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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/55 20210101AFI20240110BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20240110BHJP
   H01M 50/566 20210101ALI20240110BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240110BHJP
   B21D 39/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
H01M50/55 101
H01M50/564
H01M50/566
H01M10/04 Z
B21D39/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020198013
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086153
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前園 寛志
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246966(JP,A)
【文献】特開平02-011232(JP,A)
【文献】特開2017-010743(JP,A)
【文献】特開2011-048976(JP,A)
【文献】特開2012-004105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/55
H01M 50/564
H01M 50/566
H01M 10/04
B21D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する導電部材と、
前記貫通孔に挿入され、前記導電部材上に露出する先端部を有する端子部材とを備え、
前記端子部材の前記先端部と前記導電部材とのカシメ接合部が形成され、
前記端子部材の前記先端部は、内周面を有する凹部を含み、
前記端子部材の中心軸に対する前記内周面の傾きが非連続的に変化する折り曲げ部が前記内周面上に形成され、
前記折り曲げ部の一方側に隣接する前記内周面および前記折り曲げ部の他方側に隣接する前記内周面は、いずれも前記折り曲げ部から離れるにつれて前記中心軸から離れる方向に傾く、電池。
【請求項2】
前記導電部材は側壁を有する穴部を含み、
前記カシメ接合部は前記穴部内に形成され、
前記カシメ接合部において、前記端子部材の先端は前記穴部の前記側壁に達する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記カシメ接合部の少なくとも一部において、前記端子部材の先端は前記導電部材に溶接される、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記電池は電極体をさらに備え、
前記導電部材は、前記電極体と前記端子部材とを電気的に接続する集電体である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
導電部材の貫通孔に端子部材を挿入する工程と、
前記端子部材の先端部と前記導電部材とをカシメ接合する工程とを備え、
前記カシメ接合する工程は、
中心軸に対して第1の角度で傾斜する第1テーパ部と、前記第1テーパ部の大径側に設けられ、前記中心軸に対して前記第1の角度よりも大きな第2の角度で傾斜する第2テーパ部とを含む成形金型を準備することと、
前記成形金型の前記第1テーパ部を前記端子部材の前記先端部に対向させ、前記中心軸に沿って前記成形金型を移動させ、前記端子部材の前記先端部に形成された筒状部に前記成形金型を挿入し、前記第1テーパ部により前記筒状部の第1部分を径方向外側に押圧するとともに前記第2テーパ部により前記筒状部の第2部分を径方向外側に押圧することにより、前記端子部材の前記先端部を拡径することとを含み、
前記端子部材の前記先端部を拡径することにより、前記端子部材の前記先端部に内周面を有する凹部が形成され、
前記端子部材の中心軸に対する前記内周面の傾きが非連続的に変化する折り曲げ部が前記内周面上に形成され、
前記折り曲げ部の一方側に隣接する前記内周面および前記折り曲げ部の他方側に隣接する前記内周面は、いずれも前記折り曲げ部から離れるにつれて前記中心軸から離れる方向に傾く、電池の製造方法。
【請求項6】
前記中心軸を通る少なくとも1つの断面において、前記第1テーパ部の最大径は、前記筒状部の穴径よりも大きい、請求項5に記載の電池の製造方法。
【請求項7】
前記中心軸を通る少なくとも1つの断面において、前記第1テーパ部の最大径は、前記筒状部の穴径よりも50μm以上大きい、請求項6に記載の電池の製造方法。
【請求項8】
前記中心軸を通る少なくともすべての断面において、前記第1テーパ部の最小径は、前記筒状部の穴径よりも100μm以上小さい、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【請求項9】
前記導電部材と接合された前記端子部材の先端を前記導電部材に溶接する工程をさらに備えた、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池およびその製造方法、ならびに成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
電極端子と集電体とをカシメにより接合した構造を有する電池が従来から知られている。このような電池は、たとえば特開2017-10743号公報(特許文献1)等に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-10743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カシメ接合に用いる成形金型の形状によっては、カシメ接合部の形状が安定しないことがあり得る。カシメ接合部の形状が安定しない場合、カシメ接合される部材の歪みが局所的に大きくなり、許容される限界値を超えることがあり得る。従来の加工方法は、上記課題を解決する観点からは、必ずしも十分なものということはできない。
【0005】
本技術の目的は、形状の安定したカシメ接合部を有する電池およびその製造方法、ならびにその製造方法に用いる成形金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る電池は、貫通孔を有する導電部材と、貫通孔に挿入され、導電部材上に露出する先端部を有する端子部材とを備える。端子部材の先端部と導電部材とのカシメ接合部が形成される。端子部材の先端部は、内周面を有する凹部を含む。端子部材の中心軸に対する内周面の傾きが変化する折り曲げ部が内周面上に形成される。
【0007】
本技術に係る電池の製造方法は、導電部材の貫通孔に端子部材を挿入する工程と、端子部材の先端部と導電部材とをカシメ接合する工程とを備える。カシメ接合する工程は、中心軸に対して第1の角度で傾斜する第1テーパ部と、第1テーパ部の大径側に設けられ、中心軸に対して第1の角度よりも大きな第2の角度で傾斜する第2テーパ部とを含む成形金型を準備することと、成形金型の第1テーパ部を端子部材の先端部に対向させ、中心軸に沿って成形金型を移動させ、端子部材の先端部に形成された筒状部に成形金型を挿入し、第1テーパ部により筒状部の第1部分を径方向外側に押圧するとともに第2テーパ部により筒状部の第2部分を径方向外側に押圧することにより、端子部材の先端部を拡径することとを含む。
【0008】
本技術に係る成形金型は、貫通孔を有する第1の部材と、貫通孔に挿入され、第1の部材上に露出する先端部を有する第2の部材とをカシメ接合するために用いられ、第2の部材の先端部に形成された筒状部に挿入可能な成形金型である。成形金型は、中心軸に対して第1の角度で傾斜する第1テーパ部と、第1テーパ部の大径側に設けられ、中心軸に対して第1の角度よりも大きな第2の角度で傾斜する第2テーパ部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、形状の安定したカシメ接合部を有する電池およびその製造方法、ならびにその製造方法に用いる成形金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】角形二次電池の斜視図である。
図2図1におけるII-II断面図である。
図3】電極体を構成する正極板の平面図である。
図4】電極体を構成する負極板の平面図である。
図5】正極板および負極板からなる電極体を示す平面図である。
図6】電極体と正極集電部材および負極集電部材との接続構造を示す図である。
図7】封口板への正極集電部材および負極集電部材の取付構造を示す図である。
図8図7におけるVIII-VIII断面図である。
図9図7におけるIX-IX断面図である。
図10】封口板と電極体とが接続された状態を示す図である。
図11】1つの実施の形態に係るカシメ接合の第1工程を示す図である。
図12図11における金型先端部の部分拡大図である。
図13】1つの実施の形態に係るカシメ接合の第2工程を示す図である。
図14図13における金型先端部の部分拡大図である。
図15】1つの実施の形態に係るカシメ接合の第3工程を示す図である。
図16図15におけるカシメ接合部の部分拡大図である。
図17】比較例に係るカシメ接合の第1工程を示す図である。
図18図17における金型先端部の部分拡大図である。
図19】比較例に係るカシメ接合の第2工程を示す図である。
図20図19における金型先端部の部分拡大図である。
図21】比較例に係るカシメ接合の第3工程を示す図である。
図22図21におけるカシメ接合部の部分拡大図である。
図23】1つの実施の形態および比較例に係るカシメ接合を対比して示す模式図である。
図24図23から1つの実施の形態に係るカシメ接合を抜き出して示す図である。
図25図23から比較例に係るカシメ接合を抜き出して示す図である。
図26】カシメ接合の途中における応力分布について説明する図である。
図27】カシメ径と相当全歪最大値との関係を示す図である。
図28】1つの実施の形態に係るカシメ接合の途中におけるカシメ部の形状を説明するための図である。
図29】1つの実施の形態に係るカシメ接合後のカシメ部の形状を説明するための図である。
図30】比較例に係るカシメ接合の途中におけるカシメ部の形状を説明するための図である。
図31】比較例に係るカシメ接合後のカシメ部の形状を説明するための図である。
図32】電池ケース外部のカシメ部の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0012】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。
【0013】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0014】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0015】
図1は、角形二次電池1の斜視図である。図2は、図1におけるII-II断面図である。
【0016】
図1図2に示すように、角形二次電池1は、電池ケース100と、電極体200と、絶縁シート300と、正極端子400と、負極端子500と、正極集電部材600と、負極集電部材700と、カバー部材800とを含む。
【0017】
電池ケース100は、開口を有する有底角筒状の角形外装体110と、角形外装体110の開口を封口する封口板120とからなる。角形外装体110および封口板120は、それぞれ金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることが好ましい。
【0018】
封口板120には、電解液注液孔121が設けられる。電解液注液孔121から電池ケース100内に電解液が注液された後、電解液注液孔121は、封止部材122により封止される。封止部材122としては、たとえばブラインドリベットおよびその他の金属部材を用いることができる。
【0019】
封口板120には、ガス排出弁123が設けられる。ガス排出弁123は、電池ケース100内の圧力が所定値以上となった際に破断する。これにより、電池ケース100内のガスが電池ケース100外に排出される。
【0020】
電極体200は、電解液とともに電池ケース100内に収容されている。電極体200は、正極板と負極板がセパレータを介して積層されたものである。電極体200と角形外装体110の間には樹脂製の絶縁シート300が配置されている。
【0021】
電極体200の封口板120側の端部には、正極タブ210Aおよび負極タブ210Bが設けられている。
【0022】
正極タブ210Aと正極端子400とは、正極集電部材600を介して電気的に接続されている。正極集電部材600は、第1正極集電体610および第2正極集電体620を含む。なお、正極集電部材600は、1つの部品から構成されてもよい。正極集電部材600は、金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることがより好ましい。
【0023】
負極タブ210Bと負極端子500とは、負極集電部材700を介して電気的に接続されている。負極集電部材700は、第1負極集電体710および第2負極集電体720を含む。なお、負極集電部材700は、1つの部品から構成されてもよい。負極集電部材700は、金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。
【0024】
正極端子400は、樹脂製の外部側絶縁部材410を介して封口板120に固定されている。負極端子500は、樹脂製の外部側絶縁部材510を介して封口板120に固定されている。
【0025】
正極端子400は金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であることがより好ましい。負極端子500は金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。負極端子500が、電池ケース100の内部側に配置される銅または銅合金からなる領域と、電池ケース100の外部側に配置されるアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる領域を有するようにしてもよい。
【0026】
カバー部材800は、第1正極集電体610と電極体200との間に位置する。カバー部材800は、負極集電体側に設けられてもよい。また、カバー部材800は必須の部材ではなく、適宜省略が可能である。
【0027】
図3は、電極体200を構成する正極板200Aの平面図である。正極板200Aは、矩形状のアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極活物質(たとえばリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等)、結着材(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等)、および導電材(たとえば炭素材料等)を含む正極活物質合剤層が形成された本体部220Aを有する。本体部の端辺から正極芯体が突出しており、この突出した正極芯体が正極タブ210Aを構成する。正極タブ210Aにおける本体部の220Aと隣接する部分には、アルミナ粒子、結着材、および導電材を含む正極保護層230Aが設けられている。正極保護層230Aは、正極活物質合剤層の電気抵抗よりも大きな電気抵抗を有する。正極活物質合剤層は導電材を含まなくてもよい。正極保護層230Aは必ずしも設けられなくてもよい。
【0028】
図4は、電極体200を構成する負極板200Bの平面図である。負極板200Bは、矩形状の銅箔からなる負極芯体の両面に負極活物質層が形成された本体部220Bを有する。本体部220Bの端辺から負極芯体が突出しており、この突出した負極芯体が負極タブ210Bを構成する。
【0029】
図5は、正極板200Aおよび負極板200Bからなる電極体200を示す平面図である。図5に示すように、電極体200は、一方の端部において各々の正極板200Aの正極タブ210Aが積層され、各々の負極板200Bの負極タブ210Bが積層されるように作製される。正極板200Aおよび負極板200Bは、たとえば各々50枚程度ずつ重ねられる。正極板200Aと負極板200Bとは、ポリオレフィン製の矩形状のセパレータを介して交互に積層される。なお、長尺のセパレータをつづら折りして用いてもよい。
【0030】
図6は、電極体200と正極集電部材600および負極集電部材700との接続構造を示す図である。図6に示すように、電極体200は、第1電極体要素201(第1積層群)および第2電極体要素202(第2積層群)により構成される。第1電極体要素201および第2電極体要素202の外面にもセパレータが各々配置される。第1電極体要素201および第2電極体要素202は、たとえばテープ等により積層状態の状態で固定することができる。代替的に、各々の正極板200A、負極板200Bおよびセパレータに接着層を設け、セパレータと正極板200Aとが各々接着され、セパレータと負極板200Bとが各々接着されるようにしてもよい。
【0031】
第1電極体要素201の複数枚の正極タブ210Aが第1正極タブ群211Aを構成する。第1電極体要素201の複数枚の負極タブ210Bが第1負極タブ群211Bを構成する。第2電極体要素202の複数枚の正極タブ210Aが第2正極タブ群212Aを構成する。第2電極体要素202の複数枚の負極タブ210Bが第2負極タブ群212Bを構成する。
【0032】
第1電極体要素201と第2電極体要素202の間に、第2正極集電体620と第2負極集電体720とが配置される。第2正極集電体620は、第1開口620Aおよび第2開口620Bを有する。第1正極タブ群211Aおよび第2正極タブ群212Aが、第2正極集電体620上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。第1負極タブ群211Bおよび第2負極タブ群212Bが、第2負極集電体720上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。溶接接続部213は、たとえば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等により形成し得る。
【0033】
図7は、封口板120への正極集電部材600および負極集電部材700の取付構造を示す図である。図8は、図7におけるVIII-VIII断面を示す。図9は、図7におけるIX-IX断面を示す。
【0034】
まず、図7図8を参照して、封口板120への正極集電部材600の取付について説明する。
【0035】
封口板120の外面側に樹脂製の外部側絶縁部材410が配置される。封口板120の内面側に第1正極集電体610、および樹脂製の絶縁部材630(正極集電体ホルダ)が配置される。次に、正極端子400が、外部側絶縁部材410の貫通孔、封口板120の正極端子取り付け孔、第1正極集電体610の貫通孔、および絶縁部材630の貫通孔に挿入される。そして、正極端子400の先端に位置するカシメ部400Aが第1正極集電体610上にカシメ接続される。これにより、正極端子400、外部側絶縁部材410、封口板120、第1正極集電体610、および絶縁部材630が固定される。なお、正極端子400および第1正極集電体610のカシメ接続された部分は、レーザ溶接等により溶接接続されることが好ましい。なお、第1正極集電体610はザグリ穴610Aを有し、カシメ部400Aはザグリ穴610A内に設けられる。
【0036】
さらに、第2正極集電体620の一部が第1正極集電体610と重なるように、第2正極集電体620が絶縁部材630上に配置される。第2正極集電体620に設けられた第1開口620Aにおいて、第2正極集電体620は第1正極集電体610にレーザ溶接等により溶接接続される。
【0037】
図8に示すように、絶縁部材630は、電極体200側に突出する筒状部630Aを有する。筒状部630Aは、第2正極集電体620の第2開口620Bを貫通し、電解液注液孔121と連通する孔部630Bを規定する。
【0038】
封口板120に正極集電部材600を取り付ける際は、まず、第1正極集電体610が封口板120上の絶縁部材630に接続される。続いて、電極体200に接続された第2正極集電体620が第1正極集電体610に取り付けられる。このとき、第2正極集電体620の一部が第1正極集電体610と重なるように第2正極集電体620が絶縁部材630上に配置される。続いて、第2正極集電体620に設けられた第1開口620Aの周囲が、レーザ溶接等により第1正極集電体610に溶接接続される。
【0039】
次に、図7および図9を参照して、封口板120への負極集電部材700の取付について説明する。
【0040】
封口板120の外面側に樹脂製の外部側絶縁部材510が配置される。封口板120の内面側に第1負極集電体710、および樹脂製の絶縁部材730(負極集電体ホルダ)が配置される。次に、負極端子500が、外部側絶縁部材510の貫通孔、封口板120の負極端子取り付け孔、第1負極集電体710の貫通孔、および絶縁部材730の貫通孔に挿入される。そして、負極端子500の先端に位置するカシメ部500Aが第1負極集電体710上にカシメ接続される。これにより、負極端子500、外部側絶縁部材510、封口板120、第1負極集電体710、および絶縁部材730が固定される。なお、負極端子500および第1負極集電体710のカシメ接続された部分は、レーザ溶接等により溶接接続されることが好ましい。
【0041】
さらに、第2負極集電体720の一部が第1負極集電体710と重なるように、第2負極集電体720が絶縁部材730上に配置される。第2負極集電体720に設けられた第1開口720Aにおいて、第2負極集電体720は第1負極集電体710にレーザ溶接等により溶接接続される。
【0042】
封口板120に負極集電部材700を取り付ける際は、まず、第1負極集電体710が封口板120上の絶縁部材730に接続される。続いて、電極体200に接続された第2負極集電体720が第1負極集電体710に取り付けられる。このとき、第2負極集電体720の一部が第1負極集電体710と重なるように第2負極集電体720が絶縁部材730上に配置される。続いて、第2負極集電体720に設けられた第1開口720Aの周囲が、レーザ溶接等により第1負極集電体710に溶接接続される。
【0043】
図10は、封口板120と電極体200とが接続された状態を示す図である。上述したように、正極集電部材600および負極集電部材700を介して第1電極体要素201および第2電極体要素202が封口板120に取り付けられる。これにより、図10に示すように、第1電極体要素201および第2電極体要素202が封口板120に接続され、電極体200と正極端子400および負極端子500とが電気的に接続される。
【0044】
図10に示す状態から、第1電極体要素201と第2電極体要素202とが1つに纏められる。このとき、第1正極タブ群211Aと第2正極タブ群212Aとが互いに異なる方向に湾曲させられる。第1負極タブ群211Bと第2負極タブ群212Bとが互いに異なる方向に湾曲させられる。
【0045】
第1電極体要素201と第2電極体要素202とは、テープ等により1つに纏められ得る。代替的に、第1電極体要素201と第2電極体要素202とを、箱状ないし袋状に成形した絶縁シート内に配置することで1つに纏めることができる。さらに、第1電極体要素201と第2電極体要素202とを接着により固定することができる。
【0046】
1つに纏められた第1電極体要素201と第2電極体要素202とが絶縁シート300で包まれ、角形外装体110に挿入される。その後、封口板120が角形外装体110に溶接接続され、角形外装体110の開口が封口板120により封口され、密閉された電池ケース100が形成される。
【0047】
その後、封口板120に設けられた電解液注液孔121から非水電解液が電池ケース100に注液される。非水電解液としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)とを、体積比(25℃)30:30:40の割合で混合した非水溶媒に、LiPF6を1.2モル/Lの濃度で溶解させたものを用いることができる。
【0048】
非水電解液が注液された後、電解液注液孔121は封止部材122により封止される。以上の工程の実施により、角形二次電池1は完成する。
【0049】
図11は、本実施の形態に係るカシメ部400Aを形成するための第1工程を示す図であり、図12は、図11における金型先端部の部分拡大図である。
【0050】
カシメ部400Aは、X軸方向に沿う長軸と、Y軸方向に沿う短軸とを有する。図11および図12(後述の図13図22も同様)において、中心線の左側は長軸方向(X軸方向)の断面を示し、中心線の右側は短軸方向(Y軸方向)の断面を示す。
【0051】
本実施の形態に係るカシメ部400Aは、X軸方向に延びる一対の直線部と、一対の曲線部とが周方向に沿って交互に並ぶ平面形状を有する。ただし、カシメ部400Aの平面形状は楕円形状であってもよいし、長軸および短軸を有しない真円形状であってもよい。
【0052】
図11図12に示すように、成形金型900は、中心軸CLに対して斜めに傾斜する第1テーパ部910と、第1テーパ部910の大径側に設けられ、中心軸CLに対して第1テーパ部910よりも大きな角度で斜めに傾斜する第2テーパ部920とを備える。
【0053】
正極端子400(端子部材)は、内周面400αを有する筒状先端部400βを含む。成形金型900は、正極端子400の筒状先端部400βに挿入することによって、第1正極集電体610(第1の部材)と正極端子400(第2の部材)の筒状先端部400βとをカシメ接合するために用いられる。
【0054】
成形金型900は、第1テーパ部910を正極端子400の筒状先端部400βに対向させるように配置される。そして、成形金型900の先端側に位置する第1テーパ部910が、中心軸CLに沿って、正極端子400の筒状先端部400βに挿入される。
【0055】
ここで、第1テーパ部910の最小径(2×R2)は、筒状先端部400βの穴径(2×R1)よりも100μm以上小さい。これにより、成形金型900に若干の芯ずれが生じても、第1テーパ部910の先端を正極端子400の筒状先端部400βに支障なく挿入することができる。
【0056】
図13は、図11図12に続く第2工程を示す図であり、図14は、図13における金型先端部の部分拡大図である。
【0057】
図13図14に示すように、正極端子400の筒状先端部400βに挿入された成形金型900は、筒状先端部400βの奥側に向かってさらに挿入される。
【0058】
このとき、成形金型900の先端側に位置する第1テーパ部910は、当接面B1(第1部分)において筒状先端部400βに当接し、矢印A1方向に沿って筒状先端部400βを径方向外側に押圧する。
【0059】
成形金型900の根元側に位置する第2テーパ部920は、当接面B2(第2部分)において筒状先端部400βに当接し、矢印A2方向に沿って筒状先端部400βを径方向外側に押圧する。これにより、正極端子400の筒状先端部400βは拡径する。
【0060】
このように、筒状先端部400βの異なる部分(当接面B1,B2)を互いに異なる方向(矢印A1,A2)に沿って押圧することにより、筒状先端部400βの全体を変形させることができるので、カシメ工程において筒状先端部400βの応力が局所的に過大となって破断が生じることを抑制することができる。
【0061】
また、第1テーパ部910が筒状先端部400βの根元部を押圧し、筒状先端部400βが根元部から拡径するため、カシメ部400Aが広がりやすくなり、ザグリ穴610Aの側壁にまで達しやすい。
【0062】
さらに、成形金型900が正極端子400に対して芯ズレした場合にも、中心軸CLに対する傾斜確度が比較的小さい第1テーパ部910によって形状のばらつきを抑制しながら筒状先端部400βを変形させることができる。
【0063】
このように、本実施の形態に係る成形金型900を用いることにより、筒状先端部400βの破断を抑制するとともに、形成されるカシメ部400Aの形状を安定させることも可能である。
【0064】
ここで、第1テーパ部910の最大径(2×R3:図12参照)は、筒状先端部400βの穴径(2×R1:図12参照)よりも大きい。より好ましくは、第1テーパ部910の最大径(2×R3)は、筒状先端部400βの穴径(2×R1)よりも50μm以上程度(さらに好ましくは100μm以上程度)大きい。
【0065】
この関係(R3>R1)は、中心軸CLを通る少なくとも1つの断面において成立すればよいが、正極端子400の先端が第1正極集電体610に溶接される部分を含む断面(たとえば長軸方向の断面)において上記関係(R3>R1)が成立することがより好ましく、中心軸CLを含む全ての断面(中心軸CLまわりの全周方向の断面)において上記関係(R3>R1)が成立することがさらに好ましい。
【0066】
上記関係(R3>R1)を満たすことにより、成形金型900の第1テーパ部910および第2テーパ部920から、互いに異なる方向(矢印A1,A2)の押圧力を正極端子400の筒状先端部400βに確実に作用させることができる。この結果、カシメ部400Aの形状を容易に安定させることができる。
【0067】
図15は、図13図14に続く第3工程を示す図であり、図16は、図15におけるカシメ接合部の部分拡大図である。
【0068】
図15図16に示すように、カシメ部400Aは、第2の金型900Aによりさらに押圧される。この結果、筒状先端部400βの先端は、ザグリ穴610Aの側壁に達する。正極端子400の先端は第1正極集電体610に溶接される。正極端子400の先端がザグリ穴610Aの側壁に確実に達していることにより、溶接が行いやすく、また、溶接の強度も安定する。
【0069】
図17は、比較例に係るカシメ部400Aを形成するための第1工程を示す図であり、図18は、図17における金型先端部の部分拡大図である。図19は、図17図18に続く第2工程を示す図であり、図20は、図19における金型先端部の部分拡大図である。また、図21は、図19図20に続く第3工程を示す図であり、図22は、図21におけるカシメ接合部の部分拡大図である。
【0070】
図17図22に示す比較例においても、図11図16の例と同様の工程を経てカシメ部400Aが形成される。しかし、図17図22の比較例においては、成形金型900の形状が本実施の形態に係る構造とは異なる。
【0071】
すなわち、図17図22の比較例において、成形金型900の先端側に位置する湾曲面B3は正極端子400の筒状先端部400βに当接せず、筒状先端部400βの先端に押圧力が集中する。この結果、筒状先端部400βが破断する可能性がある。また、筒状先端部400βの根元部が直接押圧されず、当該部分が変形しにくいため、カシメ部400Aが広がりにくい。この結果、図21図22に示すように、カシメ部400Aがザグリ穴610Aの側壁にまで達しない場合がある。
【0072】
図23は、本実施の形態および比較例に係るカシメ接合を対比して示す模式図である。図24図25は、各々、図23から本実施の形態および比較例に係るカシメ接合を抜き出して示す図である。図23図25を参照して、本実施の形態においては、成形金型900を筒状先端部400βに挿入するとき、第1テーパ部910が筒状先端部400βに当接するが、比較例においては、湾曲面B3が筒状先端部400βに当接しないことが容易に理解される。
【0073】
図26は、カシメ部400Aを形成する途中の応力分布について説明する図である。図26を参照して、筒状先端部400βの最先端に位置する領域C2において、筒状先端部400βの応力は最も大きい。領域C2の根元側に位置する領域C1における応力は、領域C2における応力と比較すると小さい。筒状先端部400βの底部に位置する領域C3における応力は、領域C1における応力よりもさらに小さい。
【0074】
このように、筒状先端部400βの先端に向かうほど、カシメ工程において生じる応力は大きくなる。本実施の形態に係る成形金型900によれば、第1テーパ部910により筒状先端部400βの根元部を押圧することができるので、筒状先端部400βの最先端部(領域C2)に生じる応力を緩和し、筒状先端部400βの破断を抑制することが可能である。
【0075】
図27は、カシメ径と相当全歪最大値との関係を示す図である。ここで「カシメ径」とは、成形金型900により拡径されるの筒状先端部400βの先端の開き径を意味する。したがって、「カシメ径」は、カシメ工程の進行に伴って増大する。
【0076】
図27に示すように、本実施の形態に係る成形金型900を用いた場合(実施例)には、比較例に対して、全体として、相当全歪最大値の上昇が抑制されている。この結果、筒状先端部400βの破断を抑制するとともに、形成されるカシメ部400Aの形状を安定させることができる。
【0077】
次に、図28図29を用いて、本実施の形態に係るカシメ接合の途中およびカシメ接合後のカシメ部400Aの形状について説明するとともに、図30図31を用いて、比較例に係るカシメ接合の途中およびカシメ接合後のカシメ部400Aの形状についても説明する。
【0078】
本実施の形態に係る角形二次電池1においては、図28に示すように、第1テーパ部910と第2テーパ部920とで正極端子400の筒状先端部400βを押圧するため、途中工程において、内周面400αの傾きを非連続的に変化させる2つの折り曲げ部D1,D2が生じる。そして、図29に示すように、第2の金型900Aによりさらに押圧された後も、根元側の折り曲げ部D1が残る。
【0079】
これに対し、比較例においては、図30に示すように、途中工程において1つの折り曲げ部D3が形成されるが、図31に示すように、第2の金型900Aによりさらに押圧された後は、内周面400αの傾きを非連続的に変化させる折り曲げは残らない。
【0080】
ただし、本実施の形態に係る角形二次電池1においても、折り曲げ部D1が残らない場合がある。
【0081】
折り曲げ部D1は、内周面400αの全周にわたって環状に形成されている場合もあるが、内周面400αの周方向の一部に形成される場合もある。
【0082】
上述の例では、電池ケース100内部のカシメ部400Aについて説明したが、図32に示すように、正極端子400の端子部材401と外部端子402とのカシメ部400Bにおいても同様の構成を採用可能である。すなわち、本技術に係るカシメ接合構造は、電池ケース100の外部に配置される端子部材と導電部材との接合構造にも適用可能である。
【0083】
また、第2テーパ部920の大径側に設けられ、中心軸CLに対して第2テーパ部よりもさらに大きな角度で傾斜する第3テーパ部(図示せず)が設けられてもよい。
【0084】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 角形二次電池、100 電池ケース、110 角形外装体、120 封口板、121 電解液注液孔、122 封止部材、123 ガス排出弁、200 電極体、200A 正極板、200B 負極板、201 第1電極体要素、202 第2電極体要素、210A 正極タブ、210B 負極タブ、211A 第1正極タブ群、211B 第1負極タブ群、212A 第2正極タブ群、212B 第2負極タブ群、213 溶接接続部、220A 本体部、220B 本体部、230A 正極保護層、300 絶縁シート、400 正極端子、400A,400B カシメ部、400α 内周面、400β 筒状先端部、401 端子部材、402 外部端子、410 外部側絶縁部材、500 負極端子、500A カシメ部、510 外部側絶縁部材、600 正極集電部材、610 第1正極集電体、610A ザグリ穴、620 第2正極集電体、620A 第1開口、620B 第2開口、630 絶縁部材、630A 筒状部、630B 孔部、700 負極集電部材、710 第1負極集電体、720 第2負極集電体、720A 第1開口、730 絶縁部材、800 カバー部材、900 成形金型、900A 第2の金型、910 第1テーパ部、920 第2テーパ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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