されているガス管は、ガス事業法の定めにより、ガスの漏えいがないことを定期的に確認する必要がある(ガス漏えい検査)。
【0007】
ガス漏えい検査を行う作業者は、周囲の交通環境に注意しながら、例えば、カート式ガス検知器を用いて、歩行しながら路上巡回を行う。
【0008】
ここで、ガス漏えい検査を行う作業者として、実際にガス漏えいを検査する検査要員と、周囲の交通環境等を監視して検査要員の安全を確保する保安要員との2名1組とする場合がある。
【0009】
検査要員がガス漏えい検査に集中する必要があり、保安要員は、重要な役割を担うことになり、検査要員及び保安要員のそれぞれに課せられる精神的負担は測り知れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-72411号公報
【文献】特開2019-204344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ガス漏えい検査の検査要員に関わる作業における作業負担の軽減は、特許文献1及び特許文献2等の先行技術を参考とすることで実現可能である。これに対して、保安要員の作業は、当該保安要員自身の五感(特に、視覚と聴覚)を通じて、交通状況等の周囲を監視し、検査要員の安全を確保するしかない。すなわち、ガス漏えい検査の検査要員の安全を確保するための保安要員の作業負担を軽減するための手段は確立されていない。
【0012】
本発明は、作業現場で撮影された画像から、注意喚起対象を自動判別し、かつ、作業者の視野に重畳表示することで、作業者に注意喚起対象の有無及び位置を報知することができる移動支援装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る移動支援装置は、ガス漏えい検知器により、路面に埋設されたガス管からのガス漏えいの有無を検査するガス漏えい検査作業を遂行するときの作業者の移動を支援するための移動支援装置であって、前記作業者の周囲を撮影する撮影部と、前記撮影部の撮影領域内において、前記ガス漏えい検査作業を安全に遂行するために予め設定された注意喚起対象を抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出した前記注意喚起対象に設定されている注意喚起情報を読み出す読出部と、前記読出部で読み出した注意喚起情報を報知する報知部と、を有している。
【0014】
本発明によれば、作業者の周囲を撮影する撮影領域内において、ガス漏えい検査作業を安全に遂行するために予め設定された注意喚起対象を抽出し、注意喚起対象に設定されている注意喚起情報を読み出し、注意喚起情報を報知する。
【0015】
このため、作業現場で撮影された画像から、注意喚起対象を自動判別し、かつ、作業者の視野に重畳表示することで、作業者に注意喚起対象の有無及び位置を報知することができる。
【0016】
本発明において、前記作業者が、前記ガス漏えい検査作業として、前記ガス漏えい検知器を路面に対峙させて移動させるガス漏えい検査作業を行う検査要員と、前記検査要員の安全を確保するために周囲の交通状況等を監視して注意を促す作業を行う保安要員とに役割分担されることを特徴としている。
【0017】
ガス漏えい検査作業は、検査要員と保安要員との2人1組体制で行い、移動支援装置は、保安要員における、安全を確保するために周囲の交通状況等を監視して注意を促す作業を補助し、作業の軽減を図ることができる。
【0018】
本発明において、前記作業者は、ガス漏えい検知器を路面に対峙させて移動させるガス漏えい検査作業を行いながら、前記報知部が報知する注意喚起情報を認識する単一の作業者であることを特徴としている。
【0019】
移動支援装置を用いることで、作業者は、的確な注意喚起情報を認識することができるため、作業者は、ガス漏えい検知器を路面に対峙させて移動させるガス漏えい検査作業を行う検査要員と、検査要員の安全を確保するために周囲の交通状況等を監視して注意を促す作業を行う保安要員とを兼用することができる。
【0020】
本発明において、原動機の駆動力で前記ガス管が埋設された位置に沿って、路上を自動又は手動で走行可能な移動体をさらに有することを特徴としている。
【0021】
移動支援装置による効果に加え、ガス漏えい検査作業効率を向上することができる。また、例えば、自動運転とすることにより、検査ルート逸脱等、所謂ヒューマンエラーを削減することができる。
【0022】
本発明において、前記移動体には、前記作業者が乗車可能であることを特徴としている。
【0023】
ガス漏えい検査時の作業者の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した如く本発明では、作業現場で撮影された画像から、注意喚起対象を自動判別し、かつ、作業者の視野に重畳表示することで、作業者に注意喚起対象の有無及び位置を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の実施の形態に係るカート式ガス検知器を用いて、路面に埋設されたガス導管に沿って移動しながら、ガス漏えいを検査している状態を示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る移動支援装置の制御ブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る移動支援装置における画像重畳制御の流れを示すフローチャートである。
【
図4】(A)は第1の実施の形態に係るカート式ガス検知器を用いて、路面に埋設されたガス導管に沿って移動しながら、ガス漏えいを検査している状態を示す側面図、(B)は保安要員が携帯するタブレットに表示される画像の正面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係り、保安要員がスマートグラスを装着して、路面に埋設されたガス導管に沿って移動しながら、ガス漏えいを検査している状態を示す斜視図である。
【
図6】第3の実施の形態として適用された表示デバイスとしてのVRゴーグルを、検査要員が装着した状態を示す斜視図である。
【
図7】第4の実施の形態として適用された走行装置であり、検査要員及び保安要員が乗車した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施の形態]
【0027】
図1は、第1の実施の形態に係り、ガス漏えいを検査する作業者である検査要員10と保安要員11とが2人1組体制で、カート式ガス検知器12を用いて、路面RSに埋設されたガス導管14に沿って移動しながら、ガス漏えいを検査している状態を示している。なお、ガス導管14は、家屋敷地内に配管されているものを含む全てのガス管の内、道路内に埋められているものを言う。
【0028】
カート式ガス検知器12は、路面RSに漂う気体を吸引して、吸引したガス成分を分析することでガス導管14からのガス漏えいの有無を判断する検査器本体16と、検査器本体16を路面RSから予め定めた間隔をあけた状態を保持しながら移動可能な左右一対の車輪18と、検査器本体16から路面RS上方に突出し検査要員10が把持して検査器本体16を移動させるハンドル部20と、で構成されている。
【0029】
ハンドル部20には、検査器本体16によるガス漏えい有無判定結果等を表示するモニタ部(図示省略)が取り付けられており、検査要員10は、路面RSに埋設されたガス導管14に沿って移動しながら、このモニタ部を監視していくことでガス漏えい検査が実行される。なお、モニタは検査器本体16の上部に取り付けてもよい。
【0030】
ここで、検査要員10はガス導管14の配管図等が記載された図面を一方の手に持ち、他方の手でハンドル部20を把持し、かつ、目視によって、移動する周囲環境における注意喚起対象に注意を払って移動する。
【0031】
一方、保安要員11は、検査要員10がガス漏えい検査に集中できるように、検査要員10の目視に加え、移動する路面RSの周囲の環境を監視し、検査要員10に対して注意喚起する役目を有している。
【0032】
第1の実施の形態では、保安要員11は、移動支援装置24を携帯している。移動支援装置24は、リュックサックに代表される背嚢型の装置本体26と、装置本体26から上方に突出する支柱28の先端に取り付けられた撮影デバイス30と、撮影デバイス30で撮影し、かつ装置本体26で画像処理された画像を表示するタブレット32と、で構成されている。
【0033】
撮影デバイス30は、保安要員11の頭部よりも上方に位置することが好ましく、保安要員11の周囲(例えば、360°)を撮影することが可能となっている。
【0034】
図2は、第1の実施の形態に係る移動支援装置24の制御ブロック図である。
【0035】
図2に示される如く、移動支援装置24は、入力デバイスとして撮影デバイス30を備えている。
【0036】
撮影デバイス30は、例えば、CCDカメラ等で構成され、半球状のレンズ(所謂魚眼レンズ)により、保安要員11の周囲(360°)の画像を撮影領域として撮影する。
【0037】
撮影デバイス30は、画像解析部33及び画像重畳部34に接続されており、撮影デバイス30で撮影した画像情報は、画像解析部33によって解析される。画像解析部33での画像解析例としては、画像情報に基づいて領域分割し、予め定めたラベリングリスト(特徴画像リスト)に基づいて機械学習し、分類するといった手法が適用可能である。なお、画像解析技術は特に限定されるものではない。
【0038】
画像解析部33での解析結果は、注意喚起対象画像抽出部36へ送出される。注意喚起対象画像抽出部36には、予め注意喚起対象に関する情報が登録されている。
【0039】
登録されている注意喚起対象となる特徴画像とは、保安要員11(及び検査要員10)が移動するときの周囲における、安全を確保するために必要な特徴画像であり、位置が変位する第1の注意喚起対象と、位置が変位しない第2の注意喚起対象に分類することができる。
【0040】
第1の注意喚起対象に分類される特徴画像には、例えば、車両(自動車、自動二輪車、軽車両等)や歩行者が含まれる。
【0041】
また、第2の注意喚起対象に分類される特徴画像には、例えば、信号、道路標識、横断歩道、道路段差が含まれる。
【0042】
注意喚起対象画像抽出部36は、注意喚起情報読出部38に接続されており、抽出した特徴画像(第1の注意喚起対象及び第2の注意喚起対象等)を送出する。
【0043】
注意喚起情報読出部38は、注意喚起情報データベース40に接続されており、特徴画像に基づいて、注意喚起情報データベース40から注意喚起情報(メッセージ等)を読み出し、画像重畳部34へ送出する。
【0044】
なお、注意喚起情報データベース40は、移動支援装置24に搭載せず、移動支援装置24との間で通信機能を利用して外部から情報を取得することが可能となるようにクラウド化してもよい。
【0045】
ここで、注意喚起情報の一例として、第1の注意喚起対象に分類される特徴画像に関しては、撮影している画像により移動している方向が近づいているか遠ざかっているかを判断し、近づいている特徴画像に対して、『前から車両が接近しています』、又は『後ろから自転車が来ます』といったメッセージを読み出す。
【0046】
一方、注意喚起情報の一例として、第2の注意喚起対象に分類される特徴画像に関しては、『この先の信号は赤です。止まってください』、『この先に横断歩道があります』、又は『この先、道路に段差があります』といったメッセージを読み出す。
【0047】
画像重畳部34では、撮影デバイス30で撮影した画像(動画)と、注意喚起情報読出部38から読み出した注意喚起情報に基づくメッセージ(
図4(B)に示す注意喚起情報画像52)とを重畳する。
【0048】
重畳した画像は、出力部42を介して、保安要員11が把持するタブレット32に出力される。
図4(B)に示される如く、タブレット32の表示部32Aは、撮影画像範囲50が設けられ、撮影デバイス30で撮影した画像が表示されると共に、注意喚起情報画像52が重畳された画像が表示される。なお、出力部42とタブレット32との間は、有線通信又は無線通信の何れであってもよい。
【0049】
すなわち、保安要員11は、検査要員10に追従して移動する方向に視線をおきながらも、周囲(360°)の環境を表示部32Aの画像によって把握することができ、かつ、当該表示部32Aには、必要に応じて注意喚起情報画像52が重畳表示されるため、検査要員10に対して、的確な注意喚起情報を提示(報知)することができる。なお、この場合、撮影画像範囲50の撮影画像上の注意喚起対象に直接、注意喚起マーク54(例えば、『!』マーク)を重畳表示してもよい。
【0050】
以下に、
図3に従い、移動支援装置24の画像重畳制御ルーチンを説明する。
【0051】
ステップ100では、撮影デバイス30による撮影を開始し、次いでステップ102へ移行して撮影画像を解析する。
【0052】
次のステップ104では、解析した画像に基づき、注意喚起対象を抽出する。第1の実施の形態のおける注意喚起対象としては、位置が変位する第1の注意喚起対象と、位置が変位しない第2の注意喚起対象があり、それぞれに該当する注意喚起対象画像を抽出する。
【0053】
次のステップ106では、抽出画像の種類を特定する。この種類の特定は、前述した第1の注意喚起対象であるのか、第2の注意喚起対象であるのかに加え、(車両(自動車、自動二輪、軽車両)、歩行者、信号、道路標識、横断歩道、及び道路段差といったより具体的な形態を特定する。
【0054】
次のステップ108では、ステップ106で特定した種類に対応する注意喚起情報を読み出し、次いで、ステップ110では、ステップ106で読み出した注意喚起情報の表示部32A上の重畳位置を設定する。
【0055】
次のステップ112では、表示部32Aに重畳画像を表示する。第1の実施の形態の重畳画像の表示では、表示部32Aに表示領域における撮影画像範囲50(
図4(B)参照)外に、吹き出し画像にように注意喚起情報画像52を表示する。加えて、撮影画像範囲50の注意喚起対象を指標する注意喚起マーク54(『!』マーク)を表示する。
【0056】
なお、注意喚起情報画像52は、撮影画像範囲50外となっているが、表示部32Aの表示画面を単一画面と定義すれば、両者は重畳表示に相当する。なお、撮影画像範囲50内に注意喚起情報画像52を表示してもよい。
【0057】
ステップ114では、処理が終了したか否かを判断し、否定判定された場合は、ステップ102へ戻り、上記工程を繰り返す。
【0058】
また、ステップ114で肯定判定された場合は、ステップ116へ移行して、撮影デバイス30による撮影を終了し、このルーチンは終了する。
【0059】
(ガス漏えい検査手順)
【0060】
ガス漏えい検査は、検査要員10と保安要員11との2人1組体制で遂行する。
【0061】
検査要員10は、路面RSを歩行しながらカート式ガス検知器12を押し転がし、ガス漏えい検査を行って行く(
図4(A)参照)。
【0062】
一方、保安要員11は、検査を行っている検査要員10の後方から、検査要員10に追従して移動する(
図4(A)参照)。
【0063】
ここで、ガス漏えいの検査先には、舗装痕跡部(ここでは、補修溝48Aとする。)及びマンホール48B等が存在する場合がある。
【0064】
補修溝48Aやマンホール48B等の周囲は、ガスの漏えいの可能性が高いため、重点的に検査する必要がある。検査要員10は、補修溝48Aやマンホール48B等の重点検査位置を見落とさないように、検査に集中する(
図4(A)の視野範囲Lの実像の目視)。
【0065】
検査要員10が検査に集中することは、重点検査位置の見落としを回避できる反面、周囲の環境変化が疎かになる場合がある。
【0066】
そこで、保安要員11は、移動支援装置24を携帯し、当該移動支援装置24の表示部32Aに表示された画像を見ながら、ガス漏えい検査の行く手(検査先)と共に、周囲の環境を監視し、検査要員10に注意喚起を行う。
【0067】
保安要員11が所持するタブレット32の表示部32Aには、
図4(B)に示される如く、撮影デバイス30で撮影した画像(動画)、及び注意喚起情報画像52(必要に応じて、注意喚起対象を指標する注意喚起マーク54)が重ね合された画像が表示される。
【0068】
すなわち、検査要員10は、例えば、片手にガス導管配管図を持ち、このガス導管配管図を見ながら、ガス漏えい検査ルートに沿って移動し、保安要員11は、表示部32Aに表示された注意喚起情報画像52等を見ながら、検査要員10に注意を喚起する。保安要員11が検査要員10に注意を喚起するための伝達の具体例としては、近距離無線通信による音声や振動等の送受信よる伝達等が適用可能である。また、保安要員11が携帯する拡声器、或いは、保安要員11と検査要員10とが所定の距離内に存在する場合は直接、音声(すなわち、保安要員11と検査要員10との間の物理的な空気振動)で注意を喚起するようにしてもよい。
【0069】
このため、検査要員10は、移動支援装置24を装着した保安要員11からのアドバイスを受けることができるため、適正なガス漏えい検査ルートに沿ってガス漏えい検査を実行することに集中することができる。
【0070】
図4(B)は、表示部32Aに表示される画像を示しており、撮影デバイス30で撮影された画像を表示する撮影画像範囲50と、注意喚起情報画像52と、注意喚起マーク54とが重畳表示されている。
【0071】
撮影画像範囲50に表示される画像は、半球状のレンズ(所謂魚眼レンズ)を介した画像であり、若干歪んでいるが、少なくとも、人間の視野範囲(例えば、
図4(A)に示す視野範囲L)よりも広い範囲を確認することができる。
【0072】
一方、注意喚起情報画像52としては、第1の注意喚起対象として、『前から車両が接近しています』というメッセージが表示されると共に、第2の注意喚起対象として、
【0073】
『この先に横断歩道があります』というメッセージが表示される。
【0074】
さらに、第1の実施の形態では、撮影画像範囲50内の撮影画像の注意喚起対象(自動車、横断歩道)に注意喚起マーク54(例えば、『!』マーク)を重畳表示される。
【0075】
[第2の実施の形態]
【0076】
以下に本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0077】
第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。
【0078】
第2の実施の形態の特徴は、移動支援装置24のタブレット32に代えて、スマートグラス22を適用した点にある。
【0079】
図5に示される如く、保安要員11は、スマートグラス22を装着して、検査要員10に追従することになる。
【0080】
図5に示される如く、スマートグラス22のフレーム22Fには、装着者(保安要員11)の目の位置に合わせて一対の開口部が設けられ、それぞれにレンズ22Lが取り付けられている。
【0081】
レンズ22Lは、保安要員11が装着することで実際の現場(実像)を目視することができるレンズ本来の機能に加え、移動支援装置24から指示によって情報を表示する表示デバイス22Aとして機能する。すなわち、第2の実施の形態では、撮影デバイス30は、注意喚起対象を抽出するための素材としての画像を撮影し、撮影された画像は保安要員11に提供せず、保安要員11は、撮影で撮影された画像に代えて、レンズ22Lを通した実像が適用される。
【0082】
この実像に対して、スマートグラス22の表示デバイス22Aには、実像の座標にマッチングさせて、第1の注意喚起対象及び第2の注意喚起対象(例えば、
図4(B)に示す注意喚起情報画像52)を重畳表示する。
【0083】
第2の実施の形態によれば、保安要員11はスマートグラス22のレンズ22Lを通して実像を見ながら、その実像に注意喚起情報画像52を重畳表示させることができるため、目視の画像と注意喚起情報画像52との照合及び危険度判断が容易となる。
【0084】
[第3の実施の形態]
上記第2の実施の形態では、検査要員10が装着するスマートグラス22を、移動支援装置24の一部として構成し、ガス導管14の埋設位置を示す画像、注意喚起情報画像52、及び、注意喚起対象を考慮した撮影画像範囲50が重畳された画像を、実像の相対位置とマッチングさせて表示するようにした。
【0085】
これに対して、第3の実施の形態では、
図6に示される如く、スマートグラス22に代えて、VRゴーグル55を適用するようにした。
【0086】
スマートグラス22では、実像(検査要員10がスマートグラス22のレンズ22L越しで目視する画像)を利用したが、VRゴーグル55では、モニタ56に撮影デバイス30で撮影した現場画像を表示し、かつ、注意喚起情報画像52を重畳する。
【0087】
VRゴーグル55を適用することで、撮影デバイス30で撮影した画像から、注意喚起対象のみならず、周辺の交通情報(車両や歩行者の存在)を画像処理によって抽出して、検査要員10に報知することが可能となり、ガス漏えい検査の安全性を確保することができる。
【0088】
また、VRゴーグル55を適用することで、実像との相対位置関係のマッチング処理が不要であるため、画像処理の負担を軽減することができる。
【0089】
なお、VRゴーグル55にヘッドホン58を取り付け、聴覚を通じて注意喚起情報を報知することを併用してもよい。
【0090】
(変形例1)
なお、第1の実施の形態~第3の実施の形態では、検査要員10及び保安要員11の2人1組体制としたが、タブレット32(
図4参照)、スマートグラス22(
図5参照)、及びVRゴーグル55(
図6参照)を利用した何れの場合においても、ガス漏えい検査における人員体制を、検査要員10の1人体制としてもよい。この場合、検査要員10が自ら移動支援装置24を装着することで、移動支援装置24の一部を構成するスマートグラス22の表示デバイス22Aから、ガス漏えい検査及び周囲の環境監視のために必要な情報を同時に取得する。
【0091】
例えば、タブレット32を用いた検査要員10の1人体制の場合、タブレット32に表示される画像を、前述した検査器本体16(
図1参照)によるガス漏えい有無判定結果等を表示するモニタ部(図示省略)に表示可能である。また、スマートグラス22を用いた検査要員10の1人体制の場合、検査要員10としての業務(ガス漏えい検査)における、移動支援装置24により注意喚起情報画像52がスマートグラス22の表示デバイス22Aに表示されるため、ガス漏えい検査を行うための視野の中で、視野外の周囲環境を認識することができる。
【0092】
なお、スマートグラス22の表示デバイス22Aに、ガス導管14の埋設位置を示す画像、及び、重点的に検査が必要な領域を考慮したガス漏えい検査ルート画像をさらに重畳表示してもよい。ガス漏えい検査ルート画像は、ガス漏えい検査を行うべきガス導管を示す画像で、ガス導管位置情報データベース(図示省略)等を利用して導出することができる。また、VRゴーグル55を用いた検査要員10の1人体制の場合も、上記スマートグラス22を用いた検査要員10の1人体制の場合と同様の効果を得ることができる。
【0093】
ところで、ガス漏えい検査では、舗装の目地付近(修復痕跡の溝)及びマンホール等の周辺を重点的に検査する必要がある。車両や歩行者等を含む検査周囲の注意喚起対象と共に、ガス漏えい検査ルート画像を併せて重畳表示することで、重点的に検査する場所の把握と、注意喚起対象の把握とが両立できる。すなわち、1人体制(検査要員10のみ)のガス漏えい検査において、検査精度の向上、安全性担保に加え、作業効率の向上(人為削減)を図ることができる。
【0094】
[第4の実施の形態]
【0095】
第1の実施の形態~第3の実施の形態では、検査要員10は、カート式ガス検知器12のハンドル部20を把持しながら歩行によってガス漏えい検査ルートに従い移動すると共に、保安要員11は検査要員10に追従して歩行する。
【0096】
これに対して第4の実施の形態では、
図7に示される如く、検査要員10及び保安要員11が走行装置60に乗車して移動する構成とした。
【0097】
走行装置60は、手動操作運転モードと自動操作運転モードとを選択可能としてもよい。また、手動操作運転専用でもよいし、自動操作運転専用でもよい。
【0098】
走行装置60は、例えば、一対の車輪62を駆動させるモータの駆動デバイス(図示省略)を搭載し、検査要員10及び保安要員11の意思で、操舵運転が可能となっており、検査要員10及び保安要員11は歩行が不要となる。
【0099】
なお、検査要員10及び保安要員11の意思による操舵運転とは、ハンドル部66の上端にリモートコントローラを取り付けてもよいし、検査要員10及び保安要員11の重心のかけかたによって走行速度や走行方法を変更できる機能を持たせてもよい。
【0100】
走行装置60は、ガス検査ルートに沿って、自動的に走行させるようにしてもよい。
【0101】
なお、第4の実施の形態において、検査要員10が保安要員11の役目も兼ねることができるので、変形例1のように検査要員10のみ(1人体制)で走行装置60に乗車して、ガス漏えい検査を遂行してもよい。
【0102】
なお、第1の実施の形態~第4の実施の形態(変形例1を含む)では、報知部として出力部42が視覚を通じて作業者(検査要員10及び/又は保安要員11)に報知する構成としたが、出力部42は、作業者の聴覚を通じて報知するようにしてもよい。また、嗅覚、触覚等、五感の中の他の感覚を用いてもよいし、複数の感覚を併用するようにして、作業者に報知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
RS 路面
10 検査要員
11 保安要員
12 カート式ガス検知器
14 ガス導管
16 検査器本体
18 車輪
20 ハンドル部
24 移動支援装置
26 装置本体
28 支柱
30 撮影デバイス(撮影部)
32 タブレット(報知部)
32A 表示部(報知部)
33 画像解析部
34 画像重畳部
36 注意喚起対象画像抽出部(抽出部)
38 注意喚起情報読出部(読出部)
40 注意喚起情報データベース
42 出力部(報知部)
50 撮影画像範囲
52 注意喚起情報画像
54 注意喚起マーク