(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】増殖性硝子体網膜症および上皮間葉転換と関連付けられる状態の治療のためのRUNX1阻害の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5513 20060101AFI20240110BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240110BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240110BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240110BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K31/5513
A61K31/454
A61K48/00
A61K31/7105
A61P27/02 ZNA
A61P9/10
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/14
(21)【出願番号】P 2020544393
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(86)【国際出願番号】 US2018061110
(87)【国際公開番号】W WO2019099560
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502144235
【氏名又は名称】ザ スキーペンズ アイ リサーチ インスティチュート インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】596114853
【氏名又は名称】マサチューセッツ・アイ・アンド・イア・インファーマリー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】キム レオ エー.
(72)【発明者】
【氏名】アルボレダ-ベラスケス ジョゼフ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アマルナニ ダネシュ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット ディーン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】Identification of evolutionarily conserved transcription response elements associated with regulation of cadherin expression in retinal pigment epithelial cells,Molecular Biology of the Cell,2004年,Vol. 15, No. Suppl. S,pp.182A, Abstract No. 1010
【文献】JONATHAN D LAM; ET AL,IDENTIFICATION OF RUNX1 AS A MEDIATOR OF ABERRANT RETINAL ANGIOGENESIS,DIABETES,AMERICAN DIABETES ASSOCIATION,2017年07月,VOL: 66 NR: 7,PAGE(S): 1950-1956,10.2337/db16-1035
【文献】Mechanisms of epithelial-mesenchymal transition in proliferative vitreoretinopathy,Discov Med.,2015年,20(110),pp. 207-217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C12N、C12Q、G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
runt関連転写因子1(RUNX1)阻害剤を含む、網膜円孔または網膜裂孔を含む対象において網膜色素上皮(RPE)細胞の増殖または遊走を予防または低減するための薬学的組成物であって、該RUNX1阻害剤が、Ro5-3335、レナリドミド、およびRUNX1-特異的RNA
干渉剤である阻害核酸から選択される、薬学的組成物。
【請求項2】
RUNX1阻害剤が、Ro5-3335である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
RUNX1阻害剤が、レナリドミドである、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
RUNX1阻害剤が、RUNX1-特異的RNA
干渉剤である阻害核酸である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
RUNX1阻害剤を含む、対象の眼内において上皮間葉転換(EMT)を起こしているRPE細胞の増殖および遊走を低減するための薬学的組成物であって、該RUNX1阻害剤が、Ro5-3335、レナリドミド、およびRUNX1-特異的RNA
干渉剤である阻害核酸から選択される、薬学的組成物。
【請求項6】
RUNX1阻害剤が、Ro5-3335である、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
RUNX1阻害剤が、レナリドミドである、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項8】
RUNX1阻害剤が、RUNX1-特異的RNA
干渉剤である阻害核酸である、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項9】
RUNX1阻害剤を含む、対象において増殖性硝子体網膜症(PVR)を治療する、またはPVRの重篤度を低減するための薬学的組成物であって、該RUNX1阻害剤が、Ro5-3335、レナリドミド、およびRUNX1-特異的RNA
干渉剤である阻害核酸から選択される、薬学的組成物。
【請求項10】
RUNX1阻害剤が、Ro5-3335である、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
RUNX1阻害剤が、レナリドミドである、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項12】
RUNX1阻害剤が、RUNX1-特異的RNA
干渉剤である阻害核酸である、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項13】
対象が増殖性硝子体網膜症(PVR)を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
対象が網膜剥離を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
網膜剥離が、裂孔原性網膜剥離、滲出性剥離、または牽引性網膜剥離を含む、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
RUNX1阻害剤が、RUNX1の発現および/または活性を減少させる、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項17】
メトトレキサートをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項18】
溶液、懸濁液、半液体、エマルション、軟膏、クリーム、含泡ゲル、粉末または制御放出/持続放出製剤として製剤化される、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項19】
局所的にまたは硝子体内注射により投与される、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項20】
一眼当たり約0.0001mg~約10mgの阻害剤の濃度で目に投与される、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項21】
一眼当たり約50μL~約100μLの量で目に投与される、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項22】
抗炎症剤をさらに含み、抗炎症剤がステロイドまたは非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID)を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項23】
阻害剤が約0.001%w/v~約100%w/vの濃度である、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項24】
対象がヒトである、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項25】
対象が、異常な血管新生を有すると診断されていない、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項26】
対象が、小血管疾患を有すると診断されていない、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項27】
対象が手術を受けていない、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項28】
手術の前、手術の間、または手術の後に投与される、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項29】
手術が網膜剥離手術を含む、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項30】
対象が、目への外傷を患っている、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年11月14日に出願された米国仮出願第62/586,067号の優先権の恩典を主張し、該仮出願の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府により支援された研究に関する声明
本発明は、the National Institutes of Healthにより授与されたEY021624およびthe Department of Defenseにより授与されたW81XWH-17-2-0006の下で政府の支援により為された。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、網膜色素上皮細胞の増殖、遊走、または間葉転換の予防または低減に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
網膜剥離(RD)は、米国における突然の失明の重要な原因であり、年間で約40,000の症例が起こっている。治療が遅れた場合、永久的な失明が結果として生じる。網膜剥離は、網膜色素上皮(RPE)からの神経感覚網膜の分離である。非病理学的状態において、網膜色素上皮は、固い結合により閉鎖された連続的な上皮単層であり、感覚網膜の光受容体と内層の脈絡膜毛細血管床との厳格な分離を維持し、したがって外側血液網膜関門を形成する。その機能としては、光受容体の育成、老廃物の除去、および網膜下液の再吸収が挙げられる。
【0005】
網膜剥離の決定的治療は外科的修復である。複数の処置技術が臨床網膜医に利用可能であるが、網膜剥離の治療の基礎となる原理は同じままであり、網膜下空間からの液体の除去、任意の既存の牽引の軽減、ならびに、網膜裂隙または滲出プロセスのいずれに起因するものであれ、液体の進入の基礎となる原因に対する治療および予防である。
【0006】
増殖性硝子体網膜症(PVR)は、網膜剥離手術の失敗の最も多い原因であり、全ての網膜剥離手術のうちの5~10%において起こる合併症である。PVRはまた、手術の非存在下で自然発生的に起こることがある。PVRは、目の繰返しの外科的処置後、目への重大な生理学的傷害後、例えば、外傷の他に、複数の裂孔、巨大裂孔、硝子体出血を併発した網膜剥離、またはぶどう膜炎を有する目において最も発生しやすい。PVRは、眼球開放傷害と関連付けられる網膜剥離後に特に多く、約50%の症例において起こる(Colyer M.,et al.Perforating globe injuries during operation Iraqi Freedom.Ophthalmology.2008;115:2087-2093(非特許文献1)、およびEliott D.et al.,Smoking is a risk factor for proliferative vitreoretinopathy after traumatic retinal detachment.Retina.2017;37:1229-1235(非特許文献2))。
【0007】
PVRはまた、外傷後眼手術の一般的な合併症である。この場合、細胞はまた、網膜の下にまたは上部上に制御不能に成長して、網膜前/網膜下膜形成、牽引性網膜剥離、および永久的な失明を誘発する。PVRは、眼球開放傷害を有する患者の40~60%において起こる。それゆえ、PVRは、軍事および軍事関連眼外傷に大いに関連する。Colyer,M.H.,et al.,Perforating globe injuries during operation Iraqi Freedom.Ophthalmology,2008.115(11):p.2087-93(非特許文献1)。
【0008】
現在、PVRのための内科的治療はない。PVRのための現行の標準治療としては、侵襲的かつ複雑な手術が挙げられ、これは多くの場合に失望させられる結果をもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Colyer M.,et al.Perforating globe injuries during operation Iraqi Freedom.Ophthalmology.2008;115:2087-2093
【文献】Eliott D.et al.,Smoking is a risk factor for proliferative vitreoretinopathy after traumatic retinal detachment.Retina.2017;37:1229-1235
【発明の概要】
【0010】
上記の臨床的な問題に対する解決策が本明細書において提供される。本発明の主題は、網膜円孔または網膜裂孔を含む対象において網膜色素上皮(RPE)細胞または網膜グリア細胞、マクロファージ、および線維芽細胞といった他の細胞の増殖または遊走または間葉転換を予防または低減するための方法であって、対象にRunt関連転写因子1(RUNX1)阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。例えば、方法は、網膜色素上皮細胞、角膜上皮細胞、結膜上皮細胞、および眼内の他の細胞の増殖、遊走、または間葉転換を予防または低減するために有用である。PVRは、眼科検査、眼底または光干渉断層法(OCT)の間に硝子体中の細胞成長、膜および帯の観察により診断される。本明細書に記載の方法および組成物はまた、増殖性硝子体網膜症および上皮間葉転換(EMT)と関連付けられる他の状態の治療のためのRUNX1阻害のために有用である。したがって、本発明は、網膜円孔または網膜裂孔を含む対象において網膜色素上皮(RPE)細胞の増殖または遊走を予防または低減するための組成物であって、RUNX1の阻害剤を含む、組成物、例えば、該阻害剤と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物を包含する。賦形剤は、薬物または他の活性物質のためのビヒクルまたは媒体として働く不活性物質である。
【0011】
態様では、対象は増殖性硝子体網膜症(PVR)を含む。他の局面では、対象は網膜剥離を含み、網膜剥離は、裂孔原性網膜剥離、滲出性剥離、または牽引性網膜剥離を含む。
【0012】
態様では、RUNX1阻害剤は、RUNX1の発現および/または活性を減少させる。RUNX1阻害剤は小分子または阻害核酸を含んでもよい。局面では、阻害核酸は、RNA干渉剤(RNAi)または阻害タンパク質を発現/コードするRNAを含む。特定の局面では、RNAiはsiRNAを含む。他の局面では、RUNX1阻害剤は小分子である。態様では、小分子は、式I:
の構造を含む。
【0013】
他の態様では、式IのRUNX1小分子はRo5-3335を含む。態様では、小分子阻害剤は、式III:
の構造を含む。
【0014】
他の態様では、式IIIのRUNX1小分子はRo24-7429を含む。他の態様では、RUNX1小分子阻害剤は、式V:
の構造を含む。
【0015】
態様では、式Vの小分子はレナリドミドを含む。他の例では、方法は、メトトレキサートを投与することをさらに含む。
【0016】
態様では、RUNX1阻害剤は組成物へと製剤化されてもよい。他の態様では、組成物は、溶液、懸濁液、半液体、エマルション、軟膏、クリーム、含泡ゲル、粉末または制御放出/持続放出製剤として製剤化されてもよい。
【0017】
局面では、組成物は、局所的にまたは硝子体内注射により投与される。
【0018】
他の局面では、組成物は、一眼当たり約0.001mg~約10mgの阻害剤の濃度で目に投与されてもよい。
【0019】
態様では、組成物は、一眼当たり約50μL~約100μLの量で対象の目に投与されてもよい。
【0020】
さらなる態様では、組成物は抗炎症剤をさらに含んでもよく、例えば、RUNX1阻害剤が投与され、そして抗炎症剤が抗炎症剤の前、後、または並行して投与されるといった、併用療法治療アプローチであってもよい。態様では、抗炎症剤は、ステロイドまたは非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID)を含む。例えば、抗炎症剤は、プレドニゾロンアセテート、ジクロフェナクナトリウム、またはその組合せを含む。
【0021】
さらなる局面では、阻害剤は、約0.001%w/v~約100%w/vの濃度であってもよい。
【0022】
治療される対象は、好ましくは、そのような治療を必要とする哺乳動物であり、例えば、本明細書に記載の1つまたは複数の障害または疾患を有すると診断されている、患っている/有する、または発生するリスクがある。哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、またはブタであり得る。好ましい態様では、哺乳動物はヒトである。
【0023】
他の局面では、対象は、異常な血管新生を有すると診断されていない。他の局面では、対象は、小血管疾患を有すると診断されていない。
【0024】
局面では、対象は、手術を受けていない。追加の局面では、阻害剤は、手術の前、手術の間、または手術の後に投与されてもよい。手術は、網膜剥離手術、緑内障手術、角膜手術、白内障手術、または目の任意の侵入手術(penetrating surgery)を含んでもよい。他の局面では、対象は、目への外傷を患っている。
【0025】
対象において網膜および眼細胞の異常な上皮間葉転換(EMT)を診断するための方法であって、前記対象からの試験試料を提供する段階(例えば、眼手術を介して)、試験試料中のrunt関連転写因子1(RUNX1)タンパク質またはmRNAのレベルをアッセイする段階、および、それにより、RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが正常対照と比較して試験試料中で上昇している場合に、対象が網膜細胞の異常なEMTを有すると診断する段階を含む、方法もまた本明細書において提供される。態様では、網膜細胞の異常な上皮間葉転換の診断は、臨床検査またはイメージングにより行われてもよい。そのような方法はまた、PVRおよび/または障害の重症度の指標用のバイオマーカーとしてRUNX1レベル、例えば、発現のレベルを測定するために使用されてもよい。方法はまた、治療の効果/有効性をモニターするために有用である。
【0026】
態様では、RUNX1のレベルは、ELISA、Q-RT-PCR、ウエスタンブロット解析、免疫組織化学、または免疫蛍光を使用して測定されてもよい。他の態様では、対象からの試験試料は、眼手術の間に得られてもよい。
【0027】
対象において増殖性硝子体網膜症(PVR)を治療するまたはその重篤度を低減するための方法であって、PVRを含む対象を同定する段階、および前記対象にrunt関連転写因子1(RUNX1)阻害剤を投与する段階を含む、方法もまた本明細書において提供される。
【0028】
本明細書に開示される各態様は、他の開示される態様のそれぞれに適用可能であると想定される。したがって、本明細書に記載の様々な要素の全ての組合せは本発明の範囲内である。
【0029】
疾患(例えば、増殖性硝子体網膜症(PVR)の他に、本明細書に記載の多数の他の障害、例えば、病理学的眼線維症、または病理学的眼増殖を含む疾患)が、該疾患を有すると診断された対象において進行しているかどうかをモニターする方法もまた本明細書に記載される。方法は、前記対象においてRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルを定期的に決定する段階、およびRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが経時的に増加している場合に、疾患が悪化していると同定する段階、RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが経時的に減少している場合に、疾患が改善していると同定する段階、RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが経時的に同じまたはほぼ同じままである場合に、疾患が悪化も改善もしていないと同定する段階を含み、RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルを決定する段階は、前記対象からの試験試料を提供すること、および試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルをアッセイすることを含む。
【0030】
対象において増殖性硝子体網膜症(PVR)を診断するための方法であって、前記対象からの試験試料を提供する段階、試験試料中のrunt関連転写因子1(RUNX1)タンパク質またはmRNAのレベルをアッセイする段階、およびRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが正常対照と比較して試験試料中で上昇している場合に、対象が異常なPVRを有すると診断する段階を含む、方法が本明細書に記載される。
【0031】
療法が対象において増殖性硝子体網膜症(PVR)を含む疾患を低減または改善したかどうかを同定するための方法であって、前記対象からの療法前試験試料を提供する段階、療法前試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAの療法前レベルをアッセイする段階、療法を対象に施す段階、前記対象からの療法後試験試料を提供する段階、療法後試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAの療法後レベルをアッセイする段階、および療法後試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが療法前試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルより低い場合に、療法が前記疾患を低減または改善したと同定する段階を含む、方法もまた本明細書において提供される。
【0032】
他の例では、対象の眼内の上皮間葉転換(EMT)を起こしている細胞の増殖および遊走を低減するための方法であって、runt関連転写因子1(RUNX1)阻害剤を対象に投与する段階を含む、方法が本明細書に記載される。態様では、EMT関連疾患は、病理学的眼線維症、増殖、結膜線維症、眼瘢痕性類天疱瘡、角膜瘢痕化、角膜上皮下方成長、または異常術後線維症を含む。いくつかの例では、阻害剤は、緑内障手術、白内障手術、またはレーザー補助インサイチュー角膜曲率形成術(LASIK)の間または後に投与される。他の例では、阻害剤は、眼内手術の間または後に投与される。
【0033】
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様に関する以下の記載、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。他に定義されなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。
[本発明1001]
網膜円孔または網膜裂孔を含む対象において網膜色素上皮(RPE)細胞の増殖または遊走を予防または低減するための方法であって、runt関連転写因子1(RUNX1)阻害剤を含む組成物を対象に投与する段階を含む、方法。
[本発明1002]
対象が増殖性硝子体網膜症(PVR)を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
対象が網膜剥離を含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
網膜剥離が、裂孔原性網膜剥離、滲出性剥離、または牽引性網膜剥離を含む、本発明1003の方法。
[本発明1005]
RUNX1阻害剤が、RUNX1の発現および/または活性を減少させる、本発明1001の方法。
[本発明1006]
RUNX1阻害剤が小分子または阻害核酸を含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
阻害核酸が、RNA干渉剤(RNAi)または阻害タンパク質を発現するRNAを含む、本発明1006の方法。
[本発明1008]
RUNX1阻害剤が小分子である、本発明1006の方法。
[本発明1009]
小分子が、式I:
の構造を含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
式Iの小分子がRo5-3335を含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
小分子が、式III:
の構造を含む、本発明1008の方法。
[本発明1012]
式IIIの小分子がRo24-7429を含む、本発明1011の方法。
[本発明1013]
小分子が、式V:
の構造を含む、本発明1008の方法。
[本発明1014]
式Vの小分子がレナリドミドを含む、本発明1013の方法。
[本発明1015]
メトトレキサートをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1016]
組成物が、溶液、懸濁液、半液体、エマルション、軟膏、クリーム、含泡ゲル、粉末または制御放出/持続放出製剤として製剤化される、本発明1001の方法。
[本発明1017]
組成物が、局所的にまたは硝子体内注射により投与される、本発明1001の方法。
[本発明1018]
組成物が、一眼当たり約0.0001mg~約10mgの阻害剤の濃度で目に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1019]
組成物が、一眼当たり約50μL~約100μLの量で目に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1020]
組成物が抗炎症剤をさらに含み、抗炎症剤がステロイドまたは非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID)を含む、本発明1001の方法。
[本発明1021]
阻害剤が約0.001%w/v~約100%w/vの濃度である、本発明1001の方法。
[本発明1022]
対象がヒトである、本発明1001の方法。
[本発明1023]
対象が、異常な血管新生を有すると診断されていない、本発明1001の方法。
[本発明1024]
対象が、小血管疾患を有すると診断されていない、本発明1001の方法。
[本発明1025]
対象が手術を受けていない、本発明1001の方法。
[本発明1026]
阻害剤が、手術の前、手術の間、または手術の後に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1027]
手術が網膜剥離手術を含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
対象が、目への外傷を患っている、本発明1001の方法。
[本発明1029]
対象において網膜細胞の異常な上皮間葉転換(EMT)を診断するための方法であって、
(a)前記対象からの試験試料を提供する段階、
(b)試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルをアッセイする段階、および、
(c)RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが正常対照と比較して試験試料中で上昇している場合に、対象が網膜細胞の異常なEMTを有すると診断する段階
を含む、方法。
[本発明1030]
対象においてPVRを治療する、またはPVRの重篤度を低減するための方法であって、
(a)PVRを含む対象を同定する段階、および
(b)前記対象にRUNX1阻害剤を投与する段階
を含む、方法。
[本発明1031]
PVRを含む疾患を有すると診断された対象において前記疾患が進行しているかどうかをモニターするための方法であって、
前記対象においてRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルを定期的に決定する段階、および
(1)RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが経時的に増加している場合に、前記疾患が悪化していると同定する段階、
(2)RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが経時的に減少している場合に、前記疾患が改善していると同定する段階、
(3)RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが経時的に同じまたはほぼ同じままである場合に、前記疾患が悪化も改善もしていないと同定する段階
を含み、
RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルを決定する段階が、
(a)前記対象からの試験試料を提供すること、および
(b)試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルをアッセイすること
を含む、方法。
[本発明1032]
対象においてPVRを診断するための方法であって、
(a)前記対象からの試験試料を提供する段階、
(b)試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルをアッセイする段階、および、
(c)RUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが正常対照と比較して試験試料中で上昇している場合に、対象が異常なPVRを有すると診断する段階
を含む、方法。
[本発明1033]
療法が、対象において、PVR、病理学的眼線維症、または病理学的眼増殖を含む疾患を低減または改善したかどうかを同定するための方法であって、
(a)前記対象からの療法前試験試料を提供する段階、
(b)療法前試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAの療法前レベルをアッセイする段階、
(c)対象に療法を施す段階、
(d)前記対象からの療法後試験試料を提供する段階、
(e)療法後試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAの療法後レベルをアッセイする段階、および
(f)療法後試験試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルが、療法前試料中のRUNX1タンパク質またはmRNAのレベルより低い場合に、療法が前記疾患を低減または改善したと同定する段階
を含む、方法。
[本発明1034]
対象の眼内においてEMTを起こしている細胞の増殖および遊走を低減する方法であって、対象にRUNX1阻害剤を投与する段階を含む、方法。
[本発明1035]
EMT関連疾患を治療または予防する方法であって、対象にRUNX1阻害剤を投与する段階を含み、
EMT関連疾患が、病理学的眼線維症関連増殖、結膜線維症、眼瘢痕性類天疱瘡、角膜瘢痕化、角膜上皮下方成長、または異常術後線維症を含む、
方法。
[本発明1036]
前記阻害剤が、眼内手術の間または後に投与される、本発明1035の方法。
[本発明1037]
前記阻害剤が、緑内障手術、白内障手術、またはレーザー補助インサイチュー角膜曲率形成術(LASIK)の間または後に投与される、本発明1035の方法。
[本発明1038]
網膜円孔または網膜裂孔を含む対象において網膜色素上皮(RPE)細胞の増殖または遊走を予防または低減するための組成物であって、RUNX1阻害剤を含む、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1Aは、DAPIを用いて対比染色された陰性対照の免疫蛍光染色を示す画像である。
図1Bは、RUNX1の染色の陰性対照の免疫蛍光染色を示す画像である。
図1Cは、
図1Aおよび
図1Bの免疫蛍光染色を示すマージした画像である。
図1Dは、DAPIを用いて対比染色されたRUNX1一次抗体の免疫蛍光染色を示す画像である。
図1Eは、RUNX1の免疫蛍光染色を示す画像である。
図1Fは、
図1Dおよび
図1Eの免疫蛍光染色を示すマージした画像である。
【
図2】
図2Aは、DAPIを用いて対比染色された、患者試料5(PVRを有する患者から得られた膜)の免疫蛍光染色を示す画像である。
図2Bは、患者試料5におけるRUNX1の免疫蛍光染色を示す画像である。
図2Cは、
図2Aおよび
図2Bのマージした画像である。
図2Dは、DAPIを用いて対比染色された、患者試料3の免疫蛍光染色を示す画像である。
図2Eは、患者試料3におけるRUNX1の免疫蛍光染色を示す画像である。
図2Fは、
図2Dおよび
図2Eのマージした画像である。
図2Gは、DAPIを用いて対比染色された患者試料11(PVRを有する患者から得られた膜)の免疫蛍光染色を示す画像である。
図2Hは、患者試料11におけるRUNX1の免疫蛍光染色を示す画像である。
図2Iは、
図2Gおよび
図2Hのマージした画像である。
図2A~2Iは、RUNX1がいくつかの患者ドナーからのヒトPVRからの細胞(
Cells from human
PVR;C-PVR)中に存在することを指し示した。
【
図3】
図3Aは、ヒトPVR膜(例えば、PVRを有する患者)におけるRUNX1の免疫蛍光染色を示す画像である。
図3Bは、DAPIを用いて対比染色されたヒトPVR膜におけるRUNX1の免疫蛍光染色を示す画像である。
図3Cは、DAPIを用いて対比染色された陰性対照の免疫蛍光染色を示す画像である。
図3Dは、DAPIを用いて対比染色された陰性対照の免疫蛍光染色を示す画像である。
【
図4】
図4Aは、DAPIを用いて対比染色された、PVRを有する患者からの膜の、免疫蛍光染色を示す画像である。
図4Bは、RUNX1を用いて染色された、PVRを有する患者からの膜の、免疫蛍光染色を示す画像である。
図4Cは、
図4Aおよび
図4Bのマージした画像である。
図4Dは、DAPIを用いて対比染色された、PVRを有する患者からの膜の、免疫蛍光染色を示す画像である。
図4Eは、RUNX1を用いて染色された、PVRを有する患者からの膜の、免疫蛍光染色を示す画像である。
図4Fは、
図4Dおよび
図4Eのマージした画像である。
図4A~4Fは、PVRにおけるRUNX1の染色の追加の画像を示した。
【
図5】
図5Aは、PVRを有する患者から得られた膜においてヘマトキシリンを用いて対比染色された、対照のヒトPVR膜の免疫組織化学染色を示す画像である。
図3Bは、PVRを有する患者から得られた膜においてヘマトキシリンを用いて対比染色された、RUNX1のヒトPVR膜の免疫組織化学染色を示す画像である。
【
図6】
図6は、siRNAがC-PVR細胞中のRUNX1の発現を効果的にノックダウンしたことを示す棒グラフである。siScrambleと比較してsiRUNX1を用いたトランスフェクションの48時間後にC-PVR細胞中のRUNX1の遺伝子発現において有意な低減が観察された。
【
図7】
図7Aは、非処理対照のDAPI染色を示す画像である。
図7Bは、非処理対照のRUNX1染色を示す画像である。
図7Cは、
図7Aおよび
図7Bのマージした画像である。
図7Dは、siScrambleのDAPI染色を示す画像である。
図7Eは、siScrambleのRUNX1染色を示す画像である。
図7Fは、
図7Eおよび
図7Fのマージした画像である。
図7Gは、siRUNX1のDAPI染色を示す画像である。
図7Hは、siRUNX1のRUNX1染色を示す画像である。
図7Iは、
図7Gおよび
図7Hのマージした画像である。Scramble(
図7D~7F)および非処理対照(
図7A~7C)と比較した、RUNX1(
図7G~7I)の、siRNAノックダウンの48時間後のKi67染色は、C-PVR細胞の細胞数および増殖能力の有意な低減を示した。
【
図8】
図8は、siRUNX1、siScrambleおよび非処理細胞からの増殖の定量化を示す棒グラフである。siScrambleおよび非処理細胞と比較してsiRUNX1を用いたトランスフェクションの48時間後にKi67陽性増殖性細胞の数の有意な低減が観察された。グラフは、
図7A~7Fからの画像の定量化を示す。
【
図9】
図9Aは、処理の48時間後の対照(ビヒクル処理)Ki67染色を示す画像である。
図9Bは、150μMのRUNX1阻害剤Ro5-3335を用いた処理の48時間後のKi67染色を示す画像である。C-PVR細胞の細胞数および増殖能力における有意な低減が観察された。
図9Cは、
図9Aおよび
図9Bからの画像の定量化を示す棒グラフである。
【
図10】
図10Aは、非処理対照のDAPI染色を示す画像である。
図10Bは、非処理対照のKi67染色を示す画像である。
図10Cは、
図10Aおよび
図10Bのマージした画像である。
図10Dは、RUNX1阻害剤Ro5-3335を用いて処理した細胞のDAPI染色を示す画像である。
図10Eは、RUNX1阻害剤Ro5-3335を用いて処理した細胞のKi67染色を示す画像である。
図10Fは、
図10Dおよび
図10Eのマージした画像である。
図10A~10Eは
図9Aおよび
図9Bより高い倍率であり、C-PVR細胞の細胞数および増殖能力における有意な低減を示す。
【
図11】
図11Aは、対照細胞の処理の7日後のARPE-19細胞を示す明視野画像である。
図11Bは、TGFβ2、TNFα、およびIL-6(Preprotec)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞を示す明視野画像である。
図11Aおよび
図11Bにおいて、対照(
図11A)と比較した上皮間葉転換(
図11B)が示された。
【
図12】
図12は、TGFβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞の免疫蛍光染色画像である。対照と比較して、処理において、上皮マーカー(サイトケラチン-中央パネル)の低減が観察され、間葉マーカー(平滑筋アクチン-右パネル)の増加が観察された。これは、組合せ処理によりARPE-19細胞はEMTを起こすことを示した。
【
図13】
図13は、TGFβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)を用いた処理の7日後の成熟ARPE-19細胞の免疫蛍光染色画像である。対照と比較して、処理において、上皮マーカーであるサイトケラチン(中央パネル)および閉鎖帯-1(ZO-1)(右パネル)の低減が観察された。ZO-1編成の喪失はEMTのマーカーである。したがって、データは、組合せ処理はZO-1分布にも影響を及ぼすことを示した。
【
図14】
図14Aは、非処理対照の処理の7日後の成熟ARPE-19細胞を示す免疫蛍光画像である。
図14Bは、TGFβ1を用いた処理の7日後の成熟ARPE-19細胞を示す免疫蛍光画像である。
図14Cは、TGFβ2を用いた処理の7日後の成熟ARPE-19細胞を示す免疫蛍光画像である。
図14Dは、TGFβ2、TNFα、およびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後の成熟ARPE-19細胞を示す免疫蛍光画像である。対照と比較して、処理において、上皮マーカー閉鎖帯-1の低減が観察された。
【
図15】
図15は、TGFβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞の免疫蛍光染色画像である。対照と比較して、処理において、RUNX1発現の有意な増加が観察された。これは、RUNX1発現はEMTと共に増加することを指し示した。
【
図16】
図16は、TGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞の免疫蛍光染色である。対照と比較して、処理において、RUNX1発現の有意な増加が観察された。
図16は、
図13からの拡大されたデータである。
【
図17】
図17は、TGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞の免疫蛍光染色画像である。対照と比較して、処理において、RUNX1発現の有意な増加(中央パネル)および上皮マーカーサイトケラチンの低減(マージ-右パネル)が観察された。これは、RUNX1の増加した発現が、ZO-1の分布の変化が存在する3週の時点においても存在することを示した。
【
図18】
図18Aは、対照を用いて処理した初代外植片培養物を示す画像である(4Xの倍率)。
図18Bは、150μMのRUNX1阻害剤Ro5-3335を用いて処理した初代外植片培養物を示す画像である(4Xの倍率)。
図18Cは、対照を用いて処理した初代外植片培養物を示す画像である(10Xの倍率)。
図18Dは、RUNX1阻害剤Ro5-3335を用いて処理した初代外植片培養物を示す画像である(10Xの倍率)。4日後に成長を示さなかったRUNX1阻害剤を用いて処理した外植片と比較して、対照外植片から成長が観察された。
【
図19】
図19Aおよび
図19Bは、PVRを有する患者から得られた膜(ケース1「PVR 01」およびケース3「PVR 03」)におけるRUNX1およびDAPIを用いた対比染色の免疫蛍光染色画像である。これらの画像は、RUNX1発現は、PVRを有する異なるドナーからの膜における共通の特徴であることを示した。スケールバー-400ミクロン。
【
図20】
図20Aおよび
図20Bは、PVRを有する患者から得られた膜の連続切片におけるKi67(抗原Ki-67またはKi-67またはMKI67としても公知)(下、中央、
図20B)、RUNX1(上、中央、
図20A)およびDAPIを用いた対比染色の免疫蛍光染色画像である。これらの画像は、Ki67の発現により実証されるように、PVR膜内のRUNX1を発現する細胞の集団は活発に増殖することを示した。スケールバー-400ミクロン。
【
図21】
図21Aは、RUNX1タンパク質発現レベルは成長因子誘導性上皮間葉転換(EMT)において増加したことを指し示すイムノブロットを示す画像である。RUNX1タンパク質の増加は、処理の3および7日後に、成長因子:トランスフォーミング増殖因子ベータ2(TGFβ2)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、ならびにTGFβ2、TNFα、およびインターロイキン-6(IL-6)を含む組合せ処理を用いた処理において観察された。
図21Bは、RUNX1およびrunt関連転写因子2(RUNX2)RNA発現の増加が、処理の3および7日後に、成長因子(TGFβ2、TNFα、およびIL-6、各10ng/mL)を用いた処理において観察されたことを指し示す棒グラフである。(「対照」は対照を示す)。*P<0.05、**P<0.01、****P<0.0001。
【
図22】
図22は、RUNX1阻害剤(Ro5-3335)と共にTGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せを用いた処理の3日後のARPE-19細胞を示す明視野画像である。150μMのRo5-3335は、ビヒクル処理(左パネル)と比較して、EMTを示さなかったか、または低減したEMTを示した(右パネル)。EMTは、細胞形状などの形態学的変化により決定した。このデータは、Ro5-3335を使用するRUNX1阻害はEMTの阻害を結果としてもたらすことを実証した。スケールバー-400ミクロン。
【
図23】
図23Aは、TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/mL)を用いた処理の3日後のARPE-19細胞の免疫蛍光染色画像である。上皮マーカー(サイトケラチン-右パネル)の低減ならびにフィブロネクチン(中央パネル)および平滑筋アクチン(左パネル)などの間葉マーカーの増加として評価した、RUNX1小分子阻害剤(Ro5-3335)を用いない処理も示す。スケールバー-200ミクロン。
図23Bは、TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/mL)を用いた処理の3日後のARPE-19細胞の免疫蛍光染色画像である。データは、RUNX1小分子阻害剤(Ro5-3335)を用いた処理がEMTを予防することを示し、EMTは、上皮マーカー(サイトケラチン-右パネル)の低減ならびにフィブロネクチン(中央パネル)および平滑筋アクチン(左パネル)などの間葉マーカーの増加として評価した。スケールバー-200ミクロン。
【
図24】
図24は、TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せを用いた処理の7日後のC-PVR細胞の明視野画像であり、対照(左上の写真)と比較してEMTを示した。EMTは、組合せ処理における、より細長の線維芽細胞様形状の細胞を有する細胞形状などの形態学的変化として評価した。この実験は、TNFα、TGFβ2およびIL-6はヒト増殖性硝子体網膜症の膜に由来するC-PVR細胞においてEMTを誘導することを示した。スケールバー-400ミクロン。
【
図25】
図25は、TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後のC-PVR細胞の免疫蛍光染色画像であり、対照(上行)と比較して、処理において、上皮マーカー(サイトケラチン-中央パネル)の低減および間葉マーカー(平滑筋アクチン-右パネル)の増加を示した。この実験は、これらの成長因子はヒト増殖性硝子体網膜症からのC-PVR細胞においてEMTを誘導することを実証した。スケールバー-200ミクロン。
【
図26】
図26Aは、RUNX1発現レベルが成長因子誘導性EMTにおいて増加したことを示す棒グラフである。成長因子TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ処理を用いた処理において処理の7日後に、間葉マーカー、N-カドヘリン、平滑筋アクチンおよびビメンチンの増加ならびに上皮マーカー、オクルディンの減少と共にRUNX1 RNAの増加が観察された。
図26Bは、RUNX1、N-カドヘリン(間葉マーカー)、Snail、およびTwist(SnailおよびTwistはEMT転換マーカーである)のタンパク質の増加が、成長因子を用いた処理においてローディングコントロールとして使用したβ-アクチンと比較して、処理の7日後に観察されたことを示すイムノブロットの画像である。****P<0.0001。
【
図27】
図27Aは、ビヒクル処理と比較した、100μM、50μMおよび25μMのRUNX1阻害剤(Ro5-3335)、ならびに400μM、100μMおよび10μMのメトトレキサートを単独でまたは組合せで用いた処理の24時間後のCyQuant細胞増殖アッセイの結果を示す棒グラフである。データは、24時間時に生細胞のパーセントの有意な低減を示した。この実験は、RUNX1阻害はARPE-19細胞の増殖の阻害においてメトトレキサートを用いた処理より有効であることを示した。データはまた、RUNX1阻害はメトトレキサートのような処理との組合せにおいてアジュバントとして使用することができることを示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
図27Bは、ビヒクル処理と比較した、100μM、50μMおよび25μMのRUNX1阻害剤(Ro5-3335)、ならびに400μM、100μMおよび10μMのメトトレキサートを単独でまたは組合せで用いた処理の48時間後のCyQuant細胞増殖アッセイの結果を示す棒グラフである。データは、48時間時に生細胞のパーセントの有意な低減を示した。この実験は、RUNX1阻害はARPE-19細胞の増殖の阻害においてメトトレキサートを用いた処理より有効であることを示した。データはまた、RUNX1阻害はメトトレキサートのような処理との組合せにおいてアジュバントとして使用することができることを示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図28】
図28Aは、ビヒクル処理と比較した、100μM、50μMおよび25μMのRUNX1阻害剤(Ro5-3335)、ならびに400μM、100μMおよび10μMのメトトレキサートを単独でまたは組合せで用いた処理の24時間後の細胞増殖アッセイの結果を示す棒グラフである。データは、24時間時に生細胞のパーセントの有意な低減を示した。この実験は、RUNX1阻害はC-PVR細胞の増殖の阻害においてメトトレキサートを用いた処理より有効であることを示した。データはまた、RUNX1阻害はメトトレキサートのような処理との組合せにおいてアジュバントとして使用することができることを示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
図28Bは、ビヒクル処理と比較した、100μM、50μMおよび25μMのRUNX1阻害剤(Ro5-3335)、ならびに400μM、100μMおよび10μMのメトトレキサートを単独でまたは組合せで用いた処理の48時間後の細胞増殖アッセイの結果を示す棒グラフである。データは、48時間時に生細胞のパーセントの有意な低減を示した。この実験は、RUNX1阻害はC-PVR細胞の増殖の阻害においてメトトレキサートを用いた処理より有効であることを示した。データはまた、RUNX1阻害はメトトレキサートのような処理との組合せにおいてアジュバントとして使用することができることを示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
【
図29】
図29はARPE-19細胞の明視野画像である。siRNAを使用するRUNX1ノックダウンは、非トランスフェクト(右上)およびsi-scramble(右中央)と比較して、TGFβ2、TNFαおよびIL-6を含む成長因子カクテルを用いて処理した細胞におけるEMTの阻害において効果的であった。EMTは、細胞形状などの形態学的変化により決定した。このデータは、siRNAを使用するRUNX1阻害はEMTの阻害を結果としてもたらすことを実証した。スケールバー-400ミクロン。
【
図30】
図30Aは、TGFβ2およびTNFαを用いて処理したARPE-19細胞におけるRUNX1タンパク質レベルを示すイムノブロットの画像である。これらのデータは、これらの各成長因子はRUNX1のタンパク質発現を誘導することを示した。データはまた、siRNA処理はこれらの各成長因子により単独で誘発されるRUNX1の誘導を効率的に低減することを示した。これらのデータは、RUNX1阻害はPVRに関する限りこれらの成長因子の効果を制限するために使用できることを実証した。
図30Bは、IL-6またはこれらの成長因子の組合せ(組合せはTGFβ2、TNFα、およびIL-6を含む)を用いて処理したARPE-19細胞におけるRUNX1タンパク質レベルを示すイムノブロットの画像である。これらのデータは、これらの各成長因子はRUNX1のタンパク質発現を誘導すること、およびそのような誘導は成長因子を組み合わせた場合より強いことを示した。siRNA処理はこれらの各成長因子により単独でまたは組合せで誘発されるRUNX1の誘導を効率的に低減することも示された。これらのデータは、RUNX1阻害はPVRに関する限りこれらの成長因子の効果を制限するために使用できることを実証した。
【
図31】
図31は、RUNX1ノックダウンの72時間後ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せを用いた処理の48時間後のC-PVR細胞の一連の明視野画像であり、EMTを示さないか、または非トランスフェクト(右上)およびScramble(右中央)と比較して低減されたEMTを示した。EMTは、細胞形状などの形態学的変化により決定した。これらのデータは、siRNAを使用するRUNX1阻害はEMTの阻害を結果としてもたらすことを実証する。スケールバー-1000ミクロン。
【
図32】
図32Aは、150μmのRUNX1阻害剤Ro5-3335を用いて処理したヒトPVR外植片において、アポトーシス、より少ない分岐形成、および分岐のより早い退行が観察されたことを指し示す一連の画像である。一次組織からの分岐の剥離もまた観察された。上パネルはDMSO(ビヒクル)を用いて処理した外植片を示し、下パネルはRo5-3335を用いた処理後の外植片を示した。
図32Bは、対照(DMSO)およびRo5-3335を用いた24時間および72時間後の伸長(または分岐)の数を指し示す棒グラフである。
【
図33】
図33Aは、150μmのRUNX1阻害剤Ro5-3335を用いて処理した別のヒトPVR外植片において、アポトーシス、より少ない分岐形成、および分岐のより早い退行が観察されたことを指し示す一連の画像である。一次組織からの分岐の剥離もまた観察された。上パネルはDMSO(ビヒクル)を用いて処理した外植片を示し、下パネルはRo5-3335を用いた処理後の外植片を示した。
図33Bは、対照(DMSO)およびRo5-3335を用いた24時間および72時間後の伸長(または分岐)の数を指し示す棒グラフである。
【
図34】
図34Aは、RUNX1阻害剤Ro5-3335は外植片モデルにおいてヒトPVR膜の成長を低減したことを指し示す一連の画像である。メトトレキサート+Ro5-3335を用いて相乗効果が観察された。より少ない分岐、分岐のより早い退行、およびアポトーシスが RUNX1阻害剤(150μMのRo5-3335)、またはRo5-3335(150μM)とメトトレキサート(400μM)との組合せを用いて処理したヒトPVR外植片において観察された。一次組織からの分岐の剥離もまた単独でのRo-3335において観察されたが、薬物の組合せ(相乗)効果は驚くべきであり、よりいっそう顕著であった。上パネルはDMSO(ビヒクル)を用いて処理した外植片を示し、中央パネルはRo5-3335を用いた処理後の外植片を示し、下パネルは組合せ処理(Ro5-3335およびメトトレキサート)の効果を示した。
図34Bは、対照(DMSO)、Ro5-3335、およびメトトレキサートとRo5-3335との組合せを用いた24時間および72時間後の伸長(または分岐)の数を指し示す棒グラフである。
【
図35】
図35Aは、40nMおよび72時間においてレナリドミドがC-PVR細胞の増殖を阻害したことを指し示す棒グラフである。データをビヒクル処理と比較したところ、72時間時において生細胞のパーセントの有意な低減を示した。*P<0.05。
図35Bは、80nMおよび72時間においてレナリドミドはC-PVR細胞の増殖を阻害したことを指し示す棒グラフである。データをビヒクル処理と比較したところ、72時間時において生細胞のパーセントの有意な低減を示した。*P<0.05。
図35Cは、40nMおよび48時間においてレナリドミドはC-PVR細胞の増殖を阻害したことを指し示す棒グラフである。*P<0.05。
図35Dは、80nMおよび48時間においてレナリドミドはC-PVR細胞の増殖を阻害したことを指し示す棒グラフである。*P<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
本開示は、網膜剥離障害(例えば、増殖性硝子体網膜症、PVR)を治療する方法に関する。網膜剥離の重篤な合併症であり、一般的に眼外傷と関連付けられるPVRのための内科的(例えば、非外科的)治療または管理は現在存在しない。PVRの現行の管理としては、目から直接的に膜を除去する、潜在的にリスクがありかつ侵襲的な外科的方法が挙げられる。本組成物および方法は、PVRにおいて見出されるような網膜色素上皮細胞、グリア細胞、炎症細胞、および間葉細胞の増殖または遊走に悩まされる疾患の治療のために有用である。
【0036】
本明細書に記載の開示は、外科的に除去されたヒトPVR膜、およびそれに由来する細胞(C-PVR)においてRunt関連転写因子1(RUNX1)は高発現されるという驚くべき発見に基づく。RUNX1は、胚発生および正常な血管新生の間の内皮細胞由来血管形成といった他の生物学的プロセスに関係するものとされてきた。しかしながら、PVR(または網膜細胞におけるEMT)におけるRUNX1の役割は以前に記載されていない。本明細書の開示は、RUNX1の特異的発現を強調するためのリソースとしてのおよびRUNX1阻害に対する効果を研究するための、実際の患者由来のPVR膜を記載する。現行の方法は、PVRの病理発生に関与すると考えられる代理細胞種に依拠する。
【0037】
さらに、RUNX1発現は、上皮間葉転換(EMT)を起こしている網膜色素上皮(RPE)細胞のインビトロモデルにおいて増進される。siRNAまたは小分子阻害剤を介したRUNX1の阻害は、C-PVR培養物の増殖および遊走を有意に低減した。RUNX1阻害はまた、培養物中のヒトPVR膜外植片の成長を有意に低減した。
【0038】
さらに、RUNX1阻害は、ARPE-19およびC-PVR培養物を使用する2つのインビトロモデルにおいてEMTを有意に低減した。EMTの低減は、形態学的変化、上皮マーカーの増加した発現、および間葉マーカーの減少した発現により特徴付けられた。
【0039】
したがって、RUNX1を標的とすることによりPVRおよびEMTと関連付けられる他の状態を予防および治療する方法が、本明細書において提供される。これは、膜の特定の内科的管理を可能とし、かつそれらの退行を引き起こし、それらの成長を妨害して、手術の必要性を潜在的に回避した。
【0040】
網膜剥離障害
網膜剥離は、神経感覚網膜がその下の網膜色素上皮層から分離する目の障害である。機序は、最も一般的には、目の中の液体が網膜の後ろに行くことを可能とする網膜中の裂隙を伴う。網膜中の裂隙は、後部硝子体剥離、目への傷害、または目の炎症から起こり得る。他のリスク因子としては、近視および以前の白内障手術が挙げられる。典型的には、診断は、検眼鏡を用いて目の後ろを見ることまたは超音波のいずれかにより達成される。
【0041】
症状としては、浮遊物の数の増加、閃光、および視野の一部分上の遮蔽として説明されることがある視野の外側部分の悪化が挙げられる。約7%の症例において両目が罹患する。治療を行わない場合、永久的な視覚喪失が起こることがある。網膜裂孔を有する患者において、その剥離を予防する努力としては、冷プローブを使用する寒冷療法またはレーザーを使用する光凝固が挙げられる。網膜剥離の治療は、時宜を得た方式で実行されるべきである。
【0042】
網膜剥離は、眼底写真撮影または検眼鏡検査により検査することができる。超音波は、眼科医による検査と類似の診断正確性を有する。最近のメタ解析は、救急部(ED)の目の超音波検査の診断正確性は高いことを示している。感度および特異性は97%~100%および83%~100%の範囲内であった。超音波で見た場合の網膜剥離の典型的な特徴は、「空飛ぶ天使のサイン」(flying angel sign)であり、それは、剥離した網膜が、Bモード、線形プローブ10MHzの下で固定点を有して動くことを示す。態様では、網膜剥離は、眼底検査により可視化されてもよい。代替的に、Bスキャンまたは広視野眼底写真撮影を使用して網膜剥離を可視化してもよい。
【0043】
網膜剥離は、1年当たり10,000人中0.6~1.8人が罹患する。約0.3%の人々は人生の何らかの時点において罹患する。60代または70代の人々において最も一般的であり、男性は女性より多く罹患する。長期アウトカムは、剥離の継続期間および黄斑が剥離したかどうかに依存する。黄斑が剥離する前に治療された場合、アウトカムは概して良好である。任意で、対象は、加齢黄斑変性症または眼血管新生疾患もしくは障害を含む何らかの他の眼障害を有すると診断も特徴付けもされていない。
【0044】
網膜が目の後ろから引き離される場合、それは網膜剥離である。典型的には、硝子体は、問題を引き起こすことなく網膜から離れるように動く。しかし、1つまたは複数の場所において網膜を裂くために充分な強さで硝子体が引かれて、網膜裂孔を引き起こすことがある。液体が網膜裂孔を通過して、網膜を持ち上げて目の後ろから離すことがある。硝子体分離、網膜裂孔、および網膜剥離の症状は類似しており、時に重なり合うことがある。患者は、切り離された硝子体分離とより一般的に関連付けられる浮遊物および閃光(光視)に気付くことがある。眼科医、検眼士、またはかかりつけ医は、症状がごく最近または突然の発症であり、かつ斑点のシャワーまたは「クモの巣」(cobweb)を伴う場合に、より深刻な問題を疑うことがある。いっそう大きな懸念となるのは、1つの視野の中心に向けて動く影として現れることがある周辺視覚の喪失である。
【0045】
さらに、網膜剥離において、網膜円孔が発生することがある。硝子体はコラーゲンの小さい鎖を用いて網膜に取り付けられているので、収縮する際に網膜に引き寄せられ得る。時に、この収縮は周辺において網膜の小片を裂いて、周辺網膜の円孔または裂孔を引き起こし得る。網膜のこの欠失した小片が黄斑にある場合、それは黄斑円孔と呼ばれる。さらに、硝子体収縮に起因する黄斑円孔の別の直接的な原因は、コラーゲン鎖が網膜に付着したままとなり、網膜上膜を形成する場合である。これらの膜は、黄斑の周囲で縮んで、黄斑が牽引から円孔を発生するのを引き起こし得る。網膜剥離は、一般的に、周辺網膜の裂孔/円孔から二次的に起こり、稀に黄斑円孔を形成する。
【0046】
他の局面では、少数の網膜剥離は、眼窩への鈍的打撃、穿通性外傷、および頭部振盪といった外傷の結果としてもたらされる。
【0047】
3種類の網膜剥離がある:
(1)裂孔原性網膜剥離-裂孔原性網膜剥離は、網膜中の裂隙(例えば、網膜裂孔)に起因して起こり、液体が硝子体空間から感覚網膜と網膜色素上皮との間の網膜下空間へと通過することを可能とする。網膜裂隙は円孔、裂孔および離断の3種類に分けられる。円孔は、特に格子状変性の区画内の網膜萎縮に起因して形成される。裂孔は、網膜硝子体の牽引に起因する。離断は非常に周辺的かつ外周的であり、牽引性または萎縮性のいずれかであり得る。萎縮性形態は、最も多くの場合、若年者の突発性離断として起こる。
(2)滲出性、漿液性、または続発性の網膜剥離-滲出性網膜剥離は、炎症、傷害または血管異常に起因して起こり、円孔、裂孔、または裂隙の存在なしに網膜下の液体の蓄積を結果としてもたらす。網膜剥離の評価において、滲出性剥離を除外することは不可欠である。なぜなら、手術により状況は良くならず悪化するからである。希少ではあるが、滲出性剥離は、網膜下の組織の層、すなわち脈絡膜上の腫瘍の成長により引き起こされ得る。このがんは脈絡膜黒色腫と呼ばれる。
(3)牽引性網膜剥離-牽引性網膜剥離は、傷害、炎症または血管新生により引き起こされる線維状(PVR膜から)または線維状血管組織(増殖性糖尿病網膜症などの血管新生障害から)が感覚網膜を網膜色素上皮から引っ張る場合に起こる。
【0048】
増殖性硝子体網膜症
増殖性硝子体網膜症(PVR)は、裂孔原性網膜剥離の合併症として発生し、そしてまた、眼外傷と一般的に関連付けられる臨床症候群である。PVRは、網膜剥離手術の失敗の最も一般的な原因であるが、網膜剥離を有する未治療の目において起こることもある。特に、PVRは、寒冷療法後、レーザー網膜復位術、気体網膜復位術、強膜内陥術、または硝子体切除術後、および様々な手術合併症後に、硝子体出血と共に起こり得る。PVRはまた、眼外傷(例えば、穿通性傷害)および長期化した炎症と関連付けられる他の状態の後に一般的である。
【0049】
PVRは、一次網膜剥離手術を受けている患者の約8~10%において起こり、裂孔原性網膜剥離の外科的修復の成功を阻む。PVRは、網膜を再取付けするための手術を用いて治療され得るが、手術の視覚に関するアウトカムは非常に不良である。PVRが進行性の場合、複雑な手術にもかかわらず、低視力が結果として生じる。
【0050】
病態生理学
PVRは、網膜表面上および硝子体ゲル内の網膜色素上皮(RPE)、グリア、または炎症性動員に由来する細胞の増殖または遊走により特徴付けられる。これらの細胞は分化転換し、収縮特性を呈するようになる。PVRのプロセスは、表面内層への妨害がある場合に開始し得る(例えば、後部硝子体剥離および局所的な網膜前膜形成または周辺部における網膜裂孔を通じて)。PVRプロセスは自己伝搬し、多くの場合、不適切な過剰な創傷治癒応答と考えられる。細胞増殖は、炎症性サイトカインおよび炎症細胞の流入を増加させ得る。
【0051】
態様では、本明細書に記載されるように、RPE細胞の増殖または遊走は、内部細胞収縮性タンパク質を通じておよび細胞外コラーゲンをもたらすことにより収縮特性を呈するそれらの分化転換を説明する。細胞は、倍加することおよび任意の利用可能な足場(例えば、網膜表面または残留硝子体ゲルの要素)に沿って増殖することができる。大規模収縮は、網膜のしわ、ひだ、裂孔、および牽引性網膜剥離に繋がり得る。
【0052】
裂孔原性網膜剥離の間に、硝子体液からの液体は網膜円孔に入る。網膜下空間中の液体の蓄積および網膜に対する硝子体の牽引力は、裂孔原性網膜剥離を結果としてもたらす。このプロセスの間に網膜細胞層は硝子体サイトカインと接触する。これらのサイトカインは、網膜色素上皮(RPE)が増殖および遊走する能力を誘発する。関与するプロセスは、RPE細胞による線維性創傷治癒に似ている。RPE細胞は上皮間葉転換(EMT)を起こし、硝子体中に遊走する能力を生じる。このプロセスの間にRPE細胞層-神経網膜結合およびRPE-ECM(細胞外マトリックス)接着は失われる。RPE細胞は遊走しながら線維性膜をもたらし、これらの膜は収縮して網膜を引っ張る。したがって、これは一次網膜剥離手術後の続発性網膜剥離に繋がる。
【0053】
RPE離解の間に、炎症が、PVRの発生において重要な役割を果たすことがある。サイトカインIL-6、IL-1、TNF-αおよびIFN-γは、PVRの早期の増殖期において硝子体中に高濃度で同定されているが、それらは瘢痕化期において正常レベルに減少する。PVRに関与する他の分子としては、TGFβおよびIL-6が挙げられる。
【0054】
リスク因子および臨床徴候
上記のように、PVRの最も一般的な発生は網膜剥離手術および/または修復後であるが、患者は手術前の網膜剥離に伴ってまたは長期の一次剥離に伴って自然にPVRを発生し得る。複数の要因がPVRの形成と関連付けられてきた。一般に、血管透過性を増加させるプロセスは、PVR形成の確率を増加させる可能性がより高い。同定されている特定のリスク因子としては、ぶどう膜炎、大きい、巨大な、または複数の裂孔、硝子体出血、術前または術後の脈絡膜剥離、無水晶体、複数の以前の手術、および目の2つの四分円より多くに関連する大きな剥離が挙げられる。
【0055】
PVRの早期の徴候は多くの場合にわずかであり、網膜表面の白色混濁化および小さいしわまたはひだとして現れ得る、硝子体中および網膜表面上の細胞分散液を含み得る。より進行したPVRは、固定されたひだおよび網膜剥離を有して特徴的である。診断は、典型的には、間接的な検眼鏡検査およびスリットランプ生体顕微鏡検査により行われる。さらに、超音波は、剥離の動かない網膜ひだおよび目立った硝子体膜の可視化を助けることができる。また、広視野眼底写真撮影を使用して網膜剥離を可視化することができる。しかしながら、臨床歴および検査は多くの場合に網膜剥離の診断をするために充分である。
【0056】
進展のステージ
眼創傷治癒は典型的には3つのステージ:(1)炎症ステージ、(2)増殖ステージ、および(3)調節ステージにおいて起こる。PVRは、創傷が網膜剥離であるとして、類似の様式で見ることができる。この治癒応答は多くの場合に何週間にもわたり起こる。早期において、網膜前PVRは未熟な外見および一貫性をとる。この時期の間に、網膜は依然として従属的なままなことがあり、PVR膜はその非晶性の形態に起因して除去が難しいことがある。しかしながら、6~8週までに、PVR膜はより成熟し、白色の、線維性の外見を帯びる。このステージにおいて、PVRはより容易に同定可能であり、網膜の剛性を引き起こし、かつより同定可能に除去され得る。
【0057】
分類
患者におけるPVRの程度は、多くの場合に重篤度に依存して分類(またはグレード付け)される。最も一般的に使用される分類システムは、the Retina Society Terminology Committeeにより出版された。それは、臨床徴候およびその地理的位置に基づいてPVRの外見を分類する(グレードA、B、C、またはD)。グレードAは、硝子体混濁および硝子体中のRPE細胞の出現により、または色素凝集により特徴付けられる。グレードBは、網膜裂孔または内網膜表面の縁のしわにより特徴付けられる。グレードCは、網膜前/網膜下の膜/帯の存在を伴う後部または前部の全厚みの網膜ひだにより特徴付けられる。グレードDは、4つ全ての四分円における固定された網膜ひだにより特徴付けられる。PVRの臨床検査およびイメージングを介する診断は当技術分野において公知であり、例えば、the classification of retinal detachment with proliferative vitreoretinopathy.Ophthalmology,1983;90(2):p.121-5に記載される通りである。臨床検査および分類スキームは、Di Lauro et al.,J Ophthalmol.2016;Volume 2016,Article ID 7807596,6 pages 2016:7807596.(PMCID:PMC4939352)においてさらに記載され、参照により本明細書に組み入れられる。
【0058】
PVRは増殖性糖尿病網膜症とは別個である
PVRは増殖性糖尿病網膜症(PDR)とは別個の状態である。PVRは小血管疾患とは別個の状態である。PDRに関与する根本的なプロセスは異常な血管新生であり、したがって血管内皮細胞に影響を及ぼす。反対に、PVRにおいて、根本的なプロセスは、網膜色素上皮由来細胞、および眼内の他の細胞の異常な上皮間葉転換(EMT)である。したがって、本明細書の開示は、RUNX1のターゲティングはPVRの管理のための治療標的として使用され得るという驚くべき発見を提供する。
【0059】
網膜色素上皮
網膜色素上皮(RPE)は、神経感覚網膜のすぐ外側にある色素性の細胞層であり、網膜視細胞に栄養を与え、かつ内層の脈絡膜および上を覆う網膜視細胞に堅固に結合している。RPEは感覚網膜の下の細胞の単層を形成し、それが中心的役割を果たす網膜創傷修復に参加している場合を除いて通常は有糸分裂的に不活性である。創傷修復が完了すると、RPEは通常増殖を停止し、そうならない場合は、増殖性硝子体網膜症(PVR)および円板上瘢痕化などの失明障害を結果としてもたらし得る。例えば、感覚網膜の剥離後、RPEは形態を変化させて増殖を始める。脱分化したRPE細胞の複数層コロニーが形成される。細胞は次に網膜下空間中に遊走し始め、そこでそれらは桿体外節を取り込む。一部の事例では、細胞は網膜の表面上に遊走し、網膜上膜を形成する。これらの事象は、増殖性硝子体網膜症、黄斑変性症と関連して起こる重篤な瘢痕化、および網膜再結合後の視覚の不良なまたは遅延した回復の病理発生に関係するとされてきた。これらの重要な帰結にもかかわらず、RPE脱分化および密度依存性成長制御に関与する刺激についてほとんど知られていない。
【0060】
EMTと関連付けられる他の状態としては、がん、例えば、中皮腫、眼慢性移植片対宿主病、角膜瘢痕化、角膜上皮下方成長、結膜瘢痕化、黒色腫などの眼腫瘍、眼線維症、線維症、および緑内障手術の合併症、例えば、線維症(例えば、Current and Future Techniques in Wound Healing Modulation after Glaucoma Filtering Surgeries.Masoumpour MB,et al.Open Ophthalmol J.2016.Open Ophthalmol J.2016 Feb 29;10:68-85.doi:10.2174/1874364101610010068.eCollection 2016に記載されるような術後線維症)の他に、線維症および緑内障(Friedlander et al.,J Clin Invest.2007,Mar 1;117(3):576-586.オンライン出版、2007 Mar 1.doi:[10.1172/JCI31030]PMCID:MC1804382 PMID)が挙げられる。RUNX1阻害は、目において起こる異常なまたは病的なEMTの低減、治療、または予防のために有用である。例えば、本明細書に記載の方法は、上皮間葉転換を起こしている眼内の細胞の増殖および遊走を低減させるために使用され、例えば、阻害剤は、病理学的眼線維症および増殖を伴うEMT関連疾患を有すると診断されているか、患っているか、または有する対象に投与される。疾患としては、結膜線維症(例えば、眼瘢痕性類天疱瘡)、角膜瘢痕化、角膜上皮下方成長、および/または異常術後線維症(例えば、緑内障手術、白内障手術、LASIK、もしくは任意の眼内手術後)が挙げられるがそれに限定されない。
【0061】
Runt関連転写因子1
急性骨髄性白血病1タンパク質(AML1)またはコア結合因子サブユニットアルファ-2(CBFA2)としても公知のRunt関連転写因子1(RUNX1)は、ヒトにおいてRUNX1遺伝子によりコードされるタンパク質である。
【0062】
RUNX1は、造血幹細胞の成熟血液細胞への分化を調節する転写因子である。RUNX1はまた、痛みを伝達するニューロンの発生において役割を果たす。それは、コア結合因子-α(CBFα)とも呼ばれる遺伝子のRunt関連転写因子(RUNX)ファミリーに属する。RUNXタンパク質は、コア結合因子β(CBFβ)とヘテロ二量体複合体を形成し、CBFβは、増加したデオキシリボ核酸(DNA)結合性および安定性を複合体に付与する。
【0063】
ヒトにおいて、RUNX1遺伝子は260キロベース(kb)の長さであり、第21染色体(21q22.12)上に位置する。遺伝子は、2つの選択的なプロモーター、プロモーター1(遠位)またはプロモーター2(近位)から転写され得る。結果として、選択的スプライシングにより促進されて、RUNX1の様々なアイソフォームが合成され得る。全長RUNX1タンパク質は12のエクソンによりコードされる。エクソンの中には2つの定義されたドメイン、すなわち、runt相同性ドメイン(RHD)すなわちruntドメイン(エクソン2、3および4)、ならびにトランス活性化ドメイン(TAD)(エクソン6)がある。これらのドメインは、RUNX1がそれぞれDNA結合およびタンパク質-タンパク質相互作用を媒介するために必要である。RUNX1の転写は2つのエンハンサー(調節エレメント1および調節エレメント2)により調節され、これらの組織特異的エンハンサーは、リンパまたは赤血球調節タンパク質の結合を可能とし、したがって、RUNX1の遺伝子活性は造血系において高度に活性である。
【0064】
RUNX1の例示的なアイソフォーム(Q01196-1;SEQ ID NO:1)は453アミノ酸を有する。転写因子(TF)として、そのDNA結合能力は、p53ファミリーに相同的なruntドメイン(SEQ ID NO:1の残基50~177)によりコードされる。いかなる科学理論によっても縛られることを望まないが、RUNX1のruntドメインは、SEQ ID NO:1のコアコンセンサス配列TGTGGNNN(NNNはTTTまたはTCAのいずれかを表し得る)に結合すると考えられる。DNA認識は、12鎖のβバレルのループおよびC末端「テイル」(SEQ ID NO:1の残基170~177)により達成され、これらは糖リン酸骨格の周りをクランプし、DNAの主溝および副溝にフィットする。特異性は、塩基との直接的なまたは水媒介性の接触を作ることにより達成される。RUNX1は単量体としてDNAに結合することができるが、そのDNA結合親和性は、これもまたruntドメインを介して、CBFβとヘテロ二量体化した場合に10倍増進される。RUNXファミリーは多くの場合にα-サブユニットと称され、共通のβ-サブユニットCBFβの結合と共に、RUNXは、全体としてコア結合因子(CBF)と呼ばれるヘテロ二量体転写因子として挙動することができる。
【0065】
ヒトRUNX1のアミノ酸配列は、UniProtデータベースにおいてアクセッション番号Q01196-1(SEQ ID NO:1)の下で公的に入手可能であり、以下の通りである。
【0066】
追加のアイソフォームのアミノ酸配列は、UniProtデータベースにおいてアクセッション番号Q01196-2(SEQ ID NO:2)、Q01196-3(SEQ ID NO:3)、Q01196-4(SEQ ID NO:4)、Q01196-5(SEQ ID NO:5)、Q01196-6(SEQ ID NO:6)、Q01196-7(SEQ ID NO:7)、Q01196-8(SEQ ID NO:8)、Q01196-9(SEQ ID NO:9)、Q01196-10(SEQ ID NO:10)、およびQ01196-11(SEQ ID NO:11)の下で公的に入手可能である。
【0067】
例示的なランドマーク配列およびドメインとしては、残基80~84(DNA結合ドメイン)、残基135~143(DNA結合ドメイン)、残基168~177(DNA結合ドメイン)、残基291~371(K(リジン)アセチルトランスフェラーゼ6A(KATA6A)との相互作用)、残基307~400(K(リジン)アセチルトランスフェラーゼ6B(KATA6B)との相互作用)、および残基362~402(フォークヘッドボックスP3(FOXP3)との相互作用)が挙げられる。
【0068】
ヒトRUNX1をコードするヌクレオチド配列は、GenBankデータベースにおいてアクセッション番号NM_001001890.2(SEQ ID NO:12)の下で公的に入手可能であり、以下の通りである(開始コドンおよび終止コドンを太字とし、下線を引いている)。
【0069】
追加のRUNX1コーディングヌクレオチド配列は、GenBankデータベースにおいてアクセッション番号NM_001754.4(ヒト(homo sapiens)、SEQ ID NO:13)、NM_001122607.1(ヒト、SEQ ID NO:14)、XM_005261068.3(ヒト、SEQ ID NO:15)、XM_011529770.2(ヒト、SEQ ID NO:16)、XR_937576.2(ヒト、SEQ ID NO:17)、XM_011529768.2(ヒト、SEQ ID NO:18)、XM_005261069.4(ヒト、SEQ ID NO:19)、XM_017028487.1(ヒト、SEQ ID NO:20)、XM_011529767.2(ヒト、SEQ ID NO:21)、およびXM_011529766.2(ヒト、SEQ ID NO:22)の下で公的に入手可能である。
【0070】
Runt関連転写因子2
コア結合因子サブユニットアルファ-1としても公知のRunt関連転写因子2(RUNX2)は、ヒトにおいてRUNX2遺伝子によりコードされるタンパク質である。RUNX2は、骨芽細胞分化と関連付けられている転写因子である。
【0071】
ヒトRUNX2のアミノ酸配列は、GenBankデータベースにおいてアクセッション番号NP_001019801.3(SEQ ID NO:23)の下で公的に入手可能であり、以下の通りである。
【0072】
例示的なランドマーク配列およびドメインとしては、残基49~71(ポリグルタミンリピート)、残基73~89(ポリアラニンリピート)、残基109~230(runtドメイン)、残基242~258(フォークヘッドボックスO1(FOXO1)との相互作用のためのドメイン)、残基336~439(K(リジン)アセチルトランスフェラーゼ6A(KATA6A)との相互作用のためのドメイン)、残基374~488(K(リジン)アセチルトランスフェラーゼ6B(KATA6B)との相互作用のためのドメイン)、および残基430~521(RUNX1阻害ドメイン)が挙げられる。
【0073】
ヒトRUNX2アイソフォームの追加のアミノ酸配列は、GenBankデータベースにおいてアクセッション番号:NP_001015051.3(ヒト、SEQ ID NO:24)、Q13950.2(ヒト、SEQ ID NO:25)、およびNP_001265407.1(ヒト SEQ ID NO:26)の下で公的に入手可能である。追加のRUNX2アイソフォームのアミノ酸配列は、GenBankデータベースにおいてアクセッション番号NP_001139392.1(マウス(mus musculus)、SEQ ID NO:27)NP_001139510.1(マウス、SEQ ID NO:28)、NP_001258556.1(マウス、SEQ ID NO:29)、NP_001258559.1(マウス、SEQ ID NO:30)、およびNP_001258560.1(マウス、SEQ ID NO:31)の下で公的に入手可能である。
【0074】
追加のRUNX2ヒトアイソフォームの核酸は、GenBankデータベースにおいてアクセッション番号:NM_001015051.3(ヒト、SEQ ID NO:32)、NM_001024630.3(ヒト、SEQ ID NO:33)、およびNM_001278478.1(ヒト、SEQ ID NO:34)の下で公的に入手可能である。追加のRUNX2アイソフォームの核酸配列は、GenBankデータベースにおいてアクセッション番号NM_001145920.2(マウス、SEQ ID NO:35)、NM_001146038.2(マウス、SEQ ID NO:36)、NM_001271627.1(マウス、SEQ ID NO:37)、NM_001271630.1(マウス、SEQ ID NO:38)、およびNM_001271631.1(マウス、SEQ ID NO:39)の下で公的に入手可能である。
【0075】
例示的な阻害剤
本発明の主題の局面は、RUNX1阻害剤の投与に関する。様々な態様では、阻害剤は、例えば、RUNX1またはRUNX1をコードするポリヌクレオチドに特異的に結合する、アプタマー、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、もしくはRNA干渉分子)、ペプチド、抗体もしくはその断片、または小分子であってもよい。
【0076】
小分子CBFβ-RUNX1阻害剤
様々な態様では、RUNX1阻害剤は小分子阻害剤である。非限定的な例としては以下が挙げられる:
もしくはその薬学的に許容される塩もしくはエステルであって、各R
1が、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはアルコキシから個々に選択され、R
2がアリールもしくはヘテロアリールから選択され、かつaが0~4であるもの;
もしくはその薬学的に許容される塩もしくはエステルであって、各R
1が、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはアルコキシから個々に選択され、R
2がアリールもしくはヘテロアリールから選択され、かつaが0~4であるもの;または
もしくはその薬学的に許容される塩もしくはエステルであって、各R
1が、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはアルコキシから個々に選択され、R2がアリールもしくはヘテロアリールから選択され、R
3がアルキルもしくはアリールであり、かつaが0~4であるもの。
【0077】
式I~IIIのある特定の態様では、R2はヘテロアリール、特にピロリル、とりわけピロール-2-イルである。式I~IIIのある特定の態様では、R1はハロゲン、特にClまたはFである。式IIIのある特定の態様では、R3は低級アルキルである。式I~IIIのある特定の態様では、R2はヘテロアリール、特にピロリル、とりわけピロール-2-イルであり、かつ、R1はハロゲン、特にClまたはFである。式IIIのある特定の態様では、R2はヘテロアリール、特にピロリル、とりわけピロール-2-イルであり、R1はハロゲン、特にClまたはFであり、かつ、R3は低級アルキルである。
【0078】
「アルコキシ」という用語は、式-ORの基を指し、Rは、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基で置換されていてもよい有機基、例えばアルキル基である。好適なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ シクロプロポキシ、およびシクロヘキシルオキシなどが挙げられる。
【0079】
「アルキル」という用語は、1~24個の炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基を指し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、およびテトラコシルなどである。「低級アルキル」基は、1~10個の炭素原子を有する飽和した分岐または非分岐の炭化水素である。アルキル基は、1つまたは複数の水素原子が、ハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシル、アリール、またはカルボキシルなどの置換基で置換された置換アルキルであってもよい。例えば、「アルコシキアルキル」は構造-RORを有し、Rはアルキル基である。
【0080】
「アリール」という用語は、任意の炭素ベースの芳香族基を指し、ベンジル、ナフチルなどが挙げられるがそれに限定されない。「芳香族」という用語はまた、「ヘテロアリール基」を含み、ヘテロアリール基は、芳香族基の環内に組み込まれた少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基として定義される。ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられるがそれに限定されない。アリール基は、任意で1つまたは複数の基で置換され得、該基としては、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、もしくはアルコキシが挙げられるがそれに限定されず、またはアリール基は非置換であり得る。
【0081】
「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの芳香環を有する、単環式または多環式(例えば、二、もしくは三環式もしくはより多くの環式)の縮合または非縮合の基または環系であって、該少なくとも1つの芳香環が5~10個の環原子を有し、該環原子のうちの1つの環原子がS、OおよびNから選択され、0、1または2個の環原子が、S、OおよびNより独立して選択される追加のヘテロ原子であり、かつ、残りの環原子が炭素であるものを指す。ヘテロアリールとしては、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル(isooxazolyl)、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル(benzooxazolyl)、およびキノキサリニルなどが挙げられるがそれに限定されない。
【0082】
「誘導体」という用語は、親化合物から誘導されたまたは理論的に誘導可能な化合物または化合物の部分を指す。
【0083】
「薬学的に許容される塩またはエステル」という用語は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、およびマンデル酸などが挙げられるがそれに限定されない無機および有機酸の塩基性塩を含む、従来の手段により調製される塩またはエステルを指す。本開示の化合物の「薬学的に許容される塩」としてはまた、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛などの陽イオン、ならびにアンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルタミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、およびテトラメチルアンモニウム水酸化物などの塩基から形成されるものが挙げられる。これらの塩は、例えば、遊離酸を好適な有機または無機塩基と反応させることにより、標準的な手順により調製されてもよい。本明細書に記載の任意の化学的化合物は、代替的に、その薬学的に許容される塩として投与されてもよい。「薬学的に許容される塩」はまた、遊離酸、塩基、および双性イオン形態を含む。好適な薬学的に許容される塩の説明は、Handbook of Pharmaceutical Salts,Properties,Selection and Use,Wiley VCH(2002)において見出すことができる。本明細書に開示される化合物がカルボキシ基などの酸性官能基を含む場合、カルボキシ基のための好適な薬学的に許容される陽イオン対は当業者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、および第四級アンモニウム陽イオンなどが挙げられる。そのような塩は当業者に公知である。「薬理学的に許容される塩」の追加の例について、Berge et al.,J.Pharm.Sci.66:1(1977)を参照。「薬学的に許容されるエステル」としては、ヒドロキシまたはカルボキシル基を含むように修飾された本明細書に記載の化合物に由来するエステルが挙げられる。インビボで加水分解性のエステルは、ヒトまたは動物身体中で加水分解されて親の酸またはアルコールを生成するエステルである。カルボキシのための好適な薬学的に許容されるエステルとしては、C1~6アルコキシメチルエステル、例えば、メトキシ-メチル、C1~6アルカノイルオキシメチルエステル、例えば、ピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル、C3~8シクロアルコキシカルボニルオキシC1~6アルキルエステル、例えば、1-シクロヘキシルカルボニル-オキシエチル;1,3-ジオキソレン-2-オニルメチルエステル、例えば、5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オニルメチル;およびC1~6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば、1-メトキシカルボニル-オキシエチルが挙げられ、これは、化合物中の任意のカルボキシ基において形成されてもよい。
【0084】
RUNX1に結合する小分子阻害剤に関するいくつかの態様では、小分子阻害剤は、Ro5-3335、Ro24-7429、NSC140873、MLS000548294、MLS001048862、またはNSC156594を含む。例えば、Cunningham et al.(2012)Proc Natl Acad Sci USA,109(36):14592-14597,Haubrich,R.et al.,J Infect Dis 172(5):1246-52、および米国特許出願公開第2014/0004082号を参照。これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。RUNX1阻害剤の追加の例は、5,641,773;5,164,376;5,141,735;5,041,438;5,036,101;および3,405,122の他に、米国特許出願公開第2014/0004082号に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0085】
【0086】
Ro5-3335のCAS登録番号は30195-30-3である。
【0087】
【0088】
Ro24-7429のCAS登録番号は139339-45-0である。
【0089】
【0090】
NSC140873のCAS登録番号は106410-13-3である。
【0091】
MLS000548294は以下の構造:
を有する。
【0092】
MLS000548294のPubChem IDは768985である。
【0093】
MLS001048862は以下の構造:
を有する。
【0094】
MLS001048862のPubChem IDは2772042である。
【0095】
【0096】
NSC156594のPubChem IDは457993である。
【0097】
上記に開示される化合物のいくつかおよびそのアナログの合成は、例えば、米国特許第5,641,773号、第5,164,376号、第5,141,735号、第5,041,438号、第5,036,101号、および第3,405,122号において以前に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0098】
いくつかの態様では、RUNX1阻害剤は、RUNX1の転写パートナーであるCBFβの阻害を介してRUNX1を阻害する。
【0099】
CBMβ阻害剤の非限定的な例としては、
が挙げられる。CBFβ阻害剤の非限定的な説明およびその局面は、Illendula et al.(2016)EBioMedicine 8:117-131に記載され、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの例では、阻害剤はピリジルベンズイミダゾールを含む。
【0100】
タンパク質およびペプチド
いくつかの態様では、タンパク質、ペプチド、またはその断片がRUNX1を阻害するために使用される。RUNX1のそのような阻害剤の非限定的な例は、ドミナントネガティブCBF-ベータタンパク質(CBFB-MYH11)である。例えば、Castilla et al.(1996)Cell.1996;87:687-696を参照。その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0101】
RNA
いくつかの態様では、RUNX1を阻害するタンパク質をコードするためにRNAが使用されるか、またはRNA自体が阻害特性を有する。
【0102】
アプタマー
アプタマーは、特定の標的分子(例えば、タンパク質またはステロイドなどの小分子)に結合する、小さい一本鎖の生物学的分子、典型的にはオリゴヌクレオチド(DNAもしくはRNAのいずれか)またはペプチドである。それらは、特異性において抗体と類似すると考えることができるが、抗体とは異なり、アプタマーは比較的低い分子量を有する。ペプチドベースのアプタマーは概して30残基未満の長さであり、ヌクレオチドベースのアプタマーは典型的には100残基未満の長さである。
【0103】
RUNX1などの特定のタンパク質をターゲティングするアプタマーを設計するために有用な方法の非限定的な例は、米国特許第8,484,010号、米国特許第5,582,981号、PCT国際特許出願WO 2015/049356、Blackwell et al.,(1993)Science 250:1104-1110;Blackwell,et al.,(1990)Science 250:1149-1152;Tuerk and Gold(1990)Science 249:505-510;およびJoyce(1989)Gene 82:83-87に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0104】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本明細書において使用される場合、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、RNAi以外の機序により遺伝子発現を阻害するオリゴヌクレオチドである。本明細書に記載の方法において用いることができる細胞により産生されるRUNX1の量を減少させるアンチセンスオリゴヌクレオチドの非限定的な例としては、本明細書に開示される任意のRUNX1コーディングヌクレオチド配列などのRUNX1をコードするヌクレオチド配列内に見出される配列を有する少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の連続するヌクレオチドのストレッチに対して相補的(例えば、少なくとも約90、95、96、97、98、99、または100%相補的)であるアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0105】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、特定のDNAまたはRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。細胞中に導入されると、相補的なヌクレオチドは、細胞により産生される天然配列と組み合わさって複合体を形成し、転写または翻訳のいずれかを遮断する。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは少なくとも11ヌクレオチドの長さであるが、少なくとも12、15、20、25、30、35、40、45、または50またはより多くのヌクレオチドの長さであり得る。より長い配列もまた使用することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、DNA構築物中に提供され得、上記のように細胞中に導入されて、細胞中のRUNX1遺伝子産物のレベルを減少させ得る。
【0106】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、または両方の組合せを含み得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アルキルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホノチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロアミデート、リン酸エステル、カルバメート、アセトアミデート、カルボキシメチルエステル、カルボネート、およびリン酸トリエステルなどの非ホスホジエステルヌクレオチド間連結を用いて1つのヌクレオチドの5’末端を別のヌクレオチドの3’末端と共有結合的に連結することにより、手動でまたは自動合成装置により合成され得る。
【0107】
遺伝子発現の改変は、デュプレックスを形成して遺伝子の5’、または調節領域を制御するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することにより得られ得る。例えば、開始部位から-10~+10の位置の転写開始部位をターゲティングするアンチセンスオリゴヌクレオチドがいくつかの態様では使用される。同様に、阻害は、「三重らせん」塩基対形成の方法論を使用して達成され得る。三重らせん対形成は、ポリメラーゼ、転写因子、またはシャペロンの結合のために充分に開く二重らせんの能力の阻害を引き起こすので有用である。トリプレックスDNAを使用する治療的進歩は文献(Nicholls et al.,1993,J Immunol Meth 165:81-91)に記載されている。翻訳開始部位を含む配列に相補的であり、かつ/または翻訳開始部位の10ヌクレオチド内の標的mRNAの部分に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは様々な態様において使用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、転写物がリボソームに結合することを防止することによりmRNAの翻訳を遮断するために設計され得る。
【0108】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとRUNX1ポリヌクレオチドの相補的配列との複合体形成の成功のために厳密な相補性は必要とされない。例えば、隣接するRUNX1ヌクレオチドに相補的でない連続するヌクレオチドのストレッチによりそれぞれが分離された、RUNX1に厳密に相補的な連続するヌクレオチドの2、3、4、または5またはより多くのストレッチを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、RUNX1 mRNAに対する充分な標的指向特異性を提供することができる。いくつかの態様では、相補的な連続するヌクレオチドの各ストレッチは、少なくとも4、5、6、7、または8またはより多くのヌクレオチドの長さである。非相補的な介在配列は、例えば、1、2、3、または4ヌクレオチドの長さであってもよい。当業者は、特定のアンチセンスオリゴヌクレオチドと特定のRUNX1ポリヌクレオチド配列との間で許容されるミスマッチの程度を決定するためにアンチセンス-センスペアの算出された融点を容易に使用することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RUNX1ポリヌクレオチドにハイブリダイズする能力に影響することなく改変され得る。これらの修飾は、アンチセンス分子の内部または1つもしくは両方の末端において為され得る。例えば、ヌクレオシド間リン酸連結は、アミノ基と末端リボースとの間に様々な数の炭素残基を有するコレステリルまたはジアミン部分を加えることにより修飾され得る。修飾塩基および/もしくは糖、例えば、リボースの代わりにアラビノース、または3’ヒドロキシル基および/もしくは5’リン酸基が置換された3’もしくは5’置換オリゴヌクレオチドもまた、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて用いられ得る。これらの修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野において周知の方法により調製され得る。
【0109】
リボザイム
リボザイムは、触媒活性を有するRNA分子である(Uhlmann et al.,1987,Tetrahedron.Lett.215,3539-3542)。リボザイムは、当技術分野において公知のように、RNA配列を切断することにより遺伝子機能を阻害するために使用され得る。リボザイムの作用機序は、相補的な標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的なハイブリダイゼーション、およびその後のエンドヌクレアーゼ切断を伴う。例としては、特定のヌクレオチド配列のエンドヌクレアーゼ切断を特異的かつ効率的に触媒することができる操作されたハンマーヘッドモチーフのリボザイム分子が挙げられる。ポリヌクレオチドのコーディング配列は、当該ポリヌクレオチドから転写されるmRNAに特異的に結合するリボザイムを生成するために使用され得る。高度に配列特異的な方式でトランスで他のRNA分子を切断することができるリボザイムを設計および構築する方法が当技術分野において開発および記載されてきた。例えば、リボザイムの切断活性は、リボザイム中に別々の「ハイブリダイゼーション」領域を操作することにより特定のRNAをターゲティングし得る。ハイブリダイゼーション領域は、標的RNAに相補的な配列を含有し、したがって標的RNAと特異的にハイブリダイズする。
【0110】
RNA標的内の特定のリボザイム切断部位は、以下の配列:GUA、GUU、およびGUCを含むリボザイム切断部位について標的分子をスキャンすることにより同定され得る。切断部位を含有する標的RNAの領域に対応する15~20リボヌクレオチドの短いRNA配列が同定されたら、標的を機能不可能なものにし得る二次構造的特徴について該RNA配列を評価することができる。候補RNA標的の好適性はまた、リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対するアクセス可能性を試験することにより評価され得る。SEQ ID NO:1~26に示すヌクレオチド配列およびそれらの相補体は、好適なハイブリダイゼーション領域配列の供給源を提供する。標的についてのハイブリダイゼーション配列の親和性を増加させるためにより長い相補的配列が使用され得る。リボザイムのハイブリダイズ領域および切断領域は、相補的な領域を通じて標的RNAにハイブリダイズすると、リボザイムの触媒領域が標的を切断できるように一体的に関連し得る。
【0111】
リボザイムは、DNA構築物の部分として細胞中に導入され得る。マイクロインジェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはリン酸カルシウム沈殿などの機械的方法を使用して、RUNX1発現を減少させることが所望される細胞中にリボザイム含有DNA構築物を導入することができる。代替的に、細胞がDNA構築物を安定的に保持することが所望される場合、当技術分野において公知のように、構築物は、プラスミド上で供給されて別々の要素として維持され得るか、または細胞のゲノム中に組み込まれ得る。リボザイムコーディングDNA構築物は、細胞中でのリボザイムの転写を制御するために、プロモーターエレメント、エンハンサーエレメント、および転写ターミネーターシグナルなどの転写調節エレメントを含み得る(U.S.5,641,673)。リボザイムはまた、リボザイムおよび標的遺伝子の両方が細胞中に誘導された場合にのみmRNAの破壊が起こるように、さらなるレベルの調節を提供するように操作され得る。
【0112】
RNA干渉
本明細書において使用される場合、「RNA干渉」誘導性化合物は、状況に依存して、標的遺伝子(例えば、RUNX1)発現のRNA干渉または「RNAi」を誘導することができる化合物を指す。RNAiはmRNAの分解を伴う。RNAiの使用は、Fire et al.(1998)Nature 19;391(6669):806-11,Elbashir et al.(2001)EMBO J.20(23):6877-6888、およびCheloufi et al.(2010)Nature 465,584-589に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0113】
単離されたRNA分子はRNAiを媒介し得る。すなわち、本発明の主題の単離されたRNA分子は、標的遺伝子とも言及される、遺伝子の転写産物であるmRNAの分解を媒介するか、またはその発現を遮断する。簡便性のために、そのようなmRNAもまた、本明細書において分解されるmRNAとして言及されることがある。RNAi分子は、1つまたは複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または変更により天然に存在するRNAと比較して変化したものであってもよい、例えば、二本鎖RNA、短鎖干渉RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、microRNA分子であってもよい。そのような変更は、例えば、RNAの末端または内部(RNAの1つもしくは複数のヌクレオチドにおいて)への、非ヌクレオチド材料の付加を含み得る。本発明のRNA分子中のヌクレオチドはまた、非標準的ヌクレオチドを含むことができ、非標準的ヌクレオチドとしては、天然に存在しないヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが挙げられる。総称的に、全てのそのような変化したRNAi分子は、アナログまたは天然に存在するRNAのアナログと称されることがある。本発明のRNAは、RNAiを媒介する能力を有するように、天然のRNAに充分に類似していることのみが必要とされる。
【0114】
本明細書において使用される場合、「RNAiを媒介する」という語句は、RNAiの機構またはプロセスを用いてどのmRNA分子が破壊されるかを区別する能力を指すおよび指し示す。RNAiを媒介するRNAはRNAi機構と相互作用し、それにより、特定のmRNAを分解するまたはそれ以外に標的タンパク質の発現を低減するように該機構を方向付ける。いくつかの態様では、本発明は、RNA分子であって、その配列が、対応する特定のmRNAの切断を方向付ける、RNA分子に関する。配列の完璧な一致は必要でないが、一致は、RNAが標的mRNAの切断またはその発現の遮断によりRNAi阻害を方向付けることを可能とするために充分なものでなければならない。いくつかの態様では、RNAi分子は、標的配列に対して少なくとも約90、95、96、97、98、99、または100%相補的な配列を有する約16~29、18~23、21~23、または少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチドのストレッチを含む。上記のように、本発明のRNA分子は、RNA部分および何らかの追加の部分、例えば、デオキシリボヌクレオチド部分を含んでもよい。
【0115】
抗体
いくつかの態様では、RUNX1阻害剤は抗体またはその断片である。
【0116】
本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的活性部分、すなわち、抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。そのような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片、Fab発現ライブラリー、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるがそれに限定されない。「特異的に結合する」または「免疫反応する」は、抗体が所望の抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、かつ他のポリペプチドと反応(すなわち、結合)しないまたは他のポリペプチドとはるかにより低い親和性(Kd>10-6)で結合することを意味する。
【0117】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の部分を含むインタクトな抗体以外の分子を示す。「全長抗体」、「インタクトな抗体」および「全抗体」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、天然抗体構造と実質的に類似した構造を有するまたはFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0118】
基本的な抗体構造単位は四量体を含むことが公知である。各四量体はポリペプチド鎖の2つの同一のペアから構成され、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110またはそれより多くのアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgA、およびIgEとして抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12またはそれより多くのアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖はまた、約10個のさらなるアミノ酸の「D」領域を含む。概して、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ea.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989)を参照。各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0119】
一般に、ヒトから得られる抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのいずれかに関し、これらのクラスは分子中に存在する重鎖の性質により互いに異なる。ある特定のクラスはIgG1、IgG2、およびその他などのサブクラスも有する。さらに、ヒトにおいて、軽鎖はカッパ鎖またはラムダ鎖であってもよい。
【0120】
「抗原結合部位」または「結合部分」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分を指す。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基により形成される。「超可変領域」と称される、重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に異なるストレッチは、「フレームワーク領域」、または「FR」として公知のより保存された隣接ストレッチの間に挟まれる。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリン中の超可変領域の間に天然に見出され、かつ該超可変領域に隣接するアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、三次元空間中で互いに対して配されて抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、結合する抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」と称される。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987 and 1991))、またはChothia&Lesk J.Mol.Biol,196:901-917(1987)、Chothia et al.Nature,342:878-883(1989)の定義にしたがって為される。
【0121】
「Fv」断片は、完全な抗原認識および結合部位を含有する抗体断片である。この領域は、例えばscFv中の、共有結合の性質のものであり得る緊密な会合状態の1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。各可変ドメインの3つの超可変領域(HVR)が相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのはこの構成においてである。全体として、6つのHVRまたはそのサブセットは抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、通常は結合部位全体より低い親和性ではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
【0122】
「Fab」断片は、軽鎖の可変および定常ドメインならびに重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(CHI)を含有する。F(ab’)2抗体断片は一対のFab断片を含み、一対のFab断片は、概して、それらの間のヒンジシステインによりそれらのカルボキシ末端の近くで共有結合により連結されている。抗体断片の他の化学的カップリングもまた当技術分野において公知である。
【0123】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。概して、Fvポリペプチドは、VHドメインとLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これはscFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能とする。scFvの総説について、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol 113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-31S(1994)を参照。
【0124】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片であって、該断片が、同じポリペプチド鎖(重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL))中のVLに接続されたVHを含むものを指す。同じ鎖上の2つのドメインの間の対形成を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的なドメインと対形成することを強いられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、例えば、BP 404,097、WO 93/11161、およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)においてより充分に記載されている。
【0125】
「直鎖状抗体」(linear antibodies)という表現は、Zapata et al.,Protein Eng.,8(10):1057-1062(1995)に記載されている抗体を指す。簡潔に述べれば、これらの抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムなセグメントを含む。直鎖状抗体は、二重特異的または単一特異的であり得る。
【0126】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、例えば、天然に存在する突然変異を含有するまたはモノクローナル抗体調製物の製造の間に生じる、起こり得る変種抗体(そのような変種は、概して、微量で存在する)を除いて、同一でありかつ/または同じエピトープに結合する、集団を構成する個々の抗体を指す。異なる決定因子(エピトープ)に対して方向付けられている異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に対して方向付けられている。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られたものとして抗体の特徴を指し示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものと解されるべきではない。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全体または部分を含有するトランスジェニック動物を利用する方法が挙げられるがそれに限定されない様々な技術により作製されてもよく、そのような方法およびモノクローナル抗体の他の例示的な製造方法は本明細書に記載されている。
【0127】
本明細書において使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体、抗体断片、またはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定因子を含む。エピトープ決定因子は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面グルーピングからなり、通常、特定の三次元構造的特徴の他に、特定の電荷的特徴を有する。抗体は、解離定数が≦1μM、好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦10nMの場合に、抗原に特異的に結合するといわれる。
【0128】
抗体は、当技術分野において公知の任意の方法にしたがって製造され得る。
【0129】
モノクローナル抗体を調製する方法は当技術分野において公知である。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495により記載されるものなどのハイブリドーマ法を使用して調製されてもよい。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は典型的には免疫化剤を用いて免疫化されて、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球が誘発される。代替的に、リンパ球はインビトロで免疫化されてもよい。免疫化剤は、典型的には全長タンパク質またはその断片を含む。概して、ヒト起源の細胞が所望される場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、または非ヒト哺乳動物供給源が所望される場合には脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用される。リンパ球は次に、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して不死化細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice Academic Pressのpp.59-103を参照)。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、齧歯動物、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、非融合の不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つまたは複数の物質を好ましくは含有する好適な培養培地中で培養されてもよい。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含み(「HAT培地」)、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0130】
いくつかの例では、本明細書に記載されるような関心対象のタンパク質のためのエピトープに対する抗体またはその断片はヒト化抗体である。ヒト化型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有する免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2もしくは抗体の他の抗原結合部分配列)のキメラ分子である。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含み、ここで、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基により置換されている。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置換されている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体中にも、持ち込まれるCDRまたはフレームワーク配列中にも見出されない残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつフレームワーク(FR)領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの、実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含む(Jones et al.1986.Nature 321:522-525;Riechmann et al.1988.Nature 332:323-329;Presta.1992.Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596)。ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法(例えば、Jones et al.1986.Nature 321:522-525;Riechmann et al.1988.Nature 332:323-327;およびVerhoeyen et al.1988.Science 239:1534-1536を参照)にしたがって、齧歯動物CDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより、本質的に行われ得る。したがって、そのようなヒト化抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に小さいものが、非ヒト種からの対応する配列により置換されているキメラ抗体である(例えば、米国特許第4,816,567号)。
【0131】
様々な例では、本明細書に記載されるような関心対象のタンパク質のエピトープに対する抗体またはその断片はヒト抗体である。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom and Winter.1991.J.Mol.Biol.227:381-388;Marks et al.1991.J.Mol.Biol.222:581-597)またはヒトモノクローナル抗体の調製[例えば、Cole et al.1985.Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy Liss;Boerner et al.1991.J.Immunol.147(1):86-95]といった当技術分野において公知の様々な技術を使用して製造され得る。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、トランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスに導入することにより作製され得る。負荷されると、ヒト抗体の産生が観察され、これは遺伝子再構成、アセンブリー、および抗体レパートリーといったほとんどの点においてヒトにおいて見られるものと密接に似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、および以下の科学刊行物:Marks et al.1992.Bio/Technology 10:779-783;Lonberg et al.1994.Nature 368:856-859;Morrison.1994.Nature 368:812-13;Fishwild et al.1996.Nature Biotechnology 14:845-51;Neuberger.1996.Nature Biotechnology 14:826;Lonberg and Huszar.1995.Intern.Rev.Immunol.13:65-93.に記載されている。米国特許第6,719,971号もまた、ヒト化抗体を生成する方法のガイダンスを提供する。
【0132】
いくつかの態様では、RUNX1を阻害するためにイントラボディが使用される。「イントラボディ」(細胞内(intracellular)および抗体(antibody)より)は、細胞内で働いて細胞内抗原に結合する抗体である。イントラボディは典型的にはジスルフィド結合を欠いており、特異的結合活性を通じて標的遺伝子の発現または活性をモジュレ―トすることができる。イントラボディは、単離されたVHおよびVLドメインならびにscFvなどの単一ドメイン断片を含む。イントラボディは、標的タンパク質が位置する細胞内区画中での高濃度の発現を可能とするためにイントラボディのNまたはC末端に取り付けられた細胞内トラフィッキングシグナルを含み得る。標的遺伝子と相互作用すると、イントラボディは、標的タンパク質の機能をモジュレ―トしかつ/または標的タンパク質の分解の加速および非生理学的細胞内区画中への標的タンパク質の隔離などの機序により表現型/機能的ノックアウトを達成する。イントラボディ媒介性の遺伝子不活性化の他の機序は、標的タンパク質上の触媒部位またはタンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA、もしくはタンパク質-RNA相互作用に関与するエピトープへの結合など、イントラボディが方向付けられるエピトープに依存し得る。様々な態様では、イントラボディは、標的細胞内で、例えば、標的細胞中に導入されたウイルスまたはプラスミド発現ベクターにより発現される。イントラボディは細胞質中に留まってもよく、または核局在シグナルを有してもよく、またはKDEL配列を通じてその区画中に保持される限り、小胞体の内腔中に膜を越えて翻訳と同時に移行してもよい。抗体は、通常、細胞から分泌されるように設計されるので、イントラボディは、単鎖抗体(scFv)の使用、超安定性のための免疫グロブリンVLドメインの改変、より還元性の細胞内環境に耐性の抗体の選択、またはマルトース結合タンパク質もしくは他の安定な細胞内タンパク質との融合タンパク質としての発現といった、特別な変更を必要とする。イントラボディの非限定的な局面は、例えば、米国特許第9,133,269号、米国特許出願公開第2006/0034834号、Chen et al.(1994)Human gene therapy 5(5):595-601、およびShaki-Loewenstein et al.(2005)Journal of immunological methods 303(1-2):19-39に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0133】
RUNX1に対する例示的な抗体としては、Abcam(Cambridge、MA、USA)から得られる抗体(例えば、カタログ番号ab23980、ab35962、ab189172、ab189153、およびab91002)、Novus Biologicals(Littleton、CO、USA)から得られる抗体(例えば、カタログ番号NBP1-89105、H00000861-M05、H00000861-M06、MAB2399、およびH00000861-M02)、ならびにThermoFisher Scientific(Cambridge、MA、USA)から得られる抗体(例えば、710233、MA5-15814、PA1-41078、OSR00271W、PA5-17434、PA5-19638、PA5-12409、PA5-40076、およびPA5-17351)が挙げられるがそれに限定されない。
【0134】
遺伝子療法
いくつかの態様では、RUNX1の発現および/または活性をモジュレ―ト(例えば、低減)するために遺伝子編集方法が使用される。そのような態様において有用な遺伝子編集システムの非限定的な例としては、clustered regularly interspaced short palindromic repeat(CRISPR)-Casシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム、および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システムが挙げられる。
【0135】
CRISPR-Casシステムの例示的な局面は、例えば、2015年5月5日に発行された米国特許第9,023,649号、2015年7月7日に発行された米国特許第9,074,199号、2014年4月15日に発行された米国特許第8,697,359号に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0136】
高度に柔軟であるが特異的なターゲティングを用いて、ゲノム編集用の強力なツールとなるようにCRISPR-Casシステムをマニピュレートおよび再方向付けすることができる。CRISPR-Cas技術は、様々な真核細胞におけるターゲティングされた遺伝子切断および遺伝子編集を可能とし、編集は実質的に任意のゲノム遺伝子座に方向付けられ得る。例示的なCRISPR Cas遺伝子としては、Cas1、Cas2、Cas3'、Cas3''、Cas4、Cas5、Cas6、Cas6e(かつてはCasE、Cse3と称された)、Cas6f(すなわち、Csy4)、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas10d、Csy1、Csy2、CPf1、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、およびCsf4が挙げられる。これらの酵素は公知であり、例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)Cas9タンパク質のアミノ酸配列はSwissProtデータベースにおいてアクセッション番号Q99ZW2の下で見出すことができる。
【0137】
遺伝子編集のためのアプローチの他の非限定的な例としては、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることにより生成される人工的な制限酵素であるジンクフィンガーヌクレアーゼの使用が挙げられる。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、特定の位置においてDNAに結合してそれを切断するように設計された部位特異的エンドヌクレアーゼである。2つのタンパク質ドメインがある。第1のドメインはDNA結合ドメインであり、これは真核転写因子からなり、ジンクフィンガーを含有する。第2のドメインはヌクレアーゼドメインであり、これはFokI制限酵素からなり、DNAの触媒切断に関与する。個々のZFNのDNA結合ドメインは、典型的には3~6個の個々のジンクフィンガーリピートを含有し、それぞれ9~18塩基対を認識することができる。ジンクフィンガードメインがそれらの意図される標的部位に完全に特異的な場合、合計で18塩基対を認識する一対の3フィンガーZFNでさえ、理論的に、哺乳動物ゲノム中の単一の遺伝子座をターゲティングすることができる。所望の配列に結合するようにCys2His2ジンクフィンガーを操作するための様々な戦略が開発されてきた。これらは、「モジュール式アセンブリー」およびファージディスプレイまたは細胞選択システムのいずれかを用いる選択戦略の両方を含む。新たなジンクフィンガーアレイを生成する最も直接的な方法は、既知の特異性を有するより小さいジンクフィンガー「モジュール」を組み合わせることである。最も一般的なモジュール式アセンブリープロセスは、それぞれが3塩基対のDNA配列を認識できる3つの別々のジンクフィンガーを合わせて、9塩基対の標的部位を認識できる3フィンガーアレイを生成することを伴う。他の手順は、1フィンガーモジュールまたは2フィンガーモジュールのいずれかを利用して、6またはより多くの個々のジンクフィンガーを有するジンクフィンガーアレイを生成し得る。所望の配列をターゲティングすることができるジンクフィンガーアレイを生成するために多数の選択方法が使用されてきた。初期の選択努力は、部分的に無作為化されたジンクフィンガーアレイの大きいプールから所与のDNA標的に結合したタンパク質を選択するためにファージディスプレイを利用した。より最近の努力は、酵母1ハイブリッドシステム、細菌1ハイブリッドおよび2ハイブリッドシステム、ならびに哺乳動物細胞を利用した。IIs型制限エンドヌクレアーゼFoklからの非特異的切断ドメインが、ZFN中の切断ドメインとして典型的に使用される。この切断ドメインはDNAを切断するために二量体化しなければならず、したがって、非パリンドロームDNA部位をターゲティングするために一対のZFNが必要とされる。標準的なZFNは、切断ドメインを各ジンクフィンガードメインのC末端に融合させる。2つの切断ドメインが二量体化してDNAを切断することを可能とするために、2つの個々のZFNは、それらのC末端を用いてある特定の距離だけ離れてDNAの対向する鎖に結合しなければならない。ジンクフィンガードメインと切断ドメインとの間の最も一般的に使用されるリンカー配列は、各結合部位の5’端が5~7bpだけ分離されることを必要とする。
【0138】
TALENは、DNAの特定の配列を切断するように操作され得る制限酵素である。それらは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることにより作製される。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、事実上あらゆる所望のDNA配列に結合するように操作され得るため、ヌクレアーゼと組み合わせられた場合、DNAは特定の位置において切断され得る。制限酵素は、遺伝子編集において使用するためまたはインサイチューでのゲノム編集のために細胞中に導入され得る。ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびCRISPR/Cas9と共に、TALENはゲノム編集の分野における傑出したツールである。
【0139】
NOTCHシグナル伝達の阻害
Notchシグナル伝達は、Runx遺伝子の発現の上流調節因子である(Burns CE,et al.,Genes and Development,2005,19:2331-2342)。RPE細胞の増殖または遊走を予防または低減するためのモダリティーは、Notch受容体(Notch 1、Notch 2、Notch 3、Notch 4)ならびにそのリガンド(デルタ様1、デルタ様2、デルタ様5、Jagged 1およびJagged 2)の阻害に基づき、またはNotch経路の他のモジュレーターはRUNX1の調節を介して機能する。これらの治療モダリティーとしては、ガンマ-セクレターゼの阻害、受容体およびリガンドに対する抗体のモジュレ―ト、ならびにNotchシグナル伝達活性のモジュレーションを介してRUNX1発現を阻害する他の小分子、生物学的物質および遺伝学的アプローチが挙げられる。
【0140】
いくつかの態様では、NOTCHシグナル伝達は、RUNX1機能を低減するようにモジュレ―トされる。例えば、RUNX1の発現または活性を低減するためにNOTCH阻害剤が使用される。NOTCH阻害剤の非限定的な例としては、NOTCHタンパク質またはNOTCHタンパク質をコードするポリヌクレオチドに特異的に結合する、アプタマー、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、およびRNAi分子)、ペプチド(例えば、NOTCHタンパク質の細胞外ドメインの部分または全体)、抗体、抗体断片、ならびに小分子が挙げられる。NOTCHタンパク質のための小分子阻害剤の非限定的な例としては、以下の構造:
を有する化合物が挙げられる。
【0141】
NOTCH阻害剤(およびNOTCHシグナル伝達の局面)の追加の非限定的な例は、Espinoza and Miele,Pharmacol Ther.2013,139(2):95-110;およびYuan et al.,Cancer Letters 2015,369(1)20-27に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0142】
免疫調節性イミド薬物(IMiD)阻害剤
いくつかの例では、RUNX1阻害剤は、免疫調節性イミド薬物(IMiD)を含む。IMiDは、イミド基を含有する免疫調節薬物のクラスである。非限定的な例では、IMiDとしては、サリドマイドおよびそのアナログ、例えば、レナリドミド、ポマリドミド、およびアプレミラストが挙げられる。
【0143】
様々な態様では、IMiDは、
またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルを含み、
R
1=H、NH
2、NHC(0)CH
3
X=CH
2、C(0)
である。
【0144】
例えば、式IVは、レナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド、および/またはアプレミラストを包含する。
またはその薬学的に許容される塩もしくはエステルであって、
R
1=H、NH
2、NHC(0)CH
3
X=CH
2、C(0)
である。
【0145】
例えば、式Vは、レナリドミド、ポマリドミド、および/またはアンタリドミドを包含する。
【0146】
いくつかの例では、IMiDはレナリドミドである。レナリドミドのIUPAC名は3-(7-アミノ-3-オキソ-1H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンである。レナリドミドのCAS登録番号は191732-72-6である。
【0147】
【0148】
いくつかの例では、IMiDはサリドマイドである。サリドマイドのIUPAC名は2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドール-1,3-ジオンである。サリドマイドのCAS登録番号は50-35-1である。
【0149】
【0150】
いくつかの例では、IMiDはポマリドミドである。ポマリドミドのIUPAC名は4-アミノ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドール-1,3-ジオンである。ポマリドミドのCAS登録番号は19171-19-8である。
【0151】
【0152】
一部の例では、IMiDはアプレミラストである。アプレミラストのIUPAC名はN-[2-(1S)-1(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-1,3-ジオキソイソインドール-4-イル]アセタミドである。アプレミラストのCAS登録番号は608141-41-9である。
【0153】
【0154】
他の例では、IMiDはホスホジエステラーゼ4型(PDE4)阻害剤、例えばロリプラムを含む。ロリプラムのIUPAC名は4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)ピロリジン-2-オンである。ロリプラムのCAS登録番号は61413-54-5である。
【0155】
【0156】
RUNX1阻害剤は、1つまたは複数のキラル中心を有してもよく、したがって、1つまたは複数の立体異性体として存在し得る。そのような立体異性体は、単一のエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマーの混合物、またはラセミ混合物として存在し得る。
【0157】
本明細書において使用される場合、「立体異性体」という用語は、同じ結合順序を有するが、交換可能でない原子の異なる三次元配列を有する同じ原子から作られた化合物を指す。三次元構造は立体配置と呼ばれる。本明細書において使用される場合、「エナンチオマー」という用語は、互いに重ね合わせることができない鏡像である2つの立体異性体を指す。本明細書において使用される場合、「光学異性体」という用語は「エナンチオマー」という用語と同等である。本明細書において使用される場合、「ジアステレオマー」という用語は、鏡像でも重ね合わせ可能でもない2つの立体異性体を指す。「ラセミ化合物」、「ラセミ混合物」または「ラセミ修飾」という用語は、エナンチオマーの等量部の混合物を指す。「キラル中心」という用語は、4つの異なる基が結合した炭素原子を指す。エナンチオマー対の分離をもたらすために必要な適切なキラルカラム、溶出液、および条件の選択は、標準技術を使用して当業者に周知である(例えば、Jacques,J.et al.,「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」,John Wiley and Sons,Inc.1981を参照)。
【0158】
薬学的製剤および送達
RUNX1阻害剤を投与するための投与量、製剤、投与量体積、レジメン、および方法は多様であり得る。したがって、最小および最大の効果的な投与量は、投与の方法に依存して変化する。
【0159】
本明細書に記載の阻害剤の「投与」は、当業者に公知の様々な方法および送達システムのいずれかを使用してもたらされ得るまたは行われ得る。投与は、例えば、静脈内、経口、眼(例えば、結膜下、硝子体内、球後、もしくは前房内)、筋肉内、血管内、動脈内、冠内、心筋内、腹腔内、皮下、吸入、または髄腔内投与であり得る。他の非限定的な例としては、局所投与、または対象内に置かれるデバイスのコーティングが挙げられる。局所投与としてはまた、点眼剤による阻害剤の投与、例えば、液体(水性、脂質、もしくはその組合せ)またはゲル製剤との目の表面との接触が挙げられる。他の態様では、投与は、例えば、注射針を使用して、またはカテーテルを介して、注射により実行される。
【0160】
本明細書において使用される場合、治療用化合物の量を指す場合の「効果的」は、本開示の方式において使用された場合に合理的なベネフィット/リスク比に見合う、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、またはアレルギー反応)なしに所望の治療応答をもたらすために充分な化合物の量を指す。
【0161】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」担体または賦形剤は、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、およびアレルギー反応)なしにヒトおよび/または動物と共に使用するために好適な担体または賦形剤を指す。それは、例えば、本発明の化合物を対象に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤またはビヒクルであり得る。
【0162】
本明細書において使用される場合、「単剤療法」は、PVRにおいて見出されるものなどの網膜円孔または網膜裂孔を含む対象における網膜色素上皮(RPE)の増殖または遊走などの障害を阻害、治療、または予防するために施される療法であって、該障害を治療するために使用されるいかなる他の療法も伴わないものである。障害を治療するための単剤療法は、障害に対して方向付けられていないが障害の症状を改善するために使用される別の治療と任意で組み合わせられてもよく、例えば、鎮痛性化合物、解熱性化合物、および/または抗炎症性化合物(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、もしくはアセトアミノフェン)が、単剤療法と並行して投与されてもよい。
【0163】
本発明の様々な態様では、RUNX1阻害剤を含む組成物は、1回のみまたは複数回投与されてもよい。例えば、RUNX1阻害剤は、本明細書に開示される方法を使用して、1日、1週、1月、または1年当たり少なくとも約1回、2回、3回、4回、5回、6回、または7回投与されてもよい。いくつかの態様では、RUNX1阻害剤を含む組成物は、1月当たり1回投与される。ある特定の態様では、組成物は、硝子体内注射を介して、1週当たり1回、2週当たり1回、1か月当たり1回投与される。点眼剤を伴う態様などの様々な態様では、組成物は自己投与される。
【0164】
眼障害の治療のために、RUNX1阻害剤(例えば、RUNX1阻害剤を含む薬学的組成物)は、例えば、局所点眼剤、眼周囲注射(例えば、テノン嚢下)、眼内注入、硝子体内注射、球後注射、網膜内注射、網膜下注射、上脈絡膜、結膜下注射として、またはイオントフォレーシス、もしくは能動的もしくは受動的に薬物を送達できる眼周囲用デバイスを使用して、局所的に投与されてもよい。
【0165】
薬物の持続放出は、インプラント(例えば、固体インプラント)(生分解性であってもよく、もしくはそうでなくてもよい)または生分解性ポリマーマトリックス(例えば、マイクロ粒子)などの技術の使用により達成されてもよい。これらは、例えば、眼球周囲または硝子体内に投与されてもよい。
【0166】
局所投与のために適合された薬学的製剤は、水性溶液、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、リポソーム、マイクロカプセル、マイクロスフェア、または油として製剤化されてもよい。
【0167】
目または口もしくは皮膚などの他の外部組織の治療のために、製剤(例えば、RUNX1阻害剤を含む薬学的組成物)は、局所用軟膏またはクリームとして適用されてもよい。軟膏へと製剤化される場合、RUNX1阻害剤は、パラフィンまたは水混和性の軟膏基剤のいずれかと共に用いられてもよい。代替的に、RUNX1阻害剤は、水中油クリーム基剤または油中水基剤と共にクリームへと製剤化されてもよい。
【0168】
本発明の主題は、RUNX1阻害剤と、眼組織への投与のために好適な担体または賦形剤とを含む組成物を提供する。そのような担体および賦形剤は、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、およびアレルギー反応)なしに眼組織(例えば、強膜、水晶体、虹彩、角膜、ぶどう膜、網膜、黄斑、または硝子体組織)へ投与するために好適である。
【0169】
目への局所投与のために適合された薬学的製剤としては、RUNX1阻害剤が好適な担体、特に水性溶媒中に溶解または懸濁された点眼剤が挙げられる。目に投与される製剤は、眼科的に適合性のpHおよび重量オスモル濃度を有する。「眼科的に許容されるビヒクル」という用語は、眼組織と生理学的に適合性の物理的性質(例えば、pHおよび/または重量オスモル濃度)を有する薬学的組成物を意味する。
【0170】
いくつかの態様では、本発明の眼科用組成物は、約200~約400ミリオスモル/キログラム水(「mOsm/kg」)の重量オスモル濃度および生理学的に適合性のpHを有する無菌水性溶液として製剤化される。溶液の重量オスモル濃度は、無機塩(例えば、NaCl)、有機塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコールもしくはソルビトール)またはその組合せなどの従来の剤により調整されてもよい。
【0171】
様々な態様では、本発明の眼科用製剤は、液体、固体または半固体の投与形態であってもよい。本発明の眼科用製剤は、最終の投与形態に依存して、好適な眼科的に許容される賦形剤を含んでもよい。いくつかの態様では、眼科用製剤は、生理学的に許容できるpH範囲を維持するように製剤化される。ある特定の態様では、眼科用製剤のpH範囲は、約5~約9の範囲内である。いくつかの態様では、眼科用製剤のpH範囲は、約6~約8の範囲内であり、または約6.5、約7、もしくは約7.5である。
【0172】
いくつかの態様では、組成物は、点眼剤の形態で与えられ得るものなどの水性溶液の形態である。好適な分注器により、活性剤の所望の投与量は、1、2、3、4、または5滴など、目への既知の数の液滴の投与により計量され得る。
【0173】
1つまたは複数の眼科的に許容されるpH調整剤および/または緩衝剤が本発明の組成物中に含まれ得、これらとしては、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、および塩酸などの酸;水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、および乳酸ナトリウムなどの塩基;ならびにクエン酸塩/デキストロース、重炭酸ナトリウム、および塩化アンモニウムなどの緩衝剤が挙げられる。そのような酸、塩基、および緩衝剤は、眼科的に許容される範囲内に組成物のpHを維持するために必要とされる量で含まれ得る。1つまたは複数の眼科的に許容される塩が、組成物の重量オスモル濃度を眼科的に許容される範囲内にするために充分な量で組成物中に含まれ得る。そのような塩としては、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムの陽イオンおよび塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、または亜硫酸水素塩の陰イオンを有するものが挙げられる。
【0174】
眼送達デバイスは、複数の定義された放出速度および持続的な用量速度論および透過性を有する1つまたは複数の治療剤の制御放出のために設計されてもよい。制御放出は、薬物の拡散、侵食、溶解、および浸透を増進するポリマー分子量、ポリマー結晶化度、コポリマー比、加工条件、表面仕上げ、幾何学形状、賦形剤付加、およびポリマーコーティングの生分解性/生体侵食性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンビニル)アセテート(EVA)、超加水分解性PVA(superhydrolyzed PVA))、ヒドロキシアルキルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール)酸、ポリ乳酸、ポリ無水物)の異なる選択および特性を組み込んだポリマーマトリックスの設計を通じて、得られてもよい。
【0175】
眼科用デバイスを使用する薬物送達用の製剤は、1つまたは複数の活性剤および指し示される投与経路のために適切な佐剤を組み合わせてもよい。例えば、RUNX1阻害剤(任意で別の剤と共に)は、任意の薬学的に許容される賦形剤、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、アカシア、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン(polyvinylpyrrolidine)、および/またはポリビニルアルコールと混和され、従来の投与のために錠剤化またはカプセル化されてもよい。代替的に、化合物は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントガム、および/または様々な緩衝液中に溶解されてもよい。化合物はまた、生分解性および非生分解性の両方のポリマー、および時間遅延特性を有する担体または希釈剤の組成物と混合されてもよい。生分解性組成物の代表的な例としては、アルブミン、ゼラチン、デンプン、セルロース、デキストラン、多糖、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)およびポリ(オルトエステル)、およびこれらの混合物を挙げることができる。非生分解性ポリマーの代表的な例としては、EVAコポリマー、シリコーンゴムおよびポリ(メチルアクリレート)、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0176】
眼送達用の薬学的組成物としてはまた、インサイチューでゲル化可能な水性組成物が挙げられる。そのような組成物は、目または涙液との接触時にゲル化を促進するために効果的な濃度でゲル化剤を含む。好適なゲル化剤としては、熱硬化性ポリマーが挙げられるがそれに限定されない。本明細書において使用される「インサイチューでゲル化可能」という用語は、目または涙液との接触時にゲルを形成する低い粘性の液体だけでなく、目への投与時に実質的に増加した粘性またはゲル剛性を呈する半液体およびチキソトロピーゲルなどのより粘性の液体を含む。例えば、Ludwig,Adv.Drug Deliv.Rev.3;57:1595-639(2005)を参照。その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0177】
目の中に置くための生体適合性インプラントは、米国特許第4,521,210号、同第4,853,224号、同第4,997,652号、同第5,164,188号、同第5,443,505号、同第5,501,856号、同第5,766,242号、同第5,824,072号、同第5,869,079号、同第6,074,661号、同第6,331,313号、同第6,369,116号、同第6,699,493号、および同第8,293,210号などの多数の特許において開示され、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0178】
インプラントは、モノリシック、すなわち、ポリマーマトリックスを通じて均質に分布した1つまたは複数の活性剤(例えば、RUNX1阻害剤)を有してもよく、または封入されていてもよく、後者の場合、活性剤のリザーバーがポリマーマトリックスにより封入される。製造の容易さに起因して、モノリシックなインプラントが封入形態よりも通常好ましい。しかしながら、封入されたリザーバー型のインプラントにより与えられるより大きな制御は、薬物の治療レベルが狭いウィンドウ内に入る一部の状況において有益であることがある。加えて、RUNX1阻害剤といった治療成分は、マトリックス中に不均質なパターンで分布してもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第2の部分と比べてより高い濃度のRUNX1阻害剤を有する部分を含んでもよい。
【0179】
本明細書に開示される眼内インプラントは、注射を用いた投与のために約5um~約2mm、または約10um~約1mmのサイズ、外科的埋込みによる投与のために1mmより大きい、または2mmより大きい、例えば、3mmまたは最大10mmのサイズを有してもよい。ヒトにおける硝子体腔は、例えば1~10mmの長さを有する、様々な幾何学形状の比較的大きいインプラントを収容することができる。インプラントは、約2mm×直径0.75mmの寸法を有する円筒形ペレット(例えば、棒)であってもよい。インプラントは、約7mm~約10mmの長さ、および約0.75mm~約1.5mmの直径を有する円筒形ペレットであってもよい。
【0180】
インプラントはまた、硝子体などの目の中へのインプラントの挿入、およびインプラントの収容の両方を促進するように少なくともいくぶん柔軟であってもよい。インプラントの総質量は、通常約250~5000μg、より好ましくは約500~1000ugである。例えば、インプラントは、約500ug、または約1000ugであってもよい。非ヒト対象のために、インプラントの寸法および総質量は、対象の種類に依存して、より大きいまたはより小さいものであってもよい。例えば、ヒトは、ウマの約30ml、およびゾウの約60~100mlと比較して、約3.8mlの硝子体体積を有する。ヒトにおいて使用するためのサイズのインプラントは他の動物用に適宜スケールアップまたはスケールダウンしてもよく、例えば、ウマ用のインプラントのために約8倍大きくスケールアップ、ゾウ用のインプラントのために例えば約26倍大きくスケールアップなどしてもよい。
【0181】
中心が1つの材料であり、かつ、表面が同じもしくは異なる組成の1つもしくは複数の層を有してもよい(ここで、層は架橋されていてもよい)、または、中心が異なる分子量、異なる密度もしくは多孔度であるインプラントが、調製され得る。例えば、薬物の初期ボーラスを迅速に放出することが望ましい場合、初期分解速度を増進するように、中心は、ポリ乳酸-ポリグリコール酸コポリマーを用いてコーティングされたポリラクテートであってもよい。代替的に、中心の外側のポリラクテートの分解により溶解し、目から迅速に洗浄されるように、中心は、ポリラクテートでコーティングされたポリビニルアルコールであってもよい。
【0182】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、マイクロスフェア、球、円盤、およびプラークなどといった任意の幾何学形状であってもよい。インプラントのサイズの上限は、インプラントの忍容性、挿入時のサイズの制限、取扱いの容易さなどの要因により決定される。シートまたはフィルムが用いられる場合、シートまたはフィルムは、取扱いの容易さのために約0.1~1.0mmの厚さで少なくとも約0.5mm×0.5mm、通常約3~10mm×5~10mmの範囲内である。繊維が用いられる場合、繊維の直径は、概して約0.05~3mmの範囲内であり、繊維の長さは、概して約0.5~10mmの範囲内である。球は、他の形状の粒子と同等の体積で、0.5um~4mmの範囲内の直径であってもよい。
【0183】
インプラントのサイズおよび形態はまた、放出速度、治療の期間、および移植の部位における薬物濃度を制御するために使用され得る。より大きいインプラントは、比例的により大きい用量を送達するが、表面積対質量比に依存して、より遅い放出速度を有することがある。インプラントの特定のサイズおよび幾何学形状は、移植の部位に適するように選択される。
【0184】
眼送達用のマイクロスフェアは、例えば、米国特許第5,837,226号、同第5,731,005号、同第5,641,750号、同第7,354,574号、および米国特許出願公開第2008-0131484号に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0185】
本発明において使用するための経口または腸内製剤のために、当技術分野において周知の固体担体を用いる従来の手順にしたがって錠剤が製剤化され得る。本発明の方法において使用される経口製剤のために用いられるカプセルは、ゼラチンまたはセルロース誘導体などの任意の薬学的に許容される材料から作製され得る。米国特許第4,704,295号、同第4,556,552号、同第4,309,404号、および同第4,309,406号(これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるものなどの、経口投与される投与形態用の持続放出性経口送達システムおよび/または腸溶性コーティングもまた想定される。
【0186】
一般的定義
他に特に定義されなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、当技術分野(例えば、細胞培養、分子遺伝学、および生化学)の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有するものと解釈される。
【0187】
本明細書において使用される場合、数値または範囲の文脈における「約」という用語は、文脈がより限定された範囲を必要としなければ、記載または特許請求される数値または範囲の±10%を意味する。
【0188】
上記および特許請求の範囲の記載において、「の少なくとも1つ」または「の1つまたは複数」などの語句が要素または特徴の連結的リストに先行して起こることがある。「および/または」という用語もまた、2つまたはそれより多くの要素または特徴のリストにおいて現れることがある。それが使用される文脈によりそれ以外に暗黙的または明示的に否定されなければ、そのような語句は、列記される個々の要素もしくは特徴のいずれかまたは他の記載される要素もしくは特徴のいずれかと組み合わせた記載される要素もしくは特徴のいずれかを意味することが意図される。例えば、「AおよびBの少なくとも1つ」、「AおよびBの1つまたは複数」、ならびに「Aおよび/またはB」という語句はそれぞれ、「A単独、B単独、またはAおよびB共に」を意味することが意図される。類似の解釈は、3つまたはより多くの項目を含むリストについても意図される。例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つまたは複数」、ならびに「A、B、および/またはC」という語句はそれぞれ、「A単独、B単独、C単独、AおよびB共に、AおよびC共に、BおよびC共に、またはAおよびBおよびC共に」を意味することが意図される。加えて、上記および特許請求の範囲における「基づく」という用語の使用は、記載されていない特徴または要素もまた許容可能であるように「少なくとも部分的に基づく」を意味することが意図される。
【0189】
パラメーター範囲が提供される場合、その範囲内の全ての整数、およびその10分の1もまた本発明により提供されることが理解される。例えば、「0.2~5mg」は、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mgなどから、5.0mgを含めて5.0mgまでの開示である。
【0190】
小分子は、2000ダルトン未満の質量の化合物である。小分子の分子量は、好ましくは1000ダルトン未満、より好ましくは600ダルトン未満であり、例えば、化合物は、500ダルトン、400ダルトン、300ダルトン、200ダルトン、または100ダルトン未満である。
【0191】
本明細書において使用される場合、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、他の細胞材料、または組換え技術により製造された場合に培養培地、または化学合成された場合に化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製された化合物、例えば、核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、または小分子は、少なくとも60質量%(乾燥質量)の関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%の質量の関心対象の化合物である。例えば、精製された化合物は、質量により少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、または100%(w/w)の所望の化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準的な方法により、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により測定される。精製または単離されたポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)は、その天然に存在する状態においてそれに隣接する遺伝子または配列を含まない。同様に、精製されたペプチドまたはタンパク質(例えば、特定のアミノ酸配列により同定される)は、その天然に存在する状態においてそれに隣接するアミノ酸を含まない。精製された、はまた、例えば、感染性または毒性作用物質を欠いた、ヒト対象への投与のために安全な無菌状態の程度を定義する。
【0192】
同様に、「実質的に純粋」は、天然ではそれに付随している成分から分離されたヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。典型的には、ヌクレオチドおよびポリペプチドは、それらに天然に付随するタンパク質および天然に存在する有機分子を質量で少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、またはさらには99%含まない場合に、実質的に純粋である。
【0193】
「含む(comprising)」という移行句は、「含む(including)」、「含有する」または「により特徴付けられる」と同義であり、包含的またはオープンエンドであり、かつ追加の、記載されていない要素または方法工程を除外しない。対照的に、「からなる」という移行句は、請求項中に指定されていないあらゆる要素、工程、または成分を除外する。「から本質的になる」という移行句は、指定された材料または工程および請求項の発明の「基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないもの」に請求項の範囲を限定する。
【0194】
本明細書において使用される「対象」、「患者」、および「個体」などという用語は、限定的であることは意図されず、一般に相互に交換可能である。「対象」、「患者」、および「個体」などとして記載される個体は所与の疾患を必ずしも有さず、単に医学的助言を求めていてもよい。本明細書において使用される「対象」、「患者」、および「個体」などの用語は、指し示される障害を患っていてもよい動物界の全てのメンバーを含む。いくつかの局面では、対象は哺乳動物であり、いくつかの局面では、対象はヒトである。
【0195】
本明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しなければ、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの疾患(a disease)」、「1つの病態(a disease state)」、または「1つの核酸(a nucleic acid)」への言及は、1つまたは複数のそのような態様への言及であり、当業者に公知のその等価物を含む。
【0196】
本明細書において使用される場合、「治療」は、例えば、障害の進行の阻害、後退、または停止を包含する。治療はまた、障害の任意の1つまたは複数の症状の予防または改善を包含する。本明細書において使用される場合、対象における疾患進行または疾患合併症の「阻害」は、対象における疾患進行および/または疾患合併症の予防または低減を意味する。
【0197】
本明細書において使用される場合、障害と関連付けられる「症状」は、障害と関連付けられる任意の臨床的または実験室所見を含み、対象が感じまたは観察することができるものに限定されない。
【0198】
本明細書において使用される場合、治療用化合物の量を指す場合の「効果的」は、本開示の方式において使用された場合に、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、またはアレルギー反応)なしに所望の治療応答をもたらすために充分な化合物の量を指す。
【0199】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」担体または賦形剤は、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、およびアレルギー反応)なしにヒトおよび/または動物に使用するために好適な担体または賦形剤を指す。それは、例えば、本発明の化合物を対象に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤またはビヒクルであり得る。
【0200】
本発明のより完全な理解を促進するために以下において実施例を提供する。以下の実施例は、本発明を製造および実施する例示的な様式を説明する。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例において開示される特定の態様に限定されず、これらの実施例は実例による説明の目的のものに過ぎず、類似の結果を得るために代替的な方法を利用することができる。
【0201】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたり2つの最適にアライメントされた配列を比較することにより決定され、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントのために参照配列(付加および欠失のいずれも含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中で起こる位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較のウィンドウ中の位置の総数で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。
【0202】
2つまたはそれより多くの核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一」または「同一性」パーセントという用語は、配列比較アルゴリズムを使用してまたは手動アライメントおよび目視検査により測定した場合に、比較ウィンドウ、または指定領域にわたり比較され、最大一致のためにアライメントされたときに、同じであるか、または指定されたパーセンテージの同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチド(例えば、全体ポリペプチド配列またはその個々のドメインの、指定される領域にわたる、例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはより高い同一性)を有する2つまたはそれより多くの配列または部分配列を指す。少なくとも約80%同一のそのような配列は、「実質的に同一」であるといわれる。いくつかの態様では、2つの配列は100%同一である。ある特定の態様では、2つの配列は、配列の1つ(例えば、配列が異なる長さを有する2つの配列のうちのより短い配列)の全体長さにわたり100%同一である。様々な態様では、同一性は、試験配列の相補体を指してもよい。いくつかの態様では、同一性は、少なくとも約10~約100、約20~約75、約30~約50アミノ酸またはヌクレオチドの長さの領域にわたり存在する。ある特定の態様では、同一性は、少なくとも約50アミノ酸の長さの領域にわたり、またはより好ましくは、100~500、100~200、150~200、175~200、175~225、175~250、200~225、200~250またはより多くのアミノ酸の長さの領域にわたり存在する。
【0203】
配列比較のために、典型的には1つの配列は参照配列として作用し、該配列に対して試験配列が比較される。様々な態様では、配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列がコンピューターにエントリーされ、必要な場合には部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムのプログラムパラメーターが指定される。好ましくは、デフォルトのプログラムパラメーターを使用することができ、または代替的なパラメーターを指定することができる。配列比較アルゴリズムは次に、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対して試験配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0204】
「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適にアライメントされた後に同じ数の連続する位置の参照配列に対して配列が比較され得る、連続する位置のいずれか1つの数(例えば、最低で約10~約100、約20~約75、約30~約50、100~500、100~200、150~200、175~200、175~225、175~250、200~225、200~250)のセグメントを指す。様々な態様では、比較ウィンドウは、2つのアライメントされる配列の1つまたは両方の全体長さである。いくつかの態様では、比較される2つの配列は異なる長さを含み、かつ、比較ウィンドウは、2つの配列のうちのより長いまたはより短い配列の全体長さである。比較用の配列のアライメント方法は当技術分野において周知である。比較用の配列の最適なアライメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似検索法により、これらのアルゴリズムのコンピューター上の実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動アライメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995 supplement)を参照)により実行することができる。
【0205】
様々な態様では、配列同一性および配列類似度パーセントを決定するために好適なアルゴリズムはBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389-3402(1977)およびAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、核酸およびタンパク質の配列同一性パーセントを決定するために、本明細書に記載のパラメーターを用いて使用することができる。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、当技術分野において公知のように、the National Center for Biotechnology Informationを通じて公開されている。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列中の同じ長さのワードとアライメントされた場合にマッチするかまたは何らかの正値の閾値スコアTを満たすクエリ配列中の長さWの短いワードを同定することにより高スコア配列ペア(HSP)を同定することを伴う。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と称される(Altschul et al.、上掲)。これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして作用する。ワードヒットは、累積アライメントスコアを増加できる限り、各配列に沿って両方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(一対のマッチする残基についてのリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチの残基についてのペナルティスコア;常に<0)を使用して算出される。アミノ酸配列について、累積スコアを算出するためにスコアリングマトリックスが使用される。ワードヒットの各方向への拡張は以下の場合に停止される:累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下する;1つもしくは複数の負スコア残基アライメントの蓄積に起因して、累積スコアが0もしくはそれ未満になる;またはいずれかの配列の終わりに達する。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速さを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長、および10の期待値(E)、および50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較を使用する。
【0206】
「対照」試料または値は、試験試料に対する比較用の、参照、通常は既知の参照として働く試料を指す。例えば、試験試料を試験対象、例えば、疾患について診断を必要とする対象から採取し、既知の条件の対照、例えば、疾患を有しない1つ(もしくは複数)の対象(陰性もしくは正常対照)または疾患を有する1つ(もしくは複数)の対象(陽性対照)と比較することができる。対照はまた、多数の試験または結果から集めた平均値を表すことができる。当業者は、任意の数のパラメーターの評価のために対照を設計できることを認識する。当業者は、どの対照が、所与の状況において役立ち、対照値との比較に基づいてデータを解析することができるか、を理解する。対照はまた、データの有意性を決定するために役立つ。例えば、所与のパラメーターの値が対照において可変である場合、試験試料中の変動は有意として考えられない。
【0207】
化合物(例えば、タンパク質)に関する「正常量」という用語は、網膜円孔または網膜裂孔を含む対象においてRPE細胞の増加した増殖または遊走を含む疾患を有すると診断されないことが既知である個体におけるタンパク質の正常な量を指す。タンパク質の量は、試験試料中で測定され、参照限界、識別限界、またはカットオフ点および異常値(例えば、特定の網膜剥離合併症もしくはその症状について)を定義するためのリスク定義閾値などの技術を利用して、「正常対照」レベルに対して比較することができる。正常対照レベルは、網膜円孔または網膜裂孔を含む対象においてRPE細胞の増加した増殖または遊走を含む疾患を患っていないことが既知である対象において典型的に見出される1つもしくは複数のタンパク質のレベル、または組合せのタンパク質指数を意味する。そのような正常対照レベルおよびカットオフ点は、タンパク質が単独で使用されるのか、それとも他のタンパク質と組み合わせて指数への定式で使用されるのかに基づいて変化してもよい。代替的に、正常対照レベルは、臨床的に関連する時間的期間にわたりRPE細胞の増加した増殖もしくは遊走(網膜円孔もしくは網膜裂孔も含む対象において)またはその特定の症状(例えば、疾患が発生する場合または疾患を既に有する対象が試験される場合)を発生しなかった以前に試験された対象からのタンパク質パターンのデータベースであり得る。
【0208】
決定されるレベルは対照レベルもしくはカットオフレベルもしくは閾値レベルと同じであってもよく、または対照レベルもしくはカットオフレベルもしくは閾値レベルと比べて増加もしくは減少していてもよい。いくつかの局面では、対照対象は、同じ種、性別、民族、年齢群、喫煙状態、ボディマス指数(BMI)、現行の治療レジメン状態、病歴、またはその組合せのマッチした対照であるが、対照は、問題とする疾患(またはその症状)を患っておらず、かつ疾患のリスクがないという点で、診断されている対象とは異なる。
【0209】
対照レベルと比べて、決定されるレベルは増加したレベルであってもよい。本明細書において使用される場合、レベル(例えば、タンパク質レベル)に関する「増加した」という用語は、対照レベルからの任意の%の増加を指す。様々な態様では、増加したレベルは、対照レベルと比べて、少なくとも5%または約5%の増加、少なくとも10%または約10%の増加、少なくとも15%または約15%の増加、少なくとも20%または約20%の増加、少なくとも25%または約25%の増加、少なくとも30%または約30%の増加、少なくとも35%または約35%の増加、少なくとも40%または約40%の増加、少なくとも45%または約45%の増加、少なくとも50%または約50%の増加、少なくとも55%または約55%の増加、少なくとも60%または約60%の増加、少なくとも65%または約65%の増加、少なくとも70%または約70%の増加、少なくとも75%または約75%の増加、少なくとも80%または約80%の増加、少なくとも85%または約85%の増加、少なくとも90%または約90%の増加、少なくとも95%または約95%の増加であってもよい。
【0210】
対照レベルと比べて、決定されるレベルは減少したレベルであってもよい。本明細書において使用される場合、レベル(例えば、タンパク質レベル)に関する「減少した」という用語は、対照レベルからの任意の%の減少を指す。様々な態様では、減少したレベルは、対照レベルと比べて、少なくとも5%または約5%の減少、少なくとも10%または約10%の減少、少なくとも15%または約15%の減少、少なくとも20%または約20%の減少、少なくとも25%または約25%の減少、少なくとも30%または約30%の減少、少なくとも35%または約35%の減少、少なくとも40%または約40%の減少、少なくとも45%または約45%の減少、少なくとも50%または約50%の減少、少なくとも55%または約55%の減少、少なくとも60%または約60%の減少、少なくとも65%または約65%の減少、少なくとも70%または約70%の減少、少なくとも75%または約75%の減少、少なくとも80%または約80%の減少、少なくとも85%または約85%の減少、少なくとも90%または約90%の減少、少なくとも95%または約95%の減少であってもい。
【0211】
本開示の文脈における「リスク」は、血管新生障害またはその症状の発生におけるような、特定の期間にわたり事象が起こる確率に関するものであり、対象の「絶対」リスクまたは「相対」リスクを意味することができる。様々な態様では、「高リスク」の対象は、例えば、約1、2、3、4、または5年以内に、網膜円孔もしくは網膜裂孔を含む対象においてRPE細胞の増加した増殖もしくは遊走を含む疾患またはその症状を発生する可能性が高い対象である。絶対リスクは、関連する時間コホートについての測定後の実際の観察を参照して、または関連する期間追跡された統計的に有効な歴史的コホートから導き出した指数値を参照して、測定され得る。相対リスクは、臨床リスク因子を評価する方法により変化し得る低リスクコホートの絶対リスクまたは平均集団リスクのいずれかに対して比較された対象の絶対リスクの比を指す。所与の試験結果についてのオッズ比、陰性事象に対する陽性事象の割合もまた、無変換に対してよく使用される[オッズは式p/(1-p)に基づき、ここで、pは事象の確率、(1-p)は事象が起こらない確率である]。
【0212】
本発明のより完全な理解を促進するために下記において実施例を提供する。下記の実施例は、本発明を製造および実施する例示的な様式を説明する。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例において開示される特定の態様に限定されず、これらの実施例は実例による説明の目的のものに過ぎず、類似の結果を得るために代替的な方法を利用することができる。
【0213】
EMT
上皮間葉転換(EMT)は、細胞接着の喪失により特徴付けられ、細胞接着の喪失は、新たな間葉細胞が圧迫され押し出されることに繋がる。EMTは、上皮細胞が細胞極性および細胞-細胞接着を喪失し、遊走および浸潤特性を獲得して間葉幹細胞(様々な細胞種に分化できる多分化間質細胞)になるプロセスである。EMTは、中胚葉形成および神経管形成といった多数の発生プロセスのために必須である。EMTはまた、創傷治癒、臓器線維症およびがん進行における転移の開始において起こることが示されている。EMT、およびその反転プロセスであるMET(間葉上皮転換)は、発生胚における多くの組織および臓器の発生、ならびに多数の胚事象、例えば、原腸胚形成、神経堤形成、心臓弁形成、口蓋発生および筋発生のために不可欠である。上皮細胞は、タイトジャンクション、gapジャンクションおよびアドヘレンスジャンクションにより互いに密接に接続されており、頂底極性、アクチン細胞骨格の極性化を有し、かつ基底表面において基底板により結合されている。他方で、間葉細胞はこの極性化を欠いており、紡錘形状の形態を有し、かつ中心点(focal point)を通じてのみ互いに相互作用する。上皮細胞は高レベルのE-カドヘリンを発現する一方、間葉細胞は、高レベルのN-カドヘリン、フィブロネクチンおよびビメンチンを発現する。したがって、EMTは、細胞に対する非常に大きい形態学的および表現型の変化を必要とする。生物学的背景に基づいて、EMTは、3つの種類:発生(I型)、線維化および創傷治癒(II型)、ならびにがん(III型)に分類されている。
【0214】
E-カドヘリンの喪失はEMTにおける根本的な事象である。E-カドヘリンを直接的または間接的に抑制できる多くの転写因子(TF)はEMT-TF(EMT誘導性TF)と考えられる。SNAI1/Snail 1、SNAI2/Snail 2(Slugまたはジンクフィンガータンパク質としても公知)、ジンクフィンガーEボックス結合ホメオボックス1および2(ZEB1およびZEB2)、転写因子3(TCF3)ならびにkrueppel様因子8(KLF8)は、E-カドヘリンプロモーターに結合してその転写を抑制することができる一方、Twist(クラスA塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックスタンパク質38とも称される;bHLHa38)、グースコイド、転写因子4(TCF4)、ホメオボックスタンパク質Sineoculisホメオボックスホモログ1(SIX1)およびフォークヘッドボックスタンパク質C2(FOXC2)などの因子は、E-カドヘリンを間接的に抑制する。
【0215】
いくつかのシグナル伝達経路(トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、Wnt/ベータカテニンおよびNotch)ならびに低酸素はEMTを誘導することがある。特に、Ras-MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)はSnailおよびSlugを活性化させる。Slugは、EMTプロセスの最初の必要な相を構成する、デスモソームの破壊、細胞伸長、および細胞間境界における部分的な分離の工程を誘発する。
【0216】
Wntシグナル伝達経路は、原腸胚形成、心臓弁形成およびがんにおいてEMTを調節する。乳がん細胞におけるWnt経路の活性化は、EMT調節因子SNAILを誘導し、かつ間葉マーカー、ビメンチンを上方調節する。また、活性のWnt/ベータカテニン経路は、診療所における乳がん患者の予後不良と相関する。同様に、TGF-βは、SNAILおよびZEBの発現を活性化させて、心臓発生、口蓋発生、およびがんにおいてEMTを調節する。乳がん骨転移は活性化したTGF-βシグナル伝達を有し、これはこれらの病変の形成に寄与する。しかしながら、他方で、周知の腫瘍抑制因子である腫瘍タンパク質53(p53)は、タンパク質ZEBおよびSNAILの産生を阻害するmiR-200およびmiR-34といった様々なマイクロRNAの発現を活性化させることによりEMTを抑制し、したがって上皮表現型を維持する。
【0217】
胚発生の初期ステージ後に、胚の着床および胎盤形成の開始はEMTと関連付けられる。栄養外胚葉細胞はEMTを起こして子宮内膜の浸潤および適切な胎盤配置を促進し、したがって胚への栄養分およびガス交換を可能とする。胚発生においてその後、原腸胚形成の間に、EMTは細胞が胚の特定の区画、すなわち、有羊膜類動物において原条、およびショウジョウバエにおいて腹側溝に入ることを可能とする。この組織中の細胞はE-カドヘリンを発現し、頂底極性である。
【0218】
創傷治癒の間に、創傷の境界にあるケラチノサイトはEMTを起こし、かつ創傷が閉じる時に再上皮化またはMETを起こす。遊走先端におけるSnail2発現はこの状態に影響を及ぼし、その過剰発現は創傷治癒を加速させる。同様に、各月経周期において、卵巣表面上皮は排卵後創傷治癒の間にEMTを起こす。
【0219】
転移の開始は浸潤を必要とし、浸潤はEMTにより可能となる。原発性腫瘍中の癌腫細胞は、E-カドヘリンの抑制により媒介される細胞-細胞接着を喪失し、増加した浸潤特性を伴って基底膜を突破し、血管内異物侵入を通じて血流に入る。その後、これらの循環腫瘍細胞(CTC)が血流を出て微小転移巣を形成する時に、それらはこれらの転移部位においてクローン性生成のためにMETを起こす。したがって、EMTおよびMETは、浸潤転移カスケードの開始および完了を形成する。この新たな転移部位において、腫瘍は成長を最適化するために他のプロセスを起こすことがある。例えば、EMTは、特に肺がんにおいて、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現と関連付けられている。PD-L1の増加したレベルは免疫系を抑制し、それによりがんはより容易に広がることができる。
【0220】
EMTは、転移性前立腺がんにおいてアンドロゲン枯渇療法により誘導されることが示されている。アンドロゲン軸の阻害を介するEMTプログラムの活性化は、疾患の再発および進行を促進するために腫瘍細胞がとることができる機序を提供する。Brachyury、Axl(チロシンプロテインキナーゼ受容体UFO)、MEK、およびオーロラキナーゼAはこれらのプログラムの分子ドライバーであり、治療応用を決定するため、現在阻害剤が臨床試験中である。発がん性プロテインキナーゼCイオタ型(PKC-イオタ)は、EMTの間にビメンチンを活性化させることにより黒色腫細胞の浸潤を促進することができる。PKC-イオタの阻害またはノックダウンは、転移性黒色腫細胞において総ビメンチン、リン酸化(phophorylated)ビメンチン(S39)および分割欠陥性6ホモログアルファ(Par6)を減少させながら、E-カドヘリンおよびrasホモログ遺伝子ファミリーメンバーA(RhoA)のレベルの増加を結果としてもたらした。EMTを起こす細胞は幹細胞様の特性を獲得し、したがってがん幹細胞(CSC)を生じさせる。
【0221】
PVRの治療に加えて、本明細書に記載の組成物および方法は、上皮間葉転換(EMT)関連疾患の治療および予防のために使用され得る。例えば、EMT関連疾患は、病理学的眼線維症および病理学的眼増殖を含む。追加の疾患および状態は、Masoumpour,M.et al.による「Current and Future Techniques in Wound Healing Modulation after Glaucoma Filtering Surgeries」というタイトルの学術論文、The Open Ophthalmology Journal,2016(10);68-85において記載され、参照により全体が本明細書に組み入れられる。他の例示的なEMT関連疾患は、Friedlander,M.による「Fibrosis and diseases of the eye」というタイトルの論文、The Journal of Clinical Investigation 117(3);576-586(2007)において記載され、参照により全体が本明細書に組み入れられる。例えば、該論文は、目の前眼部における疾患(例えば、角膜混濁化および緑内障)、ジストロフィー、疱疹性角膜炎、炎症(例えば、翼状片)、黄斑浮腫、網膜および硝子体出血、線維血管瘢痕化、血管新生緑内障、加齢黄斑変性症(ARMD)、糖尿病網膜症(DR)、未熟児網膜症(ROP)、網膜下線維症、網膜上線維症、およびグリオーシスを記載している。
【実施例】
【0222】
実施例1:ヒトPVR膜に由来する細胞(C-PVR)中のRUNX1の発現
C-PVR細胞におけるRUNX1の免疫蛍光染色はC-PVR細胞中のRUNX1の発現を示した(
図1)。ヒトPVR膜(PVRを有する患者から)におけるRUNX1の免疫蛍光染色はRUNX1の発現を示した(
図3A~3D)。さらに、患者からのヒトPVR膜(例えば、ケース5)はRUNX1の発現を示した(
図3A~3Dおよび
図4A~4F)。さらに、ヒトPVR膜の免疫組織化学はRUNX1の発現を示した(
図5Aおよび
図5B)。
【0223】
方法
C-PVR細胞を48ウェルプレート中で24~72時間増殖させ、4%のパラホルムアルデヒド中4℃で終夜固定化し、ウサギ抗RUNX1一次抗体(1:100;LifeSpan Biosciences)を用いて染色した。細胞をヤギ抗ウサギ594二次抗体(1:300;Life Technologies)およびDAPIと2時間インキュベートした後、洗浄およびイメージングを行った。
【0224】
ヒトPVR膜組織(例えば、ケース5)を新たに得、10%のホルマリン中で終夜固定し、切片化(6μm)した。連続切片を100%のキシレン中で脱パラフィンし、一連のエタノール工程において再水和させ、PBS中で洗浄した。沸騰しているクエン酸緩衝液(pH6)中で熱誘導エピトープ回復を行った。スライドをブロッキングし、一次抗体ウサギ抗RUNX1(1:100;LifeSpan Biosciences)と4℃で終夜インキュベートした後、二次ヤギ抗ウサギAlexa Fluor 594(1:300 Life Technologies)およびDAPIと室温で2時間インキュベートした。スライドを次に洗浄し、イメージングを行った(
図3A~3Dおよび
図4A~4F)。
【0225】
免疫組織化学
新たに得たヒトPVR膜(例えば、ケース5)を10%のホルマリン中で終夜固定し、切片化(6μm)した。連続切片を100%のキシレン中で脱パラフィンし、一連のエタノール工程において再水和させ、PBS中で洗浄した。沸騰しているクエン酸緩衝液(pH6)中で熱誘導エピトープ回復を行った。スライドをブロッキングし、一次抗体マウス抗RUNX1(1:100;Santa Cruz Biotechnologies)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、切片をビオチン化二次抗体(1:300;Life Technologies)中でインキュベートした後、チラミド増幅システムおよび3,3’ジアミノベンジジン色原体染色を行った。スライドを次に洗浄し、イメージングを行った(
図5Aおよび
図5B)。
【0226】
実施例2:ヒトPVR膜に由来する細胞中のRUNX1の阻害
ヒトPVR膜に由来する細胞(C-PVR)の増殖をRUNX1阻害剤Ro5-335により阻害した(
図9A~9C)。C-PVR細胞の細胞数および増殖能力における有意な低減が観察された(
図9A~9C)。RUNX1阻害剤Ro5-335は外植片モデルにおいてヒトPVR膜の成長を低減した(
図18A~18D)。4日後に成長を示さなかったRUNX1阻害剤Ro5-335を用いて処理した外植片(
図18Bおよび
図18D)と比較して、対照外植片(
図18Aおよび
図18C)から成長が観察された。
【0227】
siRNAはC-PVR細胞中のRUNX1発現をノックダウンした(
図6)。siScrambleと比較して、C-PVRにおけるRUNX1の遺伝子発現の有意な低減が、siRNUNX1を用いたトランスフェクションの48時間後に観察された。Scramble(
図7Dおよび
図7F)ならびに非処理対照(
図7A~7C)と比較したRUNX1(
図7G)のsiRNAノックダウンの48時間後のKi67染色は、C-PVR細胞の細胞数および増殖能力の有意な低減を示した。
【0228】
siRNA
C-PVR細胞(例えば、ケース5)を48ウェルプレート中で24時間増殖させ、Darmafect(Dharmacon)を使用してsiRNUNX1またはsiScrambleをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に細胞を洗浄し、RNAを回収し、PCRを行った(
図6)。
【0229】
siRNAのKi67染色
C-PVR(例えば、ケース5)細胞にsiRUNX1またはsiScrambleを48時間トランスフェクトし、洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定した。PBSを用いて細胞を洗浄し、(PBS中の10%ヤギ血清)中で1時間ブロッキングし、ウサギ抗Ki67抗体(1:50;Novus Biologicals)と4度で終夜インキュベートした。細胞を二次抗体ヤギ抗ウサギ594(1:300;Life Technologies)と2時間DAPIと共にインキュベートした後、洗浄およびイメージングを行った(
図7A~7I;定量化を
図8に示した)。
【0230】
RUNX1阻害剤を用いた処理
C-PVR細胞(例えば、ケース5)を48ウェルプレート中で24間培養した後、150μMのRUNX1阻害剤(Ro5-3335、Calbiochem)、またはビヒクル単独を用いて48時間の期間にわたり処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。PBSを用いて細胞を洗浄し、(PBS中の10%ヤギ血清)中で1時間ブロッキングし、ウサギ抗Ki67抗体(1:50;Novus Biologicals)と4度で終夜インキュベートした。細胞を二次抗体ヤギ抗ウサギ594(1:300;Life Technologies)と2時間DAPIと共にインキュベートし、洗浄し、Image Jを使用してイメージングおよび定量化を行った(
図9Aおよび
図9B)。
【0231】
RUNX1阻害剤を用いた処理のKi67染色
C-PVR細胞(例えば、ケース5)を48ウェルプレート中で24間培養した後、150μMのRUNX1阻害剤(Ro5-3335、Calbiochem)、またはビヒクル単独を用いて48時間の期間にわたり処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。PBSを用いて細胞を洗浄し、(PBS中の10%ヤギ血清)中で1時間ブロッキングし、ウサギ抗Ki67抗体(1:50;Novus Biologicals)と4度で終夜インキュベートした。細胞を二次抗体ヤギ抗ウサギ594(1:300;Life Technologies)と2時間DAPIと共にインキュベートし、洗浄およびイメージングを行った。
【0232】
実施例3:ARPE-19細胞に対するTGFβ、TNFαおよびIL-6の効果
TGFβ2、TNFα、およびIL-6(全てPreprotec)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞は、対照(
図11A)と比較して上皮間葉転換を示した(
図11B)。組合せ処理(例えば、TGFβ2、TNFα、およびIL-16の組合せ)によりARPE-19細胞はEMTを起こした(
図12)。
【0233】
TGFβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞は、対照と比較して処理において上皮マーカー、サイトケラチン(
図13、中央パネル)および閉鎖帯-1(ZO-1)(
図13、右パネル)の低減を示した。ZO-1編成の喪失はEMTのマーカーであり、したがって、データは、組合せ処理はZO-1分布にも影響を及ぼすことを示した(
図13)。さらに、TGFβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞は、対照と比較して処理において上皮マーカー閉鎖帯-1の低減を示した(
図14A~14D)。
【0234】
RUNX1発現はEMTと共に増加する
TGFβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞は、対照と比較して処理においてRUNX1発現の有意な増加を示した(
図15)。これは、RUNX1発現はEMTと共に増加することを指し示した。TGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞は、対照と比較して処理においてRUNX1発現の有意な増加を示した(
図13からの拡大されたデータを示す
図16)。
【0235】
TGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)を用いた処理の7日後のARPE-19細胞は、対照と比較して処理においてRUNX1発現の有意な増加(
図17、中央パネル)および上皮マーカーサイトケラチンの低減(
図17、右パネル)を示した。これは、RUNX1の増加した発現はまた、分布のZO-1変化が存在する3週の時点において存在することを示した。
【0236】
細胞培養
ARPE-19細胞(ATCC)をコンフルエンスまで増殖させ、1%で7~10日間維持した。細胞をTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)で7日間処理し、画像を撮影した。
【0237】
免疫蛍光
ARPE-19細胞をコンフルエンスまで増殖させ、1%で7~10日間維持した。細胞をTGβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)で7日間処理した(コンボ)。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。細胞を一次抗体、マウス抗サイトケラチン(1:250;Abcam)または平滑筋アクチン(1:50;DAKO)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、細胞を二次抗体ヤギ抗マウス488(1:300;Life Technologies)と室温で2時間DAPIと共にインキュベートした。PBSを用いて細胞を洗浄し、イメージングを行った(
図12)。
【0238】
ARPE-19細胞をコンフルエンスまで増殖させ、1%で3週間維持した。細胞をTGβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)で7日間処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。細胞を一次抗体、マウス抗サイトケラチン(1:250;Abcam)またはウサギ抗ZO1(1:250;Life Technologies)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、細胞を二次抗体ヤギ抗マウス488およびヤギ抗ウサギ594(1:300;Life Technologies)と室温で2時間DAPIと共にインキュベートした。PBSを用いて細胞を洗浄し、イメージングを行った。
【0239】
ARPE-19細胞をコンフルエンスまで増殖させ、1%で3週間維持した。細胞をTGβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)で7日間処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。細胞を一次抗体ウサギ抗ZO1(1:250;Life Technologies)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、細胞を二次抗体ヤギ抗ウサギ594(1:300;Life Technologies)と室温で2時間DAPIと共にインキュベートした。PBSを用いて細胞を洗浄し、イメージングを行った(
図14A~14D)。
【0240】
ARPE-19細胞をコンフルエンスまで増殖させ、1%で7~10日間維持した。細胞をTGβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)で7日間処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。細胞を一次抗体ウサギ抗RUNX1(1:100;LifeSpan Biosciences)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、細胞を二次抗体ヤギ抗マウス594(1:300;Life Technologies)と室温で2時間DAPIと共にインキュベートした。PBSを用いて細胞を洗浄し、イメージングを行った(
図15)。
【0241】
ARPE-19細胞をコンフルエンスまで増殖させ、1%で7~10日間維持した。細胞をTGβ1、TGFβ2、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)で7日間処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。細胞を一次抗体ウサギ抗RUNX1(1:100;LifeSpan Biosciences)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、細胞を二次抗体ヤギ抗ウサギ594(1:300;Life Technologies)と室温で2時間DAPIと共にインキュベートした。PBSを用いて細胞を洗浄し、イメージングを行った(
図16)。
【0242】
ARPE-19細胞をコンフルエンスまで増殖させ、1%で7~10日間維持した。細胞をTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(10ng/ml)で7日間処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。細胞を一次抗体ウサギ抗RUNX1(1:100;LifeSpan Biosciences)およびマウス抗サイトケラチン(1:250;Abcam)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、細胞を二次抗体ヤギ抗マウス488およびヤギ抗ウサギ594(1:300;Life Technologies)と室温で2時間DAPIと共にインキュベートした。PBSを用いて細胞を洗浄し、イメージングを行った(
図17)。
【0243】
実施例4:RUNX1発現およびRUNX1阻害剤の効果
RUNX1発現は、PVRを有する異なるドナーからの膜において共通である
RUNX1発現は、PVRを有する異なるドナーからの膜における共通の特徴であった(
図19Aおよび
図19B)。新たに得たドナーヒトPVR膜(ケース1「PVR 01」および3「PVR 03」)を10%のホルマリン中で終夜固定し、切片化(6μm)した。連続切片を100%のキシレン中で脱パラフィンし、一連のエタノール工程において再水和させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄した。沸騰しているクエン酸緩衝液(pH6)中で熱誘導エピトープ回復を行った。スライドをブロッキングし、一次抗体ウサギ抗RUNX1(1:100;LifeSpan Biosciences)と4℃で終夜インキュベートした後、二次ヤギ抗ウサギAlexa Fluor 594(1:300 Life Technologies)およびDAPIとインキュベートした。次にスライドを洗浄し、イメージングを行った。これらのデータは、PVRを有する異なるドナーの間での共通のRUNX1発現(例えば、RUNX1のレベル)を指し示す。
【0244】
増殖マーカーKi67は、RUNX1についてと類似のパターンを有する
Ki67の発現により実証されるように、PVR膜内のRUNX1を発現する細胞の集団は活発に増殖した(
図20Aおよび
図20B)。新たに得たドナーヒトPVR膜を10%のホルマリン中で終夜固定し、切片化(6μm)した。連続切片を100%のキシレン中で脱パラフィンし、一連のエタノール工程において再水和させ、PBS中で洗浄した。沸騰しているクエン酸緩衝液(pH6)中で熱誘導エピトープ回復を行った。スライドをブロッキングし、一次抗体ウサギ抗Ki67(1:100;Novus Biologicals)と4℃で終夜インキュベートした後、二次ヤギ抗ウサギAlexa Fluor 594(1:300 Life Technologies)およびDAPIとインキュベートした。スライドを洗浄し、イメージングを行った。RUNX1について、スライドをブロッキングし、一次抗体ウサギ抗RUNX1(1:100;LifeSpan Biosciences)と4℃で終夜インキュベートした後、二次ヤギ抗ウサギAlexa Fluor 594(1:300 Life Technologies)およびDAPIとインキュベートした。スライドを洗浄し、イメージングを行った。これらのデータは、PVR膜内のRUNX1を発現する細胞は活発に増殖したことを実証する。これは、Ki67の発現により実証された。
【0245】
RUNX1タンパク質発現レベルは成長因子誘導性EMTにおいて増加する
RUNX1タンパク質発現レベルは、成長因子誘導性EMTにおいて増加した(
図21Aおよび
図21B)。成長因子TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6を含む組合せ処理を用いた処理により処理の3および7日後にRUNX1タンパク質の増加したレベルが観察された。RUNX1およびRUNX2 RNA発現の増加もまた、成長因子を用いた処理により処理の3および7日後に観察された。ARPE-19細胞を完全培地中100,000細胞の密度において6ウェルプレート(6-well pates)に播種した。コンフルエンスにおいて、細胞を成長因子TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ処理を用いて処理した。氷冷したPBSを用いて細胞を洗浄し、溶解させ、3および7日の時点において回収し、RUNX1(1:200、SantaCruz Biotechnology、Dallas、Texas)およびローディングコントロールとしてのβ-アクチン(1:1000、Cell Signaling Technology、Danvers、MA)についてイムノブロットした。ARPE-19細胞をまた、完全培地中100,000細胞の密度において6ウェルプレートに播種した。コンフルエンスにおいて、細胞を成長因子TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ処理を用いて処理した。PBSを用いて細胞を洗浄し、溶解させ、回収した。mRNA発現の定量的RT-PCRを行い、発現レベルにおける相対的な倍率変化として値を報告した。これらのデータは、RUNX1タンパク質レベル、およびRUNX1 RNAの増加が、成長因子処理を用いて観察されたことを指し示す。
【0246】
RUNX1阻害はEMTの阻害を結果としてもたらした
Ro5-3335を使用したRUNX1阻害は、EMTの阻害を結果としてもたらした。ARPE-19細胞をコンフルエンスまで増殖させ、1%の血清中で7~10日間維持した(
図22)。細胞を150μMのRUNX1阻害剤(Ro5-3335、Calbiochem)ありまたはなし(例えば、ビヒクル)で、成長因子TGFβ2、TNFαおよびIL-6(各10ng/ml)を用いて3日間処理した。結果は、ビヒクル処理細胞と比較してEMTを実証しなかった(または低減されたEMTを実証した)。EMTは、細胞形状などの形態学的変化により決定した。
【0247】
さらに、ARPE-19細胞におけるRUNX1小分子阻害剤Ro5-335を用いた処理はEMTを防止した。これは、上皮マーカーであるサイトケラチンの低減ならびにフィブロネクチン、および平滑筋アクチンなどの間葉マーカーの増加により評価した(
図23Aおよび
図23B)。ARPE-19細胞をコンフルエンスまで増殖させ、1%で7~10日間維持した。細胞を150uMのRUNX1阻害剤(Ro5-3335、Calbiochem)ありまたはなしで、TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6(各10ng/ml)の組合せを用いて、またはビヒクルで、3日間処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。細胞を一次抗体、マウス抗サイトケラチン(1:250;Abcam)、またはウサギ抗フィブロネクチン(1:500、Sigma)、または平滑筋アクチン(1:50;DAKO)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、細胞をそれぞれ二次抗体ヤギ抗マウス488またはヤギ抗ウサギ594(1:300;Life Technologies)と室温で2時間DAPIと共にインキュベートした。PBSを用いて細胞を洗浄し、イメージングを行った。これらのデータは、RUNX1の阻害(例えば、小分子を用いる)はEMTを防止することを示した。
【0248】
成長因子は、ヒト増殖性硝子体網膜症の膜に由来するC-PVR細胞においてEMTを誘導した
成長因子、例えば、TNFα、TGFβ2およびIL-6はヒト増殖性硝子体網膜症の膜に由来するC-PVR細胞においてEMTを誘導した(
図24)。EMTは、組合せ処理(例えば、TNFα、TGFβ2およびIL-6)における、より細長の線維芽細胞様形状の細胞などの細胞形状といった形態学的変化として評価した。C-PVR細胞をコンフルエンスまで増殖させた。細胞をTGFβ2、TNFαの組合せ、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)で7日間処理した。これらのデータは、成長因子はC-PVR細胞においてEMTを誘導したことを実証する。
【0249】
さらに、成長因子(例えば、TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFα、およびIL-6の組合せ)は、ヒト増殖性硝子体網膜症からのC-PVR細胞においてEMTを誘導した(
図25)。C-PVR細胞をコンフルエンスまで増殖させた。細胞をTGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ(各10ng/ml)で7日間処理した。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定化した。細胞を一次抗体、マウス抗サイトケラチン(1:250;Abcam)または平滑筋アクチン(1:50;DAKO)と4℃で終夜インキュベートした。翌日、細胞を二次抗体ヤギ抗マウス488(1:300;Life Technologies)と室温で2時間DAPIと共にインキュベートした。PBSを用いて細胞を洗浄し、イメージングを行った。これらのデータは、成長因子(例えば、TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFα、およびIL-6の組合せ)は、ヒト増殖性硝子体網膜症からのC-PVR細胞においてEMTを誘導する(例えば、サイトケラチンおよびα-平滑筋アクチンにおいて変化を引き起こす)ことを実証した。
【0250】
RUNX1発現レベルは成長因子誘導性EMTにおいて増加した
RUNX1発現(例えば、RNA)およびRUNX1タンパク質の増加が成長因子誘導性EMTにおいて観察された(
図26Aおよび
図26B)。C-PVR細胞を12ウェルプレートに播種した。コンフルエンスにおいて、細胞を成長因子TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ処理を用いて処理した。PBSを用いて細胞を洗浄し、溶解させ、回収した。mRNA発現の定量的RT-PCRを行い、発現レベルにおける相対的な倍率変化として値を報告した。C-PVR細胞を6ウェルプレートにも播種した。コンフルエンスにおいて、細胞を成長因子TGFβ2、TNFα、ならびにTGFβ2、TNFαおよびIL-6の組合せ処理を用いて処理した。氷冷したPBSを用いて細胞を洗浄し、溶解させ、7日の時点において回収し、RUNX1(1:200、SantaCruz Biotechnology、Dallas、Texas)、N-カドヘリン(1:500、Santa Cruz Biotechnology)、Snail(1:500、Abcam)、Twist(Abcam)およびローディングコントロールとしてのベータ-アクチン(1:1000、Cell Signaling Technology、Danvers、MA)についてイムノブロットした。これらのデータは、成長因子(例えば、TGFβ2および組合せ-TGFβ2、TNFα、およびIL-6)はC-PVR細胞においてEMTマーカーの変化を引き起こしたことを実証する。
【0251】
RUNX1阻害は、メトトレキサートと比較して、ARPE-19細胞およびC-PVR細胞の増殖の阻害においてより効果的であった
RUNX1阻害は、メトトレキサートを用いた処理と比較して、ARPE-19細胞の増殖の阻害においてより有効であった(
図27Aおよび
図27B)。さらに、データは、RUNX1阻害は処理(例えば、メトトレキサートなど)との組合せにおいてアジュバントとして使用することができることを報告した。ARPE 19細胞を96ウェルプレート中で8時間培養した後、増殖培地中のRUNX1阻害剤(Ro5-3335、Calbiochem)もしくはメトトレキサート(Sigma)またはビヒクルのみを用いて24または48時間の期間にわたり処理した。細胞を洗浄し、CyQuant Direct核酸染色剤を加え、インキュベーター中37℃でインキュベートした。蛍光リードアウトをプロトコール中に指示される通りの波長において測定した。これらのデータは、メトトレキサートおよびRUNX1阻害剤の有効性の比較を実証し、RUNX1阻害はより効果的であることを指し示した。類似の結果がC-PVR細胞においても観察された。例えば、RUNX1阻害はC-PVR細胞の増殖の阻害においてメトトレキサートを用いた処理より有効であることが示された(
図28Aおよび
図28B)。
【0252】
RUNX1ノックダウンはARPE-19細胞においてEMTを阻害し、C-PVR細胞においてEMTを部分的に阻害した
siRNAを使用するRUNX1阻害は、EMTの阻害を結果としてもたらした(
図29)。ARPE-19細胞を60~70%コンフルエンスまで増殖させた。細胞にsiScrambleまたはsiRUNX1を終夜トランスフェクトし、成長因子TGFβ2、TNFαおよびIL-6(10ng/ml)を用いて2日間処理した。EVOS顕微鏡を使用して明視野画像を撮影した。データは、RUNX1ノックダウンはARPE-19細胞においてEMTを阻害することを実証した。同様に、siRNAを使用するRUNX1阻害は、C-PVR細胞においてEMTの阻害を結果としてもたらした(
図31)。C-PVR細胞を60~70%コンフルエンスまで増殖させた。細胞にsiScrambleまたはsiRUNX1を終夜トランスフェクトし、成長因子TGFβ2、TNFαおよびIL-6(各10ng/mL)を用いて2日間処理した。EVOS顕微鏡を使用して明視野画像を撮影したところ、明視野画像はEMTの阻害を示した。EMTを形態学的変化(例えば、細胞形状)により決定した。
【0253】
成長因子誘発性のRUNX1誘導はsiRNAを使用して阻害された
成長因子誘発性のRUNX1誘導はsiRNAを使用して阻害された。ARPE-19細胞を60~70%コンフルエンスまで増殖させた。細胞にsiScrambleまたはsiRUNX1を終夜トランスフェクトし、成長因子TGFβ2、TNFαおよびIL-6(10ng/ml)を用いて2日間処理した。氷冷したPBSを用いて細胞を洗浄し、溶解させ、回収し、RUNX1(1:200、SantaCruz Biotechnology、Dallas、Texas)、およびローディングコントロールとしてのグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)(1:1000、SantaCruz Biotechnology)についてイムノブロットした。これらのデータは、これらの各成長因子(例えば、TGFβ2、TNFαおよびIL-6)はRUNX1のタンパク質発現を誘導したこと、およびそのような誘導は成長因子を組み合わせた場合、より強かったことを示す。さらに、データはまた、siRNA処理は、これらの各成長因子単独によりまたはその組合せにより誘発されるRUNX1の誘導を効率的に低減することを示した。このデータは、RUNX1阻害はPVRに関する限りこれらの成長因子の効果を制限するために使用できることを実証した。
【0254】
RUNX1阻害剤を用いた処理後の外植片モデルにおいて、ヒトPVRの有意な低減が観察された
RUNX1阻害剤Ro5-3335を用いた処理後に、外植片モデルにおいてヒトPVRの有意な低減が観察された(
図32A~32Bおよび
図33A~33B)。この結果は、2人の異なるドナーから観察された。PVR膜を患者から新たに得、24ウェルプレート中に入れたgrowth factor-reduced Matrigel(BD Biosciences)中に置いた。30μlのマトリゲルを使用して、ウェルの縁に触れることなく24ウェルプレートの底をコーティングした。PVR膜を入れた後、Matrigelを固化させるために培地なしで37℃の細胞インキュベーター中で10分間外植片プレートをインキュベートした。500μlの培地を各ウェルに加え、5%のCO
2で37℃でインキュベートした。外植片をRUNX1阻害剤(Ro5-3335)を用いて処理した。個々の外植片の位相コントラスト写真を毎日撮影した。
【0255】
RUNX1阻害とメトトレキサートとの組合せを用いて相乗効果が観察された
外植片データは、外植片モデルにおいてPVR膜の成長の低減を明らかにした(reveled)。さらに、RUNX1阻害(例えば、Ro5-3335を用いる)をメトトレキサートと組み合わせた場合に相乗効果が観察された(
図34Aおよび
図34B)。PVR膜を患者から新たに得、growth factor-reduced Matrigel(BD Biosciences)中に置き、24ウェルプレート中に入れた。30μlのマトリゲルを使用して、ウェルの縁に触れることなく24ウェルプレートの底をコーティングした。入れた後、Matrigelを固化させるために培地なしで37℃の細胞インキュベーター中で10分間、PVR膜外植片プレートをインキュベートした。500μlの培地を各ウェルに加え、5%のCO
2で37℃でインキュベートした。外植片をRUNX1阻害剤(Ro5-3335)またはRo5-3335とメトトレキサートとの組合せを用いて処理した。個々の外植片の位相コントラスト写真を毎日撮影した。
【0256】
レナリドミドはC-PVR細胞において増殖を阻害した
C-PVR細胞をレナリドミドを用いて処理したところ、レナリドミド処理はC-PVR細胞の増殖を有意に低減することが見出された。レナリドミド処理は、単独でまたはRUNX1阻害剤と組み合わせて、PVRの治療のために使用され得る。
【0257】
レナリドミドは、40および80nMで、48および72時間においてC-PVR細胞の増殖を阻害した(
図35A~35D)。40nM、および80nMにおいてレナリドミドを用いて、処理の48および72時間後にCyQuant細胞増殖アッセイを行った。データをビヒクル処理と比較したところ、72時間時において生細胞のパーセントの有意な低減を示した。C-PVR細胞を96ウェルプレート中で8時間培養した後、増殖培地中のレナリドミド(Sigma-Aldrich)またはビヒクルのみを用いて48または72時間の期間にわたり処理した。細胞を洗浄し、CyQuant Direct、および核酸染色剤を加え、37℃でインキュベートした。蛍光リードアウトをプロトコール中に指示される通りの波長において測定した。
【0258】
他の態様
本発明をその詳細な説明と組み合わせて記載したが、上述の記載は、本発明の範囲を例示することを意図したものであり、該範囲を限定することは意図せず、該範囲は、添付の請求項の範囲により定義される。他の局面、利点、および改変は、添付の請求項の範囲内である。
【0259】
本明細書において参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書において参照される全ての米国特許および公開または未公開米国特許出願は、参照により組み入れられる。本明細書において参照される全ての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において参照されるアクセッション番号により指し示されるGenbankおよびNCBIの寄託は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において参照される全ての他の公開された参考文献、文献、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0260】
本発明をその好ましい態様に関して特に示し、記載したが、添付の請求項により包含される本発明の範囲から離れることなく形態および詳細における様々な変更が本発明において為され得ることは、当業者により理解されるであろう。
【配列表】