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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】QOL監視システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/113 20060101AFI20240110BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240110BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240110BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240110BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20240110BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B5/113
A61B5/08
A61B5/11 110
A61B5/16 130
G16H50/30
G16Y20/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020158704
(22)【出願日】2020-09-23
(62)【分割の表示】P 2017146025の分割
【原出願日】2009-09-23
(65)【公開番号】P2021037293
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2020-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】61/099,792
(32)【優先日】2008-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508354647
【氏名又は名称】レスメッド センサー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】ヘネガン,コナー
(72)【発明者】
【氏名】ハンリー,コナー
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ニーアル
(72)【発明者】
【氏名】ザッファローニ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】デ シャザール,フィリップ
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】渡戸 正義
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0118054(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0143617(US,A1)
【文献】特開2007-319238(JP,A)
【文献】国際公開第2007/143535(WO,A2)
【文献】特開2006-61270(JP,A)
【文献】特開2005-270570(JP,A)
【文献】特開2003-88512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/398
G16H10/00-80/00
G06Q50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に向けて発せられた送信信号および前記被験者から反射された受信信号に基づいて第1センサデータを生成するように構成された第1非接触センサと、
1つまたは複数のプロセッサとを備え、
該プロセッサが、
前記第1センサデータを受信し、
睡眠段階分類システムを用いて、前記第1センサデータから導出された振幅値および周期値に基づいて、身体運動が卓越している前記第1センサデータの期間と呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間とを分離し、
前記睡眠段階分類システムを用いて、前記呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間から呼吸データを取得し、
前記睡眠段階分類システムを用いて、前記呼吸データと前記身体運動が卓越している前記第1センサデータの期間とに基づいて客観的データを取得し、該客観的データが、客観的な睡眠効率値、客観的な睡眠時間値、客観的な中途覚醒回数、または客観的な睡眠潜時値のうちの少なくとも1つを含み、
前記客観的データに基づいてSQOL(sleep quality of life)パラメータを算出し、
算出された前記SQOLパラメータに基づいてフィードバックを生成するように構成されており、該フィードバックが、被験者が目標SQOLパラメータに到るために、被験者の1つまたは複数の睡眠関連活動における行動変容を提案することを含むシステム。
【請求項2】
前記呼吸データを取得することが、ピーク・トラフアルゴリズムを用いて、前記呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間の呼吸数および相対振幅を推定することを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記行動変容の提案が、算出された前記SQOLパラメータが目標SQOLパラメータよりも大きい場合は前記被験者の許容睡眠時間を増加し、算出された前記SQOLパラメータが目標SQOLパラメータよりも大きくない場合は前記被験者の許容睡眠時間を減少することを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
1つまたは複数の前記プロセッサが、ユーザインターフェースを介して主観的データを入力するように前記被験者に促すように構成され、前記主観的データが、主観的な睡眠効率値、主観的な睡眠時間値、報告された覚醒回数、または主観的な睡眠潜時値のうちの少なくとも1つを含み、
前記SQOLパラメータが、前記客観的データおよび前記主観的データに基づいて算出される請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記主観的データが主観的な睡眠効率値を含み、
前記客観的データが客観的な睡眠効率値である請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記主観的データが主観的な睡眠時間値を含み、
前記客観的データが客観的な睡眠時間値であり、
前記SQOLパラメータを算出することが、前記主観的な睡眠時間値を前記客観的な睡眠時間値と組み合わせることを含む請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記主観的データが、報告された覚醒回数を含み、
前記客観的データが客観的な覚醒回数であり、
前記SQOLパラメータを算出することが、前記報告された覚醒回数を前記客観的な覚醒回数と組み合わせることを含む請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記主観的データが主観的な睡眠潜時値を含み、
前記客観的データが客観的な睡眠潜時値であり、
前記SQOLパラメータを算出することが、前記主観的な睡眠潜時値を前記客観的な睡眠潜時値と組み合わせることを含む請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1非接触センサが生体運動センサであり、
前記送信信号および前記受信信号が無線周波数信号である請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記被験者の1つまたは複数の咳に関連する音に基づいて第2センサデータを生成するように構成された第2非接触センサを備え、
1つまたは複数の前記プロセッサが、前記第2センサデータを受信するように構成され、
前記SQOLパラメータが、前記客観的データおよび前記第2センサデータに基づいて算出される請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記客観的データが、前記被験者の1つまたは複数の前記咳に関連する呼吸努力データをさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第非接触センサが音声センサである請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
1つまたは複数のプロセッサによって被験者の生活の質を監視する方法であって、
1つまたは複数の前記プロセッサが、前記被験者に向けて発せられた送信信号および前記被験者から反射された受信信号に基づいて第1非接触センサで生成された第1センサデータを受信し、
1つまたは複数の前記プロセッサが、睡眠段階分類システムを用いて、前記第1センサデータから導出された振幅値および周期値に基づいて、身体運動が卓越している前記第1センサデータの期間と呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間とを分離し、
1つまたは複数の前記プロセッサが、前記睡眠段階分類システムを用いて、前記呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間から呼吸データを取得し、
1つまたは複数の前記プロセッサが、前記睡眠段階分類システムを用いて、前記呼吸データおよび身体運動が卓越している前記第1センサデータの期間に基づいて客観的データを取得し、該客観的データが、客観的な睡眠効率値、客観的な睡眠時間値、客観的な覚醒回数、または客観的な睡眠潜時値のうちの少なくとも1つを含み、
1つまたは複数の前記プロセッサが、前記客観的データに基づいてSQOL(sleep quality of life)パラメータを算出し、
1つまたは複数の前記プロセッサが、算出された前記SQOLパラメータに基づいてフィードバックを生成し、該フィードバックが、被験者が目標SQOLパラメータに到るために、被験者の1つまたは複数の睡眠関連活動における行動変容を提案することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被験者にQOLパラメータを提供するために、主観的な反応を得る手段とともに非接触又は微接触のセンサを用いて収集するデータの測定、集約、及び分析に関し、特に、被験者に対する介入の対照試験(例えば、医薬の臨床試験、又は、香料等の消費財の評価)を行う際の当該データの測定、集約、及び分析に関する。
【0002】
生活の質(QOL)パラメータの測定は、介入を発展させて個人の生活の質(QOL)を向上させるために重要である。QOLパラメータは、総合的なQOLの測定結果である。この総合的なQOLは、個人が自らの人生を認知する際に重要なものと一般に考えられている。一般に、QOLマーカは、基礎的で客観的に測定可能な要素と主観的な要素とを組み合わせたものであり、その具体例には、以下のものが含まれる。
【0003】
睡眠の質-個人は、よく眠れたか、それともよく眠れなかったか、主観的に報告することができるが、このような主観的な認知が個人のQOLに影響を及ぼす。睡眠の質に関するQOLパラメータ(sleep quality QOL parameter)について、その客観的な尺度は睡眠時間であり、主観的な情報はその睡眠で「良く休めたか」ということである。
【0004】
ストレス-個人は、自らの生活状況がストレスを多く感じるものかどうか、報告することができる。ストレスに関するQOLパラメータ(stress QOL parameter)について、その客観的な尺度は心拍数又はコルチゾール値であり、主観的な要素はストレスレベルに関するアンケート調査である。
【0005】
リラクゼーション-個人は、リラックスしているという主観的な感覚を報告することができる。この感覚は、客観的に自律神経系活動に関連するものでもある。
【0006】
痛み-個人は、疼痛指数(例えば、視覚的アナログ尺度)を用いて、痛みの程度を主観的に報告することができる。痛みに関するさらに客観的な尺度は、痛覚計を用いて得られる。
【0007】
体温-被験者は、深部体温の客観的な測定値とは関係の無い体温の上昇や低下の感覚を報告することができる。
【0008】
覚醒/眠気-覚醒又は注意力は、客観的に測定することができ(例えば、精神運動覚醒検査を用いる)、又、主観的なアンケートを通じて測定することができる。
【0009】
非接触(又はコンタクトレス)センサは、被験者への直接の物理接触を行わずに被験者の生理学的パラメータ又は行動に関するパラメータを検出するものであり、例えば、無線反射波に基づく運動検知器、被験者から離れて設置されるマイクロフォン、表面温度を記録する赤外線カメラ記録、又は、手を洗うために蛇口が開かれたことを記録する蛇口監視装置を含むが、これらには限られない。微接触センサは、センサと若干の物理的接触があるものの、その接触が短時間に限られるものをいい、例えば、体重計、血圧計、酒気検知器、又は、携帯体表型心電図モニタ等を含むが、これらには限られない。これらの微接触センサは、典型的には臨床試験において用いられるECGパッチ、オキシメータ、EEG電極等の接触センサとは区別される。接触センサは、体に接着されることが多く、長時間(例えば1時間以上)にわたって使用されるものである。
【0010】
QOLパラメータを決定するために重要な共通の要素は、QOLを総合的に評価するためには、センサから得られる客観的なデータと、観察される被験者から得られる主観的なデータとを組み合わせる必要があるということである。QOLを変化させる介入の影響を測定するときには特有の問題が生じる。例えば、睡眠障害を緩和する医薬品を開発した企業は、その医薬品が眠りへの直接の影響を有し、客観的又は主観的にQOLを改善することができるか確認したいと考えるであろう。同様に乾燥肌によるかゆみを緩和する皮膚軟化剤等の製品を開発した企業は、QOLが向上したかどうか(例えば、ひっかき回数の減少や、不快感の減少等)確認したいと考えるであろう。
【0011】
このような問題への一般に広く認められた解決策は、臨床試験又は消費者試験を実施することである。このような試験により、統計的な仮説が提示され、その仮説がある程度の信頼性で確認又は否定される。例えば、医薬品の治験においては、二重盲検無作為対照試験が、医薬品の効果を確認するために一般に認められている方法である。しかしながら、QOLの測定は、以下のような様々な理由で困難である。
【0012】
すなわち、(a)QOLの結果に関する適切な測定基準を定義することが困難であり、(b)QOLを測定する測定装置を身につけることによって、調査したいQOLパラメータに直接影響を与える可能性があり、(c)実験室環境ではなく自然な「家庭」環境におけるパラメータの測定には、ロジスティック面や金銭面での困難がある。これらの不都合は、本開示によって解決される。QOLの幾つかの側面を測定する従来技術には、以下に述べるように様々なものがあるが、いずれの従来技術にも欠点が存在する。
【0013】
QOLパラメータの測定は、その測定を介入プログラムに統合したいという要望によって動機づけられる。例えば、QOLに関連するストレスを減少させるために認知行動療法(CBT)を受けることがある。CBTプログラムの重要な要素は、ストレスに関するQOL指数を継続的に評価することであり、その測定が行動介入の一部を形成する。本開示の実施形態の第2の例として、睡眠に関するQOL指数を客観的及び主観的に測定することにより睡眠の質を向上させるシステムを説明する。
【0014】
現時点での最新技術に存在する欠点の具体例として、不眠症の薬に応えて睡眠の質を測定することの問題を考える。第1に、QOLに関連する「睡眠の質」は、客観的及び主観的な測定結果の組み合わせで決められるため、「睡眠の質」を定義することは難しい。第2に、現在よく用いられている睡眠の測定方法は、いわゆる睡眠ポリグラフを使用するものである。睡眠ポリグラフは、複数の生理学的パラメータ(EEG、ECG、EOG、呼吸努力、酸素濃度等)を測定するものであり、生理に関する測定値が非常に豊富に得られるが、被験者の睡眠状態を大きく変えてしまい(例えば、ベッドで寝返りを打つことが難しくなる)、真の睡眠QOLの測定値を表すことができない。最後に、睡眠ポリグラフ試験は、現時点では高価であるため(2008年において約1500ドル)、長期間にわたって多くの被験者の睡眠の質を測定するツールとしては実用的なものではない。したがって、極めて非侵襲的な方法で睡眠QOLを信頼性よく測定できるシステムが望まれている。本出願人のシステムの一実施形態において、完全に非侵襲的な生体運動センサを用いて睡眠の質を客観的に測定する方法を説明する。この客観的な測定方法は、睡眠の質を測定するための多くの主観的なツールと組み合わせることができる。睡眠の質を測定するための主観的なツールは、例えば、ピッツバーグ睡眠質問表の不眠の主観的評価や不眠重症度指標(これらは、寝床に入る時間や推定入眠時間等に関する質問票から構成される)である。
【0015】
関連のある他のQOLパラメータは、ストレスレベル又は逆にリラクゼーションである。現時点でストレスを客観的に測定する技術には、心拍数の変動又はコルチゾール値の測定がある。しかしながら、心拍数変動を測定するには、一般に被験者の胸に電極を付けることが必要であり、日常生活で行うのは難しい。同様に、コルチゾールのサンプルを収集してストレスを評価するためには、頻繁に唾液を採取することが必要であり、日常生活の習慣に組み込むことが難しい。主観的な測定方法も数多く存在し、ストレス又は不安を測定するために広く使用されている(例えば、スピルバーガー状態-特性不安検査)。したがって、ストレス関連のQOLパラメータに関する情報を確実に収集することができる方法、システム、又は装置があれば、様々な環境において有用である。
【0016】
最後に、慢性疼痛(慢性腰痛等)のQOL的意味の測定は、治療の効果を評価したり、疼痛管理に関する認知フィードバックを提供したりする際に有用である。現時点では、慢性の痛みを有する被験者の主観的なQOLを評価するために、オスウェストリー障害指標やSF-36健康調査等の主観的な測定ツールが用いられている。痛みの客観的な測定方法は明確に決められていないが、心拍数と痛みの強さとの間に相関があるという調査結果がある。
【0017】
このように、外来環境/家庭環境においてQOLを測定し、QOLの測定対象となる個人の日常生活への影響を最小限にとどめるシステム及び方法が強く望まれている。このニーズは、医薬品、軟膏、理学療法、栄養補助食品、生活習慣の改善等の介入の効果を評価する臨床試験において、非接触又は微接触センサに対する具体的な要望となっている。
【発明の概要】
【0018】
本開示によって、被験者のQOLパラメータを非接触又は微接触センサを用いて容易かつ安価に測定する装置、システム、及び方法の様々な実施形態が提供される。本システムの典型的なユーザは、極力非侵襲的な方法で測定された被験者のQOLを観察する遠隔の観察者である。本システムは、典型的には、(a)被験者が存在する場所(例えば、ベッドサイドテーブル)近辺への設置に適した一又は複数の非接触又は微接触センサユニット、(b)主観的な応答を電子的に取得する携帯電話、PDA等の入力装置、(c)データを集約し、遠隔地に送信する装置、(d)ローカルユーザに情報を示すディスプレイユニット、及び、(e)QOLパラメータを表示し分析するデータ保管・分析システムを含む。この構成要素は、介入プログラム用のフィードバック装置として使用することもできる。当該センサユニット、入力ユニット、データ集約/送信ユニット、及び表示/測定ユニットを、必要に応じて適宜、単一の独立したユニットに組み込んでもよい(例えば、これらの機能を全て携帯電話プラットフォーム上に統合することができる)。当該センサユニットは、一又は複数の非接触測定センサ(音声、体の動き、呼吸、心拍数、姿勢、体温等のパラメータの検出用)、及び、一又は複数の微接触センサ(例えば、体重計、体温計)を含んでもよい。本開示の一又は複数の態様において、システムは、客観的な測定結果及びユーザから得られる主観的な測定結果に基づいてQOLパラメータを生成するための処理機能(ローカル又は遠隔で実行される)を有していてもよい。具体例として、総合的な睡眠QOLは、当該ユーザの主観的な反応を、睡眠時間の客観的な測定結果とともに不眠重症度指標と組み合わせることによって生成することができる。
【0019】
一又は複数の実施形態において、開示されたアプローチ(薬剤アプローチ、装置に基づくアプローチ、又は行動のアプローチ)は、被験者がQOLパラメータを改善する際に有用である。特に、人間の睡眠、ストレス、リラクゼーション、眠気、体温、及び感情の状態等のQOLパラメータの非接触又は微接触測定が、自動のサンプリング、蓄積、及び遠隔のデータ分析センタへの送信を行う手段とともに開示される。一又は複数の実施形態において、システムの一態様は、被験者の通常の行動への妨害を極力少なくして客観的なデータを測定する。
【0020】
本発明の第1態様は、被験者に向かって放射された送信信号および被験者から反射された受信信号に基づいて第1センサデータを生成するように構成された第1非接触センサと、1つまたは複数のプロセッサとを備え、該プロセッサが、前記第1センサデータを受信し、睡眠段階分類システムを用いて、前記第1センサデータから導出された振幅値および周期値に基づいて、身体運動が卓越している前記第1センサデータの期間と呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間とを分離し、前記睡眠段階分類システムを用いて、前記呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間から呼吸データを取得し、前記睡眠段階分類システムを用いて、前記呼吸データと前記身体運動が卓越している前記第1センサデータの期間とに基づいて客観的データを取得し、該客観的データが、客観的な睡眠効率値、客観的な睡眠時間値、客観的な中途覚醒回数、または客観的な睡眠潜時値のうちの少なくとも1つを含み、前記客観的データに基づいてSQOL(sleep quality of life)パラメータを算出し、算出された前記SQOLパラメータに基づいてフィードバックを生成するように構成されており、該フィードバックが、被験者が目標SQOLパラメータに到るために、被験者の1つまたは複数の睡眠関連活動における行動変容を提案することを含むシステムである。
本発明の第2態様は、1つまたは複数のプロセッサによって被験者の生活の質を監視する方法であって、1つまたは複数のプロセッサが、前記被験者に向かって放射された送信信号および前記被験者から反射された受信信号に基づいて、第1非接触センサで生成された第1センサデータを受信し、1つまたは複数の前記プロセッサが、睡眠段階分類システムを用いて、前記第1センサデータから導出された振幅値および周期値に基づいて、身体運動が卓越している前記第1センサデータの期間と呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間とを分離し、1つまたは複数の前記プロセッサが、前記睡眠段階分類システムを用いて、前記呼吸関連の動きが卓越している前記第1センサデータの期間から呼吸データを取得し、1つまたは複数の前記プロセッサが、前記睡眠段階分類システムを用いて、前記呼吸データおよび身体運動が卓越している前記第1センサデータの期間に基づいて客観的データを取得し、該客観的データが、客観的な睡眠効率値、客観的な睡眠時間値、客観的な覚醒回数、または客観的な睡眠潜時値のうちの少なくとも1つを含み、1つまたは複数の前記プロセッサが、前記客観的データに基づいてSQOL(sleep quality of life)パラメータを算出し、1つまたは複数の前記プロセッサが、算出された前記SQOLパラメータに基づいてフィードバックを生成し、該フィードバックが、被験者が目標SQOLパラメータに到るために、被験者の1つまたは複数の睡眠関連活動における行動変容を提案することを含む方法である。
【0021】
一実施形態にかかる被験者用QOL測定システムは、QOL評価に関連する複数の生理学的パラメータ及び環境パラメータを検出するように構成された複数の多パラメータ生理学的センサ及び複数の多パラメータ環境センサと、検出されたパラメータのサンプリングを制御し、前記検出されたパラメータに関連する記録信号を経時的に再構成できるようにするタイマーと、前記測定される被験者からの主観的な応答を取得する入力装置と、サンプリングされた信号を記録するデータ記録装置と、被験者から収集されたデータを遠隔のデータ測定センタに送信するとともに、前記測定センサにメッセージを送信するためのデータ送信機能と、前記測定された信号に基づいて総合的なQOLパラメータを算出するためのデータ測定・分析機能と、を備え、前記複数のセンサのそれぞれは、測定される被験者と非接触又は微接触である。 他の実施形態にかかるQOL指標の評価方法は、測定される被験者と非接触又は微接触で、当該被験者のQOL評価に関連する多パラメータの生理学的パラメータ及び環境パラメータを測定し、前記測定される被験者から、自らのQOLに関する主観的な応答を収集し、客観的及び主観的な測定結果を分析して定量的なQOL指標を生成し、前記測定された被験者の前記測定されたQOL指標に作用する推奨介入を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、一実施形態の全体模式図を示す。
図2図2は、被験者の近く(ベッドサイドキャビネット)に被験者の睡眠状態の観察に用いられる非接触センサを置いた実施形態の詳細な一例を示す。
図3図3は、個人の主観的な反応を記録するために用いられる入力装置の実施形態の一例を示す。
図4図4は、ウェブサイトを用いて個人からの主観的な反応を収集する実施形態の他の例を示す。
図5A図5Aは、睡眠試験において、特定の非接触センサを用いて原データを取得する実施形態の一例を示す。
図5B図5Bは、睡眠試験において、特定の非接触センサを用いて原データを取得する実施形態の一例を示す。
図6図6は、臨床試験において睡眠時無呼吸を測定するシステムの測定結果の一例を示す。
図7A図7Aは、本開示の一又は複数の実施形態に基づく行動介入の模式的表現を示す。
図7B図7Bは、本開示の一又は複数の実施形態に基づく行動介入の模式的表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。 図1は、本開示の一実施形態の全体模式図を示す。観察対象の被験者101は、複数の非接触センサ102及び微接触(minimal contact)センサ103によって観察される。被験者101は、入力装置104にアクセスすることができる。入力装置104は、テキストや音声により当該被験者からの主観的フィードバックを得ることができる。データ集約・転送装置105は、センサ102、103、及び104からデータを収集し、当該センサ及び装置によって使用されるデータのサンプリングや入力パラメータを制御することができる。表示/フィードバック装置107(例えば、信号が収集されているか否かを表示したり、直近のQOLパラメータの測定結果に関するフィードバックを提供したりする)をローカルユーザに提供してもよいが必須では無い。データ集約・転送装置105は、遠隔データ記録・分析システム106と双方向通信可能に構成されてもよい。データ記録・分析システム106は、複数の被験者からのデータを保存し、記録された信号やフィードバックの分析を実行することができる。データ記録・分析システム106は、データ表示装置107が分析結果をユーザに提示できるようにデータ表示装置107と通信を行ってもよく、表示装置108が遠隔のユーザに対してQOLパラメータを提示できるように必須では無い別体の表示装置108と通信を行ってもよい。
【0024】
図2は、被験者の睡眠状態を客観的に観察する非接触センサの実施形態を示す。この実施形態において、当該センサユニットは、無線周波数生体運動センサ、マイクロフォン(環境音を拾うためのもの)、温度センサ(気温を測定するためのもの)、光センサ(環境の照度を測定するためのもの)、及び被験者の体温を測定する赤外線検知器の一又は複数を含むことができる。非接触センサは、例えば、ベッドサイドテーブルに置かれる。
【0025】
図3は、ユーザの入力を収集する入力装置の実施形態の一例を示す。この入力装置は、典型的には、英数字キーパッド301、ディスプレイ302、マイクロフォン303、及びスピーカ304を含む。これにより、視覚的な方法や音響的な方法を用いて質問を生成することができ、ユーザは、テキストや音声入力を用いて、当該質問に対して回答することができる。
【0026】
図4は、インターネットブラウザを有するパーソナルコンピュータを用いて睡眠に関する主観的な認知を記録する実施形態を示す。
【0027】
図5は、睡眠QOL(sleep quality-of-life)の測定試験において非接触センサを用いて測定された原信号の一例を提供する。図5Aは、寝返りを打ったときの信号を示し、図5Bは、眠りが深いときの信号を示す。
【0028】
図6は、臨床試験において、非接触システムが、現在の睡眠ポリグラフ(PSG)評価と同程度の正確性で無呼吸低呼吸指数を測定できることを示す一例である。
【0029】
図7は、睡眠の質を向上させるために本システムを使用して行われる行動介入の一例である。図7Aは、睡眠に関する詳細な情報が提供される初期セッションを含む数週間に亘る介入の要素を示す。本システムは、睡眠QOL指数(SQOLI)を測定するために被験者に提供される。
【0030】
図7Bは、SQOLIの測定により得られるフィードバックに基づく具体的なアルゴリズムの一例を示す。このアルゴリズムは、介入の間に用いられる。例えば、ある治験者について目標値以上のSQOLIが実現された場合には、その治験者は睡眠時間を30分ずつ増加させ、そうでない場合には、睡眠時間を15分ずつ減少させる。
【0031】
本開示に係るシステムの典型的な実施形態は、一又は複数の非接触センサ又は微接触センサを含む。非接触センサ又は微接触センサは、以下のセンサの一又は複数が含まれる。
【0032】
(a)運動を測定して呼吸、心拍数、及び運動パラメータを得る生体運動センサ。この種のセンサの例は、P. de Chazal、E. O‘Hare、N. Fox、C. Heneghanらによって執筆された論文 “Assessment of Sleep/Wake Patterns Using a Non-Contact Biomotion Sensor”, Proc. 30th IEEE EMBS Conference, 2008年8月、IEEE発行、においてより詳細に説明されている。この論文は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。一実施形態において、生体運動センサは、就寝中の被験者からのエコーを生成するため、5.8GHzの一連の無線周波数パルスを使用する。エコーは、送信信号と混合され、運動軌跡(movement trace)が生成される。この運動軌跡には、呼吸、心拍数、及び姿勢の変化による動きが含まれる。
【0033】
(b)環境音を測定する音声センサ。本システムに用いるのに適したマイクロフォンの具体例は、製品番号S-OM9765C273S-C08のHK-Sound Omni社製-27dBマイクロフォンである。
【0034】
(c)環境の温度を測定する温度センサ(典型的には、±1℃の精度)。本システムに用いるのに適した温度センサの具体例は、National Semiconductor社製LM20、SC70パッケージである。
【0035】
(d)照度を測定する照度センサ。本システムに用いるのに適した照度センサの具体例は、Square D(登録商標)Clipsal Light-Levelセンサである。
【0036】
(e)体温測定センサ。本システムに用いるのに適したセンサの具体例は、YuanYa Far Asia Company製の製品番号310の体温計である。
【0037】
微接触センサには、以下のセンサの一又は複数が含まれる。(a)体重を測定する体重計。体重計の具体例は、A&D UC-321PBTである。(b)A&F UA767PBT等の血圧計。(c)ResMed Autoset Spirit S8等の睡眠時無呼吸治療用の持続的陽圧気道装置。(d)歩数を計測する歩数計(例えば、HJ-720ITCソフトウェアを備えたオムロン製Pocket Pedometer)。(e)日中の身体活動を計測する装着式加速度計(例えば、ActivePAL装置)。(f)内臓脂肪や基礎代謝量を計算するHBF-500搭載のOmron製Body Composition Monitor等の体組成計。(g)これら以外の非接触又は微接触装置も用いられる。
【0038】
一又は複数の実施形態において、本システムは、上述の非接触及び微接触センサのために記録を取る機能を提供するデータ取得機能及びデータ処理機能を含んでもよい。一般に、この機能には、アナログ/デジタル変換器(ADC)、タイマー、及びプロセッサ等が含まれる。このプロセッサは、信号のサンプリングを制御し、任意の必要なデータ処理技術又はデータ整理技術(例えば、圧縮)を動作させて不必要なデータ蓄積又はデータ転送を避けるように構成される。
【0039】
データ通信サブシステムは、記録されたデータを遠隔のデータベースに蓄積及び分析のために送信する通信機能を提供する。データベース等を含むデータ分析システムは、情報処理機能を提供し、ディスプレイに入力するように構成される。
【0040】
本システムの具体的な一実施形態において、データ取得、データ処理、及びデータ通信には、例えば、Bluetooth(登録商標)対応データ取得装置(例えば、市販されているRoving Networks製BlueSentry(登録商標)装置)を使用することができる。これ以外の従来の無線通信も使用可能である。これにより、任意の電圧波形をサンプリングすることができ、データをデジタル形式で受け取ることができる。
【0041】
本実施形態において、Bluetooth(登録商標)装置は、Bluetooth(登録商標)プロトコルを用いて、データを携帯電話へ送信し、当該データを携帯電話のメモリに保存することができる。携帯電話は、初期のデータ処理を行うことができる。携帯電話は、テキストベースの入力システム、又は、音声対応の質問応答システムを利用し、主観的データをユーザから収集するための装置として用いることもできる。主観的データは、ウェブページを用いて収集することもできる。
【0042】
携帯電話は、GPRSやEDGE等のプロトコルを用いて遠隔地点へのデータ送信機能を提供することができる。データ分析システムは、データベース(例えば、My SQL データベースソフトウェア)を実行するパーソナルコンピュータである。このデータベースは、QOLパラメータを算出する分析ソフトウェアからの検索要求に応じて動作する。最後に、データ表示機能は、データベースに検索要求を行うプログラムによって提供され、この分析プログラムの出力は、ウェブブラウザに図形やテキストを用いて表示される。
【0043】
実施形態の臨床用途として、本システムを、具体的な臨床試験シナリオにおける睡眠関連のQOL測定に用いた例を説明する。慢性腰痛(CLBP)を持つ15人の患者群、及び、腰痛が無く、年齢及び性別が合致する15人の被験者群を採用した。参加者は、冒頭にスクリーニング及び登録を終えた後、基準値の評価を行い、性別、年齢、体重、身長、BMI及び服用中の薬を記録した。全ての被験者は、自己評価により、基準値となる睡眠の質(ピッツバーグ睡眠質問表、不眠重症度指標、QOL(SF36v2)、及び、SF36v2質問票の一部の痛み(SF36v2の身体的痛みの尺度))の計測を完了した。CLBP被験者は、腰痛に関連する機能的障害の測定としてオスウェストリー障害指標(ODI)の調査を行った。全ての被験者は、続いて、上述の非接触生体運動センサを用いた客観的な観察を2晩続けて受けるとともに、主観的な睡眠の記録(ピッツバーグ睡眠日誌)を毎日つけた。表1は、本システムを用いた睡眠の客観的な測定結果を示すもので、総睡眠時間、睡眠効率、及び睡眠潜時を含む。これら以外の測定可能な客観的パラメータには、中途覚醒回数(1分以上続くもの)及び中途覚醒時間が含まれる。
【0044】
【表1】
【0045】
表1で説明されている客観的な睡眠指標は、非接触生体運動センサデータを処理し、30秒ごとに睡眠及び覚醒の分類を生成する睡眠段階分類システムを用いて得られた。この分類システムは、以下の観察結果に基づいて開発された。
【0046】
大きな動き(例えば、数センチメートルの大きさ)は、非接触信号中で容易に認識することができる。身体運動は、被験者の睡眠状態に関する重要な情報を提供し、睡眠状態又は覚醒状態を決定する睡眠覚醒判定法(アクティグラフィー)において広く用いられている。呼吸のばらつきは、睡眠状態とともに大きく変化する。レム睡眠で覚醒しているときに比べて、眠りが深いときには、呼吸は、呼吸数及び呼吸振幅のいずれにおいても安定している。
【0047】
したがって、非接触生体運動信号の処理における第1段階は、運動と呼吸に関する情報を特定することである。これらの情報の特定方法を説明するために、図4Aに、寝返りを打って胴体及び腕に大きな動きがあったときに非接触センサによって記録された信号の例を示す。運動が起こっている期間を特定するために、この信号における高振幅及び高周期の範囲に基づくアルゴリズムを用いた。
【0048】
手足又は胴体の大きな動きが見られない期間は、呼吸関連の動きが卓越した信号となり、呼吸数及び相対振幅が、ピーク・トラフアルゴリズムを用いて推定される。図4Bは、安定した呼吸努力を示す第4段階におけるセンサの記録信号を示す。
【0049】
本システムが30秒ずつの各期間を正しく分類しているか確認するために、睡眠ポリグラフ(PSG)モンタージュとともに信号を記録した。我々は、PSGから得られる睡眠期間の注釈を非接触生体運動センサから得られるものと比較し、全体的な分類の正確性、睡眠の感度及び予測性(sleep sensitivity and predictivity)、及び、覚醒の特異度及び予測性(wake specificity and predictivity)を報告する。全体の正確性は、正しく分類された期間の割合である。この結果は、表2に示されており、本システムが睡眠を高い精度で客観的に測定できることを実証している。
【0050】
【表2】
【0051】
表3は、同じ被験者から得られた主観的な測定結果の一部を示すものであり、睡眠時間、睡眠効率、覚醒回数、及び睡眠潜時に関する各晩における被験者の主観的評価、並びに、被験者の総PSQI及びISIスコアを含む。
【0052】
【表3】
【0053】
本システムは、睡眠の主観的及び客観的な測定結果を報告することができるが、一態様においては、客観的な測定結果と主観的な測定結果とを組み合わせた総合的な睡眠QOL指数(SQOLI)に関連するパラメータを報告することもできる。睡眠QOL指数は様々な方法によって求められる。例えば、以下のようなSQOL指数を定義することができる。
【0054】
SQOL時間(SQOL duration)={0.8×客観的な睡眠時間+0.2×客観的な睡眠時間}
【0055】
SQOLフラグメンテーション(SQOL fragmentation)={(客観的に測定された1分以上の覚醒回数+自己申告の覚醒回数)/客観的な睡眠時間}
【0056】
SQOL潜時(SQOL latency)=√(客観的な睡眠潜時x主観的睡眠潜時)
【0057】
上記の組み合わせ以外にも、当業者であるユーザは、具体的な用途について最も効果的な結果が得られるように睡眠QOLの測定値を組み合わせることができる。
【0058】
他の実施形態において、本システムは、慢性の咳がある患者(例えば、慢性閉塞性肺疾患の患者)のQOLを測定するために用いることができる。この実施形態においては、2つの非接触センサ、つまり、上述の非接触生体運動センサ及びマイクロフォンが用いられる。本システムは、咳の発作に関連する音声、及び、咳に関連する呼吸努力を客観的に記録することができる。これにより、音声のみに依存する場合よりも、咳の頻度をより正確に収集する方法が得られる。咳がQOLに与える影響を主観的に測定する方法もある(例えば、“Development of a parent-proxy QOL chronic cough-specific questionnaire: clinical impact vs psychometric evaluations,“ Newcombe PA, Sheffield JK, Juniper EF, Marchant JM, Halsted RA, Masters IB, Chang AB, Chest. 2008 Feb;133(2):386-95)において説明されている親用咳固有QOL(PC-QOL)質問票)。
【0059】
他の例示的な実施形態として、本システムは、臨床試験環境において、睡眠時無呼吸の重症度及びその発生を特定するためのスクリーニング用ツールとして用いることができる。本実施形態において、非接触生体運動センサは、無呼吸や呼吸振幅低下(呼吸低下)の期間を検出するために用いられる。図5は、本システムの使用方法の一例として、臨床試験に登録された患者に関する睡眠時無呼吸の重症度の推定値を示す。
【0060】
当業者であれば、本システムは、QOLの測定が重要となる多くの臨床試験環境において使用できることを理解できる。臨床試験環境における使用例として、以下のものを挙げる。
【0061】
アトピー性皮膚炎(AD)の患者の睡眠QOLの測定。ADの被験者は、日中感じる痒みと、睡眠中における潜在意識でのひっかき行動による睡眠の質の不良とが重なって、QOLが不良であることが多い。本システムは、新しい医薬品やスキンクリーム等の介入の影響を評価するための臨床試験において、主観的及び客観的なQOLパラメータを収集し、試験の最終結果の評価尺度として用いられる。睡眠QOL指数を測定することにより、所定の実薬を使用するか否か、及びその薬の処方に関するアドバイスを作成することができる。
【0062】
栄養剤を与えた場合の乳幼児の睡眠の質の測定。例えば、ラクトース過敏症は、睡眠障害、胃痛、及び泣き発作によって、乳児のQOLに影響を与えることが分かっている。ラクトース過敏症を克服するための栄養剤は、客観的な睡眠指標と親から報告される泣き発作との組み合わせによって評価され、総合的なQOL指標が作成される。
【0063】
さらに具体的な実施形態においては、睡眠QOLに関連する行動フィードバックプログラムを提供することによって、睡眠の質を向上させることができる。不眠症を訴える患者は、睡眠QOLを向上させるために、本システムを以下のように使用することができる。
【0064】
患者は、医師を最初に訪れる際に、睡眠QOLについて不満を訴えることがある。患者は、以下の手順で、認知行動療法プログラムを受けることを選択することができる。
【0065】
第1段階:患者は、セラピストとともに、又は、マニュアルを参考にして、導入セッションを受ける。この導入セッションにおいて、患者は、通常の生理的な睡眠パターン、必要とされる睡眠等の睡眠に関する基礎的な生理学的機序に関する情報を案内される。この段階によって、睡眠に関する誤解(3時間の睡眠時間が通常だと考えている場合や、健康のためには丁度8時間の睡眠が必要と考えている場合)がないようにする。
【0066】
第2段階:Bootzin刺激制御指示。この段階では、被験者固有の情報が用いられ、基本的な行動介入が合意される。例えば、被験者は、まず、目標とする標準起床時間(例えば、午前7時)についてセラピストと合意する。次に、被験者とセラピストとは、20分間の覚醒時間の後に寝床を出ることなどの行動介入や、睡眠を妨げる寝室での行動(例えば、テレビ、コンピュータゲーム等)を避ける必要性について同意する。また、昼寝をやめることを合意してもよい。
【0067】
第3段階:当初の目標設定。続いて、上記の議論に基づいて、目標となる睡眠QOL指標(SQOLI)について合意する。具体例として、この目標となるSQOLIは、85%以上の睡眠効率を達成するとともに、主観的な「入眠困難」評価で5以下(1~10までのスケール、1は容易、10は非常に困難)であることに基づくものであってもよい。患者は、行動プログラムの次の1週間において、合意した起床時間の5時間前(この例では、午前2時)に寝床に就くことで目標達成を試みる。上述した図1図5における開示は、睡眠効率の客観的な測定結果を提供し、主観的なユーザのフィードバックと組み合わせてSQOLIを生成する。患者とセラピストは、第1週の最後に、SQOLIの測定結果を検討し、次の手順を決定する。
【0068】
第4段階:睡眠の質指標に基づくフィードバックループ。第1週目に被験者が所望のSQOLIを達成した場合には、新しい目標が設定される。例えば、被験者は、合意した起床時間の5.5時間前に就寝するとともに、同じ85%以上の睡眠効率及び5以下の「入眠困難」評価を達成するように試みる。翌週以降は、前の週に目標を達成した場合には睡眠時間を30分間増やすというアルゴリズムが適用される。このプロセスは、最終的に目標とする安定した状態の睡眠QOL指標(例えば、7.5時間の睡眠時間で85%以上の睡眠効率)に到るまで続けられる。
【0069】
睡眠の質の改善に関する文献において、多数の行動介入が開発され説明されていることは、当業者にとって明らかである。しかしながら、これらの従来のアプローチは、睡眠QOLの測定基準を提供する信頼性があり容易な方法を備えていない点にその制約がある。本開示が解決しようとするのは、この制約である。また、睡眠の質の向上に適した多くの薬剤介入があることも当業者に明らかである(例えば、Ambien(登録商標)の処方)。本明細書の開示は、このような医療介入についてもサポートするものであることも当業者に明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示にかかる装置、システム、及び方法は、臨床試験、消費者試験、及びQOLを改善するための介入において、QOL指標を非接触評価及び微接触評価する用途を有する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B