特許 7416683 短縮されたフランジを有するスラスト・ベアリング・ケージ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-01-09

(45)【発行日】2024-01-17

(54)【発明の名称】短縮されたフランジを有するスラスト・ベアリング・ケージ

(51)【国際特許分類】

   F16C 33/54 20060101AFI20240110BHJP

   F16C 19/30 20060101ALI20240110BHJP

【ＦＩ】

F16C33/54 A

F16C19/30

【請求項の数】 11

(21)【出願番号】P 2020502574

(86)(22)【出願日】2017-07-21

(65)【公表番号】

(43)【公表日】2020-09-10

(86)【国際出願番号】 US2017043319

(87)【国際公開番号】W WO2019017969

(87)【国際公開日】2019-01-24

【審査請求日】2020-03-12

【前置審査】

(73)【特許権者】

【識別番号】510099028

【氏名又は名称】コーヨー ベアリングス ノース アメリカ エルエルシー

(74)【代理人】

【識別番号】110000855

【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】カーペンター、トレント エル．

【審査官】西藤 直人

(56)【参考文献】

【文献】実開昭４９－１１４３４９（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２００７－０６４４２８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭５０－０４９５４４（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ１６Ｃ １９／３０

Ｆ１６Ｃ ３３／４６－３３／５６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

ローラー・スラスト・ベアリングのためのケージであって、
環状部分、前記環状部分の内周縁から軸線方向に延伸する第１のフランジ、及び前記環状部分の外周縁から軸線方向に延伸する第２のフランジを含む第１のケージ半体と、
環状部分、前記環状部分の内周縁及び外周縁のうちの一方から軸線方向に延伸する第１のフランジ、並びに前記内周縁及び前記外周縁のうちの他方から軸線方向と半径方向との両方に延伸する第２のフランジを含む第２のケージ半体であって、前記第２のフランジは、第１のフランジ部分及び第２のフランジ部分を含む、第２のケージ半体と
を備え、前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの前記第２のフランジ部分は、ディスク形状であり、前記ケージの長手方向中心軸線を横切る平面に配置され、前記第２のケージ半体の前記第１のフランジに向かって折り返されるように半径方向に延伸し、
前記第２のケージ半体の前記第２のフランジは、前記長手方向中心軸線を横切る平面内に材料を折り畳むことによって形成され、前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの軸線方向高さ（Ｈ）は、前記第２のケージ半体の前記第２のフランジを形成するために使用される前記材料の厚さ（Ｗ）以下であり、
前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの前記第２のフランジ部分の内周縁が、前記第１のケージ半体の前記第２のフランジの外面に当接し、或いは前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの前記第２のフランジ部分の外周縁が、前記第１のケージ半体の前記第１のフランジの外面に当接する、ケージ。

【請求項2】

前記第１のケージ半体の前記第１のフランジ及び前記第２のフランジは円筒形状である、請求項１に記載のケージ。

【請求項3】

前記第２のケージ半体の前記第１のフランジは円筒形状である、請求項２に記載のケージ。

【請求項4】

前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの前記第１のフランジ部分は、前記第２のケージ半体の前記環状部分から前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの前記第２のフランジ部分に軸線方向に延伸する、請求項１に記載のケージ。

【請求項5】

前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの前記第２のフランジ部分は、前記第１のフランジ部分から前記ケージの前記長手方向中心軸線に向かって半径方向内方に延伸する、請求項４に記載のケージ。

【請求項6】

前記第１のケージ半体の前記環状部分と前記第２のケージ半体の前記環状部分との両方が、複数のローラー要素を回転可能に受容するように構成された複数のローラー・ポケットを画定する、請求項１に記載のケージ。

【請求項7】

前記第２のケージ半体の前記第２のフランジは、前記第２のケージ半体の前記環状部分の前記内周縁に配置されている、請求項１に記載のケージ。

【請求項8】

前記第２のケージ半体の前記第２のフランジは、前記第２のケージ半体の前記環状部分の前記外周縁に配置されている、請求項１に記載のケージ。

【請求項9】

ローラー・スラスト・ベアリングのためのケージであって、
環状部分、前記環状部分の内周縁から軸線方向に延伸する第１のフランジ、及び前記環状部分の外周縁から軸線方向に延伸する第２のフランジを含む第１のケージ半体と、
環状部分、前記環状部分の内周縁及び外周縁のうちの一方から軸線方向に延伸する第１のフランジ、並びに前記内周縁及び前記外周縁のうちの他方から軸線方向と半径方向との両方に延伸する第２のフランジを含む第２のケージ半体と
を備え、前記第２のケージ半体の前記第２のフランジは、前記第１のケージ半体の前記第１のフランジ及び前記第２のフランジのうちの一方の外面に向かって折り返されるように半径方向内方又は半径方向外方の何れかに延伸し、
前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの内周縁が、前記第１のケージ半体の前記第２のフランジの外面に当接し、或いは前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの外周縁が、前記第１のケージ半体の前記第１のフランジの外面に当接し、
前記第２のケージ半体の前記第２のフランジは、長手方向中心軸線を横切る平面内に材料を折り畳むことによって形成され、前記第２のケージ半体の前記第２のフランジの軸線方向高さ（Ｈ）は、前記第２のケージ半体の前記第２のフランジを形成するために使用される前記材料の厚さ（Ｗ）以下である、ケージ。

【請求項10】

前記第１のケージ半体の前記環状部分と前記第２のケージ半体の前記環状部分との両方が、複数のローラー要素を回転可能に受容するように構成された複数のローラー・ポケットを画定する、請求項９に記載のケージ。

【請求項11】

前記第２のケージ半体の前記第２のフランジは、第１のフランジ部分及び第２のフランジ部分を含み、前記第１のフランジ部分は、前記第２のケージ半体の前記環状部分から前記第２のフランジ部分に軸線方向に延伸する、請求項９に記載のケージ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、一般に、ローラー・スラスト・ベアリングに関する。より詳細には、本発明は、ローラー・スラスト・ベアリングにおける使用のための２部品ケージに関する。

【背景技術】

【0002】

多くの場合、図５及び図６に示されるように、同一面に取り付けられた軌道を有するローラー・スラスト・ベアリングは、軌道に存在する場合がある、角度付きフランジ４２のような任意のレース保持機構と共に利用されるローラー・ケージ１０において短縮されたリップ又はフランジ機構を要求する。図６に最良に見られるように、ケージ１０は、追加の形成ステップによって形成される軌道４０及び５０において角度付きフランジ４２及び５２によって一体化される第１のケージ半体１２及び第２のケージ半体２２を含む。示されるように、第１のケージ半体１２は、環状部分１４と、それから軸線方向に延伸する第１の環状フランジ１６及び第２の環状フランジ１８とを含み、それらはそれぞれ、環状部分１４の内周縁及び外周縁から延伸する。同様に、第２のケージ半体２２は、環状部分２４と、それから軸線方向に延伸する第１の環状フランジ２６及び第２の環状フランジ２８とを含み、それらはそれぞれ、環状部分２４の内周縁及び外周縁から延伸する。環状部分１４及び２４の各々は、複数のローラー要素（示されない）を回転可能に受容するために連携して動作するように構成されている、複数のローラー・ポケット２０及び３０をそれぞれ画定する。

【0003】

ここで図６を参照すると、ケージ１０及び対応する複数のローラー１１は、第１の軌道４０と第２の軌道５０との間に配置される。示されるように、第１の軌道４０は、同一面取付け設計であり、一方、第２の軌道５０は、標準の非同一面取付け設計である。このように、第１の軌道４０の角度付きフランジ４２は、ケージ１０の軸線方向幅（Ｗ）を超えて延伸しない。第１の軌道４０は同一面取付け設計であるという点で、第２の環状フランジ２８の高さ（ｈ）は、角度付きフランジ４２のために要求されるクリアランスを提供するように最小化される。対照的に、第２のフランジ５０が標準設計の軌道であるために、その第１の環状フランジ２６の高さは、角度付き５２が角度１０の軸線方向幅（Ｗ）を超えて自由に延伸するので、最小化される必要はない。

【0004】

ローラー保持器ケージの特定の使用、すなわち同一面取付けが、フランジを形成するために使用される材料の厚さ又は幅（Ｗ）の２倍に近く、又はそれ未満のフランジ高さ要件を指示する場合には、潜在的な問題が生じる場合がある。例えば、図５に示されるように、第２のケージ半体２２の第２のフランジ２８の高さ（ｈ）は、第２の環状フランジが形成される材料の幅（Ｗ）に実質的に等しい。理想的には、第２の環状フランジ２８の高さ（ｈ）は、フランジを形成するために使用される材料の幅（Ｗ）の少なくとも２倍以上である。所望のフランジの高さ要件が前述の形成ルールを満たさない場合には、対応するケージ半体の周囲で、フランジのための均一の高さを達成することは困難である場合がある。同様に、このような短縮されたフランジは、低い剛性を示す対応するケージ半体に寄与する場合があり、それによって、後続の処理中に容易に屈曲され、損傷され、又は破壊される場合がある。その上、このような短縮されたフランジは、対応するケージの内周及び／又は外周における最小限の案内面を提供する。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

本発明は、先行技術の構造及び方法の考慮事項を認識し、対処する。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の一実施形態は、ローラー・スラスト・ベアリングのためのケージであって、環状部分、環状部分の内周縁から軸線方向に延伸する第１のフランジ、及び環状部分の外周縁から軸線方向に延伸する第２のフランジを含む第１のケージ半体と、環状部分、環状部分の内周縁及び外周縁のうちの一方から軸線方向に延伸する第１のフランジ、並びに内周縁及び外周縁のうちの他方から軸線方向と半径方向との両方に延伸する第２のフランジを含む第２のケージ半体であって、第２のフランジは、第１のフランジ部分及び第２のフランジ部分を含む、第２のケージ半体とを含み、第２のケージ半体の第２のフランジの第２のフランジ部分は、ディスク形状であり、ケージの長手方向中心軸線を横切る平面に配置されている、ケージを提供する。

【0007】

本発明の別の実施形態は、ローラー・スラスト・ベアリングのためのケージであって、環状部分、環状部分の内周縁から軸線方向に延伸する第１のフランジ、及び環状部分の外周縁から軸線方向に延伸する第２のフランジを含む第１のケージ半体と、環状部分、環状部分の内周縁及び外周縁のうちの一方から軸線方向に延伸する第１のフランジ、並びに内周縁及び外周縁のうちの他方から軸線方向と半径方向との両方に延伸する第２のフランジを含む第２のケージ半体であって、第２のフランジは、第１のフランジ部分及び第２のフランジ部分を含む、第２のケージ半体とを含み、第２のケージ半体の第２のフランジは、第１のケージ半体の第１のフランジ及び第２のフランジのうちの一方の外面に向かって半径方向内方又は半径方向外方の何れかに延伸する、ケージを提供する。

【0008】

本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、説明と共に、本発明の１つ以上の実施形態を示し、本発明の原理を説明するために役立つ。

【0009】

当業者を対象とする本発明の完全に実施可能な開示が、その最良の形態を含み、添付の図面を参照する本明細書に記載される。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本発明の実施形態による、２部品ケージを含むローラー・スラスト・ベアリングの斜視図である。

【図2】図１に示されるローラー・スラスト・ベアリングのための２部品ケージの線２－２に沿った断面図である。

【図3】本発明の代替の実施形態による、ローラー・スラスト・ベアリングにおける使用のための２部品ケージの断面図である。

【図4】図１及び図２に示されるような２部品ケージの部分断面図である。

【図5】ローラー・スラスト・ベアリングのための従来技術の２部品ケージの断面図である。

【図6】図５に示される２部品ケージを含む従来技術のローラー・スラスト・ベアリングの部分断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

本明細書及び図面における参照符号の繰り返しの使用は、本開示による本発明の同じ又は類似の機構又は要素を表すことが意図される。

【0012】

ここで、１つ以上の例が添付の図面に示される、本発明の現在の好ましい実施形態が詳細に参照される。各例は、本発明の限定ではなく説明として提供される。実際、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明に変更及び変形が本発明になされることができることは当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として示され、又は説明される機構が別の実施形態に使用されて、更に別の実施形態を生み出してもよい。この結果、本発明が、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にあるような変更及び変形を包含することが意図される。

【0013】

ここで図を参照すると、本発明によるローラー・スラスト・ベアリング１００は、図１、図２、及び図４において最良に見られるように、第１のケージ半体１２０及び第２のケージ半体１４０によって形成されるローラー保持器ケージ１１０と、それらの間に回転可能に受容される複数のローラー要素１６０とを含む。第１のケージ半体１２０は、第１の複数のローラー・ポケット１２８を画定する環状部分１２２と、その内周縁１２４から軸線方向に（長手方向中心軸線１０２に平行に）延伸する第１の環状フランジ１３０と、その外周縁１２６から軸線方向に延伸する第２の環状フランジ１３２とを含む。第１のケージ半体１２０の環状部分１２２は、実質的にディスク形状であり、内周縁１２４及び外周縁１２６は、ローラー保持器ケージ１１０の長手方向中心軸線１０２の周りに実質的に同心である。示されるように、第１の環状フランジ１３０及び第２の環状フランジ１３２は、好ましくは同じ高さであり、同様に長手方向中心線軸１０２の周りに同心である。注目すべきは、第１の環状フランジ１３０及び第２の環状フランジ１３２の高さが、それらが形成される材料の幅（Ｗ）の２倍を超えるようなものであるという事実である。

【0014】

示されるように、第２のケージ半体１４０は、第１の複数のローラー・ポケット１４８を画定する環状部分１４２と、その内周縁１４４から軸線方向に（長手方向中心軸線１０２に平行に）延伸する第１の環状フランジ１５０と、その外周縁１４６から軸線方向に延伸する第２の環状フランジ１５２とを含む。第２のケージ半体１４０の環状部分１４２は、実質的にディスク形状であり、内周縁１４４及び外周縁１４６は、ローラー保持器ケージ１１０の長手方向中心軸線１０２の周りに実質的に同心である。示されるように、第１のケージ半体１２０とは異なり、第１の環状フランジ１５０及び第２の環状フランジ１５２は、長手方向中心軸線１０２の周りに同心であるが、高さにおいて異なる。第１の環状フランジ１５０の高さは、それが形成される材料の幅（Ｗ）の２倍を超える。

【0015】

図４において最良に見られるように、第２のケージ半体１４０の第２の環状フランジ１５２は、長手方向中心軸線１０２に平行に軸線方向に延伸する第１のフランジ部分１５４と、第１のフランジ部分１５４から長手方向中心軸線１０２に向かって半径方向内方に垂れ下がる第２のフランジ部分１５６とを含む。第２のフランジ部分１５６は、図２に示されるように、ローラー保持器ケージ１１０が組み立てられる場合に、好ましくは第１のケージ半体１２０の第２の環状フランジ１３２の外面に当接する内周縁１５８を含む。代替の実施形態においては、第２のフランジ部分１５６が、実質的にディスク形状であり、ローラー保持器ケージ１１０の長手方向中心軸線１０２に垂直であって、且つ第２のケージ半体１４０の環状部分１４２がある平面に平行である平面にあることに留意されたい。第１及び第２のケージ半体１２０及び１４０のそれぞれの第１の環状フランジ１３０及び１５０の間の摩擦係合、並びに第２のケージ半体１４０の第２の環状フランジ１５２の内周縁１５８と第１のケージ半体１２０の第２の環状フランジ１３２の外面との間の摩擦係合は、ケージ半体を一体構造に維持する。（上記のように、第２のフランジ部分１５６の内周縁１５８は係合しない）。或いは、第１のケージ半体１２０及び第２のケージ半体１４０は、特定の用途のために共に溶接又は圧着されてもよい。

【0016】

図２及び図４において最良に見られるように、第２のケージ半体１４０の第２の環状フランジ１５２が長手方向中心軸線１０２を横断する平面に材料を折り曲げることによって形成されるので、第２の環状フランジ１５２の全高（Ｈ）は、フランジを形成するために使用される材料の幅（Ｗ）にほぼ等しくすることができる。この構造は、最小高さ要件が保持機構（ただしこれに限定されない）のような他の機構のクリアランスの目的のために維持されることを可能にするが、フランジは、材料を内方に折り曲げる前に、最初に材料幅（Ｗ）の２倍を超える高さにすることができる。具体的には、第２の環状フランジ１５２を形成する場合に、材料の幅（Ｗ）の少なくとも２倍に等しい高さを有する軸線方向に（長手方向中心軸線１０２に平行に）延伸する環状フランジが最初に形成される。次に、環状フランジが、第２のフランジ部分１５６を形成するために内方に折り曲げられる。このように、本発明の第２の環状フランジ１５２は、既知のローラー保持器ケージの軸線方向に延伸するフランジが形成される材料厚の２倍に等しくなく、又はそれを超えない高さで形成される場合に存在することが既知である欠点の犠牲になることなく形成されることができる。第１のフランジ部分１５４及び第２のフランジ部分１５６は、第２の環状フランジ１５２が材料の幅（Ｗ）の２倍より薄く、更に第２のケージ半体１４０の剛性を改善するように更に鍛造加工されることができることに留意されたい。フランジが半径方向に延伸する程度が増加するにつれて、第１のフランジ部分１５４及び第２のフランジ部分１５６の鍛造加工が、案内面領域を増加させるために使用されることができることに留意されたい。同様に、鍛造加工がまた、案内の目的のために第２の環状フランジ１５２において円筒状最外面１５３を生成するために、第１のフランジ部分１５４及び第２のフランジ部分１５６において使用されてもよい。

【0017】

本発明の１つ以上の好ましい実施形態が上記で説明されたが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく様々な変更及び変形が本発明になされることができることが当業者によって理解されるべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲及び精神内にあるような変更及び変形を包含することが意図される。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】