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特許7416689眼科手術部位の能動的洗浄のための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】眼科手術部位の能動的洗浄のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61F9/007 130G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020525874
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 NL2018050701
(87)【国際公開番号】W WO2019093882
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】2019887
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】518007625
【氏名又は名称】クレア・アイピー・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】CREA IP B.V.
【住所又は居所原語表記】Seggelant-Noord2, 3237 MG Vierpolders,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ダム-ユイスマン、アドリアーンチェ・コリーネ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-509632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0052666(US,A1)
【文献】特開2002-153499(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163202(WO,A1)
【文献】特表2008-500879(JP,A)
【文献】特開2011-000202(JP,A)
【文献】特開平09-239205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術部位への洗浄流体の送達を制御するための能動的洗浄システムであって、前記能動的洗浄システムは、
流体源(210)からチャンバ(10、60)内に洗浄流体(F)を導入し、前記洗浄流体(F)を手術部位に送達するための少なくとも1つの流体ポート(72;74)を有する前記チャンバ(10、60)と、
前記流体源(210)から前記チャンバ(10、60)に洗浄流体(F)を送達するように構成された洗浄ポンプ(212)と、
前記チャンバ(10、60)と流体連通し、前記チャンバ(10、60)を加圧するように構成された可変圧力源(20)と、
前記チャンバ(10、60)内の圧力を監視するように構成された、前記チャンバ(10、60)と流体連通する圧力センサ(30)と、
前記チャンバ(10、60)内の所望の洗浄圧力を維持するために、前記可変圧力源(20)によって加えられた前記圧力を調整するように構成されたコントローラ(40)と
を備え、
前記チャンバ(60)は、内壁(66)によって分離された第1の区画(62)及び第2の区画(64)を備え、前記第1の区画(62)は、前記流体ポート(72;74)を備え、前記第2の区画(64)は、流体レベルインジケータ(50)を備え、前記内壁(66)は、前記第1の区画(62)及び前記第2の区画(64)内の流体レベルが等しくなることを可能にするために、その中に少なくとも1つの開口部(68)を備える、能動的洗浄システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの流体ポートは、流体源から前記チャンバ内に洗浄流体(F)を導入し、前記チャンバから手術部位に洗浄流体(F)を送達するように構成された単一の流体ポートを備える、請求項1に記載の能動的洗浄システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流体ポートは、洗浄流体(F)を前記チャンバ(10、60)内に導入するように構成された第1の流体ポート(72)と、洗浄流体(F)を前記チャンバ(10、60)から前記手術部位に送達するように構成された第2の流体ポート(74)とを備える、請求項1に記載の能動的洗浄システム。
【請求項4】
前記可変圧力源(20)は、前記チャンバ(10、60)に正圧及び負圧を選択的に加えるように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の能動的洗浄システム。
【請求項5】
前記流体レベルインジケータ(50)は、動作中に前記チャンバ(10、60)内の流体レベルを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の能動的洗浄システム。
【請求項6】
前記流体レベルインジケータ(50)は、動作中に前記チャンバ(10、60)内の流体/空気界面(W)の前記流体レベルを測定するように構成されたフロート式の流体レベルセンサである、請求項5に記載の能動的洗浄システム。
【請求項7】
前記能動的洗浄システムは、前記洗浄ポンプ(212)が前記流体源(210)から前記チャンバ(10、60)に洗浄流体(F)を送達する速さを制御する速度コントローラ(220)を更に備え、前記コントローラ(40)は、前記流体レベルインジケータ(50)からのフィードバックに基づいて、前記チャンバ(10、60)内の前記流体レベルを維持するために、前記速度コントローラ(220)の設定点を調節するように構成される、請求項5又は6に記載の能動的洗浄システム。
【請求項8】
前記コントローラ(40)は、前記フロート式の流体レベルセンサによって感知される前記流体レベル、及び/又は前記速度コントローラ(220)によって決定される注入の速さに基づいて、前記手術部位への洗浄流を計算するように構成される、請求項6を引用する請求項7に記載の能動的洗浄システム。
【請求項9】
前記コントローラ(40)は、動作中に前記チャンバ(10、60)内の前記洗浄流体(F)のレベルを監視し、前記流体レベルが所定の範囲外に移動した場合に警告信号を発するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の能動的洗浄システム。
【請求項10】
前記第1の流体ポート(72)は、前記チャンバ(10、60)の上部に提供される、請求項3に記載の能動的洗浄システム。
【請求項11】
前記内壁(66)は、前記第1の区画(62)及び前記第2の区画(64)内の空気圧が等しくなることを可能にするために、前記チャンバ(60)の上部に第2の開口部(70)を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の能動的洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科手術部位の洗浄のための装置及びそのような装置を制御するための方法に関する。具体的には、本発明は、洗浄圧力が正確に制御されることができる能動的洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科手術の間、流体は通常、眼に注入され、そこから吸引される。眼組織への損傷又は手術部位の崩壊を防止するために、吸引及び洗浄システムは、眼内の安定した圧力を維持することを目的とする。
【0003】
米国特許出願公開第2008/125697号は、洗浄流体が手術部位に送達される洗浄ラインを備える眼科用手術システムを記載している。システムは、吸引された流体及び組織が手術部位から排出され得る吸引ラインも備える。注入ボトル/バッグからの洗浄流体の流れは、吸引装置によって手術部位で生成される真空及び/又は洗浄流体源の加圧によって、例えば洗浄流体を含むバッグ又はボトルを圧搾することによって制御される。
【0004】
米国特許出願公開第2007/083150号は、患者の眼の中の圧力が高くなりすぎることを防止することを目的として、流体ライン及びデュアル注入チャンバの中の測定された流量を使用する、眼内圧制御のための方法を開示する。測定された流量から、予測される眼内圧が計算され、所望の圧力のオペレータ入力に応じて、注入が調整される。注入チャンバのうちの1つが(ほぼ0)空である場合に、連続した流体の流れを可能にするために、デュアル注入チャンバが提供される。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、洗浄圧力を制御することによって手術部位の能動的な洗浄を提供する、改善された外科用洗浄システムを提供することを目的とする。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、手術部位への洗浄流体の送達を制御するための能動的洗浄システムが提供され、洗浄システムは、流体源からチャンバ内に洗浄流体を導入し、洗浄流体を手術部位に送達するための少なくとも1つの流体ポートを有するチャンバと、流体源からチャンバに洗浄流体を送達するように構成された洗浄ポンプと、チャンバと流体連通し、チャンバを加圧するように構成された可変圧力源と、チャンバ内の圧力を監視するように構成された、チャンバと流体連通している圧力センサと、チャンバ内の所望の洗浄圧力を維持するために、可変圧力源によって加えられた圧力を調整するように構成されたコントローラと、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、外科用洗浄システム内の洗浄圧力を能動的に制御するための方法が提供され、方法は、洗浄ポンプを使用して、流体源から流体ポートを通してチャンバ内に洗浄流体を移動させることと、チャンバから流体ポート(または専用出口ポート)を通して流体を移動させるように所定の圧力を加えることによって、圧力ポートを介してチャンバと流体連通する可変圧力源を使用して、チャンバを加圧することと、チャンバと流体連通する圧力センサを用いてチャンバ内の圧力を測定することと、チャンバ内の所定の洗浄圧力を維持するために、圧力センサからのフィードバックに応答して可変圧力源によって加えられる圧力を調整することと、を備える。
【0008】
可変圧力源を用いてチャンバ内の洗浄圧力を能動的に制御することによって、眼内の圧力の正確な制御が可能であり、これは、チューブ及び針の直径などのさらなる(空気圧)システムパラメータを考慮に入れることによって更に改善され得る。これは、眼内の過剰な圧力に起因する繊細な眼組織への損傷のリスクを低減し、手術部位における流体の不足に起因する眼の崩壊の可能性を最小限にする。
【0009】
さらなる実施形態が、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0010】
本発明は、添付の図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、眼科手術処置中に眼を洗浄するための洗浄システムを示す。
図2図2は、図1のシステムで使用されるコントローラの概略図を示す。
図3図3は、本発明の別の実施形態による洗浄システムを示す。
図4図4は、本発明による洗浄システムのチャンバ内の流体のレベルを示すためのフロート式の流体レベルインジケータを示す。
図5A図5Aは、本発明による洗浄システムで使用するための可変圧力源を示す。
図5B図5Bは、本発明による洗浄システムで使用するための可変圧力源を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する。当業者であれば、本明細書に記載の装置及び方法が非限定的な例示的実施形態であり、保護の範囲が特許請求の範囲によって定義されることを理解するであろう。例えば、本発明は、眼科用吸引及び/又は洗浄処置に関して記載されるが、当業者は、本発明が、他の用途、例えば、他の吸引及び/又は洗浄システム、例えば細針吸引処置において使用され得ることを理解するであろう。当業者はまた、1つの例示的な実施形態に関連して図示又は説明された特徴が、他の例示的な実施形態において説明された特徴と組み合わせられ得ることを理解するであろう。そのような修正及び変形は、本開示の範囲内に含まれる。
【0013】
ここで、図1を参照して、本発明による能動的洗浄システムを説明する。図1に示すように、洗浄システム200は、チャンバ10を有する、外科用カセットと呼ばれることもあるカセット8を備える。チャンバ10は、チャンバ10の下部10bに流体Fを、チャンバ10の上部10aに空気Aを収容するように構成され、上部10aは、チャンバ10の上部の残りの空間である。チャンバ10は、流体源からチャンバ10内に、例えば注入ボトル210からチャンバ10内に洗浄流体Fを導入し、チャンバ10から洗浄ライン214を介して洗浄先端部(図示せず)に洗浄流体Fを送達するための少なくとも1つの流体ポート72;74を備える。外科用洗浄先端部は、洗浄流体を手術部位、例えば眼1に送達するために使用することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、流体入口ポート72及び流体出口ポート74は、チャンバ10に直接接続された単一の流体ポートとして組み合わせられる。次いで、流体ポート72;74は、第1の導管(図1の実施形態における注入導管218など)への入力接続と、第2の導管(図2の実施形態における洗浄導管214)への出力接続とに分かれる。これは、チャンバ10が圧力制御によって流体ポート72;74へのまたはそこからの流体の流れを制御するため、可能である。他の実施形態では、チャンバ10は、専用流体入口ポート72及び専用流体出口ポート74を備える。
【0015】
言い換えれば、チャンバは、2つの方法で構成され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの流体ポートは、流体源からチャンバ内に流体を導入し、チャンバから手術部位に流体を送達するように構成される、単一の流体ポートを備える。代替の実施形態では、少なくとも1つの流体ポートは、流体をチャンバ10内に導入するように構成された第1の流体ポート72と、流体Fをチャンバ10から手術部位に送達するように構成された第2の流体ポート74とを備える。いずれにしても、圧力制御システムは、流体ポートを介してチャンバ10に出入りする流体の流れを制御する。
【0016】
洗浄流体ポンプ212(例えば蠕動ポンプ)は、流体Fを(注入)流体源210からチャンバ10に移動させるように構成される。洗浄ポンプ212は、注入ライン218に沿って、流体源210とチャンバ10との間に提供され得る。可変圧力源20は、チャンバ10と流体連通して提供され、チャンバ10を加圧するように構成される。圧力センサ30は、チャンバ10と流体連通して提供され、チャンバ10内の圧力を測定するように構成される。圧力センサ30は、空気圧又は液体圧力のいずれかを測定するように配置されてもよく、ダイヤフラム、ピエゾ抵抗、又はMEMSベースの圧力センサなどの任意の好適な圧力センサとして選択されてもよい。
【0017】
コントローラ40は、圧力センサ30及び可変圧力源20に動作可能に接続され、チャンバ10内の圧力を所望のレベルに維持するために可変圧力源20によって提供される圧力を調整するように構成される。
【0018】
外科用洗浄システム200内の洗浄圧力の能動的制御は、以下の方法で達成される。洗浄処置の前又は最中に、医療従事者は、適切な洗浄圧力を決定し、適切なユーザインターフェース(図示せず)を使用してシステム200に圧力設定点を提供する。インターフェースは、GUIなどのデジタルインターフェースであってもよく、フットペダル又はダイヤルであってもよい。ユーザインターフェースは本発明にとって重要ではない。
【0019】
コントローラ40の指示の下で、洗浄ポンプ212は、流体Fを(注入)流体源210から流体ポート72を通してチャンバ10に移動させ、チャンバ10を流体Fで部分的に満たす。チャンバ10の下部は、洗浄流体Fで満たされ、チャンバ10の上部の残りの空間は、空気Aで満たされる。可変圧力源20は、圧力ポート71を介してチャンバ10を加圧するために正圧を加えることによって、流体(F)をチャンバ10から流体ポート72に(又は専用出口ポート74に)、そして最終的に手術部位に移動させる。システム200を通る流体の流れは、矢印2で示されている。
【0020】
圧力センサ30は、チャンバ10内の圧力を測定し、チャンバ10内の実際の圧力に関する情報をコントローラ40に提供する。チャンバ10内の実際の圧力は、医療関係者の制御外の可変のもの(例えば、手術処置で使用される洗浄及び吸引ラインにおける一時的な閉塞、及びそのような閉塞の除去に続く結果として生じる圧力の急激な低下)に起因して、一定の圧力が圧力源20によって送達されるときでさえ変化することが理解される。
【0021】
これらの変動を補償するために、チャンバ10内の圧力は、チャンバ10内の所定の洗浄圧力を維持するために、圧力センサ30からのフィードバックに応答して可変圧力源20によって加えられる圧力を調整することによって調整される。チャンバ10内の圧力の設定点は、一定の洗浄圧力であってもよく、又は変化する圧力プロファイルであってもよい。可変圧力源20は、所定の設定点と比較してチャンバ10の過剰又は不足加圧を修正するために、圧力ポート71を通して正圧又は負圧を選択的に加える。例えば、チャンバ10内の圧力(圧力センサ30によって測定される)が高すぎる場合、圧力源20は、チャンバ10内の圧力を範囲内に戻すために、減圧(又は負圧)を加えるように構成することができる。
【0022】
チャンバ10を加圧することによって、手術部位の状態とは無関係に、医師によって決定された圧力で洗浄流体Fが眼1に送達されることができる。これは、システム200が、吸引又は洗浄ラインの一時的な閉塞及びその後のこれらの閉塞の除去による洗浄圧力及び/又は流れの変動を補償することを可能にする。これは、手術部位(例えば、眼1)内でのより高い安定性を可能にする。そのようなシステムにおける様々な注入および洗浄ラインおよび介在するチャンバに渡る圧力は制御することが困難であるので、図1に示される装置はまた、注入流体源が直接加圧される(例えば、注入ボトルが圧搾される)システムを超える利点を提供する。
【0023】
可変圧力源20は、少なくとも、洗浄ライン214を介してチャンバ10から眼1に流体を送達するために、可変正圧をチャンバ10に加えることができる。しかしながら、可変圧力源20は、チャンバ10に正圧及び負圧を選択的に加えるように構成されることができる。このような構成は、有利には汎用性があり、チャンバ10内の過度に高い及び/又は低い圧力を高速で修正するために使用されることができる。本発明に関連して使用するのに適した可変圧力源20が、図5A及び図5Bを参照して説明される。しかしながら、当業者は、他の可変圧力源が使用されてもよいことを理解するであろう。
【0024】
図1に示す洗浄システム200は、動作中にチャンバ10内の流体レベルを測定するように配置された流体レベルインジケータ50を備えることもできる。流体レベルインジケータ50は、チャンバ10が提供されるカセット8内に配置することができる。流体レベルインジケータ50は、チャンバ10内の流体/空気界面Wから離れた流体レベルを測定するように構成されることができる。例示的な実施形態では、流体レベルインジケータ50は、図4を参照してより詳細に説明するように、フロート式の流体レベルインジケータであってもよい。しかしながら、当業者であれば、他の流体レベルを示す装置が可能であることを理解するであろう。
【0025】
ここで、図1の洗浄システム200での使用に適したコントローラ40の概略図を示す図2を参照して、コントローラ40をより詳細に説明する。コントローラ40は、チャンバ10内の所望の圧力を維持するための圧力コントローラ42と、例えば、流体レベルを所定の範囲内に維持することによって、チャンバ10内の流体レベルを制御すための流体レベルコントローラ43とを備える。
【0026】
圧力コントローラ42は、圧力センサ30から圧力情報を受け取り、図1を参照して上述したように、チャンバ10内の圧力を所望のレベルに維持するように、可変圧力源20によって送達される圧力を調整する。圧力コントローラ42は、変化する圧力プロファイルを提供するように、又はチャンバ10内の圧力を所定の範囲内に維持するようにプログラムされ得る。一例として、チャンバ10内の圧力が所定の閾値を下回った場合(例えば、手術部位から離れる吸引流のスパイクの結果として)、圧力コントローラ42は、チャンバ10内の圧力を増加させるように可変圧力源20の設定点を調整し、それによって、圧力の突然の低下を補償するように洗浄流体の流れを増加させる。逆に、圧力コントローラ42が、圧力センサ30を介して、チャンバ10内の圧力が高すぎる(例えば、吸引ラインの閉塞の結果として)と決定した場合、圧力コントローラ42は、チャンバ10の過圧を修正するために、減圧(又は負圧)を供給するように可変圧力源20に命令する。
【0027】
コントローラ40は、図2に概略的に示すように、チャンバ10内の流体レベルを制御するための流体レベルコントローラ43も備える。流体レベルコントローラ43は、流体レベルインジケータ50からのフィードバックに基づいて、洗浄ポンプ212が流体を流体源210からチャンバ10に移動させる速さを調整することによって、チャンバ10内の流体レベルWを所定の範囲内に維持するように構成される。流体レベルコントローラ43は、速度コントローラ220に設定点を提供し、それは、洗浄ポンプ212が洗浄流体Fを注入ボトル210からチャンバ10に送達する速さを制御する。一例として、流体レベルインジケータ50からのフィードバックに基づいて、コントローラ40が、チャンバ10内の流体レベルが低すぎると決定した場合、コントローラ40は、洗浄ポンプ212が洗浄流体を注入ボトル210からチャンバ10に送達する速さ/スピードを増加させるために、速度コントローラ220の設定点を調整する。逆に、チャンバ10内の流体レベルが高すぎるとコントローラ40が決定した場合、コントローラは、洗浄ポンプ212が注入ボトル210からチャンバ10に流体を送達する速さ/スピードを低下させるために、速度コントローラ220の設定点を調整する。
【0028】
有利には、図2に示すコントローラ40はまた、洗浄ライン214内に流量センサを必要とせずに、眼1への流量の計算を可能にすることができる。コントローラは、流体レベルインジケータ50によって測定された流体レベル、及び/又は速度コントローラ220によって決定された注入の速さに基づいて、洗浄先端部を通る洗浄流を計算するように構成される。流体ポート72;74、洗浄ライン214、及び洗浄先端部(図示せず)の寸法が既知であり、チャンバ10内の圧力が圧力センサ30によって感知されるので、洗浄先端部における洗浄圧力及び洗浄流は、手術部位において直接測定することなく計算され得る。これは、眼科用手術システムが、正確な流れ感知が困難であり得る、少ない流量を有することが多いため(それらが狭いゲージ洗浄ラインを備えるため)、有利である。流体レベル情報がなくても、速度コントローラ220によって決定される注入の速さ(すなわち、(蠕動)ポンプ212の実際の速度)のみを使用することが可能であることに留意されたい。
【0029】
図2の上記の説明は、圧力動作モードに関するものであり、ユーザは、所望の圧力の設定点を圧力コントローラ42に入力することができる。これは、本発明の実施形態が眼への洗浄を制御するために、及び眼からの吸引を制御するために使用されるときの両方に適用され得る。吸引目的に特に適したさらなる実施形態では、本発明の実施形態は、流量制御モードで動作する。流量制御モードでは、所望の吸引流量の設定点が、排水ポンプ212のスピードを制御するために、速度コントローラ220に入力される。流体レベルコントローラ43は、後に内部の規定された設定点に流体レベルが制御されることを保証するように可変圧力源20を制御する圧力コントローラ42に圧力設定点を提供するために、流体レベルインジケータ50からの入力を使用する。
【0030】
図2のコントローラ40はまた、空のボトル状態(例えば、注入ボトルが空である/流体が少ないとき)をユーザに警告するために用いられ得る。これは、危険であり得る、空気が洗浄ライン214に入るリスクを最小限にする。
【0031】
空ボトル警告システムは、所定量の洗浄流体が速度コントローラ220によって送達されたときに、警告信号又はアラームを発することができる。抽出される容量は、注入ボトル210内の洗浄流体の初期量と、速度コントローラ220によってチャンバ10に送達された流体の量とに基づいて計算され得る。送達された流体の容量が注入ボトル210の総初期容量に近づくと、警告を発することができる。
【0032】
しかしながら、上述の能動的洗浄システム200は、注入ボトル210内に収容された初期流体容量の正確な把握を必要としない空ボトル警告システムも可能にする。代わりに、コントローラ40は、動作中にチャンバ10内の流体のレベルを監視し、流体レベルが所定の範囲外に移動した場合、例えば所定の閾値を下回った場合に警告信号を発するように構成することができる。
【0033】
上述のように、流体レベルコントローラ43は、チャンバ10内の流体レベルを監視し、チャンバ10内の流体レベルを所望の範囲内に維持するように速度コントローラ220の設定点を調整する。空のボトル状態では、空気がチャンバ10内に輸送される。これは、ポンプ212がチャンバ10に流体を送達する速さを増加させても、速度コントローラ220はチャンバ10内の流体レベルの低下を引き起こす。これは、次に、チャンバ10内の流体レベルを範囲外に降下させ、それは、警告信号又はアラームが発せられることをトリガし、ユーザが注入ボトル210を交換することを促すことができる。このシステムは、ボトル210内の洗浄流体の容量又はチャンバ10内への流体の流れの速さの事前把握を必要としないので有利である。更に、チャンバ10内の流体のレベルを監視することによって、チャンバ10が空になる前に警告信号が生成され得、それによって、空気が洗浄ライン214を通って眼に送達されるリスクを最小限にする。
【0034】
ここで図3を参照すると、少なくとも1つの実施形態では、図1を参照して説明した洗浄システム200は、空気除去のために構成されたチャンバ60を含むように修正されることができる(例えば、注入ライン218からの気泡が洗浄ライン214に入り得るリスクを最小限にする)。
【0035】
図3に示すように、洗浄システム300は、図1を参照して説明した洗浄システム200とほぼ同様であり、注入ボトル210と、洗浄ライン214を介して外科用カセット8に備えられたチャンバ60へと注入ボトル210から流体を送達するための洗浄ポンプ212とを備える。図3に概略的に示す速度コントローラ220は、注入ボトル210からチャンバ60への流体Fの流れの速さを制御する。可変圧力源20及び圧力センサ30は、圧力ポート71を介してチャンバ60と流体連通している。圧力コントローラ42は、チャンバ60内の圧力を監視し、チャンバ60内に所望の洗浄圧力を維持するために、上述したように可変圧力源20を制御する。外科用カセット8は、チャンバ60で流体レベルを監視するための流体レベルインジケータ50を備える。
【0036】
図1を参照して上述したチャンバ10は、チャンバ10の下部(すなわち、通常動作中の流体表面の下)に(注入ライン218に接続された)流体(入口)ポート72を備えるが、図3に示すチャンバ60は、流体入口が動作中のチャンバ60内の流体表面Wの上に提供されるような、チャンバ60の上部に提供された流体入口ポート72を備える流体ポートを備えている。流体Fの表面Wの上方に流体入口ポート72を提供することによって、(注入)流体源210及び注入ライン218からの気泡は、流体表面Wの下方に導入されない。これは、流体レベル測定に悪影響を及ぼし得る、洗浄ライン214に導入される気泡及びフロート式の流体レベルインジケータ50の表面の下方に形成される気泡のリスクを最小限にする。使用中に流体レベルが実際に変化し得るので、流体入口ポート72は、チャンバ60の上半分、例えば、チャンバ60の上3分の1に位置する。一方、流体入口72はまた、例えば流体内に気泡が形成されるのを防止するために、チャンバ60内への流体の非乱流入力を可能にするように位置又は配置される。
【0037】
いずれにしても、流体入口ポート72は、流体レベルが所望の範囲内にあるとき、流体レベルが通常動作範囲内にあるときに流体入口ポート72が流体表面(すなわち、空気/液体界面)の上方にあるように構成される。この構成は、洗浄ライン214に気泡が導入されたり、又は流体レベル測定に悪影響を及ぼし得る流体/空気界面Wにおける乱れが生じたりすることにつながる、注入ライン218に導入された任意の気泡が、チャンバ60内の流体Fの表面Wよりも下に導入されないことを保証する。
【0038】
落下する液滴が流体レベルインジケータ50に衝突するのを防止するために、チャンバ60は、内壁66によって分離された第1の区画62及び第2の区画64を備える。第1の区画62は、流体ポート72;74を備え、第2の区画64は、流体レベルインジケータ50を備える。内壁66は、第1の区画62及び第2の区画64内の流体レベルが等しくなることを可能にするために、その中に少なくとも1つの開口部68を備える。流体ポート72;74及び流体レベルインジケータ50に対して別個の区画を設けることによって、第1の区画62内の流体表面Wに衝突する流体液滴によって形成される表面リップルは、内壁66により第2の区画64内に伝播し得ない。これは、流体レベル測定が行われる第2の区画64内の流体表面において乱れが最小となることを保証する。これは、より正確な流体レベル測定を可能にし得る。
【0039】
更に、内壁66はまた、図3の実施形態に示されるように、流体入口72から生じる流体が、流体レベルインジケータ50の一部であるフロートの外面に飛散することを防止する。これは、流体レベルインジケータ50の適切な動作に影響を及ぼし得る、フロートが第2の区画64の内側に張り付く可能性を防止する。
【0040】
いずれにしても、第1の開口部68は、流体レベルが通常動作範囲内にあるときに流体表面の下にあるように位置するべきである。第1の開口部68の特定のロケーションは、システムの動作パラメータに基づいて当業者によって決定され得る。例えば、第1の開口部68は、流体ポート72の下に位置し、これは、任意の形成される可能性のある気泡が流体レベルインジケータ50のフロートに到達するよう形成されることを防止する。更に別の実施形態では、第1の開口部68は、チャンバ60の底部側にあってもよく、(上述した他の位置と同様に)第2の区画64内の流体レベルの減衰要素としても作用する。
【0041】
いくつかの実施形態では、内壁66は、第1の区画62及び第2の区画64内の空気圧が等しくなることを可能にするために、チャンバ60の上部に第2の開口部70を備える。第2の開口部70は、チャンバ60の頂部まで延在する内壁66を通るボアとして形成されることができる。あるいは、内壁は、チャンバ60の上壁の手前で止まってもよく、それによってチャンバ60の上端に開口部70を提供する。
【0042】
いずれにしても、第2の開口部70は、流体レベルが範囲内にあるときに流体表面の上方にあるように位置するべきである。第1の開口部68の特定のロケーションは、システムの動作パラメータに基づいて当業者によって決定され得る。第2の開口部70の特定のロケーションも、システムの動作パラメータに基づいて当業者によって決定され得る。
【0043】
図3に示すように、いくつかの実施形態では、専用の流体出口ポート74が第2の区画64に提供され得る。これは、チャンバ60に入る流体液滴によって生成される乱れ/気泡が洗浄ライン214に入るリスクを更に低減する。しかしながら、当業者であれば、流体出口ポート74が第1の区画62に設けられ(又は、場合によっては、上述のように、単一のポートにおいて流体入口と組み合わせられる)、専用の区画64を流体レベルセンサ50に残したままでもよいことを認識するであろう。洗浄のみに適用するチャンバ60内の流体は、流体源からのみ生じるので、使用中、チャンバ60内の流体には実質的にデブリが存在せず、したがって、流体出口ポート74は、チャンバ60の底部に、場合によっては底にさえ位置し得る。
【0044】
更に、流体レベルインジケータ50のフロートから離れた流体出口ポート74及び/又は第1の開口部68の位置を選択することによって、フロートの近傍における流体の任意の起こり得る横向きの流れが防止され、これは、流体レベルインジケータ50の精度及び適切な動作を改善する。
【0045】
図3に示す流体レベルインジケータ50(図4に関してより詳細に説明する)は、フロート式の流体レベルセンサである。しかしながら、当業者は、分割されたチャンバの利点が、代替の流体レベル感知手段を有するシステムにおいても実現され得ることを理解するであろう。例えば、流体表面の乱れを最小限にすることは、直接流体レベル測定システム、例えば、光学又は電気センサが空気/流体界面の位置を検出するシステムにおいても有利であり得る。
【0046】
任意で、落下する液滴によって引き起こされるチャンバ60内の圧力外乱を更に最小限にするために、流体入口ポート72は、流体入口ポート72からの液滴が流体F内に滑り込むことができる傾斜面76上に開いていてもよい。これはまた、流体入口ポート72から落下する液滴によって流体F内に泡が形成される可能性を更に最小限にする。
【0047】
図3を参照して説明した例示的な洗浄システムは有利であるが、当業者であれば、図3を参照して上述した分割レベルチャンバ60は、流体入口ポート72がチャンバ60の底部に向かって、すなわち流体表面の下に提供される洗浄システムにおいても用いられ得ることを理解するであろう。内壁66は、第1の区画62内の流体入口ポート72において導入された気泡の第2の区画64内への通過を制限し、それによって、流体レベルインジケータ50の周囲での泡形成(フロートをチャンバ60の側面に固着させ得る)のリスクを最小限にし得る。2つのチャンバ装置はまた、流体レベル測定の精度に悪影響を及ぼし得る、流体表面における泡形成を制限し得る。
【0048】
洗浄システム200、300のいくつかの例示的な実施形態では、流体レベルインジケータ50は、フロート式の流体レベルインジケータである。ここで図4を参照すると、フロート式の流体レベルインジケータ50は、チャンバ10内の流体レベルWとともに上昇及び下降するように構成された少なくとも1つのフロート160を備える。図4に示されるように、カセット8は、そこから延在するチャネル140を有するチャンバ10を備える。
【0049】
フロート160は、チャンバ10内に配設されたフロート本体162と、チャネル140内に少なくとも部分的に配設されたフロートステム164とを備える。フロート本体162及びフロートステム164は、流体レベルWが上昇及び下降するにつれて、それぞれチャンバ10及びチャネル140内で自由に移動するように配置される。カセット8は、チャネル140内のフロートステム164の位置が、チャネル140内のフロートステム164の位置を検出する感知システムによって測定され得るように構成される。したがって、チャンバ内の流体レベルWは、チャネル140内のフロートステム164の位置を測定することによって決定され得る。チャネル140内のフロートステム164の位置は、当業者に知られている手段、例えば光学的、音響的、電子的になどで感知されることができる。
【0050】
チャネル140内のフロートステム164の位置を測定することによって、チャンバ10内の流体Fのレベルは、間接的に、すなわち、チャンバ10内の空気/液体界面Wから離れて生成されることができる。これは、そのような測定が、液体表面に影響を及ぼし得るチャンバ内の液体特性の変化、例えば、注入ボトル210からの流体進入に起因する流体表面の乱れに対して一般に影響されないため、有利である。これはまた、図3を参照して上述したように、コントローラ40によるチャンバ10内の流体レベルの精密な制御を可能にする、高速で信頼性の高い流体レベル感知を可能にする。
【0051】
フロート式の流体レベルセンサ50は、単一の区画を有するチャンバ10を参照して上述されている。しかしながら、当業者であれば、図4を参照して説明したフロート式の流体レベルインジケータが、チャンバ60などの多区画チャンバにも利用され得ることを理解するであろう。
【0052】
次に、図5A及び図5Bを参照して、本発明による能動的洗浄システムでの使用に適した可変圧力源20について説明する。
【0053】
図5A及び図5Bは各々、負圧源22(例えば、真空源)及び正圧源24(例えば、圧縮機)を有するポンプユニット21を備える可変圧力源20の実施形態を示す。一実施形態では、負圧源又は正圧源22、24は、例えば、膜ポンプであってもよいが、当業者は、他の正圧源及び/又は負圧源が用いられ得ることを理解するであろう。負圧及び正圧という用語は、本明細書では周囲圧力に関して使用される。代替的な実施形態として、圧力源22、24の一方は、実際には周囲圧力であってもよい。
【0054】
ポンプユニット21は、調整可能な弁装置25を更に備え、弁装置25は、負圧源22に接続された真空ポート25aと、正圧源(24)に接続された圧力ポート25bとを備える。調整可能な弁装置25は、真空ポート25a及び/又は圧力ポート25bと流体連通するメインポート25cも備える。メインポート25cは、空気Aを収容し、かつポンプユニット21を用いてその空気Aを交換するためにチャンバ10の上部10aに接続するように構成されている。チャンバ10は、洗浄又は吸引される外科用流体Fを収容するための下部10bを備える。
【0055】
調整可能な弁装置25は、真空源22及び/又は圧力源24が動作している強度に対応して、メインポート25cを通るチャンバ10への/からの空気の流れを制御するように適合される。図5A及び図5Bに示される弁装置25は、チャンバ10を負圧源22並びに正圧源24に結合するので、ポンプユニット21は、チャンバ10内の圧力を変化させるために真空源のみに依存するのではなく、チャンバ10内の迅速な動的圧力制御を顕著な精度で提供することができる。したがって、本発明の弁装置25は、任意の所望のスピード及び精度で、気圧より低い又は高いメインポート25cで必要とされる実質的にいずれの圧力も提供するように構成される。
【0056】
一実施形態では、調整可能な弁装置25は、メインポート25cを横切る空気圧及び空気流の滑らかで連続的な変化を可能にする比例的に調整可能な弁装置である。比例的に調整可能な弁装置は、負圧源22と正圧源24との間で切り換え及び/又はこれらを「混合」することができ、その結果、メインポート25cを横切る任意の所望の圧力及び空気流を高いスピード及び精度で達成することができる。別の実施形態として、パルス幅変調(PWM)制御オン/オフ弁装置が適用され得る。
【0057】
図5Aに示すような例示的な実施形態では、調整可能な弁装置25は、真空ポート25aとメインポート25cとの間に接続された第1の調整可能な弁R1を備え、圧力ポート25bとメインポート25cとの間に接続された第2の調整可能な弁R2を備える。これは、負圧源22からの実質的に任意の量の負圧及び正圧源24からの任意の量の正圧が、メインポート25cで正確に制御されることを可能にし、その結果、メインポート25cにわたる任意の所望の正味圧力及び空気流が、(真空源22及び/又は圧力源24の負圧及び正圧範囲内で)高い精度及びスピードで達成され得る。
【0058】
有利な実施形態では、第1の調整可能な弁R1は第1の比例弁であり、第2の調整可能な弁R2は第2の比例弁である。比例弁R1、R2の各々は、メインポート25cを横切る正味の圧力及び空気流のスピード及び精度を更に高めるために、高速で連続的な制御を可能にする。
【0059】
第1及び第2の調整可能/比例弁R1、R2を例えば電流源で制御することは、電流制御弁が電圧制御弁と比較すると、温度変化に対して鈍感ではない可能性があるので、有利であり得る。あるいは、第1及び第2の調整可能/比例弁R1、R2は、位置制御弁である。
【0060】
さらなる実施形態では、第1及び第2の調整可能/比例弁R1、R2は、メインポート25cを通る正味0の流れを維持しながら(チャンバ10内の圧力を一定レベルに維持しながら)、負圧源22と正真空源24との間の流路内のバイアス流を可能にするために、第1の電流でバイアスされる。一般に、そのような弁の電流/流れ特性は、それ未満では弁が閉じたままである閾値電流を含む。少なくともこの閾値電流に等しい電流で第1及び第2の調整可能/比例弁R1、R2をバイアスすることは、制御中に弁R1、R2のうちの1つを更に開くときに、より速い応答時間を有することが可能になる。
【0061】
調整可能な弁装置25の制御及び適切な設定を可能にするために、圧力制御ユニットは、負圧源22と正圧源24との間のバイアス流路内に配置された流量センサ31を更に備え得る。バイアス流路は、本明細書に記載の例示的な実施形態のいずれかにおいて、負圧源22と正圧源24との間の直接接続部を含む。例えば、流量センサ31は、正圧源24と圧力ポート25bとの間、又は真空源22と真空ポート25aとの間に配置される。流量センサ31は、任意の適切な流量センサ、例えばインライン流量センサであり得る。
【0062】
流量センサ31は、コントローラ40(又は専用コントローラ)に接続されてもよく、質量流量センサ又は容量流量センサ(例えば、(固定された)制限部にわたる差圧を測定することによって容量流量を測定することを可能にする差圧ベースの流量センサ)として実装されてもよい。次いで、圧力センサ30からの測定データは、(メインポート25cを通る流れに影響を及ぼすことなく)バイアス流路内の流れを能動的に制御する二次制御ループで使用されることができる。
【0063】
図5Bを参照すると、代替の実施形態では、調整可能な弁装置25は3方向弁装置Tであり、これは、3つの接続ポート25a、25b、25cと、これらの接続ポートを通る空気流を制御/分割するための弁インサートとを有する、単一の一体型弁マニホールドとして見ることができる。例えば、3方向弁装置25は、真空ポート25a、圧力ポート25b、及びメインポート25cを備え、弁インサートは、真空ポート25a又は圧力ポート25bがメインポート25cと連通する程度の正確な制御を可能にする。
【0064】
第1及び第2の調整可能/比例弁R1、R2と同様に、3方向弁装置Tは電流制御されてもよく、それによって温度依存性弁感度を低減又は回避する。当業者は、電圧制御が、調整可能な弁装置25、特に、第1及び第2の調整可能/比例弁R1、R2、並びに上述した3方向弁装置Tを制御するために依然として効率的に使用され得ることを当然理解することに留意されたい。
【0065】
動作中にチャンバ10内の圧力を監視するために、ポンプユニット21がメインポート25cと連通する圧力センサ30を備える実施形態が提供される。例えば、一実施形態では、圧力センサ30は、メインポート25cとチャンバ10の上部10aとの間に配置された導管に接続される。一実施形態では、圧力センサ30によって測定された圧力に応答してチャンバ10内の所望の圧力を維持するように調整可能な弁装置25を調整するようにコントローラが提供および構成され得ることに留意されたい。
【0066】
手術処置中、圧力センサ30として図3を参照して上述したように、図5Aに示す圧力センサPは、チャンバ10内の圧力を所望のレベルに維持するように弁装置25を調整するために、コントローラ40にフィードバックを提供することができる。例えば、チャンバ10内の感知された圧力が所望の圧力よりも低い場合、正圧源24からメインポート25cに、したがってチャンバ10に加圧空気を送達するように弁装置25を調整することによって、圧力が高速で増加され得る。チャンバ10内の感知された圧力が所望の圧力よりも高い場合、負圧がメインポート25cに、したがってチャンバ10に加えられるように弁装置25を調整することによって、圧力を高速で低下させることができる。これは、チャンバ10内の圧力の迅速な調整を可能にし、例えば、非線形性及び弁ヒステリシス、並びにシステム内又は手術部位における閉塞及び漏出を補償する。
【0067】
一実施形態では、コントローラ40は、所望の圧力設定点が達成された場合に、定常状態の空気消費量が、圧縮機及び真空源の流量容量を満たすために最小限にされるように、第1及び第2の調整可能/比例弁R1、R2を制御する。
【0068】
本発明によれば、調整可能な弁装置25は、チャンバ10内の負及び正の空気圧の迅速かつ正確な制御を可能にする。この速い圧力変化を可能にするために、短期間の質量流量が必要とされる。内部システム圧力源22、24の流量容量と一致しない場合があるこれらの流量を提供することができるように、真空バッファ28a及び圧力バッファ28bが使用される。更に、空気圧の急速な変化は、ポンプユニット21を通る比較的高い質量流量及び圧力リップルの短いバーストを誘発し得る。そのような高い質量流量及び圧力リップルの減衰を提供するために、ポンプユニット21が、負圧源22(すなわち真空源)と真空ポート25aとの間に配置された真空バッファ28aを更に備える実施形態が提供される。別の実施形態では、正圧源24と圧力ポート25bとの間に圧力バッファ28bが提供および配置され得る。当然ながら、有利な実施形態では、ポンプユニット21は、真空バッファ28a及び圧力バッファ28bの両方を備え、その結果、チャンバ10へのおよびそこからの高い質量流量の短いバーストが減衰される。真空バッファ28a及び圧力バッファ28bは各々、チャンバ10から/への高質量流量の一部を瞬間的に吸収するための静電容量を提供し、そうすることで、ポンプユニット21を通るチャンバ10内の圧力リップルの減衰も提供する。真空バッファ28a及び/又は圧力バッファ28bは、負圧源22/正圧源24とメインポート25cとの間の空気配管内の空気量を使用することによって代替的に又は追加的に形成されてもよいことに留意されたい。
【0069】
上述したように、調整可能な弁装置25は、眼科処置中の洗浄及び/又は吸引を最適化するために、チャンバ10内の空気圧の急速な変化を可能にする。ポンプユニット21の動作中に高圧パルスが発生したとき(例えば、制御ユニット21又は空気圧構成要素のうちの1つ又は複数が故障した場合)の安全のために、調整可能な弁装置25は、1つ又は複数の安全弁を更に備えることができる。
【0070】
可変圧力源20は、単一の区画を有するチャンバ10を参照して上述されている。しかしながら、当業者であれば、図5A及び図5Bを参照して説明した可変圧力源20が、チャンバ60のような多区画チャンバにも用いられ得ることを理解するであろう。
【0071】
いくつかの実施形態では、チャンバ10、60は、少ない空気量(すなわち、10cc未満)を有する。しかしながら、当業者は、チャンバ10、60が、制御が必要とされる任意の空気量を有し得ることを理解する。空気量は、通常動作中、すなわちチャンバ10、60が目標範囲内の流体で満たされているときのチャンバ内の空気の容量であることに留意されたい。流体の目標容積は、10~15ccの間であってもよい。これは、高速プライミング(すなわち、カセット8及び全ての接続ラインを流体で満たすこと)を依然として可能にする。動作中のチャンバ10内の流体の量の変動は、例えば約3ccであり、これはまた、流体レベルインジケータ50を使用して適切かつ正確なレベル検知を依然として可能にする。例示的な実施形態では、チャンバ10の全内部容積は約25~30ccである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 眼科手術部位への洗浄流体の送達を制御するための能動的洗浄システムであって、前記洗浄システムは、
流体源(210)からチャンバ(10、60)内に洗浄流体(F)を導入し、前記洗浄流体(F)を手術部位に送達するための少なくとも1つの流体ポート(72;74)を有する前記チャンバ(10、60)と、
前記流体源(210)から前記チャンバ(10、60)に洗浄流体(F)を送達するように構成された洗浄ポンプ(212)と、
前記チャンバ(10、60)と流体連通し、前記チャンバ(10、60)を加圧するように構成された可変圧力源(20)と、
前記チャンバ(10、60)内の圧力を監視するように構成された、前記チャンバ(10、60)と流体連通する圧力センサ(30)と、
前記チャンバ(10、60)内の所望の洗浄圧力を維持するために、前記可変圧力源(20)によって加えられた前記圧力を調整するように構成されたコントローラ(40)と を備える、能動的洗浄システム。
[2] 前記少なくとも1つの流体ポートは、流体源から前記チャンバ内に流体を導入し、前記チャンバから手術部位に流体を送達するように構成された単一の流体ポートを備える、[1]に記載の能動的洗浄システム。
[3] 前記少なくとも1つの流体ポートは、流体を前記チャンバ(10、60)内に導入するように構成された第1の流体ポート(72)と、流体Fを前記チャンバ(10、60)から前記手術部位に送達するように構成された第2の流体ポート(74)とを備える、[1]に記載の能動的洗浄システム。
[4] 前記圧力源(20)は、前記チャンバ(10、60)に正圧及び負圧を選択的に加えるように構成される、[1]~[3]のいずれか一項に記載の能動的洗浄システム。
[5] 動作中に前記チャンバ(10、60)内の流体レベルを示すように配置された流体レベルインジケータ(50)を更に備える、[1]~[4]のいずれか一項に記載の能動的洗浄システム。
[6] 前記流体レベルインジケータ(50)は、動作中に前記チャンバ(10、60)内の前記流体/空気界面(W)から離れた前記流体レベルを測定するように配置される、例えば、フロート式の流体レベルセンサである、[5]に記載の能動的洗浄システム。
[7] 前記洗浄システムは、前記洗浄ポンプ(212)が前記流体源(210)から前記チャンバ(10、60)に流体(F)を送達する速さを制御する速度コントローラ(220)を更に備え、前記コントローラ(40)は、前記流体レベルインジケータ(50)からのフィードバックに基づいて、前記チャンバ(10、60)内の前記流体レベル(W)を維持するために、前記速度コントローラ(220)の設定点を調節するように構成される、[5]又は[6]に記載の能動的洗浄システム。
[8] 前記コントローラ(40)は、前記流体レベルセンサ(50)によって感知される前記流体レベル、及び/又は前記速度コントローラ(220)によって決定される注入の速さに基づいて、前記手術部位への洗浄流を計算するように構成される、[7]に記載の能動的洗浄システム。
[9] 前記コントローラ(40)は、動作中に前記チャンバ(10、60)内の前記流体のレベルを監視し、前記流体レベル(W)が所定の範囲外に移動した場合に警告信号を発するように構成される、[1]~[8]のいずれか一項に記載の能動的洗浄システム。
[10] 前記流体入口ポート(72)は、前記チャンバ(10、60)の上部に提供される、[3]に記載の能動的洗浄システム。
[11] 前記チャンバ(60)は、内壁(66)によって分離された第1の区画(62)及び第2の区画(64)を備え、前記第1の区画(62)は、前記流体ポート(72;74)を備え、前記第2の区画(64)は、前記流体レベルインジケータ(50)を備え、前記内壁(66)は、前記第1の区画(62)及び前記第2の区画(64)内の前記流体レベルが等しくなることを可能にするために、その中に少なくとも1つの開口部(68)を備える、[1]~[10]のいずれか一項に記載の能動的洗浄システム。
[12] 前記内壁(66)は、前記第1の区画(62)及び前記第2の区画(64)内の空気圧が等しくなることを可能にするために、前記チャンバ(60)の上部に第2の開口部(70)を備える、[11]に記載の能動的洗浄システム。
[13] 外科用洗浄システム内の洗浄圧力を能動的に制御する方法であって、前記方法は、
洗浄ポンプ(212)を使用して、流体源(210)から少なくとも1つの流体ポート(72;74)を通してチャンバ(10、60)内に洗浄流体(F)を移動させることと、
前記チャンバ(10、60)から前記少なくとも1つの流体ポート(72;74)を通して流体を移動させるように所定の圧力を加えることによって、圧力ポート(71)を介して前記チャンバ(10、60)と流体連通する可変圧力源(20)を使用して、前記チャンバ(10、60)を加圧することと、
前記チャンバ(10、60)と流体連通する圧力センサ(30)を用いて前記チャンバ(10、60)内の前記圧力を測定することと、
前記チャンバ(10、60)内の所定の洗浄圧力を維持するために、前記圧力センサ(30)からのフィードバックに応答して前記可変圧力源(20)によって加えられる前記圧力を調整することと
を備える、方法。
[14] 前記チャンバ(10、60)内への流体(F)の流量を決定することと、
前記チャンバ(10、60)内への前記流量及び/又は前記チャンバ(10、60)内の前記測定された流体レベルに基づいて、手術部位への洗浄流を計算することと
を更に備える、[13]に記載の方法。
[15] 前記方法は、
前記チャンバ(10、60)内の流体レベル(W)を測定することと、
前記流体レベルを所定の範囲内に維持するために、前記チャンバ(10、60)内で検出された前記流体のレベルに基づいて、注入源(210)から前記チャンバ(10、60)への前記流体(F)の流れを調整することと
をさらに備える、[13]又は[14]に記載の方法。
[16] 前記方法は、
前記チャンバ(10)内の前記流体のレベルを監視し、前記流体レベルが所定の範囲外に移動した場合に警告信号を発すること
をさらに備える、[15]に記載の方法。
[17] 前記チャンバ(10)は、内壁(66)によって分離された第1の区画(62)及び第2の区画(64)を備え、前記流体レベル(W)は、前記第1の区画(62)内で感知され、前記洗浄流体(F)は、前記第2の区画(64)内に導入される、[15]又は[16]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B