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▶ クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/24 20060101AFI20240110BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   B60T 13/12 20060101ALI20240110BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60T13/24
B60K1/00
B60T13/12
B60T13/74 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020550852
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019054820
(87)【国際公開番号】W WO2019179726
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-10-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】102018106479.9
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/087914(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1479644(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0152078(US,A1)
【文献】独国実用新案第29613282(DE,U1)
【文献】特開平6-74271(JP,A)
【文献】特開2011-21626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動系(50)であって、少なくとも1つの電気駆動モータ(110,111,112)、少なくとも1つのトランスミッション(121,122,123)および少なくとも1つのホイールハブ(131,132)を備えており、前記少なくとも1つのトランスミッション(121,122,123)は、前記少なくとも1つの電気駆動モータ(110,111,112)と前記少なくとも1つのホイールハブ(131,132)との間に配置されている、駆動系(50)において、
前記少なくとも1つの電気駆動モータ(110,111,112)、前記少なくとも1つのトランスミッション(121,122,123)および前記少なくとも1つのホイールハブ(131,132)を有する前記駆動系(50)を備えた電動商用車用の高速ブレーキ装置において、
車両ブレーキ(141,142)が、前記駆動系(50)に沿って、前記少なくとも1つのホイールハブ(131,132)から見て前記トランスミッションの後方で前記少なくとも1つの電気駆動モータ(110,111,112)の前方または後方に配置されており、前記車両ブレーキ(141,142)は、以下のアクチュエータ、すなわち空圧式のアクチュエータ、電気式のアクチュエータのうちの少なくとも1つを有しており、
前記車両ブレーキ(141,142)が、液体冷却手段を有し、ブレーキライニングを使用した機械的摩擦を介して制動作用を生ぜしめるように形成されていることを特徴とし、
前記少なくとも1つの電気駆動モータ(110)と前記少なくとも1つのホイールハブ(131,132)との間に、ディファレンシャルギア(150)が配設されている、駆動系(50)
【請求項2】
前記少なくとも1つの電気駆動モータ(110,111,112)用の液体冷却手段が設けられている、請求項1記載の駆動系(50)
【請求項3】
前記車両ブレーキ(141,142)は、パーキングブレーキ機能を有している、請求項1または2記載の駆動系(50)
【請求項4】
前記ディファレンシャルギア(150)と1つの電気駆動モータ(110)との間に、別のトランスミッション(123)が配設されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の駆動系(50)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのトランスミッション(121,122,123)は、前記少なくとも1つのホイールハブ(131,132)内に組み込まれている、請求項からまでのいずれか1項記載の駆動系(50)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電気駆動モータ(110,111,112)、前記少なくとも1つのトランスミッション(121,122,123)および前記少なくとも1つの車両ブレーキ(141,142)は、対向して位置する前記ホイールハブ(131,132)の間でアクスルに沿って配置されている、請求項からまでのいずれか1項記載の駆動系(50)。
【請求項7】
請求項からまでのいずれか1項記載の駆動系(50)が設けられていることを特徴とする、電動商用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置、駆動系、商用車および特に電動商用車用の高速ブレーキに関する。
【0002】
従来の商用車において、駆動機械(例えば内燃機関)はドライブアクスルには取り付けられていない。駆動力は、プロペラシャフトを介して駆動機械からディファレンシャルギアに伝達され、ディファレンシャルギアにおいて個々のホイールハブもしくはホイールリムへの配分が行われる。
【0003】
さらに、従来のブレーキは一般にホイールハブの内部またはそばに組み込まれる。このためにホイールブレーキは、典型的には制動されるべき車輪と同じ回転速度を有するロータ(ディスクまたはドラム)を有している。
【0004】
電動車両に関しては、駆動機械はドライブアクスル内に組み込まれてよい。この場合はいわゆるEアクスルのことである。さらに駆動装置は、可能な限りホイールハブの内部またはそばに組み込まれるべきであることが多い。
【0005】
図4A図4Cには、従来の駆動系50の例が示されており、この場合、対向して位置するホイールハブ131,132にはそれぞれ、(ドライブ)アクスル(車軸)101,102が結合している。対応するホイールハブ131,132を制動するために、各アクスル101,102にはそれぞれ車両ブレーキ141,142が形成されている。ホイールハブには車輪が取り付けられる。車輪は、必ずしも駆動系に属すものではないが、一般に存在し得るものである。
【0006】
図4Aの例では、各アクスル101,102はそれぞれ電動モータ111,112により駆動され、この場合、車両ブレーキ141,142と各電動モータ111,112との間には、トルクおよび回転速度を変換するために、各1つのトランスミッション121,122が形成されている。
【0007】
図4Bには、従来の別の駆動系50が示されており、この場合、両ホイールハブ131,132の間には車両アクスル101,102に沿って追加的なディファレンシャルギア150が形成されておりかつ別のトランスミッション123に結合している。別のトランスミッション123は、例示的にディファレンシャルギア150の後ろに、ただし依然として電気駆動モータ110の手前に位置している。図4Aに示した例の場合と同様に、図4Bの場合も、ホイールハブ131,132に作用するトルクを直接に制動する各1つの車両ブレーキ141,142が形成されている。
【0008】
図4Cには、従来の駆動系50のさらに別の例が示されており、この場合、第1のホイールハブ131は組み込まれたブレーキ141を有しており、トランスミッション121は、第1のホイールハブ131と、第1のホイールハブ131を駆動する電気駆動モータ111との間に配置されている。電気駆動モータ111もトランスミッション121も、少なくとも部分的に第1のホイールハブ131の内部にまたは傍らに組み込まれていてよい。
【0009】
この場合、図4Cに示す駆動系50は、対向して位置する第2のホイールハブ132についても同様に(鏡像対称に)形成されていてよい。
【0010】
ただしホイールブレーキ141,142は、(作用するトルクを吸収するために)かなりの規模を有していることがあるため、スペース的に問題がある。Eアクスルにおける-電気駆動装置110,111,112を含む-全てのコンポーネントをホイールハブ131,132の近傍に収納することは不可能であることが多い。
【0011】
よって、車両ブレーキをいわゆるEアクスル内に適切に組み込むための適当な解決手段に対する要求が生じる。
【0012】
前記問題の少なくとも一部は、請求項1記載のブレーキ装置および請求項6記載の駆動系により解決される。各従属請求項は、ブレーキ装置および駆動系の別の有利な構成を定義するものである。
【0013】
本発明は、商用車用のブレーキ装置であって、駆動系、少なくとも1つの電気駆動モータ、少なくとも1つのトランスミッションおよび少なくとも1つのホイールハブを備えた、ブレーキ装置に関する。当該ブレーキ装置には、駆動系の動力伝達経路に沿って少なくとも1つのホイールハブから見て少なくとも1つのトランスミッションの後方に配置された、少なくとも1つの車両ブレーキが含まれる。よって少なくとも1つの車両ブレーキは、少なくとも1つのトランスミッションと、少なくとも1つの電気駆動装置との間に配設されている。
【0014】
トランスミッションには、本発明の枠内で、トルクを伝達し、これによりトランスミッションの一方の側には他方の側におけるよりも高いトルクが作用するように構成された、任意のトランスミッションが含まれていてよい。これに相応して、トランスミッションの一方の側には高回転数のドライブアクスルが存在しかつ他方の側には低回転数のドライブアクスルが存在する。複数の実施例では、車両ブレーキは高回転数のドライブアクスルに結合しており、高回転数のドライブアクスルには同時に、ホイールハブに直接に作用するよりも小さなトルクが作用する。より小さなトルクに基づき、少なくとも1つの車両ブレーキもより小型に寸法設定され得、これにより、前記問題の少なくとも一部が解決される。
【0015】
車両ブレーキとは、本発明の枠内では、商用車の1つの車輪のみを制動するブレーキをも意味するものである。少なくとも1つの車両ブレーキにより車両全体が制動される必要はない。
【0016】
車両ブレーキは、特に制動作用を機械的な摩擦を介して(例えばブレーキライニングを使用して)生ぜしめる摩擦ブレーキである。ただし、摩擦力をもたらす形式は任意であってよい。よって車両ブレーキには、次のアクチュエータ、すなわち空圧式のアクチュエータ、液圧式のアクチュエータ、電気式のアクチュエータのうちの少なくとも1つが任意に含まれる。これらのアクチュエータは力作用を生ぜしめひいては必要とされる摩擦を発生させる。
【0017】
任意には、車両ブレーキは駆動系の動力伝達経路に沿って電気駆動モータの前方または後方に配置されている。
【0018】
任意には、車両ブレーキはパーキングブレーキ機能を有している。したがって制動力は、(例えばばね蓄えシリンダ内の)ばねにより生ぜしめられてもよい。
【0019】
任意には、ブレーキ装置は、車両ブレーキおよび/または電気駆動機械用の液体冷却手段を有している。
【0020】
本発明は、駆動系であって、電気駆動モータ、トランスミッションおよび少なくとも1つのホイールハブを備えており、トランスミッションは、電気駆動モータと少なくとも1つのホイールハブとの間に配置されている、駆動系にも関する。さらに駆動系は、上述したブレーキ装置を有している。
【0021】
任意には、電気駆動モータと少なくとも1つのホイールハブとの間に、ディファレンシャルギアが設けられている。
【0022】
任意には、2つの電気駆動モータが設けられており(例えばそのうちの1つが少なくとも1つの電気駆動装置である)、2つの電気駆動モータは、ディファレンシャルギア無しでそれぞれホイールハブに結合している。
【0023】
任意には、車両ブレーキは、電気駆動モータとホイールハブとの間に配設されている。
【0024】
任意には、トランスミッションはホイールハブ内に組み込まれている。任意には、車両ブレーキおよび/または電気駆動モータも、ホイールハブ内に組み込まれてよい。
【0025】
任意には、少なくとも1つの電気駆動モータ、少なくとも1つのトランスミッションおよび少なくとも1つの車両ブレーキは、対向して位置するホイールハブの間でアクスルに沿って配設されている。よって実施例には、全コンポーネントを備えたEアクスルも同様に含まれる。
【0026】
実施例は、上で定義した各駆動系のうちの1つを備えた車両、特に商用車にも関する。
【0027】
前記問題の少なくとも一部は、電気駆動装置と車両ブレーキとが両方共、トランスミッションの高速側に結合している一方で、車輪はトランスミッションの反対側に結合していることにより、解決される。これにより、ブレーキおよび駆動装置に作用するトルクレベルが低下させられるため、このようにして電気駆動装置および車両ブレーキを小型化しひいてはコストを節約することができる。結果として、全てのコンポーネントをEアクスル(アクスルに沿って形成された駆動系)内にコンパクトに組み込むことができる。
【0028】
本発明の実施例は、複数の異なる実施例の以下の詳細な説明および添付の図面からより良好に理解されるが、これらは本開示の特別な実施形態への限定を意味するものではなく、単に説明および理解のために役立つものであるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1A図1Dは、ディファレンシャルギア無しの本発明の実施例を示す図である。
図2図2A図2Cは、ディファレンシャルギアおよび少なくとも2つのトランスミッションユニットを備えた本発明の実施例を示す図である。
図3図3A図3Cは、ディファレンシャルギアおよびトランスミッションを備えた本発明の実施例を示す図である。
図4図4A図4Cは、従来の駆動系の例を示す図である。
【0030】
図1A図1Dには、商用車の駆動系50用のブレーキ装置の実施例が示されており、この場合、2つの電気駆動装置111,112が設けられておりひいてはディファレンシャルギアは一切必要とされない。
【0031】
以下、位置の記載は常に、駆動系に沿った動力伝達に関係するものであり、必ずしも車両における取付けに関係するものではない。
【0032】
図1Aには、第1のホイールハブ131を備えた駆動系50、第1のトランスミッション121、第1の車両ブレーキ141および第1の電動モータ111が示されている。これらのコンポーネントは、第1の車輪(例えば後輪のうちの一方;図1Aには図示せず)用の第1のドライブアクスル101に沿った第1の駆動系を成している。第1の車両ブレーキ141は、第1のホイールハブ131を制動するように構成されている。図示の実施例では、第1の車両ブレーキ141は、第1のトランスミッション121と第1の電動モータ111との間に配置されている。
【0033】
同様に第2のホイールハブ132には、第2のドライブアクスル102を介してやはり第2のトランスミッション122、第2の車両ブレーキ142および第2の電動モータ112が、第2の電動モータ112と第2のトランスミッション122との間に第2の車両ブレーキ142が配置されているように結合されている。第2の車両ブレーキ142は、第2のホイールハブ132に設けられた車両の車輪を制動するように構成されている。
【0034】
既述したように、このユニットは、(トランスミッションがトルクを伝達するため)ブレーキ141,142に対して作用するトルクが、従来のブレーキ装置の場合よりも小さくなっている、という利点をもたらす。ブレーキ141,142には確かに比較的高い回転数が存在するが、それにもかかわらず車両ブレーキ141,142は、より小型に寸法設定されていてよい。それというのも、作用するトルクがより小さくなっているからである。
【0035】
図1Bに示す別の実施例では、第1のトランスミッション121が第1のホイールハブ131内に組み込まれている、もしくはその近傍に配置されている。同様に、第2のトランスミッション122も第2のホイールハブ132内に組み込まれる。第1の車両ブレーキ141および第2の車両ブレーキ142は、図示の実施例では依然として、空間的に第1の電動モータ111および第2の電動モータ112の近傍に配置されている。
【0036】
図1Cに示す実施例では、追加的に第1の車両ブレーキ141が、第1のホイールハブ131の傍らまたは内部に組み込まれている。同様に第2の車両ブレーキ142も、第2のホイールハブ132の傍らまたは内部に組み込まれている。第1の電動モータ111と第1のホイールハブ131との間には依然として第1のアクスル101が配設されており、これにより第1の電動モータ111は、ホイールハブ131の傍らまたは内部には組み込まれていない。同じことが、同様に第2のアクスル102により第2のホイールハブ132から離間されておりかつ第2のホイールハブ132の内部または傍らには組み込まれていない第2の電動モータ112にも当てはまる。
【0037】
車両ブレーキ141,142は、駆動系50の伝達経路に沿って電気駆動モータ111,112の前または後ろに配置され得る。図1Dに示す実施例では、車両ブレーキ141,142が駆動モータ111,112の後ろに配置されているため、駆動モータ111,112はそれぞれ、各車両ブレーキ141,142と各トランスミッション121,122との間に位置する。このためには例えば、ドライブアクスル101,102が電気駆動モータ111,112を貫通して案内されてよい。
【0038】
この実施例では2つの独立した電気駆動モータ111,112が設けられていることから、別の実施例ではさらに、電気駆動モータ111,112をホイールハブ131,132の内部または傍らに組み込むこともできる。
【0039】
図2A図2Cには、ディファレンシャルギア150および少なくとも2つのトランスミッションユニット121,122を備えた本発明の別の実施例が示されている。ディファレンシャルギア150は、1つの電気駆動モータ110しか設ける必要がない、という利点をもたらす。追加的なディファレンシャルギア150は、第1のホイールハブ131と第2のホイールハブ132との間に配設されており、この場合、電動モータ110は(ホイールハブ131,132から見て動力伝達経路に沿って)ディファレンシャルギア150の後方に配置されている。
【0040】
図2A図2Cに示す実施例には、図1A図1Dの場合と同様に、各ホイールハブ131,132と各車両ブレーキ141,142との間に形成された第1のトランスミッション121および第2のトランスミッション122が含まれている。第1の車両ブレーキ141および第2の車両ブレーキ142は、ディファレンシャルギア150と各々のトランスミッション(第1のトランスミッション121および第2のトランスミッション122)との間に配置されている。
【0041】
図示の実施例では、電動モータ110は1つしか配設されておらず、この場合、車両ブレーキ141,142は駆動系の動力伝達経路に沿って電動モータ110とディファレンシャルギア150との間に配設することも、やはり可能である。
【0042】
図2A図2Cに示した各実施例の間の相違点もやはり、ホイールハブ131,132へのそれぞれ異なる組込み形式に関係している。図2Aでは、各ホイールハブ131,132にはコンポーネント(構成要素)が一切組み込まれていない。図2Bに示した実施例では、第1のトランスミッション121および第2のトランスミッション122はそれぞれ、ホイールハブ131,132に組み込まれている。図2Cに示した実施例ではさらに、第1の車両ブレーキ141および第2の車両ブレーキ142が、第1もしくは第2のホイールハブ131,132の傍らまたは内部に組み込まれている。
【0043】
この場合、個々のコンポーネントの配置順序は変わっておらず、個々のコンポーネントの位置だけがホイールハブ131,132により近づけられたに過ぎない。図2Cに示した実施例では、ディファレンシャルギア150は、例えば第1のホイールハブ131および第2のホイールハブ132から所定の間隔をあけて配置されたままであり、この場合、この間隔は第1および第2のドライブアクスル101,102により架橋される。
【0044】
図3A図3Cには、ディファレンシャルギアおよび追加的なトランスミッションを備えた本発明の実施例が示されている。図2A図2Cに示した実施例とは異なり、この場合はディファレンシャルギア150と電動モータ110との間にそれぞれ追加的な別のトランスミッション123が配置されている。追加的な別のトランスミッション123には、例えば遊星歯車伝動装置が含まれていてよい。
【0045】
その他のコンポーネントは全て、図2A図2Cに示した実施例の場合と同様に配置されているため、説明の繰返しは不要である。
【0046】
説明した全ての実施例において、コンポーネントは全て単一のアクスルに沿って配設されていてよく、この場合のアクスルは、いわゆるEアクスルを成している。したがって別の実施例では、商用車の駆動系50はEアクスルを成すものであってよく、Eアクスルの場合は車両アクスルに沿って-外側から内側に向かう方向に見て-最初にホイールハブ131,132が配置されており、次いでトランスミッションユニット121,122、次に車両ブレーキ141,142および電動モータ111,112、もしくはディファレンシャルギア150により車両ブレーキ141,142から分離された単一の電動モータ110が続いて配置されている。
【0047】
別の実施例では、少なくとも1つの車両ブレーキ141,142が、駆動系の動力伝達経路に沿って電気駆動機械110の後ろに配設されていてもよい。つまり例えば、ドライブアクスルが電動モータ110を貫通して延在しており、電動モータ110は、少なくとも1つの車両ブレーキ141,142とホイールハブ131,132との間に配置されていてもよい。
【0048】
実施例は、商用車の電気駆動式アクスルに用いられる車両ブレーキにも関係しており、本発明では、トランスミッション121,122に基づき比較的高速で回転するアクスルは、駆動装置用にもブレーキ141,142用にも利用される。これにより、小型に寸法設定された電気駆動モータ110,111,112を使用できるだけでなく、車両ブレーキ141,142も小型化することができる、ということが可能である。それというのも、制動時に加えられるべきトルクが、ホイールハブにブレーキが直接に取り付けられた場合よりも小さくなっているからである。実施例の1つの利点は、高速アクスルの利用に基づき、制動機構内での制動トルクが大幅に低下させられても同じ制動作用が達成され得る、という点にある。これにより、よりコンパクトな車両ブレーキが可能になる。さらに、アクチュエータ性能に関する要求が低くなり、このことは特に、電動モータにより駆動されるブレーキ141,142にとって有利なことである。
【0049】
車両ブレーキ141,142のより具体的な構成は、自由に選択され得る。本発明の実施例は、(電気的なアクチュエータを備えた)電気的に作動させられる車両ブレーキ141,142だけに限定されるものではない。空圧式の車両ブレーキおよび液圧式の車両ブレーキを使用することも同様に可能である。車両ブレーキ141,142には、パーキングブレーキ機能も含まれていてよく、この場合、制動力は、例えばばねにより加えられる。
【0050】
複数の実施例では、車両ブレーキ141,142は、電気駆動装置110,111,112に比較的接近して配置されているため、車両ブレーキ用および/または電気駆動機械用の液体冷却手段が設けられていてよい。両者は一緒に冷却され得る。
【0051】
本明細書、請求項および図面に開示した本発明の特徴は、個別でも、任意の組合せにおいても、本発明を実現するために重要なものであり得る。
【符号の説明】
【0052】
50 駆動系
101,102 ドライブアクスル
110,111,112 電気駆動装置
121,122 トランスミッション
123 別のトランスミッション
131,132 ホイールハブ
141,142 車両ブレーキ
150 ディファレンシャルギア
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C