(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】内視鏡処置具およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20240110BHJP
A61B 17/128 20060101ALI20240110BHJP
A61B 17/32 20060101ALI20240110BHJP
A61B 17/3205 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/128
A61B17/32 528
A61B17/3205
(21)【出願番号】P 2020558156
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040420
(87)【国際公開番号】W WO2020105316
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2018219670
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前久保 尚武
(72)【発明者】
【氏名】岸田 学
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-221059(JP,A)
【文献】特表2008-526376(JP,A)
【文献】特開2007-098076(JP,A)
【文献】特開2012-205606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠近方向を有する外筒と、
前記外筒の内腔に配置されている内筒と、
前記内筒の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部を有している線状物と、を有し、
前記外筒は、前記内筒に対して遠近方向に移動が可能であって、前記内筒の遠位端を前記外筒から露出させることが可能であり、
前記内筒は、外径が大きい大径部を有しており、
前記外筒と前記内筒の間に潤滑油層が配置されており、
前記潤滑油層は、
前記外筒が前記内筒に対して遠近方向に移動する任意の状態において、前記大径部の最も外径の大きい区間には配置されていないことを特徴とする内視鏡処置具。
【請求項2】
前記潤滑油層は、複数であり、
前記外筒の内表面と前記内筒の外表面の両方に
前記潤滑油層がそれぞれ固定されている請求項1に記載の内視鏡処置具。
【請求項3】
前記潤滑油層は、前記内筒の遠位端に接しない位置に配置されている請求項1または2に記載の内視鏡処置具。
【請求項4】
前記潤滑油層の遠位端から近位端までの長さは、前記外筒の遠位端から近位端までの長さよりも短く、かつ前記内筒の遠位端から前記大径部の遠位端までの長さよりも短い請求項1~3のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項5】
前記潤滑油層は、前記外筒の遠近方向に垂直な一断面において、前記外筒の内表面と前記内筒の外表面の少なくとも一方の全周にわたって
固定されている請求項1~4のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項6】
前記大径部は、前記内筒の遠近方向の中点よりも近位側にあり、
前記潤滑油層は、遠近方向において、前記内筒の遠位端よりも近位側、かつ前記大径部の遠位端よりも遠位側に配置されている請求項1~5のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項7】
前記大径部は、前記内筒の遠近方向の中点よりも近位側にあり、
前記内筒は、前記大径部よりも遠位側に遠位側大径部を有しており、
前記潤滑油層は、前記遠位側大径部の近位端よりも近位側に配置されている請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項8】
前記潤滑油層は、前記内筒の外表面に
固定されており、
前記潤滑油層が配置されている部分は、前記外筒を前記内筒に対して遠近方向に移動させた際に前記外筒から露出しない部分である請求項1~7のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項9】
前記内筒は、コイルである請求項1~8のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項10】
前記潤滑油層は、シリコー
ンを含む
皮膜である請求項1~9のいずれか一項に記載の内視鏡処置具。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の内視鏡処置具を製造する方法であって、
前記外筒と前記内筒を準備する第1工程と、
前記内筒の前記大径部よりも遠位側の外表面に潤滑油を塗布する第2工程と、
前記内筒の近位端を、前記外筒の遠位端から前記外筒の内腔に挿通する第3工程と、を有することを特徴とする内視鏡処置具の製造方法。
【請求項12】
前記第3工程の後に、前記外筒の遠位端部を洗浄する第4工程を行う請求項11に記載の内視鏡処置具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を用いた手術や処置において、止血、体内組織の採取や切除、体内組織への薬液の注射等を目的として使用される内視鏡処置具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)等の内視鏡を用いた処置において、病変部の切除によって出血した際の止血や病変部を縫縮するためのクリップ、病変部を切除するためのスネアやナイフ、体内組織を採取するための鉗子、体内組織へ薬液を注入するための局注針等の処置器具である内視鏡処置具が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、針と該針に取り付けられる内管との接続部における水密性を向上させ、内管が外管内を摺動可能である内視鏡処置具が記載されている。特許文献2には、インナーシースとアウターシースを有する操作ワイヤを備え、インナーシースとアウターシースの螺旋構造によりインナーシースとアウターシースの洗浄効果を向上させた内視鏡処置具が記載されている。特許文献3には、内筒部と外筒部とスライド部とを有し、外筒部の回りに設けられたスライド部を回転させることによって内視鏡先端の処置具を回転させることが可能であり、また、スライド部を進退操作することによって処置部の進退を可能にすることができる内視鏡処置具が記載されている。特許文献4には、内筒と外筒と、内筒と外筒の間にオイルを塗布したシールリングとを備えた内視鏡用結紮用具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-188588号公報
【文献】特開2012-200518号公報
【文献】特開2005-198868号公報
【文献】特開平11-056861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリップ等の処置器具は、内視鏡処置具の先端に取り付けられ、外筒に収納した状態で内視鏡に挿通される。処置器具を目的の箇所で外筒から突出させる際には、外筒と内筒とを摺動させる。例えば、大腸等では、距離が長く、かつ蛇行の多い箇所を内視鏡処置具が挿通するが、このような箇所においては内視鏡処置具も蛇行した状態となり、外筒と内筒との摩擦が大きくなって摺動が困難となって、処置器具の突出に時間がかかってしまうおそれや処置器具を突出させることができないおそれがある。内視鏡処置具を用いた手技、特に止血や縫縮といった処置は素早い作業が求められる。
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外筒と内筒との摺動性を向上させ、意図したタイミングで確実に処置器具を外筒から突出させることができる内視鏡処置具およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 遠近方向を有する外筒と、外筒の内腔に配置されている内筒と、内筒の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部を有している線状物と、を有し、外筒は、内筒に対して遠近方向に移動が可能であって、内筒の遠位端を外筒から露出させることが可能であり、内筒は、外径が大きい大径部を有しており、外筒と内筒の間に潤滑油層が配置されており、潤滑油層は、大径部の最も外径の大きい区間には配置されていないことを特徴とする内視鏡処置具。
[2] 潤滑油層は、外筒の内表面と内筒の外表面の両方に配置されていることが好ましい。
[3] 潤滑油層は、内筒の遠位端に接しない位置に配置されていることが好ましい。
[4] 潤滑油層の遠位端から近位端までの長さは、外筒の遠位端から近位端までの長さよりも短く、かつ内筒の遠位端から大径部の遠位端までの長さよりも短いことが好ましい。
[5] 潤滑油層は、外筒の遠近方向に垂直な一断面において、外筒の内表面と内筒の外表面の少なくとも一方の全周にわたって配置されていることが好ましい。
[6] 潤滑油層は、遠近方向において、内筒の遠位端よりも近位側、かつ大径部の遠位端よりも遠位側に配置されていることが好ましい。
[7] 内筒は、大径部よりも遠位側に遠位側大径部を有しており、潤滑油層は、遠位側大径部の近位端よりも近位側に配置されていることが好ましい。
[8] 潤滑油層は、内筒の外表面に配置されており、潤滑油層が配置されている部分は、外筒を内筒に対して遠近方向に移動させた際に外筒から露出しない部分であることが好ましい。
[9] 内筒は、コイルであることが好ましい。
[10] 潤滑油層は、シリコーンオイルを含むことが好ましい。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の内視鏡処置具を製造する方法であって、外筒と内筒を準備する第1工程と、内筒の大径部よりも遠位側の外表面に潤滑油を塗布する第2工程と、内筒の近位端を、外筒の遠位端から外筒の内腔に挿通する第3工程と、を有することを特徴とする内視鏡処置具の製造方法。
[12] 第3工程の後に、外筒の遠位端部を洗浄する第4工程を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内視鏡処置具によれば、潤滑油層が外筒と内筒との間に配置されていることによって、外筒と内筒との摺動性を向上させることができ、内視鏡処置具を蛇行している箇所の多い生体内管腔に挿通した状態であっても外筒の内表面と内筒の外表面との間に大きな摩擦が生じにくく、外筒と内筒とを摺動させて処置器具を外筒から容易に突出させることが可能である。また、潤滑油層が大径部の最も外径の大きい区間には配置されていないことにより、潤滑油層が外筒の外側に露出しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態における内視鏡処置具の全体の平面図を表す。
【
図2】
図1に示した内視鏡処置具の遠近方向に沿った断面模式図を表す。
【
図3】
図2に示した内視鏡処置具の遠近方向に垂直なIII-III断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
図1は本発明の実施の形態における内視鏡処置具の全体の平面図であり、
図2は内視鏡処置具の遠近方向に沿った断面模式図であり、
図3は内視鏡処置具の遠近方向に垂直な断面図である。
【0012】
図1~
図3に示すように、本発明の内視鏡処置具1は、遠近方向を有する外筒10と、外筒10の内腔に配置されている内筒20と、内筒20の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部31を有している線状物30と、を有している。
【0013】
本発明において、近位側とは外筒10や内筒20の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、すなわち処置対象側を指す。また、外筒10や内筒20の延在方向を遠近方向と称する。径方向とは外筒10や内筒20の半径方向を指し、径方向において内方とは外筒10や内筒20の軸中心側に向かう方向を指し、径方向において外方とは内方と反対側に向かう方向を指す。なお、
図1および
図2において、図の右側が近位側であり、図の左側が遠位側である。
【0014】
内視鏡処置具1は、ESDやEMR等の内視鏡を用いた処置において、処置器具との接続部31に処置器具を接続する。処置器具は、病変部の切除、止血、病変部の縫縮、体内組織の採取、体内組織への薬液の注入等に用いられる。処置器具の具体例としては、病変部の切除にはスネアやナイフ、止血や病変部の縫縮にはクリップ、体内組織の採取には鉗子、体内組織への薬液の注入には局注針等が挙げられる。
【0015】
外筒10は、内筒20に対して遠近方向に移動が可能である。つまり、外筒10を内視鏡処置具1に対して相対的に移動させ、外筒10と内筒20の位置関係を動かすことができる。例えば、内筒20を動かさずに外筒10を遠近方向に移動させることが可能であってもよく、外筒10を動かさずに内筒20を遠近方向に移動させることが可能であってもよい。
【0016】
外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させることにより、内筒20の遠位端20aを外筒10から露出させることが可能である。外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させることによって、内筒20の遠位端20aを外筒10から露出させることが可能であることにより、接続部31に接続されている処置器具を外筒10から突出させることができる。
【0017】
図2に示すように、内筒20は、外径が大きい大径部21を有しており、外筒10と内筒20の間に潤滑油層60が配置されており、潤滑油層60は、大径部21の最も外径の大きい区間には配置されていないことを特徴とする。内視鏡処置具1において、潤滑油層60が外筒10と内筒20の間に配置されていることにより、潤滑油層60が外筒10と内筒20との摺動性を高め、接続部31に接続されている処置器具を外筒10から突出させやすくなる。また、潤滑油層60が大径部21の最も外径の大きい区間には配置されていないことにより、潤滑油層60が外筒10の外部へ露出することを防止できる。そのため、露出した潤滑油層60の一部が外筒10や内筒20の表面に付着してハンドリングが悪くなること、露出した潤滑油層60の一部が接続部31に付着して処置器具が取り付けにくくなることや脱落しやすくなること、また、後述するハンドル50等に付着して内視鏡処置具1の操作が困難となること等を防止できる。
【0018】
外筒10は、遠近方向を有し、遠近方向に延在する内腔を有している。また、外筒10の内腔に内筒20が配置されている。外筒10は、内腔に接続部31を配置可能であることが好ましい。外筒10の内腔に接続部31を配置可能であることにより、接続部31に接続された処置器具の少なくとも一部を外筒10内に配置することができる。そのため、内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内を通って処置器具を処置対象部位付近に搬送するまでの間に、処置器具が内視鏡内の鉗子口や鉗子チャンネル内、処置対象部位以外の体内組織等を傷付けることを防ぐことができる。
【0019】
外筒10は、他の部材に固定されていないことが好ましい。外筒10が他の部材に固定されていないことにより、内視鏡処置具1を用いて処置を行う際に、処置器具の内視鏡処置具1内への収納や内視鏡処置具1からの露出を、内視鏡処置具1の径方向における最も外側面に配置されている外筒10を遠近方向に移動させることによって行うため、内視鏡処置具1の操作性を向上させることができる。
【0020】
外筒10が他の部材に固定されていない場合、内筒20は他の部材に固定されていることが好ましい。内筒20を固定する部材としては、例えば、
図1および
図2に示すように、内視鏡処置具1のハンドル50等が挙げられる。内視鏡処置具1において、外筒10が他の部材に固定されておらず、内筒20が他の部材に固定されていることにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動が行いやすく、内視鏡処置具1への処置器具の収納や露出の操作が行いやすくなる。なお、ハンドル50の詳細については後述する。
【0021】
内筒20は、遠近方向を有し、遠近方向に延在する内腔を有している。内筒20の内腔に線状物30が配置されており、線状物30は内筒20に対して遠近方向に移動が可能であることが好ましい。線状物30が内筒20に対して遠近方向に移動可能であることにより、接続部31に接続された処置器具を容易に動作させることができる。具体的には、処置器具がクリップである場合、線状物30を内筒20に対して遠近方向に移動させることにより、クリップを開閉することや開閉度を調整することができる。
【0022】
外筒10および内筒20は、例えば、金属線材や板材がらせん状に巻回されているコイル状筒体、金属や合成樹脂から形成された短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から形成された筒体等を有することができる。
【0023】
外筒10および内筒20を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。外筒10および内筒20を構成する金属は、中でも、Ni-Ti合金であることが好ましい。外筒10や内筒20を構成する金属がNi-Ti合金であることにより、外筒10や内筒20を形状記憶性や高弾性に優れたものとすることができる。
【0024】
外筒10および内筒20を構成する樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。
【0025】
外筒10を構成する材料は、フッ素系樹脂であることが好ましく、PTFEであることがより好ましい。外筒10を構成する材料がフッ素系樹脂であることにより、外筒10の内腔に配置されている内筒20との摺動性が高まり、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動が行いやすくなる。また、内筒20を構成する材料は、外筒10を構成する材料と異なるものであることが好ましく、例えば、外筒10を構成する材料がフッ素系樹脂である場合、内筒20を構成する材料はポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。内筒20を構成する材料が外筒10を構成する材料と異なるものであることにより、外筒10との摺動性を高めることができ、外筒10と内筒20との遠近方向の移動が容易となる。
【0026】
外筒10を構成する材料は、透明または半透明であることが好ましい。外筒10を構成する材料が透明または半透明であることにより、外筒10の内腔に配置されている内筒20と外筒10との位置関係を目視にて確認することができ、内視鏡処置具1の操作性を向上させることができる。
【0027】
内筒20は、コイルであることが好ましい。内筒20がコイルであることにより、内筒20を剛性と可撓性とのバランスがとれたものとすることができ、内視鏡処置具1を内視鏡の鉗子口から処置対象部位まで挿通しやすく、また、外筒10と内筒20との遠近方向の移動や、内筒20と線状物30との遠近方向の移動が行いやすくなる。
【0028】
外筒10および内筒20の遠近方向の長さは、内視鏡の鉗子口から処置対象部位までの距離等を考慮し、線状物30や外筒10、内筒20の遠近方向の長さ等に応じて適切な長さを選択することができる。外筒10および内筒20の遠近方向の長さとしては、例えば、1000mm以上3000mm以下とすることができる。
【0029】
内筒20の遠近方向の長さは、外筒10の遠近方向の長さよりも長いことが好ましい。内筒20の遠近方向の長さが外筒10の遠近方向の長さよりも長いことにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動が行いやすくなり、体内において外筒10を過剰に突出させて処置対象部位以外の体内組織等を傷付けることを防止できる。なお、内筒20の遠近方向の長さは、外筒10の遠近方向の長さの1.2倍以下であることが好ましく、1.1倍以下であることがより好ましく、1.05倍以下であることがさらに好ましい。内筒20の遠近方向の長さと外筒10の遠近方向の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10の内腔に内筒20と接続部31とを十分に収めることができる。その結果、処置器具を処置対象部位へ搬送するまでの間に、処置器具が内視鏡内の鉗子口や鉗子チャンネル内、処置対象部位以外の体内組織等を傷付けにくくすることができる。
【0030】
外筒10および内筒20のサイズは、内視鏡の鉗子孔のサイズ、接続部31など内視鏡処置具1の他の部材のサイズに応じて適宜選択することができる。例えば、外筒10および内筒20の厚みは、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましい。外筒10および内筒20の厚みの下限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10および内筒20の剛性を適度なものとすることができ、内筒20に対する外筒10の遠近方向の移動が行いやすくなる。また、外筒10および内筒20の厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。外筒10および内筒20の厚みの上限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10および内筒20の可撓性を高めることができ、内視鏡の鉗子口から処置対象部位へ内視鏡処置具1を送り込むことが容易となる。
【0031】
内筒20は、外径が大きい大径部21を有している。すなわち、大径部21の外径は、内筒20の大径部21ではない部分の外径よりも大きい。内筒20が大径部21を有していることにより、潤滑油層60が大径部21よりも近位側に広がり、ハンドル50等に潤滑油層60が付着して内視鏡処置具1の操作を妨げることを防ぐことができる。
【0032】
内筒20に大径部21を形成する方法としては、例えば、内筒20の任意の場所に、筒状部材を被せて接着剤等を用いて内筒20と筒状部材とを固定する、筒状部材の内腔に内筒20を挿通して筒状部材をかしめる等して内筒20と筒状部材とを密着させる、熱収縮チューブを被せて加熱して内筒20に熱収縮チューブを密着させる等の方法が挙げられる。中でも、内筒20に筒状部材を被せ、接着剤等を用いて内筒20と筒状部材とを固定することによって大径部21を形成することが好ましい。内筒20に筒状部材を被せて内筒20と筒状部材とを固定することによって大径部21を形成することにより、大径部21の形成が容易となり、内視鏡処置具1の生産効率を高めることができる。
【0033】
線状物30は、遠近方向を有しており、遠位端部に接続部31を有している。線状物30は、遠近方向に延在する内腔を有している筒状であってもよいが、中実状であることが好ましい。線状物30が中実状であることにより、線状物30の外径を過度に大きくすることなく剛性を高めることができ、内視鏡処置具1の外径を小さく、かつ、内視鏡処置具1の挿通性を高めることができる。
【0034】
線状物30を構成する材料は、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属線材や、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PP、PE等のポリオレフィン系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂繊維等が挙げられる。中でも、線状物30を構成する材料は、ステンレス鋼の線材であることが好ましい。線状物30を構成する材料がステンレス鋼の線材であることにより、必要な強度を備えつつ、生体適合性を高めることができる。
【0035】
図示していないが、線状物30は、線状物30の表面にコーティング層を有していてもよい。線状物30がコーティング層を有していることにより、線状物30と内筒20との間の摩擦を低減して摺動性を高めることや、線状物30の強度を高めることが可能となる。コーティング層としては、例えば、PTFE、PFA、ETFE、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0036】
線状物30へのコーティング層の形成方法としては、例えば、コーティング層を形成する材料を線状物30へ被覆すればよく、例えば、浸漬法、スプレー法、流動床法、ニーダーコーター法等を用いることができる。
【0037】
線状物30の遠近方向の長さは、外筒10や内筒20の遠近方向の長さと同様に、内視鏡の鉗子口から処置対象部位までの距離等を考慮した外筒10や内筒20の遠近方向の長さに応じて適切な長さを選択することができる。線状物30の遠近方向の長さとしては、例えば、1000mm以上3000mm以下とすることができる。
【0038】
線状物30の遠近方向の長さは、外筒10の遠近方向の長さと内筒20の遠近方向の長さの両方よりも長いことが好ましい。線状物30の遠近方向の長さが外筒10の遠近方向の長さと内筒20の遠近方向の長さの両方よりも長いことにより、外筒10の内筒20に対する遠近方向の移動が行いやすくなり、体内において外筒10を過剰に突出させて処置対象部位以外の体内組織等を傷付けることを防止できる。なお、線状物30の遠近方向の長さは、内筒20の遠近方向の長さの1.15倍以下であることが好ましく、1.1倍以下であることがより好ましく、1.05倍以下であることがさらに好ましい。線状物30の遠近方向の長さと内筒20の遠近方向の長さとの比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、線状物30の遠近方向の移動を行いやすく、接続部31に接続された処置器具を動作させることが容易となる。
【0039】
線状物30の外径は、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることがさらに好ましい。線状物30の外径の下限値を上記の範囲に設定することにより、線状物30の剛性を高めることができ、内視鏡処置具1の挿通性を向上させることができる。線状物30の外径は、内筒20の内径の0.8倍以下であることが好ましく、0.5倍以下であることがより好ましく、また、0.15倍以上であることが好ましく、0.3倍以上であることがより好ましい。つまり、線状物30の外径は、内筒20の内径の0.8倍から0.15倍の範囲内であることが好ましく、0.5倍から0.3倍の範囲内であることがより好ましい。線状物30の外径の上限値を上記の範囲に設定することにより、線状物30の剛性を保ちつつ外径を小さくすることができ、内視鏡処置具1を細径化することができる。
【0040】
接続部31は、内視鏡処置具1に処置器具を接続するための部位であり、線状物30の遠位端部に設けられている。接続部31は、線状物30の一部であってもよいが、線状物30の遠位端部に処置器具を接続するための別部品であることが好ましい。接続部31が線状物30の遠位端部に設けられていることにより、線状物30への処置器具の接続や線状物30からの処置器具の取り外しが容易となり、内視鏡処置具1を用いた処置が行いやすく、また、処置時間も短縮することができる。
【0041】
接続部31が、線状物30の遠位端部に配置される線状物30とは別の部材である場合、処置器具を接続するための別部品を構成する材料は、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属や、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PP、PE等のポリオレフィン系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。中でも、処置器具を接続するための別部品を構成する材料は、線状物30を構成する材料と同一であることが好ましい。接続部31が線状物30と別部材である場合に、その材料と線状物30を構成する材料とが同一であることにより、接続部31と線状物30との接合を強固なものとすることができるため、接続部31が線状物30から外れにくくすることができ、内視鏡処置具1の耐久性を高めることが可能となる。
【0042】
接続部31が、線状物30の遠位端部に配置される線状物30とは別の部品である場合、線状物30へ処置器具を接続するための別部品を固定する方法は、例えば、ねじ、かしめ、嵌合、圧入等の接続部材による機械的な固定、溶接や接着等を用いることができる。中でも、処置器具を接続するための別部品は、線状物30へ溶接により固定されていることが好ましい。処置器具を接続するための別部品が線状物30へ溶接により固定されていることによって、接続部31と線状物30との接合強度を容易に高めることができ、内視鏡処置具1が破損する可能性を低減することができる。
【0043】
接続部31の外径は、内筒20の内径よりも小さいことが好ましい。つまり、接続部31は、内筒20の内腔に配置可能であることが好ましい。接続部31の外径が内筒20の内径よりも小さいことにより、内視鏡の鉗子口から処置対象部位まで内視鏡処置具1を送り込む際に、接続部31を内筒20の内腔に収納することができる。その結果、接続部31を外筒10の内腔に収めることとなり、接続部31や処置器具が内視鏡内の鉗子口や鉗子チャンネル内、処置対象部位以外の体内組織等を傷付けることを防止できる。処置器具を外筒10内に配置するために、接続部31の外径は、外筒10の内径よりも小さいことが好ましい。
【0044】
潤滑油層60は、外筒10と内筒20の間に配置されている。潤滑油層60は、潤滑油を含有する層であり、外筒10と内筒20の摺動性を高めている。潤滑油層60が有する潤滑油としては、例えば、シリコーン系潤滑油、エステル系潤滑油、フッ素系潤滑油等が挙げられる。中でも、潤滑油層60が有する潤滑油は、シリコーンオイルであることが好ましい。潤滑油層60がシリコーンオイルを有していることにより、内視鏡処置具1の安全性を高めつつ、外筒10と内筒20との摺動性を長期間高めることができる。
【0045】
潤滑油層60は、外筒10の内表面か内筒20の外表面のいずれか一方に配置されていてもよいが、外筒10の内表面と内筒20の外表面の両方に配置されていることが好ましい。潤滑油層60が外筒10の内表面と内筒20の外表面の両方に配置されていることにより、外筒10の内表面と内筒20の外表面との摺動性をさらに高めることができ、蛇行している箇所の多い生体内管腔においても外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させやすくなる。そのため、接続部31に接続されている処置器具を外筒10から突出させやすくすることが可能となる。
【0046】
潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さは、外筒10の遠位端10aから近位端10bまでの長さよりも短く、かつ内筒20の遠位端20aから大径部21の遠位端21aまでの長さよりも短いことが好ましい。潤滑油層60がこのように配置されていることにより、潤滑油層60が外筒10から露出して、接続部31やハンドル50に潤滑油が付着し、接続部31に処置器具が接続できなくなることや処置器具が脱落しやすくなること、処置器具を動作させにくくなることを防止することができる。
【0047】
潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さは、外筒10の遠位端10aから近位端10bまでの長さの0.95倍以下であることが好ましく、0.9倍以下であることがより好ましく、0.85倍以下であることがさらに好ましい。潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さと、外筒10の遠位端10aから近位端10bまでの長さとの比の上限値を上記の範囲に設定することにより、潤滑油層60が外筒10から露出しにくくなる。また、潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さは、外筒10の遠位端10aから近位端10bまでの長さの0.6倍以上であることが好ましく、0.7倍以上であることがより好ましく、0.8倍以上であることがさらに好ましい。潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さと、外筒10の遠位端10aから近位端10bまでの長さとの比の下限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10と内筒20との摺動性を十分に高めることができる。
【0048】
潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さは、内筒20の遠位端20aから大径部21の遠位端21aまでの長さの0.9倍以下であることが好ましく、0.85倍以下であることがより好ましく、0.8倍以下であることがさらに好ましい。潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さと、内筒20の遠位端20aから大径部21の遠位端21aまでの長さとの比の上限値を上記の範囲に設定することにより、潤滑油層60が外筒10から露出しにくくなる。また、潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さは、内筒20の遠位端20aから大径部21の遠位端21aまでの長さの0.3倍以上であることが好ましく、0.4倍以上であることがより好ましく、0.5倍以上であることがさらに好ましい。潤滑油層60の遠位端60aから近位端60bまでの長さと、内筒20の遠位端20aから大径部21の遠位端21aまでの長さとの比の下限値を上記の範囲に設定することにより、外筒10と内筒20との摺動性を十分に高めることができる。
【0049】
潤滑油層60は、内筒20の遠位端20aに接しない位置に配置されていることが好ましい。つまり、内筒20の遠位端20aよりも近位側に潤滑油層60の遠位端60aがあることが好ましい。潤滑油層60が内筒20の遠位端20aに接しない位置に配置されていることにより、潤滑油層60の潤滑油が内筒20の遠位端20aを越えて接続部31に付着することによって、接続部31に処置器具が接続しづらくなることや、接続部31に接続された処置器具が脱落しやすくなることを防止できる。
【0050】
潤滑油層60は、外筒10の遠近方向に垂直な一断面において、外筒10の内表面と内筒20の外表面の少なくとも一方の周方向における少なくとも一部に配置されていればよいが、
図3に示すように、潤滑油層60は、外筒10の遠近方向に垂直な一断面において、外筒10の内表面と内筒20の外表面の少なくとも一方の全周にわたって配置されていることが好ましい。潤滑油層60が外筒10の内表面と内筒20の外表面の少なくとも一方の全周にわたって配置されていることにより、外筒10の内表面と内筒20の外表面との間に生じる摩擦をより低減することが可能となる。その結果、外筒10と内筒20との摺動性を向上させることができる。
【0051】
潤滑油層60は、外筒10の遠近方向に垂直な一断面において、外筒10の内表面と内筒20の外表面の少なくとも一方の全周にわたって配置されていることが好ましいが、外筒10の内表面と内筒20の外表面の両方にわたって配置されていることがより好ましい。潤滑油層60が外筒10の内表面と内筒20の外表面の両方にわたって配置されていることにより、外筒10の内表面と内筒20の外表面との摺動性をさらに高めることが可能となる。
【0052】
潤滑油層60は、遠近方向において、内筒20の遠位端20aよりも近位側、かつ大径部21の遠位端21aよりも遠位側に配置されていることが好ましい。潤滑油層60が内筒20の遠位端20aよりも近位側、かつ大径部21の遠位端21aよりも遠位側に配置されていることにより、潤滑油層60が外筒10の外部に露出しにくくなり、潤滑油層60の潤滑油が接続部31等の他物に意図せず付着することを防止でき、その結果、内視鏡処置具1の操作性を向上させることができる。
【0053】
内筒20は、大径部21よりも遠位側に遠位側大径部23を有していることが好ましい。つまり、内筒20は、大径部21と遠位側大径部23を有していることが好ましい。また、潤滑油層60は、遠位側大径部23の近位端23bよりも近位側に配置されていることが好ましい。潤滑油層60が遠位側大径部23の近位端23bよりも近位側に配置されていることにより、潤滑油層60を構成する潤滑油が近位側へ広がって潤滑油層60の近位端60bが近位側へ移動することを大径部21が防止し、潤滑油層60の潤滑油が遠位側へ広がって潤滑油層60の遠位端60aが遠位側へ移動することを遠位側大径部23が防止することによって、外筒10からの潤滑油層60の露出を防ぐことができる。
【0054】
大径部21は、内筒20の遠近方向において任意の場所に設けられていればよいが、内筒20の遠近方向の中点よりも近位側にあることが好ましく、内筒20の遠近方向の中点と内筒20の近位端との中点よりも近位側にあることがより好ましい。大径部21が内筒20の遠近方向の中点よりも近位側にあることにより、内筒20へ大径部21を形成することが容易となり、内視鏡処置具1の製造における効率を高めることが可能となる。
【0055】
遠位側大径部23は、大径部21よりも遠位側に設けられていればよいが、大径部21よりも遠位側、かつ内筒20の遠近方向の中点よりも遠位側にあることが好ましく、大径部21よりも遠位側、かつ内筒20の遠近方向の中点と内筒20の遠位端20aとの中点よりも遠位側にあることがより好ましい。遠位側大径部23が大径部21よりも遠位側、かつ内筒20の遠近方向の中点よりも遠位側にあることにより、遠位側大径部23を内筒20に形成しやすく、内視鏡処置具1の製造効率を高めることができる。
【0056】
内筒20が大径部21と遠位側大径部23を有している場合、潤滑油層60の遠位端60aは遠位側大径部23の近位端23bよりも近位側に配置されており、かつ、潤滑油層60の近位端60bは大径部21の遠位端21aよりも遠位側に配置されていることが好ましい。つまり、大径部21の近位端よりも近位側、および、遠位側大径部23の遠位端よりも近位側に潤滑油層60が配置されていないことが好ましい。潤滑油層60の遠位端60aが遠位側大径部23の近位端23bよりも近位側に配置されており、かつ、潤滑油層60の近位端60bが大径部21の遠位端21aよりも遠位側に配置されていることにより、潤滑油層60が外筒10の外部に露出しにくくなり、潤滑油層60の潤滑油が接続部31等の他物に付着して内視鏡処置具1の操作性を低下させることを防止する。
【0057】
潤滑油層60は、内筒20の外表面に配置されており、潤滑油層60が配置されている部分は、外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させた際に外筒10から露出しない部分であることが好ましい。潤滑油層60が、外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させた際に外筒10から露出しない部分に配置されていることにより、外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させ、外筒10の移動によって潤滑油層60が遠近方向に広がったとしても、潤滑油層60が外筒10から露出しにくく、潤滑油層60の潤滑油が接続部31や後述するハンドル50等の他物に付着することを防止できる。
【0058】
図1に示すように、外筒10は、外表面に把持部40を有していることが好ましい。外筒10が外表面に把持部40を有していることにより、外筒10を内筒20に対して遠近方向に移動させる際に、外筒10を十分に把持しやすくなり、内視鏡処置具1の操作性を向上させることが可能となる。
【0059】
把持部40は、外筒10の遠近方向の中点よりも近位側に配置されていることが好ましい。把持部40が外筒10の遠近方向の中点よりも近位側に配置されていることにより、外筒10がより把持しやすくなり、接続部31や処置器具を外筒10の内腔に収める操作を行いやすくすることができる。
【0060】
内視鏡処置具1は、ハンドル50を有していることが好ましい。ハンドル50は、内視鏡処置具1を作動させる際に使用者が把持する部材である。ハンドル50は、線状物30の近位端部が接続されており、遠近方向に移動が可能なスライダー52を有していてもよい。また、ハンドル50は、内筒20の近位端部に接続されていてもよい。ハンドル50は、線状物30の近位端部が接続されており、遠近方向に移動が可能なスライダー52を有していることにより、接続部31に処置器具を接続する際や、接続部31に接続されている処置器具を動作させる際等の線状物30を遠近方向に移動させることが容易となり、内視鏡処置具1の操作性を向上させることが可能となる。
【0061】
本発明の内視鏡処置具1を製造する方法は、外筒10と内筒20を準備する第1工程と、内筒20の大径部21よりも遠位側の外表面に潤滑油を塗布する第2工程と、内筒20の近位端を、外筒10の遠位端10aから外筒10の内腔に挿通する第3工程と、を有するものである。
【0062】
まず、外筒10と内筒20を準備する第1工程を行う。第1工程の後、内筒20を洗浄する工程を行ってもよい。第1工程の後に内筒20を洗浄する工程を行うことにより、第2工程において内筒20の外表面に潤滑油層60を形成しやすくなる。
【0063】
次に、内筒20に潤滑油を塗布する第2工程を行う。第2工程において、内筒20の大径部21よりも遠位側である内筒20の外表面に潤滑油を塗布する。内筒20へ潤滑油を塗布する方法は、例えば、潤滑油を染み込ませた布等で内筒20の外表面をこする、筆等を潤滑油に浸して内筒20の外表面に潤滑油を塗る、潤滑油を満たした水槽の中に内筒20を浸す等が挙げられる。内筒20へ潤滑油を塗布する方法としては、中でも、潤滑油を染み込ませた布で内筒20の外表面をこすり、内筒20の外表面に潤滑油を塗布することが好ましい。潤滑油を染み込ませた布で内筒20の外表面をこすり、内筒20の外表面に潤滑油を塗布することによって第2工程を行うことにより、外筒10と内筒20との摺動性を高める効果を十分に有した潤滑油層60を短時間で少量の潤滑油を用いて効率的に形成することができる。
【0064】
内筒20の外表面に塗布する潤滑油は、例えば、シリコーン系潤滑油、エステル系潤滑油、フッ素系潤滑油等が挙げられる。中でも、潤滑油は、シリコーンオイルであることが好ましい。潤滑油にシリコーンオイルを用いることにより、安全性が高く、外筒10と内筒20との摺動性を長期間高めることができる内視鏡処置具1とすることができる。
【0065】
第2工程の前または後に、外筒10の内表面に潤滑油を塗布する工程を行ってもよい。外筒10の内表面に潤滑油を塗布する方法としては、例えば、潤滑油を染み込ませた布、紐等を外筒10の内腔に通して塗布する、潤滑油を満たした水槽の中に外筒10を浸す等が挙げられる。第2工程の前または後に、外筒10の内表面に潤滑油を塗布する工程を行うことにより、外筒10の内表面に潤滑油層60を形成することができ、外筒10と内筒20との間に生じる摩擦をさらに低減することが可能となる。
【0066】
そして、内筒20の近位端を、外筒10の遠位端10aから内腔に挿通する第3工程を行う。第2工程と第3工程は、連続的に行ってもよい。第2工程と第3工程を連続的に行うとは、内筒20の近位端部を外筒10の遠位端10aに挿通し、内筒20の近位側から潤滑剤を塗布しながら順次内筒20を外筒10の内腔に挿通することをいう。第2工程と第3工程を連続的に行うことにより、内視鏡処置具1の生産にかかる時間を短縮することができ、生産効率を高めることができる。
【0067】
第2工程の後、または第3工程の後に、遠位端部に処置器具との接続部31を有する線状物30を内筒20の内腔に配置する工程を行ってもよい。この工程において、線状物30の遠位端、つまり接続部31の遠位端を内筒20の近位端から内腔に挿通してもよいが、線状物30の近位端を内筒20の遠位端20aから内腔に挿通することが好ましい。遠位端部に処置器具との接続部31を有する線状物30を内筒20の内腔に配置する工程において、線状物30の近位端を内筒20の遠位端20aから内腔に挿通することにより、線状物30を内筒20の内腔に配置しやすく、内視鏡処置具1の生産効率を上げることができる。
【0068】
第3工程の後に、外筒10の遠位端部を洗浄する第4工程を行ってもよい。潤滑油を塗布した内筒20を外筒10の内腔に挿通する第3工程を行う際に、内筒20の外表面と外筒10の遠位端部とが接触して外筒10の遠位端部に潤滑油が付着し、接続部31等の他物に潤滑油が付着してしまうおそれがある。第4工程を行うことにより、外筒10の遠位端部に潤滑油が付着してしまっていても、この潤滑油を除去することができ、潤滑油が他物に付着することを防止できる。
【0069】
第4工程において、外筒10の遠位端部と一緒に内筒20の遠位端部を洗浄してもよい。つまり、第4工程は、外筒10の遠位端部および内筒20の遠位端部を洗浄する工程であってもよい。第4工程において、外筒10の遠位端部と一緒に内筒20の遠位端部を洗浄することにより、内筒20の遠位端部に意図せず潤滑油が付着してしまっていた場合に、この潤滑油も除去することができ、他物への潤滑油の付着を防ぐことができる。
【0070】
以上のように、本発明の内視鏡処置具は、遠近方向を有する外筒と、外筒の内腔に配置されている内筒と、内筒の内腔に配置されており、遠位端部に処置器具との接続部を有している線状物と、を有し、外筒は、内筒に対して遠近方向に移動が可能であって、内筒の遠位端を外筒から露出させることが可能であり、内筒は、外径が大きい大径部を有しており、外筒と内筒の間に潤滑油層が配置されており、潤滑油層は、遠近方向において、内筒の遠位端よりも近位側、かつ大径部よりも遠位側に配置されていることを特徴とする。本発明の内視鏡処置具がこのような構成であることにより、外筒と内筒との摺動性を向上させることができ、内視鏡処置具を蛇行の多い生体内管腔に挿通した状態であっても外筒の内表面と内筒の外表面との間に大きな摩擦が生じにくく、外筒と内筒とを摺動させて処置器具を外筒から容易に突出させることが可能である。
【0071】
本願は、2018年11月22日に出願された日本国特許出願第2018-219670号に基づく優先権の利益を主張するものである。2018年11月22日に出願された日本国特許出願第2018-219670号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0072】
1:内視鏡処置具
10:外筒
10a:外筒の遠位端
10b:外筒の近位端
20:内筒
20a:内筒の遠位端
21:大径部
21a:大径部の遠位端
23:遠位側大径部
23b:遠位側大径部の近位端
30:線状物
31:接続部
40:把持部
50:ハンドル
52:スライダー
60:潤滑油層
60a:潤滑油層の遠位端
60b:潤滑油層の近位端