(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】3次元物体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20240110BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240110BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240110BHJP
C08L 81/06 20060101ALI20240110BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240110BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y70/00
B33Y10/00
C08L81/06
C08L79/08 B
C08L65/00
(21)【出願番号】P 2020535038
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2018086033
(87)【国際公開番号】W WO2019129595
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シングレタリー, ナンシー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ハモンズ, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】バン, ハイ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, デーヴィッド ビー.
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-531837(JP,A)
【文献】特表2016-501299(JP,A)
【文献】特表2010-502796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0122541(US,A1)
【文献】特表2005-531439(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00436111(EP,A2)
【文献】国際公開第2007/101852(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0312387(US,A1)
【文献】国際公開第2009/034086(WO,A2)
【文献】特表2009-529077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)物体を付加製造システムで製造するための方法であって、ポリマー成分の総重量を基準として:
-少なくとも1つのベンゼン環を含むアリーレン基からなる繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%
(各繰り返し単位(R1)はC-C結合によって互いに結合しており、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満がアリーレン単位(R1-a)であり、及び
-少なくとも10モル%がアリーレン単位(R1-b)であるようになっている)
を含む、少なくとも1種のポリマー(P1)5~95重量%と、
-ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)により測定した際に、140℃~265℃のガラス転移温度(Tg)を有し、溶融ピークを持たない少なくとも1種のポリマー(P2)5~95重量%と
を含むポリマー成分を含む部品材料から3D物体の層を印刷することでなる工程を含み、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が、式:
-Ar
1-
のアリーレン単位(R1-a)であり、
(式中、
-Ar
1が置換されているか又は非置換であり、
-Ar
1が、1,4-フェニレン(又はpフェニレン)、1,4-ナフチレン、1,4-フェナントリレン、2,7フェナントリレン、1,4-アントリレン、9,10アントリレン、2,7-ピレニレン、1,4-ナフタセニレン、5,12ナフタセニレン、1,4-クリセニレン、1,4-トリフェニリレン、2,7トリフェニリレン、1,4-ペンタセニレン、5,14ペンタセニレン、6,13ペンタセニレン、1,6-コロネニレン、1,4-トリナフチレニレン、2,9トリナフチレニレン及び5,18トリナフチレニレンからなる群から選択される)、並びに
-少なくとも10モル%が、式:
-Ar
2-
のアリーレン単位(R1-b)であり、
(式中、
-Ar
2が置換されているか又は非置換であり、
-Ar
2が、1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,2-フェナントリレン、1,8-フェナントリレン、1,9-フェナントリレン、2,3-フェナントリレン、2,5-フェナントリレン、2,10-フェナントリレン、1,2-アントリレン、1,7-アントリレン、1,3-フェニレン(又はmフェニレン)、1,3-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,3-フェナントリレン、1,5-フェナントリレン、1,7-フェナントリレン、2,4-フェナントリレン、2,9-フェナントリレン、3,10-フェナントリレン、1,3-アントリレン、1,6-アントリレン、1,8-ナフチレン、1,10-フェナントリレン、3,5-フェナントリレン、1,8-アントリレン、1,9-アントリレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,6-フェナントリレン、3,9-フェナントリレン、4,10フェナントリレン、1,5-アントリレン、1,10-アントリレン及び2,6-アントリレンからなる群から選択される)、
P2が、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)及びポリ(エーテルイミド)(PEI)からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
Ar
1が、1,4-フェニレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Ar
2が、1,3-フェニレンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー(P1)が、少なくとも95モル%の繰り返し単位(R1)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー(P1)が、少なくとも99モル%の繰り返し単位(R1)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー(P1)が、100モル%の繰り返し単位(R1)を含むホモポリマーである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
フェニレン基が、一価置換基によって置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
一価置換基が、
-ヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R(式中、Rはヒドロカルビル基である)]及び
-ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R
1-O-R
2(式中、R
1は二価炭化水素基であり、及びR
2はヒドロカルビル基である)]からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
一価置換基が、[-C(=O)-フェニル]である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
部品材料のポリマー成分が、
-少なくともポリマー(P1)5~50重量%と、
-少なくともポリマー(P2)50~95重量%と
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
部品材料がまた、部品材料の総重量を基準として、60重量%までの、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
P2がポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ポリマー(P2)が、式(L’’):
(モル%は、ポリマー中の合計モル数を基準としている。)の繰り返し単位(R
PPSU)を少なくとも50モル%含むポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマー(P2)が、式(L’’):
(モル%は、ポリマー中の合計モル数を基準としている。)の繰り返し単位(R
PPSU)を少なくとも95モル%含むポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ポリマー(P2)が、式(L’’):
(モル%は、ポリマー中の合計モル数を基準としている。)の繰り返し単位(R
PPSU)を少なくとも99モル%含むポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
P2が、30,000~80,000g/モルの範囲のMwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
部品材料が、フィラメント又はペレットの形態にある、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
層を印刷する工程が部品材料を押出する工程を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
P2が少なくとも50モル%の、式(K):(モル%は、ポリマー中の総モル数を基準とする)
(式中、
-Rは、それぞれの位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
-hは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)の繰り返し単位(R
PPSU)を含むポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)である、請求項1~
12及び16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ポリマー成分の総重量を基準として:
-少なくとも1つのベンゼン環を含むアリーレン基からなる繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%
(各繰り返し単位(R1)はC-C結合によって互いに結合しており、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満がアリーレン単位(R1-a)であり、及び
-少なくとも10モル%がアリーレン単位(R1-b)であるようになっている)
を含む、少なくとも1種のポリマー(P1)5~95重量%と、
-ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)により測定した際に、140℃~265℃のガラス転移温度(Tg)を有し、溶融ピークを持たない少なくとも1種のポリマー(P2)5~95重量%と
を含むポリマー成分を含み、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が、式:
-Ar
1-
のアリーレン単位(R1-a)であり、
(式中、
-Ar
1が置換されているか又は非置換であり、
-Ar
1が、1,4-フェニレン(又はpフェニレン)、1,4-ナフチレン、1,4-フェナントリレン、2,7フェナントリレン、1,4-アントリレン、9,10アントリレン、2,7-ピレニレン、1,4-ナフタセニレン、5,12ナフタセニレン、1,4-クリセニレン、1,4-トリフェニリレン、2,7トリフェニリレン、1,4-ペンタセニレン、5,14ペンタセニレン、6,13ペンタセニレン、1,6-コロネニレン、1,4-トリナフチレニレン、2,9トリナフチレニレン及び5,18トリナフチレニレンからなる群から選択される)、並びに
-少なくとも10モル%が、式:
-Ar
2-
のアリーレン単位(R1-b)であり、
(式中、
-Ar
2が置換されているか又は非置換であり、
-Ar
2が、1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,2-フェナントリレン、1,8-フェナントリレン、1,9-フェナントリレン、2,3-フェナントリレン、2,5-フェナントリレン、2,10-フェナントリレン、1,2-アントリレン、1,7-アントリレン、1,3-フェニレン(又はmフェニレン)、1,3-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,3-フェナントリレン、1,5-フェナントリレン、1,7-フェナントリレン、2,4-フェナントリレン、2,9-フェナントリレン、3,10-フェナントリレン、1,3-アントリレン、1,6-アントリレン、1,8-ナフチレン、1,10-フェナントリレン、3,5-フェナントリレン、1,8-アントリレン、1,9-アントリレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,6-フェナントリレン、3,9-フェナントリレン、4,10フェナントリレン、1,5-アントリレン、1,10-アントリレン及び2,6-アントリレンからなる群から選択される)、
P2が、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)及びポリ(エーテルイミド)(PEI)からなる群から選択される、3次元(3D)物体を付加製造システムで製造するための部品材料。
【請求項21】
Ar
1が、1,4-フェニレンである、請求項20に記載の部品材料。
【請求項22】
Ar
2が、1,3-フェニレンである、請求項20又は21に記載の部品材料。
【請求項23】
ポリマー(P1)が、少なくとも95モル%の繰り返し単位(R1)を含む、請求項20又は21に記載の部品材料。
【請求項24】
ポリマー(P1)が、少なくとも99モル%の繰り返し単位(R1)を含む、請求項20又は21に記載の部品材料。
【請求項25】
ポリマー(P1)が、100モル%の繰り返し単位(R1)を含むホモポリマーである、請求項20又は21に記載の部品材料。
【請求項26】
フェニレン基が、一価置換基によって置換されている、請求項20に記載の部品材料。
【請求項27】
一価置換基が、
-ヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R(式中、Rはヒドロカルビル基である)]及び
-ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R
1-O-R
2(式中、R
1は二価炭化水素基であり、及びR
2はヒドロカルビル基である)]からなる群から選択される、請求項26に記載の部品材料。
【請求項28】
一価置換基が、[-C(=O)-フェニル]である、請求項26に記載の部品材料。
【請求項29】
ポリマー成分の総重量を基準として:
-少なくとも1つのベンゼン環を含むアリーレン基からなる繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%
(各繰り返し単位(R1)はC-C結合によって互いに結合しており、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満がアリーレン単位(R1-a)であり、及び
-少なくとも10モル%がアリーレン単位(R1-b)であるようになっている)
を含む、少なくとも1種のポリマー(P1)5~95重量%と、
-ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)により測定した際に、140℃~265℃のガラス転移温度(Tg)を有し、溶融ピークを持たない少なくとも1種のポリマー(P2)5~95重量%と
を含み、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が、式:
-Ar
1-
のアリーレン単位(R1-a)であり、
(式中、
-Ar
1が置換されているか又は非置換であり、
-Ar
1が、1,4-フェニレン(又はpフェニレン)、1,4-ナフチレン、1,4-フェナントリレン、2,7フェナントリレン、1,4-アントリレン、9,10アントリレン、2,7-ピレニレン、1,4-ナフタセニレン、5,12ナフタセニレン、1,4-クリセニレン、1,4-トリフェニリレン、2,7トリフェニリレン、1,4-ペンタセニレン、5,14ペンタセニレン、6,13ペンタセニレン、1,6-コロネニレン、1,4-トリナフチレニレン、2,9トリナフチレニレン及び5,18トリナフチレニレンからなる群から選択される)、並びに
-少なくとも10モル%が、式:
-Ar
2-
のアリーレン単位(R1-b)であり、
(式中、
-Ar
2が置換されているか又は非置換であり、
-Ar
2が、1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,2-フェナントリレン、1,8-フェナントリレン、1,9-フェナントリレン、2,3-フェナントリレン、2,5-フェナントリレン、2,10-フェナントリレン、1,2-アントリレン、1,7-アントリレン、1,3-フェニレン(又はmフェニレン)、1,3-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,3-フェナントリレン、1,5-フェナントリレン、1,7-フェナントリレン、2,4-フェナントリレン、2,9-フェナントリレン、3,10-フェナントリレン、1,3-アントリレン、1,6-アントリレン、1,8-ナフチレン、1,10-フェナントリレン、3,5-フェナントリレン、1,8-アントリレン、1,9-アントリレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,6-フェナントリレン、3,9-フェナントリレン、4,10フェナントリレン、1,5-アントリレン、1,10-アントリレン及び2,6-アントリレンからなる群から選択される)、
P2が、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)及びポリ(エーテルイミド)(PEI)からなる群から選択される、ポリマー成分を含む部品材料の、
3次元物体の
付加製造システムでの製造のための使用。
【請求項30】
Ar
1が、1,4-フェニレンである、請求項
29に記載の使用。
【請求項31】
Ar
2が、1,3-フェニレンである、請求項
29又は
30に記載の使用。
【請求項32】
ポリマー(P1)が、少なくとも95モル%の繰り返し単位(R1)を含む、請求項
29又は
30に記載の使用。
【請求項33】
ポリマー(P1)が、少なくとも99モル%の繰り返し単位(R1)を含む、請求項
29又は
30に記載の使用。
【請求項34】
ポリマー(P1)が、100モル%の繰り返し単位(R1)を含むホモポリマーである、請求項
29又は
30に記載の使用。
【請求項35】
フェニレン基が、一価置換基によって置換されている、請求項
29に記載の使用。
【請求項36】
一価置換基が、
-ヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R(式中、Rはヒドロカルビル基である)]及び
-ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R
1-O-R
2(式中、R
1は二価炭化水素基であり、及びR
2はヒドロカルビル基である)]からなる群から選択される、請求項
35に記載の使用。
【請求項37】
一価置換基が、[-C(=O)-フェニル]である、請求項
35に記載の使用。
【請求項38】
部品材料が、フィラメント又はペレットの形態にある、請求項
29に記載の使用。
【請求項39】
ポリマー成分の総重量を基準として:
-少なくとも1つのベンゼン環を含むアリーレン基からなる繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%
(各繰り返し単位(R1)はC-C結合によって互いに結合しており、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満がアリーレン単位(R1-a)であり、及び
-少なくとも10モル%がアリーレン単位(R1-b)であるようになっている)
を含む、少なくとも1種のポリマー(P1)5~95重量%と、
-ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)により測定した際に、140℃~265℃のガラス転移温度(Tg)を有し、溶融ピークを持たない少なくとも1種のポリマー(P2)5~95重量%と
を含むポリマー成分を含み、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が、式:
-Ar
1-
のアリーレン単位(R1-a)であり、
(式中、
-Ar
1が置換されているか又は非置換であり、
-Ar
1が、1,4-フェニレン(又はpフェニレン)、1,4-ナフチレン、1,4-フェナントリレン、2,7フェナントリレン、1,4-アントリレン、9,10アントリレン、2,7-ピレニレン、1,4-ナフタセニレン、5,12ナフタセニレン、1,4-クリセニレン、1,4-トリフェニリレン、2,7トリフェニリレン、1,4-ペンタセニレン、5,14ペンタセニレン、6,13ペンタセニレン、1,6-コロネニレン、1,4-トリナフチレニレン、2,9トリナフチレニレン及び5,18トリナフチレニレンからなる群から選択される)、並びに
-少なくとも10モル%が、式:
-Ar
2-
のアリーレン単位(R1-b)であり、
(式中、
-Ar
2が置換されているか又は非置換であり、
-Ar
2が、1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,2-フェナントリレン、1,8-フェナントリレン、1,9-フェナントリレン、2,3-フェナントリレン、2,5-フェナントリレン、2,10-フェナントリレン、1,2-アントリレン、1,7-アントリレン、1,3-フェニレン(又はmフェニレン)、1,3-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,3-フェナントリレン、1,5-フェナントリレン、1,7-フェナントリレン、2,4-フェナントリレン、2,9-フェナントリレン、3,10-フェナントリレン、1,3-アントリレン、1,6-アントリレン、1,8-ナフチレン、1,10-フェナントリレン、3,5-フェナントリレン、1,8-アントリレン、1,9-アントリレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,6-フェナントリレン、3,9-フェナントリレン、4,10フェナントリレン、1,5-アントリレン、1,10-アントリレン及び2,6-アントリレンからなる群から選択される)、
P2が、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)及びポリ(エーテルイミド)(PEI)からなる群から選択される、部品材料の、
3次元物体の
付加製造システムでの製造において使用するためのフィラメントの製造のための使用。
【請求項40】
Ar
1が、1,4-フェニレンである、請求項
39に記載の使用。
【請求項41】
Ar
2が、1,3-フェニレンである、請求項
39又は
40に記載の使用。
【請求項42】
ポリマー(P1)が、少なくとも95モル%の繰り返し単位(R1)を含む、請求項
39又は
40に記載の使用。
【請求項43】
ポリマー(P1)が、少なくとも99モル%の繰り返し単位(R1)を含む、請求項
39又は
40に記載の使用。
【請求項44】
ポリマー(P1)が、100モル%の繰り返し単位(R1)を含むホモポリマーである、請求項
39又は
40に記載の使用。
【請求項45】
フェニレン基が、一価置換基によって置換されている、請求項
39に記載の使用。
【請求項46】
一価置換基が、
-ヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R(式中、Rはヒドロカルビル基である)]及び
-ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R
1-O-R
2(式中、R
1は二価炭化水素基であり、及びR
2はヒドロカルビル基である)]からなる群から選択される、請求項
45に記載の使用。
【請求項47】
一価置換基が、[-C(=O)-フェニル]である、請求項
45に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月27日出願の米国仮特許出願第62/610,559号に対する及び2018年2月21日出願の欧州特許出願第18157929.3号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、付加製造システムを使用して3次元(3D)物体を製造するための方法に関し、そこで3D物体は、1つのベンゼン環又は直鎖C-C結合及びねじれ形成C-C結合であるC-C結合によって互いに結合しているいくつかのベンゼン環を含むアリーレン基からなる繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%を含む少なくとも1種のポリマー(P1)と、(ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)により測定した際に)140°C~265°Cのガラス転移温度(Tg)を有し、融解ピークを有さない少なくとも1種のポリマー(P2)を含む部品材料から印刷される。特に、本開示は、3D物体を印刷するための付加製造システムでの使用のための、例えばフィラメントの形態での、そのようなポリマー(P1)及びポリマー(P2)を組み込んだ部品材料に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造システムは、1つ以上の付加製造技術を使用して3D部品のデジタル表現から3D部品を印刷又は他に構築するために使用される。商業的に利用可能な付加製造技術の例としては、押出ベースの技術、選択的レーザー焼結、粉末/バインダー噴射、電子ビーム溶融、及びステレオリソグラフィプロセスが挙げられる。これらの技術のそれぞれの場合、3D部品のデジタル表現は、最初に複数の水平層にスライスされる。各スライスされた層に対して、続いて工具経路が生成され、これは、所与の層を印刷するように特定の付加製造システムに命令を与える。
【0004】
例えば、押出ベース付加製造システムにおいて、3D部品は、部品材料のストリップを押し出し、隣接させることによって層ごとに3D部品のデジタル表現から印刷され得る。部品材料は、システムの印刷ヘッドにより運ばれる押出チップを通して押し出され、x-y面の印字版上に一連の道として堆積される。押し出された部品材料は、前に堆積された部品材料に融合し、温度の降下時に固化する。そのとき、基材に対する印刷ヘッドの位置は、(x-y面に垂直の)z軸に沿ってインクリメントされ、次いで、このプロセスは、デジタル表示に類似する3D部品を形成するために繰り返される。フィラメントから出発する押出成形ベースの付加製造システムの一例は、溶融フィラメント製造法(FFF)と呼ばれ、これは熱溶解積層法(FDM)としても知られる。ペレット付加製造(PAM)は、原材料をペレットとして印刷することができる3D印刷方法の例である。
【0005】
米国特許出願公開第2016122541号明細書(Stratasys)は、3D部品及び支持構造物を印刷するための付加製造システムに関する。支持材料は、製造中に部品材料に接着し、印刷プロセスが完了したときに完成3D部品から除去可能である。支持材料は、1つ又は複数の熱可塑性ポリマーを有する原樹脂、例えばPES(BASF製のULTRASON E1010)90重量%とポリフェニレンオキシドとポリスチレンとのブレンド(PPO/PS)(SABIC製の“NORYL731”)10重量%とのポリマーブレンドを含有する。
公知の付加製造方法に関連した基本的な制限の1つは、許容できる機械的特性の、結果として生じる3D部品の取得を可能にするポリマー成分をベースとした部品材料の特定がなされていないことに基づくものである。
したがって、改良された一連の機械的特性(例えば引張強さ及び伸びなどの弾性率及び引張特性)を示す3D物体の製造を可能にする、付加製造システム、例えばFFF又はPAM印刷方法において使用されるポリマー部品材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様は、3次元(3D)物体を付加製造システムで製造するための方法であって、ポリマー成分の総重量を基準として:
-少なくとも1つのベンゼン環を含むアリーレン基からなる繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%(各繰り返し単位(R1)はC-C結合(E1)によって互いに結合しており、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が剛直棒状形成アリーレン単位(R1-a)であり、及び
-少なくとも10モル%がねじれ形成アリーレン単位(R1-b)であるようになっている)を含む少なくとも1種のポリマー(P1)5~95重量%と、
-ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)により測定した際に、140℃~265℃のガラス転移温度(Tg)を有し、溶融ピークを持たない少なくとも1種のポリマー(P2)5~95重量%を含むポリマー成分を含む部品材料から3次元物体の層を印刷することでなる工程を含む方法を目的としている。
【0007】
ある実施形態によれば、本方法はまた、溶融フィラメント製造技術(FFF)として及びペレット付加製造技術(PAM)としても知られる、押出ベース付加製造システムでの、部品材料の押出を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、本明細書に規定した通りの繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%を含む少なくとも1種のポリマー(P1)と、
ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)により測定した際に、140℃~265℃のガラス転移温度(Tg)を有し、溶融ピークを持たない少なくとも1種のポリマー(P2)と
を含む少なくとも1種のポリマー成分を含む部品材料を目的としている。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、3次元物体の製造のための、又は3次元物体の製造において使用するための、本明細書で説明される部品材料の使用に関する。
【0010】
ポリマー(P1)とポリマー(P2)との組合せにより、改良された機械的特性(例えば弾性率及び引張強さ)を示す3D物体の製造が可能であることを出願人は見出した。
【0011】
そのような製造方法によって得られる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な造形部品、並びに自動車工業におけるアンダーフード部品に言及することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、3次元(3D)物体を押出ベース付加製造システム(例えばFFF)などの付加製造システムで製造するための方法に関する。
【0013】
本発明の方法は、3次元(3D)物体の層を部品材料から印刷する工程を含む。部品材料はフィラメントの形態であることができ、溶融フィラメント製造(FFF)と呼ばれ、溶融堆積モデリング(FDM)としても公知である、フィラメントから出発する押出ベース付加製造システムにおいて使用され得る。また、部品材料はペレットの形態であることができ、ペレットとしての原材料を印刷することができる3D印刷技術(PAM)において使用され得る。
【0014】
本出願人の優れた点は、良い機械的特性を有するポリマー(P1)と、良い機械的特性プロファイル(すなわち引張強さ及び弾性率)を有する3D物体の製造を可能にする、非晶質ポリマー(P2)との両方の組合せを驚くべきことに明らかにしたことであった。
【0015】
「ポリマー」又は「コポリマー」という表現は本明細書によって、同じ繰り返し単位を実質的に100モル%含有するホモポリマー及び同じ繰り返し単位少なくとも50モル%、例えば少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、又は少なくとも98モル%を含むコポリマーを意味するために用いられる。
【0016】
「部品材料」という表現は、本明細書では、3D物体の少なくとも一部を形成することを意図される、材料、とりわけ高分子化合物のブレンドを意味する。部品材料は、本発明に従って、3D物体又は3D物体の部品の製造のために使用される供給原料として使用される。
【0017】
本開示の方法は、フィラメント又はマイクロ粒子(球などの規則的な形状を持った、又はペレットの粉砕/ミリングによって得られる複雑な形状を持った)の形態で例えば造形することができる、部品材料の主要素として2つの異なるポリマーを用いて、3D物体(例えば、3Dモデル、3D物品又は3D部品)を構築する。ポリマーはまた、ペレットの形態で印刷され得る。
【0018】
本出願において:
いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、及びそれらと交換可能であり、
要素若しくは成分が、列挙された要素若しくは成分のリストに含まれる及び/又はリストから選択されると言われる場合、本出願で明示的に企図される関連実施形態において、要素若しくは成分はまた、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであることができ、又は、明示的にリストアップされた要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群から選択することもでき;要素若しくは成分のリストに列挙されたいかなる要素若しくは成分も、そのようなリストから省略され得ることが理解されるべきである。
-端点による数値範囲の本明細書でのいずれの列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数、並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0019】
ある実施形態によれば、部品材料は、フィラメントの形態にある。「フィラメント」という表現は、本発明に従ってポリマー(P1)とポリマー(P2)とを含む材料又は材料のブレンドから形成される糸状物体又は繊維を意味する。
【0020】
フィラメントは、円筒幾何形状若しくは実質的に円筒状の幾何形状を有し得るか、又はリボンフィラメント幾何形状などの、非円筒幾何形状を有し得るし;さらに、フィラメントは、中空幾何形状を有し得るか、又はコア-シェル幾何形状を有し得、別のポリマー組成物がコア若しくはシェルのいずれかを形成するために使用される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、3次元物体を付加製造システムで製造する方法は、部品材料を押出することでなる工程を含む。この工程は、例えば、部品材料のストリップ又は層を印刷する又は堆積させるときに生じ得る。また、3D物体を押出ベース付加製造システムで製造するための方法は、溶融フィラメント製造技術(FFF)、並びにペレット付加製造技術(PAM)としても公知である。
【0022】
FFF 3Dプリンターは、例えば、Apiumから、Robozeから、Hyrelから又はStratasys,Inc.から(商品名Fortus(登録商標)で)市販されている。SLSの3Dプリンターは、例えば、商品名EOSINT(登録商標)PとしてEOS Corporationから入手可能である。FRTPの3Dプリンターは、例えば、Markforgedから入手可能である。
【0023】
PAM3Dプリンターは、例えば、Pollenから市販されている。BAAM(大面積付加製造)は、Cincinnati Incから市販されている工業サイズの、付加装置である。
【0024】
部品材料
本発明の方法において使用される部品材料は、ポリマー成分の総重量を基準として:
-少なくとも1つのベンゼン環を含むアリーレン基からなる繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%(繰り返し単位(R1)はC-C結合、例えば直鎖C-C結合(E1)及びねじれ形成C-C結合(E2)によって互いに結合している)を含む少なくとも1種のポリマー(P1)5~95重量%と、
-ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)により測定した際に、140℃~265℃のガラス転移温度(Tg)を有し、溶融ピークを持たない少なくとも1種のポリマー(P2)5~95重量%とを含むポリマー成分を含む。
【0025】
本開示の部品材料は、他の成分を含み得る。例えば、部品材料は、少なくとも1つの添加剤、とりわけ充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。充填剤は、これに関連して、本質的に強化性であることも非強化性であることもできる。
【0026】
充填剤を含む実施形態において、部品材料中の充填剤の濃度は、部品材料の総重量に対して、0.1重量%~60重量%の範囲である。好適な充填材としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノファイバー、グラフェン、酸化グラフェン、フラーレン、タルク、ウォラストナイト、マイカ、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭化ケイ素、タングステン酸ジルコニウム、窒化ホウ素及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
一実施形態によれば、本開示の部品材料は、
-5~95重量%の少なくともポリマー(P1)及び5~95重量%の少なくともポリマー(P2)を含むポリマー成分と、
-部品材料の総重量を基準として、60重量%までの、例えば、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤と
を含む。
【0028】
別の実施形態によれば、本開示の部品材料は、
-5~95重量%の少なくともポリマー(P1)及び5~95重量%の少なくともポリマー(P2)を含むポリマー成分と、
-部品材料の総重量を基準として、0~60重量%、0.1~50重量%又は0.5~40重量%の、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤と
を含む。
【0029】
ある実施形態によれば、部品材料のポリマー成分は、部品材料中のポリマー成分の総重量を基準として、
-5~95重量%の少なくとも1種のポリマー(P1)、例えば6~80重量%、6.5~70重量%7~60重量%、7.5~50重量%又は8~45重量%、及び/又は
-5~95重量%の少なくとも1種のポリマー(P2)、例えば20~94重量%、30~93.5重量%40~93重量%、50~92.5重量%又は55~92重量%
を含む。
【0030】
ポリマー(P1)
本発明によれば、ポリマー(P1)は、少なくとも50モル%の繰り返し単位(R1)を含む。
【0031】
繰り返し単位(R1)は、置換されているか又は非置換の、少なくとも1つのベンゼン環(すなわち1つのベンゼン環又はいくつかのベンゼン環)を含むアリーレン基からなる。繰り返し単位(R1)は、
-本明細書において剛直棒状形成アリーレン単位(R1-a)とも呼ばれる、直鎖C-C結合(E1)、例えばフェニレン環上の1,4-又はパラ-置換、及び
-本明細書においてねじれ形成アリーレン単位(R1-b)とも呼ばれる、ねじれ形成C-C結合(E2)、例えばフェニレン環上の1,2-又はオルト-置換又は例えばフェニレン環上の1,3-又はメタ-置換)によって互いに結合している。
より正確には、繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として、
-90モル%未満が剛直棒状形成アリーレン単位(R1-a)であり、及び
-少なくとも10モル%がねじれ形成アリーレン単位(R1-b)であるようになっている。
【0032】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P1)は、少なくとも60モル%の、上記定義された繰り返し単位(R1)、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%の、上記定義された繰り返し単位(R1)を含む。
【0033】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P1)はホモポリマーであり、100モル%の上記定義された繰り返し単位(R1)からなる。
【0034】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P1)はポリフェニレンポリマーである。
【0035】
繰り返し単位(R1-a)
繰り返し単位(R1-a)のアリーレン基の非限定的な例には、以下のものが含まれる:
【0036】
【0037】
【0038】
繰り返し単位(R1-b)
繰り返し単位(R1-b)のアリーレン基の非限定的な例には、以下のものが含まれる:
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
ある実施形態によれば、繰り返し単位(R1-a)及び(R1-b)のアリーレン基は3個より少ないベンゼン環、例えば1、2又は3個のベンゼン環から構成される。好ましくは、繰り返し単位(R1-a)及び(R1-b)のアリーレン基は、2個より少ないベンゼン環から構成される。より好ましくは、繰り返し単位(R1-a)及び(R1-b)のアリーレン基は、1個のベンゼン環から構成される。
【0043】
アリーレン基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。それが置換されるとき、それは、一価置換基、好ましくは、500g/モル未満、300g/モル未満、200g/モル未満又は150g/モル未満の分子量の非ポリマー基によって置換され得る。
【0044】
一実施形態によれば、ポリマー(P1)は、C-C結合によって互いに結合している繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%を含み、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が、式:
-Ar1-
のアリーレン単位(R1-a)であり、式中、
-Ar1が置換されているか又は非置換であり、
-Ar1が、1,4-フェニレン(又はpフェニレン)、1,4-ナフチレン、1,4-フェナントリレン、2,7フェナントリレン、1,4-アントリレン、9,10アントリレン、2,7-ピレニレン、1,4-ナフタセニレン、5,12ナフタセニレン、1,4-クリセニレン、1,4-トリフェニリレン、2,7トリフェニリレン、1,4-ペンタセニレン、5,14ペンタセニレン、6,13ペンタセニレン、1,6-コロネニレン、1,4-トリナフチレニレン、2,9トリナフチレニレン及び5,18トリナフチレニレンからなる群から選択され、並びに
-少なくとも10モル%が、式:
-Ar2-
のアリーレン単位(R1b)であり、式中、
-Ar2が置換されているか又は非置換であり、
-Ar2が、1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,2-フェナントリレン、1,8-フェナントリレン、1,9-フェナントリレン、2,3-フェナントリレン、2,5-フェナントリレン、2,10-フェナントリレン、1,2-アントリレン、1,7-アントリレン、1,3-フェニレン(又はmフェニレン)、1,3-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,3-フェナントリレン、1,5-フェナントリレン、1,7-フェナントリレン、2,4-フェナントリレン、2,9-フェナントリレン、3,10-フェナントリレン、1,3-アントリレン、1,6-アントリレン、1,8-ナフチレン、1,10-フェナントリレン、3,5-フェナントリレン、1,8-アントリレン、1,9-アントリレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,6-フェナントリレン、3,9-フェナントリレン、4,10フェナントリレン、1,5-アントリレン、1,10-アントリレン及び2,6-アントリレンからなる群から選択される、並びに
【0045】
一実施形態によれば、ポリマー(P1)は、C-C結合によって互いに結合している繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%を含み、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が、式:
-Ar1-
のアリーレン単位(R1-a)であり、式中、
-Ar1が置換されているか又は非置換であり、
-Ar1が、1,4-フェニレン(又はpフェニレン)、1,4-ナフチレン、1,4-フェナントリレン、2,7フェナントリレン、1,4-アントリレン及び9,10アントリレンからなる群から選択され、並びに
-少なくとも10モル%が、式:
-Ar2-
のアリーレン単位(R1b)であり、式中、
-Ar2が置換されているか又は非置換であり、
-Ar2が、1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,2-フェナントリレン、1,8-フェナントリレン、1,9-フェナントリレン、2,3-フェナントリレン、2,5-フェナントリレン、2,10-フェナントリレン、1,2-アントリレン、1,7-アントリレン、1,3-フェニレン(又はmフェニレン)、1,3-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,3-フェナントリレン、1,5-フェナントリレン、1,7-フェナントリレン、2,4-フェナントリレン、2,9-フェナントリレン、3,10-フェナントリレン、1,3-アントリレン、1,6-アントリレン、1,8-ナフチレン、1,10-フェナントリレン、3,5-フェナントリレン、1,8-アントリレン、1,9-アントリレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,6-フェナントリレン、3,9-フェナントリレン、4,10フェナントリレン、1,5-アントリレン、1,10-アントリレン及び2,6-アントリレンからなる群から選択される。
【0046】
さらに別の実施形態によれば、ポリマー(P1)は、C-C結合によって互いに結合している繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%を含み、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が、式:
-Ar1-
のアリーレン単位(R1-a)であり、式中、
-Ar1が置換されているか又は非置換であり、
-Ar1が、1,4-フェニレン(又はpフェニレン)、1,4-ナフチレン、1,4-フェナントリレン、2,7フェナントリレン、1,4-アントリレン、9,10アントリレン、2,7-ピレニレン、1,4-ナフタセニレン、5,12ナフタセニレン、1,4-クリセニレン、1,4-トリフェニリレン、2,7トリフェニリレン、1,4-ペンタセニレン、5,14ペンタセニレン、6,13ペンタセニレン、1,6-コロネニレン、1,4-トリナフチレニレン、2,9トリナフチレニレン及び5,18トリナフチレニレンからなる群から選択され、並びに
-少なくとも10モル%が、式:
-Ar2-
のアリーレン単位(R1b)であり、式中、
-Ar2が置換されているか又は非置換であり、
-Ar2が、1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,2-フェナントリレン、1,8-フェナントリレン、1,9-フェナントリレン、2,3-フェナントリレン、2,5-フェナントリレン、2,10-フェナントリレン、1,2-アントリレン、1,7-アントリレン、1,3-フェニレン(又はmフェニレン)、1,3-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,3-フェナントリレン、1,5-フェナントリレン、1,7-フェナントリレン、2,4-フェナントリレン、2,9-フェナントリレン、3,10-フェナントリレン、1,3-アントリレン、1,6-アントリレン、1,8-ナフチレン、1,10-フェナントリレン、3,5-フェナントリレン、1,8-アントリレン、1,9-アントリレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,6-フェナントリレン、3,9-フェナントリレン、4,10フェナントリレン、1,5-アントリレン、1,10-アントリレン及び2,6-アントリレンからなる群から選択される。
【0047】
一実施形態によればポリマー(P1)は、C-C結合によって互いに結合している繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%を含み、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が、式:
-Ar1-
のアリーレン単位(R1-a)であり、式中、
-Ar1が置換されており、
-Ar1が1,4-フェニレン(又はpフェニレン)であり、
-少なくとも10モル%が、式:
-Ar2-
のアリーレン単位(R1b)であり、式中、
-Ar2が非置換であり、
-Ar2が、1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,2-フェナントリレン、1,8-フェナントリレン、1,9-フェナントリレン、2,3-フェナントリレン、2,5-フェナントリレン、2,10-フェナントリレン、1,2-アントリレン、1,7-アントリレン、1,3-フェニレン(又はmフェニレン)、1,3-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,3-フェナントリレン、1,5-フェナントリレン、1,7-フェナントリレン、2,4-フェナントリレン、2,9-フェナントリレン、3,10-フェナントリレン、1,3-アントリレン、1,6-アントリレン、1,8-ナフチレン、1,10-フェナントリレン、3,5-フェナントリレン、1,8-アントリレン、1,9-アントリレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,6-フェナントリレン、3,9-フェナントリレン、4,10フェナントリレン、1,5-アントリレン、1,10-アントリレン及び2,6-アントリレンからなる群から選択される。
【0048】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P1)は、繰り返し単位(R1)で本質的になるポリフェニレンポリマーであり、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として:
-90モル%未満が置換1,4-フェニレン(又はpフェニレン)であり、及び
-少なくとも10モル%が非置換1,2-フェニレン(又はo-フェニレン)又は非置換1,3-フェニレン(又はmフェニレン)である。
【0049】
一価置換基
ある実施形態によれば、一価置換基は可溶化基、すなわち、例えばジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、ヘキサメチル燐酸トリアミド、ベンゼン、テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンからなる群から選択される、少なくとも1つの有機溶媒中のポリアリーレン(P1)ポリマーの溶解度を増加させる置換基である。これらの溶媒は、溶液重合法によるポリアリーレン(P1)ポリマーの製造のために一般的に使用される。
【0050】
ある実施形態によれば、一価置換基は、ポリアリーレン(P1)ポリマーの可融性を増加させる、すなわち、ポリマー(P1)のガラス転移温度(Tg)及びその溶融粘度を低下させる基である。
【0051】
一価置換基は、以下のもの:
-ヒドロカルビル、例えばアルキル、アリール、アルキルアリール及びアラルキル;
-ハロゲン、例えば-Cl、-Br、-F及び-I;
-少なくとも1個のハロゲン原子で部分的若しくは完全に置換されたヒドロカルビル基、例えばハロゲノアルキル、ハロゲノアリール、ハロゲノアルキルアリール及びハロゲノアラルキル;
-ヒドロキシル;
-少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたヒドロカルビル基、例えばヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキルアリール及びヒドロキシアラルキル;
-ヒドロカルビルオキシ[-O-R(式中、Rは、ヒドロカルビル基である)]、例えばアルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ及びアラルキルオキシ;
-アミノ(-NH2);
-少なくとも1つのアミノ基で置換されたヒドロカルビル基、例えばアミノアルキル及びアミノアリール;
-ヒドロカルビルアミン[-NHR若しくは-NR2(式中、Rは、ヒドロカルビル基である)]、例えばアルキルアミン及びアリールアミン;
-カルボン酸及びそれらの金属若しくはアンモニウム塩、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物;
-カルボン酸、その金属若しくはアンモニウム塩、カルボン酸ハロゲン化物及びカルボン酸無水物のうちの少なくとも1つで置換されたヒドロカルビル基、例えば-R-C(=O)OH(式中、Rは、アルキル若しくはアリール基である);
-ヒドロカルビルエステル[-C(=O)OR若しくは-O-C(=O)R(式中、Rは、ヒドロカルビル基である)]、例えばアルキルエステル、アリールエステル、アルキルアリールエステル及びアラルキルエステル;
-アミド[-C(=O)NH2];
-少なくとも1つのアミド基で置換されたヒドロカルビル基;
-ヒドロカルビルアミドモノエステル[-C(=O)NHR若しくは-NH-C(=O)-R(式中、Rはヒドロカルビル基である)]、例えばアルキルアミド、アリールアミド、アルキルアリールアミド及びアラルキルアミド、及びヒドロカルビルアミドジエステル[-C(=O)NR2若しくは
-N-C(=O)R2(式中、Rはヒドロカルビル基である)]、例えばジアルキルアミド及びジアリールアミド;
-スルフィン酸(-SO2H)、スルホン酸(-SO3H)、それらの金属若しくはアンモニウム塩;
-ヒドロカルビルスルホン[-S(=O)2-R(式中、Rは、ヒドロカルビル基である)]、例えば、アルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアリールスルホン、アラルキルスルホン;
-アルデヒド[-C(=O)H]及びハロホルミル[-C(=O)X(式中、Xはハロゲン原子である)];
-ヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R(式中、Rは、ヒドロカルビル基である)]、例えばアルキルケトン、アリールケトン、アルキルアリールケトン及びアラルキルケトン;
-ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R1-O-R2(式中、R1は、二価炭化水素基、例えばアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレン若しくはアラルキレン、好ましくはC1~C18アルキレン、フェニレン、少なくとも1つのアルキル基で置換されたフェニレン基、又は少なくとも1つのフェニル基で置換されたアルキレン基である;及びR2は、ヒドロカルビル基、例えばアルキル、アリール、アルキルアリール若しくはアラルキル基である)]、例えば、アルキルオキシアルキルケトン、アルキルオキシアリールケトン、アルキルオキシアルキルアリールケトン、アルキルオキシアラルキルケトン、アリールオキシアルキルケトン、アリールオキシアリールケトン、アリールオキシアルキルアリールケトン及びアリールオキシアラルキルケトン;
-少なくとも1つのヒドロカルビル基若しくは二価炭化水素基R1を含む上記の基のいずれか(式中、上記ヒドロカルビル基若しくは上記R1は、それ自体が上記に列挙した一価置換基のうちの少なくとも1つ、例えばアリールケトン-C(=O)-R(式中、Rは、1つのヒドロキシル基で置換されたアリール基である)で置換されている)からなる群から選択され得るが、
ここで、
-ヒドロカルビル基は、好ましくは1~30個の炭素原子、より好ましくは1~12個の炭素原子及びいっそうより好ましくは1~6個の炭素原子を含有する;
-アルキル基は、好ましくは1~18個の炭素原子、及びより好ましくは1~6個の炭素原子を含有する;極めて好ましくは、これらはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及びtert-ブチルから選択される;
-アリール基は、1つの末端と1つのベンゼン環から構成される1つのコアとからなるか(フェニル基など)若しくは相互に炭素-炭素結合を介して直接連結されるか(ビフェニル基など)、若しくは2個以上の隣接環炭素原子を共有することによって一緒に縮合された複数のベンゼン環から構成される1つのコアとからなる一価基(ナフチル基など)であると規定されており、環炭素原子は場合により少なくとも1個の窒素、酸素若しくは硫黄原子で置換されており;好ましくはアリール基では環炭素原子は置換されていない;
-アリール基は、好ましくは6~30個の炭素原子を含有する;より好ましくは、それらはフェニル基である;
-アルキルアリール基内に含有されるアルキル基は、上で表現したアルキル基の優先傾向を満たす;
-アラルキル基内に含有されるアリール基は、上で表現したアリール基の優先傾向を満たす。
【0052】
好ましい実施形態によると、一価置換基は、
-ヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R(式中、Rはヒドロカルビル基である)]及び
-ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[-C(=O)-R1-O-R2(式中、R1は二価炭化水素基であり、及びR2はヒドロカルビル基である)]からなる群から選択され、前記ヒドロカルビルケトン及びヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、非置換であるか又は上に記載した一価置換基のうちの少なくとも1つによって置換されている。
【0053】
別の好ましい実施形態によれば、一価置換基は、アリールケトン及びアリールオキシアリールケトンから選択され、上記アリールケトン及びアリールオキシアリールケトンは未置換若しくは上で列挙した一価置換基のうちの少なくとも1つで置換されている。
【0054】
別の好ましい実施形態によれば、一価置換基は(非置換)アリールケトンであり、特にそれはフェニルケトン[-C(=O)-フェニル]であり得る。
【0055】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P1)は、上に記載されたような少なくとも1つの一価置換基によって任意選択的に置換される、m-フェニレン及びp-フェニレンからなる繰り返し単位(R1)少なくとも50モル%、例えば、上に記載されたような少なくとも1つの一価置換基によって任意選択的に置換される、mフェニレン及びp-フェニレンからなる繰り返し単位(R1)少なくとも少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、又は少なくとも95モル%を含む。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、ポリマー(P1)は、上に記載されたような少なくとも1つの一価置換基によって任意選択的に置換される、m-フェニレン及びp-フェニレンからなる繰り返し単位(R1)で本質的になる。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、ポリマー(P1)は、非置換m-フェニレン及び置換p-フェニレンからなる繰り返し単位(R1)で本質的になる。
-ある実施形態によれば、ポリマー(P1)の繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として、少なくとも10モル%がねじれ形成アリーレン単位(R1-b)であるようになっており、例えば少なくとも12モル%、少なくとも15モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、又は少なくとも45モル%である。
【0058】
別の実施形態によれば、ポリマー(P1)の繰り返し単位(R1)は、繰り返し単位(R1)の総モル数を基準として、90モル%未満がねじれ形成アリーレン単位(R1-b)であるようになっており、例えば80モル%未満、75モル%未満、70モル%未満又は65モル%未満である。
【0059】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P1)は、繰り返し単位(R1)に加えて、Ar-SO
2-Ar’基を含む繰り返し単位(R1*)を含み、そこでAr及びAr’は芳香族基であり、前記繰り返し単位(R1*)は式(S1):
(S1):-Ar
5-(T’-Ar
6)
n-O-Ar
7-SO
2-[Ar
8-(T-Ar
9)
n-SO
2]
m-Ar
10-O-
に従い、式中、
-互いに及び出現ごとに等しいか若しくは異なる、Ar
5、Ar
6、Ar
7、Ar
8、及びAr
9は独立して、芳香族単核又は多核基であり;
-T及びT’は独立して、結合、又は少なくとも1つのヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;
好ましくはT’は、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-、及び次式の基:
からなる群から選択され、
好ましくはTは、結合、-CH
2-、-C(O)、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-、SO
2-及び下記の式の基:
からなる群から選択され、
-n及びmは独立してゼロであるか又は1~5の整数である;
【0060】
繰り返し単位(R1*)は、特に、本明細書における下記の式(S1-A)~(S1-D):
のものからなる群から特に選択され得、
式中、
-R’の各々は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四アンモニウムからなる群から独立して選択され;
-j’は、ゼロ又は0~4の整数であり;
-T及びT’は独立して結合又は1つ又は2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む二価基であり;好ましくはT’は、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-,-C(=CCl
2)-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-、-SO
2-、及び下記式:
の基からなる群から選択され、
好ましくはTは、結合、-CH
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-C(=CCl
2)-、-C(CH
3)(CH
2CH
2COOH)-、及び下記の式:
の基からなる群から選択される。
【0061】
繰り返し単位(R1*)では、各々のフェニレン部分は、独立して繰り返し単位内のR’とは異なる他の部分への1,2-、1,4-若しくは1,3-結合を有していてよい。好ましくは、前記フェニレン部分は1,3-又は1,4-結合を有し、より好ましくは1,4-結合を有する。さらに、繰り返し単位((R1*)では、J’は、各出現時にゼロであり、すなわち、フェニレン部分は、ポリマーの主鎖内での結合を可能にする置換基以外の置換基を全く有していない。
【0062】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P1)は、繰り返し単位(R1)に加えて、Ar-C(O)-Ar’基(式中、Ar及びAr’は芳香族基である)を含む繰り返し単位(R2*)を含み、前記繰り返し単位(R2*)は、式(J-A)~(J-O):
からなる群から選択され、式中、
-各R’は独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から選択され;
-j’は、ゼロ又は0~4の整数である。
【0063】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P1)は、繰り返し単位(R1)に加えて、Ar-C(O)-Ar’基(式中、Ar及びAr’は芳香族基である)を含む繰り返し単位(R2*)を含み、前記繰り返し単位(R3*)は一般的に、下記式(K-A)及び(K-B):
からなる群から選択され、
式中、
R’の各々は独立して、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四アンモニウムからなる群から選択され;
-j’は、ゼロ又は0~4の整数である。
【0064】
ある実施形態によれば、ポリマー(P1)ポリマーの繰り返し単位の70モル%超、80モル%超又は85モル%超は、上に詳述されたような繰り返し単位(R1)であり、100モル%の補体は上に詳述されたような繰り返し単位(R1*)、及び/又は上に詳述されたような繰り返し単位(R2*)、及び/又は上に詳述されたような繰り返し単位(R3*)である。
【0065】
さらにより好ましくは、ポリマー(P1)の本質的に全部の繰り返し単位が繰り返し単位(R1)であり、鎖欠陥若しくは極めて微量の他の単位が存在してもよいが、これら後者はポリマー(P1)の特性を実質的に変化させないと理解されている。
【0066】
ポリマー(P2)
ある実施形態によれば、ポリマー(P2)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)及びポリ(エーテルイミド)(PEI)からなる群から選択される。
【0067】
ポリマー(P2)がポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)である場合、それは、好ましくは、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PES)又はポリスルホン(PSU)である。
【0068】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)
本発明の目的上、「ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)」は、ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、式(K):
(式中、
-Rは、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
-hは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数であり;
-Tは、結合及び基
-C(Rj)(Rk)-(ここで、互いに等しいか又は異なる、Rj及びRkは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから選択される)からなる群から選択される)
の繰り返し単位(R
PAES)を含む任意のポリマーを意味する。
【0069】
ある実施形態によれば、Rj及びRkは、メチル基である。
【0070】
ある実施形態によれば、hは、各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PAEs)は、式(K’):
の単位である。
【0071】
本発明のある実施形態によれば、PAES中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ては、式(K)又は式(K’)の繰り返し単位(RPAES)である。
【0072】
一実施形態によれば、PAESは、ASTM D3418に従い示差走査熱量計(DSC)により測定した際に、160~250℃、好ましくは170~240℃、より好ましくは180~230℃の範囲のTgを有する。
【0073】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)
ある実施形態によれば、ポリマー(P2)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、より正確にはポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)である。
【0074】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマーは、ビフェニル部分を含むポリアリーレンエーテルスルホンである。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)はまた、ポリフェニルスルホン(PPSU)として知られており、例えば4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合の結果として生じる。
【0075】
本開示の目的のためには、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)は、少なくとも50モル%(このモル%は、ポリマー中の全モル数を基準とする)の、式(L):
(式中、
-Rは、それぞれの位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
-hは、それぞれのRについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3又は4)である)
の繰り返し単位(R
PPSU)を含む任意のポリマーを意味する。
【0076】
ある実施形態によれば、Rは、上の式(L)中での各位置において、1つ又は2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含む、C1~C12部分;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン並びに第四級アンモニウム基からなる群から独立して選択される。
【0077】
ある実施形態によれば、hは、各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PPSU)は、式(L’):
の単位である。
【0078】
本発明のある実施形態によれば、PAES中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(L)及び/又は式(L’)の繰り返し単位(RPPSU)である。
【0079】
本発明の別の実施形態によれば、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、式(L’’):
(モル%は、ポリマー中の合計モル数を基準としている。)の繰り返し単位(R
PPSU)を少なくとも50モル%含む任意のポリマーを意味する。
【0080】
それ故、本発明のPPSUポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。それがコポリマーである場合、それは、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0081】
本発明のある実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(L’’)の繰り返し単位(RPPSU)である。
【0082】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)がコポリマーである場合、それは、繰り返し単位(R
PPSU)とは異なる、繰り返し単位(R*
PPSU)、例えば式(M)、式(N)及び/又は式(O):
(式中、
-Rは、それぞれの位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
-iは、それぞれのRについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3又は4)である)
の繰り返し単位などからなることができる。
【0083】
ある実施形態によれば、Rは、上の式(M)~(O)におけるそれぞれの位置において、1つ若しくは2つ以上のヘテロ原子;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン並びに第四級アンモニウム基を任意選択的に含むC1~C12部分からなる群から独立して選択される。
【0084】
ある実施形態によれば、iは、式(M)、(N)又は(O)のそれぞれのRについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R*
PPSU)は、式(M’)、(N’)及び/又は(O’):
の単位である。
【0085】
本開示のある実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、1モル%未満又は全てが、式(M)、(N)、(O)、(M’)、(N’)及び/又は(O’)の繰り返し単位(R*PPSU)である。
【0086】
本開示の別の実施形態によれば、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、コポリマーであり、繰り返し単位(R
PPSU)とは異なる、繰り返し単位(R*
PPSU)、例えば式(M’’)、(N’’)及び/又は(O’’):
の単位などを有する。
【0087】
本開示のある実施形態によれば、PPSU中の繰り返し単位の45モル%未満、40モル%未満、35モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、10モル%未満、5モル%未満、1モル%未満又は全てが、式(M’’)、(N’’)及び/又は(O’’)の繰り返し単位(R*PPSU)である。
【0088】
本発明によれば、部品材料のポリマー成分は、部品材料中のポリマー成分の総重量を基準として5~95重量%のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、例えば5~95重量%のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含む。
【0089】
一実施形態によれば、部品材料のポリマー成分は、部品材料のポリマー成分の全重量を基準として15~83重量%又は20~80重量%のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)を含む。
【0090】
本発明によれば、PPSUの重量平均分子量Mwは、30,000~80,000g/モル、例えば、35,000~75,000g/モル又は40,000~70,000g/モルであってもよい。
【0091】
本発明によれば、PPSUのメルトフローレイト又はメルトフローインデックス(ASTM D1238に従って5kgの荷重下に365℃での)(MFR又はMFI)は、1~60g/10分、例えば5~50g/10分又は10~40g/10分であり得る。
【0092】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、PPSUホモポリマーと、上に記載されたとおりの少なくとも1種のPPSUコポリマーとのブレンドであることもできる。
【0093】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)は、当技術分野において公知の任意の方法によって調製することができる。それは、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合によって生じることができる。モノマー単位の反応は、脱離基としてのハロゲン化水素の1単位の脱離を伴う求核芳香族置換によって起こる。しかしながら、結果として生じるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の構造は、脱離基の性質に依存しないことが留意されるべきである。
【0094】
欠陥、末端基及びモノマーの不純物は、本開示の(コ)ポリマー(PPSU)中に、それの性能に悪影響を及ぼさない場合、微量に組み込まれてもよい。
【0095】
PPSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRadel(登録商標)PPSUとして市販されている。
【0096】
ポリスルホン(コ)ポリマー(PSU)
ある実施形態によれば、ポリマー(P2)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、より正確にはポリスルホン(PSU)ポリマーである。
【0097】
本発明の目的のためには、ポリスルホン(PSU)は、少なくとも50モル%(モル%は、ポリマー中の総モル数を基準とする)の、式(N):モル%は、ポリマー中の総モル数を基準とする。)
(式中、
-Rは、各位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
-hは、各Rについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)の繰り返し単位(R
PSU)を含む任意のポリマーを意味する。
【0098】
ある実施形態によれば、Rは、上の式(N)における各位置において、1つ又は2つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含むC1~C12部分;スルホン酸及びスルホネート基;ホスホン酸及びホスホネート基;アミン並びに第四級アンモニウム基からなる群から独立して選択される。
【0099】
ある実施形態によれば、hは、各Rについてゼロである。言い換えれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PSU)は、式(N’):
の単位である。
【0100】
本発明のある実施形態によれば、PSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%(ポリマー中の繰り返し単位の総モル数を基準として)、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(N)及び/又は(N’)の繰り返し単位(RPSU)である。
【0101】
別の実施形態によれば、ポリスルホン(PSU)は、その繰り返し単位の少なくとも50モル%超が式(N’’):
の繰り返し単位(R
PSU)である(モル%は、ポリマー中の総モル数を基準とする。)任意のポリマーを意味する。
【0102】
本発明のある実施形態によれば、PSU中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(N’’)の繰り返し単位(RPSU)である。
【0103】
それ故、本発明のPSUポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。それがコポリマーである場合、それは、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0104】
ポリスルホン(PSU)がコポリマーである場合、それは、繰り返し単位(RPSU)とは異なる繰り返し単位(R*PSU)、例えば、上に記載された式(L)、(M)及び/又は(O)の繰り返し単位などでできていることができる。
【0105】
ポリスルホン(PSU)はまた、PSUホモポリマーと、上に記載されたような、少なくとも1種のPSUコポリマーとのブレンドであり得る。
【0106】
PSUは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からUdel(登録商標)PSUとして入手可能である。
【0107】
ポリ(エーテルスルホン)(コ)ポリマー(PES)
ある実施形態によれば、部品材料のポリマー成分中のポリマー(P2)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)、より正確にはポリ(エーテルスルホン)(PES)(コ)ポリマーである。
【0108】
本発明の目的のためには、ポリ(エーテルスルホン)(PES)は、少なくとも50モル%(モル%は、ポリマー中の繰り返し単位の総モル数を基準とする)の、式(O):
(式中、
-Rは、それぞれの位置において、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムから独立して選択され;
-iは、それぞれのRについて、独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3又は4)である)の繰り返し単位(R
PES)を含む任意のポリマーを意味する。
【0109】
ある実施形態によれば、iは、式(O)の各Rについてゼロである。換言すれば、この実施形態によれば、繰り返し単位(R
PES)は、式(O’):
の単位である。
【0110】
本発明の別の実施形態によれば、ポリ(エーテルスルホン)(PES)は、式(O’’):
の繰り返し単位(R
PES)を有する。
【0111】
本開示のある実施形態によれば、PES中の繰り返し単位の少なくとも60モル%(ポリマー中の繰り返し単位の総モル数を基準として)、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、式(O)、(O’)又は(O’’)の繰り返し単位(RPES)である。
【0112】
PESは、公知の方法によって調製することができ、とりわけ、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からVeradel(登録商標)PESUとして入手可能である。
【0113】
ポリ(エーテルイミド)(PEI)
ある実施形態によれば、部品材料のポリマー成分中のポリマー(P2)はポリ(エーテルイミド)(PEI)である。
【0114】
本明細書で使用するポリ(エーテルイミド)(PEI)は、少なくとも1つの芳香環、少なくとも1つのイミド基(それ自体及び/又はそのアミド酸形態)、並びに少なくとも1つのエーテル基を含む繰り返し単位(RPEI)を、ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%含む任意のポリマーを意味する。繰り返し単位(RPEI)は、イミド基のアミド酸形態に含まれない少なくとも1つのアミド基を任意選択的に更に含んでいてもよい。
【0115】
ある実施形態によれば、繰り返し単位(R
PEI)は、下記式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及びそれらの混合物:
[式中、
-Arは、四価の芳香族部分であり、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、飽和、不飽和の又は芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択され;
-Ar’は、三価の芳香族部分であり、5~50個の炭素原子を有する置換、非置換の、飽和、不飽和の、芳香族単環式及び芳香族多環式の基からなる群から選択され;
-Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそれらのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;並びに
(d)式(VI):
(式中、
-Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは1~6の整数である);
4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択され、
-R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
-iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の二価ラジカルからなる群から例えば選択される、置換及び非置換の二価有機ラジカルからなる群から選択され、
但し、Ar、Ar’及びRのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含み、そのエーテル基はポリマー鎖主鎖中に存在することを条件とする]
からなる群から選択される。
【0116】
ある実施形態によれば、Arは、式:
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’若しくは4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2-及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2-及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択されるか;
又はXは、式-O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、飽和、不飽和の若しくは芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分である)の基である)
からなる群から選択される。
【0117】
ある実施形態によれば、Ar’は、式:
(式中、
Xは、3,3’、3,4’、4,3’’若しくは4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2-及び-C
nH
2n-(nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2-及び-C
nF
2n-(nは、1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択されるか;
又はXは、式-O-Ar’’-O-(式中、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、飽和、不飽和の若しくは芳香族の単環式及び多環式の基からなる群から選択される芳香族部分である)の基である)
からなる群から選択される。
【0118】
本開示のある実施形態によれば、PEI中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、上記定義された、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又はそれらの混合物の繰り返し単位(RPEI)である。
【0119】
ある実施形態によれば、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、ポリマー中の総モル数を基準として、少なくとも50モル%の、式(VII)の繰り返し単位(R
PEI):
[式中、
-Rは、例えば、
(a)6~20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカル及びそれらのハロゲン化誘導体;
(b)2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキレンラジカル;
(c)3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレンラジカル;並びに
(d)式(VI):
(式中、
-Yは、1~6個の炭素原子のアルキレン、例えば-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(nは1~6の整数である);1~6個の炭素原子のパーフルオロアルキレン、例えば-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(nは1~6の整数である);4~8個の炭素原子のシクロアルキレン;1~6個の炭素原子のアルキリデン;4~8個の炭素原子のシクロアルキリデン;-O-;-S-;-C(O)-;-SO
2-;-SO-からなる群から選択され、
-R’’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
-iは、各R’’について、独立してゼロ又は1~4の範囲の整数である)
の二価ラジカル
からなる群から例えば選択される、置換及び非置換の二価有機ラジカルからなる群から選択され;
但し、Ar、Ar’及びRのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのエーテル基を含み、そのエーテル基はポリマー鎖主鎖中に存在することを条件とし、
-Tは、-O-又は-O-Ar’’-O-のいずれかであることができ、
ここで、-O-又は-O-Ar’’-O-基の二価の結合は、3,3’、3,4’、4,3’、又は4,4’位にあり、
ここで、Ar’’は、5~50個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の、飽和、不飽和の又は芳香族の単環式及び多環式基からなる群から選択される芳香族部分、例えば、置換若しくは非置換のフェニレン、置換若しくは非置換のビフェニル基、置換若しくは非置換のナフタレン基、又は2つの置換若しくは非置換のフェニレン基を含む部分である]を含む任意のポリマーを意味する。
【0120】
本開示のある実施形態によれば、Ar’’は、上に詳述されたような、一般式(VI)のものであり、例えばAr’’は、式(XIX):
のものである。
【0121】
本発明のポリエーテルイミド(PEI)は、式H
2N-R-NH
2(XX)(式中、Rは、前に定義された通りである)のジアミノ化合物と、式(XXI):
(式中、Tは前に定義された通りである)
の任意の芳香族ビス(エーテル無水物)との反応を含む、当業者に周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0122】
一般に、この調製は、20℃~250℃の範囲の温度で、溶媒、例えばo-ジクロロベンゼン、m-クレゾール/トルエン、N,N-ジメチルアセトアミド中で実施することができる。
【0123】
或いは、これらのポリエーテルイミドは、式(XXI)の任意の二無水物と式(XX)の任意のジアミノ化合物とを、同時に混合してこれらの成分の混合物を高温で加熱しながら溶融重合させることによって調製することができる。
【0124】
式(XXI)の芳香族ビス(エーテル無水物)としては、例えば:
2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;
2,2-ビス[4(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物、及びそのような二無水物の混合物が挙げられる。
【0125】
式(XX)の有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニル-メタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、及びそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは式(XX)の有機ジアミンは、m-フェニレンジアミン及びp-フェニレンジアミン並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0126】
ある実施形態によれば、ポリ(エーテルイミド)(PEI)は、ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、式(XXIII)又は(XXIV):
の繰り返し単位(R
PEI)をイミド形態、又はそれらの相当するアミド酸形態及びそれらの混合物で含む任意のポリマーを意味する。
【0127】
本発明の好ましい実施形態において、PEI中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全てが、イミド形態、又はそれらの相当するアミド酸形態及びそれらの混合物での、式(XXIII)又は(XXIV)の繰り返し単位(RPEI)である。
【0128】
そのような芳香族ポリイミドは、とりわけ、ULTEM(登録商標)ポリエーテルイミドとしてSabic Innovative Plasticsから市販されている。
【0129】
部品材料は、ポリマー(P2)としてただ1つのPEIを含むことができる。或いは、それは、幾つかのPEI、例えば2、3、又は3超さえのPEIをポリマー(P2)として含むことができる。
【0130】
特定の実施形態において、PEIポリマーは、標準ポリスチレンを使用する、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるように、10,000~150,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0131】
特定の実施形態において、PEIポリマーは、25℃でm-クレゾール中で測定される1グラム当たり0.2デシリットル(dl/g)超の、有利には0.35~0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0132】
本発明によれば、PEIのメルトフローレイト又はメルトフローインデックス(ASTM D1238に従って6.6kgの荷重下に337℃での)(MFR又はMFI)は、0.1~40g/10分、例えば2~30g/10分又は3~25g/10分であり得る。
【0133】
特定の実施形態において、PEIポリマーは、ASTM D3418に従って示差走査熱量法(DSC)により測定されるように、160~270℃の範囲の、例えば170~260℃、180~250℃の範囲のTgを有する。
【0134】
このような部品材料は有利には、ニート樹脂と比較して、3D物体を製造するために使用されるとき、良い機械的特性プロファイル(すなわち引張強さ及び弾性率)を示すことを本出願人は見出した。特に、高品質の物品をニートポリマー(P1)で印刷することは可能ではなく、そしてニートポリマー(P2)から製造される物品は特定の用途のためにそれらを適したものにするために必要とされる一連の機械的特性を有さないことを本出願人は実証した。
【0135】
部品材料
本開示の部品材料は、当業者に周知の方法によって製造することができる。例えば、そのような方法には、溶融混合プロセスが含まれるが、これらに限定されない。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも上にポリマー成分を加熱し、それにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態において、処理温度は、約280~450℃、好ましくは約290~440℃、約300~430℃又は約310~420℃の範囲である。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダ、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分を全て押出機に、押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投与するための手段を備えた押出機が使用される。部品材料の調製プロセスにおいて、部品材料の成分、すなわち、ポリマー(P1)、ポリマー(P2)、及び任意選択的に添加剤は、溶融混合装置に供給され、その装置中で溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる、粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給されてもよいし、又は別々に供給されてもよい。
【0136】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態において、成分は、所望量のそれぞれの成分が一緒に添加され、続いて混合されるような、単一バッチで混合することができる。他の実施形態において、最初のサブセットの成分を最初に一緒に混合することができ、1つ以上の残りの成分を、更なる混合のために混合物に添加することができる。明確にするために、それぞれの成分の全所望量が単一量として混合される必要はない。例えば、1つ以上の成分について、一部の量を最初に添加し、混合し、続いて、残りのいくらか又は全てを添加し、混合することができる。
【0137】
部品材料は例えば、ペレット付加製造(PAM)3D印刷法においてペレットの形態で使用され得る。
【0138】
フィラメント材料
また、本発明は、上述のような、少なくとも1種のポリマー(P1)と少なくとも1種のポリマー(P2)とを含むポリマー成分を含むフィラメント材料に関する。
ある実施形態によれば、フィラメント材料のポリマー成分は、
-少なくともポリマー(P1)5~50重量%と、
-少なくともポリマー(P2)50~95重量%と
を含む。
【0139】
ある実施形態によれば、フィラメント材料のポリマー成分はまた、部品材料の総重量を基準として、60重量%までの、充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む。
【0140】
ある実施形態によれば、フィラメント材料のポリマー成分は、P2が、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)及びポリ(エーテルイミド)(PEI)からなる群から選択され、より好ましくはP2がポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)であり、さらにより好ましくはP2が47,000~57,000g/モルの範囲のMwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(コ)ポリマー(PPSU)であるようなものである。
【0141】
このフィラメント材料は、3次元物体の製造方法において使用するのに好適である。
【0142】
部品材料に関して上に記載された実施形態の全てが、フィラメント材料に等しく適用される。
【0143】
例として、本発明のフィラメント材料は、他の成分を含み得る。例えば、フィラメント材料は、少なくとも1つの添加剤、とりわけ充填剤、着色剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤、難燃剤、核剤、フローエンハンサー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。
【0144】
フィラメントは、円柱状若しくは略円柱状幾何形状を有し得るか、又は非円柱状幾何形状、例えばリボンフィラメント幾何形状を有し得、更に、フィラメントは、中空幾何形状を有し得るか、又はコア-シェル幾何形状を有し得、本発明の支持材料は、コア又はシェルのいずれかを形成するために使用される。
【0145】
フィラメントが円筒幾何形状を有する場合、その直径は、0.5mm~5mm、例えば0.8~4mm又は例えば1mm~3.5mmで変わり得る。フィラメントの直径は、特定のFFF 3Dプリンターに供給するために選択することができる。FFFプロセスにおいて広範囲にわたって使用されるフィラメント直径の例は、1.75mm又は2.85mm直径である。フィラメントの直径の精度は+/-200ミクロン、例えば+/-100ミクロン又は+/-50ミクロンである。
【0146】
本開示のフィラメントは、溶融混合プロセスなどの、しかしそれらに限定されない方法によって部品材料から製造することができる。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの最高溶融温度及びガラス転移温度よりも上にポリマー成分を加熱し、それにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態において、処理温度は、約280~450℃、好ましくは約290~440℃、約300~430℃又は約310~420℃の範囲である。
フィラメントの調製プロセスは、溶融混合装置で実施することができ、そのために、溶融混合によりポリマー組成物を調製する技術における当業者に公知の任意の溶融混合装置を使用することができる。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダ、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機である。所望の成分の全てを、押出機の、押出機供給口又は溶融物のいずれかに投入するための手段を備えた押出機が使用されることが好ましい。
【0147】
フィラメントの調製プロセスにおいて、部品材料の成分、すなわち少なくともPPSU及び任意選択的に添加剤が溶融混合装置に供給され、その装置中で溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる、粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給されてもよいし、又は別々に供給されてもよい。
【0148】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態において、成分は、所望量のそれぞれの成分が一緒に添加され、続いて混合されるような、単一バッチで混合することができる。他の実施形態において、最初のサブセットの成分を最初に一緒に混合することができ、1つ以上の残りの成分を、更なる混合のために混合物に添加することができる。明確にするために、それぞれの成分の全所望量が単一量として混合される必要はない。例えば、1つ以上の成分について、一部の量を最初に添加し、混合し、続いて、残りのいくらか又は全てを添加し、混合することができる。
【0149】
フィラメントを製造する方法は、例えば、ダイを使用する押出工程も含む。この目的のために、任意の標準的な成形技術を用いることができ、融解/軟化形態のポリマー組成物を成形することを含む標準的な技術を有利に適用でき、また、これにはとりわけ圧縮成形、押出成形、射出成形、トランスファー成形などが挙げられる。押出成形が好ましい。例えば物品が円筒形状のフィラメントである場合は環状のオリフィスを有するダイなどのダイを用いて物品を成形することができる。
【0150】
方法は、異なる条件下での溶融混合又は押出のいくつかの連続工程を必要に応じて含み得る。
【0151】
プロセス自体、又は関連する場合、プロセスの各工程は、溶融混合物を冷却することを含む工程を更に含んでもよい。
【0152】
支持材料
本発明の方法は、別のポリマー成分を使用して組立中の3D物体も支持し得る。3D物体を作るために使用される部品材料と同様の又は異なるこのポリマー成分は、本明細書では支持材料と呼ばれる。高温部品材料(例えば、約320~400℃の加工温度を必要とする部品材料)のために必要とされる、より高い作業条件において垂直及び/又は水平支持を提供するために支持材料が3D印刷中に必要とされ得る。
【0153】
本方法との関連で場合により使用される、支持材料は、有利には、高温用途に耐えるために、高い溶融温度(すなわち260℃超)を有する。支持材料はまた、湿気への暴露時に十分に膨潤するか又は変形するために、110℃よりも低い温度で吸水挙動又は水への溶解性を有し得る。
【0154】
本発明の実施形態によれば、3次元物体を付加製造システムで製造する方法は、
-支持構造物の層を支持材料から印刷する工程と、
-支持構造物の少なくとも一部を3次元物体から取り除く工程と
をさらに含む。
【0155】
様々なポリマー成分を支持材料として使用することができる。とりわけ、支持材料は、ポリアミド又はコポリアミド、例えばPCT出願国際公開第2017/167691号パンフレット及び国際公開第2017/167692号パンフレットに記載されているポリアミド又はコポリアミドを含むことができる。
【0156】
用途
また、本発明は、3次元物体の製造のための上述のようなポリマー成分を含む部品材料の使用に関する。
【0157】
また、本発明は、3次元物体の製造のための上述のようなポリマー成分を含むフィラメント材料の使用に関する。
【0158】
部品材料に対して上に記載された実施形態の全てが、部品材料の使用又はフィラメント材料の使用に等しく適用される。
【0159】
また、本発明は、3次元物体の製造において使用するためのフィラメントの製造のための、上述のようなポリマー成分を含む部品材料の使用に関する。
【0160】
本発明は、本明細書で説明される部品材料を使用して、少なくとも部分的に本発明の製造方法から得ることができる3D物体又は3D物品にも関する。これらの3D物体又は3D物品は、射出成形物体又は物品に匹敵する密度を示す。また、それらは、同等の又は改良された機械的特性、とりわけ剛性(弾性率として測定される)及び引張強さを示す。
【0161】
そのような製造方法によって得られる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式装置、歯科補綴物、ブラケット及び宇宙産業における複雑な造形部品、並びに自動車工業におけるアンダーフード部品に言及することができる。
【実施例】
【0162】
本発明はこれから、その目的が例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図されない、以下の実施例に関連してより詳細に説明される。
【0163】
出発原料
以下のポリマーを使用して、フィラメントを作製した:
【0164】
ポリマーP1:Solvay Specialty Polymers製のPrimospire(登録商標)PR-250ポリフェニレンポリマー
PEI:Sabic製のUltem(登録商標)1010
【0165】
PPSU#1:以下の方法に従って調製された、50,500g/モルのMwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU):PPSUの合成は、66.5g(0.481mol)の乾燥K2CO3を添加した400gのスルホランの混合物中に溶解した83.8gの4,4’-ビフェノール(0.450mol)、131.17gの4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(0.457mol)の1Lフラスコ中での反応によって達成された。
反応混合物を210℃まで加熱し、ポリマーが予期されるMwを有するまでこの温度に維持した。次に、過剰の塩化メチルを反応物に添加した。
反応混合物を600gのMCBで希釈した。塩の濾過、凝固、洗浄及び乾燥によってポリ(ビフェニルエーテルスルホン)を回収した。GPC分析は、50,500g/モルの数平均分子量(Mw)、21,500g/モルの平均分子量(Mn)を示し、PDI指数は2.35である。
【0166】
PPSU#2:反応をより遅く停止したことを除いて、PPSU#1と同じ方法に従って調製された、55,000g/モルのMw、22,000g/モルのMnの及びPDI指数が2.5であるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)。
Irganox(登録商標)1010ヒンダードフェノール、Clariantの製品。
AMERILUBES XL-165K滑剤、Amerilubesの製品。
【0167】
ブレンド配合
各配合物を、48:1のL/D比を有する直径26mmのCoperion(登録商標)ZSK-26共回転部分噛合二軸スクリュー押出機を用いて溶融混錬した。バレル区域2~12及びダイを、以下の通りの設定点温度に加熱した。
バレル2~6:190~300°C
バレル7~12:300~320°C
ダイ:330℃
各場合において、樹脂ブレンドを、30~35ポンド/時の範囲の押出量で重量測定フィーダーを用いてバレル区域1で供給した。押出機を、約165RPMのスクリュー速度で運転した。真空を、約27インチの水銀の真空レベルでバレルゾーン10に適用した。単一孔ダイをコンパウンドの全てについて用いて直径およそ2.6~2.7mmのストランドを生じさせ、ダイを出るポリマーストランドを水中で冷却し、ペレタイザーに供給して長さおよそ2.7mmのペレットを生成した。フィラメント加工(FFF、本発明による)又は射出成形(IM、比較例)前にペレットを真空下において16時間140℃で乾燥させた。
【0168】
フィラメント調製
各ニートポリマー及び各ブレンド(表1を参照のこと)に対して、0.75インチ、32L/Dの汎用一軸スクリュー、フィラメントヘッドアダプタ、2.5mmノズル、並びに冷却タンク、ベルトプラー、及びデュアルステーションコイラを備えたESI-Extrusion Services製下流装置を備えた、Brabender(登録商標)Intelli-Torque Plasti-Corde(登録商標)Torque Rheometer押出機を用いて、直径1.75mmのフィラメントを調製した。Beta LaserMike(登録商標)DataPro1000を使用してフィラメント寸法を監視した。溶融ストランドを空気で冷却した。Brabender(登録商標)のゾーン設定点温度は以下の通りであった:ゾーン1が350℃、ゾーン2が340℃、ゾーン3及び4が330℃。Brabender(登録商標)の速度は30~50rpmの範囲であり、プラーの速度は23~37fpmの範囲であった。
【0169】
溶融フィラメント製造バー(FFFバー)
0.6mm直径ノズルを備えたHyrel 3D Hydra 430プリンターで直径が1.75mmの上記フィラメントから試験バー(すなわちASTM D638タイプVバー)を印刷した。印刷中、バーをビルドプラットホーム上でXY方向に方向付けた。10mm幅の縁及び3つの外周を持った試験バーを印刷した。工具パスは、部品の長軸に対して45°の角度を持ったクロスハッチパターンであった。全てのバーについてのビルドプレート温度は、180℃であった。ノズル及び押出機温度は350℃~385℃で変化された。ノズルの速度は、20mm/sで印刷される第1の層を除いて40mm/sに維持された。それぞれの場合で第1の層の高さは0.3mmであり、後続層は高さ0.1mm及び充填密度100%で堆積された。印刷が大部分の層中の材料に明瞭な間隙及び巨視的ボイドがあるバーを生じるとき不十分な印刷の結果となった。不十分に印刷されたバーの機械的特性は測定されなかった。
【0170】
試験方法
*PPSUポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
移動相として塩化メチレンを使用して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分子量を測定した。Agilent Technologies製のガードカラム付きの2本の5μL混合Dカラムを分離のために使用した。254nmの紫外線検出器を、クロマトグラムを得るために用いた。1.5ml/分の流量及び移動相中の20μLの0.2w/v%溶液の注入量を選択した。較正は、12の狭分子量ポリスチレン標準(ピーク分子量範囲:371,000~580g/モル)を使って行われた。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を報告した。
【0171】
*印刷品質及び衝撃強さ
2-ftlbのハンマーを使用してASTM D256方法に従ってノッチ付衝撃強さを測定した。
【0172】
*引張強さ
タイプVバーを使ってASTM D638方法に従って引張強さ及び弾性率を測定した。試験バー(本開示又は比較による)及びそれらの機械的特性を下の表1に報告する(5つの試験バー/平均値)。
【0173】
【0174】
【0175】
ポリマー(P1)、PEI及びPPSUの重量百分率は、ポリマー成分の総重量を基準としている。酸化防止剤及び滑剤の重量百分率は、組成物の総重量を基準としている。
【0176】
文献(例えばStratasys TDS)によれば、PEI印刷バーの機械的特性は、本発明の全ての本発明の組成物と比較して低く、より正確には:
-弾性率(GPa):2.77
-降伏点引張強さ(MPa):64
-公称破断点引張ひずみ(%):3.3%
【0177】
印刷品質は2つの規準、印刷中の巨視的ボイドの外観及びノッチ付衝撃試験において生じた破壊面の外観に従って評価される:
(-)複数の工具経路速度及び押出温度を利用して試験バーを印刷すると必ず巨視的ボイドを生じるか又は試料の破壊面が層間離層を示すことを意味する;
(+)は、試料が射出成形部品に似たパターンに従って壊れることを意味する。
【0178】
表1に示されるように、ポリマー(P1)のフィラメントを使用するFFFによって妥当な品質の試験バーを印刷することは可能ではなかった。PPSU#1のフィラメントは高品質バーをもたらすが、バーは低い弾性率及び強度を示し、これらの性質が重要である用途において材料の有用性を制限する(同じことがポリマーPPSU#2のフィラメントについて当てはまり、結果は表1に示されない)。
【0179】
実施例3及び4の試験バー(ポリマー(P1)/PPSUのフィラメントを使用するFFFによって得られる)は高品質バーをもたらし、実施例2の試験バー(ニートPPSUのフィラメントを使用するFFFによって得られる)よりも高い良い弾性率及び引張強さを示す。
【0180】
実施例5及び7の試験バー(ポリマー(P1)/PEIのフィラメントを使用するFFFによって得られる)は高品質バーをもたらし、実施例2の試験バー(ニートPPSUのフィラメントを使用するFFFによって得られる)よりも高い良い弾性率及び引張強さを示す。
【0181】
実施例6の試験バー(50重量%のポリマー(P1)及び50重量%のPPSUのフィラメントを使用するFFFによって得られる)は高品質バーをもたらし、実施例2の試験バー(ニートPPSUのフィラメントを使用するFFFによって得られる)よりも高い良い弾性率及び引張強さを示す。
【0182】
これらの実施例は、ポリマー(P1)とPPSUポリマーとの組合せ(2つの異なったMw)又はポリマー(P1)とPEIとの組合せがそれ故本発明による溶融フィラメント製造の要件に適していることを実証する。